説明

シートヒータ及びその制御方法

【課題】複数設けた各発熱体の発熱量を適宜制御することにより省電力化することができ、且つ着座者に温熱の低下を体感させないようにすることができるシートヒータ及びその制御方法を提供する。
【解決手段】シート2の異なる位置に配設された2以上の発熱体31〜35と、発熱体ごとに発熱量を制御する制御部4と、を備え、制御部は、発熱体ごとにそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させ、且つ、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、他方の発熱体の発熱量を所定値以上に上昇させ、その後に一方の発熱体の発熱量を低下させる。これにより、着座者が一時に感じる温熱変化の量を小さくし、着座者が体感する温熱の低下及び不均一を相対的に小さくすることができ、快適性を保つことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに複数設けた各発熱体の発熱量を適宜制御することにより消費電力を低減させることができるシートヒータ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの座面部や背もたれ部に発熱体を備え、着座した乗員を暖めるシートヒータが用いられている。一方、車両内に備えられる各種電気機器が増加するに伴って車両内の使用電力が増大しており、各電気機器・装置の消費電力の低減が求められている。このため、シートヒータにおいても、通常よりも消費電力を減らす省電力モード等を設けたものがある。
また、着座者の人体の接触部位別に配設された複数の発熱体を備え、各発熱体の発熱動作を所定の順に制御することによって、快適性を低下させることなく発熱エネルギーを削減して省エネ効果を奏する座席用ヒータが開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−269480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、シートヒータの省電力状態等においては、ヒータの到達温度を通常よりも低く設定したり、間欠的に電源をオフとし、その非通電時間を長くしたりする制御が行われる場合が多かった。しかし、そのような制御方法では、着座者に温熱の低下を感じさせてしまうという問題があった。
また、特許文献1に記載された座席用ヒータでは、着座者の人体の接触部位別に配設された複数の発熱体を順に発熱させるように制御されるため、ヒータの省電力化が可能となる。そして、人体の接触部位の暖感覚の相違(暖感覚が早く熱供給が高い部分、及び、暖感覚が遅く鈍感ではあるが、暖めると快適性を向上することが可能な部分)に基づいて順に発熱体の発熱が制御されるため、着座者の快適性を低下させないという効果を達するとされている。しかし、身体の部位別に分割して設けられた発熱体を部分的にオン・オフさせたり電力を増減させたりすると、その切り替えによる温度変化が着座者に体感され、快適性を損なう場合がある。特に、隣り合う身体部位の一方の温度が上昇し、他方の温度が下降することになる場合には、その温度差が着座者に顕著に体感されるため快適性を損なうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、シートに複数設けた各発熱体の発熱量を適宜制御することにより省電力化することができ、且つ着座者に温熱の低下を体感させないようにすることができるシートヒータ及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本第1発明のシートヒータは、シートの異なる位置に配設された2以上の発熱体と、前記発熱体ごとに発熱量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記発熱体ごとにそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させ、且つ、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を低下させることを要旨とする。
本第2発明のシートヒータは、第1発明において、前記発熱体ごとに、基準となる基準発熱量と基準発熱量より少ない1段階又は2段階以上の低発熱量とが定められており、
隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体が前記低発熱量の状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を1段階上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を1段階低下させることを要旨とする。
本第2発明のシートヒータは、第1発明又は第2発明において、前記発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿の各部位に対応する前記シートの各位置に配設されていることを要旨とする。
本第4発明のシートヒータの制御方法は、第1発明乃至第3発明のいずれかに記載のシートヒータの制御方法であって、所定のタイミング及び順序に従って発熱量を低下させるべき発熱体を決定する第1ステップと、前記第1ステップにより決定された発熱体に隣り合う隣接発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、前記隣接発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ且つ所定時間の経過を待つ第2ステップと、前記第2ステップの後、前記第1ステップにより決定された発熱体の発熱量を低下させる第3ステップと、を備え、前記第1ステップから前記第3ステップまでを繰り返し行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシートヒータによれば、シートに設けられた2以上の発熱体をそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させることによって、常時全ての発熱体が発熱しているときと比べて着座者に対して温度低下を体感させることなく消費電力を低減させることができる。
特に、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合にその発熱体の発熱量を所定値以上に上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を低下させることにより、隣の発熱体部が低温状態であった場合にはその温度を上昇させ、然る後に当該一方の発熱体部の温度を降下させることとなるため、着座者が一時に感じる温熱変化の量を小さくすることができる。これにより、着座者が体感する温熱の低下及び不均一を相対的に小さくすることができ、快適性を保つことが可能になる。
【0008】
また、発熱体ごとに、基準となる基準発熱量と基準発熱量より少ない1段階又は2段階以上の低発熱量とが定められている場合には、シートの異なる位置ごとに発熱量の基準値と、それよりも段階的に低消費電力となる低発熱量の値を定めておくことができる。そして、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体が前記低発熱量の状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を1段階上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を1段階低下させることにより、隣の発熱体部が低発熱量の段階にあった場合にはその温度を上昇させ、然る後に当該一方の発熱体部の温度を1段階降下させるように制御を行うことができる。このため、簡単な制御方法によって着座者の快適性を保つことが可能になる。
更に、発熱体が着座者の肩、背中、腰、尻及び腿の各部位に対応する前記シートの各位置に配設されている場合は、着座者の身体全体にわたって暖房することができ、身体の部位ごとに適度な発熱量を設定することができる。また、シート全体の発熱分布を平準化するとともに、各部の発熱量をそれぞれ定められる時期に所定時間低下させることによって、身体全体の温熱感を保ったまま消費電力を低減することができる。更に、隣り合う部位の一方の温度上昇と他方の温度降下とが同時には発生しないため、着座者が体感する温熱の低下及び不均一を相対的に小さくすることができ、シートに接する身体全体の快適性を保つことができる。
【0009】
本発明のシートヒータの制御方法によれば、所定のタイミング及びシーケンスに従って上記効果を達するシートヒータを制御することができる。わずかな発熱量の低減を短時間で繰り返すことによって、着座者に対して温度低下を体感させることなく消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】シートヒータを設けた自動車用のシートを示す斜視図である。
【図2】シートの各区画部に設けられた発熱体の発熱量の時間変化を示す図表である。
【図3】シートの各部に設けられた発熱体の発熱量の制御方法を示すグラフであり、(a)はシートの肩部、(b)は背中部、(c)は腰部、(d)は尻部、(e)は腿部に設けられた発熱体について、時間軸上の発熱量の制御方法を示す。
【図4】隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるときに他方が低発熱量であった場合の制御方法を説明するための図表である。
【図5】シートの腰部に設けられた発熱体による温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.シートヒータの構成
以下、図1〜5を参照しながら本発明のシートヒータ及びその制御方法を詳しく説明する。
本シートヒータは、シートの異なる位置に分割して配設された2以上の発熱体と、発熱体ごとに発熱量を制御する制御部と、を備える。本シートヒータが設けられるシートは特に限定されず、例えば、車両用シート、室内用シートのような様々なシートが挙げられる。
図1は、本シートヒータ1を設けた車両用シート2の例を示す。車両用シート2は、背もたれ部21と座面部22からなっている。シートヒータ1は、シート2の異なる位置の表層に分割して配設された発熱体31〜35と、各発熱体と接続された制御部4を備えている。本例においては5つの発熱体を備え、着座者の肩、背中、腰、尻、腿の各部位に対応するように、肩部発熱体31、背中部発熱体32、腰部発熱体33、尻部発熱体34、腿部発熱体35が設けられている。各発熱体31〜35は、制御部4によりそれぞれ独立して通電が制御され、それによって発熱量が変化する。
【0012】
1つのシートに設けられる発熱体の数は、2以上であれば特に限定されない。発熱体の数を2以上とすることで、あるときにおいて基準発熱量となるように通電される1以上の発熱体と、低発熱量となるように通電される1以上の発熱体を、それぞれ定められる時期制御することができる。各発熱体の配置や大きさは、シートに接する着座者の人体の部位ごとに温熱を与える限り特に問わない。また、隣り合う発熱体は隙間なく設けられてもよいし、隙間を空けて設けられてもよい。
図1においては肩部から膝部の5つに区分して、それぞれ発熱体が配設されているが、この区分に限られず任意の範囲で分割することができる。例えば、肩部から膝部までを6以上に分割してそれぞれ発熱体を設けてもよい。また、シートを左右方向に区画して発熱体を設けてもよい。例えば、上記肩部等を左右に分けて2つの発熱体を備えるようにしてもよいし、更に3つに分割して設けてもよい。発熱体の数を増やすことによって、発熱体ごとの発熱量の変化を細やかにし、着座者に対して低発熱時の温度低下を体感させないようにすることができる。
更に、発熱体を設ける場所はシートのみに限られず、例えば発熱体をふくらはぎや足の裏等を載せる足載せ台に設け、シートに設けた発熱体とあわせて本発明による制御を行うことができる。
【0013】
各発熱体の材料や構造も特に限定されず、例えば抵抗発熱線や面状発熱体等を使用することができる。また、配設部位により異なる材料や構造の発熱体が備えられてもよい。各発熱体は、好ましくは着座者と接するシートの表層部に設けられる。この表層部には、シートと一体になってシートの外面を覆うように設けられたシートカバーを含むことができる。例えば、上記発熱体31〜35を、シート内部に設けられているクッション材と、シートカバーとの間に設けることができる。
【0014】
制御部4は発熱体それぞれと接続されており、発熱体ごとに通電することによりその発熱量を制御するように構成されている。各発熱体の発熱量を変更する時期(タイミング)、基準とする発熱量及び低減時の発熱量、及び低発熱量の継続時間等は、適宜に定めておくことができる。上記発熱量や継続時間は一律である必要はなく、発熱体の設けられている部位や他の発熱体の発熱状態との関係等によって適宜に設定することができる。
制御部4はハードウェアのみで構成されてもよいし、マイクロプロセッサ等を使用してハードウェアとソフトウェアとによって構成されてもよい。各発熱体の発熱量の変更時期や低発熱量の継続時間、基準とする発熱量及び低減時の発熱量等は、予めプログラムしておくことができる。
各発熱体の発熱量は、それぞれに対する通電を制御することによって変化させることができる。通電の制御方法は任意に選択することができ、パルス幅変調(PWM)、電圧制御及び電流制御等を例示することができる。
【0015】
また、シート各部位又は発熱体の温度を検出するための温度センサや、シート周辺の室温を検出するための温度センサ等が更に備えられてもよい。その場合には、制御部4は、それらの温度を検知することによって、基準とする発熱量の大きさや上記継続時間等を変更することができる。また、各発熱体が一定の温度に達した場合は、発熱体が規定の温度を超えないように各発熱量を制限することもできる。
制御部4及び各発熱体用の電源は、例えば図1に示すように電源5から供給することができる。
【0016】
2.シートヒータの制御方法
各発熱体に対して、基準となる基準発熱量を定めておくことができる。この「基準発熱量」は、通常時の時間当たりの発熱量であり、発熱体毎に任意の値とすることができる。例えば、身体に対して温熱効果の高い膝部発熱体の基準発熱量は大きく、身体の胸部に影響を及ぼす背中部発熱体の基準発熱量は小さく設定しておくことができる。
また、各発熱体に対して、それぞれの基準発熱量よりも低い低発熱量の状態を定めておくことができる。この「低発熱量」とは、省電力のために基準発熱量より低い電力で発熱させるときの発熱量であり、発熱体毎に任意の値とすることができる。また、2以上の低発熱量の状態が設定されてもよい。例えば、基準発熱量より小さい第1低発熱量、第1低発熱量よりも更に発熱量が小さい第2低発熱量等を定めておくことができる。また、低発熱量の状態には、通電をオフにして発熱しない状態を含んでもよい。
上記のように、各発熱体についてそれぞれ基準発熱量及び低発熱量を設定し、基準発熱量の状態と低発熱量の状態とを適宜切り替えることによって、シートヒータの消費電力を低減することができる。
【0017】
前記制御部4は、発熱体ごとにそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させる。すなわち、制御部4は、発熱体の設けられた部位に応じて、所定の時期において基準発熱量の状態から低発熱量の状態に変更し、その低発熱量の状態を所定時間継続させ、その後基準発熱量の状態に戻すように制御する。2以上の低発熱量の状態が設定されている場合には、基準発熱量、第1低発熱量、第2低発熱量等の間で、順次発熱量を増減させるように制御することができる。
【0018】
上記「時期」とは発熱体を低発熱量に変更するタイミングをいい、「所定時間」とはその低発熱量を継続する時間をいう。そのタイミング及び継続時間は、シートの部位ごとに適切な温熱感を与え且つシート全体からみて低発熱量の部位が偏らない発熱量の分布を作り出すように計画されればよい。例えば、各発熱体が、それぞれに対して設定された一定の周期ごとに、一定時間低発熱量となるように定めることができる。また、シートヒート全体の発熱量が平準化するように、一定周期で各発熱体を低発熱量にするよう定めることができる。
尚、低発熱量となる時間を多くすれば省電力効果を増すことができるが、多すぎるとシートの温度低下が着座者に体感されるため、適宜設定する必要がある。また、室内気温やシートの表面温度によって、低発熱量とする周期や継続時間を増減させてもよい。
【0019】
各発熱体の発熱量を変更する時期は、発熱体が設けられた位置ごとに異なるようにすることが好ましい。例えば、シートの座面部と背もたれ部では着座者の温熱感が異なるため、それに合うように発熱量を切り替えるタイミング及び低発熱量の継続時間が異なるようにすることができる。ただし、すべての発熱体ごとに切り替え時期や継続時間が異なっている必要はない。例えば、隣り合っている尻部と腰部とは、同時に低発熱量の状態とし、両部位の発熱量の違いを小さくした方がよい場合もある。
また、発熱量の切り替えを小刻みとするとともに、低発熱量の継続時間は短くすることが好ましい。例えば、発熱状態を0.1秒〜10秒程度で切り替えるようにし、その期間を単位として、発熱体ごとに定めた割合で低発熱量とすることができる。このような短時間の低発熱量の状態を繰り返すことによって、着座者に温度低下を感じさせないようにすることができるからである。
【0020】
また、制御部4は、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、他方の発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ、その後に一方の発熱体の発熱量を低下させるように制御する。ここで、発熱量を低下させようとする発熱体が複数の発熱体と隣接している場合には、隣接する発熱体のそれぞれを「他方の発熱体」として、低発熱状態である隣接発熱体の発熱量を順次又は同時に上昇させ、その後に自己の発熱量を低下させるように制御することができる。
【0021】
上記「所定値」は適宜に設定することができ、例えば、前記基準発熱量、前記第1の低発熱量等とすることができる。すなわち、隣り合う位置にある発熱体の一方の発熱量を基準発熱量から低発熱量の状態に、又は第1低発熱量から更に発熱量の低い第2低発熱量の状態等に変化させようとするとき、当該発熱体と隣り合う位置にある隣接発熱体が所定発熱量より低い状態にあった場合には、先ずその隣接発熱体の発熱量を上昇させる。例えば、隣接発熱体が低発熱量の状態であった場合には、基準発熱量に上昇させる。また、隣接発熱体が第2低発熱量の状態であった場合には、第1低発熱量に上昇させるような制御を行う。
【0022】
また、上記「所定値」を、前記一方の発熱体のそのときの発熱量と同じ発熱量としてもよい。この場合、制御部4は、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させようとするとき、それに隣接する発熱体が自己の発熱量よりも低い状態であった場合には、先ず隣接発熱体の発熱量を自己と同じ発熱量に上昇させる。その後に、目的とした前記一方の発熱体の発熱量を低下させる。
【0023】
以上のように発熱量を制御することにより、着座者に前記一方の発熱体の発熱量の低下を感じさせないようにすることができる。また、隣り合う発熱体の一方の発熱量の低下と他方の発熱量の増加が同時に生じると着座者には相対的に大きな温度変化と感じられることとなるが、上記のような制御とすることにより、隣り合う発熱体の一方の発熱量の低下と他方の発熱量の増加とが同時に生じることがない。このため、着座者が一時に感じる温熱変化の量を小さくすることができ、快適性を向上させる効果を奏することができる。
【0024】
また、前記制御部は、前記発熱体ごとにそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させ、且つ、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ、所定の過渡期間後に前記一方の発熱体の発熱量を低下させることができる。更に、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体が前記低発熱量の状態である場合は、前記他方の発熱体の発熱量を1段階上昇させ、所定の過渡期間後に前記一方の発熱体の発熱量を1段階低下させることができる。例えば、隣接発熱体が低発熱量の状態であった場合には、基準発熱量に上昇させる。また、隣接発熱体が第2低発熱量の状態であった場合には、第1低発熱量に上昇させるような制御を行う。その後、所定の過渡期間経過後に、目的とした前記一方の発熱体の発熱量を低下させる。
この「過渡期間」とは、他方の発熱体の発熱量を上昇させてから一方の発熱体の発熱量を低下させるまでの一時的な期間である。過渡期間は着座者に与える温熱変化を和らげることができればよいため、発熱量の上記切り替え周期に比べて短い時間(例えば、0.1〜3秒)とすることができる。
【0025】
上記シートヒータの制御は、所定のタイミング及び順序に従って発熱量を低下させるべき発熱体を決定する第1ステップと、第1ステップにより決定された発熱体に隣り合う隣接発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、隣接発熱体の発熱量を所定値以上に上昇させ且つ所定時間の経過を待つ第2ステップと、第2ステップの後、第1ステップにより決定された発熱体の発熱量を低下させる第3ステップと、を備え、第1ステップから第3ステップまでを繰り返し行うことによって実行することができる。
第1ステップにおいて、発熱量を低下させるべき発熱体及びそのタイミングは、予め計画しプログラムしておくことができる。第1ステップにより定められた発熱体が複数の発熱体と隣接している場合には、隣接する発熱体のそれぞれについて、低発熱状態である場合にはその発熱量を上昇させる第2ステップを実行すればよい。また、予めすべての発熱体の発熱量を計画しておけば、第2ステップを行う必要が生じる場合も含めたスケジュールをプログラムしておくことが可能である。計画されたタイミング及びシーケンスに従って制御部が上記第1ステップ〜第3ステップの制御を繰り返し実行することにより、発熱量の低減が短時間で繰り返されることとなり、着座者に対して温度低下を体感させることなく消費電力を低減することができる。
【0026】
本シートヒータにおいて、2以上の発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿に対応したシートの各位置に配設されている発熱体、すなわち図1に示される発熱体31〜35を含むものとすることができる。
このとき基準発熱量は、着座者の身体の各部位が適度に温められるように、発熱体ごとに定めておくことができる。基準発熱量は、その発熱体の最大発熱量としてもよいし、最大発熱量に対して一定の比率で定めてもよい。また、各発熱体の最大発熱量は同一でなくてもよいが、以下の説明においては、簡単のためすべての発熱体の最大発熱量を同じとし、その最大発熱量に対比して基準発熱量の値を表わすこととする。例えば、肩部に設けられている発熱体31の基準発熱量は最大発熱量の60%、背中部に設けられている発熱体32の基準発熱量は最大発熱量の40%、腰部に設けられている発熱体33の基準発熱量は最大発熱量の40%、尻部に設けられている発熱体34の基準発熱量は最大発熱量の60%、腿部に設けられている発熱体35の基準発熱量は最大発熱量の70%程度とするように定めておくことができる。
【0027】
3.シートヒータの動作
次に、図2〜図4を参照し、本シートヒータの動作について具体的に説明する。図1に示した各発熱体31〜35の発熱量は制御部4によりPWM制御されるものとし、発熱量をPWMのデューティ比(百分率)によって示している。発熱量は、PWMのデューティ比に略比例するものとすることができる。例えば、デューティ比が100%のとき発熱量は最大発熱量である100%となり、デューティ比が10%のとき発熱量は10%となるものとする。
図2は、肩部、背中部、腰部、尻部及び腿部に設けた5つの発熱体の発熱量を、所定時間ごと(期間T1〜T17)に増減させる制御を表わしている。また、図4は、上記制御を表わすタイミングチャートである。図2中の数及び図4の縦軸は、上記デューティ比を示す。また、図2及び図4は、40秒間分の制御に限って示しており、制御部4はこのタイミングチャートに沿った通電制御を繰り返して行うようにすることができる。
図2及び4に示すように、各発熱体31〜35の発熱量は、基準発熱量の状態A、基準発熱量より低い第1低発熱量の状態B、第1低発熱量より低い第2低発熱量の状態Cが設定されており、発熱体31〜33は状態A、Bの2状態、発熱体34〜35は状態A、B、Cの3状態で制御されている。前記のとおり、基準発熱量は発熱体31〜35ごとに定められている。図4において斜線部は、各発熱体の発熱量を基準発熱量から低下させていることを表わしている。
【0028】
まず、隣り合う発熱体の一つの発熱量を低下させ、他方を上昇させるときの制御方法を、図3を参照して説明する。図3(1)は、本シートヒータの制御方法を行わない場合を示している。隣り合う発熱体の一方である腰部が当初発熱状態A、他方の背中部が発熱状態Bであったとき、腰部を発熱状態Bに下げ(62)、同時に背中部を発熱状態Aに上げる(61)ものとする。そうすると、隣り合う発熱体の発熱量の低下62と上昇62とが同時に生じるため、着座者には相対的に大きな温度変化として体感されてしまうこととなる。
このような場合、図3(2)に示す本シートヒータの制御方法では、先ず背中部を発熱状態Aに上げ(63)、次の段階で腰部を発熱状態Bに下げる(64)。これにより、隣接する他方の発熱体の発熱量が上昇した後に、一方の発熱量が下げられることとなるため、着座者に温度低下を感じ難くさせることができる。しかも、発熱量が同時に変化する幅が図3(1)の場合の半分となるため、着座者に急な変化を感じさせないようにすることができる。
【0029】
図2及び図4は、上記同様の制御を5つの発熱体に対して行う例を示している。1つの発熱体の発熱量を基準発熱量Aから第1低発熱量B、又は第1低発熱量Bから第2低発熱量Cに発熱量が低下させるとき、隣接する発熱体の発熱量が第1低発熱量B又は第2低発熱量Cである場合には、その隣接発熱体を予め基準発熱量A又は第1低発熱量Bに高めている。
例えば、基準発熱量Aで発熱中の肩部を期間T5、T11で第1低発熱量Bにするとき、隣接する背中部が第1低発熱量B(期間T3、T9を参照)であった場合、直前の期間T4、T10で背中部を基準発熱量Aに上げている。また、基準発熱量Aで発熱中の背中部を期間T3、T9、T16で第1低発熱量Bにするとき、それと隣り合う肩部及び腰部が第1低発熱量B(期間T1、T7、T14を参照)であった場合、直前の期間T2、T8、T15で基準発熱量Aに上げている。また、第1低発熱量Bで発熱中の尻部を期間T11で第2低発熱量Cにするとき、腿部が第1低発熱量B(期間T9を参照)であった場合、直前の期間T10で基準発熱量Aに上げている。
上例において、低発熱量である隣接発熱体の発熱量を予め高める期間(T2、T4、T7、T8、T10等)は前記過渡期間であり、同じ発熱状態を継続する各期間(T1、T3、T5、T6、T9、T11等)よりも短い時間(1秒)としている。また、同じ発熱状態を継続する各期間は同じ長さである必要はなく、3〜5秒間としている。
尚、期間(T13、T14)の尻及び腿部の発熱量に示すように、発熱量を下げるときに(期間T13からT14への腿部を参照。)、隣り合う発熱体の発熱量(期間T13の尻部を参照。)が一定以上であって、周辺の発熱量が急激に変化することがなければ、その隣り合う発熱体の発熱量を予め上げずに維持したまま対象とする発熱体の発熱量を下げてもよい。
【0030】
このように隣接する他方の発熱体の発熱量を、第1低発熱量B又は第2低発熱量Cから基準発熱量A又は第1低発熱量Bに一旦上げてから、一方の発熱体を第1低発熱量B又は第2低発熱量Cに下げることにより、周辺の発熱量が急激に変化することなく、着座者に与える温熱感の低下を緩和させることができる。
本実施例のシートヒータは、図2及び図4の制御によって、常時基準発熱量で通電していたときと比べて30%(図3の斜線部分の面積に相当)の電力を削減できる。
【0031】
尚、本実施例のシートヒータは、以上のような制御及び動作を、定常状態でのみ行うようにすることができる。すなわち、シートが冷えている初期状態では発熱体を低発熱量とする制御を行わず、従来と同様の制御を行うことでシート温度を速く上昇させることができる。図5は、発熱体が設けられている1つの部位(例えば、発熱体33が設けられている腰部)の温度の変化を例示したグラフである。図5の横軸はシートヒータへの通電を開始してからの時間を表わし、シートの腰部は、発熱体33に電流を流し始めてから6分後(P点)に所定の温度に上昇している。そこで、図2及び図4に示したような発熱制御を開始することによって、着座者の快適性を損なわないようにシートヒータの省電力化を図ることができる。
【0032】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。本実施例においては、基準発熱量の状態A、第1低発熱量の状態B、第2低発熱量の状態Cの3状態の通電制御を行っていたがこれに限られず、基準発熱量の状態A、第1低発熱量の状態Bの2状態で通電制御を行ってもよい。また、最も低発熱量の状態が発熱体の非通電状態であってもよい。更に、発熱体を設ける場所はシートのみに限られず、例えば発熱体をふくらはぎや足の裏等を載せる足載せ台に設け、シートに設けた発熱体とあわせて本発明による制御を行うことで省電力効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0033】
1;シートヒータ、2;シート、21;背もたれ部、22;座面部、31〜35;発熱体(肩部、背中部、腰部、尻部、腿部)、4;制御部、5;電源、A;基準発熱量の状態、B;第1低発熱量の状態、C;第2低発熱量の状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの異なる位置に配設された2以上の発熱体と、前記発熱体ごとに発熱量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記発熱体ごとにそれぞれ定められる時期に所定時間発熱量を低下させ、
且つ、隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を低下させることを特徴とするシートヒータ。
【請求項2】
前記発熱体ごとに、基準となる基準発熱量と基準発熱量より少ない1段階又は2段階以上の低発熱量とが定められており、
隣り合う発熱体の一方の発熱量を低下させるとき、他方の発熱体が前記低発熱量の状態である場合には、前記他方の発熱体の発熱量を1段階上昇させ、その後に前記一方の発熱体の発熱量を1段階低下させる請求項1記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿の各部位に対応する前記シートの各位置に配設されている請求項1又は2記載のシートヒータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシートヒータの制御方法であって、
所定のタイミング及び順序に従って発熱量を低下させるべき発熱体を決定する第1ステップと、
前記第1ステップにより決定された発熱体に隣り合う隣接発熱体の発熱量を所定値より低下させている状態である場合には、前記隣接発熱体の発熱量を前記所定値以上に上昇させ且つ所定時間の経過を待つ第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記第1ステップにより決定された発熱体の発熱量を低下させる第3ステップと、
を備え、
前記第1ステップから前記第3ステップまでを繰り返し行うことを特徴とするシートヒータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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