説明

シートベルトリトラクタ用ビークルセンサ

【課題】ビークルセンサの作動時の騒音を一層低減させると共に、ビークルセンサ及びこれを使用するシートベルトリトラクタの価格を低減させる。
【解決手段】センサウエイト12に慣性力が作用して、センサウェイト12が支柱11の先端との接触位置Pを支点として揺動して姿勢を変えると、センサレバー7がセンサウエイト12によって回動させられて押し上げられ、センサレバー7の爪8がウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車5の歯6,6の間に食い込み、歯車5のウェビング引き出し方向への回転が阻止されるようになっている。そして、センサウエイト12は、センサホルダ10に衝突することなく、センサレバー7を揺動させることができるように、支柱11の先端で支持されている。その結果、センサウエイト12とセンサホルダ10の衝突音が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に装備されているシートベルトリトラクタ用ビークルセン
サに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に装備されているシートベルトリトラクタは、衝突時等における車両の
速度変化をビークルセンサで検知すると、ウェビング(ベルト)の引き出しを停止(ロッ
ク)するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
図12は、シートベルトリトラクタのケース108に装着されたビークルセンサ100
(シートベルトリトラクタ用ビークルセンサ)を示す図である。
【0004】
この図12に示すように、ビークルセンサ100は、車両の平常時(停止時や急激な速
度変化がない走行時)に、球状のセンサウエイト101がセンサホルダ102内の安息位
置(センサウエイト保持穴103)に保持され、作動することがない。
【0005】
一方、この図13に示すように、ビークルセンサ100は、車両の衝突等によって車両
走行速度が急激に変化し、センサウエイト101に作用する加速度が所定値以上になると
、センサウエイト101が慣性によってセンサホルダ102内の安息位置から移動し、セ
ンサウエイト101がセンサレバー104を押し上げて(回動させて)、センサレバー1
04の先端に形成した爪105をウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車106の歯
107,107の間に食い込ませる。この際(ビークルセンサ100の作動時)、ビーク
ルセンサ100のセンサレバー104は、ビークルセンサ100が取り付けられたシート
ベルトリトラクタのケース108のレバーストッパ110に突き当てられて、爪105を
歯車106の歯107,107の間に食い込ませる方向への回動がレバーストッパ110
によって阻止される。その結果、ビークルセンサ100は、ウェビングの引き出し方向へ
の歯車106の回転を阻止することができ、ウェビング巻き取りドラムのロック機構(ウ
ェビングのロック機構)を始動させることが可能になる。
【0006】
ところが、近年、自動車の車室内の静粛化が進み、ビークルセンサ100の作動時にお
けるセンサウエイト101とセンサホルダ102の衝突音がシートベルト装着者に感知さ
れやすくなってきたため、ビークルセンサ100の作動時におけるセンサウエイト101
とセンサホルダ102との衝突音の低減が課題となっている。
【0007】
このような課題を解決するためには、特許文献2に開示された技術を適用して、センサ
ウエイト101をエラストマーを被覆し、センサウエイト101とセンサホルダ102と
の衝突時の衝撃をエラストマーで緩和し、ビークルセンサ100の作動時の騒音を低減す
ることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−212086号公報
【特許文献2】特開平7−101311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、センサウエイト101をエラストマーで被覆しても、センサウエイト1
01とセンサホルダ102が衝突するようになっているため、ビークルセンサ100の作
動時の騒音を十分に低減することができなかった。
【0010】
また、センサウエイト101をエラストマーで被覆する場合には、ビークルセンサ10
0の製造工数がセンサウエイト101をエラストマーで被覆する工程分だけ増加すること
になり、ビークルセンサ100の生産効率の低下を招き、ビークルセンサ100及びこの
ビークルセンサ100を使用するシートベルトリトラクタの価格の高騰を招くという新た
な問題を生じる。
【0011】
そこで、本発明は、ビークルセンサの作動時の騒音を一層低減させると共に、ビークル
センサ及びこれを使用するシートベルトリトラクタの価格を低減させることを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、図1乃至図11に示すように、合成樹脂製のセンサホルダ10の支
持脚部17,18に一端側が揺動可能に支持された合成樹脂製のセンサレバー7と、前記
センサホルダ10の支柱11の先端に揺動できるように乗せられて、前記センサレバー7
の下面に当接する合成樹脂製のセンサウエイト12と、を備えたシートベルトリトラクタ
用ビークルセンサ1に関するものである。また、この発明に係るシートベルトリトラクタ
用ビークルセンサ1は、前記センサウエイト12に慣性力が作用して、前記センサウェイ
ト12が前記支柱11の先端との接触位置Pを支点として揺動して姿勢を変えると、前記
センサレバー7が前記センサウエイト12によって回動させられて押し上げられ、前記セ
ンサレバー7の爪8がウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車5の歯6,6の間に食
い込み、前記歯車5のウェビング引き出し方向への回転が阻止されるようになっている。
そして、前記センサウエイト12は、前記センサホルダ10に衝突することなく、前記セ
ンサレバー7を揺動させることができるように、前記支柱11の先端で支持されている。
【0013】
請求項2の発明は、図1乃至図11に示すように、請求項1の発明に係るシートベルト
リトラクタ用ビークルセンサ1に関し、以下のような特徴点を有している。すなわち、前
記支柱11は、平面視した場合の先端面45の外縁形状が円形の棒状体である。また、前
記センサウエイト12は、前記支柱11を収容する支柱収容穴41が形成されている。ま
た、前記支柱収容穴41は、前記支柱11の前記先端面45に乗せられる天井面46で且
つ平面視した形状が円形の天井面46と、この天井面46から前記支柱11の基端側へ向
かうにしたがって穴径が大きくなるテーパー面47と、を有している。そして、前記テー
パー面47の開き角度をθ1とし、前記センサウエイト12の最大揺動角度をθ2とする
と、θ1/2>θ2である。また、前記センサウエイト12の中心軸L12が前記支柱1
1の中心軸L11に合致するように、前記支柱11の先端面45に前記センサウエイト1
2の天井面46を乗せた場合に、前記センサウエイト12の重心Gが前記支柱11の中心
軸L11上に位置するようになっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサウエイトがセンサホルダに衝突することなくセンサレバーを揺
動させることができ、センサウエイトとセンサホルダの衝突音が生じないため、衝撃吸収
用のエラストマーで被覆したセンサウエイトとセンサホルダとが衝突するようになってい
る従来例と比較し、作動時の騒音をより一層低減することができる。
【0015】
また、本発明によれば、センサウエイトがセンサホルダに衝突することなくセンサレバ
ーを揺動させることができ、センサウエイトとセンサホルダの衝突音が生じないため、セ
ンサウエイトを衝撃吸収用のエラストマーで被覆する従来例と比較し、センサウエイトを
衝撃吸収用のエラストマーで被覆しなくてもよい分だけ、ビークルセンサの生産効率を高
めることができ、ビークルセンサの製品価格及びこのビークルセンサを使用するシートベ
ルトリトラクタの価格を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るビークルセンサを使用したシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサの第1作動状態を示す図である。
【図2】車両の平常時(停止時や急激な速度変化がない走行時)におけるビークルセンサの正面図であって、図2(a)がビークルセンサの組立状態図であり、図2(b)がビークルセンサの分解図である。
【図3】図2に示したビークルセンサの縦断面図であって、図3(a)がビークルセンサの組立状態における縦断面図であり、図3(b)がビークルセンサの分解時における縦断面図である。
【図4】ビークルセンサのセンサホルダを示す図であって、図4(a)がセンサホルダの正面図、図4(b)がセンサホルダの左側面図、図4(c)がセンサホルダの背面図、図4(d)がセンサホルダの平面図、図4(e)がセンサホルダの裏面(下面)図である。
【図5】センサホルダの縦断面図であり、図4(d)のA1−A1線に沿って切断して示すセンサホルダの断面図である。
【図6】センサウエイトを示す図である。図6(a)がセンサウエイトの平面図、図6(b)がセンサウエイトの側面図、図6(c)が図6(a)のA2−A2線に沿って切断して示すセンサウエイトの断面図、図6(d)がセンサウエイトの裏面図である。
【図7】ビークルセンサのセンサレバーを示す図であって、図7(a)がセンサレバーの背面図、図7(b)がセンサレバーの平面図、図7(c)がセンサウエイト押さえの下面側に直交する方向から見たセンサレバーの裏面(下面)図、図7(d)が図7(a)に示したセンサレバーの左側面図、図7(e)が図7(a)で示したセンサレバーの右側面図である。
【図8】図8(a)がセンサレバーの正面図であり、図8(b)が図8(a)に示したセンサレバーの縦断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るビークルセンサを使用したシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサの非作動時における状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るビークルセンサを使用したシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサの第2作動状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るビークルセンサを使用したシートベルトリトラクタの一部を拡大して示す断面図であり、ビークルセンサのセンサレバーの爪が歯車の歯とレバーストッパとの間に挟持された状態を示す図である。
【図12】従来のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサの取付部構造を示すシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサ作動前の状態を示す図である。
【図13】従来のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサの取付部構造を示すシートベルトリトラクタの一部断面図であり、ビークルセンサ作動時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1(以
下、ビークルセンサと略称する)を説明するための図である。
【0019】
この図1に示すように、ビークルセンサ1は、ウェビング巻き取りドラムの回転軸2を
回動可能に支持するケース3のセンサ収容室4内に取り付けられている。そして、ビーク
ルセンサ1は、車両衝突時等の車両の急激な速度変動を検知すると、ウェビング巻き取り
ドラムの回転軸2と同軸上に取り付けられた歯車5の歯6,6の間にセンサレバー7の爪
8を食い込ませて、歯車5がウェビング引き出し方向に回転するのを阻止し、ウェビング
巻き取りドラムの図示しないロック機構(ウェビングのロック機構)の始動を可能にする
。なお、センサレバー7の爪8と歯車5は、ラチェット機構を構成する。
【0020】
(ビークルセンサの全体構成)
図2乃至図3は、ビークルセンサ1を示す図である。このうち、図2は、車両の平常時
(停止時や急激な速度変化がない走行時)におけるビークルセンサ1の正面図であって、
図2(a)がビークルセンサ1の組立状態図であり、図2(b)がビークルセンサ1の分
解図である。また、図3は、図2に示したビークルセンサ1の縦断面図であって、図3(
a)がビークルセンサ1の組立状態における縦断面図であり、図3(b)がビークルセン
サ1の分解時における縦断面図である。
【0021】
これらの図に示すように、ビークルセンサ1は、合成樹脂製のセンサホルダ10と、こ
のセンサホルダ10の支柱11の先端に揺動可能に乗せられる合成樹脂製のセンサウエイ
ト12と、センサホルダ10に一端側が揺動可能に取り付けられてセンサウエイト12上
に乗せられる合成樹脂製のセンサレバー7と、で構成されている。
【0022】
(ビークルセンサのセンサホルダ)
センサホルダ10は、図2乃至図5に示すように、センサレバー7の一端側の両側面1
3,14から突出する支持軸15,16を回動可能に支持する一対の支持脚部17,18
と、上方に向けて開口する有底のセンサウエイト収容凹部20と、センサウエイトを揺動
可能に支持する支柱11とを有している(図7乃至図8参照)。
【0023】
センサウエイト収容凹部20は、平坦でX−Y方向と平行で且つ平面視した形状が円形
となるように形成された底面21と、この底面21の外縁から斜め上方へ向かって広がる
ように延びる略テーパー形状のコーナー面22と、このコーナー面22の上端からセンサ
ホルダ10の上面24まで延びる円筒状の壁面23とで形作られている。そして、センサ
ウエイト収容凹部20の底面21の中央には、センサウエイト12を揺動可能に支持する
丸棒状の支柱11がZ軸方向に沿って起立するように形成されている。
【0024】
支柱11は、センサホルダ10の一部を構成するものであり、センサレバー7の回動中
心28の位置と同一の高さ位置(Z軸方向に沿った高さ位置)Hまで形成されており、セ
ンサウエイト収容凹部20内から上方へ(センサホルダ10の上面を越えて)突出してい
る。この支柱11は、基端部から先端部まで略同一の太さ(成形上において必要とされる
抜け勾配が設けられている)に形成されており、先端面が底面(X−Y平面)と平行の平
坦面で且つ円形の平面形状になっている。
【0025】
一対の支持脚部17,18は、センサホルダ10の上面24からZ軸方向(上方)に向
かって突出するように形成されており、センサレバー7の支持軸15,16を揺動可能に
収容する軸穴25,26が形成されている(図7参照)。この一対の支持脚部17,18
は、センサレバー7の支持軸15,16を軸穴25,26に嵌合する際に、互いに離間す
る方向へ撓み変形できるようになっており、センサレバー7の支持軸15,16を軸穴2
5,26に嵌合した後、元の姿勢に弾性復元するようになっている(図7参照)。その結
果、センサレバー7の支持軸15,16は、一対の支持脚部17,18の軸穴25,26
から抜け出すことなく、一対の支持脚部17,18の軸穴25,26に揺動可能に支持さ
れる。なお、一対の支持脚部17,18は、一方の支持脚部18が他方の支持脚部17よ
りもZ軸方向の長さが長く且つ撓み変形し易く形成されている。また、一方の支持脚部1
8は、その上端側で且つ他方の支持脚部17に対向する側が傾斜面27になっており、セ
ンサレバー7の支持軸16が傾斜面27に沿って移動させられるだけで(他方の支持脚部
17との間に押し込まれるだけで)、容易に撓み変形させられ、センサレバー7の支持軸
15,16と軸穴25,26の係合が容易になるように工夫されている。また、一方の支
持脚部18の軸穴26と他方の支持脚部17の軸穴25は、その大きさ(穴径)がセンサ
レバー7の支持軸16,15の太さ(軸径)に応じて異なるように形成されており、セン
サレバー7がセンサホルダ10に正しい姿勢で組み付けられるように工夫されている。
【0026】
また、センサホルダ10は、その両側面31,32に位置決め突起33,34が形成さ
れている。この位置決め突起33,34は、ケース3のセンサ収容室4に形成されたガイ
ドレールとしての位置決め凹部35,36に係合されるようになっている(図1参照)。
そして、ビークルセンサ1は、センサホルダ10の位置決め突起33,34がセンサ収容
室4の位置決め凹部35,36に係合された状態でセンサ収容室4内に装着されると、歯
車5に対して位置決めされた状態でセンサ収容室4内に保持されることになる(図1参照
)。
【0027】
(ビークルセンサのセンサウエイト)
センサウエイト12は、図3及び図6に示すように、半径R1の球を部分的に切り欠い
たような形状になっており、重心Gが中心軸L12上に位置するように形成されている。
このセンサウエイト12は、センサレバー7が乗せられるレバー支持部37と、このレバ
ー支持部37の外周端から中心軸L12に沿って(−Z軸方向に沿って)延びる円筒部3
8と、この円筒部38に下端に位置する面取り部40と、支柱11を収容する支柱収容穴
41と、を有している。
【0028】
レバー支持部37は、平面視した場合、中心軸L12を中心とする円形の頂面部分42
と、この頂面部分42の外周縁から放射状に等間隔で延びる複数のリブ43とで構成され
ている。そして、レバー支持部37を構成する頂面部分42の表面及び複数のリブ43の
表面が半径R1の球面の一部となっている。また、隣り合うリブ43,43の間には、レ
バー支持部37から円筒部38まで延びる切り欠き部44が形成されている。この切り欠
き部44を設けたセンサウエイト12は、切り欠き部44を設けない場合と比較して、そ
の重心Gの位置が中心軸L12に沿って下方へずれ、支柱11に乗せられた状態での姿勢
が安定する。このようなレバー支持部37は、センサレバー7の下面(センサウエイト収
容面50)に接触するようになっている。
【0029】
円筒部38は、切り欠き部44によって切り欠かれた部分を除き、中心軸L12を中心
とする半径R2(R2<R1)の円筒面になっている。
【0030】
面取り部40は、半径R1の球面の一部であるリング状の曲面か、又は半径R1の球面
の一部である曲面に内接するようなリング状の傾斜面になっている。
【0031】
支柱収容穴41は、下方(−Z軸方向)へ向かって開口するテーパー形状の穴であり、
支柱11の先端面45に乗せられる天井面46と、この天井面46から下方へ向かうにし
たがって穴径が大きくなるテーパー面47とからなっている。そして、この支柱収容穴4
1は、中心軸L12を中心とする回転対称の形状であり、平面視した場合の天井面46の
形状が円形形状になっている。また、テーパー面47は、その開き角度をθ1とし、セン
サウエイト12の最大揺動角度をθ2とすると、θ1/2>θ2となるように形成されて
いる(図11参照)。その結果、センサウエイト12は、ビークルセンサ1の作動時にお
いて、最大揺動角度θ2まで回動しても、支柱11と衝突するようなことがない(図11
参照)。
【0032】
また、このように形成されたセンサウエイト12は、支柱11に支持された状態で最大
揺動角度θ2まで回動しても、センサホルダ10のセンサウエイト収容凹部20の内面(
底面21、コーナー面22及び壁面23)に衝突することがない大きさの外形形状になっ
ている(図11参照)。
【0033】
(ビークルセンサのセンサレバー)
センサレバー7は、図7乃至図8に示すように、その一端側の両側面13,14に、セ
ンサホルダ10の支持脚部17,18の軸穴25,26に揺動可能に嵌合される支持軸1
5,16がそれぞれ形成されている(図2、図4参照)。また、センサレバー7の他端側
には、センサホルダ10の支柱11に支持されたセンサウエイト12に乗せられるセンサ
ウエイト押さえ48が形成されている。このセンサウエイト押さえ48の下面側には、セ
ンサウエイト12に接触する略円錐台形状のセンサウエイト収容面(凹面)50が形成さ
れており、このセンサウエイト収容面50がセンサウエイト12の表面(レバー支持部3
7)に接触するようになっている(図3、図11参照)。また、センサレバー7は、その
他端側の上面に爪8が突出形成されており、その爪8の先端側が鋭角に形成され、爪8の
先端側を歯車5の歯6,6の間に食い込ませることができるようになっている(図1参照
)。このセンサレバー7の爪8は、センサウエイト押さえ48と支持軸15,16とを接
続するアーム部51の幅寸法よりも小さい幅寸法となるように、舌片状に形成されている
(特に、図7(a)〜(c)参照)。
【0034】
また、センサレバー7の一端側の下面には、センサレバー7が自重に反して持ち上げら
れるように回動させられると、センサホルダ10の上面24に当接し、その回動を阻止す
る回動ストッパ52が突出形成されている。この回動ストッパ52は、センサウエイト1
2がセンサホルダ10の上面24とセンサレバー7との隙間から抜け出るのを防止する。
【0035】
(ケースのレバーストッパ)
図1に示すように、合成樹脂で形成されたケース3のセンサ収容室4の上部は、合成樹
脂製のレバーストッパ53が一体に形成されている。そして、レバーストッパ53の先端
とセンサ収容室4の上部開口縁54との間には、センサ収容室4内に装着したビークルセ
ンサ1のセンサレバー7の爪8が歯車5の歯6,6の間に食い込む位置まで突出すること
を可能にする窓55が形成されている。レバーストッパ53は、センサホルダ10の支柱
11で支持された状態で回動したセンサウエイト12によって持ち上げられたセンサレバ
ー7の爪8に当接し、センサレバー7の回動を阻止して、歯車5の歯6,6の間への爪8
の食い込みを規制するようになっている。
【0036】
(ビークルセンサの作動)
図3(a)及び図9に示すように、ビークルセンサ1は、車両の平常時(停止時や急激
な速度変化がない走行時)に、センサウエイト12の中心軸L12と支柱11の中心軸L
11とが同一軸上に位置するか又は平行に位置するように、センサウエイト12が支柱1
1に支持されている。
【0037】
一方、図1及び図10に示すように、ビークルセンサ1は、車両の衝突等によって車両
走行速度が急激に変化し、センサウエイト12に作用する加速度が所定値以上になると、
センサウエイト12が支柱11の先端面45の外縁と天井面46との接触位置Pを回動支
点として回動し、センサウエイト11がセンサレバー7を押し上げて(回動させて)、セ
ンサレバー7の先端に形成した爪8をウェビング巻き取りドラムに取り付けた歯車5の歯
6,6の間に食い込ませる。そして、センサウエイト12によって回動させられたセンサ
レバー7の爪8がケース3のレバーストッパ53に突き当てられると、センサレバー7の
回動がレバーストッパ53によって阻止される。その結果、センサレバー7の爪8と歯車
5の歯6との噛み合わせ量が適正な範囲内に制限される。その後、ウェビング引き出し方
向への力が歯車5に作用すると、センサレバー7の爪8が歯車5の歯6とレバーストッパ
53によって挟持される(図11参照)。これにより、ビークルセンサ1は、ウェビング
の引き出し方向への歯車5の回転を阻止することができ、ウェビング巻き取りドラムのロ
ック機構(ウェビングのロック機構)を始動させることが可能になる。
【0038】
なお、図1及び図10に示すビークルセンサ1の作動状態において、センサウエイト1
2に慣性力が作用しなくなると、センサレバー7は、図外のばねによってウェビング巻き
戻し方向に回動付勢される歯車5で押圧されて揺動角度を減じる方向へ回動すると共に、
自重によって揺動角度を減じる方向へ回動する。その結果、センサウエイト12は、セン
サレバー7に押されて図3及び図9に示した非作動時の姿勢に戻される。
【0039】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1によれば、センサウエイ
ト12がセンサホルダ10に衝突することなくセンサレバー7を揺動させることができ、
センサウエイト12とセンサホルダ10の衝突音が生じないため、衝撃吸収用のエラスト
マーで被覆したセンサウエイト101がセンサホルダ102に衝突するようになっている
従来例と比較し(図12及び図13参照)、作動時の騒音をより一層低減することができ
る。
【0040】
また、本実施形態に係るシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ1によれば、センサ
ウエイト12がセンサホルダ10に衝突することなくセンサレバー7を揺動させることが
でき、センサウエイト12とセンサホルダ10の衝突音が生じないため、センサウエイト
101を衝撃吸収用のエラストマーで被覆する従来例と比較し(図12及び図13参照)
、センサウエイト12を衝撃吸収用のエラストマーで被覆しなくてもよい分だけ、ビーク
ルセンサ1の生産効率を高めることができ、ビークルセンサ1の製品価格及びこのビーク
ルセンサ1を使用するシートベルトリトラクタの価格を低減することができる。
【0041】
なお、本実施形態に係るビークルセンサ1は、センサウエイト12を合成樹脂材料で形
成する態様を例示したが、これに限られず、センサウエイト12をセラミックスや金属で
形成するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係るビークルセンサ1は、支柱11が中実の丸棒形状に形成されて
いるが、これに限られず、先端面45の外縁形状が円形である限り、支柱11が中空のパ
イプ形状でもよい。
【符号の説明】
【0043】
1……ビークルセンサ、5……歯車、6……歯、7……センサレバー、8……爪、10
……センサホルダ、11……支柱、12……センサウエイト、17,18……支持脚部、
41……支柱収容穴、45……先端面、46……天井面、47……テーパー面、L11,
L12……中心軸、P……接触位置、G……重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のセンサホルダの支持脚部に一端側が揺動可能に支持された合成樹脂製のセ
ンサレバーと、
前記センサホルダの支柱の先端に揺動できるように乗せられて、前記センサレバーの下
面に当接する合成樹脂製のセンサウエイトと、を備え、
前記センサウエイトに慣性力が作用して、前記センサウェイトが前記支柱の先端との接
触位置を支点として揺動して姿勢を変えると、前記センサレバーが前記センサウエイトに
よって回動させられて押し上げられ、前記センサレバーの爪がウェビング巻き取りドラム
に取り付けた歯車の歯の間に食い込み、前記歯車のウェビング引き出し方向への回転が阻
止されるようになっており、
前記センサウエイトは、前記センサホルダに衝突することなく、前記センサレバーを揺
動させることができるように、前記支柱の先端で支持されている、
ことを特徴とするシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ。
【請求項2】
前記支柱は、平面視した場合の先端面の外縁形状が円形の棒状体であり、
前記センサウエイトは、前記支柱を収容する支柱収容穴が形成されており、
前記支柱収容穴は、前記支柱の前記先端面に乗せられる天井面で且つ平面視した形状が
円形の天井面と、この天井面から前記支柱の基端側へ向かうにしたがって穴径が大きくな
るテーパー面と、を有し、
前記テーパー面の開き角度をθ1とし、前記センサウエイトの最大揺動角度をθ2とす
ると、θ1/2>θ2であり、
前記センサウエイトの中心軸が前記支柱の中心軸に合致するように、前記支柱の先端面
に前記センサウエイトの天井面を乗せた場合に、前記センサウエイトの重心が前記支柱の
中心軸上に位置する、
ことを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタ用ビークルセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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