説明

シート体、情報書込み方法、情報読取り方法及び読取り装置

【課題】 リモート方式で読込みできる多量の情報を記録可能とする。
【解決手段】 用紙24には、保磁力の異なる磁性体として磁性線材と磁性帯によって形成した複数の磁性ワイヤ30が、所定の間隔で配置されたワイヤ列34として埋め込まれている。プリンタ28では、印刷処理の終了した用紙を所定の速度で搬送しながら、PC26から入力される書込みデータに基づいて、記録ヘッド36の励磁コイルによって、磁性ワイヤを選択的に励磁する。これにより、励磁された磁性ワイヤの磁性帯が着磁し、交番磁界が与えられたときに、応答信号を発する磁性ワイヤと、応答信号を発しない磁性ワイヤが、書込みデータに応じて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保磁力の異なる2種類の磁性材料を用いて所定量の情報の書込みを可能とするシート体、情報書込み方法、情報読取り方法及び情報読取り装置。
【背景技術】
【0002】
紙などの記録媒体をデータキャリアとして、用紙に記録している情報を非接触で読取る方法には、バーコードがある。しかし、このバーコードは、用紙に記録したコードを光学的に読取っており、このために、用紙の表面が汚れているなどしているときには、正確な読取りが困難となる。
【0003】
一方、非接触で用紙などの記録媒体に形成している情報の読取りを可能とする方法としては、バルクハウゼン効果を利用したものがある。この方法では、保持力の低い磁性材料に交番磁界を与えると、磁気反転を生じるときにパルス状の応答信号を発することから、この応答信号の有無を情報とし用いることができる。
【0004】
このようなバルクハウゼン効果を利用するときに、保磁力の異なる磁性材料を用い、保磁力の高い磁性材料を着磁させているか否かによって、保磁力の低い磁性材料が交番磁界に対して応答信号を発するか否かが定まることから、情報の書換えが可能となる。
【0005】
これを用いて、物品の不正持ち出しを防止する各種の提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0006】
例えば、特許文献1、特許文献2の提案では、保磁力の高い磁性材料を着磁させることにより、保磁力の低い磁性材料が交番磁界に対して応答信号を発しないようにすることにより、出庫(持ち出し)が可能となるようにしている。
【0007】
また、特許文献3の提案では、保持力の高い磁性材料の着磁に先立って、保持力の低い磁性材料に交番磁界を与え、この交番磁界に対する応答信号を検出することで、出庫数のカウントを行うようにしている。
【0008】
ところで、小荷物などを送るときには、所定の用紙に顧客が自筆で宛先を記入するが、パーソナルコンピュータやプリンタの普及によって、小荷物など宛先を、プリンタを用いて印刷出力することもある。
【0009】
また、宛先を記載する用紙には、業者が使用するコードが記録されるようになっており、小荷物に貼付されている用紙のコードを読取ることにより、例えば、地区別などに仕分け処理や、トレサビリティに用いられるようになっている。
【0010】
一方、小荷物などの流通の自動化を図るためには、必要な情報をバーコードなどコード化して記録したり、RFIDを用いて記録するなどして、非接触で読取り可能とすることが好ましいが、最終的には目視で確認する必要が有り、このために、非接触で読取り可能とした情報と共に、所定の情報を文字によって記録しておく必要があるが、バーコードやRFIDを用いると、文字を記録する領域が限られることになる。
【0011】
流通される小荷物には、生鮮食品や冷凍、冷蔵品などのように、高湿、低温下での保管が必要となるものがあり、このような小荷物に対して、バーコードやRFIDを用いると、情報の読取りが困難となってしまうことがある。
【0012】
また、葉書や封書などでは、OCR機能を用いて郵便番号を読み込んで、仕分けを行うようにしており、このために、宛先に加えて郵便番号の記入が要求される。しかし、記入されている郵便番号が正確に読取ることができないことがある。
【0013】
このような情報の読取り不良は、多量の小荷物を連続して仕分け処理しようとするときの小荷物の滞留などのスループットの低下を招いてしまい、物流における迅速化のネックとなっている。
【0014】
これに対して、磁性材料を用いて記録した情報は、温度環境や湿度環境の影響を受けても正確な読取りが可能となるが、例えば、郵便番号だけでも10進法で7桁、バイナリコードで24桁が必要となる。
【0015】
しかしながら、従来の提案では、基本的に1ビット(情報の有り/なし)の情報に限られ、大きな情報量の書込みや、書き込んでいる情報の読み出しを行うことができないという問題がある。
【特許文献1】特開平8−185496号公報
【特許文献2】特開2002−211165号公報
【特許文献3】特開2003−182847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、保磁力の異なる磁性材料を用いて、多量の情報を書込み可能とするシート体、該シート体への情報書込み方法、シート体に書き込まれている情報を読取る情報読取り方法及び、読取った情報に基づいた仕分けを可能とする情報読取り装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明のシート体は、保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成し、保磁力の高い磁性体を着磁することにより、保磁力の低い磁性体が交番磁界に対する応答信号を発するのを停止可能とした磁性ワイヤを、その長手方向に沿って所定の間隔で配置して埋め込んでいることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、複数の磁性ワイヤを直線状に配置したワイヤ列を形成し、該ワイヤ列内で、各磁性ワイヤが交番磁界に対して応答信号を発するか否かの組み合わせ情報を保持する。
【0019】
これにより、磁性ワイヤの数に応じて多数の情報を保持することができる。
【0020】
このような本発明のシート体としては、複数の前記ワイヤ列が互いに並行に配置されていることがより好ましく、これにより、多量の情報の書込みが可能となる。
【0021】
すなわち、本発明では、保磁力の異なる二種類の磁性帯によって形成している磁性ワイヤを、所定間隔で埋め込んだワイヤ列を形成し、かつ、各磁性ワイヤが交番磁界に対する応答信号を発するか否かによって、シート体に書き込む情報を表現する情報の表現方法を含むものである。
【0022】
また、本発明のシート体では、書き込まれる前記情報の先頭を特定可能な識別子が、前記ワイヤ列の何れか少なくとも一つに形成されていても良く、これにより、記録されている情報の的確な読込みが可能となる。
【0023】
また、本発明の情報書込み方法は、保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれているシート体に、所定の情報を書き込む情報書込み方法であって、前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を着磁する着磁手段を、前記ワイヤ列の列方向に沿って相対移動させながら、前記書き込む情報に基づいて前記保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報を書き込むことを特徴とし、これにより、迅速な情報書込みが可能となる。
【0024】
また、本発明の情報書込み方法では、前記シート体に複数の前記ワイヤ列が設けられている時に、前記ワイヤ列のそれぞれに対する前記着磁手段を設けて、複数の着磁手段を一体で前記シート体に対して相対移動することが好ましい。
【0025】
また、本発明の情報読取り方法は、保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれていると共に、前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報が書き込まれたシート体から、該情報を読取る情報読取り方法であって、前記磁性ワイヤに交番磁界を与え、交番磁界に対して前記2種類の磁性体のうち保磁力の低い磁性体が発する応答信号を検知可能とする検知手段を、前記ワイヤ列の列方向に沿って相対移動しながら、前記磁性ワイヤのそれぞれの位置に応じた応答信号の有無を読取ることを特徴としており、これにより、迅速な情報読取りが可能となる。
【0026】
さらに、本発明を適用した情報読取り装置は、保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれていると共に、前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報が書き込まれたシート体が貼付された対象物を、前記シート体に書き込まれた情報に基づいて仕分けるための情報読取り装置であって、前記対象物を所定の搬送速度で搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記対象物に貼付されている前記シート体の前記ワイヤ列に対向して設けられて、交番磁界を付与する励磁コイルと、前記励磁コイルによって付与された交番磁界によって前記2種類の磁性体のうちの保磁力の低い磁性体が応答信号を発したときに、該応答信号を検知する検知手段と、前記ワイヤ列の前記磁性ワイヤのそれぞれからの前記応答信号の有無から前記シート体に書き込まれている情報を判定することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の情報読取り装置においては、前記励磁コイルをループ状に形成して、該ループ内を前記対象物が前記搬送手段によって搬送されるものであってもよく、これにより、シート体に設けている磁性ワイヤに、効率的に交番磁界を付与することができる。
【0028】
また、本発明の情報読取り装置では、前記励磁コイルが、前記被対象物の上下面の所定の領域を開放するように磁気シールドされた第1の励磁コイルと、前記被対象物の搬送方向の側面側の所定の領域を開放するように磁気シールドされた第2の励磁コイルと、を含むことができ、さらに、前記シート体に複数の前記ワイヤ列が形成されているときに、前記ワイヤ列のそれぞれに対して前記第1及び第2の励磁コイルと、前記検知コイルが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、磁性ワイヤを所定間隔で配置しているワイヤ列を設けることにより、シート体に多数の情報を書き込むことができる。また、本発明では、シート体に書き込んでいる情報に基づいて仕分けなどを行うときに、円滑で効率的な作業が可能となると言う優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本実施の形態に適用した配送システム10の概略構成を示している。配送システム10では、顧客から預かった小荷物12を、指定された宛先へ配達する。
【0031】
この配送システム10では、顧客から小荷物を預かった集荷センターなど集める集荷工程14、集荷した小荷物12を、例えば配送地域ごとなどに仕分ける仕分け工程16、仕分け工程16で仕分けられた小荷物12のそれぞれを、該当配送地域の配送センターなどへ配送する配送工程18、配送された小荷物12を宛先に応じた地区ごとに仕分ける仕分け工程20及び、地区ごとに仕分けられた小荷物12のそれぞれを指定されている宛先へ配達する配達工程22、とによって構成されている。
【0032】
なお、本実施の形態に適用した配送システム10の基本的な処理の流れは、従来公知の構成を適用でき、ここでは詳細な説明を省略する。また、小荷物12は、ダンボールなどに梱包されたものであっても良く、梱包用の袋に袋詰めされたものであっても良く、封書であっても良い。また、小荷物12は、生鮮食品などであっても良く、冷蔵、冷凍品であっても良いが、ここでは、一例としてダンボールなどの箱体として説明する。
【0033】
配達される小荷物12は、所定の配送依頼用紙(以下、用紙24とする)に宛先などの必要事項を記入し、記入した用紙24を、配送票として小荷物12の所定位置に貼付して、配送を依頼する。
【0034】
これにより、仕分け工程16には、所定位置に用紙24が貼付された小荷物12が集荷される。
【0035】
一方、本実施の形態に適用した配送システム10では、用紙24への宛先の記載に、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、PC26とする)とプリンタ28を用いるようにしている。PC26には、宛名印刷用などの所定のソフトウェアがインストールされており、このソフトウェアを用い、宛先などの必要事項を入力することにより、用紙24へ宛先、依頼人などの所定事項(以下、総称して「宛先等」とする)が印刷されるようにしている。
【0036】
図2には、プリンタ28から印刷出力される用紙24の概略を示している。なお、ここで、用紙24に印刷される項目は、配送に必要な項目であればよく、また任意のフォームを用いることができる。
【0037】
この用紙24には、印刷方向を目視で確認可能とする矢印Aが形成されており、例えば、この矢印Aに示す方向が搬送方向となるようにプリンタ28に装填することにより、適正な向き及び位置に宛先などが印刷されるようにしている。
【0038】
一方、図3に示すように、本実施の形態に係る配送システム10に適用する用紙24には、第1の磁性材料となる磁性線材30と、第2の磁性材料となる磁性帯32が所定位置に埋め込まれている。なお、図3に示す形態に代えて後述する図5に示す形態を適用することもある。
【0039】
図3に示すように、磁性線材30は、所定の長さLの細線状に形成され、用紙24の搬送方向となる矢印A方向に沿って、例えば、所定の間隔Dで直線状に配列されている。また、磁性帯32は、磁性線材30のそれぞれに対して、磁性線材30を覆うように設けられている。
【0040】
磁性線材30としては、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファスシリコンなど、保磁力が比較的低く、ヒシテリシスループが略矩形状となっている任意の磁性材料を用いることができる。また、磁性線材30は、例えば、外径が30μm程度で、長さLが少なくとも7mm以上、好ましくは10mm以上の略同じ長さとなっている。
【0041】
磁性帯32は、磁性線材30より保磁力の高い磁性材料を用いて形成している。すなわち、保磁力の異なる磁性材料を用いて、磁性線材30と磁性帯32を形成している。
【0042】
また、磁性帯32は、例えば、所定の磁性材料を粉体状に形成し、この粉体状の磁性材料を、磁性線状材料である磁性線材30に被せるなどして磁性線材30を覆うように形成することができる。
【0043】
このような磁性線材30と磁性帯32は、用紙24を紙で形成するときに、用紙24に漉き込むようにして埋め込むことができる。このとき、磁性線材30の外径を30μ程度とすることにより、用紙24の紙厚が80μm程度であっても、用紙24の表面に凹凸を生じさせてしまうのをなくし、プリンタ28での印刷処理を可能とすることができる。
【0044】
また、磁性線材30と磁性帯32の埋め込みは、紙や樹脂などのシート体、フィルム、アルミニウムなどの金属箔への埋め込みも可能であり、このときには、該当シート体を2枚重にして形成するようにし、その間に磁性線材30と磁性帯32を挟みこむなどの方法を用いて埋め込むことができる。
【0045】
磁性線材30は、保磁力が低くヒシテリシスループが略矩形形状となっていることにより、交番磁界が与えられることにより、磁化反転ポイントでパルス状の応答信号を発する。この応答信号を検知することにより、磁性線材30が検知可能となっている。
【0046】
これに対して、保磁力の高い磁性帯32は、強磁界が与えられることにより着磁し、磁性線材30にバイアス磁界を与える。磁性帯32が着磁して磁性線材30に所定のバイアス磁界を与えている状態で、交番磁界を与えても、磁性線材38に磁化反転が生じないようにしている。
【0047】
すなわち、磁性帯32は、着磁されることにより、磁性線材30にバイアス磁界を与え、交番磁界が与えられたときに、この交番磁界をシフトし、磁性線材30に磁化反転が生じないようにしている。これにより、磁性帯32が着磁している状態では、磁性線材30が検知されない、磁性線材30の消磁状態となるようにしている。
【0048】
なお、磁性帯32は、着磁状態で所定の磁界が加えられることにより消磁状態に変化するようになっており、磁性帯32が消磁することにより、磁性線材30が交番磁界に対して応答可能な着磁状態に移行するようになっている。
【0049】
配送システム10では、用紙24に埋め込んでいる複数の磁性線材30及び磁性帯32を用いて、所定の情報を記録するようにしている。
【0050】
すなわち、磁性線材30のそれぞれは、着磁状態と消磁状態の2つの状態を取り得るようになっていることから、一つの磁性線材30を用い、「0」(例えば、消磁状態)又は「1」(例えば着磁状態)の1ビットのデータを表すことができ、このような磁性線材30を等間隔で配列することにより、磁性線材30の数だけのビット数のデータを記録することができる。
【0051】
なお、以下では、一つのデータを表すのに用いる一組の磁性線材30と磁性体32を総称して磁性ワイヤ30とし、情報は、磁性ワイヤ30が着磁されているか消磁されているかによって示すように説明する。
【0052】
本実施の形態では、用紙24に多量の情報を記録可能とするために、磁性ワイヤ30を、用紙24の方向と直交する搬送幅方向に沿って2列に配置されている(以下、ワイヤ列34とする)。
【0053】
なお、ここでは、2列のワイヤ列34を形成して説明するが、本発明は、これに限るものではなく、ワイヤ列34は、1列であってもよく、3列以上であって良く、列数及びそれぞれのワイヤ列34での磁性ワイヤ30の数は、記録したい情報量に応じて設定するものであれば良い。また、不要となる磁性ワイヤ30は、ダミーデータとして扱うようにしても良い。
【0054】
図4に示すように、プリンタ28には、記録ヘッド36が設けられている。なお、プリンタ28としては、プリントエンジンとして電子写真プロセスを用いるレーザプリンタや、インクジェット方式を用いるインクジェットプリンタなどの公知の構成を適用でき、図4では、画像形成部(プリントエンジン)の図示を省略している。
【0055】
印刷処理の終了した用紙24は、記録ヘッド36に対向する位置を、所定の速度vで搬送されながら通過して、排出されるようになっている。
【0056】
この記録ヘッド36には、用紙24上の磁性体列34のそれぞれが対向するように励磁コイル38が設けられている。また、プリンタ28には、励磁コイル38の作動を制御する書込みコントローラ40が設けられている。
【0057】
書込みコントローラ40は、励磁コイル38のオン/オフを制御するようになっており、励磁コイル38は、オンされることにより所定強度の磁界を発生する。このときに、用紙24上の磁性ワイヤ30が対向していると、磁性帯32が着磁され、磁性ワイヤ30が消磁状態となる。
【0058】
また、プリンタ28に接続しているPC26には、コード変換部42が設けられている。コード変換部42では、例えば、PC26に入力される宛先情報を、予め設定しているバイナリコードに変換し、書込みデータとして書込みコントローラ40へ出力する。
【0059】
書込みコントローラ40では、用紙24の搬送に同期させながら、コード変換部42から入力される書込みデータに基づいて励磁コイル38をオン/オフする。これにより、各ワイヤ列34の磁性ワイヤ30が選択的に着磁され、書込みデータが用紙24に書き込まれる。
【0060】
一般に、プリンタ28での用紙24の搬送速度は、高速プリンタであっても、1m/sec以下で有り、このときに、磁性ワイヤ30の消磁を的確に行うためには、磁性ワイヤ(磁性線材)30の長さLが7mm以上、間隔Dが5mm以上であればよく、ここから、例えば、磁性ワイヤ30の長さLを10mm、間隔Dを5mmとし、用紙24の搬送方向に沿った長さが200mmであると、各ワイヤ列34を、12本の磁性ワイヤ30によって形成することができ、このワイヤ列34を2本設けることにより、最高で24ビットのデータを書き込むことができる。
【0061】
なお、ここでは、文字プリント(宛先印刷)時と同じサイクルでデータ(情報)書込みを行うようにしたが、文字プリントを一旦終えた後、別のサイクルでデータ書込みを行うようにしても良い。また、情報の書込み方法としては、これに限定せず、磁性ワイヤ30を所望の位置で物理的に切断するなどの方法を適用することもできる。
【0062】
さらに、ここでは、記録ヘッド36に対して用紙24を一定速度で移動して書込みデータの記録を行うようにしているが、データの書込みは、記録ヘッド36を移動させて行ってもよく、また、用紙24と記録ヘッド36の双方を移動させて行うものであっても良い。
【0063】
一方、用紙24にデータを書き込んだときに、適正な読取りを可能とするためには、データの先頭又は末尾を明確にする必要がある。
【0064】
ここから、本実施の形態では、ワイヤ列34の一端側に2本の磁性ワイヤ30を並べて配置している。すなわち、ワイヤ列34の一端に、2本の磁性ワイヤ30を配置し、この磁性ワイヤ30を消磁せずに着磁状態とするようにしている。
【0065】
交番磁界に対する磁性ワイヤ30の応答信号は、磁性ワイヤ30の長さLが長い法が強くなるが、磁性ワイヤ30の数が多くなっても応答信号が強くなる。
【0066】
ここから、図4及び図5(A)に示すように、本実施の形態では、2本の磁性ワイヤ30を例えば、書込みデータの先頭(矢印A方向側)に設けるようにし、また、この2本の磁性ワイヤ30を消磁しないようにして、先頭ビット34Aが形成されるようにしている。
【0067】
これにより、例えば、図5(B)に示すように書込みデータが記録される。このとき、先頭の磁性ワイヤ30を着磁していることにより、先頭ビット34A及びデータの配列方向が明確となり、的確な読取りが可能となる。なお、ここでは、各ワイヤ列34に先頭ビット34Aを形成しているが、何れか一方のワイヤ列34のみに先頭ビット34Aを設けるようにしても良い。
【0068】
小荷物12には、このようにしてデータが書き込まれている用紙24が貼付けられ、配送システム10の仕分け工程16、20では、この用紙24に書き込まれているデータを読取って仕分け処理を行う。すなわち、本実施の形態では、仕分けに必要な情報を、用紙24に書き込むようにしている。
【0069】
なお、仕分け工程16、20での処理は、基本的構成が同じであり、ここでは、仕分け工程16を例に説明する。
【0070】
図6に示すように、仕分け工程16には、ベルトコンベヤ44、46が連接され、ベルトコンベヤ44、46の間に、ターンテーブル48が設けられている。
【0071】
集荷されてきた小荷物12は、最上流のベルトコンベヤ44のコンベヤベルト44A上に載せられてターンテーブル48上へ搬送される。ターンテーブル48では、ベルトコンベヤ44から送り込まれる小荷物12を載置して回転可能となっており、また、この小荷物12を、ベルトコンベヤ46のコンベヤベルト46A上へ送り込む。なお、ここでは、小荷物12の搬送手段としてベルトコンベヤ44、46を用いているが、搬送手段はこれに限らずローラコンベヤなどの他の構成を適用することができる。
【0072】
ベルトコンベヤ44のコンベヤベルト44A上には、箱体状の小荷物12が、用紙24を任意の向きに向けて載せられる。ここから、ターンテーブル48では、用紙12が、小荷物12の搬送方向の前面側又は後面側になっていると、該当小荷物12を載せた状態で回転(約90°)して、小荷物12の用紙24の向きを変えるようにしている。
【0073】
これにより、ベルトコンベヤ46のコンベヤベルト46A上には、用紙12が、上面、下面又は側面の何れかに向けられた状態で小荷物12が送り込まれる。なお、コンベヤベルト44A上の小荷物12が搬送方向に対して傾くことがあり、このときにも、ターンテーブル48によって傾きを修正するように回転させて、コンベヤベルト46A上に送り込むようにしても良い。
【0074】
一方、ベルトコンベヤ46には、読取り装置50が設けられている。図7には、読取り装置50の概略構成を示している。
【0075】
読取り装置50は、交流磁界を発する電力を供給する電源52と、電源52から供給される電力によって交流磁界を発する複数の励磁コイル54を備えている。また、励磁コイル54のそれぞれに対して複数の検知コイル56が設けられている。
【0076】
検知コイル56には、励磁コイル54が発する交流磁界に応じた電流が誘起されると共に、交流磁界に応じて磁性ワイヤ30が発するパルス状の応答信号に応じた電流が誘起されるようになっている。
【0077】
また、読取り装置50には、検知コイル56のそれぞれに対応して、ハイパスフィルタ(HPF)58、積分器60、A/D変換器(A/DC)62及び、読取り装置50の作動を制御するコントローラ64が設けられている。
【0078】
検知コイル56のそれぞれに誘起される電流は、HPF58に入力されるようになっており、HPF58のそれぞれでは、入力された電流から低周波数成分を除去している。電源52の周波数は、磁性ワイヤ30が発する応答信号の周波数よりも低くなっており、HPF58では、電源52の周波数成分を除去して、応答信号成分のみを通過させるようにしている。
【0079】
積分器60のそれぞれでは、HPF58を通過した電流を積分処理し、A/D変換器62は、積分処理された電気信号をA/D変換する。これにより、検知コイル56で検知した電流に、磁性ワイヤ30から発生される応答信号が含まれることにより、該応答信号の強度に応じた電圧が、デジタルデータとしてコントローラ64に入力される。
【0080】
コントローラ64では、このデジタル信号を、小荷物12の搬送速度に同期したタイミングで読み込むようになっている。
【0081】
一方、図8に示すように、励磁コイル54は、外形形状が矩形のループ状に形成されており、小荷物12を載置しているコンベヤベルト46Aが、励磁コイル54のループ内を移動するようになっている。励磁コイル54をループ状に形成することにより、ループ内では、ループ外に比べて磁界が強くなり、効率的に交番磁界を形成することができる。
【0082】
これにより、ベルトコンベヤ46によって搬送される小荷物12が、励磁コイル54のループ内を通過するようになっている。
【0083】
また、読取り装置50では、小荷物12の上下面に用紙24が貼付されているときに、この用紙24の搬送方向右側の磁性体列34用の励磁コイル54(以下、特に区別するときは、励磁コイル54Aとする)、搬送方向左側の磁性体列34用の励磁コイル54(以下、特に区別するときは、励磁コイル54Aとする)、小荷物12の左右面に用紙24が貼付されているときに、この用紙24の上方側の磁性体列34用の励磁コイル54(以下、特に区別するときは、励磁コイル54Cとする)及び、下方側の磁性体列34用の励磁コイル54(以下、特に区別するときは、励磁コイル54Dとする)、が設けられている。
【0084】
本実施の形態では、用紙24の左右に1列ずつのワイヤ列34を設けており、ここでは、一例として、励磁コイル54B、54Dが、小荷物12の搬送方向に対して用紙24の右側のワイヤ列34に対応し、励磁コイル54A、54Cが、小荷物12の搬送方向に対して用紙24の左側のワイヤ列34に対応するようにしている。
【0085】
仕分け工程16では、ベルトコンベヤ46へ小荷物12を送り込むときに、用紙24が貼付されている面が搬送方向の前面と後面に向かないようにしており、これにより、小荷物12に貼付している用紙24及び用紙24に形成しているワイヤ列34が、励磁コイル54A〜54Dの何れかに対応するようになっている。
【0086】
励磁コイル54A、54B、54C、54Dのそれぞれには、磁気シールド66A、66B、66C、66D(総称するときには、磁気シールド66とする)が設けられており、磁気シールド66A〜66Dのそれぞれは、所定の領域を除いて磁気が漏れでないようにして、励磁コイル54A〜54Dが形成する交番磁界の領域を制限している。
【0087】
すなわち、励磁コイル54Aに設けている磁気シールド66Aは、上下のそれぞれで中央部よりも搬送方向右側の領域を所定幅で解放し、励磁コイル54Bに設けている磁気シールド66Bは、上下のそれぞれで中央部よりも搬送方向左側の領域を所定幅で解放している。
【0088】
また、励磁コイル54Cに設けている磁気シールド66Cは、側方側のそれぞれで、上下方向の中央部よりも上方の領域を所定幅で解放し、励磁コイル54Dに設けている磁気シールド66Dは、側方側のそれぞれで、上下方向の中央部よりも下方の領域を所定幅で解放している。なお、このような磁気シールドとしては、パームロイドなどの磁気吸収体を用いることができる。
【0089】
これにより、コンベヤベルト46Aに載せられて移動する小荷物12では、用紙24に形成されている磁性体列34のそれぞれが、励磁コイル54A〜54Dの何れかの解放領域に対向する位置を通過するようになっている。
【0090】
このような励磁コイル54A〜54Dは、同一形状の励磁コイル54で磁気シールド66の位置を変えることにより簡単に得られる。
【0091】
図7に示すように、読取り装置50では、励磁コイル54A〜54Dのそれぞれに対して、2台ずつの検知コイル56が設けられており、それぞれの検知コイル56が、励磁コイルア54で、磁気シールド66から解放された領域に対向して配置されている。
【0092】
すなわち、励磁コイル54A、54Bでは、検知コイル54の一方が小荷物12の上方側の解放領域に設けられ、他方が下方側の解放領域に設けられている。また、励磁コイル54C、54Dでは、検知コイル54の一方がコンベヤベルト46Aの右側の解放領域に設けられ、他方がコンベヤベルト46Aの左側の解放領域に設けられている。
【0093】
これにより、小荷物12がベルトコンベヤ46によって搬送されるときに、小荷物12に貼付している用紙12の磁性ワイヤ30が、何れかの検知コイル56に順に対向し、検知コイル56では、消磁されていない磁性ワイヤ30が対向したときに、この磁性ワイヤ30が、励磁コイル54によって与えられる交番磁界に対する応答信号を検知する。
【0094】
各励磁コイル54で検知した応答信号は、順にコントローラ64に読み込まれる。また、検知コイル54に、先頭ビット34Aを形成している2本の磁性ワイヤ30が対向したときには、検知コイル56で検知する応答信号が強くなる。あるいは、2本の磁性ワイヤ30を形成するのではなく、1本の磁性ワイヤ30でも表現できる情報量を1ビット分失うが、先頭ビットは必ず消磁されなくて、常に1を表すようにしても良い。また、磁性ワイヤ30からの応答信号が検知コイル56で検知されるタイミングであるにもかかわらず、応答信号が検知されないときには、該当磁性ワイヤ30が消磁されていると判断することができる。
【0095】
ここから、コントローラ64では、検知した応答信号から先頭ビット34Aを判定し、判定した先頭ビット34Aと、これに続く応答信号の有無からバイナリデータ(書込みデータ)を判定し、判定結果から用紙24に書き込まれている情報を解析する。
【0096】
仕分け工程16では、解析した情報に基づいて、コンベヤベルト46から送り出されるも荷物の仕分け作業を行うようにしている。
【0097】
このように構成されている配送システム10では、小荷物12の配送を依頼する顧客が、PC26とプリンタ28を用いて用紙24に必要事項を入力し、配送票を作成し、作成した配送票(用紙24)を小荷物12の所定位置に貼付する。
【0098】
このとき、プリンタ28では、目視はできないがリモート読込み可能とした情報を用紙24に書き込むようにしている。
【0099】
図9には、このときにプリンタ28で実行される印刷処理の流れを示している。このフローチャートでは、最初のステップ100で、PC26から出力された印刷ジョブを受信すると、肯定判定されて実行される。なお、PC26では、配送票とする用紙24の印刷処理を行うときには、印刷ジョブに、用紙24へ書き込む書込みデータを合わせて出力するようにしている。
【0100】
プリンタ28では、PC26から印刷ジョブが出力されてステップ100で肯定判定するとステップ102へ移行し、この印刷ジョブを読み込む。
【0101】
この後、ステップ104では、受信した印刷ジョブが用紙24へ宛先等を印刷する配送票の作成か否かを確認し、通常の印刷処理であれば、ステップ104で否定判定してステップ106へ移行し、通常の印刷処理を実行する。
【0102】
これに対して、配送票の印刷処理であるときには、ステップ104で肯定判定してステップ108へ移行し、用紙24が装填されているか否かを確認する。このときに、用紙24が装填されていなければ、ステップ108で否定判定して、ステップ110へ移行し、用紙24が装填されていないことを報知する。また、次のステップ112では、宛名印刷のみを行うか否かを確認する。
【0103】
このときに、宛名印刷のみを行うように指定されると、ステップ112で肯定判定してステップ114へ移行し、プリンタ28に装填されている記録紙などを用いた通常の印刷処理(宛名印刷)を行う。
【0104】
また、用紙24を用いた印刷処理を行うときには、ステップ112で否定判定されることにより、ステップ108へ移行し、用紙24が装填されたことを再確認する。
【0105】
このようにして用紙24が装填されていることを確認してステップ108で肯定判定されるとステップ116へ移行し、先ず、この用紙24に対する印刷処理を行う。
【0106】
この後、ステップ118では、印刷ジョブとして宛先等のデータと共に送信されてきている書込みデータに基づいて記録ヘッド36の励磁コイル38を作動させて磁性ワイヤ30の着磁/消磁を行うことにより、ワイヤ列34を用いて用紙24にデータを書き込む。
【0107】
これにより、宛先等と共に、所定のデータが書き込まれた用紙24が得られる。なお、ここでの説明は、用紙24の印刷処理及びデータの書込み処理の概略を示すものであり、印刷処理及び書込み処理の流れはこれに限定するものではない。
【0108】
このようにして作成された用紙12が貼付された小荷物12は、配送会社に渡されることにより仕分け工程16に集荷される。仕分け工程16では、この小荷物12を、用紙24に書き込まれているデータに基づいて仕分け処理する。
【0109】
仕分け工程16では、先ず、この小荷物12をベルトコンベヤ44によってターンテーブル48へ搬送する。このとき、小荷物12の用紙24が貼付されている面が、搬送方向側(搬送方向上流側又は下流側)に面しているときには、この小荷物12がターンテーブル48上に載ったときに、ターンテーブル48を回転させて、小荷物12の向きを変える。
【0110】
このようにして用紙24の貼付されている面が、上下又は左右の何れかになるようにして、この小荷物12をターンテーブル48からベルトコンベヤ46へ送り出す。
【0111】
このベルトコンベヤ46には、読取り装置50が設けられており、小荷物12は、ベルトコンベヤ46のコンベヤベルト46Aに載置されて移動するときに、用紙24に書き込まれているデータが読取られる。
【0112】
読取り装置50には、矩形のループ状に形成された励磁コイル54(54A〜54D)が設けられており、小荷物12は、この励磁コイル54A〜54D内を所定速度で順に通過する。
【0113】
励磁コイル54A〜54Dは、それぞれに設定されている所定の領域を残して磁気シールド66A〜66Dによって囲われている。これにより、励磁コイル54では、磁気シールド66から除かれた領域で交番磁界を形成し、該当領域に磁性ワイヤ30が対向したときに、該当磁性ワイヤ30から発する応答信号を、検知コイル56で検知することができるようになっている。また、磁気シールド66によって隠蔽された領域では、交番磁界を形成せず、この領域に磁性ワイヤ30が対向しても、磁性ワイヤ30に交番磁界を与えてしまうことがないと共に、応答信号があっても、この応答信号を検知することがない。
【0114】
また、読取り送致50のコントローラ20では、ベルトコンベヤ46による小荷物12の搬送速度、磁性ワイヤ30の長さL及び磁性ワイヤ30の間隔Dに基づいて設定しているタイミングで、各検知コイル56の検知結果を読み込んで記憶し、記憶している検知結果から、先頭ビット34Aを判断すると共に、各磁性ワイヤ30が持つ情報を判断する。
【0115】
これにより、用紙24に書き込まれているバイナリコードに応じたデータが得られ、このデータから書込みデータ(書込み情報)を判断する。
【0116】
仕分け工程16では、この読取り装置50の判断結果に基づいて、各小荷物12を、配送先の地域別などに分類する。
【0117】
一般に、バルクハウゼン効果を用いたときの磁性線材30の読取り量、すなわち、磁性線材30によって形成されている1列分のデータの読取り量は、小荷物12の移動速度が速くなると減少し、搬送速度が1.5m/secで15ビット、2.0m/secで10ビット、4m/secで5ビットとなる。例えば、郵便物の仕分けでは、3.0m/sec以上の高速仕分けが要求されるが、その場合には、情報表現を1列から数列に増やすことにより、高速読取りによる1列で読み込める情報量の減少を補うことができる。したがって、少なくとも1.5m/secで小荷物12を搬送する場合と同様、より高速な移動速度でも用紙24に書き込んでいるデータの読取りが可能となり、小荷物12を高速で搬送しながら、該当小荷物12の仕分け作業を行うことができる。
【0118】
したがって、仕分け工程16では、確実な仕分け作業の高速化が可能となり、スループットの向上を図ることができる。
【0119】
一方、本実施の形態では、ワイヤ列34に、先頭ビット34Aを設け、この先頭ビット34に続いて、バイナリデータとして所定の情報を書き込むようにしたが、情報の書込み方法はこれに限るものではない。
【0120】
例えば、図10(A)に示すように、ワイヤ列34の一端の磁性ワイヤ30に、2本の磁性ワイヤ30(磁性帯32を設けていない磁性ワイヤ30)を形成した先頭ビット34Bを設けるようにしても良い。
【0121】
これにより、例えば、最初のデータを「1」とするときには、図10(B)に示すように、先頭ビット34Bに並ぶ磁性ワイヤ30を着磁状態とし、最初のデータを「0」とするときには、図10(C)に示すように、先頭ビット34Bに並ぶ磁性ワイヤ30を消磁するようにしても良い。
【0122】
これにより、ワイヤ列34の全ての磁性ワイヤ30を用いて情報の書込みを行うことができる。
【0123】
また、これに限らず、磁性ワイヤ30の間隔を段階的に増加又は減少させることにより、先頭ビットなどを設定せずにデータの方向が明確になるようにしても良い。
【0124】
また、磁性ワイヤ30の長さ、太さ、素材の物性、本数、一つの情報に割り当てるスペースなどによって、検知コイル56で検知される応答信号の強度が変化することから、これらを用いて、書込み情報の表現を行うようにしても良い。
【0125】
このときには、例えば、図11(A)に示すように、消磁状態、細線、太線の3段階で情報を書き込むようにしても良い。また、図11(B)に示すように、消磁状態(破線)と、半分の着磁状態(図11(B)の紙面右側の消磁状態、紙面左側の着磁状態)で、3段階で情報を書き込むようにしても良く、これにより、2進法(バイナリデータ)ではなく3進法での書込みが可能となる。
【0126】
多進法でのデータ書込みを行うことにより、2進法に比べてより多くの情報を書き込むことが可能となる。
【0127】
一方、本実施の形態では、小荷物12が、傾かずに真っ直ぐに励磁コイル54内を移動するように説明しているが、小荷物12が傾いた状態で、励磁コイル54内を移動することが考えられる。
【0128】
検知コイル56に検知される磁性ワイヤ30の応答信号は、小荷物の移動方向に沿った長さによって変化するために、小荷物12が傾くと応答信号も弱くなる。
【0129】
ここから、図12(A)に示すように、励磁コイル54A〜54Dのそれぞれを所定の角度(例えば、小荷物12の移動方向に対して45°)傾斜させて配置するようにしても良い。
【0130】
このときに、図12(B)に示すように、励磁コイル54A、54Bと励磁コイル54C、54Dを、互いに交差するように配置しても良く、これにより、省スペース化が可能となる。このようにゲートを設置すると、小荷物12の用紙24側の面を上下側面になるように丁寧にベルトコンベヤ46の進行方向に平行に並べたりする煩わしい作業を行う必要がなくなる。
【0131】
また、本実施の形態では、励磁コイル54として矩形形状のループを形成したが、例えば、図13(A)に示すように、C字状に形成した励磁コイル70を用い、小荷物12の各面の用紙24に対応するように配置してもよい。
【0132】
さらに、図13(B)に示すように、小荷物12の各面に対応して小型の例示コイル72を配置しても良い。なお、図13(A)では、励磁コイル54A、54Bに対応する励磁コイル70(70A、70B)を示し、図13(B)では、励磁コイル72(72A、72B)を示している。
【0133】
また、本実施の形態では、ターンテーブル48を設けて、小荷物12の搬送方向に沿って面を、側方に向けるようにしたが、例えば、図14に示すように、垂直方向に対して所定の角度θだけ傾斜させた励磁コイル54Eを設けて、用紙24が小荷物12の前面側又は後面側にあるときにも読込みを可能とするようにしても良い。なお、このときの角度θとしては、45°〜60°の範囲とすることができ、傾倒方向は、小荷物の搬送方向の上流側又は下流側の何れでも良い。しかし、小荷物12の側面や上下面に貼られた用紙24を読むためにも、45度が最適であることが言うまでもない。
【0134】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、紙によって形成した用紙24を用いたが、これに限らず、シート体としては、樹脂プレート、樹脂フィルム、金属箔などの任意の材質を適用することができる。
【0135】
さらに、本実施の形態では、小荷物12を配送するときの仕分け工程16(20)で用紙24に記録している情報を読取って、この情報に基づいた処理を行うようにしたが、本発明は、シート体を搬送しながら、リモート方式でシート体に書き込んでいる情報を読取る任意の構成に適用することができる。
【0136】
このとき、シート体を搬送するのみならず、シート体と検知手段とを相対移動しながら、シート体に書き込んでいる情報を読み込むものであってもよい。
【0137】
さらに、本実施の形態では、シート体から読取った情報に基づいて、仕分け処理を行うように説明しているが、これに限らず、書き込んでいる情報に基づいた任意の処理に適用することができ、また、用紙24などのシート体に書き込む情報は、所定の処理を選択的に行うための情報など、任意の情報の書込みに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本実施の形態に係る配送システムを示す概略図である。
【図2】印刷処理した用紙の概略図である。
【図3】用紙に埋め込むワイヤ列の基本構成を示す概略図である。
【図4】PC及びプリンタの要部の概略構成図である。
【図5】(A)は先頭ビットを設けたワイヤ列を示す概略図、(B)は(A)のワイヤ列に情報を書き込んだ一例を示す概略図である。
【図6】仕分け工程の要部の概略構成図である。
【図7】読取り装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】励磁コイルの配置を示す概略斜視図である。
【図9】プリンタでの印刷処理の概略を示す流れ図である。
【図10】(A)は用紙に形成する先頭ビットの他の一例を示す概略図、(B)及び(C)はそれぞれ(A)のワイヤ列に情報を書き込んだ一例を示す概略図である。
【図11】(A)及び(B)は情報の書込み方法の他の一例を示す概略図である。
【図12】(A)及び(B)は励磁コイルの配置の他の例を示す概略図である。
【図13】(A)及び(B)は、本発明に適用可能な励磁コイルの他の例を示す概略図である。
【図14】搬送方向の前面又は後面側の用紙から情報を読み込み可能とする励磁コイルの配置例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0139】
10 配送システム
12 小荷物(対象物)
16、20 仕分け工程
24 用紙(シート体)
26 PC
28 プリンタ
30 磁性ワイヤ(磁性線材、磁性体)
32 磁性帯(磁性体)
34 ワイヤ列
34A、34B 先頭ビット(識別子)
36 記録ヘッド
38 励磁コイル
46 ベルトコンベヤ(搬送手段)
50 読取り装置
54(54A〜54D) 励磁コイル
56 検知コイル
64 コントローラ
66(66A〜66D) 磁気シールド
70(70A、72B)、72(72A、72B) 励磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成し、保磁力の高い磁性体を着磁することにより、保磁力の低い磁性体が交番磁界に対する応答信号を発するのを停止可能とした磁性ワイヤを、その長手方向に沿って所定の間隔で配置して埋め込んでいることを特徴とするシート体。
【請求項2】
複数の前記ワイヤ列が互いに並行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート体。
【請求項3】
書き込まれる前記情報の先頭を特定可能な識別子が、前記ワイヤ列の何れか少なくとも一つに形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート体。
【請求項4】
保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれているシート体に、所定の情報を書き込む情報書込み方法であって、
前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を着磁する着磁手段を、前記ワイヤ列の列方向に沿って相対移動させながら、前記書き込む情報に基づいて前記保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報を書き込むことを特徴とする情報書込み方法。
【請求項5】
前記シート体に複数の前記ワイヤ列が設けられている時に、前記ワイヤ列のそれぞれに対する前記着磁手段を設けて、複数の着磁手段を一体で前記シート体に対して相対移動することを特徴とする情報書込み方法。
【請求項6】
保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれていると共に、前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報が書き込まれたシート体から、該情報を読取る情報読取り方法であって、
前記磁性ワイヤに交番磁界を与え、交番磁界に対して前記2種類の磁性体のうち保磁力の低い磁性体が発する応答信号を検知可能とする検知手段を、前記ワイヤ列の列方向に沿って相対移動しながら、前記磁性ワイヤのそれぞれの位置に応じた応答信号の有無を読取ることを特徴とする情報読取り方法。
【請求項7】
保磁力の異なる二種類の磁性体によって所定長さの線状に形成された磁性ワイヤが所定間隔で配置されたワイヤ列が埋め込まれていると共に、前記2種類の磁性体のうち、保磁力の高い磁性体を選択的に着磁することにより情報が書き込まれたシート体が貼付された対象物を、前記シート体に書き込まれた情報に基づいて仕分けるための情報読取り装置であって、
前記対象物を所定の搬送速度で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記対象物に貼付されている前記シート体の前記ワイヤ列に対向して設けられて、交番磁界を付与する励磁コイルと、
前記励磁コイルによって付与された交番磁界によって前記2種類の磁性体のうちの保磁力の低い磁性体が応答信号を発したときに、該応答信号を検知する検知手段と、
前記ワイヤ列の前記磁性ワイヤのそれぞれからの前記応答信号の有無から前記シート体に書き込まれている情報を判定することを特徴とする情報読取り装置。
【請求項8】
前記励磁コイルをループ状に形成して、該ループ内を前記対象物が前記搬送手段によって搬送されることを特徴とする請求項7に記載の情報読取り装置。
【請求項9】
前記励磁コイルが、
前記被対象物の上下面の所定の領域を開放するように磁気シールドされた第1の励磁コイルと、
前記被対象物の搬送方向の側面側の所定の領域を開放するように磁気シールドされた第2の励磁コイルと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の情報読取り装置。
【請求項10】
前記シート体に複数の前記ワイヤ列が形成されているときに、前記ワイヤ列のそれぞれに対して前記第1及び第2の励磁コイルと、前記検知コイルが設けられていることを特徴とする請求項9に記載の情報読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−260428(P2006−260428A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79954(P2005−79954)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】