説明

シートベルトウェビング用処理剤

【課題】 平滑性および耐磨耗性に優れたシートベルトウェビングの処理剤、および、その処理方法を提供する。
【解決手段】 数平均分子量2,000〜12,000のポリエーテルポリエステル化合物(A)、及び−30℃で液状で数平均分子量500〜3,000の炭化水素系合成オイル(B)を必須成分とし、かつ該ポリエーテルポリエステル化合物(A)/該炭化水素系合成オイル(B)の含有重量比率が95/5〜30/70であることを特徴とするシートベルトウェビング用処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトウェビングを処理する処理剤に関する。更に詳しくは、シートベルトウェビングに処理することによって、そのウェビングの平滑性と耐磨耗性を向上させるための処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートベルトに使用されるウェビングは、巻き取り装置の引き出しや格納を円滑にするためや、経年使用によってガイドや巻き取り装置との磨耗によるウェビングの平滑性の劣化や、巻き取り不良が発生することを防止するため、処理剤で処理されている。
これらの処理剤としては、ポリエーテルポリエステル化合物及びシリコーン系化合物の併用が知られている(例えば特許文献1)。
しかしながら、これらの処理剤では、シリコーン系化合物が導電性でないため、シートベルトに各種センサーを取り付けた時に通電不良を起こしたり、シリコーン系化合物の耐摩耗性が劣るため経年使用時に平滑性が低下したり、さらにシリコーン系化合物の生分解性が悪いため環境上好ましくないとの問題点を有する。
【特許文献1】特開平10−88484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主な目的は、シートベルトに各種センサーを取り付けた時に通電不良がなく、経年使用時の平滑性の低下せず、特にシートベルト原糸付与剤として好適な平滑性処理剤であって、しかも耐摩耗性に優れ、さらに、−30℃の極低温下でも良好な平滑性を発揮するシートベルトウェビングの処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、特定の化学構造を有するポリエーテルポリエステル化合物と炭化水素系合成オイルを組み合わせることにより本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記の数平均分子量2,000〜12,000のポリエーテルポリエステル化合物(A)、及び−30℃で液状で数平均分子量500〜3,000の炭化水素系合成オイル(B)を必須成分とし、かつ該ポリエーテルポリエステル化合物(A)/該炭化水素系合成オイル(B)の重量比率が95/5〜30/70であることを特徴とするシートベルトウェビング用処理剤である。ただし、このポリエーテルポリエステル化合物(A)は、二塩基酸(b)の両末端がポリエーテルジオール化合物(a)によってエステル化され、さらにその両末端の水酸基が一価脂肪酸(c)によってエステル化されてなる両末端が封鎖されてなるポリエーテルポリエステルである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、特定のポリエーテルポリエステル化合物(A)と−30℃で液状の炭化水素系合成オイル(B)を組み合わせることで、室温並びに−30℃の極低温下でもシートベルトウェビングに良好な平滑性と耐磨耗性を付与でき、さらにシリコーン系化合物を使用した時に起こる各種センサーに対する通電不良や生分解性が悪い等の問題点も有しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、数平均分子量2,000〜12,000で、特定の化学構造のポリエーテルポリエステル化合物(A)、及び−30℃で液状で数平均分子量500〜3,000の炭化水素系合成オイル(B)を必須成分とし、かつこのポリエーテルポリエステル化合物(A)と合成オイル(B)の重量比率が95/5〜30/70である。そして、このポリエーテルポリエステル化合物(A)は、二塩基酸(b)の両末端がポリエーテルジオール化合物(a)によってエステル化され、さらにその両末端の水酸基が一価脂肪酸(c)によってエステル化されてなる両末端が封鎖された化学構造のポリエーテルポリエステルである。
【0007】
本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A)は、両末端が水酸基のポリエーテルジオール化合物(a)と、両末端カルボキシル基の二塩基酸(b)と、一価脂肪酸(c)からのエステル化合物であり、その数平均分子量は、滑り性や耐久性の観点から、2,000〜15,000であり、より好ましくは3,000〜10,000であり、さらに好ましくは3,000〜8,000であることを要する。数平均分子量が2,000未満の場合には、油膜の強さが不十分となり摩耗後の平滑性が悪くなる。また、数平均分子量が15,000を超える場合には平滑性が悪くなり所望の効果が得られない。
なお、本発明でいう数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)等で測定される数平均分子量である。
【0008】
本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A)としては、二塩基酸(b)の両末端が、後述のポリエーテルジオール化合物(a)によってエステル化され、さらにその両末端の水酸基が一価脂肪酸(c)によってさらにエステル化されてなる、両末端が封鎖されているポリエーテルポリエステルである。
【0009】
原料のポリエーテルジオール化合物(a)としては、数平均分子量が600〜5,000であることが好ましく、さらに好ましくは800〜4,000である。数平均分子量が600未満の場合には、油膜の強さが不十分となり平滑性が悪くなる。また、数平均分子量が5,000を超える場合には、摩擦が高くなりすぎ平滑性が悪くなる。
このポリエーテルジオール化合物(a)は、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドやテトラヒドロフランの重合物、またはこれらの共重合物や、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランとの共重合物が挙げられ、なかでもテトラヒドロフランを含む共重合体が好ましい。
【0010】
ポリエーテルポリエステル化合物(A)を構成する二塩基酸(b)成分としては、分子内に2個のカルボキシル基を有する二塩基酸であれば特に限定されないが、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、、チオジプロピオン酸などが挙げられ、好ましくは、アジピン酸、セバチン酸などの直鎖脂肪族ジカルボン酸である。
なお、これらの二塩基酸成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0011】
さらに、ポリエーテルポリエステル化合物を構成する、一価脂肪酸(c)は、分子内に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸であれば特に限定されないが、例えば、以下のような一価脂肪酸があげられる。
(c1)直鎖脂肪族一価脂肪酸
(c1−1)炭素数1〜30の飽和直鎖脂肪族1価脂肪酸
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ぺラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等。
(c1−2)炭素数3〜30の不飽和直鎖脂肪族1価脂肪酸
アクリル酸、メタクリル酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルシン酸等。
【0012】
(c2)分岐脂肪族1価脂肪酸
(c2−1)炭素数4〜40の飽和分岐脂肪族1価脂肪酸
α−メチル酪酸、α,β−ジメチル吉草酸、2−メチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸等。
(c2−2)炭素数4〜40の不飽和分岐脂肪族1価脂肪酸
3−メチル−5−ヘキセン−1−オン酸等。
【0013】
(c3)炭素数7〜40の芳香族1価脂肪酸
フェニル酢酸、安息香酸、γ−フェニル酪酸、o−トルイル酸、3−フェニルプロパン酸、p−メトキシ安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸、サリチル酸、p−オキシ安息香酸、マンデル酸等。
【0014】
(c4)その他の1価脂肪酸
炭素数2〜32の脂肪族オキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、オキシカプロン酸、リシノール酸、オキシステアリン酸、グルコン酸等)、炭素数7〜32の環状1価脂肪酸(シクロヘキサンカルボン酸等)、炭素数7〜40の複素環1価脂肪酸(ピロリドンカルボン酸等)、その他の置換1価脂肪酸(2−ブロモプロパン酸、p−ニトロ安息香酸、γ−クロロ−α−メチル酪酸、p−ブロモ安息香酸)等。
【0015】
これらのうち好ましいのは脂肪族1価脂肪酸であり、さらに好ましいのは炭素数10〜22の脂肪族一価脂肪酸であり、より好ましいのはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸であり、最も好ましいのは、ステアリン酸、イソステアリン酸およびオレイン酸である。
なお(c)は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0016】
ポリエーテルジオール化合物(a)、二塩基酸(b)および1価脂肪酸(c)を反応させて得られるポリエーテルポリエステル化合物(A)を得るための方法は、公知の方法が適用できる。 例えば、
(1)触媒の存在下、ポリエーテルジオール化合物(a)と二塩基酸(b)、または(b)の代わりに(b)の低級アルコールエステルを用いて、直接エステル化反応またはエステル交換反応を行い、引き続いてさらに1価脂肪酸(c)でこのエステル化反応物の水酸基末端を、エステル化する方法や、
(2)(a)と(b)[または(b)の低級アルコールエステル]、および(c)を同時に反応させてエステル化する方法等で製造することができる。
【0017】
本発明における(A)において(a)と(b)との反応モル比は特に限定されないが、(a)/(b)は、通常5〜1であり、好ましくは、3〜1.2である。
また、(b)と(c)との反応モル比も特に限定されないが、(b)/(c)は、通常5〜0.4であり、好ましくは2.5〜0.5である。(a)と(b)の反応モル比が上記の範囲であると、(a)と(b)から得られるエステル化反応物に水酸基末端が存在することになり、さらに、(b)と(c)、それぞれの反応モル比がこの範囲であると、前記(a)と(b)から得られるエステル化反応物の水酸基末端に(c)がエステル化されることになるため、平滑性と耐磨耗性に優れたポリエーテルポリエステル化合物(A)を得ることができる。
【0018】
ポリエーテルポリエステル化合物(A)は、使用するポリエーテルジオール化合物(a)の分子量、および、(a)と(b)との反応モル比によって、種々の粘度を有するものができる。通常、(A)の25℃における粘度は、1Pa・s以上、好ましくは1.5〜100Pa・sである。(A)の粘度がこの範囲内にあると、平滑性および耐磨耗性に優れる。
【0019】
また、ポリエーテルポリエステル化合物(A)は、使用するポリエーテルジオール化合物(a)の数平均分子量、および、(a)と(b)との反応モル比によるが、通常、数平均分子量は、2,000〜12,000である。数平均分子量が2,000未満では、耐磨耗性が不十分であり、12,000を超えると、ウェビングの滑り性が悪くなる。
【0020】
本発明におけるポリエーテルポリエステル化合物(A)の構造は、一般的な好ましい代表組成として、下記一般式(1)で表すことができる。
1−(Q−R2n−Q−X (1)
[式中、Qはポリエーテルジオール成分の残基、R1は1価脂肪酸の残基、R2は二塩基酸の残基、Xは水素原子または1価脂肪酸残基(R1)を表す。nは1〜100の整数を表す。]
【0021】
Qは、ポリエーテルジオール成分の残基を表し、具体的には、下記一般式(2)で示されるようなジオールの2価の残基である。
−O−[(CH2CH2CH2CH2O)a−(AO)b]− (2)
[式中、aおよびbは1〜1000の整数である。AOはオキシアルキレン基またはネオペンチルグリコール残基であり、オキシテトラメチレン基とAOは、ランダム共重合でもブロック共重合でもかまわない。またAOは異なる化学構造のものが2種以上含まれていてもよい。]
【0022】
1は、具体的には、下記一般式(3)で示される1価の脂肪酸の残基であり、R2は、具体的には、下記一般式(4)で示される2価の二塩基酸残基である。
R−COO− (3)
−OOC−R'3−COO− (4)
[式中、Rは1価のアルキル基またはアルケニル基、アリール基等であり、R'3は、2価のアルキル基またはアルケニル基、アリール基等を示す。
【0023】
ポリエーテルポリエステル化合物(A)の具体的な例としては、以下のような化合物があげられる。
(1)ポリエーテルジオール化合物分(a)として、THF/EOランダム共重合体(THF/EOのモル比=2.5〜0.4、分子量=800〜10,000)、二塩基酸(b)として直鎖脂肪族ジカルボン酸、一価脂肪酸(c)として脂肪族モノカルボン酸を使用して合成されたポリエーテルポリエステル化合物(例えば、THF/EOモル比=1.0で分子量2,000のランダム共重合体ジオールをアジピン酸と反応させた後、さらにラウリン酸を反応させて得られるポリエーテルポリエステル等)等。
(2)ポリエーテルジオール化合物(a)として、THF/POランダム共重合体(THF/POのモル比=3.5〜0.3、分子量=600〜10,000)、二塩基酸(b)として分岐脂肪族ジカルボン酸、モノカルボン酸(c)として脂肪族モノカルボン酸を使用して合成されたポリエーテルポリエステル化合物(例えば、THF/POモル比=2.0で分子量5,000のランダム共重合体ジオールと3,3−ジメチルペンタン二酸、イソステアリン酸を同時に反応させて得られるポリエーテルポリエステル等)等。
(3)ポリエーテルジオール化合物(a)として、THF/EO/POランダム共重合体[THF/(EO+PO)のモル比=3.0〜0.4(EO/POのモル比=1.0)分子量=600〜10,000]、二塩基酸(b)として直鎖脂肪族ジカルボン酸、一価脂肪酸(c)として脂肪族モノカルボン酸を使用して合成されたポリエーテルポリエステル化合物[例えば、THF/(EO+PO)モル比=1.5(EO/POのモル比=1.0)で分子量4,000のランダム共重合体ジオールをマレイン酸と反応させた後、イソステアリン酸をさらに反応させて得られるポリエーテルポリエステル等]等。
【0024】
本発明の必須成分である−30℃で液状の炭化水素系合成オイル(B)としては、数平均分子量が500〜3,000のα−オレフィンオリゴマー、エチレン・α−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。数平均分子量は、好ましくは、1,000 〜 3,000、さらに好ましくは 1,000 〜2,500である。500未満では油膜の強さが不十分となり平滑性が悪くなり、3,000を超えると摩擦が高くなりすぎ平滑性が悪くなる。
なお、−30℃で液状の炭化水素系合成オイル(B)の代わりに、鉱物油を本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A)と組み合わせた場合は、油膜の強さが不十分となり平滑性が悪くなり、また、シリコーン系オイルを本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A)と組み合わせた場合は、シートベルトに各種センサーを取り付けた時に通電不良を起こしたり、シリコーン系オイルの耐摩耗性が劣るため経年使用時に平滑性が低下したりするので、本発明の炭化水素系合成オイル(B)との組み合わせが必須となる。
【0025】
本発明の耐磨耗性向上処理剤を構成するポリエーテルポリエステル化合物(A)と−30℃で液状の炭化水素系合成オイル(B)の比率は、好ましくは、重量比で(A)/(B)が95/5〜30/70であり、さらに好ましくは、80/20〜35/65、最も好ましくは70/30〜40/60である。
(A)/(B)が95/5より大きいと、−30℃(極低温下)での平滑性が悪くなり、(A)/(B)が30/70より小さいと、油膜の強さが不十分となり平滑性が悪くなる。
【0026】
本発明の処理方法は、(A)と(B)でシートベルトウェビングを同時に処理することに特徴があり、実際にシートベルトウェビングを処理する装置、処理の条件は限定されないが、例えば、
染色後のシートベルトウェビングを、(A)および(B)を同時に含む処理浴でパディング法によって処理するといった方法がある。
処理浴の処理剤濃度は、処理剤全体の有効濃度として、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜9重量%であることがより好ましく、0.5〜8重量%であることが最も好ましい。また、本発明の処理剤の処理後に、ウェビングを40〜220℃で乾燥させる工程を通過させることが好ましく、50〜210℃で乾燥させることがより好ましい。
【0027】
(A)と(B)は、エマルションとして水に乳化あるいは分散させて処理することが好ましい。乳化あるいは分散の方法は限定されず、公知の方法が適用できる。例えば、必要量の水を攪拌しながら、(A)と(B)を同時に投入し乳化するといった方法が使用できる。乳化温度は、通常5〜60℃である。
【0028】
本発明の処理剤による処理方法において、性能を妨げない範囲内で、(A)と(B)以外の公知の第3成分(C)を使用してもよい。(C)を使用する場合には、同浴で同時に処理してもよいが、物理的に2つ以上の浴を分け、(A)と(B)だけで処理した後に、あらためて第3成分(C)で再処理してもよい。
【0029】
その他の成分(C)としては、以下のような成分があげられる。
平滑剤{(ア)〜(エ)}、乳化剤{(オ)〜(キ)}、制電剤{(ク)、(ケ)}、酸化防止剤{(コ)、(サ)}、紫外線吸収剤{(シ)、(ス)}、PH調整剤{(セ)、(ソ)}等。なお、これらは2種以上を併用して使用しても良い。また、これら(C)の含有量は、油剤の全重量に基づいて、通常0又は0.001〜39.8重量%、好ましくは0又は0.01〜30重量%、さらに好ましくは0又は0.1〜25重量%である。
(ア)〜(ツ)の具体的な例を以下に示す。
【0030】
(ア)鉱物油(例えば、25℃における動粘度が0.5〜500cStである精製スピンドル油及び流動パラフィン等)。
(イ)動植物油(例えば、牛脂、マッコウ鯨油、ヤシ油及びヒマシ油等)。
(ウ)炭素数8〜32の脂肪酸と炭素数4〜32のアルコールからなる合成脂肪酸エステル(例えば、イソステアリルラウレート、オレイルオレエート及びジオレイルアジペート等)。
【0031】
(エ)炭素数4〜32の高級アルコールのアルキレンオキサイド(AO)1〜10モル付加物と炭素数8〜32の脂肪酸とからなるアルキルエーテルエステル(例えば、ラウリルアルコールのEO3モル付加物ラウレート、イソステアリルアルコールのEO5モル付加物アジペート等)。
(オ)炭素数1〜32の高級アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜100)[例えば、ブタノールのEO/POランダム付加物(分子量500〜10,000)、オクチルアルコールのEOおよび/またはPO付加物(分子量300〜10,000)、ステアリルアルコールのEOおよび/またはPO付加物(分子量500〜10,000)等]。
(カ)炭素数2〜6の多価アルコールと炭素数8〜32の脂肪酸とからなるエステルの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜100)(硬化ヒマシ油のEO20モル付加物、ソルビタントリオレエートのEO20モル付加物等)。
(キ)炭素数6〜32のアルキルアミン及びこれらの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数1〜40)(例えば、トリエチルアミン、ラウリルアミンのEO1モル付加物、ステアリルアミンのEO7モル付加物等)。
【0032】
(ク)炭素数8〜32の脂肪酸石鹸(対イオンは、例えばナトリウム、カリウム、アンモニア等)(例えば、オレイン酸カリウム石鹸、ヒマシ油ナトリウム石鹸等)。
(ケ)炭素数8〜32のイミダゾリン系添加剤化合物(例えば、ラウリルイミダゾリン、オレイルイミダゾリン等)。
(コ)ヒンダードフェノール系酸化防止剤{例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等 }
(サ)アミン系酸化防止剤[2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等]。
【0033】
(シ)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]。
(ス)ヒンダードアミン系紫外線吸収剤[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]。
【0034】
(セ)低級脂肪酸及びその誘導体(酢酸、乳酸等)。
(ソ)アンモニア;アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)。
これらのうち、好ましいものは(オ)、(カ)である。
【0035】
本発明の処理方法で処理されたシートベルトウェビングにおける、処理剤の付着量は特に限定されないが、ウェビング重量に対して0.01〜8重量%であることが好ましく、0.05〜7重量%であることがさらに好ましく、0.08〜6重量%であることが最も好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0037】
<ジオール成分(a−1)の合成>
撹拌羽根、温度計を備えた1リットルオートクレーブに、1,4−ブタンジオール45部、THF369部を仕込み、触媒として三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体5部を加え窒素置換後密閉する。冷却しながら40℃で2時間かけてEO82.5部を滴下し(THFとEOのモル比=75:25)、40℃で2時間重合させTHFとEOのランダム共重合体であるジオール成分(a−1)496部を得た。
(A−1)の分子量は1,000であった。
【0038】
<ポリエーテルポリエステル化合物(A−1)の合成>
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を備えた1リットルの四つ口コルベンに、前記のジオール成分(a−1)300部、二塩基酸としてアジピン酸(b−1)30.7部、1価脂肪酸としてオレイン酸(c−1)168.0部を仕込み[モル比(a−1):(b−1):(c−1)=1:0.7:2]、触媒としてパラトルエンスルホン酸1.5部を加え窒素気流下、150℃で12時間反応させ、本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A−1)を得た。(A−1)の数平均分子量は、3,500であった。
【0039】
<ジオール成分(a−2)の合成>
(a−1)の合成と同様にして、1,4−ブタンジオール22.5部、THF288部を仕込み、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体5部を加え、40℃で3時間かけてEO187部を滴下し(THFとEOのモル比=50:50)、40℃で3時間重合させTHFとEOのランダム共重合体であるジオール成分(a−2)497部を得た。(a−2)の数平均分子量は2,000であった。
【0040】
<ポリエーテルポリエステル化合物(A−2)の合成>
(A−1)の合成と同様にして、前記のジオール成分(a−2)400重量部、アジピン酸(b−1)14.6重量部、オレイン酸(c−1)112.0重量部を仕込み[モル比(a−2):(b−1):(c−1)=1:0.5:2]、触媒としてパラトルエンスルホン酸1.6重量部を加え窒素気流下、150℃で10時間反応させ、本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A−2)を得た。(A−2)の数平均分子量は、5,000であった。
【0041】
<ジオール成分(a−3)の合成>
(a−1)の合成と同様にして、1,4−ブタンジオール15部、THF159部を仕込み、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体4.9部を加え、40℃で4時間かけてEO313.5部を滴下し(THFとEOのモル比=25:75)、40℃で2時間重合させTHFとEOのランダム共重合体であるジオール成分(a−3)487部を得た。(a−3)の数平均分子量は3,000であった。
<ポリエーテルポリエステル化合物(A−3)の合成>
(A−1)の合成と同様にして、前記のジオール成分(a−3)400部、セバシン酸(b−2)13.5部、オレイン酸(c−1)37.4部を仕込み[モル比(a−3):(b−2):(c−1)=1:0.5:1]、触媒としてパラトルエンスルホン酸1.4部を加え窒素気流下、150℃で14時間反応させ、本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A−3)を得た。(A−3)の数平均分子量は、7,000であった。
【0042】
実施例1〜4
以上のようにして合成した本発明のポリエーテルポリエステル化合物(A−1)〜(A−3)を使って、表1に示す重量部で配合し、本発明の処理剤(実施例1〜4)、および、比較の処理剤(比較例5〜8)を作成した。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、表1における処理剤成分の各記号は下記に示す化合物を表すものである。
【0045】
(B−1):リポルーブ60[ライオン社製α−オレフィンオリゴマー]
(B−2):ルーカントHC−100[三井石油化学社製エチレン・αオレフィンオリゴマー]
(B’−1):ジメチルポリシロキサン(粘度350センチストークス)
(B’−2):ジメチルポリシロキサン(粘度1,000センチストークス)
(C−1):ラウリルアルコールPO・EOブロック付加物
(分子量1,500)PO/EO=60/40(重量比)
(C−2):ステアリルアルコールPO/EOランダム付加物
(分子量2,000)PO/EO=50/50(重量比))
【0046】
各々の実施例および比較例は、以下の方法でシートベルトウェビングに処理を行った。
<シートベルトウェビングの処理方法>
各実施例および比較例の処理剤を配合し、所定量の水を攪拌しながら徐々に処理剤を投入し、有効成分濃度2%エマルションとし、ポリエステル繊維製のシートベルトウェビング(黒染色済)に、パディング法にて処理剤を浸漬処理(絞り率50%)した。浸漬後、160℃で3分間乾燥させ、各処理剤が1%付着した処理済みウェビングを得た。
【0047】
本発明の実施例の処理剤1〜4、および比較例の処理剤5〜8について、平滑性、耐磨耗性をそれぞれ以下の方法で測定した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
<平滑性の評価方法>
処理済みのシートベルトウェビング(長さ1m)の一端に、600gの荷重をセットし、その中間部分に車両用スルーを通し、スルーと角度20°で接触させ、荷重をセットした端と反対側の端にロードセル(10kgf)をセットする。ロードセルを200mm/分の割合で移動させ、荷重を引き上げる際の張力(F1)および荷重を元に戻す際の張力(F2)を測定した。
平滑性(%)は、下記数式(1)から算出する。値が大きいほど、平滑性に優れる。
【0050】
【数1】

【0051】
<−30℃平滑性の評価方法>
処理済みのシートベルトウェビング(長さ1m)を−30℃の冷凍庫に1日放置した後、上記と同様の方法で測定する。
【0052】
<磨耗後の平滑生>
シートベルトウェビング(長さ1m)を、6ナイロン棒(直径15mm)を摩擦体として600gの荷重をかけて往復400回移動させ、ウェビング表面を磨耗させる。
磨耗後に上記と同様の方法で、平滑性を測定する。
数値が大きいほど、耐摩耗性に優れる。
【0053】
表2の評価結果から明らかなように、本発明の処理剤を用いて処理したシートベルトウェビングは、平滑性、耐磨耗性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の処理剤、および、該処理剤を用いた処理方法によるシートベルトウェビングは、平滑性、耐磨耗性が優れているため、経年においてもその巻き取り装置への格納性が劣化せず、良好な使用感を与えるシートベルト用耐磨耗性向上方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の数平均分子量2,000〜12,000のポリエーテルポリエステル化合物(A)、及び−30℃で液状で数平均分子量500〜3,000の炭化水素系合成オイル(B)を必須成分とし、かつ該ポリエーテルポリエステル化合物(A)/該炭化水素系合成オイル(B)の重量比率が95/5〜30/70であることを特徴とするシートベルトウェビング用処理剤。
ポリエーテルポリエステル化合物(A):二塩基酸(b)の両末端がポリエーテルジオール化合物(a)によってエステル化され、さらにその両末端の水酸基が一価脂肪酸(c)によってエステル化されてなる両末端が封鎖されてなるポリエーテルポリエステル
【請求項2】
該炭化水素系合成オイル(B)が、α−オレフィンの重合物、またはエチレンとα−オレフィンの共重合物である請求項1記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の処理剤が繊維重量に対して0.05〜5.0重量%繊維に付着していることを特徴とするートベルトウェビング。

【公開番号】特開2009−7695(P2009−7695A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169310(P2007−169310)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】