説明

シート後処理装置及び画像形成装置

【課題】束線を用いない構成で、トレイへの電力の供給、トレイの位置検知及び昇降の制御を行うこと。
【解決手段】上トレイモータ325の駆動により上下方向に移動可能であり、後処理を行った複数のシートを積載する上トレイ200と、上トレイモータ325への電力の供給を電磁誘導により行うための結合部304と、上トレイモータ325へ電力を供給するために結合部304に流す電流Iに信号f1を重畳するように制御するI/F制御部308と、信号F1が結合部304を介して伝送された信号についての、信号f1に対する位相の遅延に関する情報を検知する位置情報検知部323と、位相の遅延に関する情報を無線通信によりI/F制御部308に送信する無線通信部327、310と、を備え、I/F制御部308は、位相の遅延に関する情報に基づいて上トレイ200の位置を算出し、算出した位置に基づいて上トレイ200の移動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート後処理装置及び画像形成装置に関し、画像形成が行われたシート材をシート後処理装置や画像形成装置の排紙トレイ上に排出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙(又はシート)に画像形成を行う画像形成装置の高速化・大容量化により、排出されるシートを大量に積載するシート積載装置いわゆるシート後処理装置を、画像形成装置に接続して用いることがある。その場合、シートを最適に積載するために、排紙されるシートを積載するトレイには、モータ等の駆動源によって昇降させるいわゆるエレベータ方式のリフトアップ機構を備えたものが広く知られている。また、このようなシート後処理装置では、図10のように、更なる装置の小型化のために、排紙トレイ内に設けられたモータ等の駆動源によって排紙トレイ自身を昇降させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。図10では、画像が形成されたシートは、排紙ローラ503により排紙出口504に排紙され、上排紙トレイ501又は下排紙トレイ502上に積載される。尚、排紙紙面検知センサ505は、上排紙トレイ501又は下排紙トレイ502に積載された複数のシートの最上面即ち排紙紙面を検知する。また、モータM1は上排紙トレイ501を昇降させ、モータM2は下排紙トレイ502を昇降させる。制御基板705は、制御用束線703を介してモータM1を制御し、制御用束線704を介してモータM2を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−37541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シート後処理装置本体と可動する排紙トレイとは、装置外部に露出した引き出し束線(図10の703,704)により接続されているため、排紙トレイの昇降に応じて引き出し線も連れ動かされ、結果的に長い束線が必要になる。そのために、束線自体や束線の周囲、またその接続部には高い信頼性を保つことが課題となる。このため、束線を用いない構成で、シート後処理装置本体から排紙トレイへ電力供給を行い、また信号の送受信を行って、排紙トレイの位置検知や昇降の制御を行うことが求められる。
【0005】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、束線を用いない構成で、トレイへの電力の供給、トレイの位置検知及び昇降の制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
【0007】
(1)画像形成が行われたシートに後処理を行うシート後処理装置であって、モータを有し、前記モータの駆動により上下方向に移動可能であり、前記後処理を行った複数のシートを積載するトレイと、前記モータへの電力の供給を電磁誘導により行うための結合部と、前記モータへ電力を供給するために前記結合部に流す電流に、所定の周波数の信号を重畳するように制御する制御手段と、前記所定の周波数の信号が前記結合部を介して伝送された信号についての、前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報を無線通信により前記制御手段に送信する無線通信部と、を備え、前記制御手段は、前記無線通信部から受信した前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報に基づいて前記トレイの位置を算出し、算出した前記トレイの位置に基づいて前記トレイの移動を制御することを特徴とするシート後処理装置。
【0008】
(2)前記(1)に記載のシート後処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0009】
(3)シートに画像形成を行う画像形成装置であって、モータを有し、前記モータの駆動により上下方向に移動可能であり、前記画像形成を行った複数のシートを積載するトレイと、前記モータへの電力の供給を電磁誘導により行うための結合部と、前記モータへ電力を供給するために前記結合部に流す電流に、所定の周波数の信号を重畳するように制御する制御手段と、前記所定の周波数の信号が前記結合部を介して伝送された信号についての、前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報を無線通信により前記制御手段に送信する無線通信部と、を備え、前記制御手段は、前記無線通信部から受信した前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報に基づいて前記トレイの位置を算出し、算出した前記トレイの位置に基づいて前記トレイの移動を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、束線を用いない構成で、トレイへの電力の供給、トレイの位置検知及び昇降の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態のシート後処理装置の概略図
【図2】実施の形態のシート後処理装置のブロック図
【図3】実施の形態の非接触給電の原理を示す図、非接触給電の機能回路図
【図4】実施の形態の位置検知部の概略図、位置検知部の機能ブロック図
【図5】実施の形態のトレイが最上部及び最下部に位置するときの各信号の波形図
【図6】実施の形態のシート後処理装置の電源投入時のトレイの状態を示す図
【図7】実施の形態のトレイの位置検知と昇降の制御処理を示すフローチャート
【図8】実施の形態のトレイの位置検知と昇降の制御処理を示すフローチャート
【図9】実施の形態のトレイの位置検知と昇降の制御処理を示すフローチャート
【図10】従来例のトレイにモータを内蔵したシート後処理装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により詳しく説明する。
【0013】
(実施の形態)
[シート後処理装置]
図1(a)は、実施の形態のシート後処理装置と画像形成装置本体との接続を含めた構成を概略的に示す図である。画像形成装置本体(以下、単に本体とする)300のシートの搬送方向下流側である後段には、本体300から排出される画像形成の終了したシートを積載するシート後処理装置301が接続されている。このシート後処理装置301には、積載手段である複数の積載トレイ(上トレイ200、下トレイ201)が設けられている。画像が形成されたシートPは、本体300から排出ローラ対922により排出され、シート後処理装置301の入口ローラ対2に搬送される。シート後処理装置301の入口ローラ対2、3は、シートの搬送方向と搬送方向に直交する方向に移動可能な搬送ローラである。また、搬送経路には、紙検知センサ4、搬送方向と平行なシート側端面を検知する横位置検知センサ5、搬送されてきたシートPの後端付近に穴あけをするパンチ・ダイ6を備えたパンチユニット7が順次設けられている。また、搬送大ローラ8は、押下コロ9、10、11によってシートPを押圧することにより、シートPを搬送するように構成されている。
【0014】
また、切り換えフラッパ12は、シートPの搬送先をノンソートパス13とソートパス14の一方に切り換え可能に構成されている。ノンソートパス13を通過したシートPは、上側の排出ローラ対15により、第1の排出口から上トレイ200に排出されて積載される。この上トレイ200は、排紙紙面検知センサS1(位置検知手段)(図1(b)参照)の検知結果に基づいて、上トレイモータ(後述する図2の325)の駆動によって上下方向に移動可能に構成されている。尚、上トレイ200は、後述する排紙紙面検知センサS2(位置検知手段)の検知結果に基づいて、紙面検知と昇降の制御を行うことも可能である。これにより、上トレイ200に積載された複数のシートのうち最上面に積載されたシートの位置、即ちシートの上面位置が、シートPの排出に最適な位置に保たれるようになっている。即ち、トレイ上のシートPの積載状況(積載量)に応じて上トレイ200の位置が調整される。切り換えフラッパ16は、ソートパス14とシートPを一時蓄えて滞留させるためのバッファパス17の切り換えを行う。また、上トレイ200は、後述するシート束排出ローラ対20a,20bによりシートPが排出される第2の排出口よりも下側の位置まで移動可能に構成されている。従って、上トレイ200も、シート束排出ローラ対20a,20bにより排出されるシートを受け取ることが可能である。
【0015】
他方、ソートパス14には、搬送ローラ21及び排出ローラ22が設けられている。また、複数のシートを一時的に集積させて整合・ステイプルを行うための処理トレイ23が設けられており、排出ローラ22によって、この処理トレイ23上にシートPが排出される。また、処理トレイ23に積載されたシートPを上トレイ200及び下トレイ201へ排出するため、シート束排出ローラ20bを上下に揺動する揺動ガイド24が設けられている。この揺動ガイド24に支持されたシート束排出上ローラ20bは、揺動ガイド24が閉位置にきたときに、処理トレイ23に配置されたシート束排出下ローラ20aと協働して、処理トレイ23上のシートPを上トレイ200または下トレイ201上に束排出する。シート束排出下ローラ20a及びシート束排出上ローラ20bから構成されるシート束排出ローラ対20により、処理トレイ23上のシート束を上トレイ200または下トレイ201上に排出させる第2の排出口が形成されている。
【0016】
下トレイ201は、排紙紙面検知センサS2(図示せず)の検知結果に基づいて下トレイモータ(後述する図2の326)の駆動によって上下移動可能に構成されている。そして、下トレイ201の複数のシートの上面位置が、シートPの排出に適切な位置に保たれるようになっている。また、下トレイ201は、排紙紙面検知センサS1の検知結果に基づいて紙面検知と昇降の制御が可能であり、下トレイモータ(後述する図2の326)の駆動によって上下移動可能にも構成されている。即ち、下トレイ上のシートPの積載状況(積載量)に応じてトレイの位置が調整される。本実施の形態では、上トレイ200、下トレイ201はそれぞれ別のモータ(325、326)で駆動されるが、1つのモータを用いてクラッチにより駆動連結を行う形態をとっても良い。また、図1(b)に示すように、複数のシートが積載された上トレイ200及び複数のシートが積載された下トレイ201は、シート後処理装置301の外装内にある前支柱610a(図面手前)及び後支柱610b(図面奥)に機械的ギアで支持されている。尚、図1(b)について、図1(a)と同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0017】
また、上トレイ200及び下トレイ201は、上トレイ200及び下トレイ201内に実装されたモータ(図示せず)により上下移動可能に構成されている。即ち、上トレイ200は上トレイモータ(325)を有し、下トレイモータ326は下トレイモータ(326)を有する。尚、図1(a)は、上トレイ200、下トレイ201ともに、シートPがいまだ積載されていない様子を示す。一方、図1(b)は、上トレイ200、下トレイ201ともに、複数のシートが積載されている様子を示す。図1(b)では、第1の排出口から排出されるシートPが、上トレイ200に積載された複数のシートの最上面に積載されるように、上トレイ200、下トレイ201ともに、図1(a)に示した位置に比べて下方向に移動している。
【0018】
[シート後処理装置のブロック図]
図2は、図1に示すシート後処理装置301の構成を示すブロック図である。但し、シートPの排紙出口は一個の場合で(例えば、第1の排出口について)説明する。シート後処理装置301は、シート後処理装置制御部302と、トレイ制御部303とを備える。トレイ制御部303への電力供給は、結合部304により非接触方式で行う。結合部304は、図3(a)を用いて後述する。
【0019】
シート後処理装置制御部302は、結合部304へ電力を供給する給電部305と、給電部305へ電源を供給する駆動電源供給部306と、シート後処理装置制御部302や給電部305を制御するI/F制御部308とを備える。また、シート後処理装置制御部302は、シート後処理装置制御部302やトレイ制御部303全体を制御するCPU309を備える。また、シート後処理装置制御部302は、トレイ制御部303と、電力線以外の制御信号、例えば、上トレイ200や下トレイ201の位置情報などを無線通信により送受する無線通信部310とを備える。更に、シート後処理装置制御部302は、トレイ制御部303のモータ(325、326)により昇降される上トレイ200及び下トレイ201に積載された排紙紙面の高さを検知する排紙紙面検知センサS1を備える。尚、図示しない第2の排出口については、上トレイ200及び下トレイ201に積載された排紙紙面の高さを検知する排紙紙面検知センサS2(不図示)を備える。CPU309は、排紙紙面検知センサS1(及びS2)により各トレイに積載された複数のシートの最上面の位置である排紙紙面の高さを検知することにより、各トレイ上に積載された複数のシートの積載量を検知することができる。
【0020】
結合部304は、一次コイルとして構成されている固定された給電線307と、二次コイルとして構成されている移動可能な受電線328とを有する。更に、一次コイルに流れる電流により発生した磁界(磁束)をピックアップする移動可能なフェライトなどから成るピックアップ鉄心により、二次コイルに誘導電流が流れることで、一次と二次は電磁誘導により非接触結合されている。よって、受電線328を有するトレイ制御部303は、給電線307に沿って電力供給を受けながら移動することが可能となる。尚、給電部305、結合部304、受電部321の詳細は、図3(b)で後述する。
【0021】
トレイ制御部303は、結合部304から電力を供給される受電部321と、結合部304からの情報によりトレイの位置に関する情報を検知する位置情報検知部323と、トレイ制御部303全体を制御するI/F制御部322とを備える。また、トレイ制御部303は、受電部321からの電力により動作するモータドライバ324と、モータドライバ324により駆動される上トレイ200を移動させる上トレイモータ325と、下トレイ201を移動させる下トレイモータ326とを備える。また、トレイ制御部303は、電力線以外の、例えば、上トレイ200や下トレイ201の位置情報や上トレイモータ325や下トレイモータ326を動作させるための制御信号311を無線通信により送受する無線通信部327を備える。
【0022】
[非接触給電]
図3(a)は、移動体における非接触給電の原理を示す図である。尚、本実施の形態では、移動体とは、上トレイ200及び下トレイ201に相当する。一次巻線801は、図2の一次コイル即ち給電線307に相当し、固定されている。また、二次巻線802は、図2の二次コイル即ち受電線328に相当し、移動可能である。二次巻線802が巻き付けられたピックアップ鉄心803も、移動可能である。図2の結合部304は、一次巻線801、二次巻線802、ピックアップ鉄心803により構成される。
【0023】
本実施の形態では、シート後処理装置301本体に一次巻線801が設置され、上トレイ200及び下トレイ201に、ピックアップ鉄心803及び二次巻線802が設置される。一次巻線801に図に示した方向に高周波電流Iが流れると、電磁エネルギーが発生し、それをピックアップ鉄心803で誘導すると、二次巻線802には、図示した誘導電流Iが流れる。即ち、電磁誘導の原理である。これにより、シート後処理装置制御部302からトレイ制御部303への非接触による電力供給(即ち、非接触給電)が可能となる。
【0024】
図3(b)は、非接触給電の機能回路図である。給電部305は、図3(b)の給電用インバータ804と共振コンデンサ805に相当する。ここで、給電用インバータ804は、一次側に高周波の電圧を印加し、一次巻線801に高周波電流Iを流す。共振コンデンサ805は、給電線307のインダクタンスと直列共振回路を構成して伝送効率を向上させている。また、結合部304は、一次巻線801とピックアップ鉄心803と二次巻線802から構成されている。また、図3(b)の破線部は図2のトレイ制御部303に相当し、共振コンデンサ806とダイオードブリッジなどの整流回路807と平滑コンデンサ808と負荷809から構成される。ここで、共振コンデンサ806は、受電線328のインダクタンスと並列共振回路を構成して伝送効率を向上させている。また、負荷809は、トレイ制御部303が備える上トレイモータ325と下トレイモータ326に相当する。
【0025】
[非接触給電によるトレイの位置検知]
非接触給電によるトレイの位置検知について説明する。図4(a)は、トレイ制御部303における位置情報検知部323(検知手段)の概略図である。尚、図4(a)中破線部分はトレイ制御部303を示しているが、上述したように、固定された一次巻線801はトレイ制御部303には含まれない。本実施の形態では、シート後処理装置制御部302のI/F制御部308が、給電用インバータ804から一次巻線801に流す高周波電流Iに、更に高周波の所定の単一の周波数の信号f1(所定の周波数の信号)を重畳させるように制御する。尚、I/F制御部308は、トレイの位置を検知する際には、少なくともトレイの位置を検知できる程度の時間、信号f1を重畳する。具体的には、一次巻線801に流す高周波電流Iの周波数が例えば10kHz(ヘルツ)であるとすると、単一の周波数の信号f1は、例えば更に高周波の100kHzである。そうすると、単一の周波数の信号f1もピックアップ鉄心803により誘導されて二次巻線802に伝達される。
【0026】
ここで、I/F制御部308から出力された信号f1は一次巻線801を介してトレイ制御部303に伝送される。伝送された信号は、一次巻線801の線路長に応じたインピーダンスによって、後述する位置情報検知部323に入力された際には信号f1に対して位相が遅延している。一次巻線801の線路長は、トレイの相対的な位置により決定され、例えば、線路長が長いとインピーダンスが高くなり信号f1に対する遅延が大きくなる。一方、線路長が短いとインピーダンスが低くなり信号f1に対する遅延が小さくなる。具体的には、図4(a)において、上トレイ200(受電部321)が稼働範囲の最上位にあるときは、一次巻線801の線路長が短く、信号f1に対する遅延が最少となる。一方、上トレイ200が稼働範囲の最下位にあるときは、一次巻線801の線路長が長く、信号f1に対する遅延が最大となる。本実施の形態では、この遅延の大小に基づいてトレイの上下の位置を検知する。
【0027】
図4(b)は、トレイ制御部303(破線部)における位置情報検知部323の機能ブロック図である。尚、図3(b)に対して例えば共振コンデンサ805を不図示とする等、一部詳細を省略している。位置情報検知部323は、上述したインピーダンスに応じた信号f1に対する入力された信号の遅れ量(遅延の量)を、トレイの位置に相当する情報(以下、位置情報という)として検知する。そして、位置情報検知部323により検知された位置情報は、トレイ制御部303の無線通信部327からシート後処理装置制御部302の無線通信部310に、非接触の無線通信により、位置情報に相当する信号として伝達される。そして、伝達された信号は、シート後処理装置制御部302のI/F制御部308に入力される。I/F制御部308に入力された信号は、単一の周波数の信号f1に対して位相が遅延した信号であり、これを単一の周波数の信号f2とする。具体的には、単一の周波数の信号f2は、単一の周波数の信号f1に、トレイの位置に応じた所定の位相遅延時間が加えられた単一の周波数の信号である。
【0028】
[トレイの位置検知のしくみ]
図5(a)と図5(b)を用いてトレイの位置検知のしくみを説明する。図5(a)は、対象とするトレイが最上部に移動されたときの単一の周波数の信号f1とf2から、シート後処理装置制御部302のI/F制御部308がトレイの位置を検知するタイミングチャートである。また、図5(b)は、対象とするトレイが最下部に移動されたときの単一の周波数の信号f1とf2から、シート後処理装置制御部302のI/F制御部308がトレイの位置を検知するタイミングチャートである。ここで、図5に示す「308→804」には、高周波電流Iに重畳する高周波の信号f1の波形を示す。また、図5に示す「310→308」には、ループバックしてI/F制御部308に帰ってくる信号である信号f2の波形を示す。また、図5に示す「308(加算)」は、I/F制御部308が時間的に加算した「f1+f2」の波形を示す。更に、図5に示す「308(積分)」は、I/F制御部308が(f1+f2)を積分した波形をd(f1+f2)として示す。
【0029】
トレイが最上部にあるときの単一の周波数の信号f1とf2の関係は図5(a)の通りである。トレイが最上部に位置する場合、高周波電流Iに単一の高周波の信号f1を重畳すると、I/F制御部308は、図5(a)に示すように位相がずれた単一の高周波の信号f2を入力される。このとき、シート後処理装置制御部302のI/F制御部308が単一の周波数の信号f1とf2を時間的に加算すると、図5(a)に示す(f1+f2)のような波形になる。尚、時間的に加算とは、f1、f2の信号のいずれかがハイレベルであるとき(f1+f2)をハイレベルとし、f1、f2の信号がいずれもローレベルであるとき(f1+f2)をローレベルとすることである。
【0030】
次に、I/F制御部308がこれを積分すると、図5(a)に示すd(f1+f2)のような波形になり、このときの積分値である電圧値Eは、E=aとなる。一方、トレイが最下部にあるときの単一の周波数の信号f1とf2の関係は図5(b)の通りである。トレイが最下部に位置する場合、高周波電流Iに単一の高周波の信号f1を重畳すると、I/F制御部308は、図5(b)に示すように位相がずれた単一の高周波の信号f2を入力される。この位相のずれ、言い換えれば位相の時間的な遅延は、トレイが最上部に位置する場合に比べて大きくなる。I/F制御部308が、単一の周波数の信号f1とf2を時間的に加算すると、図5(b)に示す(f1+f2)のような波形になる。そして、I/F制御部308が(f1+f2)を積分すると、図5(b)に示すd(f1+f2)のような波形になる。このときの積分値である電圧値Eは、E=bとなり、トレイが最上部にあるときの電圧値E=aに比べて大きくなる(b>a)。
【0031】
このように、トレイの昇降する位置に応じて、I/F制御部308が算出する積分値d(f1+f2)である電圧値Eの範囲は、a(最上部)<E<b(最下部)となる。すなわち、I/F制御部308は、高周波電流Iに重畳した単一の周波数の信号f1と、無線通信部310を介して入力された単一の周波数の信号f2とに基づいて、電圧値Eを算出することにより、トレイの位置情報を得ることができる。シート後処理装置制御部302のI/F制御部308は、電圧値のa(最上部)とb(最下部)の間を均等分割したときに、電圧値Eの値からトレイの位置を検出できる。尚、予め最上部(a)と最下部(b)の値を測定しておき、例えば不図示のメモリ等に予め記憶しておくことにより、検知した電圧値Eと、予め測定しておいた値aとbとから、トレイの位置を検出できる。
【0032】
[電源オン時のトレイの状態]
電源オン時のトレイの位置は図6に示すように4通りに区分される。なお各トレイには、それぞれ排紙された複数のシート(図中、斜線部)が積載されている。図6(a)では、上トレイ200が第1の排出口近傍に配置された排紙紙面検知センサS1より下に位置し、且つ下トレイ201も排紙紙面検知センサS1より下に位置する。更に、上トレイ200に積載された複数のシートの最上面が、排紙紙面検知センサS1より下に位置する。以下、第1の排出口を排紙出口504とし、トレイに積載された複数のシートの最上面を排紙紙面という。図6(b)では、上トレイ200が排紙紙面検知センサS1より下に位置し、下トレイ201も排紙紙面検知センサS1より下に位置する。但し、上トレイ200に積載された複数のシートの排紙紙面は、排紙紙面検知センサS1よりも上に位置する。図6(b)に示す場合は、このままでは排紙出口504からシートを排出することができない。
【0033】
図6(c)では、上トレイ200が排紙紙面検知センサS1より上に位置し、下トレイ201は排紙紙面検知センサS1より下に位置する。更に、下トレイ201に積載されたシートの排紙紙面は、排紙紙面検知センサS1より下に位置する。図6(d)では、上トレイ200が排紙紙面検知センサS1より上に位置し、下トレイ201は排紙紙面検知センサS1より下に位置する。但し、下トレイ201の排紙紙面は、排紙紙面検知センサS1より上に位置する。図6(d)に示す場合は、このままでは排紙出口504からシートを排出することができない。
【0034】
[トレイの位置検知と昇降の制御処理]
図7〜図9は、図2におけるシート後処理装置制御部302のCPU309によって実行されるトレイ昇降動作の手順を示すフローチャートである。ステップ(以下、Sとする)401で、電源がオン(パワーオン)されると、シート後処理装置制御部302のCPU309は、イニシャライズのための初期設定を行う。S402でCPU309は、給電用インバータ804などの給電部305より、給電線307を経由して結合部304の固定された一次巻線801に所定の高周波交流電力の供給(給電)を開始する。即ち、CPU309は、給電用インバータ804により一次巻線801に高周波電流Iを流す。このとき、I/F制御部308は、信号f1も重畳するよう制御する。結合部304の一次巻線801に所定の高周波交流電流Iが流れると、磁界(磁束)が発生する。発生した磁界を移動可能なフェライトなどから成るピックアップ鉄心803により誘導させることで、移動可能な二次巻線802に誘導電流Iが流れる。S403でトレイ制御部303の受電部321は、受電を開始する。
【0035】
トレイ制御部303への電力供給が開始されると、S404でトレイ制御部303の位置情報検知部323は、インピーダンスに応じて生じる信号f1の遅れ量(遅延の量)を、トレイの位置情報として検知する。S405で位置情報検知部323は、検知したトレイの位置情報に相当する信号を無線通信部327に送信する。無線通信部327は、受信したトレイの位置情報に相当する信号を、シート後処理装置制御部302の無線通信部310に出力する。S406で無線通信部310は、受信したトレイの位置情報に相当する信号をI/F制御部308に出力する。そして、I/F制御部308は、図5で説明したように、信号f1、f2、トレイの最上部での電圧値a、トレイの最下部での電圧値bに基づいて、トレイの位置を算出する。I/F制御部308は、算出したトレイの位置の情報をCPU309に出力する。
【0036】
上述したように、S406でI/F制御部308が算出したトレイの位置によって、電源オン時のトレイの状態は4つに区分される(図6(a)〜図6(d))。S407でCPU309は、S406でI/F制御部308が算出したトレイの位置情報により、上トレイ200が排紙紙面検知センサS1より下に位置するか否かを判断する。ここで、図7には、単に「上トレイ位置<S1?」と記し、以下同様の表記とする。尚、CPU309は、予め排紙紙面検知センサS1が設置された位置に関する情報を、例えば不図示のメモリ等に保持しているものとする。S407でCPU309が、上トレイ200が排紙紙面検知センサS1より下に位置していると判断すると、図8のS411の処理に進む。尚、上トレイ200の位置が排紙紙面検知センサS1よりも下に位置する場合とは、図6(a)又は図6(b)に示した状態に相当する。
【0037】
S407でCPU309は、上トレイ200の位置が、排紙紙面検知センサS1より上に位置すると判断すると、S408で下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1より下に位置するか否かを判断する。S408でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1より下に位置すると判断すると、図8のS411の処理に進む。尚、この状態は、図6(c)に相当する。S408でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1より上に位置すると判断すると、図9のS421の処理に進む。尚、この状態は、図6(d)に相当する。
【0038】
図8のS411でCPU309は、上トレイ200を上下可動範囲の上限位置まで上昇させる。尚、上トレイ200が上限位置に到達したか否かを判断する際の上トレイ200の位置情報は、本実施の形態で上述した位置検知処理により算出される。S412でCPU309は、下トレイ201を上昇させる。S413でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達したか否かを判断する。S413でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達していないと判断すると、S412の処理に戻る。S413でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置まで到達したと判断すると、S414で下トレイ201の上昇を停止させる。S414で下トレイ201の上昇を停止させた時点で、CPU309は、下トレイ201の位置情報と排紙紙面の位置情報とから、下トレイ201に積載されている複数のシートの排紙積載量を特定することができる(下トレイ201の積載量が判明)。尚、下トレイ201の位置情報は、本実施の形態で上述した位置検知処理により算出される。
【0039】
S415でCPU309は、下トレイ201を上下可動範囲の下限位置まで下降させる。尚、下トレイ201が下限位置に到達したか否かを判断する際の下トレイ201の位置情報は、本実施の形態で上述した位置検知処理により算出される。S416でCPU309は、上トレイ200を下降させる。S417でCPU309は、上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達したか否かを判断する。S417でCPU309は、上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達していないと判断した場合、S416の処理に戻る。S417でCPU309は、上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置まで到達したと判断すると、S418で上トレイ200の下降を停止させる。S418で上トレイ200の下降を停止させた時点で、CPU309は、上トレイ200の位置情報と排紙紙面の位置情報とから、上トレイ200に積載されている複数のシートの排紙積載量を特定することができる(上トレイ200の積載量が判明)。尚、上トレイ200の位置情報は、本実施の形態で上述した位置検知処理により算出される。以上で、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示す場合の電源オン時の初期設定が完了する。このとき、上トレイ200及び下トレイ201は、図6(a)に示す位置に停止しており、排紙出口504からシートPを上トレイ200に排紙することが可能な状態となる。
【0040】
図9のS421でCPU309は、上トレイ200を上下可動範囲の上限位置まで上昇させる。S422でCPU309は、下トレイ201を下降させる。S423でCPU309は、下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達したか否かを判断する。S423でCPU309が下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達していないと判断すると、S422の処理に戻る。S423でCPU309が下トレイ201の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達したと判断すると、S424で下トレイ201を停止させる。S424でCPU309が下トレイ201の下降を停止させた時点で、CPU309は、下トレイ201の位置情報と排紙紙面の位置情報とから、下トレイ201に積載されている複数のシートの排紙積載量を特定することができる(下トレイ201の積載量が判明)。
【0041】
S425でCPU309は、下トレイ201を上下可動範囲の下限位置まで下降させる。S426でCPU309は、上トレイ200を下降させる。S427でCPU309は、上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達したかどうかを判断する。S427でCPU309が上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置に到達していないと判断すると、S426の処理に戻る。S427でCPU309は、上トレイ200の排紙紙面が排紙紙面検知センサS1の位置まで到達したと判断すると、S428で上トレイ200を停止させる。S428でCPU309が上トレイ200の下降を停止させた時点で、CPU309は、上トレイ200の位置情報と排紙紙面の位置情報とから、上トレイ200に積載されている複数のシートの排紙積載量を特定することができる(上トレイ200の積載量が判明)。以上で、図6(d)に示す場合の電源オン時の初期設定が完了する。このとき、上トレイ200及び下トレイ201は、図6(a)に示す位置に停止しており、排紙出口504からシートPを上トレイ200に排紙することが可能な状態となる。
【0042】
以上、本実施の形態によれば、束線を用いない構成で、トレイへの電力の供給、トレイの位置検知及び昇降の制御を行うことができる。
【0043】
[その他の実施の形態]
・上述した実施の形態では、排紙紙面検知センサS1を用いて排紙紙面の検知を行ったが、排紙紙面検知センサS2を用いて排紙紙面の検知を行う構成としてもよい。
・上述した実施の形態では、第1の排出口(排紙出口504)に排紙する場合について説明したが、第2の排出口に排紙する場合の各トレイの位置検知と昇降の制御についても適用できる。
・上述した実施の形態では、シート後処理装置制御部302が、排紙紙面検知センサS1、S2を備える構成とした。しかし、例えばトレイ制御部303が排紙紙面検知センサS1、S2を備える構成としてもよい。この場合、排紙紙面検知センサS1、S2による検知結果は、トレイ制御部303からシート後処理装置制御部302へ、非接触により検知結果である信号を伝達する必要があり、例えば無線通信部327、310により送受信を行う。
・上述した実施の形態では、画像形成装置に装着されたシート後処理装置301について説明したが、画像形成装置が排紙トレイを備える場合に、束線を用いず非接触により電力の供給や信号の送受を行う構成にも適用できる。この場合、シート後処理装置301が画像形成装置に相当し、シート後処理装置制御部302が画像形成装置の制御部に相当する。
以上、その他の実施の形態においても、束線を用いない構成で、トレイへの電力の供給、トレイの位置検知及び昇降の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
200 上トレイ
304 結合部
308 I/F制御部
310、327 無線通信部
325 上トレイモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成が行われたシートに後処理を行うシート後処理装置であって、
モータを有し、前記モータの駆動により上下方向に移動可能であり、前記後処理を行った複数のシートを積載するトレイと、
前記モータへの電力の供給を電磁誘導により行うための結合部と、
前記モータへ電力を供給するために前記結合部に流す電流に、所定の周波数の信号を重畳するように制御する制御手段と、
前記所定の周波数の信号が前記結合部を介して伝送された信号についての、前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報を無線通信により前記制御手段に送信する無線通信部と、
を備え、
前記制御手段は、前記無線通信部から受信した前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報に基づいて前記トレイの位置を算出し、算出した前記トレイの位置に基づいて前記トレイの移動を制御することを特徴とするシート後処理装置。
【請求項2】
前記制御手段が重畳する前記所定の周波数の信号は、前記結合部に流す電流の周波数よりも高い周波数を有することを特徴とする請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項3】
前記トレイに積載された複数のシートのうちの最上面のシートの位置を検知する位置検知手段を備え、
前記制御手段は、算出した前記トレイの位置と前記位置検知手段による検知結果とに基づき、前記トレイに積載された複数のシートの積載量を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート後処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート後処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
シートに画像形成を行う画像形成装置であって、
モータを有し、前記モータの駆動により上下方向に移動可能であり、前記画像形成を行った複数のシートを積載するトレイと、
前記モータへの電力の供給を電磁誘導により行うための結合部と、
前記モータへ電力を供給するために前記結合部に流す電流に、所定の周波数の信号を重畳するように制御する制御手段と、
前記所定の周波数の信号が前記結合部を介して伝送された信号についての、前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報を無線通信により前記制御手段に送信する無線通信部と、
を備え、
前記制御手段は、前記無線通信部から受信した前記所定の周波数の信号に対する位相の遅延に関する情報に基づいて前記トレイの位置を算出し、算出した前記トレイの位置に基づいて前記トレイの移動を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段が重畳する前記所定の周波数の信号は、前記結合部に流す電流の周波数よりも高い周波数を有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トレイに積載された複数のシートのうちの最上面のシートの位置を検知する位置検知手段を備え、
前記制御手段は、算出した前記トレイの位置と前記位置検知手段による検知結果とに基づき、前記トレイに積載された複数のシートの積載量を検知することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−112451(P2013−112451A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258960(P2011−258960)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】