説明

シート作動装置

【課題】切替部材が変位させる作動部材を切り替える際に切替部材に作用させる移動力の変動を抑制する。
【解決手段】駆動装置10では、スイッチの回転部が回転操作されて、カム76が回動されることで、カム76が圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して移動させる従動クラッチ68が切り替えられて、シートの作動が切り替えられる。ここで、カム76が、第1の従動クラッチ68の移動の解除を終了させる前に、第2の従動クラッチ68の移動を開始させる。このため、カム76の回動荷重が、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力からカム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力に急激に変化することを防止でき、カム76の回動荷重の変動を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートを作動手段が作動させるシート作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された車両用シートでは、スイッチがECUを介して複数のアジャスターに接続されており、スイッチが操作されることで、ECUの制御により、アジャスターが作動されて車両用シートが作動されると共に、作動されるアジャスターが切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−260327号公報
【0004】
ところで、現在、作動されるアジャスターを機械的に切り替える切替機構が開発されつつある。
【0005】
この切替機構では、複数のアジャスターのそれぞれにクラッチが設けられており、クラッチがカムによって変位されることで、アジャスターが作動される。また、カムが移動されることで、変位されるクラッチが切り替えられて、作動されるアジャスターが切り替えられる。
【0006】
さらに、複数のクラッチのそれぞれには、スプリングが接続されており、クラッチは、スプリングの付勢力に抗して変位されると共に、スプリングの付勢力によって変位を解除される。
【0007】
しかしながら、この切替機構では、カムが移動されて、変位されるクラッチが切り替えられる際に、第1のクラッチの変位が第1のスプリングの付勢力によって解除された後に、第2のクラッチが第2のスプリングの付勢力に抗して変位される。
【0008】
このため、カムに第1のクラッチを介して第1のスプリングの付勢力が作用する期間と、カムに第2のクラッチを介して第2のスプリングの付勢力が作用する期間と、の間に、カムにスプリングの付勢力が作用しない期間が存在する。これにより、カムに作用させる移動力の変動が大きい。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮し、切替部材が変位させる作動部材を切り替える際に切替部材に作用させる移動力の変動を抑制できるシート作動装置を得ることが目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のシート作動装置は、作動されることで車両のシートを作動させる複数の作動手段と、前記複数の作動手段のそれぞれに設けられ、変位されることで前記作動手段が作動される複数の作動部材と、前記複数の作動部材のそれぞれに設けられ、前記作動部材が変位された際に前記作動部材に変位を解除する解除力を作用させる複数の解除手段と、移動されることで変位させる前記作動部材を切り替えて前記複数の作動部材のそれぞれを変位可能にされ、変位させる前記作動部材を切り替える際に第1の前記作動部材の変位の解除を終了させる前に第2の前記作動部材の変位を開始させる切替部材と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載のシート作動装置では、複数の作動手段のそれぞれに作動部材が設けられており、作動部材が変位されることで、作動手段が作動されて、車両のシートが作動される。また、切替部材が、移動されることで、変位させる作動部材を切り替えて、複数の作動部材のそれぞれが変位可能にされている。
【0012】
さらに、複数の作動部材のそれぞれに解除手段が設けられており、作動部材が変位された際に、解除手段が作動部材に変位を解除する解除力を作用させる。
【0013】
ここで、切替部材が、変位させる作動部材を切り替える際に、第1の作動部材の変位の解除を終了させる前に、第2の作動部材の変位を開始させる。
【0014】
このため、切替部材に第1の作動部材を介して第1の解除手段の解除力が作用する期間と、切替部材に第2の作動部材を介して第2の解除手段の解除力が作用する期間と、を連続させることができる。これにより、切替部材に作用させる移動力の変動を抑制できる。
【0015】
請求項2に記載のシート作動装置は、請求項1に記載のシート作動装置において、前記切替部材が第1の前記作動部材の変位を解除する際に前記解除手段の解除力が第1の前記作動部材及び前記切替部材を介して第2の前記作動部材に変位力として作用する。
【0016】
請求項2に記載のシート作動装置では、切替部材が第1の作動部材の変位を解除する際に、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として作用する。このため、切替部材が第2の解除手段の解除力に抗して第2の作動部材を変位させるための移動力を低減できる。
【0017】
請求項3に記載のシート作動装置は、請求項2に記載のシート作動装置において、前記切替部材が第2の前記作動部材の変位を開始させる以前に前記切替部材が第1の前記作動部材の変位の解除を開始させる。
【0018】
請求項3に記載のシート作動装置では、切替部材が第2の作動部材の変位を開始させる以前に、切替部材が第1の作動部材の変位の解除を開始させる。このため、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として良好に作用できる。
【0019】
請求項4に記載のシート作動装置は、請求項2又は請求項3に記載のシート作動装置において、前記切替部材が第2の前記作動部材の変位を終了させる以後に前記切替部材が第1の前記作動部材の変位の解除を終了させる。
【0020】
請求項4に記載のシート作動装置では、切替部材が第2の作動部材の変位を終了させる以後に、切替部材が第1の作動部材の変位の解除を終了させる。このため、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として良好に作用できる。
【0021】
請求項5に記載のシート作動装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のシート作動装置において、前記切替部材が前記作動部材の変位を開始させる際、前記切替部材が前記作動部材の変位を終了させる際、前記切替部材が前記作動部材の変位の解除を開始させる際及び前記切替部材が前記作動部材の変位の解除を終了させる際の少なくとも1つの際に前記切替部材の移動量に対する前記作動部材の変位量又は変位解除量が徐々に変化される。
【0022】
請求項5に記載のシート作動装置では、切替部材が作動部材の変位を開始させる際、切替部材が作動部材の変位を終了させる際、切替部材が作動部材の変位の解除を開始させる際及び切替部材が作動部材の変位の解除を終了させる際の少なくとも1つの際に、切替部材の移動量に対する作動部材の変位量又は変位解除量が徐々に変化される。このため、切替部材に作動部材を介して作用される解除手段の解除力が徐々に変化されることで、切替部材に作用させる移動力の変動を一層抑制できる。
【0023】
請求項6に記載のシート作動装置は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のシート作動装置において、前記切替部材の切替摺動面が前記作動部材の作動摺動面に摺動されることで前記作動部材が変位又は変位を解除され、かつ、前記切替摺動面の前記切替部材移動面に対する傾斜角度を前記作動摺動面の前記切替部材移動面に対する傾斜角度に比し小さくしている。
【0024】
請求項6に記載のシート作動装置では、切替部材の切替摺動面が作動部材の作動摺動面に摺動されることで、作動部材が変位又は変位を解除される。
【0025】
ここで、切替摺動面の切替部材移動面に対する傾斜角度が、作動摺動面の切替部材移動面に対する傾斜角度に比し、小さくされている。このため、切替部材の切替摺動面が作動部材の作動摺動面に摺動される際に、切替部材に作動部材を介して作用される解除手段の解除力の変動が小さくされることで、切替部材に作用させる移動力の変動を一層抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1に記載のシート作動装置では、切替部材が、第1の作動部材の変位の解除を終了させる前に、第2の作動部材の変位を開始させるため、切替部材に作用させる移動力の変動を抑制できる。
【0027】
請求項2に記載のシート作動装置では、切替部材が第1の作動部材の変位を解除する際に、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として作用するため、切替部材が第2の解除手段の解除力に抗して第2の作動部材を変位させるための移動力を低減できる。
【0028】
請求項3に記載のシート作動装置では、切替部材が第2の作動部材の変位を開始させる以前に、切替部材が第1の作動部材の変位の解除を開始させるため、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として良好に作用できる。
【0029】
請求項4に記載のシート作動装置では、切替部材が第2の作動部材の変位を終了させる以後に、切替部材が第1の作動部材の変位の解除を終了させるため、第1の解除手段の解除力が第1の作動部材及び切替部材を介して第2の作動部材に変位力として良好に作用できる。
【0030】
請求項5に記載のシート作動装置では、切替部材が作動部材の変位を開始させる際、切替部材が作動部材の変位を終了させる際、切替部材が作動部材の変位の解除を開始させる際及び切替部材が作動部材の変位の解除を終了させる際の少なくとも1つの際に、切替部材の移動量に対する作動部材の変位量又は変位解除量が徐々に変化されるため、切替部材に作用させる移動力の変動を一層抑制できる。
【0031】
請求項6に記載のシート作動装置では、切替部材の切替摺動面の切替部材移動面に対する傾斜角度が、作動部材の作動摺動面の切替部材移動面に対する傾斜角度に比し、小さくされているため、切替部材に作用させる移動力の変動を一層抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシートの主要部を示す前斜め左方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置を示す前斜め右方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置を示す前斜め右方から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置におけるクラッチ機構を示す前斜め右方から見た分解斜視図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチの切替状況を示す左方から見た概略図であり、(A)は、前側の従動クラッチをカムが移動させた際を示す図であり、(B)は、上側の従動クラッチをカムが移動させた際を示す図であり、(C)は、後側の従動クラッチをカムが移動させた際を示す図である。
【図6】(A)〜(C)は、本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチの切替状況を示す模式図であり、(A)は、当該切替前を示す図であり、(B)は、当該切替第1段階を示す図であり、(C)は、当該切替第2段階を示す図である。
【図7】(A)〜(C)は、本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチの切替状況を示す模式図であり、(A)は、当該切替第3段階を示す図であり、(B)は、当該切替第4段階を示す図であり、(C)は、当該切替後を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチを切り替える際のカムの回動角度とカムの回動荷重との関係を表すグラフである。
【図9】(A)〜(C)は、本発明の第2の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチの切替状況を示す模式図であり、(A)は、当該切替前を示す図であり、(B)は、当該切替第1段階を示す図であり、(C)は、当該切替第2段階を示す図である。
【図10】(A)及び(B)は、本発明の第2の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチの切替状況を示す模式図であり、(A)は、当該切替第3段階を示す図であり、(B)は、当該切替後を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るシートの駆動装置においてカムが移動させる従動クラッチを切り替える際のカムの回動角度とカムの回動荷重との関係を表すグラフである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るシートの駆動装置における従動クラッチ及びカムを示す模式図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の変形例に係るシートの駆動装置における従動クラッチ及びカム等を示す左方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るシート作動装置としての駆動装置10が適用されたシート12(パワーシート)の主要部が前斜め上方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、シート12の前方を矢印FRで示し、シート12の右方を矢印RHで示し、シート12の上方を矢印UPで示している。
【0034】
本実施の形態に係るシート12は、車両(自動車)の車室に設置されるものであり、シート12は、前方、右方及び上方をそれぞれ車両の前方、右方及び上方に向けられる。
【0035】
図1に示す如く、シート12の下部には、シートクッション14が設けられており、シートクッション14は、略水平に配置されて、シート12に着座した乗員の下半身を下側から支持可能にされている。シートクッション14の内部には、骨格部材(フレーム)としての平面視矩形枠状のクッションフレーム16が設けられており、クッションフレーム16は、金属製にされて、シートクッション14を補強している。
【0036】
シート12の後部には、シートバック18が設けられており、シートバック18は、シートクッション14の後端から上側に起立されて、シート12に着座した乗員の上半身を後側から支持可能にされている。シートバック18の内部には、骨格部材(フレーム)としての正面視矩形枠状のバックフレーム20が設けられており、バックフレーム20は、金属製にされて、シートバック18を補強している。
【0037】
クッションフレーム16の後端とバックフレーム20の下端との間には、作動手段(傾動手段)としてのリクライニング機構22が設けられており、リクライニング機構22が作動されることで、クッションフレーム16に対しバックフレーム20が前後方向へ傾動(作動)されて、シートクッション14に対するシートバック18の前後方向への傾動角度が調整される。
【0038】
クッションフレーム16の右端及び左端の下側には、スライドフレーム24が設けられている。クッションフレーム16とスライドフレーム24との間には、作動手段(上下移動手段)としての昇降機構28が設けられており、昇降機構28が作動されることで、スライドフレーム24に対しクッションフレーム16が上下方向へ移動(作動)されて、シート12(シートクッション14及びシートバック18)の上下方向位置が調整される。
【0039】
各スライドフレーム24の下側には、スライドレール30が設けられている。スライドフレーム24とスライドレール30との間には、作動手段(前後移動手段)としてのスライド機構32が設けられており、スライド機構32が作動されることで、スライドレール30に対しスライドフレーム24が前後方向へスライド(作動)されて、シート12(シートクッション14及びシートバック18)の前後方向位置が調整される。
【0040】
クッションフレーム16の内部には、切替手段としてのクラッチユニット34が固定されている。
【0041】
図2及び図3に示す如く、クラッチユニット34の外周には、容器状の第1ケース36が設けられており、第1ケース36の内部は、左側へ開口されている。第1ケース36の左側には、板状の第2ケース38が設けられており、第2ケース38は、第1ケース36に固定されて、第1ケース36の内部を閉じている。第2ケース38には、ラック室40が形成されており、ラック室40の内部は、右側へ開口されている。第1ケース36と第2ケース38との間には、板状の第3ケース42が設けられており、第3ケース42は、第2ケース38に固定されて、ラック室40の内部を閉じている。
【0042】
第1ケース36の右壁外側には、断面略U字形板状のモータブラケット44が固定されており、モータブラケット44の右側には、駆動手段としてのモータ46が固定されている。モータ46の出力軸46Aは、モータブラケット44及び第1ケース36の右壁を貫通されて、第1ケース36の内部に挿入されており、モータ46が駆動されることで、出力軸46Aが回転される。
【0043】
第1ケース36の内部には、モータギア48が配置されており、モータギア48は、モータ46の出力軸46Aに連結されている。これにより、出力軸46Aが回転されることで、モータギア48が出力軸46Aと一体に回転される。
【0044】
第1ケース36の内部には、ギアホルダ50が固定されている。第1ケース36とギアホルダ50との間には、主駆動部材としてのアイドルギア52が回転自在に支持されており、アイドルギア52の右側部は、アイドルギア52の左側部に比し、大径にされている。アイドルギア52の右側部(大径部)の外周は、モータギア48の外周に噛合されており、モータギア48が回転されることで、アイドルギア52が回転される。
【0045】
第1ケース36の内部には、切替機構としてのクラッチ機構54が3個設けられており、3個のクラッチ機構54は、アイドルギア52の前側(一側方)、上側及び後側(他側方)に配置されている。
【0046】
クラッチ機構54には、略円軸状のクラッチシャフト56が設けられており、クラッチシャフト56は、アイドルギア52と軸方向が平行にされて、第1ケース36の内部に回転自在に支持されている。3個のクラッチシャフト56は、アイドルギア52(下記カムシャフト74)を中心とした同一円上において角度間隔が90°で配置されている。
【0047】
第1ケース36の右壁外側には、略円筒状のケーブルホルダ58が3個固定されている。ケーブルホルダ58には、伝達手段としてのケーブル60(図1参照)が挿通かつ保持されており、ケーブル60は、第1ケース36の右壁を貫通されて、クラッチシャフト56に接続されている。
【0048】
図1に示す如く、前側のクラッチシャフト56に接続されたケーブル60は、リクライニング機構22に接続されており、前側のクラッチシャフト56が回転されることで、リクライニング機構22が当該ケーブル60を介して駆動力を伝達されて作動される。上側のクラッチシャフト56に接続されたケーブル60は、昇降機構28に接続されており、上側のクラッチシャフト56が回転されることで、昇降機構28が当該ケーブル60を介して駆動力を伝達されて作動される。後側のクラッチシャフト56に接続されたケーブル60は、スライド機構32に接続されており、後側のクラッチシャフト56が回転されることで、スライド機構32が当該ケーブル60を介して駆動力を伝達されて作動される。
【0049】
図4に示す如く、クラッチシャフト56の左端近傍には、外周断面略楕円状(外周断面非円状)の係止部56Aが形成されており、係止部56Aの最大径は、クラッチシャフト56の他の部分の径に比し、大きくされている。
【0050】
クラッチシャフト56には、係止部56Aの右側において、駆動部材(被接近部材)としての略円柱状の駆動クラッチ62が同軸上に支持されている。クラッチシャフト56は、駆動クラッチ62の両側において、略円環状のブッシュ64に挿通されており、一対のブッシュ64によって駆動クラッチ62のクラッチシャフト56軸方向両側への移動が係止されると共に、クラッチシャフト56に対し回転自在にされている。
【0051】
駆動クラッチ62の左面には、周部全体において、略矩形柱状の駆動歯66が複数形成されており、複数の駆動歯66は、駆動クラッチ62の周方向に沿って、等間隔に配置されている。また、駆動歯66の先端部は、断面三角形状にされている。
【0052】
図3に示す如く、各駆動クラッチ62の外周は、アイドルギア52の左側部(小径部)の外周に噛合されており、アイドルギア52が回転されることで、各駆動クラッチ62が回転される。
【0053】
図4に示す如く、クラッチシャフト56には、係止部56Aにおいて、作動部材(接近部材)としての略円柱状の従動クラッチ68が同軸上に支持されており、従動クラッチ68は、クラッチシャフト56と一体回転可能にされると共に、クラッチシャフト56の軸方向(左右方向)へ移動(スライド)可能にされている。
【0054】
クラッチシャフト56と従動クラッチ68との間には、解除手段(付勢手段)としての圧縮コイルスプリング70が架け渡されており、従動クラッチ68は、圧縮コイルスプリング70によって左方への付勢力(解除力)を作用されて、駆動クラッチ62から左側へ離間した位置に係止されている。
【0055】
図6(A)に示す如く、従動クラッチ68の左端は、クラッチシャフト56と同軸上の円錐台形状にされており、従動クラッチ68の左端縁は、平面状の作動維持面68Aにされると共に、従動クラッチ68の左端縁近傍は、円錐周面状の作動摺動面68Bにされている。作動維持面68Aは、従動クラッチ68の軸方向(左右方向)に対し垂直に配置されており、作動摺動面68Bは、従動クラッチ68の径方向内側へ向かうに従い左側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0056】
図4に示す如く、従動クラッチ68の右面には、周部全体において、伝達歯としての略矩形柱状の従動歯72が複数形成されており、複数の従動歯72は、従動クラッチ68の周方向に沿って、等間隔に配置されている。従動クラッチ68の従動歯72形成部分の径は、駆動クラッチ62の駆動歯66形成部分の径と、同一にされると共に、従動クラッチ68の従動歯72の数は、駆動クラッチ62の駆動歯66の数と、同一にされている。また、従動歯72の先端部は、断面三角形状にされている。
【0057】
図3及び図5の(A)〜(C)に示す如く、第1ケース36の内部には、ギアホルダ50の左側において、セレクタを構成する略円軸状のカムシャフト74が設けられており、カムシャフト74は、アイドルギア52と同軸上に配置されている。カムシャフト74の左部は、第3ケース42を貫通されて第2ケース38のラック室40下部に挿入されると共に、第2ケース38に支持されており、カムシャフト74は、回転自在にされている。
【0058】
カムシャフト74の右端には、セレクタを構成する切替部材としての略円盤状のカム76の周部が一体に連結されており、カム76は、カムシャフト74と軸方向が平行に配置されている。カムシャフト74が回転されることで、カム76が、カムシャフト74を中心軸として回動(移動)されて、各クラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動可能にされている。
【0059】
図6(A)に示す如く、カム76の右端は、カム76と同軸上の円錐台形状にされており、カム76の右端縁は、平面状の切替維持面76Aにされると共に、カム76の右端縁近傍は、円錐周面状の切替摺動面76Bにされている。切替維持面76Aは、カム76の軸方向(左右方向)に対し垂直に配置されており、切替摺動面76Bは、カム76の径方向内側へ向かうに従い右側へ向かう方向へ傾斜されている。カム76の回動面(左右方向に垂直な面、移動面)に対する切替摺動面76Bの傾斜角度は、カム76の回動面に対する従動クラッチ68の作動摺動面68Bの傾斜角度と、等しくされている。
【0060】
カム76が従動クラッチ68の左側に回動された際には、カム76が従動クラッチ68と同軸上に配置された状態で、従動クラッチ68が圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方(駆動クラッチ62側)へ移動(変位)されると共に、カム76が圧縮コイルスプリング70の付勢力による従動クラッチ68の左方(駆動クラッチ62とは反対側)への移動(変位の解除)を係止する。これにより、従動クラッチ68の複数の従動歯72が駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合(係合)される。
【0061】
カム76が第1の従動クラッチ68の左側から第2の従動クラッチ68の左側に回動される際には、図6(A)〜図6(B)に示す如く、カム76が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第1の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。
【0062】
さらに、図6(B)〜図6(C)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって左方へ移動される状態で、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに当接する。
【0063】
その後、図6(C)〜図7(A)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される状態で、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了するまで、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動する。
【0064】
さらに、図7(A)〜図7(B)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される。
【0065】
その後、図7(B)〜図7(C)に示す如く、カム76が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第2の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。
【0066】
図3及び図5に示す如く、第2ケース38のラック室40には、ラック78がスライド可能に収容されている。ラック78の下部には、カムシャフト74の左部が噛合されており、ラック78がスライドされることで、カムシャフト74が回転される。
【0067】
図1〜図3に示す如く、クラッチユニット34の左側(第2ケース38の左側)には、スイッチ80が配置されている。スイッチ80は、クッションフレーム16の左端外側に取り付けられており、スイッチ80の左側部は、シートクッション14の外部に露出されている。
【0068】
スイッチ80の左側部には、操作部としての略円柱状の回転部82(ダイヤル部)が回転可能に設けられており、回転部82は、「リクライニング位置」、「昇降位置」及び「スライド位置」に回転操作可能にされている。
【0069】
回転部82には、中心軸位置において、円軸状の回転軸84が一体回転可能に連結されており、回転軸84は、スイッチ80に対し右方に延出されている。回転軸84は、クッションフレーム16の左端を貫通されてクッションフレーム16の内部に挿入されており、回転軸84の右部は、第2ケース38を貫通されて第2ケース38のラック室40上部に挿入されると共に、第3ケース42に支持されている。回転軸84の右部は、ラック室40のラック78の上部に噛合されており、回転部82が回転操作されて、回転軸84が回転されることで、ラック78がスライドされる。このため、カムシャフト74が回転されて、カム76が回動される。
【0070】
図5(A)に示す如く、回転部82が「リクライニング位置」に回転操作された際には、カム76が前側のクラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動される。図5(B)に示す如く、回転部82が「昇降位置」に回転操作された際には、カム76が上側のクラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動される。図5(C)に示す如く、回転部82が「スライド位置」に回転操作された際には、カム76が後側のクラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動される。
【0071】
図1に示す如く、回転部82の左側には、操作部としての略矩形柱状のスライド部86がスライド可能に保持されており、スライド部86は、「初期位置」から互いに反対側の「正回転位置」と「逆回転位置」とにスライド操作可能にされている。
【0072】
スライド部86は、モータ46に電気的に接続されており、スライド部86が「正回転位置」又は「逆回転位置」にスライド操作されることで、それぞれ、モータ46が正駆動又は逆駆動されて、モータ46の出力軸46Aが正回転又は逆回転される。
【0073】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0074】
以上の構成のシート12では、スイッチ80の回転部82が「リクライニング位置」、「昇降位置」又は「スライド位置」に回転操作されることで、回転軸84が回転部82と一体に回転されて、ラック78がスライドされる。このため、カムシャフト74が回転されて、それぞれ、カム76が前側、上側又は後側のクラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動される。
【0075】
カム76が従動クラッチ68の左側に回動された際には、カム76が従動クラッチ68を圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方(駆動クラッチ62側)へ移動させる。これにより、従動クラッチ68の複数の従動歯72が駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合される。
【0076】
さらに、スイッチ80のスライド部86が「正回転位置」又は「逆回転位置」にスライド操作されることで、それぞれ、モータ46が正駆動又は逆駆動されて、モータ46の出力軸46Aが正回転又は逆回転される。このため、それぞれ、モータギア48が出力軸46Aと一体に正回転又は逆回転されることで、アイドルギア52が正回転又は逆回転されて、各クラッチ機構54の駆動クラッチ62が正回転又は逆回転される。
【0077】
スイッチ80の回転部82が「リクライニング位置」に回転操作された際には、前側のクラッチ機構54において、従動クラッチ68の複数の従動歯72が駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合されることで、従動クラッチ68が駆動クラッチ62によって正回転又は逆回転されて(駆動クラッチ62から駆動力を伝達されて)、クラッチシャフト56が正回転又は逆回転される。これにより、リクライニング機構22がケーブル60を介して駆動力を伝達されて正作動又は逆作動されることで、シートクッション14に対しシートバック18が前側又は後側へ傾動されて、シートクッション14に対するシートバック18の前後方向への傾動角度が調整される。
【0078】
スイッチ80の回転部82が「昇降位置」に回転操作された際には、上側のクラッチ機構54において、従動クラッチ68の複数の従動歯72が駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合されることで、従動クラッチ68が駆動クラッチ62によって正回転又は逆回転されて(駆動クラッチ62から駆動力を伝達されて)、クラッチシャフト56が正回転又は逆回転される。これにより、昇降機構28がケーブル60を介して駆動力を伝達されて正作動又は逆作動されることで、スライドフレーム24に対しクッションフレーム16が上側又は下側へ移動されて、シート12(シートクッション14及びシートバック18)の上下方向位置が調整される。
【0079】
スイッチ80の回転部82が「スライド位置」に回転操作された際には、後側のクラッチ機構54において、従動クラッチ68の複数の従動歯72が駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合されることで、従動クラッチ68が駆動クラッチ62によって正回転又は逆回転されて(駆動クラッチ62から駆動力を伝達されて)、クラッチシャフト56が正回転又は逆回転される。これにより、スライド機構32がケーブル60を介して駆動力を伝達されて正作動又は逆作動されることで、スライドレール30に対しスライドフレーム24が前側又は後側へスライドされて、シート12(シートクッション14及びシートバック18)の前後方向位置が調整される。
【0080】
ところで、カム76が右方へ移動させる従動クラッチ68を第1の従動クラッチ68から第2の従動クラッチ68に切り替える際には、先ず、図6(A)〜図6(B)に示す如く、カム76が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第1の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。このため、カム76の回動荷重(スイッチ80の回転部82の回転操作によりカム76を回動させるための回動力)は、カム76の切替維持面76Aが第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する摺動力となる(図8の実線A)。
【0081】
さらに、図6(B)〜図6(C)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって左方へ移動される状態で、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに当接する。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替摺動面76Bが第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより押圧される押圧力となる(図8の実線B)。
【0082】
その後、図6(C)〜図7(A)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される状態で、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了するまで、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動する。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図8の2点鎖線C)と、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図8の2点鎖線D)と、の合計となる(図8の実線E)。
【0083】
さらに、図7(A)〜図7(B)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力となる(図8の実線F)。
【0084】
その後、図7(B)〜図7(C)に示す如く、カム76が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第2の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが第2の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替維持面76Aが第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第2の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する摺動力となる(図8の実線G)。
【0085】
ここで、上述の如く、カム76が、第1の従動クラッチ68の左方への移動の解除を終了させる前に、第2の従動クラッチ68の左方への移動を開始させる(図6(C)参照)。
【0086】
このため、カム76に第1の従動クラッチ68を介して第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力が作用する期間と、カム76に第2の従動クラッチ68を介して第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力が作用する期間と、を連続させることができて、カム76の回動荷重が、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図8の2点鎖線C)からカム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図8の2点鎖線D)に急激に変化することを防止できる。これにより、カム76の回動荷重の変動を抑制できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力の変動を抑制でき、回転部82を滑らかに回転操作できる。
【0087】
さらに、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図8の2点鎖線C)を、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図8の2点鎖線D)として使用することができる(図8の実線E)。これにより、カム76が第2の従動クラッチ68を第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動させる際に、カム76の回動荷重を低減できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力を低減できる。
【0088】
[第2の実施の形態]
図9(A)には、本発明の第2の実施の形態に係るシート作動装置としての駆動装置100の従動クラッチ68、圧縮コイルスプリング70及びカム76が模式図にて示されている。
【0089】
本実施の形態に係る駆動装置100は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0090】
図9(A)に示す如く、本実施の形態に係る駆動装置100では、カム76の径方向寸法が上記第1の実施の形態に比し大きくされている。
【0091】
カム76が第1の従動クラッチ68の左側から第2の従動クラッチ68の左側に回動される際には、図9(A)〜図9(B)に示す如く、カム76が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第1の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。このため、カム76の回動荷重(スイッチ80の回転部82の回転操作によりカム76を回動させるための回動力)は、カム76の切替維持面76Aが第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する摺動力となる(図11の実線A)。
【0092】
また、図9(B)に示す如く、カム76の切替維持面76Aが第1の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対する摺動を終了した際に、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに当接する。
【0093】
その後、図9(B)〜図9(C)及び図9(C)〜図10(A)に示す如く、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって左方へ移動されると共に、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図11の2点鎖線B)と、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図11の2点鎖線C)と、の合計となる(図11の実線D)。
【0094】
また、図10(A)に示す如く、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了して、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を終了した際に、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を終了する。
【0095】
さらに、図10(A)〜図10(B)に示す如く、カム76が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第2の従動クラッチ68の左方への移動を係止した状態で、カム76の切替維持面76Aが従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する。このため、カム76の回動荷重は、カム76の切替維持面76Aが第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第2の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する摺動力となる(図11の実線E)。
【0096】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0097】
さらに、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を開始して、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を開始した際に、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を開始して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を開始する。しかも、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了した際に、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を終了して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を終了する。
【0098】
このため、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって左方へ移動される全期間と、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される全期間と、を一致させることができて、カム76の回動荷重が、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図11の2点鎖線B)及びカム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図11の2点鎖線C)になることを防止できる。これにより、カム76の回動荷重の変動を一層抑制できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力の変動を一層抑制でき、回転部82を一層滑らかに回転操作できる。
【0099】
さらに、カム76が第2の従動クラッチ68を第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動させる際には、常に、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力(図11の2点鎖線B)を、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力(図11の2点鎖線C)として使用することができる(図8の実線E)。これにより、カム76の回動荷重を良好に低減できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力を良好に低減できる。
【0100】
なお、本実施の形態では、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を開始した際に、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を開始する。しかしながら、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を開始する以前に、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を開始すればよい。
【0101】
さらに、本実施の形態では、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了した際に、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を終了する。しかしながら、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を終了する以後に、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了すればよい。
【0102】
[第3の実施の形態]
図12には、本発明の第3の実施の形態に係るシート作動装置としての駆動装置200の従動クラッチ68及びカム76が模式図(カム76の幅方向中央位置におけるカム76の長手方向に沿った断面図)にて示されている。
【0103】
本実施の形態に係る駆動装置200は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0104】
図12に示す如く、本実施の形態に係る駆動装置200では、3個の従動クラッチ68が、カムシャフト74を中心とした角度間隔が90°未満(例えば66.46°)で配置されている。従動クラッチ68の左端縁近傍の作動摺動面68Bは、凸状に湾曲されており、作動摺動面68Bは、従動クラッチ68の軸方向に沿った断面が円弧状にされて、作動維持面68Aとの境界部分が滑らかにされている。
【0105】
カム76は、平面視C字形長尺板状にされている。カム76は、長手方向中央部において、カムシャフト74の右端に一体に連結されており、カム76の肉厚方向は、カムシャフト74の軸方向(左右方向)と平行に配置されている。カムシャフト74が回転されることで、カム76が、カムシャフト74を中心軸として長手方向に沿って回動(移動)されて、3個のクラッチ機構54の従動クラッチ68の左側に回動可能にされている。
【0106】
カム76の長手方向中間部の右面は、カム76の長手方向に沿った断面が略台形状に突出されており、カム76の長手方向中央部の右面は、平面状の切替維持面76Aにされると共に、カム76の右面の切替維持面76Aより長手方向両外側は、切替摺動面76Bにされ、かつ、カム76の右面の切替摺動面76Bより長手方向外側は、切替解除面76Cにされている。切替維持面76A及び切替解除面76Cは、カム76の回動面(左右方向に垂直な面、移動面)に対し平行に配置されており、切替摺動面76Bは、切替維持面76A側へ向かうに従い右側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0107】
切替摺動面76Bの切替維持面76A側の端部は、凸状に湾曲されており、作動摺動面68Bは、カム76の長手方向に沿った断面がサインカーブ状にされて、切替維持面76Aとの境界部分が滑らかにされている。切替摺動面76Bの切替解除面76C側の端部は、凹状に湾曲されており、作動摺動面68Bは、カム76の長手方向に沿った断面がサインカーブ状にされて、切替解除面76Cとの境界部分が滑らかにされている。また、カム76の長手方向両端面は、凸状に湾曲されており、カム76の長手方向両端面は、カム76の長手方向に沿った断面が円弧状にされて、切替解除面76Cとの境界部分が滑らかにされている。
【0108】
カム76の回動面に対する切替摺動面76Bの傾斜角度は、カム76の回動面に対する従動クラッチ68の作動維持面68A近傍を除く作動摺動面68Bの傾斜角度に比し、小さくされている(例えば切替摺動面76Bの切替維持面76A側及び切替解除面76C側の端部を除く部分において16.41°にされている)。
【0109】
カム76の切替維持面76Aが第1の従動クラッチ68の左側に回動された際には、切替維持面76Aのカム76長手方向中央が第1の従動クラッチ68の中心軸上に配置された状態で、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方(駆動クラッチ62側)へ移動(変位)されると共に、カム76の切替維持面76Aが第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による第1の従動クラッチ68の左方(駆動クラッチ62とは反対側)への移動(変位の解除)を係止する。これにより、第1の従動クラッチ68の複数の従動歯72が第1の駆動クラッチ62の複数の駆動歯66に噛合(係合)される。さらに、カム76の切替解除面76Cが、第2又は第3の従動クラッチ68の左側に回動されることで、カム76の切替解除面76Cが、第2又は第3の従動クラッチ68の作動維持面68Aに接触され又は接触されずに、第2又は第3の従動クラッチ68を介して第2又は第3の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用されない状態にされる。
【0110】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0111】
さらに、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を終了して、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を終了した後に、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を終了する。
【0112】
このため、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を終了する際に、第1の従動クラッチ68が第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって左方へ移動される期間と、第2の従動クラッチ68が第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動される期間と、を連続させることができて、カム76の回動荷重が、カム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力になることを防止できる。これにより、カム76の回動荷重の変動を抑制できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力の変動を抑制でき、回転部82を滑らかに回転操作できる。
【0113】
さらに、カム76が第2の従動クラッチ68を第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して右方へ移動させる際及びカム76の切替維持面76Aが第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第2の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する際には、カム76の切替摺動面76Bが第1の従動クラッチ68の作動摺動面68Bにより第1の圧縮コイルスプリング70の付勢力によって押圧される押圧力を、それぞれカム76の切替摺動面76Bが第2の従動クラッチ68の作動摺動面68Bを第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗して押圧する押圧力及びカム76の切替維持面76Aが第2の圧縮コイルスプリング70の付勢力を作用された第2の従動クラッチ68の作動維持面68Aに対し摺動する摺動力として使用することができる。これにより、カム76の回動荷重を低減できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力を低減できる。
【0114】
また、従動クラッチ68の作動摺動面68Bが凸状に湾曲され、かつ、カム76の切替摺動面76Bの切替維持面76A側の端部が凸状に湾曲されると共に、カム76の切替摺動面76Bの切替解除面76C側の端部が凹状に湾曲されている。
【0115】
このため、カム76の切替摺動面76Bが従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を開始及び終了して、それぞれ従動クラッチ68が圧縮コイルスプリング70の付勢力による左方への移動を開始及び終了する際、及び、カム76の切替摺動面76Bが従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対する摺動を開始及び終了して、それぞれ従動クラッチ68が圧縮コイルスプリング70の付勢力に抗する右方への移動を開始及び終了する際に、カム76の回動量に対する従動クラッチ68の移動量が徐々に(滑らかに)変化される。このため、カム76に従動クラッチ68を介して作用される圧縮コイルスプリング70の付勢力が徐々に(滑らかに)変化されることで、カム76の回動荷重(スイッチ80の回転部82の回転操作によりカム76を回動させるための回動力)の変動を一層抑制できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力の変動を一層抑制でき、回転部82を一層滑らかに回転操作できる。
【0116】
さらに、カム76の回動面に対するカム76の切替摺動面76Bの傾斜角度が、カム76の回動面に対する従動クラッチ68の作動維持面68A近傍を除く作動摺動面68Bの傾斜角度に比し、小さくされている。このため、カム76の切替摺動面76Bが従動クラッチ68の作動摺動面68Bに対し摺動される際に、カム76に従動クラッチ68を介して作用される圧縮コイルスプリング70の付勢力の変動が小さくされることで、カム76の回動荷重の変動を一層抑制できて、スイッチ80の回転部82の回転操作力の変動を一層抑制でき、回転部82を一層滑らかに回転操作できる。
【0117】
なお、本実施の形態では、作動手段(リクライニング機構22、昇降機構28及びスライド機構32)及びクラッチ機構54をそれぞれ3個設けたが、作動手段及びクラッチ機構54をそれぞれ2個設けたり、図13に示す第3の実施の形態の変形例の如く作動手段及びクラッチ機構54をそれぞれ4個以上設けてもよい。また、この場合等には、スイッチ80が操作されることで、シートクッション14の前部が後部に対し上下方向へ回動され、又は、シートバック18の少なくとも一部(下部等)が前後方向へ移動されてもよい。
【0118】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0119】
10 駆動装置(シート作動装置)
22 リクライニング機構(作動手段)
28 昇降機構(作動手段)
32 スライド機構(作動手段)
68 従動クラッチ(作動部材)
68B 作動摺動面
70 圧縮コイルスプリング(解除手段)
76 カム(切替部材)
76B 切替摺動面
100 駆動装置(シート作動装置)
200 駆動装置(シート作動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動されることで車両のシートを作動させる複数の作動手段と、
前記複数の作動手段のそれぞれに設けられ、変位されることで前記作動手段が作動される複数の作動部材と、
前記複数の作動部材のそれぞれに設けられ、前記作動部材が変位された際に前記作動部材に変位を解除する解除力を作用させる複数の解除手段と、
移動されることで変位させる前記作動部材を切り替えて前記複数の作動部材のそれぞれを変位可能にされ、変位させる前記作動部材を切り替える際に第1の前記作動部材の変位の解除を終了させる前に第2の前記作動部材の変位を開始させる切替部材と、
を備えたシート作動装置。
【請求項2】
前記切替部材が第1の前記作動部材の変位を解除する際に前記解除手段の解除力が第1の前記作動部材及び前記切替部材を介して第2の前記作動部材に変位力として作用する請求項1に記載のシート作動装置。
【請求項3】
前記切替部材が第2の前記作動部材の変位を開始させる以前に前記切替部材が第1の前記作動部材の変位の解除を開始させる請求項2に記載のシート作動装置。
【請求項4】
前記切替部材が第2の前記作動部材の変位を終了させる以後に前記切替部材が第1の前記作動部材の変位の解除を終了させる請求項2又は請求項3に記載のシート作動装置。
【請求項5】
前記切替部材が前記作動部材の変位を開始させる際、前記切替部材が前記作動部材の変位を終了させる際、前記切替部材が前記作動部材の変位の解除を開始させる際及び前記切替部材が前記作動部材の変位の解除を終了させる際の少なくとも1つの際に前記切替部材の移動量に対する前記作動部材の変位量又は変位解除量が徐々に変化される請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のシート作動装置。
【請求項6】
前記切替部材の切替摺動面が前記作動部材の作動摺動面に摺動されることで前記作動部材が変位又は変位を解除され、かつ、前記切替摺動面の前記切替部材移動面に対する傾斜角度を前記作動摺動面の前記切替部材移動面に対する傾斜角度に比し小さくした請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のシート作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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