説明

シートヒータ

【課題】乗員がシートに着座する際に、充分にシートを暖めておくことができるシートヒータを得る。
【解決手段】乗車前にヒータ12を作動させる際に通電されるヒータ38の固有抵抗値が、通常状態でヒータ12を作動させる際に通電されるヒータ16の固有抵抗値よりも小さい。このため、ヒータ38にて生じた抵抗熱でサーモスタット14が加熱されてサーモスタット14が一定の温度に達するまでの時間は、ヒータ16にて生じた抵抗熱でサーモスタット14が加熱されてサーモスタット14が一定の温度に達するまでの時間の時間よりも充分に長い。このため、ヒータ16が通電されている場合よりもヒータ38が通電されている場合の方がメインヒータ12の通電時間が長くなり、メインヒータ12が埋設されたシートのシートクッションやシートバックが長時間加熱され、充分に暖めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の座席用暖房装置として好適なシートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたシートヒータは、ドアロック状態でイグニッションキーによりドアの解錠操作が行なわれると、制御装置がヒータ本体に対する通電を開始する。このように、ドアの解錠操作時、すなわち、乗員がシートに着座する前にヒータ本体を通電状態にしておくことで、乗員がシートに着座する際にシートの表面を予め暖かくしておくことができる。
【特許文献1】実開平−42710公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、シートヒータは、通常、シートを暖めるためのメインヒータと、温度検出用の補助ヒータとを備えており、サーモスタット等の温度検出手段が補助ヒータの温度を検出し、メインヒータと共に通電された補助ヒータが一定の温度に到達すると、制御装置が補助ヒータ及びメインヒータに対する通電を遮断する。このような構成では、乗員がシートに着座しているか否かに関わらず、補助ヒータが一定の温度に達すると通電を遮断する。このため、乗員が着座している状態よりもシート表面からの放熱量が多い乗員が着座していない状態では、シート表面が充分に暖まる前にからのメインヒータに対する通電が遮断されてしまう。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、乗員がシートに着座する際に、充分にシートを暖めておくことができるシートヒータを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明に係るシートヒータは、通電されることで生じた熱でシートを暖めるメインヒータと、前記メインヒータと共に通電され、通電状態での抵抗で熱が生じる温度検出用ヒータと、前記温度検出用ヒータの温度又は前記温度検出用ヒータの近傍の温度を検出する温度検出手段を含めて構成され、前記温度検出手段の検出結果に基づく前記温度の値が、所定の温度に達した際に前記メインヒータに対する通電を遮断すると共に、前記シートに乗員が着座している状態よりも前記シートに乗員が着座していない状態で前記メインヒータに対する通電が遮断される際の前記メインヒータの温度を高く設定する制御手段と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るシートヒータでは、メインヒータが通電されると温度検出用ヒータも通電される。温度検出用ヒータは通電されることで抵抗熱が生じ、これにより加熱される。このように加熱された温度検出用ヒータは、温度検出手段により温度が検出される。温度検出用ヒータの温度が所定の温度に到達し、このときの温度検出用ヒータの温度を温度検出手段が検出すると、制御手段がメインヒータに対する通電を遮断する。これにより、シートが過剰に加熱されることを防止できる。
【0007】
一方で、本発明に係るシートヒータにおいては、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、制御手段によってメインヒータに対する通電が遮断される際のメインヒータの温度が高く設定される。このため、乗員がシートに着座していない状態でも、シートが充分に暖まる。
【0008】
なお、本発明において、シートに乗員が着座する前にメインヒータに対して通電するための構成や条件に関しては特に限定するものではない。したがって、例えば、乗車前の乗員がリモコン等によってシートヒータを遠隔操作してもよいし、また、ドアロックの解除やドアの開放、更には、プレ空調や駐車換気等、乗員が乗車するにあたり行なう動作の何れか1つを検出する構成であってもよい。
【0009】
また、乗員が乗車したか否かを検出及び判定するための構成や条件に関しては特に限定されるものではない。したがって、例えば、車両室内側に設けられたイグニッション装置の操作や、車両用空調装置を構成する車両室内に設けられた操作パネルの操作をシートに乗員が着座したと判定する条件としてもよいし、シートに乗員が着座した際の荷重をシートに設けられた荷重センサが検出することでシートに乗員が着座したと判定する構成としてもよい。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るシートヒータは、請求項1に記載の本発明において、予め設定された特定の1つの温度を前記温度検出手段が検出した際に前記制御手段が前記メインヒータに対する通電を遮断すると共に、前記シートに乗員が着座している状態よりも、前記シートに乗員が着座していない状態とで前記温度検出用ヒータの抵抗値を小さく設定することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係るシートヒータによれば、温度検出用ヒータの温度又は温度検出用ヒータの近傍の温度が、予め設定された1つの温度に到達し、この状態を温度検出手段が検出すると、制御手段によりメインヒータに対する通電が遮断される。ここで、本発明に係るシートヒータでは、シートに乗員が着座していない状態では、シートに乗員が着座している状態よりも、温度検出用ヒータの抵抗値が小さくなる。
【0012】
このため、シートに乗員が着座している状態とシートに乗員が着座していない状態とで温度検出用ヒータに流される電流値が同じであれば、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、温度検出用ヒータが上記の1つの温度に到達するまでの通電時間が長くなる。したがって、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、メインヒータが長時間通電される。このため、乗員がシートに着座していない状態でも、シートが充分に暖まる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係るシートヒータは、請求項2に記載の本発明において、前記シートに乗員が着座している状態で前記メインヒータが通電される際に前記メインヒータと共に通電される第1温度検出用ヒータと、前記シートに乗員が着座していない状態で前記メインヒータが通電される際に前記メインヒータと共に通電される前記第1温度検出用ヒータよりも抵抗値が小さな第2温度検出用ヒータと、を備えることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係るシートヒータによれば、シートに乗員が着座している状態では、メインヒータが通電される際に第1温度検出用ヒータが通電され、この第1温度検出用ヒータの温度又は第1温度検出用ヒータの近傍の温度が予め定められた1つの温度に到達したことを温度検出手段が検出すると、制御手段によりメインヒータに対する通電が遮断される。
【0015】
これに対し、シートに乗員が着座していない状態では、メインヒータが通電される際に第1温度検出用ヒータに代わって第1温度検出用ヒータが通電され、この第2温度検出用ヒータの温度又は第2温度検出用ヒータの近傍の温度が上記の温度に到達したことを温度検出手段が検出すると、制御手段によりメインヒータに対する通電が遮断される。
【0016】
ここで、第2温度検出用ヒータの抵抗値は第1温度検出用ヒータの抵抗値よりも小さい。このため、第1温度検出用ヒータと第2温度検出用ヒータシートの各々に流される電流値が同じであれば、第1温度検出用ヒータよりも第2温度検出用ヒータの方が上記の1つの温度に到達するまでの通電時間が長くなる。したがって、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、メインヒータが長時間通電される。このため、乗員がシートに着座していない状態でも、シートが充分に暖まる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係るシートヒータは、請求項1に記載の本発明において、前記シートに乗員が着座している状態よりも前記シートに乗員が着座している状態で、前記メインヒータに対する通電を遮断する条件となる前記温度検出用ヒータの温度又は前記温度検出用ヒータの近傍の温度を高く設定することを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係るシートヒータによれば、温度検出用ヒータの温度又は温度検出用ヒータの近傍の温度が、予め設定された1つの温度に到達し、この状態を温度検出手段が検出すると、制御手段によりメインヒータに対する通電が遮断される。ここで、本発明に係るシートヒータでは、シートに乗員が着座していない状態では、シートに乗員が着座している状態よりも、メインヒータに対する通電を遮断する条件となる温度検出用ヒータの温度又は温度検出用ヒータの近傍の温度が高く設定される。
【0019】
このため、シートに乗員が着座している状態とシートに乗員が着座していない状態とで温度検出用ヒータに流される電流値が同じであれば、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、メインヒータに対する通電を遮断する条件となる温度に温度検出用ヒータの温度又は温度検出用ヒータの近傍の温度が到達するまでの時間が長くなる。これにより、シートに乗員が着座している状態よりもシートに乗員が着座していない状態では、メインヒータが長時間通電される。このため、乗員がシートに着座していない状態でも、シートが充分に暖まる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るシートヒータでは、シートに乗員が着座していない状態でも、充分にシートを暖めることができる。
【0021】
請求項2に記載の本発明に係るシートヒータでは、シートに乗員が着座していない状態で温度検出用ヒータが予め設定された特定の1つの温度に到達するまでの温度検出用ヒータの通電時間が長くなり、これに伴い、メインヒータが長時間通電されるため、乗員がシートに着座していない状態でもシートが充分に暖まる。
【0022】
請求項3に記載の本発明に係るシートヒータでは、第1温度検出用ヒータよりも第2温度検出用ヒータが予め設定された特定の1つの温度に到達するまでの通電時間が長くなり、これに伴い、メインヒータが長時間通電されるため、乗員がシートに着座していない状態でもシートが充分に暖まる。
【0023】
請求項4に記載の本発明に係るシートヒータでは、シートに乗員が着座していない状態では、メインヒータに対する通電を遮断する条件となる温度に温度検出用ヒータの温度又は温度検出用ヒータの近傍の温度が到達するまでの時間が長くなり、これに伴いメインヒータが長時間通電されるため、乗員がシートに着座していない状態でも、シートが充分に暖まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るシートヒータ10の構成の概略が回路図により示されている。
【0025】
この図に示されるように、シートヒータ10はメインヒータ12を備えている。メインヒータ12は図示しない車両のシートを構成するシートクッションやシートバックの内部に埋設されている。メインヒータ12は一種の抵抗体を構成しており、通電されることで抵抗熱が発生し、この抵抗熱で周囲、すなわち、シートクッションやシートバックを加熱する。このメインヒータ12の一端は温度検出手段として制御手段を構成するサーモスタット14に電気的に接続されていると共に、他端はアースされている。サーモスタット14は膨張係数が異なる2種類以上の金属を接合した可動接点を含めて構成された一種のスイッチで、可動接点が加熱されて所定値以上の温度の熱を帯びると固定接点から離間し、通電を遮断する構成になっている。
【0026】
サーモスタット14のメインヒータ12とは反対側の接点には第1温度検出用ヒータとしてのヒータ16に接続されている。ヒータ16もまた基本的には上記のメインヒータ12と同様に抵抗体を構成しており、通電することで生じた抵抗熱で周囲を加熱する。上記のサーモスタット14はこのヒータ16の近傍に設けられており、ヒータ16が通電されることでサーモスタット14の可動接点は熱を帯びる。ヒータ16のサーモスタット14とは反対側の接点はスイッチ18に接続されている。
【0027】
スイッチ18は、車両の運転席近傍、例えば、インスツルメントパネルや運転席と助手席との間等に設けられており、運転席に着座した乗員により容易にスイッチ18の切り替え操作が可能となっている。スイッチ18のヒータ16とは反対側の端子は、常時開のN.O.リレー20の出力端子に接続されており、N.O.リレー20のスイッチ18とは反対側の入力端子はバッテリー22に接続されている。また、バッテリー22には常時開のN.O.リレー24の入力端子が接続されている。このN.O.リレー24の出力端子は上記のN.O.リレー20を構成するコイル26の一端に接続されている。コイル26の他端はN.C.リレー28を構成するコイル30の一端に接続されている。コイル30の他端はアースされている。
【0028】
上記のN.O.リレー24を構成するコイル32の一端はバッテリー22に接続されている。コイル32の他端はイグニッション装置34の入力端子に接続されている。出力端子がアースされたイグニッション装置34は、例えば、イグニッション装置34を構成するキーシリンダにイグニッションキーが挿し込まれ、エンジンが起動しないまでも、オーディオ装置や空調装置の起動が可能なACC位置(アクセサリ位置)までイグニッションキーが回転させられると、イグニッション装置34は通電状態となる。このように、イグニッション装置34が通電状態となることでコイル32が通電され、N.O.リレー24が導通状態になる。
【0029】
一方、バッテリー22にはN.O.リレー36の入力端子に接続されている。N.O.リレー36の出力端子は上記のN.C.リレー28の入力端子に接続されている。N.C.リレー28の出力端子は、第2温度検出用ヒータとしてのヒータ38の一端に接続されている。ヒータ38はヒータ16と同様に抵抗体を構成しており、通電することで生じた抵抗熱で周囲を加熱する。ヒータ38はヒータ16と共にサーモスタット14の近傍に設けられ、その他端がサーモスタット14のメインヒータ12とは反対側の接点に接続されている。このため、サーモスタット14はヒータ16又はN.C.リレー28が通電されることで生じた熱により加熱される。
【0030】
また、バッテリー22にはN.O.リレー40の入力端子に接続されている。N.O.リレー40の出力端子はN.O.リレー36を構成するコイル42の一端に接続されている。コイル42の他端はアースされている。N.O.リレー40を構成するコイル44の一端はバッテリー22に接続されている。コイル44の他端は車載空調装置の一部を構成する駐車換気装置46の入力端子に接続されている。駐車換気装置46は、例えば、スマートエントリーシステム等、車両の外部から電波や赤外線等により車両のドアのロックを解除するための装置に連動したり、又は、タイマ設定によって起動する構成となっており、起動することで車載空調装置を換気モードで作動させ、車両室内を換気する。
【0031】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
本シートヒータ10では、車両の乗員がイグニッション装置34を構成するキーシリンダにイグニッションキーを挿し込み、イグニッションキーをACC位置やエンジン起動位置まで回転させると、N.O.リレー24のコイル32が通電され、N.O.リレー24の入力端子と出力端子とが導通状態になる。これによってN.O.リレー20のコイル26が通電されると、N.O.リレー20の入力端子と出力端子とが導通状態になる。この状態で、乗員がスイッチ18を閉切替操作(ON切替操作)すると、ヒータ16及びメインヒータ12が通電される。
【0033】
このように、メインヒータ12が通電されると、メインヒータ12が埋設されたシートのシートクッションやシートバックが、メインヒータ12にて生じた抵抗熱により暖められる。また、上記のようにメインヒータ12が通電されると、ヒータ16が共に通電される。ヒータ16もまた通電されることで抵抗熱が生じる。サーモスタット14の近傍にはヒータ16が設けられているため、ヒータ16の抵抗熱はサーモスタット14に付与され、サーモスタット14の温度が上昇する。
【0034】
サーモスタット14を構成する可動接点がヒータ16から付与された熱で所定の温度まで上昇すると、サーモスタット14を構成する固定接点から離間し、これにより、ヒータ16とメインヒータ12との間で通電が遮断される。これにより、メインヒータ12は概ね一定時間又は一定の温度になるまで通電され、メインヒータ12が埋設されたシートクッションやシートバックの表面温度が一定値以上上昇することがない。
【0035】
一方、車両に乗車しようとする乗員が車両の外部からリモコン等によって車両のドアロック状態を解除すると、これに連動して駐車換気装置46が起動する。これにより、上記のように、駐車換気装置46により車載空調装置を換気モードで作動させられ、車両室内が換気される。このように、駐車換気装置46が起動すると、コイル44が通電状態になるため、N.O.リレー40の入力端子と出力端子とが接続され、N.O.リレー40が導通状態になる。N.O.リレー40が導通状態になることでN.O.リレー36のコイル42が通電されるためN.O.リレー36の入力端子と出力端子とが接続されてN.O.リレー36が導通状態になる。
【0036】
N.O.リレー36の出力端子に接続されたN.C.リレー28は常時閉である。また、この状態ではイグニッション装置34を構成するキーシリンダにイグニッションキーを挿し込まれていないため、N.O.リレー24のコイル32が通電されないため、N.C.リレー28のコイル30が通電されない。このため、この状態では、N.C.リレー28が導通状態で維持されている。これにより、この状態では、ヒータ38が通電され、ひいては、メインヒータ12が通電される。上記のように、メインヒータ12が通電されると、メインヒータ12が埋設されたシートのシートクッションやシートバックが、メインヒータ12にて生じた抵抗熱により暖められる。
【0037】
また、この状態では、ヒータ38が通電されて、ヒータ38で生じた抵抗熱でサーモスタット14が暖められる。ヒータ16にて抵抗熱が生じた場合と同様に、ヒータ38により加熱されたサーモスタット14の可動接点が所定の温度に達すると、サーモスタット14を構成する固定接点から離間し、これにより、ヒータ16とメインヒータ12との間で通電が遮断される。これにより、メインヒータ12は概ね一定時間又は一定の温度になるまで通電され、メインヒータ12が埋設されたシートクッションやシートバックの表面温度が一定値以上上昇することがない。
【0038】
ここで、ヒータ38の固有抵抗値はヒータ16の固有抵抗値よりも小さいため、ヒータ38にて生じた抵抗熱でサーモスタット14が加熱されてサーモスタット14が一定の温度に達するまでの時間は、ヒータ16にて生じた抵抗熱でサーモスタット14が加熱されてサーモスタット14が一定の温度に達するまでの時間の時間よりも充分に長い。このため、ヒータ16が通電されている場合よりもヒータ38が通電されている場合の方がメインヒータ12の通電時間が長くなる。
【0039】
このため、この状態では、メインヒータ12が埋設されたシートのシートクッションやシートバックが長時間加熱される。これにより、この状態でシートに乗員が着座していないが故に、メインヒータ12から付与された熱の一部がシートの表面から放熱されたとしても、シートに乗員が着座する前にシートクッションやシートバックを充分に暖めておくことができる。
【0040】
次いで、この状態から、乗員がシートに着座し、上記のように、イグニッション装置34を構成するキーシリンダにイグニッションキーが挿し込まれ、イグニッションキーがACC位置やエンジン起動位置まで回転させることでN.O.リレー24が導通状態になると、N.C.リレー28のコイル30が通電される。これによってN.C.リレー28の入力端子と出力端子との間が遮断され、ヒータ38の抵抗熱でサーモスタット14の可動接点が充分に加熱されていなくても(すなわち、サーモスタット14の温度が所定の値に到達していなくても)ヒータ38やメインヒータ12に対する通電が遮断される。
【0041】
なお、本実施の形態では、駐車換気装置46が起動された場合に、ヒータ38とメインヒータ12とを通電状態にする構成、すなわち、ヒータ38とメインヒータ12を通電状態にする条件が駐車換気装置46の起動であったが、ヒータ38とメインヒータ12とを通電状態にする条件が駐車換気装置46の起動に限定されるものではない。例えば、駐車換気装置46に代えて所謂プレ空調システムが起動することをヒータ38とメインヒータ12とを通電状態にする条件としてもよいし、リモコンによるドアロック解除をヒータ38とメインヒータ12とを通電状態にする条件としてもよい。
【0042】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0043】
図2には、前記第1の実施の形態に係るシートヒータ10の変形例である本発明の第2の実施の形態に係るシートヒータ60の構成の概略が回路図により示されている。
【0044】
この図に示されるように、本シートヒータ60はスイッチ18を備えておらず、ヒータ16のサーモスタット14とは反対側の端子とN.O.リレー20の出力端子とが直接接続されている。また、図2に示されるように、本シートヒータ60では、コイル30の出力端子にスイッチ18に代わるスイッチ62の一端が接続されている。このスイッチ62は基本的にスイッチ18と同様に、車両の運転席近傍、例えば、インスツルメントパネルや運転席と助手席との間等に設けられており、運転席に着座した乗員により容易にスイッチ62の切り替え操作が可能となっている。
【0045】
しかしながら、スイッチ18とは異なり、スイッチ62の他端はヒータ16に接続されておらずアースされている。また、前記第1の実施の形態に係るシートヒータ10とは異なり、本実施の形態では、N.O.リレー36を構成するコイル42の他端(N.O.リレー40の出力端子とは反対側の端部)が直接アースされておらず、スイッチ62の一端(N.C.リレー28のコイル30に接続された側の端子)に接続されている。
【0046】
<第2の実施の形態の作用、効果>
本シートヒータ60では、スイッチ62を閉切替操作したままの状態で降車した乗員が、車両の外部からリモコン等によって車両のドアロック状態を解除すると、これに連動して駐車換気装置46が起動すると、前記第1の実施の形態と同様に、メインヒータ12及びヒータ38が通電される。このため、基本的には前記第1の実施の形態と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。
【0047】
一方で、スイッチ62を開切替操作して乗員が降車した場合には、その後、乗員が、車両の外部からリモコン等によって車両のドアロック状態を解除させて駐車換気装置46を起動させても、N.O.リレー36のコイル42が通電されない。このため、N.O.リレー36が導通状態にならず、したがって、ヒータ38及びメインヒータ12が通電されない。
【0048】
すなわち、本実施の形態では、スイッチ62が閉状態になっていないと、乗員がシートに着座する前にメインヒータ12でシートのシートクッションやシートバックを暖めておくことができない。このため、例えば、夏季等においてシートを予め暖めておかなくてもよい場合には、降車する際にスイッチ62を開切替操作しておけばよい。このように、本実施の形態では、必要に応じて乗員がシートに着座する際に、予めシートを暖めておくモードとシートを暖めないモードとを選択することができる。
【0049】
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0050】
図3には本実施の形態に係るシートヒータ80の構成の概略が回路図により示されている。この図に示されるように、シートヒータ80は制御手段としてのECU82を備えている。ECU82は複数の入力端子と複数の出力端子を有する集積回路により構成されている。複数の入力端子のうちの1つには駐車換気装置46の出力端子が接続されており、駐車換気装置46からは動作状態に応じてLowレベルとHighレベルとの間で切り替わる駆動信号Ds(以下、駆動信号Dsを単に「信号Ds」と称する)が出力され、ECU82に入力される。また、ECU82の複数の出力端子のうちの1つには調節機能付きスイッチ84の一端に接続されている。
【0051】
調節機能付きスイッチ84は前記第1の実施の形態におけるスイッチ18に代わって設けられており、可変抵抗により構成されている。また、調節機能付きスイッチ84の他端はECU82の複数の入力端子のうちの1つに接続されており、シートヒータスイッチ信号Sw「以下、シートヒータスイッチ信号Swを単に「信号Sw」と称する)がECU82に入力される。
【0052】
さらに、ECU82の複数の出力端子のうちの1つには温度検出用ヒータとしてのヒータ86が接続されている。ヒータ86は前記第1の実施の形態におけるヒータ16やヒータ38と同様に抵抗体により構成されており、もまた基本的には上記のメインヒータ12と同様に抵抗体を構成しており通電されることで抵抗熱が生じる。ヒータ86の他端はメインヒータ12の一端に接続されており、更に、メインヒータ12の他端はECU82の複数の入力端子のうちの1つに接続され、ECU82を介してアースされている。
【0053】
一方、ECU82の複数の出力端子のうちの1つには温度検出手段としてのサーミスタ88の入力端子に接続されている。サーミスタ88は上記のヒータ86の近傍に配置されており、ヒータ86が通電されることにより生じた熱でヒータ86の近傍の温度が変化すると、この温度変化に応じてサーミスタ88は抵抗値が変化する。サーミスタ88の他端には抵抗90の一端が接続されている。この抵抗90の他端はECU82の複数の入力端子のうちの1つに接続されており、サーミスタ88の一端と抵抗90の他端との間の電圧が通常時温度検出信号S1(以下、通常時温度検出信号S1を単に「S1」と称する)としてECU82に入力される。
【0054】
また、サーミスタ88の他端には、抵抗90とは抵抗値が異なる抵抗92の一端が接続されている。この抵抗90の他端はECU82の複数の入力端子のうちの1つに接続されており、サーミスタ88の一端と抵抗90の他端との間の電圧が乗車前温度検出信号S2(以下、乗車前温度検出信号S2を単に「S2」と称する)としてECU82に入力される。ここで、上記のように、サーミスタ88と抵抗90とでは固有の抵抗値が異なるため、信号S1よりも信号S2の方が電圧は低い。
【0055】
また、図4に示されるように、ECU82は判定回路94を備えている。判定回路94は一対のAND回路96、98を備えている。AND回路96を構成する一対の入力端子の一方は、ECU82の複数の入力端子のうち、調節機能付きスイッチ84の他端が接続された入力端子に接続されており、信号Swが入力される。また、AND回路96を構成する一対の入力端子の他方は反転出力回路100の出力端子に接続されている。この反転出力回路100の入力端子は、ECU82の複数の入力端子のうち、抵抗90の他端が接続された入力端子に接続されており、反転出力回路100には信号S1が入力される。
【0056】
一方、AND回路98を構成する一対の入力端子の一方は、ECU82の複数の入力端子のうち、駐車換気装置46の出力端子が接続された入力端子に接続されており、信号Dsが入力される。また、AND回路98を構成する一対の入力端子の他方は反転出力回路102の出力端子に接続されている。この反転出力回路102の入力端子は、ECU82の複数の入力端子のうち、抵抗92の他端が接続された入力端子に接続されており、反転出力回路102には信号S2が入力される。
【0057】
これらのAND回路96、98の各出力端子は、OR回路104を構成する一対の入力端子に接続されている。このOR回路104の出力端子は電界効果トランジスタ106のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタ106のドレイン端子はバッテリー22に接続されており、電界効果トランジスタ106のソース端子はヒータ86はECU82の複数の出力端子のうち、ヒータ86の一端が接続された出力端子に接続されている。
【0058】
<第3の実施の形態の作用、効果>
以上のECU82を備えるシートヒータ80では、メインヒータ12を通電状態とするために車両の座席に着座した乗員が調節機能付きスイッチ84を操作すると、ECU82の複数の入力端子のうち、調節機能付きスイッチ84の他端に接続された入力端子に入力される信号SwがLowレベルからHighレベルに切り替わる。また、この状態では、まだヒータ86及びメインヒータ12が通電されていないため、ヒータ86の周囲の温度が上昇していない。このためサーミスタ88の一端と抵抗90の他端の間の電圧、及び、サーミスタ88の一端と抵抗92の他端の間の電圧、すなわち、信号S1、S2は何れもLowレベルのままである。
【0059】
Lowレベルの信号S1は反転出力回路100に入力されることで反転されるため、AND回路96に入力される信号S1はHighレベルとなる。信号Sw、S1の双方がHighレベルに切り替わることで、AND回路96から出力される電気信号(電圧)がLowレベルからHighレベルに切り替わり、更に、OR回路104から出力される電気信号(電圧)がLowレベルからHighレベルに切り替わる。OR回路104から出力されたHighレベルの電気信号がゲート端子に入力されることで、電界効果トランジスタ106はドレイン端子とソース端子との間を通電状態とし、これにより、ヒータ86及びメインヒータ12が通電される。
【0060】
また、このようにメインヒータ12が通電されることでシートを構成するシートクッションやシートバックの表面温度が上昇すると、これに伴い、ヒータ86の近傍の温度が上昇する。このヒータ86の近傍の温度の上昇に伴い、サーミスタ88の抵抗値が変化し、サーミスタ88の一端と抵抗90の他端の間の電圧値、及び、サーミスタ88の一端と抵抗92の他端の間の電圧値が上昇する。ヒータ86の近傍の温度が所定値まで上昇すると、サーミスタ88の一端と抵抗90の他端の間の電圧値、すなわち、信号S1はLowレベルからHighレベルに切り替わる。
【0061】
上記のように、信号S1は反転出力回路100に入力されることで反転されるため、AND回路96に入力される信号S1はHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、AND回路96から出力される信号がHighレベルからLowレベルに切り替わることで、OR回路104からから出力される信号がHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、電界効果トランジスタ106はドレイン端子とソース端子との間を通電、すなわち、ヒータ86及びメインヒータ12への通電が遮断される。
【0062】
一方、車両に乗車しようとする乗員が車両の外部からリモコン等によって車両のドアロック状態を解除することで駐車換気装置46が起動すると、ECU82の複数の入力端子のうち、駐車換気装置46の出力端子に接続された入力端子に入力される信号DsがLowレベルからHighレベルに切り替わる。また、この状態では、まだヒータ86及びメインヒータ12が通電されていないため、ヒータ86の周囲の温度が上昇していない。このためサーミスタ88の一端と抵抗90の他端の間の電圧、及び、サーミスタ88の一端と抵抗92の他端の間の電圧、すなわち、信号S1、S2は何れもLowレベルのままである。Lowレベルの信号S2は反転出力回路102に入力されることで反転されるため、AND回路98に入力される信号S1はHighレベルとなる。
【0063】
信号Sw、S2の双方がHighレベルに切り替わることで、AND回路98から出力される電気信号(電圧)がLowレベルからHighレベルに切り替わり、更に、OR回路104から出力される電気信号(電圧)がLowレベルからHighレベルに切り替わる。OR回路104から出力されたHighレベルの電気信号がゲート端子に入力されることで、電界効果トランジスタ106はドレイン端子とソース端子との間を通電状態とし、これにより、ヒータ86及びメインヒータ12が通電される。
【0064】
また、上記のように、ヒータ86が通電されることでヒータ86の近傍の温度が所定値まで上昇すると、サーミスタ88の一端と抵抗90の他端の間の電圧値、すなわち、信号S1はLowレベルからHighレベルに切り替わる。上記のように、信号S1は反転出力回路100に入力されることで反転出力されるため、AND回路96にはLowレベルの信号S1が入力される。しかしながら、この場合、そもそも信号SwはLowレベルであり、AND回路98から出力される信号がHighレベルであることでOR回路104から出力される信号がHighレベルになっている。このため、この場合、信号S1はLowレベルからHighレベルに切り替わることによる影響はない。
【0065】
また、サーミスタ88と抵抗90とでは固有の抵抗値が異なるため、信号S1がHighレベルとなる電圧値に到達しても、信号S2はHighレベルとなる電圧値に到達しない。したがって、この状態では、未だ、電界効果トランジスタ106のゲート端子に入力される電気信号はHighレベルの状態が維持され、ヒータ86及びメインヒータ12の通電状態が維持される。
【0066】
次いで、この状態から更にヒータ86の近傍の温度が所定値まで上昇することで、サーミスタ88の一端と抵抗92の他端の間の電圧値、すなわち、信号S2がLowレベルからHighレベルに切り替わると、AND回路98にはLowレベルの信号S2が入力される。これにより、AND回路98から出力される信号がHighレベルからLowレベルに切り替わり、更には、OR回路104から出力される信号がHighレベルからLowレベルに切り替わる。このように、OR回路104から出力されて電界効果トランジスタ106のゲート端子に入力される信号がHighレベルからLowレベルに切り替わることで、電界効果トランジスタ106のドレイン端子とソース端子との間の通電が遮断され、ヒータ86及びメインヒータ12の通電が遮断される。
【0067】
このように、本実施の形態は、前記第1の実施の形態とは構成が異なるものの、シートに乗員が着座した状態でメインヒータ12を通電した場合よりも、シートに乗員が着座する前にメインヒータ12を通電した場合の方が通電時間を長くできるため、シートに乗員が着座していないが故に、メインヒータ12から付与された熱の一部がシートの表面から放熱されたとしても、シートに乗員が着座する前にシートクッションやシートバックを充分に暖めておくことができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、図3や図4に示されるような回路を用いたが、図3や図4に示される回路図は、本実施の形態の作用、効果を理解しやすくするために簡素に示したものである。したがって、本発明が図3や図4に示される回路に限定されるものではなく、他の構成の回路を用いてもよいし、回路と同等のソフトで処理してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシートヒータの構成の概略を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るシートヒータの構成の概略を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るシートヒータの構成の概略を示す回路図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係るシートヒータの構成の一部である判定回路の概略を示す回路図である。
【符号の説明】
【0070】
10 シートヒータ
12 メインヒータ
14 サーモスタット(温度検出手段、制御手段)
16 ヒータ(第1温度検出用ヒータ、温度検出用ヒータ)
38 ヒータ(第2温度検出用ヒータ、温度検出用ヒータ)
60 シートヒータ
80 シートヒータ
82 ECU(制御手段)
86 ヒータ(温度検出用ヒータ)
88 サーミスタ(温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電されることで生じた熱でシートを暖めるメインヒータと、
前記メインヒータと共に通電され、通電状態での抵抗で熱が生じる温度検出用ヒータと、
前記温度検出用ヒータの温度又は前記温度検出用ヒータの近傍の温度を検出する温度検出手段を含めて構成され、前記温度検出手段の検出結果に基づく前記温度の値が、所定の温度に達した際に前記メインヒータに対する通電を遮断すると共に、前記シートに乗員が着座している状態よりも前記シートに乗員が着座していない状態で前記メインヒータに対する通電が遮断される際の前記メインヒータの温度を高く設定する制御手段と、
を備えるシートヒータ。
【請求項2】
予め設定された特定の1つの温度を前記温度検出手段が検出した際に前記制御手段が前記メインヒータに対する通電を遮断すると共に、前記シートに乗員が着座している状態よりも、前記シートに乗員が着座していない状態とで前記温度検出用ヒータの抵抗値を小さく設定することを特徴とする請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記シートに乗員が着座している状態で前記メインヒータが通電される際に前記メインヒータと共に通電される第1温度検出用ヒータと、
前記シートに乗員が着座していない状態で前記メインヒータが通電される際に前記メインヒータと共に通電される前記第1温度検出用ヒータよりも抵抗値が小さな第2温度検出用ヒータと、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
前記シートに乗員が着座している状態よりも前記シートに乗員が着座している状態で、前記メインヒータに対する通電を遮断する条件となる前記温度検出用ヒータの温度又は前記温度検出用ヒータの近傍の温度を高く設定することを特徴とする請求項1に記載のシートヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−275254(P2007−275254A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104462(P2006−104462)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】