説明

シート搬送装置

【課題】 あらかじめ設定された二方向の搬送経路にシートを正確に分岐させて搬送する。
【解決手段】 駆動送りローラ11と、この駆動送りローラ11の回転に連れ回りする従動送りローラ12とを含み、これら各送りローラ11,12でシートWを把持して各送りローラ11,12の回転に伴い当該シートWを下流方向へ送り出す。駆動送りローラ11と従動送りローラ12によるシートWの把持点の下流側近傍には、分岐案内ブロック20が設けてある。従動送りローラ12は駆動送りローラ11の外周を公転可能である。そして、分岐案内ブロック20には、一部領域を切り欠いて、公転してきた従動送りローラ12との接触を回避する逃げ面21が形成してある。さらに、分岐案内ブロック20の先端面には、従動送りローラ12が公転した位置で送り出されてきたシートWを、あらかじめ設定された送り出し方向に導く搬送案内面22が切欠き形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類などのシートを一枚ずつ搬送するとともに、途中でシートの搬送方向を二方向に分岐させる機能を備えたシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシートを分岐させる機能を備えた搬送装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示された構成のものが知られている。なお、以下の括弧内に示す符号は、それぞれ特許文献の図面に付された符号である。
特許文献1に開示された紙葉類の振分搬送装置は、同文献1の図1、図2に示されるように、三角形状をなすゲート(10)を有する振分機構(9)を備えており、ゲート(10)を左右方向に回動させることで、紙葉類を第1の方向(A)あるいは第2の方向(B)に振分けて搬送することができる(同文献1の段落0019〜0021参照)。
【0003】
また、特許文献2に開示された排紙路切換装置は、同文献2の第1図に示されるように、太陽ローラ(23)と遊星ローラ(26)を備えており、遊星ローラ(26)が第1の位置(A)にあるとき、用紙(30)が下方から搬送されてくると、太陽ローラ(23)と遊星ローラ(26)とでそれらの間を通して用紙(30)をそのまま上方へ搬送する。一方、トレイ(21)に用紙(30)を排出するときは、太陽ローラ(23)と遊星ローラ(26)とで用紙(30)を挟んだまま、太陽ローラ(23)の回転速度と同じ速度で遊星ローラ(26)を太陽ローラ(23)のまわりに公転させて第2の位置(B)に移動させる。この動作によって用紙(30)の排紙路を切り換えて用紙(30)をトレイ(21)方向へ排紙する(同文献2の明細書10頁13行〜11頁13行参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−163503号公報
【特許文献2】実願平1−7264号(実開平2−34557号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された振分機構(9)にあっては、連続して搬送されてくる紙葉類の搬送方向を切り換えるには、紙葉類と紙葉類の間隔に合わせてゲート(10)を回動させる必要がある。この間隔は一定ではなく、通常は不規則にばらつくことが多く、そのような間隔に合わせてゲート(10)を左右方向に回動させるには、特に紙葉類を連続して高速搬送する場合にあっては、複雑かつ高精度な制御が必要であった。
【0006】
また、特許文献2に開示された排紙路切換装置は、用紙を直線方向へそのまま搬送させるか、トレイの上方へ向きを変えて排紙するかを切り換えるだけの機能しかなく、トレイに排紙するに際して、用紙先端の移動方向にばらつきが生じても、トレイの上方に用紙が向かっていれば排紙可能であった。しかし、かかる特許文献2の排紙路切換装置の構成では、あらかじめ設定された二方向の搬送経路に用紙を正確に分岐させて搬送することはできない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、あらかじめ設定された二方向の搬送経路にシートを正確に分岐させて搬送することを第1の目的とする。
さらに、本発明は、シートを高速で搬送する場合でも、容易にシートを分岐できるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に係る本発明のシート搬送装置は、駆動送りローラと、この駆動送りローラの回転に連れ回りする従動送りローラとを含み、これら各送りローラでシートを把持して各送りローラの回転に伴い当該シートを下流方向へ送り出す送りローラユニットと、
駆動送りローラと従動送りローラによるシートの把持点の下流側近傍に設けられた分岐案内ブロックと、を備え、
従動送りローラは駆動送りローラの外周を公転可能であり、公転する前の原点位置でシートが直進方向へ送り出され、一方、あらかじめ設定した公転後の位置ではシートの把持点が移動してシートの送り出し方向が変更される構成となっており、
分岐案内ブロックの先端は、従動送りローラが公転前の原点位置で直進方向へ送り出されてきたシートには干渉することのない位置に配置してあり、
さらに、分岐案内ブロックの一部領域を切り欠いて、公転してきた従動送りローラとの接触を回避する逃げ面を形成するとともに、
分岐案内ブロックの先端面を切り欠いて、従動送りローラが公転した位置で送り出されてきたシートを、あらかじめ設定された送り出し方向に導く搬送案内面を形成してあることを特徴とする。
【0009】
上述した構成の本発明に係るシート搬送装置によれば、駆動送りローラに対して従動送りローラを公転させることで、シートの把持点が移動してシートの送り出し方向を変更することができる。ここで、駆動送りローラと従動送りローラによるシートの把持点の下流側近傍には、分岐案内ブロックが設けてあり、従動送りローラが公転前の原点位置で送り出されてきたシートは、この分岐案内ブロックに干渉することなくそのまま直進していく。一方、従動送りローラが公転した位置で送り出されてきたシートは、分岐案内ブロックの先端面に形成した搬送案内面に接触してあらかじめ設定された送り出し方向へ導かれる。このため、あらかじめ設定された二方向の搬送経路にシートを正確に分岐させて搬送することができる。
また、分岐案内ブロックに、公転してきた従動送りローラとの接触を回避する逃げ面を形成することで、当該分岐案内ブロックを駆動送りローラと従動送りローラによるシートの把持点の下流側近傍に配置し、当該近傍位置ですぐにシートを搬送案内面に導くことができ、シート先端の振れによる分岐ミスを回避することが可能となる。
【0010】
さらに、請求項2に係る本発明のシート搬送装置は、上記第2の目的を達成するために、従動送りローラが公転する前の原点位置でシートを送り出す方向の下流側と、従動送りローラが公転後の位置でシートを送り出す方向の下流側とのそれぞれに排出ローラユニットを備え、
各排出ローラユニットは、駆動排出ローラと、この駆動排出ローラの回転に連れ回りする従動排出ローラとを含み、これら各排出ローラでシートを把持して各排出ローラの回転に伴い当該シートを下流方向へ排出する構成であり、
さらに、排出ローラユニットにおけるシートの把持点と、送りローラユニットにおけるシートの把持点との間の距離は、ともに搬送対象となるシートの長さよりも短く設定してあることを特徴とする。
【0011】
上述した構成の本発明に係るシート搬送装置によれば、下流側に設けた排出ローラユニットが当該シートを把持した後であれば、従動送りローラを公転させてシートの送り出し方向を切り換えることができる。特許文献1の従来技術において説明したとおり、連続して送られてくるシートの間隔は一定ではなく、通常は不規則にばらつくことが多い。本発明によれば、このような間隔に合わせて従動送りローラの公転を制御する必要がないため、シートの搬送速度を高速化しても、充分余裕のあるタイミングでシートの送り出し方向を切り換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1に係る本発明のシート搬送装置によれば、あらかじめ設定された二方向の搬送経路にシートを正確に分岐させて搬送することができる。
さらに、請求項2に係る本発明のシート搬送装置によれば、シートを高速で搬送する場合でも、容易にシートを分岐させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るシート搬送装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシート搬送装置における従動送りローラの駆動機構例を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシート搬送装置における分岐案内ブロックを拡大して示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシート搬送装置における把持点距離と用紙長さの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るシート搬送装置は、送りローラユニット10と、分岐案内ブロック20と、排出ローラユニット30とを備えている。
送りローラユニット10は、駆動送りローラ11と、この駆動送りローラ11の回転に連れ回りする従動送りローラ12とを含んでいる。駆動送りローラ11は、図示しない回転駆動源から駆動力をうけて図の反時計方向に回転する。従動送りローラ12は、駆動送りローラ11の回転に連れ回りする。搬送対象であるシートW(シート状の物品)は、これら各送りローラ11,12に把持されて、駆動送りローラ11の回転をもって下流方向(図の左方向)へ送り出されていく。
本実施形態では、送りローラユニット10の上流側にも搬送コンベア等のシート搬送手段50が設けてあり、当該シート搬送手段50によって搬送されてきたシートWが、駆動送りローラ11と従動送りローラ12の把持点に送り込まれる。
【0015】
従動送りローラ12は、駆動送りローラ11(太陽ローラ)の外周を公転可能な遊星ローラとなっている。従動送りローラ12が公転する前の原点位置(図1(a)の位置)にあるときは、各送りローラ11,12による把持点Aに送り込まれたシートWをそのまま直進する方向へと送り出す。この原点位置から従動送りローラ12が公転する角度θはあらかじめ設定されており。従動送りローラ12が当該角度θだけ公転すると、シートWの把持点がBに移動してシートWの送り出し方向が変更される(図1(b)参照)。
【0016】
従動送りローラ12の駆動機構は、種々の構成を採用することができる。図2は従動送りローラ12の駆動機構例を示している。同図に示す駆動機構は、駆動送りローラ11の中心軸周りに揺動するアーム13によって従動送りローラ12を回転自在に支持し、当該アーム13をエアシリンダ等のアクチュエータ14により角度θだけ揺動させる構成となっている。
【0017】
分岐案内ブロック20は、駆動送りローラ11と従動送りローラ12によるシートWの把持点Bの下流側近傍に設けられている。この分岐案内ブロック20の先端は、図1(a)に示すように、従動送りローラ12が公転前の原点位置にあって、各送りローラ11,12の把持点Aから直進方向へ送り出されてきたシートWには干渉しない位置に配置してある。具体的には、分岐案内ブロック20の上面が、各送りローラ11,12の把持点AからシートWが送り出されてくる方向(直進方向)に沿ってその直下に配置してある。
【0018】
図3に拡大して示すように、分岐案内ブロック20の先端部上面は、一定範囲で切り欠かれ、先端に向かって下方に傾斜した逃げ面21を形成している。この逃げ面21は、公転してきた従動送りローラ12との接触を回避する機能を有しており、この逃げ面21を形成することで、分岐案内ブロック20の先端を各送りローラ11,12によるシートWの把持点Bの下流側近傍に配置することができる。
【0019】
さらに、分岐案内ブロック20の先端面は、駆動送りローラ11と対向するように切り欠かれて搬送案内面22を形成している。この搬送案内面22は、従動送りローラ12が公転した位置で送り出されてきたシートWを、あらかじめ設定された送り出し方向に導く機能を有している。
上述したとおり、分岐案内ブロック20には逃げ面21が形成してあるため、各送りローラ11,12に送り出されたシートWは、把持点Bの近傍位置ですぐに搬送案内面22に導かれ、シートW先端の振れによる分岐ミスを回避することが可能となる。
具体的には、図3(a)に示すように、従動送りローラ12が公転した位置で送り出されてきたシートWの先端は、把持点Bの近傍に配置された搬送案内面22に接触し、続いて図3(b)に示すように搬送案内面22に導かれてあらかじめ設定された方向に送り出されていく。
【0020】
排出ローラユニット30は、図1に示すように、従動送りローラ12が公転する前の原点位置にあってシートWが送り出されてくる方向と、従動送りローラ12が原点位置から一定の角度θだけ公転した位置にあって、分岐案内ブロック20の搬送案内面22に導かれてシートWが送り出されてくる方向とに、それぞれ配設されている。
なお、本実施形態では、分岐案内ブロック20と、その搬送案内面22に導かれてシートWが送り出されてくる方向に配設した排出ローラユニット30との中間部にも、シートWの下面を案内支持する案内プレート51が配設してある。
【0021】
各排出ローラユニット30は、駆動排出ローラ31と、この駆動排出ローラ31の回転に連れ回りする従動排出ローラ32とを含んでいる。駆動排出ローラ31は、図示しない回転駆動源から駆動力をうけて図の反時計方向に回転する。従動送りローラ12は、駆動送りローラ11の回転に連れ回りする。シートWは、これら各排出ローラ31,32に把持されて、駆動排出ローラ31の回転をもって下流方向へ排出されていく。
ここで、駆動排出ローラ31の周速度は、既述した駆動送りローラ11の周速度と同じか、それよりも若干速く設定することが好ましい。また、排出ローラユニット30によるシートWの把持力は、送りローラユニット10によるそれよりも大きく設定してある。よって、駆動排出ローラ31の周速度を、既述した駆動送りローラ11の周速度よりも速く設定した場合は、送りローラユニット10の把持点A又はBで、シートWにすべりが生じる。
【0022】
さらに、図4に示すように、排出ローラユニット30におけるシートWの把持点C又はDと、送りローラユニット10におけるシートWの把持点A又はBとの間の距離E1又はE2は、ともに搬送されるシートWの長さLよりも短く設定してある。
このように構成することで、各送りローラ11,12によりシートWを送り出しているとき、シートWの先端部側が排出送りローラユニット10に把持した後であれば、従動送りローラ12を公転させてシートWの送り出し方向を切り換えることができる。
ゆえに、シートWの搬送速度を高速化しても、充分余裕のあるタイミングでシートWの送り出し方向を切り換えることが可能となる。これは、従動送りローラ12を原点位置(図4の実線で示す位置)から公転させる場合に限らず、当該公転後の位置(図4の想像線で示す位置)から原点位置へと公転させる(戻す)場合であっても同様である。
ここで、上記把持点間の距離E1又はE2と、搬送されるシートWの長さLとの寸法差が大きくなるほど(シートWの長さLよりも距離E1又はE2が短くなるほど)、従動送りローラを公転させることのできるタイミングに余裕が生まれる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
10:送りローラユニット、11:駆動送りローラ、12:従動送りローラ、13:アーム、14:アクチュエータ、
20:分岐案内ブロック、21:逃げ面、22:搬送案内面、
30:排出ローラユニット、31:駆動排出ローラ、32:従動排出ローラ、
50:シート搬送手段、51:案内プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動送りローラと、この駆動送りローラの回転に連れ回りする従動送りローラとを含み、これら各送りローラでシートを把持して各送りローラの回転に伴い当該シートを下流方向へ送り出す送りローラユニットと、
前記駆動送りローラと従動送りローラによるシートの把持点の下流側近傍に設けられた分岐案内ブロックと、を備え、
前記従動送りローラは前記駆動送りローラの外周を公転可能であり、公転する前の原点位置でシートが直進方向へ送り出され、一方、あらかじめ設定した公転後の位置ではシートの把持点が移動してシートの送り出し方向が変更される構成となっており、
前記分岐案内ブロックの先端は、前記従動送りローラが公転前の原点位置で直進方向へ送り出されてきたシートには干渉することのない位置に配置してあり、
さらに、前記分岐案内ブロックの一部領域を切り欠いて、公転してきた前記従動送りローラとの接触を回避する逃げ面を形成するとともに、
前記分岐案内ブロックの先端面を切り欠いて、前記従動送りローラが公転した位置で送り出されてきたシートを、あらかじめ設定された送り出し方向に導く搬送案内面を形成してあることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記従動送りローラが公転する前の原点位置でシートを送り出す方向の下流側と、前記従動送りローラが公転後の位置でシートを送り出す方向の下流側とのそれぞれに排出ローラユニットを備え、
各排出ローラユニットは、駆動排出ローラと、この駆動排出ローラの回転に連れ回りする従動排出ローラとを含み、これら各排出ローラでシートを把持して各排出ローラの回転に伴い当該シートを下流方向へ排出する構成であり、
さらに、前記排出ローラユニットにおけるシートの把持点と、前記送りローラユニットにおけるシートの把持点との間の距離は、ともに搬送対象となるシートの長さよりも短く設定してあることを特徴とする請求項1のシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121644(P2012−121644A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272089(P2010−272089)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(596001014)富士油圧精機株式会社 (15)
【Fターム(参考)】