説明

シート圧縮装置及び画像形成装置

【課題】シートのコバ部を均一に潰して、シートに形成される画像品質の低下を抑制させたシート圧縮装置及びこれを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】シートを給送するシート給送部4と、画像を形成する画像形成部3と、の間に配設されるシート圧縮装置5において、シートを加圧する第1ニップL1を有し、第1ニップL1に対して傾斜した第1の角度a1でシートの先端部が進入して通過する第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aと、シートを加圧する第2ニップL2を有し、第2ニップL2に対して第1の角度a1と反対側に傾斜した第2の角度a2でシートの先端部が進入して通過する第2駆動ローラ60b及び第2従動ローラ61bと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの端部を圧縮可能なシート圧縮装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等の画像形成装置に用いられる記録材としてのシートは、原紙を裁断することで規格化された所定のサイズに形成される。そのため、シートの縁部には、シートを構成する繊維が裁断によりささくれた状態となる裁断バリが必然的に形成される。
【0003】
ところで近年、電子写真式の画像形成装置においては、画像を定着させる定着ローラや加圧ローラの表層にトナーとの離型性を確保するためのフッ素樹脂がコーティングされており、シートに形成される画像の品質を向上させている。そのため、定着ローラや加圧ローラのニップに裁断バリを有するシートを通過させると、定着ローラや加圧ローラのコーティングが傷ついたり、摩耗してしまい、画像の品質を低下させるおそれがある。特に、厚紙(例えば、250〜350(gsm))を通紙する場合に発生し得るシートの縁部に形成された裁断バリによる傷や摩耗は顕著であり、この傷や摩耗によりシートに形成される画像の品質を低下させていた。
【0004】
これに対しては、定着部の上流側にローラ対を配置し、ローラ対で裁断バリを加圧してバリ取りを行い、裁断バリによる影響を軽減させた技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−276846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のローラ対は、裁断バリを加圧して、裁断バリの高さを低下させるものである。一方、例えば、300(gsm)を超えるような厚紙においては、裁断バリの高さを低下させるだけでなく、シートの端部(以下、「コバ部」という)を潰さなければ定着ローラ等に傷や摩耗を発生させてしまう。これを上述のローラ対の加圧力で対処させるためには、加圧力を上昇させるための十数倍のトルクが必要となり、トルクの増加による駆動モータの脱調等を発生させるおそれがある。また、シート突入時のショックによるシートの搬送不良も起こり得る。
【0007】
これに対しては、シートを斜行させてローラ対のニップに進入させることでシートの搬送抵抗が小さくなり、トルクの増加やシート突入時のショックを抑制することが可能と考えられる。しかしながら、この場合、斜行させたシートの進み側のコバ部は潰れるものの、遅れ側のコバ部は殆ど潰れず、コバ部を均一に潰すことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、シートのコバ部を均一に潰して、シートに形成される画像品質の低下を抑制させたシート圧縮装置及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シートを給送するシート給送部と、画像を形成する画像形成部と、の間に配設されるシート圧縮装置において、シートを加圧する第1ニップを有し、前記第1ニップに対して傾斜した第1の角度でシートの先端部が進入して通過する第1回転体対と、シートを加圧する第2ニップを有し、前記第2ニップに対して前記第1の角度と反対側に傾斜した第2の角度でシートの先端部が進入して通過する第2回転体対と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シート端部のコバ部をシート幅方向の一方側と他方側とから潰すことで厚紙等を搬送する場合においてもコバ部を均一に潰すことが可能になり、シートに形成される画像の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの全体構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態に係るシート圧縮装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態に係るシート圧縮装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るシート圧縮装置を示す上面図である。
【図5】本実施形態に係るシート圧縮装置の加圧力の増減を示すタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係るシート圧縮装置のシート圧縮動作を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、シート圧縮装置を通紙させる前のシートの先端部の厚さを示す図であり、(b)は、シート圧縮装置を通紙させた後のシートの先端部の厚さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るシート圧縮装置を備えた画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、搬送されるシートの端部を圧縮可能なシート圧縮装置を備えた画像形成装置である。以下の実施形態においては、画像形成装置として、電子写真式のプリンタ100を用いて説明する。
【0013】
まず、本発明の実施形態に係るプリンタ100の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ100の全体構造を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、原稿の画像情報を読み取る画像読取部2と、画像読取部2で読み取られた画像情報に基づいて画像を形成する画像形成部3と、シートSを給送するシート給送部4と、シートSの端部を加圧するシート圧縮装置5と、を備える。
【0015】
画像読取部2は、原稿を積載する原稿トレイ21と、原稿トレイ21に積載された原稿を原稿載置台27に給送する原稿給送部22と、原稿給送部22により原稿載置台27に給送された原稿の画像情報を読み取るリーダ部23と、を備える。リーダ部23は、画像を読み取る第1走査ユニット25及び第2操作ユニット26と、イメージセンサ24と、を備える。
【0016】
画像形成部3は、画像を形成する画像形成部本体30と、画像形成部本体30で形成された画像をシートSに転写する転写部31と、転写部31に転写された画像をシートSに定着させる定着部32と、を備える。画像形成部本体30は、トナー像が形成される感光体ドラム33と、感光体ドラムを帯電させる帯電器34と、感光体ドラム33に静電潜像を形成するレーザスキャナユニット35と、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像部36と、を備える。転写部31は、トナー像を担持する中間転写ベルト37と、トナー像を中間転写ベルト37に転写する転写帯電器38と、中間転写ベルト37に転写されたトナー像をシートに転写する二次転写部39と、を備える。定着部32は、ヒータを内蔵した定着ローラ32aと、定着ローラ32aに圧接する加圧ローラ32bと、を備える。
【0017】
シート給送部4は、シートSを収容する給送カセット40と、シートSを給送カセット40からピックアップするピックアップローラ41と、ピックアップローラ41により給送されるシートを1枚ずつに分離する分離部42と、を備える。シート圧縮装置5は、シート給送部4と画像形成部3との間のシート搬送路43に設けられ、転写部31に向かうシートSの端部を加圧してシートSの厚みを薄くする。なお、シート圧縮装置5については、後に詳しく説明する。
【0018】
次に、上述のように構成された本実施形態に係るプリンタ100の画像形成動作について説明する。本実施形態に係るプリンタ100の不図示の制御部から画像読取部2に画像読取信号が出力されると、原稿トレイ21に積載された原稿が給送ローラにより原稿載置台27に移動される。原稿載置台27に原稿が移動されると、第1走査ユニット25の光源から原稿に向けて光が照射され、原稿から反射した光が第1走査ユニット25及び第2操作ユニット26を介してイメージセンサ24に入力される。イメージセンサ24に入力された光は、画像情報としての電気信号に変換され、レーザスキャナユニット35に転送される。
【0019】
レーザスキャナユニット35に画像情報が転送されると、画像情報に対応したレーザ光が感光体ドラム33上に照射される。このとき、感光体ドラム33は、帯電器34により予め帯電されており、レーザ光が照射されることによって静電潜像が形成される。感光体ドラム33に静電潜像が形成されると、現像部36のトナーで静電潜像が現像され、トナー像として可視化される。感光体ドラム33上のトナー像は、感光体ドラム33の回転することで転写帯電器38により中間転写ベルト37に一次転写される。
【0020】
一方、シート給送部4に給紙信号が出力されると、給送カセット40に収容されたシートSは、分離部42に1枚ずつに分離されながらピックアップローラ41により送り出される。ピックアップローラ41により送り出されたシートSは、シート圧縮装置5により先端部及び後端部が圧縮されながらレジストローラ対44に送り出され、レジストローラ対44により所定のタイミングで二次転写部39に搬送される。なお、シート圧縮装置5によるシート圧縮処理については、後に詳しく説明する。
【0021】
二次転写部39に搬送されたシートSは、二次転写部39に印加された二次転写バイアスによって中間転写ベルト37上のトナー像が二次転写され、定着部32に搬送される。定着部32に搬送されたシートSは、定着部32において熱及び圧力を受けてトナーが溶融混色されることによりシートSに定着される。その後、画像が定着されたシートSは、定着部32の下流に設けられた排出ローラ対45によってプリンタ1から排出され、処理装置101に受け渡される。これで、プリンタ1の画像形成ジョブが終了する。
【0022】
なお、シートSの両面に画像を形成する場合は、定着部32でシートSに未定着トナー像を定着した後、排出ローラ対45によって排出される前に、フラッパFP1を切換えて、シートSを両面搬送路46に搬送させる。両面搬送路46に搬送されたシートSは、再び画像形成部3に搬送され、上述と同様の動作により、両面印刷が行われる。
【0023】
次に、本実施形態に係るシート圧縮装置5について、図2から図4を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るシート圧縮装置5の機能ブロック図である。図3は、本実施形態に係るシート圧縮装置5の概略構成を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係るシート圧縮装置5を示す上面図である。
【0024】
図2から図4に示すように、シート圧縮装置5は、シート先端の幅方向における一端部からシートを加圧する第1加圧装置6aと、幅方向における他端部からシートを加圧する第2加圧装置6bと、シートSを案内するシート搬送ガイド50と、を備える。
【0025】
第1加圧装置6aは、第1回転体対としての第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aと、第1駆動ローラ60aを回転させる第1ローラ駆動モータ62aと、第1従動ローラ61aを接離させる第1圧力増減部63aとを備える。第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aは、シートSを加圧する第1ニップL1を構成し、第1加圧装置6aは、シートSの先端が第1ニップL1に対して第1の角度としての+角度a1で進入するように配置される。
【0026】
具体的には、一方の回転体としての第1駆動ローラ60aは、金属ローラであり、回転軸がシート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する幅方向に対して+角度a1傾斜した状態で、不図示の側板に回転自在に支持されている。本実施形態においては、回転軸がシート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する垂直線y1に対して+角度a1を持つように配置されている(図4参照)。なお、+角度とは、回転軸がシート搬送方向と直交する垂直線に対して下流側に傾斜した角度であり、後述の−角度とは、+角度とは反対の、回転軸が垂直線に対して上流側に傾斜した角度をいう。また、本実施形態においては、第1の角度a1と第2の角度a2とは、同じ大きさの角度(1度)に設定してあるが異なる大きさの角度に設定してもよい。
【0027】
第1駆動ローラ60aは、長手方向の一端を他端よりも下流側に位置させることにより+角度を構成しており、本実施形態においては、+角度a1は、垂直線y1に対して下流側に1度傾斜した角度となっている。また、第1駆動ローラ60aの一端には、第1ローラ駆動モータ62aが不図示のギアを介して接続されており、第1ローラ駆動モータ62aは、第1駆動ローラ60aを回転させる。なお、第1加圧装置6aは、第1ローラ駆動モータ62aを第2加圧装置6bの第2ローラ駆動モータ62bよりも速く回転させることにより、第1ニップL1での搬送速度が第2ニップL2での搬送速度以上になるように設定されている。
【0028】
他方の回転体としての第1従動ローラ61aは、第1駆動ローラ60aの回転軸と平行に第1圧力増減部63aに回転自在に支持されている。つまり、第1従動ローラ61aの回転軸は、シート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する幅方向に対して+角度a1傾斜した状態で第1圧力増減部63aに支持されている。本実施形態においては、回転軸が垂直線y1に対して+角度a1を持つように配置されている。
【0029】
第1圧力増減部63aは、第1従動ローラ61aを第1駆動ローラ60aに向けて移動させる第1圧力可変機構としての第1接離機構64aと、第1接離機構64aを制御する第1圧縮制御部65aと、を備える。第1接離機構64aは、第1従動ローラ61aを回転自在に支持するローラアーム66aと、加圧バネ67aを介してローラアーム66aと連結される昇降アーム68aと、カム軸の両端に設けられたリトラクトカム69aと、を備える。また、第1接離機構64aは、リトラクトカム69aを回転させる第1加圧用モータMaと、シートSの先端位置を検知する第1センサS1と、を備える。
【0030】
昇降アーム68aは、フレームに固定されたヒンジ軸を支点に回動自在に支持されており、ヒンジ軸を中心に回動することにより、ローラアーム66aを移動させる。つまり、昇降アーム68aが回動することによりローラアーム66aに支持された第1従動ローラ61aが上下方向に移動して、第1ニップL1の加圧力を増加(変更)させる高加圧状態と、加圧力を低下(変更)させる低加圧状態とにする。高加圧状態においては、第1加圧装置6aは、シートSを圧縮しながら搬送する。一方、低加圧状態においては、第1加圧装置6aは、シートSを圧縮することなく搬送する。
【0031】
リトラクトカム69aは、昇降アーム68aに当接しており、第1加圧用モータMaに接続されたカム軸が回転することにより、昇降アーム68aを押し上げる。第1従動ローラ61aは、リトラクトカム69aの上死点が最上位に位置するときに高加圧状態となり、上死点が最下点に位置するときに低加圧状態となる。なお、本実施形態に係る高加圧状態における加圧力は、約100kgに設定され、低加圧状態における加圧力は、約1kgに設定されている。第1駆動ローラ60aと第1従動ローラ61aの第1ニップL1が低加圧状態においては、第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aは、シートSを搬送する搬送ローラとしての役割を果たす。第1センサS1は、第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aの第1ニップL1の上流側に配置されており、搬送されるシートSの先端位置を検知する。
【0032】
第1圧縮制御部65aは、第1加圧用モータMaを制御して、第1従動ローラ61aを移動させ、第1加圧装置6aを高加圧状態と低加圧状態とに切換える。
【0033】
第2加圧装置6bは、第2回転体対としての第2駆動ローラ60b及び第2従動ローラ61bと、第2駆動ローラ60bを回転させる第2ローラ駆動モータ62bと、第2従動ローラ61bを接離させる第2圧力増減部63bとを備える。第2駆動ローラ60b及び第2従動ローラ61bは、シートSを加圧する第2ニップL2を構成し、第2加圧装置6bは、シートSの先端が第2ニップL2に対して第2の角度としての−角度a2で進入するように配置される。なお、第2ニップL2は、第1ニップL1に対して反対側に傾斜するように形成される。
【0034】
具体的には、第2駆動ローラ60bは、金属ローラであり、回転軸がシート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する幅方向に対して−角度a2傾斜した状態で、不図示の側板に回転自在に支持されている。本実施形態においては、回転軸がシート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する垂直線y2に対して−角度a2を持つように配置されている(図4参照)。
【0035】
第2駆動ローラ60bは、長手方向の一端を他端よりも上流側に位置させることにより−角度を構成しており、本実施形態においては、−角度a2は、垂直線y2に対して上流側に1度傾斜した角度となっている。また、第2駆動ローラ60bの一端には、第2ローラ駆動モータ62bが不図示のギアを介して接続されており、第2ローラ駆動モータ62bは、第2駆動ローラ60bを回転させる。
【0036】
第2従動ローラ61bは、第2駆動ローラ60bの回転軸と平行に第2圧力増減部63bに回転自在に支持されている。つまり、第2従動ローラ61bの回転軸は、シート搬送路43におけるシート搬送方向Pと直交する幅方向に対して−角度a2傾斜した状態で第2圧力増減部63bに支持されている。本実施形態においては、回転軸が垂直線y2に対して−角度a2を持つように配置されている。
【0037】
第2圧力増減部63bは、第2従動ローラ61bを第2駆動ローラ60bに向けて移動させる第2圧力可変機構としての第2接離機構64bと、第2接離機構64bを制御する第2圧縮制御部65bと、を備える。第2接離機構64bは、第2従動ローラ61bを回転自在に支持するローラアーム66bと、加圧バネ67bを介してローラアーム66bと連結される昇降アーム68bと、カム軸の両端に設けられたリトラクトカム69bと、を備える。また、第2接離機構64bは、リトラクトカム69bを回転させる第2加圧用モータMbと、シートSの先端位置を検知する第2センサS2と、を備える。
【0038】
昇降アーム68bは、フレームに固定されたヒンジ軸を支点に回動自在に支持されており、ヒンジ軸を中心に回動することにより、ローラアーム66bを移動させる。つまり、昇降アーム68bが回動することによりローラアーム66bに支持された第2従動ローラ61bが上下方向に移動して、第2ニップL2の加圧力を増加(変更)させる高加圧状態と、加圧力を低下(変更)させる低加圧状態とにする。高加圧状態においては、第2加圧装置6bは、シートSを圧縮しながら搬送する。一方、低加圧状態においては、第2加圧装置6bは、シートSを圧縮することなく搬送する。
【0039】
リトラクトカム69bは、昇降アーム68bに当接しており、第2加圧用モータMbに接続されたカム軸が回転することにより、昇降アーム68bを押し上げる。第2従動ローラ61bは、リトラクトカム69bの上死点が最上位に位置するときに高加圧状態となり、上死点が最下点に位置するときに低加圧状態となる。なお、本実施形態に係る高加圧状態における加圧力は、約100kgに設定され、低加圧状態における加圧力は、約1kgに設定されている。第2駆動ローラ60bと第2従動ローラ61bの第2ニップL2が低加圧状態においては、第2駆動ローラ60b及び第2従動ローラ61bは、シートSを搬送する搬送ローラとしての役割を果たす。第2センサS2は、第2駆動ローラ60b及び第2従動ローラ61bの第2ニップL2の上流側に配置されており、搬送されるシートSの先端位置を検知する。
【0040】
第2圧縮制御部65bは、第2加圧用モータMbを制御して、第2従動ローラ61bを移動させ、第2加圧装置6bを高加圧状態と低加圧状態とに切換える。
【0041】
シート搬送ガイドは、シートSを第1加圧装置6aの第1ニップL1にシートSを案内する第1搬送ガイド51と、第1加圧装置6aの第1ニップL1から搬送されたシートSを第2加圧装置6bの第2ニップL2に案内する第2搬送ガイド52と、を備える。また、シート搬送ガイドは、第2加圧装置6bの第2ニップL2から搬送されるシートSをレジストローラ対44のニップに向けて案内する第3搬送ガイド53を備える。第1搬送ガイド51は、第1加圧装置6aの上流側に配設されており、第1センサS1を露出させる切欠き部51aが形成されている。第2搬送ガイド52は、第2加圧装置6bの上流側であって、第1加圧装置6aと第2加圧装置6bとの間に配設されており、第2センサS2を露出させる切欠き部52aが形成されている。
【0042】
次に、本実施形態に係るシート圧縮装置5によるシート圧縮処理について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係るシート圧縮装置5の加圧力の増減を示すタイミングチャートである。図6は、本実施形態に係るシート圧縮装置5のシート圧縮動作を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、シート圧縮装置5は、第1センサS1がシートSを検知して、Lo状態(OFF)からHi状態(ON)に切り替わることにより、第1ニップL1の加圧力が低加圧状態から高加圧状態に変化するように構成されている。この変化は、第1ニップL1にシートSの先端が挿入される前に切り替えが完了するように設定されている。つまり、シートSの先端が第1ニップL1に挿入される頃には、第1加圧装置6aは、高加圧状態になっている。更に、シートSが第1ニップL1に挿入されてから一定時間経過すると、第1加圧装置6aは、高加圧状態から低加圧状態に変化する。なお、ここでいう一定時間とは、第1センサS1がHi状態(ON)になってから、シートSの先端が第1ニップL1を抜けるまでの時間である。
【0044】
次に、第1センサS1がHi状態(ON)からLo状態(OFF)に切り替わると、第1加圧装置6aの加圧力が再度低加圧状態から高加圧状態に変化する。この変化は、第1ニップL1にシートSの後端が挿入される前に切り替えが完了するように設定されている。つまり、シートSの後端が第1ニップL1に挿入される頃には、第1加圧装置6aは、高加圧状態になっている。そして、シートSの後端が第1ニップL1から抜けると、シート圧縮装置5は、第1加圧装置6aを高加圧状態から低加圧状態に変化させる。
【0045】
同様に、シート圧縮装置5は、第2センサS2がシートSを検知して、Lo状態(OFF)からHi状態(ON)に切り替わることにより、第2ニップL2の加圧力が低加圧状態から高加圧状態に変化するように構成されている。この変化は、第2ニップL2にシートSの先端が挿入される前に切り替えが完了するように設定されている。つまり、シートSの先端が第2ニップL2に挿入される頃には、第2加圧装置6bは、高加圧状態になっている。更に、シートSの先端が第2ニップL2に挿入されてから一定時間経過すると、第2加圧装置6bは、高加圧状態から低加圧状態に変化する。なお、ここでいう一定時間とは、第2センサS2がHi状態(ON)になってから、シートSの先端が第2ニップL2を抜けるまでの時間である。
【0046】
次に、第2センサS2がHi状態(ON)からLo状態(OFF)に切り替わると、第2加圧装置6bの加圧力が低加圧状態から高加圧状態に変化する。この変化は、第2ニップL2にシートSの後端が挿入される前に切り替えが完了するように設定されている。つまり、シートSの後端が第2ニップL2に挿入される頃には、第2加圧装置6bは、高加圧状態になっている。そして、シートSの後端が第2ニップL2から抜けると、第2加圧装置6bは、高加圧状態から低加圧状態に変化する。
【0047】
次に、シート圧縮装置5によるシート圧縮動作について、図6を参照しながら説明する。図6に示すように、プリンタ100の電源が入れられると、シート圧縮装置5のイニシャライズ(初期動作)が行われる(ステップS1、S2)。具体的には、第1圧縮制御部65aが第1加圧用モータMaを制御して第1加圧装置6aを低加圧状態にし、第2圧縮制御部65bが第2加圧用モータMbを制御して第2加圧装置6bを低加圧状態にする。
【0048】
次に、プリンタ100にプリントジョブが入力されると、第1ローラ駆動モータ62aを制御して第1駆動ローラ60aを回転させる(ステップS3、S4)。次に、第1センサS1がシートSを検知して、Lo状態(OFF)からHi状態(ON)に切り替わると、第1圧縮制御部65aが第1加圧用モータMaを制御して第1加圧装置6aを高加圧状態にする(ステップS5、S6)。この切換えは、第1ニップL1にシートSの先端が挿入される前に完了する。これにより、シートSの先端が加圧される。
【0049】
なお、第1ニップL1にシートSの先端が挿入されるときには、第1加圧装置6aは、既に高加圧状態になっているので、シートSは先端部から加圧される。ここで、第1加圧装置6aの第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aは、第1ニップL1がシート搬送方向と直交する垂直線y1に対して+角度a1を持つように配置されている。そのため、シート搬送方向Pに沿って搬送されるシートSの先端部は、シート幅方向の一端部から第1ニップL1に進入し、加圧される。そして、シートの先端部が第1ニップL1を通過する(高加圧状態になってから所定時間が経過する)と、第1圧縮制御部65aが第1加圧用モータMaを制御して第1加圧装置6aを低加圧状態にする(ステップS7、S8)。
【0050】
次に、シートSが低加圧状態の第1加圧装置6aに搬送されて、第1センサS1がHi状態(ON)からLo状態(OFF)に切り替わると、第1圧縮制御部65aが第1加圧用モータMaを制御して第1加圧装置6aを高加圧状態にする(ステップS9、S10)。これにより、シートSの後端が加圧される。なお、第1ニップL1にシートSの後端部が挿入される前に、第1加圧装置6aは、既に高加圧状態になっているので、シートSの後端部はすべて加圧される。
【0051】
また、第1駆動ローラ60a及び第1従動ローラ61aの第1ニップL1は、シート搬送方向と直交する垂直線y1に対して+角度a1を持つように配置されている。そのため、シート搬送方向Pに沿って搬送されるシートSの後端部は、シート幅方向の他端部が最後に加圧されるように搬送される。そして、シートの後端部が第1ニップL1を通過する(高加圧状態になってから所定時間が経過する)と、第1圧縮制御部65aが第1加圧用モータMaを制御して第1加圧装置6aを低加圧状態にする(ステップS11、S12)。
【0052】
次に、連続ジョブが入力され、後続のシートSがある場合は、ステップS5に戻り、上述を繰り返す(ステップS13)。一方、連続ジョブが入力されていない場合には、第1駆動ローラの回転を停止させ(ステップS14)、第1加圧装置6aの第1圧縮制御部65aによるシート圧縮動作が終了する。
【0053】
第1加圧装置6aの第1圧縮制御部65aによるシート圧縮動作が終了すると、第2加圧装置6bの第2圧縮制御部65bによるシート圧縮動作が開始される。なお、第2加圧装置6bの第2圧縮制御部65bによるシート圧縮動作は、シートS先端部がシート幅方向の他端部から第2ニップL2に進入し、加圧されること以外は、第1加圧装置6aと同じ動作を行うため、ここではその説明を省略する。
【0054】
ここで、図7に、シート圧縮装置5を通紙させる前のシートSの先端部の厚さと、シート圧縮装置5を通紙させた後のシートSの先端部の厚さを測定した図を示す。図7(a)は、シート圧縮装置5を通紙させる前のシートSの先端部の厚さを示す図である。図7(b)は、シート圧縮装置5を通紙させた後のシートSの先端部の厚さを示す図である。
【0055】
図7(a)及び図7(b)に示すように、シートSをシート圧縮装置5に通紙させることにより、シートSの先端部の高さが通紙前よりも低下していることが分かる。これは、シートSの後端部においても、シート圧縮装置5に通紙させることでシートSの後端部の高さが低下することが分かる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るプリンタ100は、第1ニップL1に対して傾斜した第1の角度a1でシートの先端部を進入させ、加圧する第1加圧装置6aを備える。そのため、先端がシート搬送路と直交するように搬送されるシートSに対して、幅方向の一端部から第1ニップL1に進入させることができる。これにより、例えば、300(gsm)を超えるような厚紙を通紙する場合においても、ローラ対のトルクを不要に増加させることなく、シートSのコバ部を潰すことができる。また、第1の角度でシートを第1ニップL1に進入させることにより、シート突入時のショックを減少させることが可能になり、シートの搬送不良を抑制することが可能になる。
【0057】
更に、プリンタ100は、第2ニップL2に対して第1ニップL1と反対に傾斜した第2の角度a2でシートの先端部を進入させ、加圧する第2加圧装置6bが第1加圧装置6aの下流側に配置されている。そのため、第1ニップL1で一端部が加圧されたシートの先端部を、幅方向の他端部から第2ニップL2に進入させることができる。これにより、シートの先端部のコバ部をシート幅方向の両側から潰すことができる。その結果、シートの先端部を均一に潰すことができる。
【0058】
また、第1の角度と第2の角度とは、同じ大きさの角度に形成されている。そのため、第1ニップL1でシートが斜行した場合においても、第2ニップL2でシートSが反対方向に斜行するため、シートSを元の位置に戻すことができる。
【0059】
また、第1加圧装置6aは、第1回転体対を接離可能な第1接離機構64aを有する。そのため、シートを加圧する高加圧状態とシートを搬送する低加圧状態とに第1ニップL1を切換えることができる。これにより、必要な場合のみシートを加圧することが可能になり、例えば、消費電力等を節約することが可能になる。第2加圧装置6bにおいても同様である。
【0060】
また、第1接離機構64aは、リトラクトカム69aを回転させて第1従動ローラ61aを第1駆動ローラ60aに近接させる。そのため、例えば、リトラクトカム69aのカム面の形状により、第1ニップL1の加圧力を調節することが可能になる。また、リトラクトカム69aの回転量によっても第1ニップL1の加圧力が調整可能となる。これにより、不要にシートを加圧することを防止することができる。
【0061】
また、第1ニップL1における搬送速度は、第2ニップL2における搬送速度よりも速くなるように設定されている。そのため、例えば、シートが第1ニップL1及び第2ニップL2の両方に挟持された場合のいても、第1ニップL1と第2ニップL2との間でループを形成し、第1ニップL1のシートが第2ニップL2に引っ張られることを防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0063】
例えば、本実施形態においては、シートの先端部及び後端部のみを加圧する構成としたが、本発明においては、これに限定されない。例えば、シート全体を加圧するように設定してもよい。シート全体を加圧することにより、シートの側面のコバ部も好適に潰すことができる。
【0064】
また、本実施形態においては、第1の角度と第2の角度の大きさが同じになるように形成したが、本発明においてはこれに限定されない。第1の角度と第2の角度とは、異なる大きさの角度に設定してもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、シートの先端部がシート搬送方向に対して直交するように搬送したが本発明においてはこれに限定されない。シートは、第1ニップに対して第1の角度で進入し、第2ニップに対して第2の角度で進入するように搬送されればよく、例えば、斜行した状態で搬送される構成であってもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、回転自在のリトラクトカムを有する第1接離機構及び第2接離機構を用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、モータ等で直接駆動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
2 画像読取部
3 画像形成部
4 シート給送部
5 シート圧縮装置
6a 第1加圧装置(第1加圧部)
6b 第2加圧装置(第2加圧部)
30 画像形成部本体
31 転写部
32 定着部
60a 第1駆動ローラ(第1回転体対)
60b 第2駆動ローラ(第2回転体対)
61a 第1従動ローラ(第1回転体対)
61b 第2従動ローラ(第2回転体対)
64a 第1接離機構(第1圧力可変機構)
64b 第2接離機構(第2圧力可変機構)
69a リトラクトカム(第1カム部材)
69b リトラクトカム(第2カム部材)
100 プリンタ(画像形成部)
a1 +角度(第1の角度)
a2 −角度(第2の角度)
L1 第1ニップ
L2 第2ニップ
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを給送するシート給送部と、画像を形成する画像形成部と、の間に配設されるシート圧縮装置において、
シートを加圧する第1ニップを有し、前記第1ニップに対して傾斜した第1の角度でシートの先端部が進入して通過する第1回転体対と、
シートを加圧する第2ニップを有し、前記第2ニップに対して前記第1の角度と反対側に傾斜した第2の角度でシートの先端部が進入して通過する第2回転体対と、を備えた、
ことを特徴とするシート圧縮装置。
【請求項2】
シートは、先端部がシート搬送方向に対して直交するように搬送され、
前記第1回転体対及び前記第2回転体対は、前記第1の角度及び前記第2の角度が同じ大きさの角度を有するようにシート搬送方向に対してそれぞれ傾斜して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート圧縮装置。
【請求項3】
前記第1回転体対の一方の回転体に対する他方の回転体の圧力を変更させる第1圧力可変機構と、
前記第2回転体対の一方の回転体に対する他方の回転体の圧力を変更させる第2圧力可変機構と、を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート圧縮装置。
【請求項4】
前記第1回転体対によるシートの搬送速度は、前記第2回転体対によるシートの搬送速度より速く設定される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシート圧縮装置。
【請求項5】
前記シート給送部と、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート圧縮装置と、画像を転写する転写部及び転写部で転写された画像を定着させる定着部を有する前記画像形成部と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41180(P2013−41180A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179062(P2011−179062)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】