説明

シートベルトリトラクタ用ビークルセンサ

【課題】シートベルトリトラクタの価格の高騰を招くことなく、ビークルセンサの作動時
の騒音を低減させる。
【解決手段】センサウエイト収容凹部12内を移動するセンサウエイト11が側壁面25
に衝突する際の衝撃は、センサホルダ10の側壁面25に一体に形成された弾性変形片5
0がセンサウエイト11によって弾性変形させられることで吸収することができる。その
ため、センサウエイト11の表面をエラストマーで被覆する場合に比較し、ビークルセン
サ1の製造工数を少なくすることができ、ビークルセンサ1及びこのビークルセンサ1を
構成部品とするシートベルトリトラクタの価格の高騰を招くことなく、ビークルセンサ1
の作動時の騒音を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に装備されているシートベルトリトラクタ用ビークルセン
サに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装備されているシートベルトリトラクタは、衝突時等における車両の
速度変化をビークルセンサで検知すると、ウェビング(ベルト)の引き出しを停止(ロッ
ク)するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
図11は、シートベルトリトラクタに装着されるビークルセンサ(シートベルトリトラ
クタ用ビークルセンサ)100を示すものである。
【0004】
この図11に示すように、ビークルセンサ100は、車両の平常時(停止時や急激な速
度変化がない走行時)に、センサウエイト(金属製の球状質量体)101がセンサホルダ
102内の安息位置(センサウエイト保持穴)103に保持され、作動することがない。
【0005】
一方、図12に示すように、ビークルセンサ100は、車両の衝突等によって車両走行
速度が急激に変化し、センサウエイト101に作用する加速度が所定値以上になると、セ
ンサウエイト101が慣性によってセンサホルダ102内の安息位置103からセンサホ
ルダ102内の側壁面102aに衝突する位置まで移動し、センサウエイト101がセン
サレバー104を押し上げて(回動させて)、センサレバー104の先端に形成した爪1
05をウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車106の歯107,107の間に食い
込ませる。この際(ビークルセンサの作動時)、ビークルセンサ100のセンサレバー1
04は、ウェビングが引き出し方向へ引っ張られ、ウェビング巻き取りドラムに取り付け
た歯車106によってさらに回動させられると、ビークルセンサ100が取り付けられた
シートベルトリトラクタのケース108のレバーストッパ110に押し当てられ、センサ
レバー104の変形がレバーストッパ110によって阻止される。その結果、ビークルセ
ンサ100は、ウェビングの引き出し方向への歯車106の回転をロックすることができ
、ウェビング巻き取りドラムのロック(ウェビングのロック)を始動できる。
【0006】
ところが、近年、自動車の車室内の静粛化が進み、ビークルセンサ100の作動時にお
けるセンサウエイト101とセンサホルダ102の側壁面102aとの衝突音がシートベ
ルト装着者に感知されやすくなってきたため、ビークルセンサ100の作動時におけるセ
ンサウエイト101とセンサホルダ102の側壁面102aとの衝突音の低減が課題とな
っている。
【0007】
このような課題を解決するためには、特許文献2に開示されたように、センサウエイト
101の表面をエラストマーで被覆し、センサウエイト101とセンサホルダ102の側
壁面102aとの衝突時の衝撃をエラストマーで緩和し、ビークルセンサ100の作動時
の騒音を低減することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−212086号公報
【特許文献2】特開平7−101311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、センサウエイト101をエラストマーで被覆する場合には、ビークルセ
ンサ100の製造工数がセンサウエイト101をエラストマーで被覆する工程分だけ増加
することになり、ビークルセンサ100の生産効率の低下を招き、ビークルセンサ100
の製品価格の高騰を招くという新たな問題を生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ビークルセンサの製造工数を増加させることなく、ビークルセンサ
の作動時の騒音を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1は、図1乃至図10
に示すように、合成樹脂製センサホルダ10のセンサウエイト収容凹部12内に収容した
球形の金属製センサウエイト11が、慣性によって前記センサウエイト収容凹部12内の
安息位置23から前記センサウエイト収容凹部12の側壁面25に衝突する位置まで移動
できるようになっている。そして、前記センサホルダ10に回動可能に支持されて前記セ
ンサウエイト11に乗せられたセンサレバー7が、前記センサウエイト収容凹部12内を
移動する前記センサウエイト11によって回動させられると、前記センサレバー7の爪8
が、ウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車5の歯6,6の間に食い込んで前記歯車
5のウェビング引き出し方向への回転を阻止するようになっている。この発明において、
前記センサウエイト収容凹部12の前記側壁面25は、前記センサウエイト収容凹部12
内の前記安息位置23に収容された前記センサウエイト11と同心円状に位置するように
形成されている。また、前記センサウエイト収容凹部12の前記側壁面25には、前記セ
ンサウエイト11に弾性的に接触し且つ前記センサウエイト11によって撓み変形させら
れる複数の片持ち梁状の弾性変形片50が周方向に沿って一体に形成されている。そして
、前記弾性変形片50は、前記センサウエイト11が前記側壁面25に衝突する際の衝撃
を弾性変形することによって吸収するようになっている。
【0012】
請求項2の発明に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1は、請求項1に係る
発明における前記弾性変形片50に特徴を有するものである。すなわち、前記弾性変形片
50は、図5(c)及び図10(a)に示すように、前記側壁面25の周方向に沿って見
た場合、その先端50bが隣り合う他の弾性変形片50の基端50a上に位置するように
なっている。
【0013】
請求項3の発明に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1は、請求項1に係る
発明における前記弾性変形片50に特徴を有するものである。すなわち、前記弾性変形片
50は、その先端50bと隣り合う他の弾性変形片50の基端50aとが前記側壁面25
の周方向に沿ってオーバーラップするように形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサホルダの側壁面に一体に形成された弾性変形片がセンサウエイ
トによって弾性変形させられることにより、センサウエイトが側壁面に衝突する際の衝撃
を弾性変形片で吸収することができるため、センサウエイトの表面をエラストマーで被覆
する場合に比較し、ビークルセンサの製造工数を少なくすることができ、ビークルセンサ
及びこのビークルセンサを構成部品とするシートベルトリトラクタの価格の高騰を招くこ
となく、ビークルセンサの作動時の騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサの取付部構造を示すシートベルトリトラクタの一部断面図である。
【図2】車両の平常時(停止時や急激な速度変化がない走行時)におけるビークルセンサの正面図であって、図2(a)がビークルセンサの組立状態図であり、図2(b)がビークルセンサの分解図である。
【図3】図2に示したビークルセンサ1の縦断面図であって、図3(a)がビークルセンサの組立状態における縦断面図であり、図3(b)がビークルセンサの分解時における縦断面図である。
【図4】ビークルセンサのセンサホルダを示す図であって、図4(a)がセンサホルダの正面図、図4(b)がセンサホルダの左側面図、図4(c)がセンサホルダの背面図、図4(d)がセンサホルダの平面図、図4(e)がセンサホルダの裏面(下面)図である。
【図5】図5(a)がセンサホルダの平面図であり、図5(b)が図5(a)のA1−A1線に沿って切断して示す断面図であり、図5(c)が図5(a)の一部(弾性変形片)を拡大して示す図である。
【図6】図6(a)が第1作動状態を示すビークルセンサの縦断面図であり、図6(b)が第2作動状態を示すビークルセンサの縦断面図である。
【図7】ビークルセンサのセンサレバーを示す図であって、図7(a)がセンサレバーの背面図、図7(b)がセンサレバーの平面図、図7(c)がセンサウエイト押さえの下面側に直交する方向から見たセンサレバーの裏面(下面)図、図7(d)が図7(a)に示したセンサレバーの左側面図、図7(e)が図7(a)で示したセンサレバーの右側面図である。
【図8】図8(a)がセンサレバーの正面図であり、図8(b)が図8(a)に示したセンサレバーの縦断面図である。
【図9】図9(a)は車両の平常時(停止時や急激な速度変化がない走行時)におけるセンサウエイトと弾性変形片との関係を示す平面図であり、図9(b)は図6(a)におけるセンサウエイトと弾性変形片との関係を示す平面図である。
【図10】弾性変形片の変形例を示す図であり、図10(a)〜(d)のそれぞれが図5(c)に対応する図である。
【図11】従来のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサの取付部構造を示すシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサ作動前の状態を示す図である。
【図12】従来のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサの取付部構造を示すシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサ作動時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0017】
(ビークルセンサ及びその取付構造の概略)
図1は、本発明の第1実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1(以
下、ビークルセンサと略称する)及びその取付部構造を説明するための図である。
【0018】
この図1に示すように、ビークルセンサ1は、ウェビング巻き取りドラムの回転軸2を
回動可能に支持するケース3のセンサ収容室4内に取り付けられている。そして、ビーク
ルセンサ1は、車両衝突時等の車両の急激な速度変動を検知すると、ウェビング巻き取り
ドラムの回転軸2と同軸上に取り付けられた歯車5の歯6,6の間にセンサレバー7の爪
8を食い込ませて、歯車5がウェビング引き出し方向に回転するのを阻止し、ウェビング
巻き取りドラムの図示しないロック機構(ウェビングのロック機構)の始動を可能にする
。なお、センサレバー7の爪8と歯車5は、ラチェット機構を構成する。
【0019】
(ビークルセンサの全体構成)
図2乃至図3は、ビークルセンサ1を示す図である。このうち、図2は、車両の平常時
(停止時や急激な速度変化がない走行時)におけるビークルセンサ1の正面図であって、
図2(a)がビークルセンサ1の組立状態図であり、図2(b)がビークルセンサ1の分
解図である。また、図3は、図2に示したビークルセンサ1の縦断面図であって、図3(
a)がビークルセンサ1の組立状態における縦断面図であり、図3(b)がビークルセン
サ1の分解時における縦断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、ビークルセンサ1は、合成樹脂製のセンサホルダ10と、こ
のセンサホルダ10内に収容される金属で球形状に形成されたセンサウエイト11と、セ
ンサホルダ10に一端が揺動可能に取り付けられてセンサウエイト11上に乗せられる合
成樹脂製のセンサレバー7と、で構成されている。
【0021】
(ビークルセンサのセンサホルダ)
センサホルダ10は、図2乃至図5に示すように、上方(Z軸に沿った方向)に向けて
開口する有底のセンサウエイト収容凹部12と、センサレバー7の一端側の両側面13,
14から突出する支持軸15,16を回動可能に支持する一対の支持脚部17,18と、
を有している(図7乃至図8参照)。
【0022】
センサウエイト収容凹部12は、平坦でX−Y方向と平行で且つ平面視した形状が円形
となるように底面20が形成され、この底面20の中央にセンサウエイト11を着座させ
るためのテーパ状の座繰り面21が形成されると共に、座繰り面21の底面側開口縁より
も小径で且つ座繰り面21と同心の貫通穴22がセンサウエイト収容凹部12の内部空間
を外部空間に連通するように形成されている。そして、センサウエイト収容凹部12に形
成された貫通穴22の座繰り面側開口縁23が、センサウエイト11をセンサウエイト収
容凹部12の中央に保持するようになっている。また、このセンサウエイト収容凹部12
に形成された貫通穴22の座繰り面側開口縁23は、センサウエイト11に作用する慣性
力が所定以上になるまで、センサウエイト11をセンサウエイト収容凹部12の中央に保
持するセンサウエイト11の安息位置となっている。したがって、センサウエイト11は
、車両の平常時に、センサウエイト収容凹部12の中央(安息位置)から離れることがな
く、センサウエイト収容凹部12内を移動することがない(図3(a)参照)。
【0023】
また、センサウエイト収容凹部12は、底面20と平行となるように形成されたセンサ
ホルダ10の上面24からZ軸(底面20に直交する方向)に沿って延びる円筒状の側壁
面25が略テーパ形状のコーナー面26を介して底面20に接続されている。そして、セ
ンサウエイト収容凹部12の内部空間は、底面20,座繰り面21,コーナー面26,及
び側壁面25によって形作られている。
【0024】
側壁面25は、平面視した形状が底面20と同心円となるように形成され、センサウエ
イト収容凹部12の中央に保持されたセンサウエイト11との間に等間隔の隙間が生じる
ように形成されており、センサウエイト収容凹部12の中央に保持されたセンサウエイト
11がその隙間分だけセンサホルダ収容凹部12内を移動することができるようになって
いる。そして、側壁面25には、センサホルダ収容凹部12の内方へ片持ち梁状に突出す
る弾性変形片50が側壁面25の周方向に沿って複数形成されている。
【0025】
弾性変形片50は、平面視した形状が基端50aから先端50bに向かって肉厚が漸減
する略三角形状であり(特に図5(a),(c)参照)、側壁面25から切り起こすよう
にセンサウエイト収容凹部12の深さ方向(Z軸方向)に沿って形成されている(図5(
b)参照)。また、この弾性変形片50は、センサウエイト収容凹部12内を移動するセ
ンサウエイト11に確実に接触させるため、側壁面25の周方向に沿って見た場合に、そ
の先端50bが隣り合う他の弾性変形片50の基端50a上に位置するように形成されて
いる(図5(a),(c),図6(a)参照)。そして、この弾性変形片50は、センサ
ホルダ10の射出成形時にセンサホルダ10の一部として一体に形成される。
【0026】
このような弾性変形片50は、基端50aから先端50bに向かうにしたがって撓み変
形し易くなっており、センサウエイト11と側壁面25との衝突の衝撃を弾性変形して(
撓み変形して)吸収するようになっている(図6(a),図9(b)参照)。
【0027】
また、弾性変形片50は、センサウエイト11が側壁面25に当接する位置まで撓み変
形されられると、側壁面25に形成された収容溝51内に収容され、そのセンサウエイト
11に当接する側の面50cが側壁面25の一部を構成するようになっている(図5(c
)参照)。
【0028】
なお、本実施形態において、弾性変形片50は、センサホルダ10の上面25から側壁
面25とコーナー面26との境界位置まで形成されているが、センサウエイト11によっ
て弾性変形させられて、センサウエイト11と側壁面25との衝突の衝撃を吸収できる限
り、センサホルダ10の上面24から側壁面25の途中まで形成するようにしてもよい。
【0029】
コーナー面26は、センサウエイト11に接触することがないように、略テーパ状の曲
面になっている(図3(a),図6(a),図6(b)参照)。
【0030】
一対の支持脚部17,18は、センサホルダ10の上面24からZ軸方向(上方)に向
かって突出するように形成されており、センサレバー7の支持軸15,16を揺動可能に
収容する軸穴27,28が形成されている(図7参照)。この一対の支持脚部17,18
は、センサレバー7の支持軸15,16を軸穴27,28に嵌合する際に、互いに離間す
る方向へ撓み変形できるようになっており、センサレバー7の支持軸15,16を軸穴2
7,28に嵌合した後、元の姿勢に弾性復元するようになっている(図7参照)。その結
果、センサレバー7の支持軸15,16は、一対の支持脚部17,18の軸穴27,28
から抜け出すことなく、一対の支持脚部17,18の軸穴27,28に揺動可能に支持さ
れる。なお、一対の支持脚部17,18は、一方の支持脚部18が他方の支持脚部17よ
りもZ軸方向の長さが長く且つ撓み変形し易く形成されている。また、一方の支持脚部1
8は、その上端側で且つ他方の支持脚部17に対向する側が傾斜面30になっており、セ
ンサレバー7の支持軸16が傾斜面30に沿って移動させられるだけで(他方の支持脚部
17との間に押し込まれるだけで)、容易に撓み変形させられ、センサレバー7の支持軸
15,16と軸穴27,28の係合が容易になるように工夫されている。また、一方の支
持脚部18の軸穴28と他方の支持脚部17の軸穴27は、その大きさ(穴径)がセンサ
レバー7の支持軸16,15の太さ(軸径)に応じて異なるように形成されており、セン
サレバー7がセンサホルダ10に正しい姿勢で組み付けられるように工夫されている。
【0031】
また、センサホルダ10は、その両側面31,32に位置決め突起33,34が形成さ
れている。この位置決め突起33,34は、ケース3のセンサ収容室4に形成されたガイ
ドレールとしての位置決め凹部35,36に係合されるようになっている(図1参照)。
そして、ビークルセンサ1は、センサホルダ10の位置決め突起33,34がセンサ収容
室4の位置決め凹部35,36に係合された状態でセンサ収容室4内に装着されると、歯
車5に対して位置決めされた状態でセンサ収容室4内に保持されることになる(図1参照
)。
【0032】
また、センサホルダ10は、センサレバー7の回動ストッパ37が上面24に当接する
まで最大限回動しても、センサウエイト11がセンサレバー7との隙間から抜け出すこと
がないように、センサウエイト収容凹部12の深さが決定されている(図6参照)。
【0033】
(ビークルセンサのセンサレバー)
センサレバー7は、図7乃至図8に示すように、その一端側の両側面13,14に、セ
ンサホルダ10の支持脚部17,18の軸穴27,28に揺動可能に嵌合される支持軸1
5,16がそれぞれ形成されている(図2、図4参照)。また、センサレバー7の他端側
には、センサホルダ10内に収容されたセンサウエイト11に乗せられるセンサウエイト
押さえ38が形成されている。このセンサウエイト押さえ38の下面側には、略円錐台形
状のセンサウエイト収容面(凹面)40が形成されており、このセンサウエイト収容面4
0がセンサウエイト11の表面に接触するようになっている(図3、図6参照)。また、
センサレバー7は、その他端側の上面に爪8が突出形成されており、その爪8の先端側が
鋭角に形成され、爪8の先端側を歯車5の歯6,6の間に食い込ませることができるよう
になっている(図1参照)。このセンサレバー7の爪8は、センサウエイト押さえ38と
支持軸15,16とを接続するアーム部41の幅寸法よりも小さい幅寸法となるように、
舌片状に形成されている(特に、図7(a)〜(c)参照)。
【0034】
また、センサレバー7の一端側の下面には、センサレバー7が自重に反して持ち上げら
れるように回動させられると、センサホルダ10の上面24に当接し、その回動を阻止す
る回動ストッパ37が突出形成されている。この回動ストッパ37は、センサウエイト1
1がセンサホルダ10の上面24とセンサレバー7との隙間から抜け出るのを防止する(
図6参照)。
【0035】
(ケースのレバーストッパ)
図1に示すように、合成樹脂で形成されたケース3のセンサ収容室4の上部は、合成樹
脂製のレバーストッパ42が一体に形成されている。そして、レバーストッパ42の先端
とセンサ収容室4の上部開口縁43との間には、センサ収容室4内に装着したビークルセ
ンサ1のセンサレバー7の爪8が歯車5の歯6,6の間に食い込む位置まで突出すること
を可能にする窓44が形成されている。レバーストッパ42は、センサホルダ10のセン
サウエイト収容凹部12内を移動したセンサウエイト11によって持ち上げられたセンサ
レバー7の爪8に当接し、センサレバー7の回動を阻止して、歯車5の歯6,6の間への
爪8の食い込みを規制するようになっている。
【0036】
(ビークルセンサの作動)
図3(a)及び図9(a)に示すように、ビークルセンサ1は、車両の平常時(停止時
や急激な速度変化がない走行時)に、センサウエイト11がセンサホルダ10内の安息位
置(センサウエイト保持穴として機能する貫通穴22であって、特に、貫通穴22の座繰
り面側開口縁23)に保持され、作動することがない。
【0037】
一方、図1,図6(a)及び図9(b)に示すように、ビークルセンサ1は、車両の衝
突等によって車両走行速度が急激に変化し、センサウエイト11に作用する加速度が所定
値以上になると、センサウエイト11が慣性によってセンサホルダ10のセンサウエイト
収容凹部12内の安息位置23から移動し、センサウエイト11がセンサレバー7を押し
上げながら(回動させながら)センサウエイト収容凹部12の側壁面25に向けて移動す
る。センサウエイト11が側壁面25に近づくと、弾性変形片50がセンサウエイト11
に弾性的に接触する。そして、センサウエイト11は、弾性変形片50を撓み変形させな
がら側壁面25に衝突するまで移動する。この際、センサウエイト11の運動エネルギー
が弾性変形片50の撓み変形(弾性変形)によって吸収され、センサウエイト11と側壁
面25との衝突時における衝撃が緩和される。その結果、センサウエイト11とセンサホ
ルダ10の側壁面25との衝突音が小さく抑えられ、ビークルセンサ1の作動音が低減す
る。
【0038】
センサウエイト11が側壁面25に衝突する位置まで移動すると、センサウエイト11
によって持ち上げられたセンサレバー7の爪8がウェビング巻き取りドラムに取り付けた
歯車5の歯6,6の間に食い込み、歯車のウェビング引き出し方向への回転がセンサレバ
ー7によって阻止される。その結果、ビークルセンサ1は、歯車5のウェビング引き出し
方向への回動を確実に阻止することができ、ウェビング巻き取りドラムのロック機構(ウ
ェビングのロック機構)を始動させることが可能になる。
【0039】
センサレバー7が歯車5から受ける力によって撓み変形させられると、ケース3のレバ
ーストッパ42がセンサレバー7に当接し、センサレバー7の撓み変形がケース3のレバ
ーストッパ42によって抑えられる。
【0040】
なお、図1,図6(a)及び図9(b)に示すビークルセンサ1の作動状態において、
センサウエイト11に慣性力が作用しなくなると、センサレバー7は、図外のばねによっ
てウェビング巻き戻し方向に回動付勢される歯車5で押圧されて揺動角度を減じる方向へ
回動すると共に、自重によって揺動角度を減じる方向へ回動する。その結果、センサウエ
イト11は、センサレバー7に押されてセンサホルダ10内の安息位置23に戻される(
図3(a)及び図9(a)参照)。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1によれば、センサウエイ
ト収容凹部12の側壁面25に一体に形成した弾性変形片50がセンサウエイト11と側
壁面25との衝突時の衝撃を吸収できるようになっているため、センサウエイト11を衝
撃吸収用のエラストマーで被覆する場合と比較し、ビークルセンサ1の生産効率を高める
ことができ、ビークルセンサ1及びビークルセンサ1を使用するシートベルトリトラクタ
の価格の高騰を招くことなく、ビークルセンサ1の作動時の騒音を低減することができる

【0042】
(弾性変形片の変形例)
図10は、センサウエイト収容凹部12の側壁面25に一体に形成される弾性変形片5
0の変形例を示すものである。なお、図10(a)が弾性変形片50の第1変形例を示す
図、図10(b)が弾性変形片50の第2変形例を示す図、図10(c)が弾性変形片5
0の第3変形例を示す図、図10(d)が弾性変形片50の第4変形例を示す図である。
【0043】
図5に示した弾性変形片50は、センサウエイト11に当接する側の面50cがセンサ
ウエイト収容凹部12内に向かって凹面となるように形成されている(図9(b)参照)
。しかしながら、弾性変形片50は、図5に示した形状に限られず、図10(a)に示す
ように、センサウエイト11に当接する側の面50cがセンサウエイト収容凹部12内に
向かって凸面となるように形成されたものでもよい(図9(b)参照)。なお、図10(
a)に係る弾性変形片50は、センサウエイト11が側壁面25に当接する位置まで撓み
変形されられると、側壁面25に形成された収容溝51内に収容され、そのセンサウエイ
ト11に当接する側の面50cが側壁面25の一部を構成するようになっている(図9(
b)参照)。
【0044】
また、図5及び図10(a)に示した弾性変形片50は、平面視した形状が基端50a
側から先端50b側へ向かって肉厚が漸減し且つ先端50bが尖っている。しかしながら
、図10(b),図10(c)に示すように、弾性変形片50は、基端側50aから先端
50b側へ向かってほぼ同一の肉厚となるように形成され、先端50bが滑らかな曲面で
丸められている。なお、図10(b)に示した弾性変形片50が図5(c)に示した弾性
変形片50の変形例に対応し、図10(c)に示した弾性変形片50が図10(b)に示
した弾性変形片50の変形例に対応する。そして、図10(b),(c)に係る弾性変形
片50は、センサウエイト11が側壁面25に当接する位置まで撓み変形されられると、
側壁面25に形成された収容溝51内に収容され、そのセンサウエイト11に当接する側
の面50cが側壁面25の一部を構成するようになっている(図9(b)参照)。
【0045】
また、図10(d)に示す弾性変形片50は、側壁面25の一部を切り起こしたような
形状であり、センサウエイト支持部52を片持ち梁状の弾性変形部53で支持するように
構成されている。センサウエイト支持部52のセンサウエイト11に当接する側の面50
cは、側壁面25と同一の曲率に形成されており、弾性変形片50の全体がセンサウエイ
ト11によって収容溝51内に押し込まれると、側壁面25と同一面となる(図9(b)
参照)。
【0046】
(その他の変形例)
図5(a),(c)において、弾性変形片50の先端50bと隣り合う他の弾性変形片
50の基端50aとが、側壁面25の周方向で重なるように位置している。しかしながら
、弾性変形片50の先端50bと隣り合う他の弾性変形片50の基端50aとの周方向位
置は、図5(a),(c)の構成に限定されるものではなく、弾性変形片50の先端50
bと隣り合う他の弾性変形片50の基端50aとが側壁面25の周方向に沿ってオーバー
ラップしていてもよい。このようにすれば、図5(a),(c)に示した弾性変形片50
でセンサウエイト11と側壁面25との衝突時の衝撃を吸収する場合よりも衝撃吸収効果
の向上を期待できる。また、センサウエイト11と側壁面25との衝突時の衝撃を弾性変
形片50の弾性変形(撓み変形)で吸収するできる限り、図10(b),(c)に示すよ
うに、弾性変形片50の先端50bと隣り合う他の弾性変形片50の基端50aとが側壁
面25の周方向に沿ってずれていても(重ならなくても)よい。
【0047】
また、上記実施形態及び上記各変形例は、センサホルダ10の射出成形時に弾性変形片
50を一体として成形するものであるが、センサウエイト11をエラストマーで被覆する
場合に比較して、ビークルセンサ1の価格を低減できる限りにおいて、弾性変形片50を
センサホルダ10の側壁面25から刃物で切り起こすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1……ビークルセンサ、5……歯車、6……歯、7……センサレバー、8……爪、10
……センサホルダ、11……センサウエイト、12……センサウエイト収容凹部、23…
…座繰り面側開口縁(安息位置)、25……側壁面、50……弾性変形片、50a……基
端、50b……先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製センサホルダのセンサウエイト収容凹部内に収容した球形の金属製センサウ
エイトが、慣性によって前記センサウエイト収容凹部内の安息位置から前記センサウエイ
ト収容凹部の側壁面に衝突する位置まで移動できるようになっており、
前記センサホルダに回動可能に支持されて前記センサウエイトに乗せられたセンサレバ
ーが、前記センサウエイト収容凹部内を移動する前記センサウエイトによって回動させら
れると、
前記センサレバーの爪が、ウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車の歯の間に食い
込んで前記歯車のウェビング引き出し方向への回転を阻止するようになっている、
シートベルトリトラクタ用ビークルセンサであって、
前記センサウエイト収容凹部の前記側壁面は、前記センサウエイト収容凹部内の前記安
息位置に収容された前記センサウエイトと同心円状に位置するように形成され、
前記センサウエイト収容凹部の前記側壁面には、前記センサウエイトに弾性的に接触し
且つ前記センサウエイトによって撓み変形させられる複数の片持ち梁状の弾性変形片が周
方向に沿って一体に形成され、
前記弾性変形片は、前記センサウエイトが前記側壁面に衝突する際の衝撃を弾性変形す
ることによって吸収するようになっている、
ことを特徴とするシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ。
【請求項2】
前記弾性変形片は、前記側壁面の周方向に沿って見た場合、その先端が隣り合う他の弾
性変形片の基端上に位置するようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ。
【請求項3】
前記弾性変形片は、その先端と隣り合う他の弾性変形片の基端とが前記側壁面の周方向
に沿ってオーバーラップするように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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