説明

シート搬送装置、画像形成装置及び画像読取装置

【課題】給紙ローラと搬送ローラとの間において、搬送されるシートに生じたたわみが解消される時に、大きな音が発生するのを適切に防止する。
【解決手段】給紙ローラ13と搬送ローラ21との間において、搬送されるシートSに生じたたわみを解消するにあたり、給紙ローラの回転速度を制御する制御手段60を設け、この制御手段により、シートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させて、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみが解消される時点での、給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置や画像読取装置等においてシートを搬送させるシート搬送装置に関するものである。特に、シートを給紙させて搬送する給紙ローラと、給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラとが設けられ、給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く、給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において、シートにおけるたわみが解消されるときの音を低減させるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンター等の画像形成装置においては、給紙カセットの上に積載されたシートを機内へと給紙して搬入させるために、給紙カセット上に積載された最上位置のシートを取り出すピックアップローラ、取り出されたシートを給紙カセットから給紙搬送経路へと引き出す給紙ローラ、及び、この給紙ローラに対面して配置され、シートが二枚以上重なって搬送されるのを防止する分離ローラを備えている。
【0003】
そして、この分離ローラの回転軸にはトルクリミッタが設けられており、トルクリミッタの回転制限力を上回る回転力が分離ローラに加わると、この分離ローラが回転することになる。
【0004】
ここで、トルクリミッタの回転制限力は、シート同士の摩擦力よりも大きく設定される一方、シートと分離ローラとの間の摩擦力よりも小さく設定され、二枚以上のシートが給紙ローラによって搬送されるのを防止するようにしている。
【0005】
また、上記の給紙搬送経路においては、上記の給紙ローラと分離ローラが対向する位置よりもシートの搬送方向の下流側の位置に搬送ローラを設け、この搬送ローラによるシート搬送速度を給紙ローラによるシート搬送速度よりも低速にし、搬送中にシートが給紙ローラと搬送ローラとの間で引っ張られるのを防止するようにしている。
【0006】
ここで、このようにシートが給紙ローラから給紙搬送経路を通して搬送ローラに導かれるまでの間に、この給紙搬送経路において搬送されるシートにたわみが形成されると共に、上記のように搬送ローラによるシート搬送速度を給紙ローラによるシート搬送速度よりも低速にすると、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみがさらに大きくなる。
【0007】
そして、このようなシートのたわみを、給紙ローラと搬送ローラとの間における給紙搬送経路内において十分に収容させるように、この給紙搬送経路のスペースを大きく確保すると、装置が大型化する等の問題がある。
【0008】
このため、従来においては、シートが給紙ローラから給紙搬送経路を通して搬送ローラに導かれて一定時間経過した後、上記の給紙ローラの回転を停止させるようにしている。
【0009】
このように給紙ローラの回転を停止させて、搬送ローラだけを一定の速度で回転させると、シートにおけるたわみが急激に減少し、たわみが解消されるときに、シートがぴんと張られ、このときにシート自体が大きな音を発生する。この音は、たわみが解消される速度が高速であるほど、大きくなることが知られている。
【0010】
そして、特許文献1に開示された画像形成装置においては、シートにたわみが形成された後の二次給紙において、レジストローラを搬送ローラよりも先に駆動させると共に、上記のシートにおけるたわみが解消するまで、上記のレジストローラや搬送ローラを駆動する駆動手段における駆動速度を段階的に制御していくことにより、シートがガイドに強く叩きつけられるのを抑制している。
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1の画像形成装置は、上記のレジストローラの回転速度を段階的に上昇させるようにしているため、レジストローラによってシートを搬送させる際の立ち上がり速度が遅くなり、シートの搬送効率が低下して、画像形成効率が低下するという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−154119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、シートを給紙させて搬送する給紙ローラにおけるシート搬送速度が、給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラにおけるシート搬送速度よりも速く、給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において、シートの搬送効率を低下させることなく、シートのたわみが解消される時に、シートがぴんと張られて、大きな音が発生するのを適切に防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、上記の課題を解決するため、シートを給紙させて搬送する給紙ローラと、給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラとが設けられ、給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く、給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において、上記の給紙ローラの回転速度を制御する制御手段を設け、この制御手段により、シートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させて、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみが解消される時点における、給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるようにした。
【0015】
このようにシートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラによるシート搬送速度を減速させて、シートのたわみが解消される時点における、給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差を所定の速度差以下にすると、たわみが解消される時に、シートに加わる負荷が減少されて、たわみ解消時における音の発生が抑制される。
【0016】
また、本発明においては、上記のように搬送ローラによってシートが搬送される段階において、シートにおけるたわみを解消するように給紙ローラによるシート搬送速度を減速させるだけであり、搬送ローラによってシートを一定したシート搬送速度で搬送させるため、シートの搬送効率が低下することもない。
【0017】
ここで、上記のようにシートのたわみが解消される時点における給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差を所定の速度差以下にするにあたり、たわみ解消時における音の発生を十分に抑制するためには、上記の速度差を100mm/s以下にすることが好ましい。
【0018】
また、上記のようにシートのたわみが解消される時点における給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるように、シートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラによるシート搬送速度を適切に減速させるにあたっては、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみ量を検出するたわみ量検出手段を設け、このたわみ量検出手段により検出されたシートのたわみ量に基づき、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させる割合を決定することができる。また、搬送させるシートの種類、給紙ローラによるシート搬送速度、搬送ローラによるシート搬送速度等から、給紙ローラと搬送ローラとの間において形成されるシートのたわみ量を予測し、これに基づいて、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させる割合を決定することもできる。
【0019】
そして、本発明における画像形成装置においては、給紙カセットなどに収容された記録紙等のシートを搬送させるのに、上記のようなシート搬送装置を用いるようにした。
【0020】
また、本発明における画像読取装置においては、原稿給紙トレイ等にセットされた原稿のシートを搬送させるのに、上記のようなシート搬送装置を用いるようにした。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシート搬送装置においては、給紙ローラとこの給紙ローラよりシート搬送速度が遅い搬送ローラとの間において、搬送されるシートにおけるたわみを解消させるにあたり、シートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させて、シートのたわみが解消される時点における給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるようにしたため、たわみが解消される時にシートに加わる負荷が減少されて、たわみ解消時における音の発生が抑制される。
【0022】
また、本発明のシート搬送装置においては、上記のようにシートにおけるたわみを解消するように給紙ローラによるシート搬送速度を減速させるだけあり、搬送ローラによってシートを一定したシート搬送速度で搬送させるため、シートの搬送効率が低下して、画像形成効率等が低下するということもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート搬送装置を設けた画像形成装置の概略説明図である。
【図2】上記の実施形態に係るシート搬送装置におけるシート搬送制御系を示した概略のブロック図である。
【図3】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、給紙ローラと分離ローラと搬送ローラが配置される箇所を拡大して示した概略説明図である。
【図4】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、シートが給紙されてたわみが解消されるまでの給紙ローラによるシート搬送速度と、搬送ローラによるシート搬送速度と、シートにおけるたわみ量の状態を示した概略説明図である。
【図5】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、シートの先端が搬送ローラに導かれる時点におけるシートのたわみ量が大きくなった場合において、シートが給紙されてたわみが解消されるまでの給紙ローラによるシート搬送速度と、搬送ローラによるシート搬送速度と、シートにおけるたわみ量の状態を示した概略説明図である。
【図6】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、たわみが解消された時点における搬送ローラと給紙ローラとにおけるシート搬送速度の速度差と、たわみ解消時に発生する音圧レベルとの関係を示したグラフである。
【図7】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、給紙ローラと搬送ローラとの間で生じたシートのたわみを解消させる動作を示したフローチャートである。
【図8】上記の実施形態に係るシート搬送装置において、給紙ローラと搬送ローラとの間で生じたシートのたわみを解消させる場合の変更例を示し、シートが給紙されてたわみが解消されるまでの給紙ローラによるシート搬送速度と、搬送ローラによるシート搬送速度と、シートにおけるたわみ量の状態を示した概略説明図である。
【図9】図8に示した変更例において、給紙ローラの回転速度を切り換えるための駆動力伝達機構を示した概略説明図である。
【図10】図8に示した変更例において、シート搬送制御系を示した概略のブロック図である。
【図11】本発明の実施形態に係るシート搬送装置を設けた画像読取装置の概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、この発明の実施形態に係るシート搬送装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るシート搬送装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0025】
図1はこの実施形態のシート搬送装置を備えた画像形成装置を示している。
【0026】
この画像形成装置は、例えば、外部からネットワーク等を介してデータ入力された画像データやテキストデータに基づく画像をシートに画像形成するプリンターであり、装置本体1内に、給紙部10、シート搬送路20、画像形成部30、定着部40、排紙部50などを備えている。
【0027】
ここで、給紙部10は、給紙カセット11、ピックアップローラ12、給紙ローラ13、及び分離ローラ14などを備えている。そして、上記のピックアップローラ12が回転すると、上記の給紙カセット11内においてバネ11aにより付勢された押上板11bの上に積載されたシートSが、給紙ローラ13と分離ローラ14との間に送り込まれる。
【0028】
また、上記の分離ローラ14の回転軸には、図示していないトルクリミッタが設けられている。上記のトルクリミッタの回転制限力は、シートS同士の摩擦力よりも大きく設定される一方、シートSと分離ローラ14との間の摩擦力よりも小さく設定されている。
【0029】
このため、給紙ローラ13と分離ローラ14との間に一枚のシートSが送り込まれた場合には、この一枚のシートSと分離ローラ14との間の摩擦力は、上記のトルクリミッタの回転制限力を上回ることになり、分離ローラ14も回転して一枚のシートSを搬送することになる。一方、給紙ローラ13と分離ローラ14との間に二枚以上のシートSが送り込まれたときには、シートS同士の摩擦力が上記のトルクリミッタの回転制限力を下回るため、分離ローラ14は回転せず、給紙ローラ13に接触しているシートSだけが給紙ローラ13によって搬送されることになる。
【0030】
シート搬送路20は、画像形成経路20A、排紙/反転経路20B、両面搬送経路20C、これら経路上に配置される各種ローラなどにより構成される。
【0031】
画像形成経路20Aには、搬送ローラ21、レジストローラ22、二次転写ローラ34、定着部40などが設けられており、上記の給紙ローラ13によって取り出されたシートSは、その下流側に位置する搬送ローラ21を通り、レジストローラ22の箇所で一旦待機され、画像形成のタイミングに合わせてレジストローラ22によって搬送される。
【0032】
排紙/反転経路20Bには、排紙ローラ23A及び反転ローラ23Bが設けられている。片面印刷の場合には、前記の画像形成経路20Aを通過したシートSは、排紙/反転経路20Bに導かれ、排紙ローラ23Aが順方向に回転することで排紙される。一方、両面印刷の場合には、前記の画像形成経路20Aを通過した片面印刷済のシートSは、切替爪24によって反転ローラ23B側へ導かれ、この反転ローラ23Bが順方向に回転した後、逆方向に回転することにより、後端であったシートS端が先端となって両面搬送経路20Cへと導かれる。
【0033】
画像形成部30は、イエロー色用の画像形成ユニット30Yと、マゼンダ色用の画像形成ユニット30Mと、シアン色用の画像形成ユニット30Cと、ブラック用の画像形成ユニット30Kと、中間転写ベルト33と、二次転写ローラ34とを備えている。各画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kは、感光体ドラム31、その周囲に配置された図示していない帯電装置、露光装置、現像装置、一次転写ローラ、及び清掃装置等を備える。
【0034】
ここで、上記の各画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kにおける各感光体ドラム31に形成されたトナー画像が、中間転写ベルト33の上に順々に一次転写されて、中間転写ベルト33の上にはフルカラーのトナー画像が形成される。そして、この中間転写ベルト33と二次転写ローラ34との間をシートSが通過するときに、中間転写ベルト33の上に一次転写されたトナー画像がシートSの片側の面に転写される。
【0035】
定着部40は、例えば、熱源を有する加熱定着ローラ41と、この加熱定着ローラ41に接する加圧ローラ42とからなり、両ローラ41,42間を通過するトナー画像が形成されたシートSを加熱・加圧し、シートSに転写されたトナー画像をシートSに定着させる。この定着処理がなされたシートSは排紙部50の上に積載されていく。
【0036】
図2は、図1に示した画像形成装置に用いたシート搬送装置におけるシート搬送制御系を示した概略のブロック図である。マイクロコンピュータ等で構成される制御手段60は、図示していないCPUと、このCPUを動作させるプログラムや各種情報などを記憶するメモリ(ROM,RAM,EEPROMなど)と、各種センサ、モータ、電磁クラッチの電磁操作部などを前記CPUに接続するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェースなどを備えている。
【0037】
上記の制御手段60には、図2に示すように、シートSが形成するたわみ量を検出するたわみ量検出センサ61、搬送ローラ21の位置にシートSの先端が導かれたことを検出するシートセンサ62、上記の給紙ローラ13を回転させるモータを制御する給紙モータドライバ63、上記の搬送ローラ21を回転させるモータを制御する搬送モータドライバ64などが接続されている。
【0038】
上記のたわみ量検出センサ61は、図3に示すように、給紙ローラ13から搬送ローラ21にシートSを搬送させる彎曲状の給紙搬送経路に配置され、給紙ローラ13から搬送ローラ21に搬送されるシートSにおけるたわみ量を検出し、この結果を制御手段60に出力する。
【0039】
また、上記の給紙搬送経路には内側ガイド板25と外側ガイド板26とが設けられおり、上記の給紙ローラ13と分離ローラ14との間を通過したシートSは、外側ガイド板26の方に膨らむようにして搬送され、シートSにたわみが形成された状態で搬送ローラ21に導かれる。なお、図3では、シートSにたわみが形成されている状態を二点鎖線で示し、たわみ量がゼロになった状態を太い点線で示している。
【0040】
また、上記のシートセンサ62は、上記の給紙搬送経路における搬送ローラ21の近傍に設けられ、搬送ローラ21の位置にシートSの先端が導かれたことを検出して、その結果を制御手段60に出力する。
【0041】
ここで、この実施形態のシート搬送装置においても、従来と同様に、上記の給紙ローラ13の周速度、すなわち給紙ローラ13によるシート搬送速度を、搬送ローラ21の周速度、すなわち搬送ローラ21によるシート搬送速度よりも速くしている。
【0042】
そして、上記のようにして給紙ローラ13によりシートSを給紙し、給紙されたシートSを、給紙ローラ13により給紙搬送経路を通して搬送ローラ21に搬送させる。この時、シートSは、上記のように外側ガイド板26の方に膨らむようにして搬送されて、シートSにたわみが形成されるようになる。
【0043】
また、このようにたわみが形成された状態でシートSの先端が搬送ローラ21に導かれると、これを上記のシートセンサ62が検出して上記の制御手段60に出力する。
【0044】
これに基づいて、制御手段60がタイマーをスタートさせ、搬送ローラ21に導かれたシートSが、この搬送ローラ21によって適切に搬送されるまでの所定時間、上記の給紙ローラ13をそのままの周速度で回転させる。この場合、給紙ローラ13のシート搬送速度が搬送ローラ21のシート搬送速度よりも速いため、給紙ローラ13と搬送ローラ21との間のシート搬送速度の速度差により、給紙ローラ13と搬送ローラ21との間の給紙搬送経路におけるシートSにたわみが形成されて、シートSにおけるたわみ量が増加する。そして、この時点におけるシートSのたわみ量を、上記のたわみ量検出センサ61により検出して、その結果を制御手段60に出力する。
【0045】
そして、上記の制御手段60において、たわみ量検出センサ61によって検出されたシートSのたわみ量に基づいて、シートSのたわみが解消される時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度と、給紙ローラ13によるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるように、給紙モータドライバ63により回転する給紙ローラ13の周速度を減少させて、給紙ローラ13によるシート搬送速度を減速させる割合を算出する。なお、この場合、搬送ローラ21におけるシート搬送速度は一定に保たれている。
【0046】
そして、このように制御手段60によって算出された結果に基づいて、給紙ローラ13によるシート搬送速度を減速させ、搬送ローラ21によるシート搬送速度と給紙ローラ13によるシート搬送速度との搬送速度差が所定の速度差以下になった状態で、シートSのたわみを解消させた後、この給紙ローラ13の回転を停止させる。
【0047】
このようにすると、たわみが解消される時にシートSに加わる負荷が減少されて、たわみ解消時における音の発生が抑制されると共に、シートSにおけるたわみを解消するように給紙ローラ13におけるシート搬送速度を減速させるだけであり、搬送ローラ21におけるシート搬送速度は一定に保たれているため、シートの搬送効率が低下するということもない。
【0048】
ここで、上記の給紙ローラ13によるシート搬送速度と、搬送ローラ21によるシート搬送速度と、シートSにおけるたわみ量の状態を、図4に基づいて説明する。
【0049】
上記のように給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを、搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbよりも大きくして、シートSを給紙ローラ13により給紙搬送経路を通して搬送ローラ21に搬送させる。この場合、上記のようにシートSは外側ガイド板26の方に膨らむようにして搬送されて、シートSにたわみが形成されるようになり、このシートSの先端が搬送ローラ21に導かれる時点におけるシートSのたわみ量をA0とする。
【0050】
そして、上記のようにシートSの先端が搬送ローラ21に導かれて、搬送ローラ21によるシートSの搬送が開始した時点から所定時間tの間、給紙ローラ13をそのままの周速度で回転させる。この場合、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaが搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbよりも大きくなっているため、この所定時間tの間にシートSにたわみが生じ、この時に生じるシートSのたわみ量をA1とする。なお、上記のたわみ量検出センサ61は、この時点におけるシートSのたわみ量(A0+A1)を検出する。
【0051】
そして、このように検出されたシートSのたわみ量(A0+A1)に基づき、上記のように制御手段60により給紙モータドライバ63を制御し、シートSのたわみが解消される時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの速度差ΔVが所定の速度差以下になるように、給紙ローラ13の周速度を減少させて、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを減少させる。
【0052】
ここで、上記のように給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを減少させるにあたって、給紙ローラ13におけるシート搬送速度Vaが搬送ローラ21におけるシート搬送速度Vbよりも大きい間は、シートSにたわみが形成され、この時に生じるたわみ量をA2とする。このため、シートSにおける最終的なたわみ量は(A0+A1+A2)となる。
【0053】
そして、給紙ローラ13におけるシート搬送速度Vaが搬送ローラ21におけるシート搬送速度Vbよりも小さくなると、シートSにおけるたわみ解消され始め、たわみ解消量A3が最終的なたわみ量(A0+A1+A2)と同じになった時点A3=(A0+A1+A2)において、たわみが解消されるようになり、この時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるようにする。
【0054】
なお、上記のように制御手段60により、シートSのたわみが解消される時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの速度差ΔVが所定の速度差以下になるように、給紙ローラ13の周速度を減少させて、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを減少させるにあたり、例えば、上記のシートSの剛性が低く、このシートSが外側ガイド板26に沿って搬送ローラ21に導かれ、図5に示すように、シートSの先端が搬送ローラ21に導かれる時点におけるシートSのたわみ量A0が大きくなった場合には、給紙ローラ13の周速度を減少させて、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを減少させる割合を小さくして、たわみが解消された時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるようにする。
【0055】
そして、たわみが解消された時点における搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差(mm/s)と、たわみ解消時に発生する音圧レベル[db]との関係を調べ、その結果を図6に示した。
【0056】
この結果、上記の搬送速度差(mm/s)が小さくなるに従って、たわみ解消時に発生する音圧レベル[db]が減少し、上記の搬送速度差(mm/s)が100mm/s以下になると、たわみ解消時における音が気にならない程度まで減少しており、上記の搬送速度差(mm/s)を100mm/s以下にすることが好ましいということが分かった。
【0057】
次に、この実施形態におけるシート搬送装置において、上記の給紙ローラ13と搬送ローラ21との間で生じたシートSのたわみを解消させる動作を、図7に示したフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
先ず、ステップS1とステップS2において、給紙ローラ13と搬送ローラ21とを所定の速度で回転させ、給紙ローラ13によりシートSを搬送ローラ21に向けて搬送させる。
【0059】
そして、ステップS3において、シートSの先端が搬送ローラ21に導かれて上記のシートセンサ62によりシートSが検出されたかを判断し、シートSが検出されない場合には、給紙ローラ13によりシートSを搬送ローラ21に向けて搬送させる。一方、シートSが検出された場合には、ステップS4に進んで、タイマーにより給紙ローラ13をそのままの周速度で回転させる所定時間tを設定する。
【0060】
次いで、ステップS5において、所定時間tが経過したかを判断し、経過していない場合には、給紙ローラ13をそのままの周速度で回転させる一方、所定時間tを経過した場合には、ステップS6に進み、上記のたわみ量検出センサ61によってシートSのたわみ量を検出する。
【0061】
その後、ステップS7において、上記の制御手段60により給紙ローラ13の周速度を減少させて、給紙ローラ13によるシート搬送速度を減少させる割合を算出し、これに基づいて、ステップS8において、給紙ローラ13を減速させる。
【0062】
次いで、ステップS9において、シートSのたわみが解消されたかを判断し、たわみが解消されていない場合には、給紙ローラ13の減速を続けて行う一方、たわみが解消された場合には、ステップS10に進んで、給紙ローラ13の回転を停止させて終了する。
【0063】
なお、この実施形態におけるシート搬送装置においては、給紙ローラ13と搬送ローラ21との間におけるシートSのたわみ量を、たわみ量検出センサ61により検出し、これに基づいて、制御手段60により給紙ローラ13におけるシート搬送速度を減速させる割合を決定するようにしたが、搬送させるシートSの種類、給紙ローラ13におけるシート搬送速度、搬送ローラ21におけるシート搬送速度等から、給紙ローラ13と搬送ローラ21との間において形成されるシートSのたわみ量を予測し、これに基づいて、制御手段60により給紙ローラ13におけるシート搬送速度を減速させる割合を決定することもできる。
【0064】
また、この実施形態におけるシート搬送装置においては、制御手段60により給紙ローラ13におけるシート搬送速度を一定の割合で徐々に減速させるようにしたが、図8に示すように、シートSの先端が搬送ローラ21に導かれて、搬送ローラ21によるシートSの搬送が開始した時点から所定時間tの経過した後、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを、搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるように一気に低下させ、たわみ解消量A3がシートSにおけるたわみ量(A0+A1)と同じになって、たわみが解消される時点まで、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaをこのように低下させた状態で維持させるようにすることもできる。
【0065】
ここで、このように搬送ローラ21によるシートSの搬送が開始した時点から所定時間tが経過した後、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを、搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるように一気に低下させる場合について説明する。
【0066】
図9に示すように、上記の給紙ローラ13の回転軸13aに、第1電磁クラッチ65及び第2電磁クラッチ66を設け、第1電磁クラッチ65におけるギヤ65bを、小径の中間ギヤ71を介して3段ギヤ70の駆動軸70cに設けられた大径ギヤ部70aに歯合させると共に、第2電磁クラッチ66におけるギヤ66bを、大径の中間ギヤ72を介して3段ギヤ70の駆動軸70cに設けられた小径ギヤ部70bに歯合させ、この3段ギヤ70の駆動軸70cを上記の給紙モータドライバ63により回転させるようにする。また、図10に示すように、上記の制御手段60に、新たに第1電磁クラッチ65と第2電磁クラッチ66とを接続させるようにする。
【0067】
そして、上記の制御手段60により、第1電磁クラッチ65の電磁動作部65aと第2電磁クラッチ66の電磁動作部66aに対する通電を制御し、上記の第1電磁クラッチ65におけるギヤ65bの回転力を給紙ローラ13の回転軸13aに伝達する状態と,第2電磁クラッチ66におけるギヤ66bの回転力を給紙ローラ13の回転軸13aに伝達する状態とを切り換えるようにする。
【0068】
ここで、3段ギヤ70における大径ギヤ部70aの回転を第1電磁クラッチ65におけるギヤ65bに伝達させるようにした場合には、3段ギヤ70における小径ギヤ部70bの回転を第2電磁クラッチ66におけるギヤ66bに伝達させる場合に比べて、給紙ローラ13の回転速度が速くなって、この給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaが速くなる。
【0069】
そして、3段ギヤ70における大径ギヤ部70aの回転を第1電磁クラッチ65におけるギヤ65bに伝達させた場合に、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaが、搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbよりも速くなるように設定する一方、3段ギヤ70における小径ギヤ部70bの回転を第2電磁クラッチ66におけるギヤ66bに伝達させた場合に、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaが一気に減少して、上記のように搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるように設定する。
【0070】
このようにすると、上記のように制御手段60により、第1電磁クラッチ65の電磁動作部65aと第2電磁クラッチ66の電磁動作部66aに対する通電を制御し、上記の第1電磁クラッチ65におけるギヤ65bの回転力を給紙ローラ13の回転軸13aに伝達する状態から,第2電磁クラッチ66におけるギヤ66bの回転力を給紙ローラ13の回転軸13aに伝達する状態とを切り換えることにより、給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaを、搬送ローラ21によるシート搬送速度Vbと給紙ローラ13によるシート搬送速度Vaとの搬送速度差ΔVが所定の速度差以下になるように一気に低下させることができる。
【0071】
また、上記の実施形態においては、シート搬送装置を画像形成装置に用いた例を示したが、シート搬送装置を画像読取装置に用いることもできる。
【0072】
図11に、この実施形態のシート搬送装置を備えた画像読取装置100画像形成装置を示している。
【0073】
この画像読取装置100におけるシート搬送装置において、ピックアップローラ101が回転すると、図示していない原稿給紙トレイにセットされたシート(原稿)Sが給紙ローラ102と分離ローラ103との間に送られる。
【0074】
この分離ローラ103の回転軸には、図示していないトルクリミッタが設けられている。このトルクリミッタにより、給紙ローラ102と分離ローラ103との間に二枚以上のシートSが送り込まれても、シート同士の摩擦力は上記トルクリミッタの回転制限力を下回るため、分離ローラ103は回転せず、上記給紙ローラ102に接しているシートだけが給紙ローラ102によって搬送されていくことになる。
【0075】
そして、このシート搬送装置においても、上記の給紙ローラ102と搬送ローラ105との間の給紙搬送経路104においてシートSにたわみが形成される。このたわみの量については、シートのジャムや通過を検出する図示していないセンサにより、シートSを検出してからの経過時間によって推測するようにしている。また、上記の搬送ローラ105の下流側にはレジストローラ106が設けられており、このレジストローラ106の下流側には、図示していない原稿読取光学部が設けられる。
【0076】
そして、このような原稿読取装置100においても、シートSのたわみを解消する際にたわみ解消音が発生することになるが、上記の画像形成装置において用いたシート搬送装置の場合と同様して、シートSのたわみ量に基づいて、給紙ローラ102の回転を制御し、シートSのたわみが解消される時点における、搬送ローラ105によるシート搬送速度と給紙ローラ102によるシート搬送速度との速度差が所定の速度差以下になるように、給紙ローラ102の周速度を減少させて、給紙ローラ102によるシート搬送速度を減少させる。
【0077】
このようにすると、上記の画像形成装置の場合と同様に、たわみが解消される時にシートSに加わる負荷が減少されて、たわみ解消時における音の発生が抑制されると共に、シートSにおけるたわみを解消するように給紙ローラ102におけるシート搬送速度を減速させるだけで、搬送ローラ105によるシート搬送速度を一定に維持させているため、シートの搬送効率が低下するということもない。
【符号の説明】
【0078】
1 装置本体
10 給紙部
12 ピックアップローラ
13 給紙ローラ
14 分離ローラ
20 シート搬送路
21 搬送ローラ
22 レジストローラ
30 画像形成部
40 定着部
50 排紙部
60 制御手段
61 たわみ量検出センサ
62 シートセンサ
63 給紙モータドライバ
64 搬送モータドライバ
65 第1電磁クラッチ
66 第2電磁クラッチ
70 3段ギア
100 画像読取装置
102 給紙ローラ
103 分離ローラ
104 給紙搬送経路
105 搬送ローラ
106 レジストローラ
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを給紙させて搬送する給紙ローラと、給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラとが設けられ、給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く、給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において、上記の給紙ローラの回転速度を制御する制御手段を設け、この制御手段により、シートの後端が給紙ローラを通過する前に、給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させて、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみが解消される時点における、給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差を所定の速度差以下にしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置において、シートのたわみが解消される時点における、給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が100mm/s以下であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート搬送装置において、給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみ量を検出するたわみ量検出手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−229080(P2012−229080A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97765(P2011−97765)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】