説明

シートベルトウェビング用処理剤

【課題】 −30℃程度の低温下でも良好な平滑性を発揮し、かつ長期間繰返し使用した後でも、高温(80℃)下又は光照射下で使用した後でも平滑性の低下が少ないシートベルトウェビング用処理剤を提供する。
【解決手段】 −30℃での粘度が35〜100,000mPa・sである炭化水素系合成オイル(A)を必須成分とするシートベルトウェビング用処理剤であって、(A)が、炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するポリ−α−オレフィン又はエチレンと炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するエチレン/α−オレフィン共重合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトウェビング用処理剤に関する。更に詳しくは、炭化水素系合成オイルを含有してなるシートベルトウェビング用処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルトウェビングは、巻き取り装置からの引き出しや格納を円滑にするため、またシートベルトを長期間使用すると、シートベルトのガイドや巻き取り装置との摩耗によりシートベルトウェビングの平滑性が低下し、巻き取り不良が発生することを防止するため、各種の処理剤で処理されている。これらの処理剤としては、ウレタンプレポリマーブロック化合物を含むコーティング処理剤(特許文献1)、ポリエーテルポリエステル化合物系処理剤(特許文献2)、及び高級脂肪酸の分岐アルコールエステルと非イオン活性剤からなる組成物を主成分とする処理剤(特許文献3)等が提案されている。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の処理剤は、長期間シートベルトを使用することによって樹脂の脱落が起こり、シートベルトの平滑性及び格納性が低下しやすく、前記特許文献2の処理剤は、樹脂の脱落等は起こらず、常温での平滑性及び耐摩耗性は一応満足できるものであったが、冬季の気温が−30℃程度になる極寒地では平滑性が低下するという問題があった。また、前記特許文献3の処理剤は、平滑性及び耐摩耗性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−66948号公報
【特許文献2】特開平10−88484号公報
【特許文献3】特開平2−175966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、−30℃程度の低温下でも良好な平滑性を発揮し、かつ長期間繰返し使用した後でも、高温(80℃)下又は光照射下で使用した後でも平滑性の低下が少ないシートベルトウェビング用処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、−30℃での粘度が35〜100,000mPa・sである炭化水素系合成オイル(A)を必須成分とするシートベルトウェビング用処理剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、以下の効果を奏する。
・常温での平滑性に優れる。
・低温(−30℃)での平滑性に優れる。
・長期間繰返し使用した後の平滑性の低下が少なく、耐摩耗性に優れる。
・高温(80℃)下でも平滑性の低下が少なく、耐熱性に優れる。
・光照射に対して安定であり、耐光性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、−30℃での粘度が35〜100,000mPa・sである炭化水素系合成オイル(A)を必須成分とする。(A)の−30℃での粘度は、好ましくは100〜50,000mPa・sであり、更に好ましくは200〜10,000mPa・sであり、特に好ましくは500〜8,500mPa・sである。(A)の−30℃での粘度が35〜100,000mPa・sであれば、油膜強さが十分であり、かつ摩擦が高くなりすぎることがなく、常温及び低温での平滑性、耐熱性並びに耐光性が優れる。
【0009】
(A)の−30℃での粘度は、以下の方法で測定することができる。
<(A)の−30℃での粘度の測定方法>
内径約22mm、全長約115mmのガラス製円筒試験管に、測定試料を試験管上部から30mmの位置まで加え、−30℃に設定した液浴低温恒温槽「BFV−L型」[吉田科学器械(株)製]で6時間温調し、デジタルB型粘度計「DVL−B型」[東京計器(株)製]で1分後の粘度の値を読み取る。同じ試料で2回測定し、その平均値を−30℃での粘度とする。
【0010】
炭化水素系合成オイル(A)としては、炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するポリ−α−オレフィン、及びエチレンと炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するエチレン/α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0011】
α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセン、1−ドコセン及び1−テトラコセン等が挙げられる。これらのうち、低温での平滑性、耐熱性及び耐光性の観点から、好ましくは炭素数6〜18のα−オレフィンであり、更に好ましくは炭素数8〜12のα−オレフィン、特に好ましくは、1−デセンである。
なお、炭素数3〜24のα−オレフィンは、ポリ−α−オレフィン又はエチレン/α−オレフィン共重合体の構成単量体として、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果に影響を与えない範囲で、エチレン及び炭素数3〜24のα−オレフィン以外の単量体を構成単位として含んでもよい。
【0012】
ポリ−α−オレフィン及びエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法については特に制限はなく、通常の方法(例えば特開平1−163136号公報、特開昭61−221207号公報等)で製造することができる。例えば、炭化水素系溶媒(ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、キシレン及びトルエン等)に、触媒(ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒及びチーグラー−ナッタ触媒等)及び単量体(エチレン及び/又は炭素数3〜24のα−オレフィン)を加えて重合し、次いで必要により残留触媒の除去、生成物の分留及び水素添加を行い製造する方法等が挙げられる。重合温度は、通常−50〜150℃であり、好ましくは−10〜100℃である。重合時の圧力は、通常0.15〜5MPaである。重合時間は、通常1分〜20時間である。
【0013】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、シリコーンオイル(B)を含有することができる。(B)を含有させると、シートベルトウェビングの低温及び高温での平滑性が更に向上して好ましい。
【0014】
本発明におけるシリコーンオイル(B)の−30℃での粘度は、低温及び高温での平滑性の観点から好ましくは35〜45,000mPa・sであり、更に好ましくは50〜20,000mPa・s、特に好ましくは80〜10,000mPa・s、最も好ましくは150〜8,000mPa・sである。
【0015】
シリコーンオイル(B)の含有量は、炭化水素系合成オイル(A)及びシリコーンオイル(B)の全重量に基づいて、好ましくは5〜50重量%であり、更に好ましくは10〜40重量%であり、特に好ましくは、15〜30重量%である。
(B)の含有量が5重量%以上であれば、低温での平滑性が良好となり、50重量%以下であれば耐磨耗性が良好となる。
【0016】
シリコーンオイル(B)としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン及びポリエステル変性シリコーン等が挙げられる。これらのうち、低温及び高温での平滑性の観点から好ましくはポリジメチルシロキサン及びアミノ変性シリコーンであり、更に好ましくはポリジメチルシロキサンである。
【0017】
ポリジメチルシロキサンの市販品としては、「KF−96−350CS」[−30℃での粘度=1,200mPa・s、信越化学工業(株)製]、「KF−96−1000CS」[−30℃での粘度=4,000mPa・s、信越化学工業(株)製]、及び「KF−96−10000CS」[−30℃での粘度=40,000mPa・s、信越化学工業(株)製]等が挙げられる。
アミノ変性シリコーンの市販品としては、「KF−865」[−30℃での粘度=350mPa・s、信越化学工業(株)製]等が挙げられる。
【0018】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤は、水性分散体として使用する場合、更に非イオン性界面活性剤(C)を含有することが好ましい。
非イオン性界面活性剤(C)の含有量は、炭化水素系合成オイル(A)及び非イオン性界面活性剤(C)の全重量に基づいて、乳化性の観点から好ましくは1〜70重量%であり、更に好ましくは20〜65重量%であり、特に好ましくは40〜60重量%である。
【0019】
非イオン性界面活性剤(C)としては、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物(以下、アルキレンオキサイドをAOと略記する。)、脂肪族アルコールのAO付加物、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、及びアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、前記(A)及び(B)の乳化性の観点から、好ましくは多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物、脂肪族アルコールのAO付加物及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルであり、更に好ましくは多価アルコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物である。AOとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)及びブチレンオキサイド等が挙げられる。AOは、1種又は2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加(チップ型、バランス型及び活性セカンダリー型等)でもランダム付加でもよい。
【0020】
多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノオレアート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレアート及びショ糖モノステアレート等が挙げられる。
【0021】
多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物の具体例としては、トリメチロールプロパンモノステアレートEO/POランダム付加物、ソルビタンモノラウレートEO付加物、ソルビタンモノステアレートEO付加物、ソルビタンジステアレートEO付加物及びソルビタンジラウレートEO/POランダム付加物等が挙げられる。AOの付加モル数は、好ましくは1〜60モルであり、更に好ましくは10〜50モルである。
【0022】
本発明の処理剤は、性能を妨げない範囲内で、(A)、(B)及び(C)以外の公知のその他の成分(D)を含有してもよい。
【0023】
その他の成分(D)としては、平滑剤、制電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及びPH調整剤等が挙げられる。
【0024】
平滑剤としては、例えば、脂肪族一価又は多価アルコールと一塩基酸からなるエステル化合物(2−エチルヘキシルステアレート及びトリメチロールプロパントリラウレート等)、ポリアルキレングリコールと二塩基酸及び一塩基酸からなるポリエーテルポリエステル化合物、動植物油(牛脂、ヤシ油及びヒマシ油等)等が挙げられる。
【0025】
制電剤としては、アニオン性界面活性剤(ラウリルリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びラウリルスルホサクシネートナトリウム等)、カチオン性界面活性剤(ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及び塩化ベンザルコニウム等)及び両性界面活性剤(ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジメチルベタイン及び2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)等が挙げられる。
【0026】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤{トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等}、及びアミン系酸化防止剤[2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等]等が挙げられる。
【0027】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]等が挙げられる。
【0028】
PH調整剤としては、低級脂肪酸(酢酸及び乳酸等)、アンモニア及びアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等)等が挙げられる。
【0029】
前記(D)の含有量は、処理剤の固形分100重量%のうち、通常0〜30重量%であり、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%である。なお、本発明において「固形分」とは、後述の水性媒体以外の成分をいう。
【0030】
前記(D)は、前記のように処理剤中に含有してもよいが、後述のように処理工程において2つ以上の処理浴に分けて、(A)を含む処理剤で処理した後に、その他の成分(D)を含む処理浴で再処理してもよい。
【0031】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤の使用形態としては、(A)等を含有してなる処理剤そのもの、又は更に水性媒体を含有する水性分散体のいずれであってもよいが、作業性の観点から、好ましいのは水性分散体である。
【0032】
水性分散体である場合の水性媒体としては、水、親水性有機媒体及びこれらの混合媒体が挙げられる。親水性有機媒体としては、アルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)及びカルボン酸エステル(酢酸エチル等)が挙げられる。混合媒体の場合の水の含有量は、混合媒体の全重量に基づいて80重量%以上が好ましい。
【0033】
本発明の処理剤が、(A)、(B)、(C)及び(D)からなる場合の製造方法としては、(A)、(B)、(C)及び(D)を、撹拌器を備えた混合槽に順不同で投入し、均一になるまで撹拌する方法が挙げられる。
【0034】
本発明の処理剤が(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する水性分散体である場合の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1):(A)、(B)、(C)及び(D)の混合物を製造し、該混合物を水性媒体に分散する方法。
(2):(A)、(C)及び(D)の混合物と、(B)、(C)及び(D)の混合物をそれぞれ製造し、前記2種の混合物を同一の水性媒体中に分散する方法。
(3):前記(2)において、2種の混合物をそれぞれ別の水性媒体中に分散して2種の水性分散体を製造し、その後、これらを混合する方法。
(4):(A)、(B)及び(D)の混合物を製造し、前記混合物を水性媒体に分散して水性分散体を製造し、その後、(C)を加えて分散する方法。
(5):(A)、(C)及び(D)の混合物を製造し、前記混合物を水性媒体に分散して水性分散体を製造し、その後、(B)を加えて分散する方法。
【0035】
前記製造方法(1)〜(5)における水性分散体の乳化方法としては、特に限定されないが、例えば自然乳化法、転相乳化法、機械的強制乳化法、高圧乳化法、ペースト法及び同時乳化法等が挙げられる。これらのうち製造の容易さの観点から好ましいのは自然乳化法、転相乳化法及び機械的強制乳化法である。
【0036】
本発明の処理剤でシートベルトウェビングを処理する方法については特に限定されないが、例えば、染色後のシートベルトウェビングを、水性分散体状の処理剤を満たした処理浴でパディング法によって処理する方法が挙げられる。処理浴の固形分の濃度は、好ましくは0.05〜20重量%であり、更に好ましくは0.1〜10重量%であり、特に好ましくは0.5〜8重量%である。また、処理剤でシートベルトウェビングを処理した後に、シートベルトウェビングを40〜220℃で乾燥させる工程を通過させることが好ましく、80〜170℃で乾燥させることが更に好ましい。
【0037】
本発明の処理剤で処理されたシートベルトウェビングに対する処理剤の付着量は特に限定されないが、シートベルトウェビングの重量に対して好ましくは0.01〜3重量%であり、更に好ましくは0.05〜2重量%であり、特に好ましくは0.1〜1.5重量%である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0039】
<製造例1>
<ポリエーテルポリエステル化合物(X−1)の合成>
撹拌器及び温度計を備えた耐圧反応容器に、1,4−ブタンジオール45部及びテトラヒドロフラン369部を仕込み、触媒として三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体5部を加え、窒素置換後密閉する。40℃でEO82.5部を2時間かけて滴下し、ランダム共重合体であるジオール成分496部を得た。次いで、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、得られたジオール成分300部、二塩基酸としてアジピン酸30.7部、一塩基酸としてオレイン酸168部を仕込み、触媒としてパラトルエンスルホン酸1.5部を加え、窒素気流下、150℃で12時間反応させ、ポリエーテルポリエステル化合物(X−1)を得た。
【0040】
実施例1〜12、比較例1〜3
炭化水素系合成オイル(A)、シリコーンオイル(B)及び非イオン性界面活性剤(C)を表1に示す重量部で配合し、本発明の処理剤(実施例1〜12)及び比較の処理剤(比較例1〜3)を作製した。
【0041】
実施例及び比較例で使用した(A)、(B)及び(C)は、以下の通りである。
(A−1):ポリ−α−オレフィン「リポルーブ60」[−30℃での粘度=2,200mPa・s、ライオン(株)製]
(A−2):ポリ−α−オレフィン「リポルーブ80」[−30℃での粘度=4,900mPa・s、ライオン(株)製]
(A−3):エチレン/α−オレフィン共重合体「ルーカントHC−10」[−30℃での粘度=10,000mPa・s、三井化学(株)製]
(A−4):エチレン/α−オレフィン共重合体「ルーカントHC−20」[−30℃での粘度=62,000mPa・s、三井化学(株)製]
(A−5):エチレン/α−オレフィン共重合体「ルーカントHC−100」[−30℃での粘度=1,400,000mPa・s、三井化学(株)製]
(B−1):ポリジメチルシロキサン「KF−96−350CS」[−30℃での粘度=1,200mPa・s、信越化学工業(株)製]
(B−2):ポリジメチルシロキサン「KF−96−1000CS」[−30℃での粘度=4,000mPa・s、信越化学工業(株)製]
(B−3):ポリジメチルシロキサン「KF−96−10000CS」[−30℃での粘度=40,000mPa・s、信越化学工業(株)製]
(B−4):アミノ変性シリコーン「KF−865」[−30℃での粘度=350mPa・s、信越化学工業(株)製]
(C−1):グリセリンステアリン酸モノエステル「グリランTG−C」[三洋化成工業(株)製]
(C−2):ソルビタンEO(20モル)付加物のオレイン酸モノエステル「レオドールTW−O120V」[花王(株)製]
(C−3):ラウリルアルコールEO(10モル)付加物「エマルミンNL−100」[三洋化成工業(株)製]
(X−1):ポリエーテルポリエステル化合物(−30℃で固化)
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1〜12及び比較例1〜3の処理剤を用いて、以下の方法でシートベルトウェビングを処理した。
<シートベルトウェビングの処理方法−1>
実施例1〜11及び比較例1〜3の処理剤を、撹拌下、水に徐々に投入し、固形分濃度2重量%の水分散体をそれぞれ作製した。ポリエステル繊維製のシートベルトウェビング(黒染色済)を、処理剤の水分散体でパディング法により浸漬処理した後、マングルでシートベルトウェビングを絞り(絞り率50%)、150℃で3分間乾燥させ、処理剤が1重量%付着した処理済みシートベルトウェビングを得た。
【0044】
<シートベルトウェビングの処理方法−2>
実施例12の処理剤を、撹拌下、エタノールに徐々に投入し、固形分濃度2重量%のエタノール分散体を作製した。ポリエステル繊維製のシートベルトウェビング(黒染色済)を、処理剤のエタノール分散体でパディング法により浸漬処理した後、マングルでシートベルトウェビングを絞り(絞り率50%)、150℃で3分間乾燥させ、処理剤が1重量%付着した処理済みシートベルトウェビングを得た。
【0045】
本発明の実施例1〜12及び比較例1〜3の処理剤で処理したシートベルトウェビングについて、平滑性及び耐摩耗性をそれぞれ以下の方法で測定した。
【0046】
<常温平滑性の評価方法>
処理済みシートベルトウェビング(長さ1.5m)を温度20℃、湿度65%に温調された室内に24時間放置した後、処理済みシートベルトウェビングの一端に、500gの荷重をセットし、その中間部分に車両用スルーを通し、スルーと角度20°でシートベルトウェビングを接触させ、荷重をセットした端と反対側の端にロードセル(10kgf)をセットする。ロードセルを500mm/分の割合で移動させ、荷重を引き上げる際の張力(F1)及び荷重を元に戻す際の張力(F2)を測定した。得られた(F1)及び(F2)を用いて、下記式(1)から滑り性(%)を算出した。滑り性の値が大きいほど、平滑性に優れる。また、20℃での滑り性(%)に基づいて、常温平滑性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:滑り性59.5%以上
○:滑り性58.0%以上〜59.5%未満
△:滑り性56.5%以上〜58.0%未満
×:滑り性56.5%未満
【0047】
【数1】

【0048】
<低温平滑性の評価方法>
処理済みシートベルトウェビング(長さ1m)を−30℃に温調された室内に24時間放置した後、スルーとシートベルトウェビングが接触する部分を−30℃に温調した恒温槽内にセットする以外は、前記常温平滑性の評価方法と同様の方法により(F1)及び(F2)を測定し、式(1)から滑り性(%)を算出した。また、−30℃での滑り性(%)に基づいて、低温平滑性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:滑り性43.5%以上
○:滑り性41.5%以上〜43.5%未満
△:滑り性39.5%以上〜41.5%未満
×:滑り性39.5%未満
【0049】
<耐摩耗性の評価方法>
処理済みシートベルトウェビング(長さ1.5m)を、六角棒(JIS G 4604に準ずる)を摩擦体として500gの荷重をかけて往復2,500回移動させ、ウェビング表面を摩耗させる。摩耗前後の引張強さをJIS−G4604に記載の方法により測定し、摩耗後の強度保持率(%)を算出した。値が大きいほど、長期間使用した時の耐久性が良く、耐摩耗性に優れる。また、摩耗後の強度保持率(%)に基づいて、耐摩耗性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:摩耗後の強度保持率94%以上
○:摩耗後の強度保持率91%以上〜94%未満
△:摩耗後の強度保持率88%以上〜91%未満
×:摩耗後の強度保持率88%未満
【0050】
<耐熱性の評価方法>
処理済みシートベルトウェビング(長さ1.5m)を、80℃のインキュベーター内に100時間放置した後、前記常温平滑性の評価方法と同様の方法により(F1)及び(F2)を測定し、式(1)から滑り性(%)を算出した。80℃に放置後の滑り性(%)に基づいて、耐熱性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:滑り性58%以上
○:滑り性56%以上〜58%未満
△:滑り性54%以上〜56%未満
×:滑り性54%未満
【0051】
<耐光性の評価方法>
処理済みのシートベルトウェビング(長さ1.5m)を、耐光性試験機「U48HB型」[スガ試験機(株)製]内で100時間紫外線照射した後、前記常温平滑性の評価方法と同様の方法により(F1)及び(F2)を測定し、式(1)から滑り性(%)を算出した。紫外線照射後の滑り性(%)に基づいて、耐光性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:滑り性58%以上
○:滑り性56%以上〜58%未満
△:滑り性54%以上〜56%未満
×:滑り性54%未満
【0052】
常温平滑性、低温平滑性、耐摩耗性、耐熱性及び耐光性の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の評価結果から明らかなように、本発明の処理剤を用いて処理したシートベルトウェビングは、常温及び低温(−30℃)での平滑性、耐摩耗性、耐熱性及び耐光性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のシートベルトウェビング用処理剤で処理したシートベルトウェビングは、常温及び低温(−30℃)での平滑性、耐摩耗性、耐熱性並びに耐光性が優れているため、冬季の気温が−30℃程度になる極寒地でも優れた平滑性を有し、かつ長期間繰返し使用した後でも、高温下又は光照射下で使用した後でも、シートベルトの巻き取り装置への格納性が低下せず、良好な使用感を維持することができる。従って、本発明の処理剤は自動車用シートベルト等に使用されるシートベルトウェビングの処理剤として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−30℃での粘度が35〜100,000mPa・sである炭化水素系合成オイル(A)を必須成分とするシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項2】
前記炭化水素系合成オイル(A)が、炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するポリ−α−オレフィン又はエチレンと炭素数3〜24のα−オレフィンを必須構成単位として含有するエチレン/α−オレフィン共重合体である請求項1記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項3】
更に、−30℃での粘度が35〜45,000mPa・sのシリコーンオイル(B)を含有し、かつ、前記炭化水素系合成オイル(A)及び前記シリコーンオイル(B)の全重量に基づいて、(B)の含有量が5〜50重量%である請求項1又は2記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項4】
前記シリコーンオイル(B)が、ポリジメチルシロキサン及び/又はアミノ変性シリコーンである請求項3記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項5】
更に、非イオン性界面活性剤(C)を含有し、かつ、前記炭化水素系合成オイル(A)及び前記非イオン性界面活性剤(C)の全重量に基づいて、(C)の含有量が1〜70重量%である請求項1〜4いずれか記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤(C)が、多価アルコール脂肪酸エステル及び/又は多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物である請求項5記載のシートベルトウェビング用処理剤。
【請求項7】
シートベルトウェビングを処理する工程において、水性分散体状であって、水性媒体以外の成分の濃度が水性分散体の全重量に基づいて0.05〜20重量%である請求項1〜6いずれか記載のシートベルトウェビング用処理剤。


【公開番号】特開2010−163734(P2010−163734A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278089(P2009−278089)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】