説明

シート分離装置、定着装置、および画像形成装置

【課題】圧縮気体を定着後のシート部材と定着部材の間に吹き付けて用紙を分離させるノズル部材と定着部材との位置関係を精密に保つ。
【解決手段】定着ローラ64、定着ベルト61と、加圧ローラ62とを備え、ニップ部Nで未定着トナーを担持したシート部材Pを搬送して、定着装置60におけるシート分離装置70において、圧縮空気をニップ部出口方向から定着ローラ64に沿ってニップ部N方向へ向けて吐出するノズル部材80を備え、ノズル部材80と定着ローラ64、定着ベルト61との隙間の最狭部が2.0mm以下になるように配置し、かつ、ノズル部材80は、定着ローラ64と平行に配置され、圧縮空気がノズル部材80に供給される気体通路91を備える軸部材90で回動可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート分離装置、定着装置、および画像形成装置に係り、特に圧縮気体を吐出してシートを定着部材から分離するシート分離装置、定着装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像が転写された用紙等のシート部材を加熱加圧して定着する定着装置を備えている。この定着装置としてハロゲンヒータ等の熱源を内蔵した定着ローラと、この定着ローラに接触する加圧ローラとニップ部を形成し、このニップ部に未定着トナー像が転写されたシート部材を挟んで搬送し、未定着トナー像をシート部材に定着する熱ローラ定着方式のものがある。
【0003】
また、輪状の定着ベルトを、ハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと、この加熱ローラに隣接して配置した定着ローラとの間に掛けわたし、この定着ベルトを介して定着ローラを接触する加圧ローラと前記定着ベルトとでニップ部を形成し、このニップ部に未定着トナー像が転写されたシート部材を挟んで搬送し未定着トナー像をシート部材に定着するベルト定着方式のものも採用される。
【0004】
このような定着ベルト方式の定着装置は、定着ベルトの熱容量が小さいため、ウオーミングアップタイムを短縮でき、省電力化を図ることができるという利点を有している。
【0005】
そして、定着装置では、シート部材に融着したトナー画像が定着ローラや定着ベルトに接触するため、定着ローラや定着ベルトは、離型性に優れたフッ素系樹脂がその表面にコーティングされるとともに、分離爪を用いてシート部材の分離を図っている。
【0006】
分離爪を用いることの大きな欠点は、分離爪が定着ローラや定着ベルトに接触するため、定着ローラや定着ベルトの表面に爪跡(爪傷)をつけやすく、定着ローラ等を損傷した場合には、出力されたシート部材の画像にスジがついてしまうことである。
【0007】
一般的にモノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属製のローラの表面にシリコーン樹脂でコーティングしたものが使用され、分離爪が接触しても傷がつきにくく、その寿命も長くできた。しかし、カラー画像形成装置の場合には、発色性をよくするために、表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用する。
【0008】
しかし、このような構成の定着ローラは、表層が軟らかく傷がつきやすいという問題がある。表層に傷がつくと、定着画像にスジ状の傷が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段をほとんど用いず、大半は非接触での分離を行っている。
【0009】
非接触分離では、トナーと定着ローラとの粘着力が大きいと定着後の用紙がローラに巻き付きやすくなり、容易に巻き付きジャムが発生するようになる。特にカラー画像形成では何層ものトナー層が形成されており、粘着力が高まるために巻き付きジャムが発生しやすい。
【0010】
そこで、現在カラー画像形成装置における用紙分離には主に次の(1)〜(3)が採用されている。
(1)定着ローラや定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け定着ローラや定着ベルトの長手方向および幅方向に並行に配置された分離板を用いる非接触分離板方式。
(2)定着ローラや定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔に配された分離爪を用いる非接触分離爪方式。
(3)用紙の腰の強さと定着ローラ、定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式。
【0011】
しかしながら、前記(1)〜(3)のいずれの方式でも、定着出口への用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ないシート部材を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を形成したシート部材通紙するときは、シート部材が定着ローラや定着ベルトに密着したまま隙間を通過して、用紙の巻き付きジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生したりすることがある。
【0012】
そこで、非接触でシート部材を確実に分離させるため、空気等の圧縮気体を用紙分離位置に吹き付ける技術が提案され、使用に供されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。これらは、圧縮空気を、用紙の定着後トナー像と定着部材の間に吹き付け、用紙を強制的に定着部材から分離するものである。
【0013】
近年、カラー電子写真用トナーに代表されるように、シート部材にトナーが多量に付着させる場合、確実にシート部材を定着用紙からはがすためには、圧縮空気の吹き付け精度を高くすることが要求される。このため、圧縮空気を吹き出すノズル部材と定着部材表面との位置関係を精密に保つ必要がある。具体的には、定着部材の回転運動や、定着部材の熱膨張によらずノズル部材の先端と定着部材と間隔(ギャップ)を、一定に保つようにする。
【0014】
特許文献7には、回転体である定着部材表面の振れや熱膨張による径の変化に対処して、非接触分離爪と定着部材表面のギャップを精密に保つ技術が記載されている。これは、位置決め板を定着部材表面に接触させるように押し付け、非接触分離爪の先端と定着部材とのギャップを一定に保つように揺動させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献7に記載の技術をそのままノズル部材を備えた定着装置に適用することができない。
【0016】
そこで、本発明は、圧縮気体を定着後のシート部材と定着部材の間に吹き付けて用紙を分離させるノズル部材と定着部材との位置関係を精密に保つことができるシート分離装置、定着装置、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧され接触する加圧部材とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とで形成されるニップ部で未定着トナーを担持したシート部材を搬送して、前記未定着トナー画像を前記シート部材に定着する定着装置に取り付けられ、前記定着部材から前記シート部材を分離するシート分離装置において、圧縮気体をニップ出口方向から定着部材に沿ってニップ部方向へ向けて吐出する少なくとも1個のノズル部材を備え、前記ノズル部材は、前記定着部材と平行に配置され、圧縮気体が前記ノズル部材に供給される気体流路を備える軸部材で回動可能に保持されていること特徴とするシート分離装置である。
【0018】
同じく請求項2の発明は、請求項1に記載のシート分離装置において、前記ノズル部材は、前記定着部材との隙間の最狭部の寸法を2.0mm以下になるように配置されることを特徴とする。
【0019】
同じく請求項請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のシート分離装置において、前記軸部材およびノズル部材に固定された位置決め板を備え、前記位置決め板は定着部材表面に押し付けられて前記定着部材表面の移動に追従して回動し、前記ノズル部材と前記定着部材表面との距離を一定に保つことを特徴とする。
【0020】
同じく請求項4の発明は、請求項3に記載のシート分離装置において、前記位置決め板は、定着部材に最大画像定着領域の範囲外に配置されることを特徴とする。
【0021】
同じく請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート分離装置において、前記ノズル部材は、先端に有効断面積が0.19〜4.0平方ミリメートルの吐出口を有する先細り形状であり、前記吐出口に至る圧縮気体流通路の形状は有効断面積が大きい箇所から連続的もしくは断続的に絞られて前記吐出口に至る形状であることを特徴とする。
【0022】
同じく請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート分離装置において、前記ノズル部が、それぞれ前記軸部材を中心にして回動可能に配置され、かつ、前記ノズル部材の先端が前記定着部材に対する位置の調整を行う調整機構を介して前記軸部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
同じく請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート分離装置において、前記ノズルと前記管状の軸部材のはめあい隙間には、2個以上のリング状のシール部材を配したことを特徴とする。
【0024】
同じく請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載のシート分離装置と、前記定着部材と、前記加熱部材とを備えることを特徴とする定着装置である。
【0025】
同じく請求項9の発明は、請求項8に記載の定着装置と、前記定着装置に搬送する用紙に未定着トナー像を形成する作像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧縮気体を定着後のシート部材と定着部材の間に吹き付けて用紙を分離させるノズル部材を軸部材で回動自在に保持しているので、ノズル部材と定着部材との位置関係を適正に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】実施例に係る定着装置を示す模式図である。
【図3】実施例に係るシート分離装置の斜視図である。
【図4】圧縮空気噴射ノズル部材を示す斜視図である。
【図5】同じくシート分離装置のノズル部材の図3中B−B線に沿う断面図である。
【図6】同じくシート分離装置のノズル部材を示す斜視図である。
【図7】同じくシート分離装置の軸部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態に係る定着装置は、内部に気体流路を備えた軸部材とし、この軸部材を回転軸としてノズル部材が揺動できるものとして、圧縮気体の管路が動いてしまうことを防止し、結果的に管路に接続されているノズル部材と定着部材との間隔が変化しないものとした。また、ノズル部材と定着部材表面の間隔寸法を精密に保つため、定着部材表面に直接位置決め板を接触して軸部材とノズル部材とを揺動させる。さらに、前記ノズル部材は、前記定着部材との隙間の最狭部の寸法を2.0mm以下になるように配置されるので、シート部材を効率良く分離できる。
【0029】
また、定着部材の擦れ傷による定着後の画像に影響を出さないため、定着部材に接触する位置決め板の当接位置を、最大の画像形成を行う領域の外側とした。さらに、定着部材および加圧部材がローラ状の回転体で構成される場合、空気噴射部材を定着出口の用紙搬送のための領域しか用いることができずノズル部材配置の自由度が制限されるため、ノズル部材を噴射口に向かって絞っていく圧縮気体通路を備える先細りの形状とした。
【0030】
さらに、高温時や、直径寸法の誤差が大きい定着部材を使用する場合であっても、また、ノズル部品の寸法公差や組み立てばらつきによりノズル先端と定着部材の設定した隙間がばらつかないように調整できる位置調整機構を備えた。さらに、圧縮気体の管路である回転軸と、ノズル部材のはめあい隙間から圧縮気体の漏れが無くすことができ、効率がよく、かつ安定した圧縮気体の噴射ができるようにした。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例に係るシート分離装置、定着装置、および画像形成装置について説明する。
【0032】
図1は実施例に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。図中100は複写装置本体、200は給紙テーブル、300はスキャナー、400は原稿自動搬送装置(ADF)、500は露光装置である。複写装置本体100を給紙テーブル200上に載せ、複写装置本体100上にスキャナー300を取り付け、さらにその上にADF400を取り付けてある。
【0033】
複写装置本体100には、中央に無端ベルト状の中間転写体10を設けて3つの支持ローラ14、15、16に掛け回し、図中時計回りに回転搬送可能としてある。なおこの例では、3つの支持ローラのうちの第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17が設けてある。
【0034】
また、3つの支持ローラのうちの第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15の間に、中間転写体10上に位置するように、中間転写体10の搬送方向に沿ってイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム作像装置20を構成してある。このタンデム作像装置20の上方には、図示のように露光装置21が設けてある。
【0035】
一方、中間転写体10を挟んでタンデム作像装置20の反対側には、2次転写装置22を備えている。2次転写装置22は、図示の例では、2つのローラ23間に無端ベルトである2次転写ベルト24を掛けわたして構成してあり、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に2次転写ベルト24を押し当てるように配置し、中間転写体10上の画像を転写材であるシートに転写するようになっている。
【0036】
2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置60が設けてある。定着装置60は、無端ベルトである定着ベルト61に加圧ローラ62を押し当てて構成してある。上述した2次転写装置22は、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能を備えている。もちろん、2次転写装置22として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよいが、そのような場合は、このシート搬送機能を併せて備えることは難しくなる。
【0037】
なお図示の例では、このような2次転写装置22および定着装置25の下側に、上述したタンデム作像装置20と平行にして、シートの両面に画像を記録するためにシートを反転させるシート反転装置28を備えている。
【0038】
このカラー電子写真装置を用いてコピーをとる際の動作を説明する。原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、または原稿自動搬送装置400を開いてスキャナー300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。
【0039】
そして、図示していないスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナー300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行させる。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサー36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0040】
また、図示していないスタートスイッチを押すと、これも図示していない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転させ、中間転写体10を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18で感光体40K、40Y、40Cを回転させ、露光装置500で露光され潜像が形成された各感光体40K、40Y、40C、40M上にそれぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。
【0041】
一方、図示していないスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写装置本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。手差しトレイ51から給紙するときは、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0042】
そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0043】
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置60へと送り込み、定着装置60で熱と圧力とを加えて転写画像を定着させた後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転させて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
【0044】
一方、画像転写後の中間転写体10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム作像装置20による再度の画像形成に備える。
【0045】
次に実施例に係る定着装置60について説明する。図2は実施例に係る定着装置を示す模式図である。定着装置60において、定着部材としての定着ベルト61は、駆動ローラである定着ローラ64、従動ローラである加熱ローラ65に掛けわたされ、回転走行する。
【0046】
加圧ローラ62は、定着ベルト61を介して、定着ローラ64に相対して設けられており、加圧ローラ62は図示しない加圧機構により定着ベルト61を介して定着ローラ64に押し付けられニップ部Nを形成する。加熱ローラ65の内部には熱源としての定着ヒータ66が設けられ、この定着ヒータ66により加熱ローラ65が加熱され、さらに定着ベルト61が加熱ローラ65により加熱される。定着ベルト61は定着ローラ64が図示しない駆動機構で回転駆動されることにより回転し、加圧ローラ62は定着ベルト61に連れ回りする。なお、加圧ローラ62を駆動することもできる。
【0047】
定着ベルト61の表面温度は図示しない温度検知素子により検知され、図示しない温度制御部がその温度検知素子の出力値に基づいて定着ヒータ66を定着ベルト61の表面温度が所定の設定温度になるように制御する。
【0048】
未定着のシート部材Pは所定の温度に制御されている定着ベルト61と加圧ローラ62とで形成される定着ニップ部Nを通過するとき、トナー像Tが溶融定着され、装置本体外に送り出される。なお、加圧部材としては、加圧ローラ62を用いたが、加圧ベルトなどを用いてもよい。
【0049】
また、実施例では、定着ベルト61のテンションを保持するためのテンションローラ63を定着ベルト61の外側に設置している。テンションローラ63は、定着ベルト61の配置箇所は、定着ベルト61の内側、外側のいずれでもよい。なお、定着装置は、ベルト定着装置に限らず、加熱源を有する定着部材と、それに押圧される加圧部材の、2本のローラ対で構成されるいわゆるローラ定着装置であってもよい。
【0050】
定着装置60において、定着ニップ部Nの出口近傍には、ノズル部材80が配置されている。このノズル部材80は、空気噴出口85を備え、シート分離装置(図3参照)に配置されている。実施例に係る定着装置では、複数のノズル部材80と定着ベルト61との隙間の最狭部がおのおの2.0mm以下になるように配置している。なお、図2中に描いたノズル部材80は、その先端部のみ略図で示している。また、ノズル部材80は、非接触分離爪(分離板と呼ぶことある)と並列させることができる。
【0051】
不図示の圧縮空気供給源と電磁弁により制御された圧縮空気流Aが、ノズル部材80中の先端部空気通路81aを通り、空気噴出口85から定着ニップ部Nに向けて噴射される。シート部材Pの先端はこの圧縮空気の流れにより強制的に定着ベルト61と分離される。
【0052】
次にノズル部材80が配置されるシート分離装置70について説明する。図3は実施例に係るシート分離装置の斜視図、図4は同じくシート分離装置のノズル部材の図3中B−B線に沿う断面図、図5は同じくシート分離装置のノズル部材を示す斜視図、図6は同じくシート分離装置の図4中のC−C線に沿う断面図、図7は同じくシート分離装置の軸部材を示す斜視図である。
【0053】
ノズル部材80は、定着ローラ64の長手方向に複数個配置される。なお、ノズル部材80は、定着ローラ64の幅方向中央に1つだけ配置することもできる。
【0054】
図3に示すように、各ノズル部材80は、軸部材90に保持されている。軸部材90は圧縮気体である圧縮空気を供給する気体通路91が形成された管状部材である。また軸部材90には、各ノズル部材80に圧縮空気を供給するため、気体通路91に連通する穴部92が、取り付けられるノズル部材80の個数分だけ開設してある(図7参照)。
【0055】
この軸部材90は、ステンレススチール(SUS)やアルミニウム合金等の腐食に強い材料で形成することが望ましい。圧縮空気では、ドレン(排水)が発生するため、このドレンによる腐食を防止するためである。SUM(硫黄および硫黄複合快削鋼鋼材)等を用いる場合は、管路の内壁にも腐食防止のメッキが施す必要がある。また、軸部材90の気体通路91の片側(図中左方)は、ねじ93で密封されている、ねじ93には薄手のPTFEシートを巻いたり、粘着材を塗布したりすると、密閉性が高まる。本例では気体通路91の開口にねじ93をねじ込んで密封しているが、気体通路91の開口がふさがっていればよく、溶接や接着など手段で密封することができる。
【0056】
軸部材90の他端(図中右側)の開口部91aから、圧縮空気が供給される(図3中矢印)。軸部材90は、可動ステー71の側板72a、72bに貫通して保持される。軸部材90は、側板72a、72bの両方、もしくは片側は、D形状の穴部に保持され、軸部材90が可動ステー72に対して回転しないように固定されている。なお、可動ステー72との取り付け箇所において、軸部材90の輪郭形状も断面D形状とされている。
【0057】
可動ステー72には、位置決め板78が取り付けられ、この位置決め板78は、定着ローラ64に向け押し付けられている。位置決め板78は、先端が定着ローラ64の最大画像定着領域の外側部に接触し、定着ローラ64の熱膨張や振れに対応して揺動することにより、ノズル部材80の先端と、定着ローラ64の間隔を2mm以下の設定値である一定値に保つ。
【0058】
可動ステー71は固定ステー73に揺動可能に保持されている。すなわち、固定ステー73は、側板部74a、74bにおいて、可動ステー71に取り付けられた軸部材90を回転可能に保持している。このため、可動ステー71は、位置決め板78とともに固定ステー73に対して軸部材90を中心として揺動できる。
【0059】
なお、固定ステー73は、固定部75a,75bで定着装置本体にねじ等で固定されている。また、可動ステー71と固定ステー73と間には、引張スプリング76a、76bが掛けられており、位置決め板78を定着ローラ64側に押し付けている。それぞれの引張スプリング76a、76bの両端は、それぞれ可動ステー71の突起78a、78b、固定ステー73の突起77a、77bに固定される。
【0060】
ここで、シート分離装置70において、ノズル部材80の先端に形成された空気噴出口85は、例えば小さいもので、□0.5×0.5mmやφ0.5mm、大きいもので、□2.0×2.0mm、φ2mm、好ましくは最小約0.19平方mm〜最大4.0平方mmの範囲で設定する。
【0061】
定着排紙方向から、定着ニップ部Nの方向へ圧縮空気を噴射する場合、用紙搬送のスペースと定着ローラ64の空きスペースに中に圧縮空気の管路を伴ったノズル部材80を設置しなければならない。空気噴出口85の有効断面積が0.19平方mm以下だと圧縮空気が分離に十分な量を噴射できない、逆に4.0平方mm以上であるときは、空気の流跡が太くなりすぎて、分離に十分な流跡をもって噴射できないことが、実験的検討により判明している。
【0062】
次にノズル部材80について詳細に説明する。ノズル部材80は、耐熱性を考慮し、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PES(ポリエーテルサルフォン)などのエンジニアリングプラスチックで形成することができる、また、ノズル部材80の先端部のトナー汚れ付着を抑制したい場合には、材質をPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)にするか、汚れが付着する箇所にのみPFAコートやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))コートを施すとよい。それらのコートを焼成とする場合には、ノズル部材80の材質は、焼成に耐えうるPEK(ポリエーテルケトン)、PI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)等の材料を選択するとよい。
【0063】
ノズル部材80は、先端に空気噴出口85が形成された先細り形状の先端部81と、この先端部81の基部から立ち上がる立設部82と、この立設部82に配置された円筒形状の取付部83と、この取付部83から先端部81側と反対方向に延びる板状部材84とから構成される。取付部83には、軸部材90が回転可能に挿入される挿入孔83aが開設されている。また、立設部82には、取付部83の挿入孔83aに連通する取付部空気通路82aが形成され、先端部81には、取付部空気通路82aに連通し空気噴出口85に至る先端部空気通路81aが形成されている。
【0064】
取付部空気通路82aと先端部空気通路81aとは全体として先細りに形成されている。実施例に係るノズル部材80では、取付部空気通路82aと挿入孔83aとを連通する開口83bの有効断面をφ4mm〜φ6mm、もしくは□4×4mm〜□6×6mmとした。
【0065】
また、実施例に係るシート分離装置70では、定着ベルト61とノズル部材80の空気噴出口85との位置の調整ができるように調整機構95を設けている。
【0066】
調整機構95は、図4に示すように、押圧部材である圧縮ばね96と、ビス97(右ねじ)と、これらを保持するステー98とを備え、ステー98とノズル部材80の板状部材84との間に圧縮ばね96を挟み、ステー98に対して板状部材84を位置調整できるようにしたものである。調整機構95では、ビス97を軸時計回りに回すと、ノズル部材80は軸部材90を回転軸として図中時計回りに回転して、その先端が定着ベルト61から離れる。一方、ビス97を反時計回りに回すと、ノズル部材80は軸部材90を回転軸として図中反時計回りに回転し、定着ローラ64との間隔が近接する。
【0067】
この調整機構95により、ノズル部材80の空気噴出口85と定着ローラ64および定着ベルト61との位置関係を最適値に調整することができる。この最適値は、実験的に求めることができる。
【0068】
図6に示すように、ノズル部材80に軸部材90が通されているが、ノズル部材80は軸部材90に対してはEリング86で両端を位置決めされている。また、軸部材90とノズル部材80の取付部83との間には、軸部材90の穴部92を挟んで両側2カ所にOリング87が装着され、ノズル部材80と軸部材90の隙間から圧縮空気が漏れるのを防止している。Oリング87は、軸部材90の外周に形成された溝部94に配置される。
【0069】
本実施例では、定着ローラ64が振れながら回転すると、定着ローラ64の表面に押し付けられている位置決め板78が定着ローラ64の動きに追随して揺動し、この位置決め板78に取り付けられた可動ステー71が軸部材90と共に定着ローラ64に同期した往復揺動運動をする。
【0070】
そして、この軸部材90の揺動運動により、ノズル部材80が揺動して、定着ローラ64とノズル部材80の間の距離は常に一定に保たれ、定着ローラ64への圧縮空気の当たり方が安定すると共に、ギャップが広がりすぎて、そこに用紙の先端が狭まりジャムを起こすといった不具合も未然に防ぐことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施例に係る画像形成装置によれば、圧縮空気を定着後のシート部材と定着部材の間に吹き付けて用紙を分離させるノズル部材を軸部材で回動自在に保持し、定着ベルトの振れや熱膨張に対応させて移動させ、常にノズル部材と定着ベルトとの隙間間隔を一定のものとできるので、シート部材を定着部材から確実に分離することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 側
10 中間転写体
14 第1の支持ローラ
15 第2の支持ローラ
16 第3の支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム作像装置
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
28 シート反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読み取りセンサー
40K、40Y、40C 感光体
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
50 給紙ローラ
51 トレイ
52 分離ローラ
53 給紙路
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
60 定着装置
61 定着ベルト
62 加圧ローラ
63 テンションローラ
64 定着ローラ
65 加熱ローラ
66 定着ヒータ
70 シート分離装置
71 可動ステー
72 可動ステー
72a、72b 側板
73 固定ステー
74a、74b 側板部
75a,75b 固定部
76a、76b 引張スプリング
77a、77b 突起
78 位置決め板
78a、78b 突起
80 ノズル部材
81 先端部
81a 先端部空気通路
82 立設部
82a 取付部空気通路
83 取付部
83a 挿入孔
83b 開口
84 板状部材
85 空気噴出口
86 Eリング
87 Oリング
90 軸部材
91 気体通路
91a 開口部
92 穴部
93 ねじ
94 溝部
95 調整機構
96 圧縮ばね
97 ビス
98 ステー
100 複写装置本体
100 複写機本体
200 給紙テーブル
300 スキャナー
400 原稿自動搬送装置
500 露光装置


【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開昭51−104350号公報
【特許文献2】特許第2876217号公報
【特許文献3】特開平11−334191号公報
【特許文献4】特開2007−189015号公報
【特許文献5】特開2007−240920号公報
【特許文献6】特開2008−102408号公報
【特許文献7】特開2009−31759号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧され接触する加圧部材とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とで形成されるニップ部で未定着トナーを担持したシート部材を搬送して、前記未定着トナー画像を前記シート部材に定着する定着装置に取り付けられ、前記定着部材から前記シート部材を分離するシート分離装置において、
圧縮気体をニップ出口方向から定着部材に沿ってニップ部方向へ向けて吐出する少なくとも1個のノズル部材を備え、
前記ノズル部材は、前記定着部材と平行に配置され、圧縮気体が前記ノズル部材に供給される気体流路を備える軸部材で回動可能に保持されていること特徴とするシート分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート分離装置において、
前記ノズル部材は、前記定着部材との隙間の最狭部の寸法を2.0mm以下になるように配置されることを特徴とするシート分離装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート分離装置において、
前記軸部材およびノズル部材に固定された位置決め板を備え、
前記位置決め板は定着部材表面に押し付けられて前記定着部材表面の移動に追従して回動し、前記ノズル部材と前記定着部材表面との距離を一定に保つことを特徴とするシート分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート分離装置において、
前記位置決め板は、定着部材に最大画像定着領域の範囲外に配置されることを特徴とするシート分離装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート分離装置において、
前記ノズル部材は、先端に有効断面積が0.19〜4.0平方ミリメートルの吐出口を有する先細り形状であり、
前記吐出口に至る圧縮気体流通路の形状は有効断面積が大きい箇所から連続的もしくは断続的に絞られて前記吐出口に至る形状であることを特徴とするシート分離装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート分離装置において、
前記ノズル部が、それぞれ前記軸部材を中心にして回動可能に配置され、
かつ、
前記ノズル部材の先端が前記定着部材に対する位置の調整を行う調整機構を介して前記軸部材に取り付けられていることを特徴とするシート分離装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート分離装置において、
前記ノズルと前記管状の軸部材のはめあい隙間には、2個以上のリング状のシール部材を配したことを特徴とするシート分離装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のシート分離装置と、前記定着部材と、前記加熱部材とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の定着装置と、前記定着装置に搬送する用紙に未定着トナー像を形成する作像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193015(P2012−193015A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57925(P2011−57925)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】