説明

シート構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート構造に関し、特にシートベルトを巻き取るためのリトラクタがシートバックに設けられているものに関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のシート構造として、例えば実公平6−32455号公報に開示されるように、シートバックにおけるバックプレートにリトラクタを取付固定し、このリトラクタから引き出されるシートベルトをシートバック内のスルーアンカに係止してその向きを変えた後、シートバックの前面上端のベルト引出し口から引き出すようにしたものは知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のものでは、リトラクタがシートバックにおけるバックプレートに対して前側から取り付けられており、リトラクタの前側には、該リトラクタを覆うようにパッド及び表皮材が設けられているので、リトラクタの取換え、メンテナンス等のためにリトラクタを取外す等の必要性が生じた場合、上記取換え、メンテナンス等が非常に煩雑になるという問題があった。
【0004】
本発明の目的とするところは、上記のようにシートベルトリトラクタをシートバックに取り付ける場合に、その取付構造及びその周辺構造を改良することにより、上記のようなリトラクタ部に対するサービス性向上及び外観性向上等を有効に図り得るようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、この発明では、上部に横フレームを備えたシートバックにリトラクタを後側から配置し、このリトラクタからのシートベルトを横フレームの後側から上部を越えて前側に引き出されるようにし、上記リトラクタ部を覆うカバー部材を設けた。
【0006】
すなわち、請求項1の発明では、上部に横方向に延びる横フレームを備えたシートバックにシートベルトのリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造として、上記リトラクタからのシートベルトが、横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出されるように構成する。そして、上記リトラクタ及び該リトラクタから引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材を設ける。
【0007】
この構成によると、リトラクタはシートバックに対して後側から取り付けられてなるので、上記のようなリトラクタの取換え、メンテナンス等の際に、パッド及び表皮材等が邪魔になることがなく、リトラクタ部に対するサービス性を向上させることができる。
【0008】
さらに、リトラクタ部はカバー部材によって覆われているため、外観性も向上させることができる。
また、リトラクタからのシートベルトは、一旦、横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出されるので、テンションのかかったシートベルトを横フレーム自体で支持することができ、その支持が確実に行われる。
【0009】
請求項2の発明では、上記請求項1のシート構造において、カバー部材をシートバックの後面から上面に亘って延設する。こうすれば、外観性を更に向上させることができる。
【0010】
請求項3の発明では、上記請求項2のシート構造において、カバー部材上面部にシートベルトが挿通されるベルト挿通部が開口される。このことにより、カバー部材にシートベルトのガイド機能を付与できると共に、より広い範囲を覆うことができ外観性を更に向上させることができる。
【0011】
請求項4の発明では、上記請求項1〜3のいずれかのシート構造において、シートバックは枠状フレームを備えた構成とし、リトラクタはシートバック上部において横方向に延びる横フレームの下方に配置する。このことで、リトラクタの上部には強度、剛性の高い横フレームが存在しているので、そのリトラクタを特に外部上方からの衝撃から良好に保護することができる。
【0012】
請求項5の発明では、上記請求項4のシート構造において、枠状フレームの前側に前側ブラケットが設けられており、リトラクタは該前側ブラケットに後側から取り付けられている。こうすれば、リトラクタは前側ブラケットを介して枠状フレームに取付固定されるので、そのフレームへの取付けを容易に行うことができる。
【0013】
請求項6の発明では、上記請求項5のシート構造において、ブラケットを、リトラクタの前後に位置する前後のブラケットからなし、リトラクタは上記後側ブラケットに前側から取り付けられ、この後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられている構造とする。
【0014】
このことで、リトラクタは前後をそれぞれブラケットで覆われた状態で取り付けられるので、そのリトラクタを外部の衝撃から良好に保護することができる。また、予め枠状フレームに前側ブラケットを取り付けておき、リトラクタを後側ブラケットにその前側から取り付けた後、そのリトラクタと一体の後側ブラケットを上記前側ブラケットにその後側から取り付けるだけで、リトラクタを両ブラケットを介して枠状フレームに取り付けることができ、リトラクタの取付性を向上させることができる。一方、逆にリトラクタを取り外すときには、上記と反対に、前側ブラケットは取り付けたまま、その前側ブラケットから後側ブラケットを取り外すだけで、リトラクタを枠状フレームから取り外すことができる。よってリトラクタのサービス性を高めることができる。
【0015】
請求項7の発明では、上部に横方向に延びる横フレームを備えたシートバックにシートベルトのリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造として、シートバックはその上下部において横方向に延びる上側横フレーム及び下側横フレーム、並びに左右に離間して上記両横フレーム間に架設される左右両側の縦フレームとを含んでなる枠状フレームを備えてなり、上記縦フレームの上部と上側横フレームとで形成されるコーナ部のこれら両フレームの前部には、前側ブラケットが上記両フレーム間に架設されているとともに、リトラクタは上記前側ブラケットの後方に配設される後側ブラケットに前側から取り付けられ、且つ上記後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられることにより、上記リトラクタは上側横フレームの略真下位置の枠状フレーム内に配設され、上記リトラクタの後上方部に設けられたベルト出入口からのシートベルトは、上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出され、上記リトラクタ及び該リトラクタから上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後に、シートバック前側に引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材がシートバックの後面に設けられている構造とする。
【0016】
このことで、上述したようなリトラクタ部に対するサービス性、外観性、リトラクタの組付け性、シートベルトの支持性を向上させることができるとともに、リトラクタを特に外部上方からの衝撃から良好に保護することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の実施形態に係る車両のリアシートSの要部を示す。このリアシートSは、その全体の幅の略6割の長さを占める左側シート1と、同略4割の長さを占める右側シート2とに分割され、これら両シート1,2のシートバック1a,2aは互いに独立して前回りに傾倒可能とされた可倒式のものとされている。上記右側シート2は右側席とされ、左側シート1の左側部は左側席とされている。左側シート1の右側部は中央席とされ、この部分のシートバック1a前面(後述のパッド14)には凹部3が形成されていて、この凹部3には下端部を中心に回動可能なアームレスト4が格納されており、中央席の不使用時には、アームレスト4を前回りに回動させてシートバック1aから突出させる一方、使用時にはアームレスト4を後回りに回動させてシートバック1aの凹部3内に格納するようにしている。
【0018】
上記左右シート1,2のシートバック1a,2aの構造は基本的に同じで、図5に例示する如く、鉄製の枠状フレーム6にウレタン樹脂等のパッド14を被せ、その表面を表皮布(図示せず)で被覆したものであるが、本発明の特徴は左側シート1のシートバック構造にある。
【0019】
すなわち、図1〜図5に示すように、この左側シート1のシートバック1aにおける枠状フレーム6は、シートバック1a内の上下側部をそれぞれ互いに平行に左右方向に延びる円筒パイプからなる上下の横フレーム7,8と、シートバック1a内の左右両側をそれぞれ互いに平行に上下方向に延びる角筒状の左右の縦フレーム9,10とを有し、この左右の縦フレーム9,10の上端は上側横フレーム7の両端部に、また左右縦フレーム9,10の下端は下側横フレーム8の両端部にそれぞれ溶接されている。また、シートバック1aの右側寄りには上記アームレスト4格納用の凹部3の左近傍に、上記左右の縦フレーム9,10と平行に延びる角筒状の中央縦フレーム11が配置され、この中央縦フレーム11の上端は上側横フレーム7の中間部に、また下端は下側横フレーム8の中間部にそれぞれ溶接されており、シートバック1a左右中央の上下の横フレーム7,8間に中央縦フレーム11が架設されている。尚、枠状フレーム6の後側面にはパネル状のプレートフレーム13が一体に溶接されている。
【0020】
そして、上記枠状フレーム6において、互いに隣接する中央縦フレーム11の上端部と上側横フレーム7との交差部の左側下部、つまり左側及び中央の縦フレーム9,11と上下側の横フレーム7,8とで囲まれる枠部分の右上コーナ部には上側横フレーム7の略真下でその近傍位置に、上記中央席に着座した乗員用のシートベルトBを巻き取るためのリトラクタ15が両フレーム7,11間に亘り架け渡された状態で取付固定されている。
【0021】
すなわち、中央縦フレーム11の上端部と上側横フレーム7との交差部の左側下部には前後の鉄製ブラケット19,21が両フレーム7,11間に亘り架設され、このブラケット19,21にリトラクタ15が取り付けられている。上記前側ブラケット19はリトラクタ15の前側に位置するもので、後側ブラケット21は同様に後側に位置するものであり、前側ブラケット19は中央縦フレーム11の上端部及び上側横フレーム7に対し溶接により固定されている。この前側ブラケット19は、図6〜図8に示す如く前側に凹陥した略箱形状のもので、その左右両側にはそれぞれ上下1対のボルト孔20,20,・・が形成され、前側ブラケット19の前面には上記各ボルト孔20に対応して4つのナット24,24,・・が溶接されている。そして、この前側ブラケット19は、図1に示すように枠状フレーム6の前部に配置された状態で、その右縁部が中央縦フレーム11上端の左側面前縁部に、また上縁部が上側横フレーム7の前側下面にそれぞれ溶接されている。
【0022】
一方、後側ブラケット21は、図9〜図11に示すように、後側に凹陥した略コ字状の板材からなり、その左右両側にはそれぞれ上下1対のボルト挿通孔22,22,・・が上記前側ブラケット19のボルト孔20,20,・・に対応して形成されている。また、後側ブラケット21の中央部にはボルト孔21aが貫通形成され、後側ブラケット21後面には上記ボルト孔21aに対応してナット23が溶接固定されている。
【0023】
そして、図5に示す如く、リトラクタ15にはその後側上端部にシートベルトBの通るベルト出入口16が設けられ、また、後側下部に前後方向に貫通するボルト挿通孔17が形成されており、このリトラクタ15のボルト挿通孔17を挿通させた後の取付ボルト25を後側ブラケット21のボルト孔21aを経てナット23に螺合締結することで、リトラクタ15がその後側に位置する後側ブラケット21に対し、リトラクタ15のベルト出入口16を後側上端に配置した状態で前側から取り付けられている。さらに、このリトラクタ15を取り付けた後側ブラケット21の各ボルト挿通孔22にそれぞれ取付ボルト26を挿通して、それらを前側ブラケット19の対応するボルト孔20に挿通させてナット24に螺合締結することで、後側ブラケット21が前側ブラケット19に後側から取り付けられている。この構造により、リトラクタ15は枠状フレーム6の内側に配置された状態で上記前後両側のブラケット19,21間に包囲されるように収容される。また、そのリトラクタ15のベルト出入口16は上側横フレーム7後端の略真下位置に位置していて、この上側横フレーム7の後端真下位置にあるベルト出入口16にてリトラクタ15からシートベルトBが引き出され、このリトラクタ15からのシートベルトBは、上側横フレーム7をその後側から上方に回り込んだ後にシートバック1aの上方からその前側に引き出されるようになっている。
【0024】
さらに、上記上側横フレーム7の上面のリトラクタ15の真上部分にベルトガイド取付部材28が溶接により取付固定されている。このベルトガイド取付部材28は、シートバック1a上端でのシートベルトBの高さ位置を設定するためのもので、図12〜図14に示す如く上方に凹陥した略箱状に形成され、その上面には左右方向に延びる突条28aが形成されている。そして、このベルトガイド取付部材28の上面(上側横フレーム7の上側)には樹脂製のベルトガイド29が配置されている。このベルトガイド29は、リトラクタ15のベルト出入口16から枠状フレーム6の上側横フレーム7後側を上方に延びるシートベルトBをシートバック1a前側に引き出すよう摺接状態で案内するものであり、図1515〜図17に示すように、ベルトガイド取付部材28の上面ないし上側横フレーム7の後面を覆うような断面略L字状に設けられ、その上部にはベルトガイド取付部材28の突条28aに嵌合して係止される凹部30が形成されている。また、この凹部30の左右両側にはそれぞれ貫通状のボルト孔31,31が形成されており、この各ボルト孔31に取付ボルト32を挿通した後、その取付ボルト32をベルトガイド取付部材28を貫通してその下面に接合したナット27(図1参照)に螺合締結することで、ベルトガイド29が上側横フレーム7の上部にベルトガイド取付部材28を介して取付固定されている。
【0025】
上記後側ブラケット21の後端部は上記プレートフレーム13よりも後側に位置しており、この後側ブラケット21との干渉を避けるためにプレートフレーム13の上端部に開口13aが形成されている。
【0026】
そして、このプレートフレーム13の開口13aは樹脂製のカバー部材34で覆われている。このカバー部材34はシートバック1a後面となるプレートフレーム13からベルトガイド29の上方まで、すなわち、リトラクタ15及び該リトラクタ15から引き出される部分のシートベルトBを後方から覆うように折り曲げられていて、その前端部には前下がりの段部34aが形成され、この段部34aには上記ベルトガイド29よりも前側のシートベルトBを貫通させるベルト挿通部35が開口され、このベルト挿通部35の前縁部はシートベルトBが幅方向に沿って通過可能に切り欠かれている。このカバー部材34の前端縁部は上記ベルトガイド取付部材28に設けたねじ孔28b,28b(図12参照)に、また、下部の左右両側部はプレートフレーム13にそれぞれボルト締結されて取付固定されている。
【0027】
さらに、シートバック1aにおいて上記リトラクタ15から延びるシートベルトBの経路となる部分のパッド14に切欠き14aが形成されている。
また、図2及び図5中、37はシートバック1a,2aの上側横フレーム7に取り付けられた、ヘッドレスト38を取り付けるためのヘッドレスト取付部である。
【0028】
したがって、この実施形態においては、車両のリアシートSの中央席に着座した乗員がシートベルトBを使用するとき、そのシートベルトBの引張操作により、シートベルトBはリトラクタ15のベルト出入口16から出た後に枠状フレーム6の上側横フレーム7後側を上方に向かい、その上側横フレーム7上部のベルトガイド29で摺接案内されながらシートバック1a前側に引き出される。一方、シートベルトBを格納するときには、そのシートベルトBは上記と逆の動作でリトラクタ15に巻き取られる。
【0029】
この場合、シートベルトBのリトラクタ15が、シートバック1aの枠状フレーム6における隣接する上側横フレーム7と中央縦フレーム11との交差部に両フレーム7,11間に亘り架け渡された状態で取り付けられているので、リトラクタを従来のようにシートバックプレートに取り付ける構造に比べ、そのリトラクタ15の取付強度が大幅に向上する。よって可倒式シートバック1aに設けられるリトラクタ15の取付強度を向上させることができる。
【0030】
また、上記リトラクタ15はシートバック1a内上部の上側横フレーム7の略真下位置に近接して配置されているので、その横フレーム7に近い分だけリトラクタ15の支持強度が高まる。よって、上側横フレーム7によりリトラクタ15を良好に保護することができる。
【0031】
また、上記リトラクタ15のベルト出入口16から引き出されたシートベルトBは、一旦、上側横フレーム7をその後側から上方に回り込んだ後にシートバック1aの上方から前側に向かうので、シートベルトBをテンションがかかっても上側横フレーム7自体で支持することができ、その支持を確実に行うことができる。そして、上記上側横フレーム7上部にベルトガイド取付部材28を介してベルトガイド29が取り付けられているので、そのシートベルトBをベルトガイド29でスムーズに案内して、その案内を確実に行うことができる。
【0032】
しかも、リトラクタ15及びこのリトラクタ15から引き出される部分のシートベルトBを後方から覆うカバー部材34を設けたので、外観性を確保した状態でリトラクタ15をシートバック1aに対して後側から取り付けることができ、リトラクタ15の取換え、メンテナンス等の際に、上記カバー部材34を取り外すのみで良く、パッド14及び表皮等が邪魔になることがなく、リトラクタ15部に対する上記のようなサービス性を向上させることができる。
【0033】
また、上記カバー部材34はリトラクタ15及び該リトラクタ15から引き出される部分のシートベルトBを後方から覆うように折り曲げられ、シートバック1aの後面から上面に亘って延設されている。これにより、外観性を更に向上させることができる。
【0034】
さらに、上記カバー部材34の前端部の前下がりの段部34aにはベルトガイド29よりも前側のシートベルトBを貫通させるベルト挿通部35が開口され、このベルト挿通部35の前縁部はシートベルトBが幅方向に沿って通過可能に切り欠かれている。このことにより、ベルト挿通部35内にシートベルトBを容易に挿通させることができ、リトラクタ15、カバー部材34等の組付け性を簡単な構造により向上させることができると共に、カバー部材34にシートベルトのガイド機能を付与でき、且つより広い範囲を覆うことができ外観性を更に向上させることができる。
【0035】
また、シートバック1aは枠状フレーム6を備えた構成とされ、リトラクタ15はシートバック1a上部において横方向に延びる上側横フレーム7の下方に配置されている。これにより、リトラクタ15の上部には強度、剛性の高い横フレーム7が存在しているので、そのリトラクタ15を特に外部上方からの衝撃から良好に保護することができる。
【0036】
さらに、枠状フレーム6の前側に前側ブラケット19が設けられており、リトラクタ15は該前側ブラケット19に後側から取り付けられている。こうすれば、リトラクタ15は前側ブラケット19を介して枠状フレーム6に取付固定されるので、その枠状フレーム6への取付けを容易に行うことができる。
【0037】
また、リトラクタ15は後側ブラケット21に前側から取り付けられ、このリトラクタ15と一体の後側ブラケット21が前側ブラケット19に後側から取り付けられているので、リトラクタ15を取付固定する際、予め枠状フレーム6に前側ブラケット19を溶接により取り付けておき、リトラクタ15を後側ブラケット21にその前側から取付ボルト25により取り付けた後、そのリトラクタ15と一体の後側ブラケット21を上記前側ブラケット19にその後側から取付ボルト26,26,・・により取り付けるだけでよく、リトラクタ15の取付作業を容易に行うことができる。
【0038】
また、逆にリトラクタ15を取り外すときには、上記と反対に、前側ブラケット19は取付固定状態のままで、その前側ブラケット19から後側ブラケット21を取り外すだけで、リトラクタ15を枠状フレーム6から取り外すことができる。しかも、上記後側ブラケット21の後端部はプレートフレーム13の開口13aを経てその後側に突出し、このプレートフレーム13の開口13aは樹脂製のカバー部材34で覆われているとともに、シートバック1aにおいてリトラクタ15から延びるシートベルトBの経路となる部分のパッド14に切欠き14aが形成されているので、上記のようにリトラクタ15を取り外す際、リトラクタをシートバックのパッド内に埋め込んで配置している構造のようにパッドを取り外す必要がなく、カバー部材34を取り外すだけで後側ブラケット21が剥出しになって、それに固定されるリトラクタ15を取り外すことができ、よってリトラクタ15のサービス性を高めることができる。
【0039】
尚、上記実施形態では、車両のリアシートSの左側シート1に中央席用のリトラクタ15を取り付けた場合であるが、右側シート2の幅が左側シート1よりも長くて、その右側シート2の左側部に中央席が設定されている場合には、右側シート2の中央寄り(中央席の右側)にリトラクタ15を設ければよい。
【0040】
また、上記実施形態では、シートバック1aが前傾可能な可倒式シート1にリトラクタ15を取り付けているが、シートバックが固定された固定式のシートバックであってもよく、或いはリアシート以外の車両シートや車両用以外のシートであっても本発明を適用することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明のように、請求項1の発明では、上部に横フレームを備えたシートバックにシートベルトリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造に対し、このリトラクタからのシートベルトを、横フレームの後側から上部に回り込んだ後にシートバック前側に引き出すようにし、上記リトラクタ及び該リトラクタから引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材を設けたことにより、リトラクタの取換え、メンテナンス等の際に、パッド及び表皮材等が邪魔になることがなく、リトラクタ部に対するサービス性を向上させることができる。また、横フレームによってリトラクタの良好な保護を図ることができる。また、テンションのかかったシートベルトを横フレーム自体で支持することができ、その支持を確実に行うことができる。さらに、リトラクタ部はカバー部材によって覆われているため、外観性も向上させることができる。
【0042】
請求項2の発明によると、上記請求項1のシート構造において、カバー部材をシートバックの後面から上面に亘って延設したことにより、外観性を更に向上させることができる。
【0043】
請求項3の発明によると、上記請求項2のシート構造において、カバー部材上面部にシートベルトが挿通されるベルト挿通部が開口されることにより、カバー部材にシートベルトのガイド機能を付与できると共に、より広い範囲を覆うことができ外観性を更に向上させることができる。
【0044】
請求項4の発明によると、上記請求項1〜3のいずれかのシート構造において、シートバックは枠状フレームを備えた構成とし、リトラクタはシートバック上部において横方向に延びる横フレームの下方に配置されることにより、リトラクタを特に外部上方からの衝撃から良好に保護することができる。
【0045】
請求項5の発明によると、上記請求項4のシート構造において、枠状フレームの前側に前側ブラケットが設けられており、リトラクタは該前側ブラケットに後側から取り付けられていることにより、そのフレームへの取付けを容易に行うことができる。
【0046】
請求項6の発明によると、上記請求項5のシート構造において、ブラケットを、リトラクタの前後に位置する前後のブラケットからなし、リトラクタは上記後側ブラケットに前側から取り付けられ、この後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられていることにより、リトラクタを外部の衝撃から良好に保護することができる。また、リトラクタの取付性及びサービス性の向上を図ることができる。
【0047】
請求項7の発明によると、上部に横フレームを備えたシートバックにシートベルトリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造に対し、シートバックはその上下部において横方向に延びる上側横フレーム及び下側横フレーム、並びに左右に離間して上記両横フレーム間に架設される左右両側の縦フレームとを含んでなる枠状フレームを備えてなり、上記縦フレームの上部と上側横フレームとで形成されるコーナ部のこれら両フレームの前部には、前側ブラケットが上記両フレーム間に架設されているとともに、リトラクタは上記前側ブラケットの後方に配設される後側ブラケットに前側から取り付けられ、且つ上記後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられることにより、上記リトラクタは上側横フレームの略真下位置の枠状フレーム内に配設され、上記リトラクタの後上方部に設けられたベルト出入口からのシートベルトは、上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出され、上記リトラクタ及び該リトラクタから上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後に、シートバック前側に引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材がシートバックの後面に設けられている。このことで、上述したようなリトラクタ部に対するサービス性、外観性、リトラクタの組付け性、シートベルトの支持性を向上させることができるとともに、リトラクタを特に外部上方からの衝撃から良好に保護することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】左側シートのシートバック要部を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両リアシートにおける左側シートのシートバック要部を示す正面図である。
【図3】シートバックのベルト出入部を後側から見た背面図である。
【図4】シートバックのベルト出入部を上側から見た平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシート構造を示す分解斜視図である。
【図6】前側ブラケットの拡大正面図である。
【図7】前側ブラケットの拡大側面図である。
【図8】前側ブラケットの拡大平面図である。
【図9】後側ブラケットの拡大正面図である。
【図10】後側ブラケットの拡大側面図である。
【図11】後側ブラケットの拡大平面図である。
【図12】ベルトガイド取付部材の拡大平面図である。
【図13】ベルトガイド取付部材の拡大側面図である。
【図14】ベルトガイド取付部材の拡大正面図である。
【図15】ベルトガイドの拡大平面図である。
【図16】ベルトガイドの拡大側面図である。
【図17】ベルトガイドの拡大正面図である。
【符号の説明】
S・・・リアシート
1・・・左側シート
1a・・シートバック
6・・・枠状フレーム
7・・・上側横フレーム
8・・・下側横フレーム
9,10,11・・・縦フレーム
15・・リトラクタ
16・・ベルト出入口
19・・前側ブラケット
21・・後側ブラケット
34・・カバー部材
35・・ベルト挿通部
B・・・シートベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に横方向に延びる横フレームを備えたシートバックにシートベルトのリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造であって、
上記リトラクタからのシートベルトは、横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出されるように構成され、
上記リトラクタ及び該リトラクタから引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材がシートバックの後面に設けられていることを特徴とするシート構造。
【請求項2】
請求項1のシート構造において、
カバー部材はシートバックの後面から上面に亘って延設されていることを特徴とするシート構造。
【請求項3】
請求項2のシート構造において、
カバー部材上面部にシートベルトが挿通されるベルト挿通部が開口されていることを特徴とするシート構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのシート構造において、
シートバックは枠状フレームを備えると共に、リトラクタはシートバック上部において横方向に延びる横フレームの下方に配置されていることを特徴とするシート構造。
【請求項5】
請求項4のシート構造において、
枠状フレームの前側に前側ブラケットが設けられており、リトラクタは該前側ブラケットに後側から取り付けられていることを特徴とするシート構造。
【請求項6】
請求項5のシート構造において、
ブラケットは、リトラクタの前後に位置する前後のブラケットからなり、
リトラクタは上記後側ブラケットに前側から取り付けられ、
上記後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられていることを特徴とするシート構造。
【請求項7】
上部に横方向に延びる横フレームを備えたシートバックにシートベルトのリトラクタが後側から取り付けられてなるシート構造であって、
シートバックはその上下部において横方向に延びる上側横フレーム及び下側横フレーム、並びに左右に離間して上記両横フレーム間に架設される左右両側の縦フレームとを含んでなる枠状フレームを備えてなり、
上記縦フレームの上部と上側横フレームとで形成されるコーナ部のこれら両フレームの前部には、前側ブラケットが上記両フレーム間に架設されているとともに、
リトラクタは上記前側ブラケットの後方に配設される後側ブラケットに前側から取り付けられ、且つ上記後側ブラケットは上記前側ブラケットに後側から取り付けられることにより、上記リトラクタは上側横フレームの略真下位置の枠状フレーム内に配設され、
上記リトラクタの後上方部に設けられたベルト出入口からのシートベルトは、上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後にシートバック前側に引き出され、
上記リトラクタ及び該リトラクタから上側横フレームをその後側から上方に回り込んだ後に、シートバック前側に引き出される部分のシートベルトを後方から覆うカバー部材がシートバックの後面に設けられていることを特徴とするシート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【特許番号】特許第3562161号(P3562161)
【登録日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【発行日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−236520
【出願日】平成8年9月6日(1996.9.6)
【公開番号】特開平10−76913
【公開日】平成10年3月24日(1998.3.24)
【審査請求日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【参考文献】
【文献】特開平06−247255(JP,A)
【文献】特開平08−150893(JP,A)
【文献】実開平01−150166(JP,U)
【文献】実開平03−120255(JP,U)
【文献】実開平03−121953(JP,U)
【文献】実開平03−121162(JP,U)
【文献】実開平03−063449(JP,U)
【文献】特開平06−305395(JP,A)