説明

シート処理装置及び画像形成装置

【課題】断裁屑が固定刃に付着するのを防止することのできるシート処理装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】昇降可能な上刃633と下刃634とを備え、上刃633が下降することで下刃634と上刃633の間のシート束を断裁処理する。そして、回転カム690、リンク637a及びアーム6740により構成される連動部により、掻き落としシート692を上刃633の下降と連動させて下降させることにより、断裁されたシート束の断裁片を下刃634に付着させることなく落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置及び画像形成装置に関し、特にシートを束ねて折ったシート束の開放端部を断裁するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザビームプリンタ等の画像形成装置において、画像が形成された後、排出されるシートを取り込み、このシートを中折り、或はシートの略中央付近を綴じ処理した後、2つ折りして中綴じ製本するシート処理装置を備えたものがある。
【0003】
ところで、従来、中綴じ製本したシート束である中綴じ折り冊子(以下、冊子という)の場合、冊子の綴じ部と反対側の端部(開放端)である小口は、冊子の厚み方向において、中央が尖った三角形状になることが知られている。この三角形状は中綴じ折り製本特有のものであり、平綴じ製本や、くるみ製本、テープ製本といった製本では小口は矩形となっている。
【0004】
ここで、このように小口が三角形状となった冊子のページをめくる際には、表紙から冊子中央の頂点に向かうまでは次ページが現ページよりも出っ張っているため指に引っかかり捲ることができる。しかし、冊子中央の頂点から裏表紙に向かう際は、次ページが現ページよりも引っ込んでいるため指に引っかからず捲りづらい。これに対して小口が矩形であればページ捲りの難易の差がなく、安定した捲り性を確保することができる。
【0005】
そこで、従来は、このような中綴じ折り製本特有の三角形状を解消するため、冊子の小口部分を断裁(せん断)する断裁処理を行う場合があり、このような断裁処理を行うための断裁装置(トリマー)が広く知られている。このような断裁装置として、例えば昇降可能な可動刃(上刃)と、可動刃の下方に位置する固定された固定刃(下刃)を備え、可動刃を下降させて可動刃と固定刃とでシート束を挟むことにより冊子の小口部分を断裁するようにしたものがある(特許文献1参照)。そして、このように冊子の小口部分を断裁することにより、小口を三角形状から矩形に変えることができ、これにより成果物としての冊子の見栄えを良くすることができると共に、ページ捲りの安定性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−238394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような従来のシート処理装置において、下降してきた可動刃と固定刃に挟まれて冊子の小口部分が断裁されるとき、屑となる断裁された小口部分(以下、断裁屑という)は、可動刃に接した状態で固定刃の側面に沿って下に押し下げられる。そして、この後、断裁屑は固定刃の下方に設けられた屑箱に落下して行く。
【0008】
しかし、冊子が、例えば電子写真のような静電気を利用して画像を形成する画像形成装置から出力されたシートにより形成されている場合、シートが帯電しているため断裁屑が可動刃に付着することがある。そして、このように断裁屑が可動刃に付着した場合、断裁後、可動刃が上昇する際、断裁屑は屑箱に落下することなく可動刃の上昇に伴って上昇し、固定刃の上面に付着して残ってしまう。
【0009】
ここで、固定刃の上面はシートの搬送面を構成するものであるため、固定刃の上面に断裁屑が付着すると、次に搬送されてきたシートによって断裁屑は下流へと一緒に搬送されてしまう。そして、このように搬送された断裁屑を、シートを検知するセンサが検知すると、断裁装置が非常停止してしまうことがあった。また、一緒に搬送された断裁片が冊子とともに積載収容されることにより、冊子の品位が低下する場合もある。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、断裁屑が固定刃に付着するのを防止することのできるシート処理装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固定刃と、前記固定刃の上方に昇降可能に配置され、下降して前記固定刃との間のシート束を前記固定刃と共に断裁処理する可動刃と、前記可動刃がシート束を断裁した後、前記可動刃の刃先よりも下方まで、前記固定刃に沿って下降する付着防止部材と、前記付着防止部材を前記可動刃の昇降と連動して昇降させる連動部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、可動刃によってシート束が断裁される際、付着防止部材を可動刃の刃先よりも下方へ下降させることにより、断裁屑が可動刃の下方に配置された固定刃に付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の参考例に係るシート処理装置を備えた画像形成装置の一例である複写機の断面図。
【図2】上記シート処理装置であるフィニッシャの構成を説明する図。
【図3】上記フィニッシャに設けられたトリマーユニットの構成を説明する第1の図。
【図4】上記トリマーユニットの構成を説明する第2の図。
【図5】上記トリマーユニットに設けられたトリム部の構成を説明する第1の図。
【図6】上記トリム部の構成を説明する第2の図。
【図7】上記複写機の制御ブロック図。
【図8】上記トリマーユニットの動作を説明するフローチャート。
【図9】上記トリマーユニットの動作を説明する第1の図。
【図10】上記トリム部のカッターユニットに設けられたアシストシートの動作を説明する図。
【図11】上記アシストシートと加振シートの動作を説明する図。
【図12】上記トリマーユニットの動作を説明する第2の図。
【図13】上記カッターユニットが下死点に到達したときの状態を説明する図。
【図14】本発明の実施の形態に係るシート処理装置であるフィニッシャのトリマーユニットの構成を示す図。
【図15】上記トリマーユニットのトリム部に設けられたカッターユニットの掻き落としユニットの構成を説明する図。
【図16】上記カッターユニットの構成を説明する第1の図。
【図17】上記カッターユニットの動作を説明する第1の図。
【図18】上記カッターユニットの動作を説明する第2の図。
【図19】上記掻き落としユニットの構成を説明する図。
【図20】上記カッターユニットの構成を説明する第2の図。
【図21】上記トリマーユニットの動作を説明するフローチャート。
【図22】上記トリマーユニットの動作を説明する第1の図。
【図23】上記トリマーユニットの動作を説明する第2の図。
【図24】上記カッターユニットが下死点に到達したときの状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の参考例に係るシート処理装置を備えた画像形成装置の一例である複写機の断面図である。図1において、1000は複写機であり、この複写機1000は、複写機本体300と、複写機本体300の上面に配されたスキャナ200とを備えている。
【0015】
ここで、原稿を読み取るスキャナ200は、原稿給送部100、スキャナユニット104、レンズ108、イメージセンサ109等を備えている。そして、このスキャナ200により原稿Dを読み取る際には、まず原稿給送部100のトレイ1001上に原稿Dをセットする。なお、このとき原稿Dは、トレイ1001上にユーザから見て正立状態で、かつ、フェイスアップ状態(画像が形成されている面が上向きの状態)でセットされているものとする。また、原稿Dの綴じ位置は、原稿Dの左端部に位置するものとする。
【0016】
次に、原稿Dを原稿給送部100により先頭頁から順に1枚ずつ左方向(図の矢印方向)、すなわち綴じ位置を先端にして搬送した後、湾曲したパスを介してプラテンガラス102上を左方向から右方向へ搬送し、この後、排紙トレイ112上に排出する。この際、所謂流し読みによる原稿読み取りの際には、スキャナユニット104は、所定の位置に保持された状態にあり、このスキャナユニット104上を原稿Dが左から右へと通過することにより原稿Dの読取処理が行われる。
【0017】
この読取処理においては、プラテンガラス102上を通過する際、原稿Dに対してスキャナユニット104のランプ103により光を照射し、その反射光をミラー105,106,107、レンズ108を介してイメージセンサ109に導くようにする。なお、このイメージセンサ109により読み取られた原稿の画像データは、所定の画像処理が施されて露光制御部110へ送られる。
【0018】
一方、所謂固定読みによる原稿読み取りの際には、原稿給送部100により搬送した原稿Dをプラテンガラス102上に一旦停止させ、この状態でスキャナユニット104を左から右へと移動させることにより原稿の読取処理を行う。さらに、原稿給送部100を使用しないで原稿の読み取りを行う場合には、ユーザは、原稿給送部100を持ち上げ、プラテンガラス102上に原稿をセットする。
【0019】
また、複写機本体300は、カセット114,115に収納されたシートPを給送するシート給送部1002と、シート給送部1002により給送されたシートPに画像を形成する画像形成部1003等を備えている。
【0020】
ここで、画像形成部1003は、感光体ドラム111、現像器113、転写帯電器116等を備えている。そして、画像形成の際には、露光制御部110からのレーザ光が感光体ドラム上に照射されることにより、感光体ドラム上に潜像が形成され、さらにこの潜像は、この後、現像器113によってトナー像として顕像化されるようになっている。なお、画像形成部1003の搬送方向下流側には定着部177、排出ローラ対118等が配設されている。
【0021】
次に、このような構成の複写機本体300の画像形成動作について説明する。まず、既述したようにスキャナ200における流し読み、あるいは固定読み等において、イメージセンサ109により読み取られた原稿Dの画像データは、所定の画像処理が施された後、露光制御部110へ送られる。そして、露光制御部110は、この画像信号に応じたレーザ光を出力し、このレーザ光は、ポリゴンミラー110aにより走査されながら感光体ドラム111上に照射され、感光体ドラム111上には走査されたレーザ光に応じた静電潜像が形成される。次に、感光体ドラム111上に形成された静電潜像を現像器113により現像し、トナー像として可視化する。
【0022】
一方、シートPは、カセット114,115、手差し給紙部125、両面搬送パス124の何れかから感光体ドラム111と転写帯電器116とにより構成される転写部へ搬送される。そして、この転写部において可視化された感光体ドラム上のトナー像がシートPに転写され、転写後のシートPは、定着部177にて定着処理が施される。
【0023】
次に、定着部177を通過したシートPを不図示の切換部材により一旦パス122に導き、シートの搬送方向後端が切換部材を抜けた後に、スイッチバックさせ、切換部材により排出ローラ対118へ搬送し、複写機本体300から排出する。これにより、シートPをトナー像が形成された面が下向きの状態(フェイスダウン)で複写機本体300から排出することができる。
【0024】
なお、このような所謂反転排紙により、フェイスダウンでシートPを排出することにより、先頭頁から順に画像形成処理を行う場合、例えばコンピュータからの画像データに対する画像形成処理を行う場合に頁順序を揃えることができる。また、手差し給紙部125から搬送するOHPシート等の硬いシートPに対して画像形成処理を行う場合は、パス122にシートPを導くことなく、トナー像形成面を上向きの状態(フェイスアップ)で排出ローラ対118により複写機本体300から排出する。
【0025】
また、シートPの両面に画像形成処理を行う場合は、シートPを定着部177からまっすぐ排出ローラ対118方向へと導き、シートの搬送方向後端が切換部材を抜けた直後にシートPをスイッチバックし、切換部材により両面搬送パス124へと導くようにする。
【0026】
ところで、この複写機本体300には、複写機本体300から排出される画像形成済みのシートを折り処理する折り処理部400を備えると共にシートに対して綴じ処理や製本処理を行うフィニッシャ500が取り付けられている。フィニッシャ500は、後述するステイプル部500A、製本部である中綴じ製本部800及びトリマーユニット600と、で本参考例に係るシート処理装置を構成する。
【0027】
ここで、折り処理部400は、複写機本体300から排出されたシートを導入し、フィニッシャ500側に導くための搬送パス131を有しており、この搬送パス131には、搬送ローラ対130,排出ローラ対133が設けられている。また、排出ローラ対133の近傍には切換部材135が設けられており、この切換部材135により、搬送ローラ対130により搬送されたシートを折りパス136、またはフィニッシャ500側に導くようにしている。
【0028】
このような折り処理部400において、シートの折り処理を行う場合、まず切換部材135を切り替え、シートを折りパス136に導く。そして、折りパス136に導かれたシートは、まずストッパ137にシートの搬送方向先端が突き当たることによりループが形成され、この後、このループが、折りローラ140,141により折り部として折られる。
【0029】
次に、この折り部を、上方のストッパ143に突き当てることで形成されたループを、折りローラ141,142により更に折ることで、シートは、Z折りされる。そして、このようにZ折りされたシートは、搬送パス145を介して搬送パス131に送られ、排出ローラ対133により搬送方向下流側に付設されたフィニッシャ500に排出される。なお、折り処理部400による折り処理動作は選択的に行われるため、折り処理を行わない場合は、切換部材135をフィニッシャ側に切り替え、複写機本体300から排出されたシートを、搬送パス131を介して、直接フィニッシャ500に送り込む。
【0030】
一方、画像が形成されたシートPが折り処理部400を介して送り込まれるフィニッシャ500は、複写機本体300からのシートを取り込み、取り込んだ複数のシートを整合して1つのシート束として束ねる処理、ソート処理、ノンソート処理を行うものである。
また、シート束の搬送方向後端側をステイプルするステイプル処理(綴じ処理)、製本処理等の処理を行うものである。そして、図2に示すように、シートをステイプルするステイプル部500A及びシート束を二つ折りにして製本する製本部である中綴じ製本部800を備えている。
【0031】
そして、このフィニッシャ500は、図2に示すように、折り処理部400を介して搬送されたシートを装置内部に取り込むための搬送パス520を備えており、搬送パス520には、複数の搬送ローラ対が設けられている。なお、搬送パス520の途中にはパンチユニット530が設けられており、パンチユニット530は必要に応じて動作を行い、搬送されるシートの搬送方向後端部に穴あけ(穿孔)処理を行う。
【0032】
また、この搬送パス520の終端には切換部材513が設けられており、この切換部材513により、搬送方向下流に繋がれた上排紙パス521と下排紙パス522とに経路を切り替える。ここで、上排紙パス521は上スタックトレイ701への排紙を行うためのものであり、下排紙パス522は、処理トレイ550への排紙を行うためのものである。
【0033】
なお、下排紙パス522により処理トレイ550に排紙されるシートは順次整合処理されながら束状に収容され、後述する図7に示す操作部1からの設定に応じて仕分け処理やステイプル処理が行われる。ここで、ステイプル処理を行う場合は、幅方向に移動可能なステイプラ560により、シートの任意の位置にステイプル処理を行う。
【0034】
さらに、このような仕分け処理やステイプル処理が行われた後、束排紙ローラ対551により、上スタックトレイ701、又は下スタックトレイ700に排出される。そして、このように上又は下スタックトレイ700,701に排出されたシートは、この後、搬送方向後端を上下方向に伸びる後端ガイド710に規制されて整列される。
【0035】
なお、上又は下スタックトレイ700,701は上下方向に移動可能に構成されており、上スタックトレイ701は上排紙パス521と処理トレイ550からのシートを、また下スタックトレイ700は、処理トレイ550からのシートを受け取ることができる。そして、このように上又は下スタックトレイ700,701を上下方向に移動させることにより、上又は下スタックトレイ700,701に大量のシートを積載することができる。
【0036】
なお、図2において、900はフィニッシャ500の上部に設けられたインサータである。このインサータ900は、シート束の先頭頁、最終頁、または複写機本体300にて画像が形成されたシート間に通常のシートとは別のシート(インサートシート)を挿入するためのものである。
【0037】
そして、インサートシートを挿入する場合、インサータ900は、ユーザによりインサートトレイ901,902にセットされたインサートシートを、所望のタイミングで搬送パス520に合流させる。なお、このように搬送パス520に合流したインサートシートは、この後、上スタックトレイ701、処理トレイ550、中綴じ製本部800のいずれかに搬送される。
【0038】
一方、シートに対して中綴じを行う場合は、シートを下排紙パス522の途中に設けられた切換部材514の切換により、サドル排紙パス523を通過させて中綴じ製本部800に搬送する。ここで、サドル排紙パス523を通過したシートは、まずサドル入口ローラ対801に受け渡され、サイズに応じてソレノイドにより動作する切換部材802により搬入口を選択されて、中綴じ製本部800の収納ガイド803内に搬入される。
【0039】
この後、搬入されたシートは滑りローラ804により搬送方向先端が可動式のシート位置決め部材805に接するまで搬送される。なお、サドル入口ローラ対801と滑りローラ804はモータM1により駆動される。また、収納ガイド803の途中位置には、不図示の針を突き出すドライバ820aと、ドライバ820aと収納ガイド803を挟んで対向配置され突き出された針を折り曲げるアンビル820bとを備えたステイプラ820が設けられている。
【0040】
なお、シート位置決め部材805は、モータM2の駆動を受けて上下方向に移動自在であり、シートサイズに応じて位置を変えると共に、シート搬入時においてはシートのシート搬送方向中央部がステイプラ820の綴じ位置になる位置で停止している。
【0041】
さらに、ステイプラ820の搬送方向下流側には、折りローラ対810a,810bが設けられており、折りローラ対810a,810bの対向位置には、突き出し部材830が設けられている。この突き出し部材830は、収納ガイド803から退避した位置をホームポジションとしていて、モータM3の駆動により、収納されたシート束に向けて突出するようになっている。
【0042】
そして、突き出し部材830をシート束に向けて突出させることにより、シート束を、折りローラ対810a,810bのニップに押し込みながら折り曲げる折り曲げ処理が施される。なお、815は折りローラ対810a,810bの外周面を周りながら収納ガイド803に突き出した面を持ち、収納ガイド803に収納されたシートを整合する整合板対である。この整合板対815は、モータM5の駆動を受けてシートに対し、挟みこみ方向に移動することによって、シートの幅方向の位置決めを行う。
【0043】
ここで、折りローラ対810a,810b間には、シート束に折り目付けをするのに充分な圧F1が不図示のバネにより掛けられている。なお、シート束を折りローラ対810a,810bのニップに押し込んだ後、突き出し部材830は、再びホームポジションに戻る。
【0044】
次に、折り目付けされたシート束は、第1折り搬送ローラ対811a,811b、第2折り搬送ローラ対812a,812bに搬送される。なお、第1折り搬送ローラ対811a,811b、及び第2折り搬送ローラ対812a,812bにも、折り目付けされた束を搬送、停止させるのに充分な圧F2、F3が掛けられている。また、折りローラ対810a,810b、第1折り搬送ローラ対811a,811b、第2折り搬送ローラ対812a,812bは、同一のモータM4により等速回転する。
【0045】
また、ステイプラ820で綴じられたシート束を折り曲げる場合は、ステイプル処理終了後に、シート束のステイプル位置が折りローラ対810のニップ位置にくるように、シート位置決め部材805を、ステイプル処理時の場所から所定距離降下させる。これによりステイプル処理を施した位置を中心にしてシート束を折り曲げることができ、冊子状の折りシート束が形成される。
【0046】
次に、第1折り搬送ローラ対811a,811b、及び第2折り搬送ローラ対812a,812bにより折り曲げられたシートはシート束の折り目部をニップするプレスローラ対861を備えた折り目プレスユニット860に搬送される。そして、この折り目プレスユニット860を、プレスローラ対861によりシート束の折り目部をニップした状態でシート束搬送方向と直交する幅方向に移動することにより、折り目を強化することができる。このようにして冊子状のシート束Tが形成される。
【0047】
ところで、本参考例においては、図2に示すように中綴じ製本部800の搬送方向下流には、中綴じ製本したシート束(冊子)の開放端側を断裁して排出するトリマーユニット600が設けられている。ここで、このトリマーユニット600は、シート束の搬送方向上流側(以下、上流側という)から順番に、第1搬送部610、第2搬送部620、トリム部630、第3搬送部640、第4搬送部650、排出部660が配置されている。なお、第2〜第4搬送部620,640,650は、それぞれ一対の搬送ベルト621,622,645,646,655,656を有している。そして、各搬送部620,640,650の上下の搬送ベルト621,622,645,646,655,656は、同一のモータによって駆動され、同一の搬送速度となるよう構成されている。
【0048】
第1搬送部610は、中綴じ製本部800からシート束を受け取るために下側のみに下搬送ベルト611を持ち、また下搬送ベルト611の両側にサイドガイド612が配設されている。そして、サイドガイド612がシート束の幅方向に移動することにより、シートの斜行を修正することができる。また、サイドガイド612にはシート束の開きを防止する押さえガイド614が配設されており、この押さえガイド614により、スムーズに第2搬送部620にシート束を受け渡しできる。
【0049】
なお、押さえガイド614の上流側及び下流側にはシート束の有無を検知する第1搬送部入口センサ615、第1搬送部出口センサ616が配設されている。また、下搬送ベルト611の両側には搬送爪613が配設されている。搬送爪613はシート束搬送方向に移動が可能であり、第2搬送部620に受け渡すために下搬送ベルト611と同じ速度で移動する。そして、搬送爪613は、下搬送ベルト611とシート束との間にすべりが生じた場合は、シート束後端と接触し、シート束後端を押しながら搬送する。
【0050】
第2搬送部620の挟持部Jの下流には第2搬送部入口センサ623が配設され、第2搬送部にシート束が受け渡されたことを検知するようになっている。第3搬送部640には、出没可能で、搬送方向にも移動可能なストッパ641が配設されている。ここで、ストッパ641は図3に示すように、カム642,648を介しK部を回動中心として出現、退避が可能である。また、ストッパ641はスライドブロック643に搭載され、スライドガイド644に沿って不図示のモータにより駆動され、シート束の搬送方向サイズやシート束の停止位置に応じて移動する。
【0051】
第4搬送部650は、後述するようにトリム部630により断裁処理されたシート束を上方に搬送するものであり、排出部660は第4搬送部650によって搬送されてくるシート束を積載するためのものである。なお、本参考例において、第4搬送部650は上方に伸びており、第4搬送部650の上端部に排出部660を設けている。これにより、ユーザのシート束の取り出し性を向上させている。
【0052】
トリム部630は、図3に示すように第2搬送部620と第3搬送部640の間に配置されると共に、第2搬送部620と第3搬送部640の間の搬送経路に対して直交する方向に配置されているカッターユニット631を備えている。ここで、このカッターユニット631は、押さえ部材632と、昇降可能な可動刃である上刃633を備えている。そして、このカッターユニット631は不図示の断裁モータによって駆動され、図4の(a)に示すリンク637(637a,637b)によって搬送面に対して垂直方向に上下動する。
【0053】
また、このトリム部630は、図3に示すように上刃633の移動方向下流側(下方)
に固定された固定刃である下刃634と、上刃633と下刃634とによって断裁されたシートの断裁屑(断裁片)を収容する収容箱635が配置されている。なお、第2搬送部620と第3搬送部640は、断裁されるシートを上刃633と下刃634との間に搬送する搬送部を構成する。
【0054】
このように構成されたトリム部630において、シート束を断裁する場合には、カッターユニット631を下降させる。ここで、カッターユニット631が下降すると、まず上刃633よりも先に押さえ部材632が先行してシート束Tに当接する。ここで、押さえ部材632は、不図示のバネによって下方向に付勢されているため、カッターユニット631が下方に移動すると、まず押さえ部材632がシート束を搬送面との間で挟持する。この状態で、さらにカッターユニット631が下方に移動すると、上刃633が下刃634と共にシート束を断裁する。
【0055】
なお、図3に示すように、第2搬送部620の下流側には、断裁屑の収容箱63への落下経路を開閉するシャッタ625が支点Qを中心として開閉可能に配設されている。また、カッターユニット631の下端の搬送パス外の領域には、図4の(a)に示すようにカム636(636a,636b)が設けられている。そして、カッターユニット631が下方に移動する際、このカム636によってシャッタ625が押されることにより、落下経路が開放される。なお、シャッタ625はカム636で押されていないときは、不図示のねじりコイルバネによって付勢され、搬送ベルト622から下刃634を繋ぐ搬送ガイドとなり、収容箱635への断裁片の落下経路を閉鎖している。なお、図4の(a)は、シャッタ625がカム636で押されていないときの状態を示している。
【0056】
図5はトリム部630の上刃633付近の拡大図である。ここで、上刃633は、シート(シート束)を断裁するための鋭角な刃先を形成する上刃633の移動方向に対して傾斜した側面670を有している。また、図4の(b)に示すように上刃633の刃先6331は、装置奥側から手前にかけて上昇する直線状であり、下刃634は搬送経路と水平な形状を有している。これにより、上刃633が下降すると、上刃633は点接触で下刃634上のシート束に突き当たり、この後、下刃634の側面に沿って下降しながらシート束を奥側から手前側にかけて連続的に順次切断していく。
【0057】
また、この上刃633には図5に示すように板バネ671が固定されており、さらにこの板バネ671には、一端に断裁片を押し下げるための押圧部6721が設けられた付着防止部材であるアシストシート672が取り付けられている。このアシストシート672は、弾性部材で形成されると共に、図4の(b)に示すように押圧部6721が上刃633の刃先6331より下方に所定量Lだけ下がった位置となるように取り付けられている。
【0058】
このような位置にアシストシート672を取り付けることにより、シートを断裁する際、上刃633がシート束Tに接触する前にアシストシート672の押圧部6721がシート束Tに先に当接する。そして、さらに上刃633と共に下降すると、アシストシート672はシート束Tと圧接し、弾性的に上方に撓みながらシートを付勢する。これにより、シート束を断裁する際、上刃633は、アシストシート672が撓みながらシートを付勢した状態で断裁を行う。そして、このようにアシストシート672により付勢された状態でシート束Tが断裁されると、アシストシート672は撓みを解消しながら下方へ弾性的に移動する。これにより、断裁されたシート束Tの断裁屑は、アシストシート672の押圧部6721により、後述する図9に示すように上刃633の刃先より下方に押し下げる。
【0059】
また、アシストシート672は、図4の(b)に示すように上刃633の長手方向において、上刃633の先端に沿って間隔をあけて複数設けられている。具体的には、アシストシート672は、上刃633の長手方向で複数(ここでは5箇所)設けられている。これにより、シート束の断裁片を複数点で押すことができるので、単点で押すことに比べて下刃634の端部に断裁屑が付着しにくくなる。ここで、アシストシート672は、トリム部630に搬送される各種サイズのシート束Tに対応した位置に配置されており、どのようなサイズのシート束Tであっても、その断裁片を確実に押し下げることができる。
【0060】
なお、既述したアシストシート672の取り付け位置に関する所定量Lはアシストシート672の厚みや材質によってその値が変わるが、経験上厚さ0.5mmのPETシートで5mm程下方に取り付けることで断裁屑を良好に下方へ落下させることができる。このとき、所定量Lを必要以上に多くとってしまうと断裁する前にシート束を座屈させてしまい、シート束を押圧することができなくなる。
【0061】
また、図5に示すようにアシストシート672には、上刃633の側面670に対向する対向面6722が設けられており、アシストシート672は、上刃633の側面670と対向面6722の間に隙間ができるように取り付けられている。ここで、この隙間の幅は、断裁屑の断裁幅が短い場合でもアシストシート672が断裁屑を良好に下方へ落下させることができるように狭くすることが好ましい。なお、このように隙間を設けた場合、断裁屑が側面670と対向面6722の間に挟まる場合があるが、この場合でも、後述するアシストシート672の振動により断裁屑を自由落下させることができる。
【0062】
さらに、アシストシート672は、下刃634の側面との間にも間隔Mが形成されるようになっている。そして、このような間隔Mを形成することにより、上刃633が下降し、断裁を行う際に、アシストシート672が下刃634上に乗って断裁されることを防ぐことができる。なお、この間隔Mが小さいほど、細い屑への押圧が可能となるが、近すぎると側面670と対向面6722の間の間隔も狭くなり、断裁屑がより挟まり易くなる。よって、経験上間隔Mは、1.5mm程度とすることにより、断裁屑を良好に下方へ落下させることができる。なお、このような所定量L及び間隔Mの数値は、一例であってこの数値に限定するものではない。
【0063】
また、図6の(a)に示すようにカッターユニット631には上刃カバー674が取り付けられており、上刃カバー674には振動部材としての加振シート673が取り付けられている。ここで、この加振シート673は、弾性部材で形成されると共に、図6の(b)に示すように垂直に折り曲げられた当接面673a〜673eを有している。そして、後述するように、上刃633が上昇動作を行う際、この当接面673a〜673eが、それぞれアシストシート672a〜672eに当接してアシストシート672a〜672eを撓ませる。そして、アシストシート672a〜672eが所定量撓んだところで、当接面673a〜673eとの当接が外れ、アシストシート672が振動するようになる。なお、図4の(a)、(b)及び図6の(b)は、わかりやすくするため、図6の(a)に示す上刃カバー674を外した構成を示している。
【0064】
図7は、複写機1000の制御ブロック図である。CPU回路部150は、CPU(不図示)を有する。そして、ROM151に格納された制御プログラム及び操作部1の設定に従い、原稿給送制御部101、イメージリーダ制御部201、画像信号制御部202、プリンタ制御部301、折り処理制御部401、フィニッシャ制御部501、外部I/F203を制御する。そして、原稿給送制御部101は原稿給送部100を、イメージリーダ制御部201はスキャナ200を、プリンタ制御部301は画像形成部1003を、折り処理制御部401は折り処理部400を各々制御する。また、フィニッシャ制御部501はフィニッシャ500、トリマーユニット600、中綴じ製本部800、インサータ900を制御する。
【0065】
操作部1は、画像形成に関する各種機能を設定するための複数のキー、設定状態を表示するための表示部等を有する。そして、ユーザによる各キーの操作に対応するキー信号をCPU回路部150に出力すると共に、CPU回路部150からの信号に基づき対応する情報を表示部に表示する。
【0066】
RAM152は、制御データを一時的に保持するための領域や、制御に伴う演算の作業領域として用いられる。外部I/F203は、複写機1000と外部のコンピュータ204とのインタフェースであり、コンピュータ204からのプリントデータをビットマップ画像に展開し、画像データとして画像信号制御部202へ出力する。また、イメージリーダ制御部201から画像信号制御部202へは、イメージセンサ109で読み取った原稿の画像が出力される。プリンタ制御部301は、画像信号制御部202からの画像データを露光制御部110へ出力する。
【0067】
次に、本参考例のように構成されたトリマーユニット600の動作について図8に示すフローチャートを用いて説明する。既述したように、折り目プレスユニット860で折り強化されると、シート束は搬送が再開され、トリマーユニット600の第1搬送部610へ受け渡される。この後、第1搬送部610の下搬送ベルト611が回転してシート束を搬送し、第1搬送部出口センサ616でシート束を検知した後、搬送を一旦停止する。次に、搬送経路の両側に配設されたサイドガイド612が整合動作を行い、この後、第1搬送部610の上流に配置された搬送爪613と下搬送ベルト611によってシート束の搬送が再開される。
【0068】
次に、第2〜第4搬送部620,640,650の駆動がONし(S1)、第2搬送部620が第1搬送部610からシート束を受け取る。次に、第2搬送ベルト対622,623の挟持部Jに配設された第2搬送部入口センサ623がシート束を検知してONすると(S2のY)、搬送爪613は搬送上流に退避する。次に、シート束は、第2搬送部620、トリム部630を通過し、第3搬送部640へと搬送される。
【0069】
このとき、第3搬送部640では、既述した図3及び図4の(a)に示すように搬送されるシート束Tのサイズに合わせて適切な位置にストッパ641が、予め搬送経路上に出現している。これにより、シート束Tは第2搬送部入口センサ623から所定量搬送されたところでストッパ641に当接する。そして、このようにシート束Tがストッパ641に当接した後、第2〜第4搬送部620,640,650の駆動をOFFし(S3)、シート束Tを停止する。
【0070】
次に、トリム部630のカッターユニット631の断裁モータの駆動を開始する(S4)。これにより、カッターユニット631が下降し、上刃633とアシストシート672が共に下死点に向かって移動する(S5)。そして、このように移動する際、まずアシストシート672の押圧部6721がシート束に当接し(S6)、この後、上刃633は刃先の形状にしたがって、アシストシート672により付勢された状態のシート束Tの後端部分を奥側から断裁する。
【0071】
ところで、このようにカッターユニット631が下降し、これに伴い上刃633が下降すると、図9に示すように、弾性体であるアシストシート672の押圧部6721は断裁片Gとの接触によって撓み、初期位置よりも上方に変位する。そして、この後、上刃633が下死点に到達し、シート束Tの後端部分を断裁すると、アシストシート672は撓みが一気に解放されて下降し、断裁片Gを上刃633の刃先6331より下に押し下げる(S7)。これにより、シートが帯電している場合でも、断裁片(断裁屑)Gは、上刃633及び下刃634に付着することなく落下する。
【0072】
なお、図10はこの時のアシストシート672の動作を説明する図であり、上刃633が下降すると、図10の(a)に示すように、アシストシート672の押圧部6721はシート束Tと接触する。この後、さらに上刃633が下降すると、アシストシート672は、シート束Tにより押圧されて図10の(b)に示すように、初期位置よりも上方に弾性的に変形する。そして、この後、上刃633が下死点に到達し、シート束Tの後端部分を断裁すると、図10の(c)に示すように、弾性的復元力によりアシストシート672の撓みが一気に解放される。これにより、アシストシート672は断裁片Gを押圧しながら下降し、押圧部6721は上刃633の刃先6331より下方に移動し、この結果、断裁片Gは上刃633の刃先6331よりも下方に押し下げられる。
【0073】
この後、上刃633は上昇する。そして、このように上刃633が上昇する際、既述した図6の(b)に示すように、上刃カバー674に取りつけられた加振シート673の当接面673a〜673eが、アシストシート672a〜672eと当接する(S8)。
【0074】
なお、図11は、この時の加振シート673とアシストシート672の状態を説明する図である。即ち、図11の(a)及び(b)に示すように上刃633が上昇すると、振動部材である加振シート673とアシストシート672が当接し、さらに上刃633が上昇すると、加振シート673とアシストシート672の双方に撓みが発生する。そして、図11の(c)に示すようにお互いが所定量撓んだところで、図11の(d)に示すように加振シート673とアシストシート672の当接が外れ、アシストシート672が振動する。
【0075】
ここで、既述したようにアシストシート672によって断裁片Gを押し下げる際、断裁片Gがアシストシート672によって押し下げられず、図5に示す上刃633の側面670とアシストシート672の対向面6722の間に挟まる場合がある。例えば、図12の(a)に示すように、アシストシート672eと上刃633の側面670との間に断裁片Gが挟まる場合がある。しかし、このように断裁片Gが挟まった場合でも、アシストシート672e〜672aが順番に振動することにより、図12の(b)に示すように、上刃633の側面670とアシストシート672eの間に挟まった断裁片Gは下方へ落下する。
【0076】
なお、カッターユニット631は下降する際に、カム636によってシャッタ625を押して下方回動させ、シート束切断前には、上刃633と下刃634とにより構成される切断部から収容箱635までの断裁片Gの落下経路を開放している。これにより搬送路に断裁片Gを残すことなく確実に収容箱635へと断裁片Gを収納することができる。
【0077】
次に、カッターユニット631は、図13に示すリンク637の可動領域最下点付近である下死点Nに到達すると(S9のY)、一旦停止する。この後、カッターユニット631が図3に示す初期位置(リンク637の可動領域最上点付近である上死点U)まで復帰すると、断裁モータの駆動を停止する(S10)。
【0078】
なお、カッターユニット631の下死点Nでの停止時間は、中綴じ製本部800で作成されるシート束の最小束内枚数における束間時間よりも長くなるように設定している。また、カッターユニット631を下死点Nにおいて停止させることにより、シャッタ625の断裁片の落下経路開放時間が確保され、既述したように落下する断裁片Gを確実に収容箱635に落下させることができる。
【0079】
また、カッターユニット631が初期位置(上死点U)に復帰するに伴い、カム636がシャッタ625から離れるため、ねじりコイルバネによりシャッタ625が断裁片の落下経路を閉鎖する。この後、ストッパ641は退避し(S11)、搬送が再開されるよう第2〜第4搬送部620,640,650の駆動がONされる(S12)。そして、第3搬送部640により、トリム部630において断裁処理が施されたシート束は、第3搬送部640の下流に配設されている第4搬送部650へ受け渡される。
【0080】
さらに、シート束は第4搬送部650によって上方に搬送されて排出部660へ排出され(S13)、順次かわら状に積み重ねられていく。なお、この後、続いてシート束が搬送される場合は、同様の動作が繰り返されて、所望の部数が排出部660に積載される。
【0081】
以上説明したように、本参考例によれば、上刃633とともに下降するアシストシート672によってシートの断裁片Gを弾性的に押圧して押し下げることにより、シートの断裁片Gを、搬送経路から収容箱635へと落下させるようにしている。また、アシストシート672の対向面6722と上刃の側面670の間に断裁片Gが挟まった場合は、アシストシート672を振動させることにより断裁片Gを落下させ、確実に収容箱635へと収容するようにしている。
【0082】
このように、本参考例では、上刃633の下降によってシート束が断裁される際、アシストシート672を上刃633の刃先よりも下方へ下降させることにより、断裁屑が下刃634に付着するのを防止することができる。これにより、断裁片Gが搬送経路に残ることがなくなるので、断裁片がシート束とともに積載収容されることによる品位の低下や、搬送経路内のセンサの誤動作を防止することができ、信頼性の高い動作が実現できる。さらに、アシストシート672の移動は、上刃633と一体的に移動するので、新たに駆動機構を設ける必要がなく、構成も簡単となる。
【0083】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図14は、本実施の形態に係るシート処理装置であるフィニッシャのトリマーユニット600の構成を示す図である。なお、図14において、既述した図3と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0084】
図14において、691はカッターユニット631に設けられ、上刃633及び下刃634についた断裁片を掻き落とす掻き落としユニットである。この掻き落としユニット691は、図15に示すように、断裁片を掻き落とす掻き落としシート692と、掻き落としシート692が貼り付けられているスライド板6730と、スライド板6730と連結されたアーム6740を備えている。なお、このアーム6740はバネ675により下方に付勢されている。
【0085】
ここで、付着防止部材である掻き落としシート692が貼り付けられたスライド板6730は、図15及び図16の(a)に示すように、掻き落とし動作を行うためのスライド軸6731〜6733が取り付けられている。そして、このスライド軸6731〜6733を図16の(b)に示す上刃カバー680に形成された長丸穴6801,6802に沿って移動させることにより、上下方向にスライドする。
【0086】
また、スライド板6730には図15に示すように長丸穴6734が形成されており、この長丸穴6734に、アーム6740の一端部に設けられた軸674aを挿入することにより、スライド板6730とアーム6740が連結されている。ここで、このアーム6740は上刃カバー680に取り付けられた軸6803を中心に回動を行うものであり、この回動動作を行うためアーム6740にはリンク637aと当接する当接面6741が形成されている。
【0087】
そして、図16の(a)に示す回転カム690の回転動作により、リンク637aの端部6371aとアーム6740の当接面6741が当接する。つまり、回転カム690、リンク637a及びアーム6740は、掻き落としシート692を上刃633の昇降と連動させて昇降させる連動部を構成する。そして、このような構成の連動部により、リンク637aの端部6371aによって押されたアーム6740は、軸6803を中心に矢印Aの向きに回動動作を行い、この回動動作がスライド板6730に伝わりスライド板6730は下降動作を行う。
【0088】
なお、図16の(b)に示すように、アーム6740に一端が取り付けられたバネ675の他端はカッターユニット631に取り付けられたカバー676に取り付けられている。このため、アーム6740は常に矢印Aと反対の向きに付勢され、アーム6740と連結している図16の(a)のスライド板6730及び掻き落としシート692も上方に付勢されている。
【0089】
図17及び図18はトリム部630に設けられたカッターユニット631の動作を示したものである。初期位置である図17の(a)では下刃634に対して上刃633が上死点に位置(退避)した状態にある。このとき、上刃633と共に移動する押さえ部材632も上死点にあり、下刃634と押さえ部材632にはシート束が通過するための間隔Rが形成されている。また、掻き落としシート692は、この間隔Rよりも上方に位置しているため、シート束の通過を阻害することはない。
【0090】
次に、図17の(a)に示す初期位置から回転カム690が反時計回りに180°回転すると、リンク637a,637bを介して上刃633は、図17の(b)に示す下死点に到達する。これにより、シート束が断裁される。この後、さらに回転カム690が回転すると、リンク637aとアーム6740の当接面6741が当接し、アーム6740が軸6803を中心に反時計回りに回動し、図18の(a)に示すようにスライド板6730及び掻き落としシート692が下降を始める。
【0091】
そして、回転カム690が約270°回転すると、掻き落としシート692は図18の(b)に示す、上刃633が重なった状態、すなわち上刃633が下刃634の側方に位置する状態となっている下刃634の側面に接する下死点に到達する。そして、このように掻き落としシート692が下死点に到達するまでに、上刃633及び下刃634についた断裁片を掻き落とす。なお、この後、回転カム690がさらに回転すると、アーム6740は取り付けられたバネ675の付勢により軸6803を中心に時計回りに回動する。これに伴い、スライド板6730及び掻き落としシート692も初期位置へ戻る。また、上刃633は回転カム690の回転によって図17の(a)に示す初期位置である上死点に到達する。
【0092】
ところで、掻き落としシート692は、図19に示すように断裁方向Bと上刃633の側面670とが成す角(傾斜角度)Cよりも大きく、且つ鋭角な角度Hとなるように取り付けられている。そして、このように掻き落としシート692を取り付けることにより、掻き落としシート692が下降する際、掻き落としシート692は上刃633の側面670及び下刃634の側面634aに付着した断裁片と掻き落としシート692が鋭角で当接する。これにより、断裁片が掻き落としシート692をすり抜けることなく、確実に断裁片を掻き落とすことができる。
【0093】
また、図16の(a)及び図20に示すように掻き落としシート692は、上刃633の長手方向において、上刃633の先端に沿って間隔をあけて複数設けられている。具体的には、掻き落としシート692は、上刃633の長手方向で複数(ここでは2個)設けられている。これにより、シートの断裁片を複数点で掻き落とすことができるので、単点で掻き落とすことに比べて下刃634の端部に断裁屑が付着しにくくなる。また掻き落としシート692は、トリム部630に搬送される各種サイズのシート束Tに対応した位置に配置されており、どのようなサイズのシート束であっても、その断裁片を確実に掻き落とすことができる。
【0094】
次に、本実施の形態のように構成されたトリマーユニット600の動作について図21に示すフローチャートを用いて説明する。既述したように、折り目プレスユニット860で折り強化されると、シート束は搬送が再開され、トリマーユニット600の第1搬送部610へ受け渡される。この後、第1搬送部610の下搬送ベルト611が回転してシート束を搬送し、第1搬送部出口センサ616でシート束を検知した後、搬送を一旦停止する。次に、搬送経路の両側に配設されたサイドガイド612が整合動作を行い、この後、第1搬送部610の上流に配置された搬送爪613と下搬送ベルト611によってシート束の搬送が再開される。
【0095】
次に、第2〜第4搬送部620,640,650の駆動がONし(S21)、第2搬送部620が第1搬送部610からシート束を受け取る。次に、第2搬送ベルト対622,623の挟持部Jに配設された第2搬送部入口センサ623がシート束を検知してONすると(S22のY)、搬送爪613は搬送上流に退避する。次に、シート束は、第2搬送部620、トリム部630を通過し、第3搬送部640へと搬送される。
【0096】
このとき、第3搬送部640では、既述した図20に示すように搬送されるシート束のサイズに合わせて適切な位置にストッパ641が、予め搬送経路上に出現している。これにより、シート束Tは第2搬送部入口センサ623から所定量搬送されたところでストッパ641に当接する。そして、このようにシート束Tがストッパ641に当接した後、第2〜第4搬送部620,640,650の駆動をOFFし(S23)、シート束を停止する。
【0097】
次に、トリム部630のカッターユニット631の断裁モータの駆動を開始する(S24)。これにより、カッターユニット631が下降し、上刃633が下死点に向かって移動する(S25)。そして、このように移動する際、上刃633は刃先の形状にしたがって、奥側から順次シート束を断裁する。つまり、図22の(a)に示すように上刃633が上死点位置から下降を開始し、図22の(b)に示すよう下死点に到達することで断裁を行う。なお、このとき掻き落としユニット691の掻き落としシート692は、移動していないが、上刃633の側面670に倣って弾性的に変形するので、上刃633の下降を妨げることはない。
【0098】
この後、図23の(a)に示すように上刃633が上昇動作に移行しながら、掻き落としシート692が下降する(S26)。このとき掻き落としシート692は弾性体であるため、上刃633の側面670に倣って下降を行う。そして、上刃633と下刃634が重なり合った状態のときに掻き落としシート692は下刃634に達する。つまり、掻き落としシート692は上刃633と下刃634の二つの刃を、またがって下降する(S27)。そして、この後、図23の(b)に示すように、断裁片Gを上刃633の先端よりも下方に掻き落としながら下死点に到達する。この後、掻き落としシート692は上刃633と共に上昇し(S28)、再びそれぞれの図22の(a)に示す上死点位置に到達する。
【0099】
なお、カッターユニット631は下降する際に、カム636によってシャッタ625を押して下方回動させ、シート束切断前には、上刃633と下刃634とにより構成される切断部から収容箱635までの断裁片Gの落下経路を開放している。これにより搬送路に断裁片Gを残すことなく確実に収容箱635へと断裁片Gを収納することができる。
【0100】
次に、カッターユニット631は、図24に示すリンク637の可動領域最下点付近である下死点Eに到達すると(S29のY)、一旦停止する。この後、カッターユニット631が、既述した図13に示す初期位置(リンク637の可動領域最上点付近である上死点U)まで復帰すると、断裁モータを停止する(S30)。
【0101】
なお、カッターユニット631の下死点Eでの停止時間は、中綴じ製本部800で作成されるシート束の最小束内枚数における束間時間よりも長くなるように設定している。また、カッターユニット631を下死点Eにおいて停止させることにより、シャッタ625の断裁片の落下経路開放時間が確保され、既述したように落下する断裁片Gを確実に収容箱635に落下させることができる。
【0102】
また、カッターユニット631が初期位置(上死点U)に復帰するに伴い、カム636がシャッタ625から離れるため、ねじりコイルバネによりシャッタ625が断裁片の落下経路を閉鎖する。この後、ストッパ641は退避し(S31)、搬送が再開されるよう第2〜第4搬送部620,640,650の駆動がONされる(S32)。そして、第3搬送部640により、トリム部630において断裁処理が施されたシート束は、第3搬送部640の下流に配設されている第4搬送部650へ受け渡される。さらに、シート束は第4搬送部650によって上方に搬送されて排出部660へ排出され(S33)、順次瓦積み状態で重ねられていく。なお、この後、続いてシート束が搬送される場合は、同様の動作が繰り返されて、所望の部数が排出部660に積載される。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態によれば、上刃633と下刃634が重なりあった状態で掻き落としシート692が二つの刃をまたがって下降動作を行うため、断裁片を上刃の刃先より下方に押し下げることができる。つまり、本実施の形態では、シート束を断裁する際、上刃633が下降して下刃634と重なり合った状態のとき、掻き落としシート692は上刃633の側面に弾性的に圧接しながら下降した後、下刃634の側面に弾性的に圧接しながら下降する。
【0104】
これにより上刃633と共に断裁片が上昇し、下刃の端部に貼りつくことを防止するとともにシートの断裁片Gを、確実に収容箱635へと収容することができる。さらに、掻き落としシート692の移動は、上刃633に連動するものであるから、新たに駆動機構を設ける必要がなく、簡易な構成で実現ができる。
【0105】
このように、本実施の形態では、上刃633の下降によってシート束が断裁される際、掻き落としシート692を上刃633の刃先よりも下方へ移動させることにより、断裁屑が下刃634に付着するのを防止することができる。これにより、断裁片Gが搬送経路に残ることがなくなるので、断裁片がシート束とともに積載収容されることによる品位の低下や、搬送経路内のセンサの誤動作を防止することができ、信頼性の高い動作が実現できる。
【0106】
なお、本実施の形態においては、掻き落としシート692の下降動作が上刃693の下死点到達時に開始されたが、掻き落としシート692の動作はこれに限定するものではない。上刃633の下降動作と同時に掻き落としシート692が下降し、シート束の断裁後に上刃633と下刃634をまたがって断裁片を掻き落としてもよい。さらに、上刃633が下死点に到達し上昇動作を行ってから下刃634と重なり合っている間に、掻き落としシート692が上刃633と下刃634をまたがって掻き落とし動作を行っても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0107】
300…複写機本体、500…フィニッシャ、600…トリマーユニット、630…トリム部、631…カッターユニット、633…上刃、6331…上刃の刃先、634…下刃、637…加振シート、670…上刃の側面、672…アシストシート、6721…押圧部、691…掻き落としユニット、692…掻き落としシート、1000…複写機、1003…画像形成部、T…シート束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃と、
前記固定刃の上方に昇降可能に配置され、下降して前記固定刃との間のシート束を前記固定刃と共に断裁処理する可動刃と、
前記可動刃がシート束を断裁した後、前記可動刃の刃先よりも下方まで、前記固定刃に沿って下降する付着防止部材と、
前記付着防止部材を前記可動刃の昇降と連動して昇降させる連動部と、
を備えたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記付着防止部材は、前記連動部により下降する際、前記可動刃の側面に弾性的に圧接しながら下降することを特徴とする請求項1記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記付着防止部材は、前記可動刃がシート束を断裁して前記固定刃の側方に位置したとき、前記連動部により前記可動刃と前記固定刃の側面に弾性的に圧接しながら下降することを特徴とする請求項1又は2記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記可動刃と前記固定刃の間にシート束を搬送する搬送部を備え、
前記付着防止部材は、前記可動刃が下降する前は、前記搬送部によるシート束の搬送を妨げない位置にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記付着防止部材は、前記可動刃の刃先に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成部と、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート処理装置とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−75359(P2013−75359A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4320(P2013−4320)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2011−201896(P2011−201896)の分割
【原出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】