説明

シート状の物体を積層する方法および装置

本発明は、板状の物体を積層する装置であって、a)板状の物体(2)が、運搬装置(3)によって押出櫛歯(7)の領域へ運搬され、b)押出櫛歯(7)が、前部平板櫛歯(6)および後部平板櫛歯(5)を含む表面上へ板状の物体(2)を押し出し、c)保持櫛歯(8)は、前部平板櫛歯(6)および後部平板櫛歯(5)が互いに離れていく際に板状の物体(2)が元に戻らないようにすると共に、板状の物体(2)の積層板上への落下運動を制御する装置に関する。本発明はまた、関連する方法、およびその方法を実行するプログラムコードを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物繊維、特に岩石および/または鉱物繊維を含むシート状の絶縁材を積層する方法および装置に関し、当該方法および装置では、多数の絶縁材シートが、その広い表面が重なり合った状態で並べられ、絶縁材シートの表面が、積層して垂直に並べられる。
【背景技術】
【0002】
ミネラルウールを含む断熱材は、ガラス状に固化された鉱物繊維から構成され、当該鉱物繊維は、少量の結合剤(通常は熱硬化性プラスチック)によって、基本的には不連続な点において結合している。上記鉱物繊維は、繊維分解ユニット中で繊維分解した溶融体から得られる。このような絶縁材を製造する際、「DIN 4101, Part 1に対して不燃性の」建設資材として分類できる程度に、有機物質片を順に最小化すべきである。一方、絶縁材内部の個々の鉱物繊維の弾性的かつ弾力的作用を維持すべきである。結合材の容量の下限値は、例えば耐圧強度や抗張力といった、使用および取扱に必要な材料特性の保持によって決まる。また、繊維の密集体を疎水化するために、上記密集体に対して約0.1〜約0.4パーセントの量の含浸剤も加えられる。グラスウールおよびロックウールを含む絶縁材間の識別は、一般的な商習慣である。グラスウール繊維は、回転物体の壁に形成された微細な穴にケイ酸塩溶融体を通過させることによって製造される。当該溶融体は、比較的強いアルカリ材料を含み、随意的にボロキシドも含む。これによって、比較的長く、滑らかな鉱物繊維が作られる。鉱物繊維は、結合剤および含浸剤が供給され、空気透過型運搬ベルト上へ落下する。このような繊維分解ユニットの比生産量は低く、鉱物繊維の生産量は、1時間あたり数百キログラムである。したがって、多数の装置が、関連する落下軸とともに、製造ライン全体に、互いに前後に並べて配置されている。繊維分解ユニットから取り出された端部のない繊維網は、所望する厚みや外見上の密度に応じて、さらに高速または低速で、外部へ運搬される。製造される絶縁材の構造を固定する結合剤の硬化は、硬化炉で行われ、その硬化炉において、繊維網に熱風が吹き付けられる。次に、硬化した繊維網は、側面で切り取られ、例えば、中央で2つの網に分割される。そこから、繊維網の幅の範囲内で任意の所望の幅で、一定の長さの絶縁材シートを、ほぼ損失なく分離することができる。
【0003】
岩石繊維を含む絶縁材、特に岩石繊維を含む絶縁材シートは、ガラス繊維を含む絶縁材よりも圧縮しにくい。これは、岩石繊維を含む絶縁材が非常に多様な構造を有しているためである。その構造は、主にもつれた状態の短い岩石繊維において顕著であり、岩石繊維は、繊維分解装置から運搬ベルトに移動する途中で、集合して綿状沈殿物となってしまう。この作用のため、約30〜59%という少ない量の結合剤にもかかわらず、ガラス繊維を含む絶縁材と比べて、比較的高い圧縮値および横方向の伸張値が得られる。
【0004】
ケイ酸塩岩の溶融体を繊維分解する非常に効率的な繊維分解ユニットによって、材料処理量が非常に多くなる。これにより、結合剤および含浸剤と混合した鉱物繊維は、急速に冷えるため、繊維網の形で非常に迅速に外部に運搬されなければならない。これは、いわゆる一次不織布の形で行われる。一次不織布は、可能な限り薄く、他の低速の運搬装置へ、可能な限り平らな状態を保ちながら揺り装置によって載置される。薄い一次不織布の上方向の揺れによって、一次不織布内部の異質性が補償され、その結果、一次不織布からなる端部のない繊維網内の異質性が補償される。これにより製造された絶縁材は、例えば、製造ラインの幅および繊維網の高さに対する外見上の密度の変動幅が非常に小さい。
【0005】
岩石繊維を含む絶縁材シートは、長さ1mまたは1.2m、幅0.6mまたは0.625m、および厚さ約20mm〜約240mmという通常の寸法で製造される。
【0006】
絶縁材シートは、大量に製造されるため、形を整えた後、積層して配列し、梱包して出荷する必要がある。
【0007】
独国特許明細書第37 36 759号A1には、枠を有するシート積層装置が開示されている。当該シート積層装置では、シート運搬手段が設けられ、シートが装置の出口からカセットへ運搬され、当該カセットにおいて積層される。この文献の請求項1では、カセットと対向している側の枠の脇部分に旋回フォークが搭載されており、当該旋回フォークは、水平位から立位まで最大120°旋回し、再び旋回して戻ることができ、複動式の空気圧シリンダーによって歯竿が前後に移動し、上記旋回フォークの軸上で平歯車と噛み合うという構成が特許請求されている。
【0008】
しかしながら、この公知のシート積層装置では、当該装置に対して水平に運搬される各シートしかカセットの端で積層できない。カセットに挿入することなくシートを水平に保つこと、および、その結果として無制限にさらに加工することは、独国特許明細書第37 36 759号A1に開示のシート積層装置では不可能である。
【0009】
欧州特許明細書第1 155 998号A1には、シート積層装置によってシートを積層する方法であって、特に衝撃や曲げの影響を受けやすいシートを積層する方法が開示されている。このシート積層装置は、実質的に二次元の範囲の方向にシートを上方へ運搬する運搬装置と、当該運搬装置に隣接し、運搬装置と積層の上部の高さの差が小さくなるように、積層が進むにつれて高さが調整される積層台とを備えている。
【0010】
ここで、請求項1の特徴部分によれば、シートが運搬装置に支えられている間に積層の上部へ滑動可能であることが、上記発明にとってきわめて重要であると考えられる。
【0011】
積層の上部と運搬装置の端部との高低差は、運搬方向に対して垂直に測定され、ここでは、シートの小さい方の二次元の範囲(幅または高さ)の12分の1未満であることが意図されている。
【0012】
上記方法を実行するための装置は、次の点において優れている。すなわち、2つの積層台が運搬装置の方向に前後に配置されているので、交互に運搬装置と接続することができ、運搬装置は、1つ以上設けられた突縁によって形成され、運搬装置に近接する積層台は、運搬装置の突縁に対して斜めに配された1つ以上の支持材によって形成されている。
【0013】
これにより、前部積層台(5)から後部積層台(4)へのコンベヤーベルトの切替操作については、前部積層台(5)の積層上に置かれる最後のシートがコンベヤーベルトから離れた時点で、次のシートがすでに後部積層台(4)の積層上にあることが保証される。これは従来技術の周知の方法と比べて時間が節約できることを意味するが、ここでもやはり2つの積層台を交互に使用することが必要である。この手段では、所要時間および技術的な問題点を考慮すると、さらなる加工または運搬を行うことが、より難しくなることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、面積の広い、特に鉱物を含むシートを水平に積層する装置および方法であって、迅速に、確実に、かつ堆積面を追加することなく積層作業を実現することが可能な装置および方法を提供するという課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1に係る装置および請求項8に係る方法によって解決される。
【0016】
主として、この解決方法は、特別な組織計画に基づいて、関係する時間を最小限にするという方法によって、特別な運搬素子を用いてシートを運搬する工程を有している。
【0017】
本発明に係る特徴について、以下にさらに詳述する。
【0018】
各図が具体的に示しているのは、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】装置の立体図である。
【図2】装置の詳細な平面図である。
【図3】機能素子の概略図である。
【図4】機能系の第1の詳細を示している。
【図5】機能系の第2の詳細を示している。
【図6】機能系の第3の詳細を示している。
【図7】機能系の第4の詳細を示している。
【図8】機能系の第5の詳細を示している。
【図9】機能系の第6の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1では、台構造を有する基本フレーム(1)が、観察者の視線の高さから示されている。この基本フレームの左側に示されているのがミネラルウールシート(2)であり、例えば、コンベヤーベルトまたはローラーコンベヤー(3)等の給送手段によって案内される地点へ運搬されたものである。最前面には、ミネラルウールシート(2)が、それに付随する矢印によって示された方向に描かれている。この時点で、ミネラルウールシート(2)は、図示しないカメラシステムによって監視され、当該カメラシステムは、シートが損なわれていないか、または次の積層工程へ送ることが可能かどうかを確認する。これは、例えば、良好なシートである場合、一定の許容範囲内で、自動的にはっきりした輪郭を監視する方法によって可能である。「はっきりした輪郭」の概念は、並木道を走行する車の運転者なら誰でも頭に浮かべるものである。本発明に係る装置は、ミネラルウールシート(2)のみに好適であるわけではないため、積層する材料の他の基準についてもまた、この時点でチェックしてもよい。一定の種類のシートの場合において、製造工程中に一定の重量を維持する必要がある場合、これも同様に当該時点で自動的に監視される。シート(2)が不良品であると判断された場合、そのシートは、ここに図示しない装置によって自動的に廃棄される。
【0021】
図1の右側には、実際のシート積層装置が、それに関連する、積層が完了したシート用のベルトコンベヤー(4)と共に示されている枠組み構造の形で描かれている。
【0022】
図2では、上から垂直に見た図1のシステムが示されている。左側には、再度ミネラルウールシート(2)が、ここではちょうど側面の位置に示されており、押出櫛歯(7)によって右側に前部平板櫛歯(6)上へ運搬される。
【0023】
この図においては、もちろん、保持櫛歯(8)は上からあまりはっきりとは示されていない。
【0024】
右側には、後部平板櫛歯(5)が上方から示されている。
【0025】
平板全体用の付属の駆動装置(9)が、実際の積層装置の上方に示されている。
【0026】
保持櫛歯(8)の駆動装置は、符号(10)にて示されており、前部平板櫛歯(6)および後部平板櫛歯(5)の駆動装置は、符号(11)にて示されている。
【0027】
図3は、各機能素子の断面の概略図を示す。ここで、押出櫛歯(7)は、前部平板櫛歯(6)上へミネラルウールシート(2)を押し出す。保持櫛歯(8)が開始位置にあり、さらに他のミネラルウールシート(2)がシート積層用のベルトコンベヤー上に置かれており、ベルトコンベヤーは、積層が所望の高さに到達すると、動作を開始する。
【0028】
以下の図は、積層工程全体の手順における途中経過を詳細に示している。
【0029】
例えば、図4では、押出櫛歯(7)が前部平板櫛歯(6)上へミネラルウールシート(2)を押し出す状態が示されている。前部平板櫛歯(6)は後部平板櫛歯(5)と共に平板を覆う一方、保持櫛歯(8)は待機位置にある。シート積層用のベルトコンベヤー(4)上には、すでにミネラルウールシート(2)が置かれている。
【0030】
図5では、ミネラルウールシート(2)はすでに、閉鎖位置の両側にある後部平板櫛歯(5)および前部平板櫛歯(6)によって形成された閉鎖平板上に、若干押し出されている。保持櫛歯(8)は、シート(2)が終点に到達したため、前部平板櫛歯(6)がシート(2)が来た方向と逆方向に移動し始める際に、シートが後退しないようにする。図の上部には、保持櫛歯(8)の開始位置から下向きの移動が始まっている状態が示されている。
【0031】
図6には、押出櫛歯(7)が運搬を完了し、押出櫛歯(7)が空けた中間領域に保持櫛歯(8)が降下した時点が示されている。上述の作業は非常に迅速に進むため、この工程は必要であり、要求される急速な時間系列は、この櫛状構造の連動がなければ実現できないであろう。
【0032】
図7では、シート(2)が滑り落ちるための空間を設けるために、前部平板櫛歯(6)と後部平板櫛歯(5)とが離間している状態が示されている。保持櫛歯(8)は、下向きの移動を継続し、この移動によって、確実に、当該シート(2)が既存の積層上のちょうど正確な位置に滑落する。なお、ここでは、対応する図面は断面図を示しており、図示されている保持櫛歯(8)の端部は、実際には、各シートが並べられる表面領域に対応する。
【0033】
図8では、シート(2)はすでに先行するシート(2)上に置かれており、積層は、積層されるシートの厚みに応じて低くなり、押出櫛歯(7)は、すでに次のシート(2)の左から接近し始めている。保持櫛歯(8)は、すでに再度上向きに移動している。
【0034】
図9に示す状態は、積層されたシートの高さを除き、図4に示す状態と同一である。
【0035】
上述の連続した動作は、高速で進行するため、各シート(2)を移動させる制御素子は、大きな加速力の影響を受けやすい。さらに、各シート(2)は、一定の反復回数で一定の位置に正確に置かれている必要がある。これは、このような前部および後部平板櫛歯(6、5)、押出櫛歯(7)、および保持櫛歯(8)といった制御素子が、軽量でありながら非常に安定した材料から製造されている必要があることを意味している。ここで具体的には、ガラス繊維強化プラスチックが考えられる。
【0036】
上記の機能系を正確に実行するために、対応の制御プログラムを有する最新式のサーボモーターが利用できる。
【0037】
上記制御素子の各位置を検知するために、それぞれの適用に関して当業者に周知のセンサーを使用してもよい。
【0038】
同様に、この機能系を確実に実行するコンピュータプログラムを開発する概念は、上述の工程に基づいて、当業者によって、実施場所の各条件に適用される。
【符号の説明】
【0039】
1 基本フレーム
2 シート状の物体、ミネラルウールシート
3 製造ラインのローラーコンベヤー
4 シート積層用ベルトコンベヤー
5 後部平板櫛歯
6 前部平板櫛歯
7 押出櫛歯
8 保持櫛歯
9 平板駆動装置
10 保持櫛歯用駆動装置
11 (後部、前部)平板櫛歯用駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の物体を積層する装置であって、
a)運搬装置(3)が、シート状の物体(2)を個別に押出櫛歯(7)の領域へ運搬し、
b)押出櫛歯(7)が、前部平板櫛歯(6)と後部平板櫛歯(5)とを含む表面領域上へシート状の物体(2)を押し出し、
c)保持櫛歯(8)は、前部平板櫛歯(6)と後部平板櫛歯(5)とが離間する際にシート状の物体(2)が戻らないようにすると共に、シートの積層上へのシート状の物体(2)の落下運動を制御することを特徴とする装置。
【請求項2】
押出櫛歯(7)および保持櫛歯(8)は、互いに連動する櫛状構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
連続して行われる動作において用いられ、速度変化が加えられるガイド部材は、軽量かつ曲げに強い材料で作られていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
必要とされる移動動作がサーボモーターによって行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
積層工程の開始時に、積層される材料の、製造に関連するパラメータが監視され、不良品は自動的に廃棄されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
上記装置は、データに基づいて監視する中央潤滑装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
許容時間の範囲が制御部ごとに決定され、許容時間が守られているかどうかが監視され、許容範囲を超える場合は、警報が鳴ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
シート状の物体を積層する方法であって、
a)シート状の物体(2)が、運搬装置(3)によって積層装置へ運ばれる工程と、
b)シート状の物体(2)が、表面が分離可能な領域(5、6)の方向へ押し出される工程と、
c)上記分離可能な領域の前部(6)は、所定の位置においてシート状の物体(2)の運搬方向とは逆方向へ移動を開始する一方、保持櫛歯(8)は、シート状の物体(2)がこの移動に追随することを防止する工程と、
d)上記分離可能な領域の後部(5)は、前部(6)が移動する方向とは反対方向に移動する一方で、保持櫛歯(8)が、垂直方向の下向きに移動する工程と、
e)上記分離可能な領域(5、6)によって開放されると、シート状の物体(2)が、重力に従って収集位置に落下する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、当該プログラムがコンピュータにおいて実行されるときに請求項8に記載の方法の工程を行うためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータプログラムのプログラムコードを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、当該プログラムがコンピュータにおいて実行されるときに請求項8に記載の方法を行うためのコンピュータプログラムのプログラムコードを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−530340(P2010−530340A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512509(P2010−512509)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000990
【国際公開番号】WO2008/154903
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507154653)グレンツェバッハ・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー (16)
【氏名又は名称原語表記】Grenzebach Maschinenbau GmbH
【住所又は居所原語表記】Albanusstrasse 1, 86663 Asbach−Baeumenheim, Deutschland
【Fターム(参考)】