説明

シート状の被印刷体を処理する機械のためのモジュール

【課題】 モジュールで構成される枚葉紙輪転印刷機の自動的な使用開始と機器編成とを可能にする。
【解決手段】 印刷機1は3つの印刷ユニット2からなるモジュール形成で構成されている。各印刷ユニット2は、制御通信をするためのインターフェースである接続部8および送受信ユニット16と、モジュールの特性を含む、読取り可能かつ書込み可能な記憶装置11と、他のモジュールおよび/または機械の上位の制御部と通信する役目をし、記憶装置11と作用接続した通信装置であるバス供給システム9および送受信ユニット16とを備えている。モジュール2は、上位の制御部10とは関係なく、他のモジュール2とデータを交換することが意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被印刷体を処理する機械のためのモジュール、たとえば枚葉紙輪転印刷機のためのモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
このような枚葉紙輪転印刷機は特許文献1から公知であり、給紙装置と、排紙装置と、これらの間に配置された、実質的に同じ構造をもつ、枚葉紙輪転印刷機の個々の印刷ユニットをなす複数の基本モジュールとから構成されている。これらの印刷ユニットは、特許文献1では、いわゆる多機能モジュールを追加することができる基本モジュールと呼ばれている。多機能モジュールは、枚葉紙の進行方向に見て最後の基本モジュールと排紙装置との間に配置され、このような多機能モジュールは、さまざまな追加装置を収容するために設けられる。このような追加装置は乾燥機、粉かけ装置、打抜き装置などであってよい。個々の基本モジュールの駆動、ならびにその制御に関して、特許文献1からは何の示唆も読み取ることができない。特に、個々の基本モジュールを枚葉紙輪転印刷機の形態に並べた後、機器編成のためにどのような調整が行われるのかが特許文献1からは明らかでない。
【0003】
特許文献2より、モジュール形式で構成されたコピー機が公知である。このコピー機は、コピー機の個々のコンポーネントを認識することができるコンピュータ(CPU)を備えている。このシステムは、認識されたコンポーネントに応じてそのシステムソフトウェアを適応させ、それに応じて相応の機能性を提供することができる。このシステムはいわゆる「プラグアンドプレイ」の考えに基づいており、したがって、ユーザーはコンポーネントをコピー機に差し込むだけでよく、コピー機の機器編成は自動的に行われる。個々のモジュールは、コピー機の中央のCPUに伝送することができる能力や機能の記述を有している。それにより、CPUは、個々のモジュールがコピー機に差し込まれた後、どのようなコンポーネントが追加または取外しされたのかを認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開明細書1147893A2
【特許文献2】欧州特許出願特許明細書9747790B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、モジュール形式で構成された枚葉紙輪転印刷機の機器編成と使用開始について何も記載されていないのに対して、モジュール形式で構成された特許文献2のコピー機は、中央処理による取組を追求している。個々のモジュールの認識は、このコピー機では中央のコンピュータ(CPU)だけによって行われ、それに対して個々のモジュールは相互に通信することができない。したがって、このコピー機は、コンポーネントを追加、挿入することができるという意味でモジュール形式と呼べるにすぎない。複写ユニットと中央の制御コンピュータ(CPU)とを備える本来のコピー機は変更することができず、付属部品を追加できるだけである。しかしこのような中央処理による取組は、モジュール形式の枚葉紙輪転印刷機の機器編成の場合、変更不能な中央のユニットが存在していないので不十分であることが判明している。というのも、いずれの印刷ユニットまたはその他のモジュール形式のユニットも、原理的に、機械でどのような位置でも占めることができるからである。
【0006】
そこで本発明の目的は、このようなモジュールで構成される枚葉紙輪転印刷機の自動的な使用開始と機器編成とを可能にする、枚葉紙輪転印刷機のためのモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、請求項1によって達成される。本発明のその他の有利な実施態様は、従属請求項および図面から読み取ることができる。
【0008】
従来技術と比べたとき、本発明によるモジュールは、読取り可能かつ書込み可能な記憶装置を備えているという点に特徴があり、しかも、この記憶装置は通信装置とも接続されている。通信装置は、上位の機械制御部とデータを交換したり、他のモジュールと直接的な情報交換を行う役目をする。記憶装置と通信装置によって、各々のモジュールを枚葉紙輪転印刷機における位置に応じて相応に機器編成することができ、しかも、この両方のユニットは個々の印刷ユニットモジュールの制御も引き受けることができる。それにより、新たなモジュールを既存のモジュールに付け加えたり、もしくは既存のモジュールの間に挿入したり、あるいは取り外したりするだけで、枚葉紙輪転印刷機を任意に拡張したり縮小することができる。そして、そのつど実際に存在しているモジュールが、機能性のある枚葉紙輪転印刷機を成り立たせるために、通信装置を介してそれぞれの能力に関して情報を交換したり、個々のモジュールの位置に応じて相応の調整をモジュール内部で行うことができる。
【0009】
本発明では、通信装置が、印刷機を機器編成するために、他のモジュールとデータを交換するのに適していることが意図される。個々のモジュールにある通信装置は、印刷機の運転時に個々のモジュールを制御するために必要なばかりでなく、特に、印刷機の使用開始と機器編成に関与するのが好ましい。この場合、複数のモジュールからなる印刷機を自動的に機器編成することができるように、使用開始のためにデータを直接他のモジュールへ伝送したり、あるいは受信をするために通信装置を利用することができる。特に、個々の印刷ユニットモジュールの位置を相応に通信することができ、それにより、操作員が個々の印刷ユニットの位置を手作業で入力しなくてもよくなる。さらに、それぞれのモジュールは、上位の制御部に関わりなく、通常の印刷動作中に相互にデータを交換することができ、そのようにして、個々の印刷モジュールの正確な角度の同期化を保証する。
【0010】
さらに、モジュールが少なくとも1つの標準化された搬送インターフェースを有していることが意図される。複数のモジュールを組み合わせて機能性のある1つの枚葉紙輪転印刷機にするためには、または、たとえばモジュール形式で構成された折り機などその他の枚葉紙処理機械にするためには、処理されるべき枚葉紙を1つのモジュールから次のモジュールへ問題なく引き渡せることが必要である。モジュールをフレキシブルに利用できるようにするためには、このような個々の枚葉紙を、隣接するモジュールへ問題なく渡すことができなければならない。その役目を果たすのが、たとえば、隣接するモジュールに連結したときにそのくわえづめとの間で枚葉紙の引渡時に衝突が起こらないように枚葉紙を受けるためのくわえづめが配置された紙渡し胴で構成することができる、標準化された搬送インターフェースである。この場合、当然ながら、隣接するモジュールの胴の判型幅もそれぞれ一致していなくてはならない。このように標準化された引渡は、当然ながら印刷ユニットモジュールだけでなく、同じく標準化された搬送インターフェースを有している給紙装置、排紙装置、塗工ユニット、乾燥機、および仕上処理モジュールでも行われる。したがって、これらのモジュールを任意の順序で相前後して配列し、既存の標準化された搬送インターフェースを介して、シート状の被印刷体を隣接するモジュールへ渡すことができる。搬送インターフェースは枚葉紙の受取にも枚葉紙の引渡にも利用することができ、あるいは、枚葉紙の受取と枚葉紙の引渡のために、2つの別々のインターフェースが設けられていてもよい。このような搬送インターフェースは、枚葉紙を1つの印刷ユニットモジュールから受け取って別のモジュールに渡す紙渡しドラムとして構成されるのが好ましい。1つのモジュールごとに2つを超える搬送インターフェースが設けられていてもよく、それにより、たとえばY方向の機器編成を行えるようにするために、1つのモジュールに2つを超えるモジュールを連結することができる。このような機器編成では、モジュールの2つのインターフェースで枚葉紙が受け取られて、第3のインターフェースを介して他のモジュールに渡される。
【0011】
さらに、モジュールがエネルギー供給のための少なくとも1つのインターフェースを有していることが意図されていてよい。このインターフェースも標準化されているのが好ましく、それにより、異なるモジュールの間でエネルギー供給を問題なく行うことができる。エネルギー供給が電気で行われる場合、各々のモジュールは、個々のモジュールを相互に接続することができる電気コネクタを有している。電気接続は、個々のモジュールを相互につなぐ電気回線を介して行なうことができ、または、それぞれのモジュールのコネクタが、モジュールを互いに直接差し込むことができるように構成される。あるいは、それぞれのモジュールは隙間なく位置しているか、もしくは少なくともごくわずかな間隔で相並んで位置しているので、個々のモジュールの間で非接触式の送電も問題なく可能である。非接触式の電力供給は、誘導式または容量式に実現することができる。
【0012】
モジュールが独自の駆動モータを有することが意図されるのが好ましい。この駆動モータは電動モータであってよく、あるいは、油圧式または空気圧式の駆動装置を用いることもできる。モジュールが独自の駆動モータを備えていれば、このモジュールは、モジュールのエネルギー供給のための接続部と、制御のための接続部しか必要としない。そうすれば、たとえば従来式の枚葉紙印刷機のように個々の印刷ユニットモジュールの間で閉じた歯車列を成立させるために、個々のモジュールを駆動連結装置によって相互に連結しなくてもよくなる。各々のモジュールにある独自の駆動モータによって、これらのモジュールが組み合された枚葉紙輪転印刷機は自動的に個別駆動装置を備えることになる。それにより、各モジュールを配列するときに最高の柔軟性が生まれる。シート状の被印刷体は、モジュールからなる機械を通って正しい見当で運ばれなくてはならないので、モータを相応に制御すれば、見当の狂いが生じたときに独自の駆動モータによってこれを修正することができる。さらに、機械が正しい見当ですぐに印刷を始められる位置へと駆動モータがそれぞれのモジュールを動かすことによって、モジュール形式の機械の使用開始を容易にするために駆動モータを利用することができる。
【0013】
独自の駆動モータを備える実施態様に加えて、またはその代わりに、モジュールが少なくとも1つの駆動インターフェースを有することが意図されていてよい。以下において駆動インターフェースとは、個々のモジュール同士の間で駆動トルクを伝達することができる装置を指す。このようにして、各モジュールを駆動側で互いに同期させることが機械的にも可能となる。さらに、独自の駆動モータを備えておらず、その代わりに隣接するモジュールによって一緒に駆動されるモジュールも利用することもできる。この場合、モジュール形式で構成された機械に、独自の駆動モータを備えるモジュールを1つしか設けなくてよいことさえ考えられ、このモジュールが、駆動インターフェースを介して、独自の駆動モータを備えていない他のすべてのモジュールを駆動する。
【0014】
駆動インターフェースは、継手を備えるシャフト端部であることが意図されるのが好ましい。そのようにして、駆動インターフェースを備えるモジュールを継手によって互いに機械的に連結することができ、この場合、純粋に嵌合による継手に代えて、摩擦力による継手、たとえば電磁継手を用いることができる。継手が自動的に作動するのが好ましく、すなわち、あるモジュールが駆動インターフェースによって他のモジュールと連結されたとき、継手がすぐに締結されるのが特別に好ましい。別の可能性としては、機械が機器編成されたときに初めて継手が締結される。これは、電気式、油圧式、または空気圧式に制御される継手の場合には、モジュールの制御ユニットを通じて行うことができる。
【0015】
本発明の別の実施態様では、自動的な認識・機器編成機能が設けられることが意図される。個々のモジュールが通信装置を介してデータを交換できるようになるとすぐに、個々のモジュールを互いに適合させ、機械におけるそのつどの位置に応じて相応の機能を割り当てる認識・機器編成プログラムを自動的に進行させることができる。さらに、このような認識・機器編成プログラムは、当然ながら、操作員がボタンを押して指令することによって始動させることもできる。いずれの場合でも操作員は機器編成を自分で行わなくてすむ。その作業は、操作員に代わって、モジュール形式の機械が引き受けるからである。自動的な認識・機器編成プログラムが実行された後、機械を運転の段階へと進めることができる。
【0016】
さらに、モジュールが、データバスシステムへ接続するための接続部を有していることが意図されていてよい。データバスとしては、たとえば個々のモジュールが相互に通信することを可能にするCANバスが考慮の対象となる。その場合、CANバスは個々のモジュールと上位のホストコンピュータとの間で、個々のモジュールを駆動する回転数や角度の目標値を設定することができる制御バスとしての役目もすることができる。個々のモジュールが相互に同期するのを保証するために、バスシステムによって正確なシステム時間を伝送することもできる。それと同時に、隣接する印刷ユニット間の実際値の差異を補償するため、もしくは変動を最小に抑えるために、隣接するそれぞれの印刷ユニットの間でデータバスシステムを介してデータを交換することもできる。そのようにして、隣接モジュールの最新の実際値を考慮したうえで、隣接するそれぞれの印刷ユニットを上位の機械制御部によって別々に制御することができる。
【0017】
さらに、モジュールが、インキまたは湿し水を運ぶための接続部を有していることが意図されるのが有利である。特に、個々のモジュールのどのインキ装置でも必要とされる湿し水においては、すべてのモジュールへ中央からの供給を可能にするのが有意義である。この目的のために、個々のモジュールは、1つの印刷ユニットから次の印刷ユニットへ湿し水を運ぶことを可能にする配管接続部を有している。このようにすれば、1つの印刷ユニットモジュールが湿し水供給部に接続されているだけでよい。この印刷ユニットモジュールから、他の印刷ユニットへ湿し水を運ぶことができるからである。
【0018】
本発明の特別に有利な実施態様では、モジュールがワイヤレス送受信ユニットを有していることが意図される。個々のモジュールがワイヤレス送受信ユニットを備えていれば、データ伝送のための電気接続部をたとえば安全性に関連する領域にと最小限に抑えることができ、あるいは電気接続部を全面的になくすことができる。その場合、個々のモジュール同士の間でデータが無線でのみ伝送されるので、高いコストをかけて個々の印刷ユニット同士を相互にケーブルで接続する必要がなくなる。ワイヤレス送受信ユニットはさまざまな技術で製作されていてよく、これらの技術が相互に組み合されていてもよい。1つの可能性は、たとえばすべてのモジュールにW−LAN技術またはブルートゥース技術を設け、そのようにして、各モジュール相互のワイヤレス通信を可能にすることである。これ以外のあらゆる種類のデータ無線も、それが十分に高いデータ伝送速度の要件を満たしていれば原則として適している。モジュールを制御するためのタイムクリティカルなコマンド、たとえば同期化コマンドなどもワイヤレス接続を介して伝送される場合、データ無線は、リアルタイム伝送に関する要件も満たさなくてはならない。この場合、送受信ユニットが衛星ナビゲーション装置(GPS)を含んでいてもよい。この解決策の変形例として、従来式の配線を利用する場合には衛星ナビゲーション装置だけが設けられていてもよい。衛星ナビゲーション装置は個々のモジュールの位置を突き止める役目を果たし、それにより、上位の機械制御部による機械全体の機器編成を可能にする。
【0019】
さらに、モジュールが空気圧システムまたは油圧システムとの接続部を有していることが意図される。各々のモジュールに電気駆動装置を設けるという選択肢に加えて、空気圧式または油圧式の駆動装置も用いることができる。多くの場合、印刷ユニットモジュールのいくつかのアクチュエータは、たとえば版を交換する場合などに空気圧で作動するので、このようなアクチュエータに圧縮空気を供給できなければならない。この目的のために、モジュールは、個々のモジュールへ圧縮空気または作動油を提供できるようにするために、空気圧システムまたは油圧システムとの接続部を有している。それにより、ただ1つの供給源から複数のモジュールに供給を行うことが可能であり、したがって各々のモジュールは独自の空気圧生成システムまたは油圧生成システムを必要としない。
【0020】
さらに、モジュールが、取り違え防止策が講じられた通信配線用の接続部を少なくとも1つ有していることは、たいへんな利点である。運転するときや機器編成のときに、制御回線の誤った配線による不具合が起こらないようにするために、少なくとも通信配線用の接続部は、取り違え防止策が講じられた接続部、たとえば形状が異なる接続部を備えているのが有意義である。それにより、1つのモジュールの各々の接続部を、他のモジュールの適合する接続部としかつなぐことができないので、個々のモジュール間の接続が誤った接続にならないように防止される。電気コネクタが取り違え防止策の講じられた構造になっていれば、個々のモジュールの間の誤接続を防ぐことができるので、操作員にとって、印刷機を複数のモジュールから構成するのが容易になる。それにより、誤った接続によって機械が損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】3つのモジュールで構成された印刷機を示す図である。
【図2】モジュール形式の印刷機の配線図である。
【図3】モジュール形式の印刷機を機器編成する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1には、それぞれがモジュールである3つの印刷ユニット2からなる、モジュール形式で構成された印刷機1が示されている。図1に示すモジュール2は、本例では同一の構造となっているが、そのことが絶対に必要というわけではない。重要なのは、モジュール2が互いに互換性のあるインターフェースを備えているということだけである。各々のモジュール形式の印刷ユニット2は、版胴6に印刷インキを着けるインキ装置3をそれぞれ備えている。版胴6は、搬送胴4の上に載ったシート状の被印刷体を印刷するブランケット胴5と作用接続している。このように、各々の印刷ユニット2は、緊急時には単色で印刷をする個々の印刷機1としても機能する、1つの自立したモジュールである。さらに、モジュール2は、モジュール2のすべての胴およびその他の回転部品を駆動するか、または電気補助ユニットによる補助をうける電気駆動モータ7をそれぞれ有している。この補助モータ7は、たとえばインキ装置3を別個に駆動することができる。最後に、図1の印刷ユニット2は、印刷ユニット2がたとえば電気エネルギーの供給をうけることができるための多数の接続部8を有している。さらに、印刷ユニット2の空気圧式または油圧式のアクチュエータに供給を行う、空気圧システムの圧縮空気を供給する接続手段や、油圧システムの作動油を供給する接続手段が設けられていてよい。各々の印刷ユニットモジュール2は、各々の印刷ユニット2のすべての電気駆動装置7を制御する印刷ユニットコンピュータ11をさらに備えている。印刷ユニットコンピュータ11は、印刷ユニット内部のバス・供給システム9にさらに接続されており、そのため隣接する印刷ユニット2や上位の制御コンピュータと通信することができる。そのために接続部8は、さまざまな印刷ユニット2をバスシステム9を介して相互に組み合わせることができる、相応のデータインターフェースを有している。
【0024】
図1の実施形態では、さらに、印刷ユニットコンピュータ11に接続された送受信ユニット16が、各々の印刷ユニット2に設けられている。この送受信ユニット16はワイヤレス式に作動し、同じく個々のモジュール2同士を相互に接続したり、上位のコンピュータと接続する役目を果たす。この場合、個々の印刷ユニット2の位置、および個々の印刷ユニット2の順序を調べるために、送受信ユニット16に衛星ナビゲーション受信機(GPS)も組み込まれていると有意義である。個々のモジュール2に関する位置情報は、特に、機械1の自動的な機器編成と使用開始のために利用することができる。あるいは、個々のモジュール2の間でワイヤレス接続を通じて行われる信号の進行時間の差異を、位置認識のために利用することもできる。各モジュール2の間の距離に応じて、異なる進行時間が生じるからである。そして、各モジュール2の間で検出された進行時間を論理的に組み合わせることで、モジュール2群からなる印刷機1の全体的な機器編成を推定することができる。
【0025】
個々の印刷ユニット2は、バス・供給システム9を介して、その回転数や角度の目標値を受けとり、あるいは、各々のモジュール2の印刷ユニットコンピュータ11において相応の目標値に換算される制御コマンドがバスシステム9を介して伝送される。さらに、バスシステム9は、正確なシステム時間(クロック)を個々のモジュール2に伝送する別個の配線を含んでいる。このシステム時間によって、すべてのモジュール2の電気駆動装置7の動作を仮想的な基準軸に同期させることが可能であり、このことは、たとえば16個という非常に多数のモジュールを備える長い機械1の場合に、振動を防ぐことにつながる。隣接する印刷ユニットの間のたとえば角度差を、他のコマンドとは別個に制御できるようにするために、個々の印刷ユニットはバスシステム9を介して相互にデータを交換することもできる。さらに、少なくともクリティカルなモジュール2では、チャネル上でのエラーを確実に認識することができる、いわゆるセーフティチャンネルがバスシステム9に組み込まれている。セーフティチャンネルは少なくとも2本のチャンネルで並行してデータを伝送し、それにより、伝送されるデータに誤りがないかどうかチェックすることができる。このような誤りが生じると、該当するモジュール2は、独自の印刷ユニットコンピュータ11または上位のホストコンピュータによって制御されながら安全な状態へと移され、たとえば停止させられる。さらに、アラームを作動させることができる。
【0026】
図2は、4つのモジュール2からなる、モジュール形式で構成された印刷機1の概略を配線図で示している。図2の配線図は、バス・供給システム9ならびに接続部8によりデータ回線12を介して相互に接続された4つの印刷ユニットコンピュータ11を示している。各印刷ユニットコンピュータ同士をつなぐこのデータ回線12は任意である。それに対して、印刷ユニットコンピュータ11と上位のホストコンピュータ10をつなぐデータ回線13は絶対に設けられていなくてはならない。というのもホストコンピュータ10は、バスシステム9を介して個々のモジュール2の動作を調製するからである。印刷ユニットコンピュータ11は、付属の出入力ユニット15によって個々の駆動モータ7を制御する。図2に示す駆動モータ7以外にも、さらに別のコンポーネント14を印刷ユニットコンピュータ11により制御することができる。この別のコンポーネント14は、たとえば、インキ装置3のための補助駆動装置、搬送胴4上のくわえづめを開くためのアクチュエータ、各胴の洗浄装置、あるいはその他のアクチュエータである。中央のホストコンピュータ10は別個の制御卓に格納されていてもよく、あるいは、特定のモジュール2に固定的にインストールされるか、もしくは交換可能なように差込可能に製作されていてもよく、それにより、ホストコンピュータを任意のモジュール2に差し込むことができる。ホストコンピュータ10は機械1の状態全般について責任を負い、すなわち機械1を始動させ、印刷プロセスを開始させ、印刷速度を制御し、緊急停止時に機械1を停止させる。ただし個々のモジュール2内の可動部品の正確な制御は、印刷ユニットコンピュータ11で局所的に行われる。
【0027】
印刷機1の運転を始めたいときは、ホストコンピュータ10がまず個々のモジュール2に問い合わせを行う。印刷ユニットコンピュータ11に保存された、付属のモジュール2の特性に関するデータがホストコンピュータ10に送られ、それにより、ホストコンピュータは印刷機1の機器編成を決定することができる。このようなデータには、たとえばモジュール2の種類や特性が含まれる。ホストコンピュータ10は、データの問い合わせによって全体的な機器編成を算出し、たとえば印刷ユニット/モジュール2の個数を決める。モジュールの個数は、きわめてさまざまであってよい。たとえば図1に示すある日の印刷機1は3つの印刷ユニット2で構成し、翌日には図2のように4つの印刷ユニット2で構成することができる。印刷機1が始動時にそのつど最新の機器編成を確定するので、印刷機1は、ある日には自動的に3色用の機械として作動し、別の日には4色用の機械として作動する。モジュール2は、図1と図2で説明した印刷ユニット2以外にも、給紙装置、排紙装置、塗工ユニット、乾燥機モジュール、または打抜き等の後処理ユニットであってよい。また、特定の印刷ユニット2が他の印刷ユニット2とは別の構成になっていてもよく、たとえば1つの印刷ユニットがDI画像付けユニット(印刷ユニット内部での版の画像付け)を備えていてよい。その場合、バスシステム9が高速バスシステムとして設計されていれば、画像付けに必要なデータをこれを介して伝送することができる。この高速バスシステムを介して、印刷前段階から印刷ユニット2内部のDI画像付けユニットへとデジタルデータを直接送ることができる。
【0028】
図3には、相前後して一列に設置された、3つの印刷ユニットコンピュータ11を備える3つのモジュール2からなるモジュール形式の印刷機1の、使用開始時における機器編成プロセスが示されている。さらに、たとえば取り違え防止策が講じられた接続部によって、相応に短い電気回線との関連で各モジュールが互いに正確に接続されることが保証され、特に、配線時にモジュールを飛び越してしまわないことが保証される。番号付けプロセスで、各々の印刷ユニットコンピュータ11の出力部では入力部に対して2進数が1だけ増やされる。このようにして、印刷ユニット2が相前後して続けて番号付けされるので、ホストコンピュータ10によって印刷ユニットを一義的に識別することができ、それぞれの印刷ユニット2の位置もホストコンピュータ10に知られることとなる。
【符号の説明】
【0029】
1 印刷機
2 印刷ユニット
3 インキ装置
4 紙渡し胴
5 ブランケット胴
6 版胴
7 駆動モータ
8 接続部
9 バス・供給システム
10 ホストコンピュータ
11 印刷ユニットコンピュータ
12 印刷ユニットコンピュータをつなぐデータ回線
13 印刷ユニットコンピュータとホストコンピュータをつなぐデータ回線
14 追加のコンポーネント
15 出入力ユニット
16 送受信ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被印刷体を処理する機械(1)のためのモジュールであって、制御通信をするためのインターフェース(8,16)と、モジュール(2)の特性を含む、読取り可能かつ書込み可能な記憶装置(11)と、他のモジュール(2)および/または前記機械(1)の上位の制御部(10)と通信する役目をし、前記記憶装置(11)と作用接続した通信装置(9,16)とを備える、シート状の被印刷体を処理する機械のためのモジュールにおいて、
前記モジュール(2)は、前記上位の制御部(10)とは関係なく、他のモジュール(2)とデータを交換することが意図されていることを特徴とする、シート状の被印刷体を処理する機械(1)のためのモジュール。
【請求項2】
前記通信装置(9,16)が、前記機械(1)を機器編成するために他のモジュール(2)との間でデータを交換するのに適している、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記モジュール(2)が少なくとも1つの標準化された搬送インターフェース(8)を有している、請求項1または2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記モジュール(2)がエネルギー供給のための少なくとも1つのインターフェース(8)を有している、請求項1から3までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項5】
前記モジュール(2)が独自の駆動モータ(7)を有している、請求項1から4までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項6】
前記モジュール(2)が少なくとも1つの駆動インターフェース(8)を有している、請求項1から5までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記駆動インターフェース(8)が継手を備えるシャフト端部である、請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
自動的な認識・機器編成機能が存在している、請求項1から7までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項9】
前記エネルギーインターフェース(8)として、前記モジュールに電源コンセントが取り付けられている、請求項4から8までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項10】
前記モジュール(2)が、データバスシステム(9)へ接続するための接続部(8)を有している、請求項1から9までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記モジュール(2)が、インキまたは湿し水を運ぶための接続部(8)を有している、請求項1から10までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項12】
前記モジュール(2)がワイヤレス送受信ユニット(16)を有している、請求項1から11までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項13】
前記モジュール(2)が衛星ナビゲーションユニット(16)を有している、請求項1から12までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項14】
前記モジュール(2)が空気圧システムまたは油圧システムへの接続部(8)を有している、請求項1から13までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項15】
前記モジュール(2)が、取り違え防止策が講じられた、通信回線(9)のための少なくとも1つの接続部(8)を有している、請求項1から14までのいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のモジュールを少なくとも2つ備えている印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98575(P2011−98575A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36921(P2011−36921)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【分割の表示】特願2004−357194(P2004−357194)の分割
【原出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】