説明

シート状又はタブレット状の成形食品の製造方法

【課題】果実、茶葉、野菜などの粉体またはエキスを食品素材としたもので、生産性と食感、品質保持性にすぐれた、シート状又はタブレット状の成形食品の製造方法を提供する。
【解決手段】食品素材にトレハロース(望ましくは、25重量%以上)と澱粉(望ましくは、0.5〜10重量%)と食物繊維とを混合撹拌して生地とし、当該生地よりシート状又はタブレット状の成形食品を製造する。トレハロースの低溶解性・起晶性と乾燥蒟蒻粉末などの食物繊維の吸水・糊化の性質の組合わせにより、塑性・柔軟性及び成形後の安定性及び摂食時の口腔内での速やかな溶解性を併せ持つ食品が出来上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実、茶葉、野菜などの粉体またはエキスを食品素材とした、口溶けのよい食感のシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状食品又はシート状食品同様に可塑性の固形物を粒状に成形したタブレット状の食品は携帯性に優れ、扱いが容易という利点を有する。さらに液体やペースト状、粉状の食品を成形することにより、これを食する時に咀嚼行為が伴う。咀嚼は口腔内の刺激による消化液分泌の促進、脳への刺激による血流量の増加や覚醒、リラックス効果などを伴い、顎の筋肉の強化にもつながる。特に唾液中に含まれるホルモンは老化防止に効果があるとして、その機能性が注目されている。近年の食生活においては柔らかい食品が好まれる傾向にあり、咀嚼の機会が減り、あらためて咀嚼の意義が問われている。
【0003】
シート状食品を例にとると、従来のシート状食品の製造法は、大きく2通りに区別できる。すなわち、(1)ペースト状のまたは液状の食品を流延し、これをフィルムまたはシート状に乾燥させる方法、(2)可塑性の生地をシート状に成形する方法である。
【0004】
前者の(1)の方法は、素材をゾルまたはそれに近い状態で板状の上にフィルム上に流延した後、乾燥させる。流延させるときに溶液の粘性が高すぎると製品の外観が損なわれるため、溶液は滑らかな流延性を確保できる程度の水分を含有してなくてはならない。そのため、製品仕上がりまでに加熱濃縮や乾燥によって水分を除去する必要があり、製造に伴う設備・時間・コストを要する。乾燥時間は水分を蒸発させる必要性からシートの厚さを増すとそれだけ乾燥時間を長く必要とする。
【0005】
製品の食感向上や品質保持を目的として、例えば、特許文献1に開示されているようにトレハロース等の糖質を添加する場合があるが、その場合、添加量は溶液の溶解量を超えてはならず、さらに乾燥工程での結晶化によって製品の外観や食感を損なわない範囲でなければならない。またこの方法はシート状成形にかぎられており、タブレット状の形態に成形することは困難である。
【0006】
後者の(2)の方法は、通常、加水した小麦粉や澱粉にその他の素材を練りこんで調製した生地をローラ圧延によってシート状にするものである。この方式は麺の製造等で一般的に行われており、簡単な設備で製造できる。必ずしも乾燥工程を必要とせず、必要に応じて乾燥させる場合でも生地の水分量が少ないため、(1)の方法に比べ乾燥時間は短くて済む。また、シートの厚さはローラー対のクリアランスを調整することにより容易に変更できる。また、生地に可塑性があるため圧延や切断などの工程を組み合わせることによりタブレット状にも成形できるなど応用範囲が広い。
【0007】
このように(1)の方法に比べ製法上の利点が多いが、生地に澱粉を用いることによって、「こしの強さ」などに表現される弾力を付与できるが、食した時の口内での溶解性に劣り、場合によっては歯に付着するなどの欠点がある。さらに、溶解にすぐれたα化された澱粉を使用しても長期時間保存すると劣化し、舌触りが悪くなるなどの点を考慮する必要がある。また、澱粉とあわせる食品の酸度によっては澱粉の固化に悪影響を与える場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3759018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、生産性と食感、品質保持性にすぐれた、可塑性の生地よりシート状又はタブレット状の成形食品を製造する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明請求項1に係る発明は、食品素材にトレハロースと澱粉と食物繊維とを混合撹拌して生地とし、当該生地よりシート状又はタブレット状の成形食品を製造することを特徴とするシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の大きな特徴は、トレハロースの起晶性と食物繊維の吸水性および吸水時の増粘性に着目した点にある。 ローラによる圧延成形可能な生地は通常、麺などのように澱粉に加水したものやガムベースを用いたチューイングガムのような可溶固形分の少なく塑性に優れた素材からなるものが一般的である。糖質などの可溶性分が多いと食した時の溶解性がよく、スッキリ感があるが、常温では生地に保形性がなく、べとつくなどしてローラ部に付着するため、成形には適さない。したがって、常温でローラ圧延によって成形しうる食品はガム菓子のように飲みこまずに噛むことを楽しむものであるか、麺のように温水で処理してから食するものである。また、そのまま食することがあっても澱粉の性質上、口溶けの良いものではなく、歯に付着するなどの問題がある。
【0012】
本発明は、主原料を澱粉ではなくトレハロースもしくは一部を他の糖質におきかえたものとし、かつ食物繊維と併用することにより、ローラによる圧延などの成形が可能であり、溶解性を有するシート状をはじめとする成形食品などの製造を可能にするものである。
【0013】
トレハロースの特徴は他の糖質吸湿性が低く、水への溶解性が低い、また結晶化しやすい点にある。そのため、適量のエキスやペーストなど水分を含有する素材にトレハロース結晶を配合すると溶解量を超える分は結晶として残る。しかも、吸湿性が低いことから、成形後も潮解することがない。さらにトレハロースは甘味度が蔗糖の45%と低く、清涼感があるため配合量を増やしても製品の味に与える影響が少ないことも利点である。
【0014】
生地のベースをトレハロースにすることにより、口どけを改善できる。しかも、トレハロースを微粉末として配合すれば、工程の終始にわたり、そのまま微細な結晶として残るため、生地を溶液として乾燥し流延させる時のように、結晶化の防止を目的として配合量を制限する必要がない。むしろトレハロースの配合量を増やせばそれだけ口溶け感やスッキリ感が増し、良好な製品となる。
【0015】
マルチトールもトレハロースと同様、起晶性が高いため粒状ガムの糖衣として利用されている。しかし、ローラ圧延するための生地として配合すると、キャンディーのように生地が硬くなる傾向にあり、成形性、特に生地の可塑性を付与するにあたってはトレハロースの方が優れている。しかし、生地の固さを調整するためにトレハロースの一部を固くするためにはマルチトールを、柔らかくするためにはソルビトールで適度に置き換えることができる。
【0016】
食感すなわち、口腔内での溶解性を考えると、澱粉の量は10重量%以下、更に望ましくは5重量%以下がよいが、それ以上、トレハロースに置き換えると、潮解はしないものの生地が柔らかくなりベトツキがみられるようになる。澱粉の量が2.5重量%未満になると食感はかなり改善され、澱粉の質感はほとんど感じられないが、成形も困難になる。
【0017】
そこで、蒟蒻粉末、セルロース、寒天などの食物繊維を併用する。食物繊維は高い吸水性を有し、水または溶液に接すると構造内にこれを取り込み膨純し、糊状になる性質を有する。食物繊維を水分量に応じて配合することにより、澱粉量を5%重量以下になるまで置き換えてもトレハロースによる保形性が維持される。食物繊維の併用によって、澱粉を0.5重量%にまで減らすことが可能になるとともに、生地に澱粉を主原料とした時のような弾力性を付与できる。
【0018】
なお、食品素材としては、各種果実、野菜などのエキスなどの液体、ペースト、食品粉末、機能性素材が例示できる。また食物繊維としては、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、キチン、蒟蒻、寒天、タマリンドガム、グアーガム、サイリウムシードガム、ペクチンが適する。
【0019】
本発明請求項2に係る発明は、食品素材にトレハロース、澱粉及び食物繊維を混合撹拌して生地とするトレハロースを25重量%以上、かつ澱粉を0.5〜10重量%とすることを特徴とする請求項1に記載のシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法を提供する。
【0020】
ここで、トレハロースの量は食品素材の量により異なり、食品素材の量が多いとトレハロースの量は少なくて良く、それが少ないとトレハロースの量は比較的多くすることになる。いずれにしても、上述のそれぞれの範囲内で適宜配分を替えて使用することができる。
【0021】
本発明請求項3に係る発明は、前記食物繊維は、蒟蒻、セルロース、ヘミセルロース、寒天、タマリンドガム、グアーガム、サイリウムシードガム、ペクチンなどの不溶性又は水溶性食物繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法を提供する。
【0022】
本発明請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3において、食品素材にトレハロース、澱粉及び食物繊維に加えて、糖質、増粘剤、ゲル化剤、甘味料、酸味料、調味料、色素、香料、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどのファイトケミカル、コラーゲンやヒアルロン酸などの高分子物質その他の機能性素材のいずれか一つ以上を使用することを特徴とするシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、エキスや粉末、ビタミンなどの機能成分など有用な成分を固型化し、さらにシート状又はタブレット状という食べやすい形態にすることができる。また摂食時における適度な噛みごたえと口腔内での溶解性に優れていることからこの形態の食品の利用機会を拡大するものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のシート状食品の製造方法ならびにそれらの性質について、具体的な実験例を用いて詳しく説明する。
(実験1)シートの成形性・食感に及ぼすトレハロースおよび澱粉含量の影響
シートの成形性、食感に及ぼすトレハロース含量および澱粉含量の影響を調べるためシートを以下のように調製した。市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、高純度含水結晶トレハロース微粉((株)林原商事販売 商品名「トレハ」微粉)と澱粉を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機によって厚さ1.8mmのシート状に成形した後、一晩、50℃の恒温乾燥機内に入れて、適度な硬度を与えるため乾燥した。各配合の
生地のローラ圧延時のベトツキや、製品時の食感、特に口腔内での溶解性について調べた結果を表1に示す。表1中の%表示は重量%であり、以下の表も同様である。また、ソルビトールは食感を柔らかにする物質で、梅エキスとともに本発明の食品素材に該当する。以下の実験にても同様である。
【0025】
予想したとおり、溶解分しきれないトレハロースは結晶として残り、ペースト状となって生地を形成した。トレハロース含量が多いほど、口腔内での溶解性が良く、清涼感がある傾向を確認した。しかし、トレハロース単体または澱粉の量が少ないと生地が固まらずにべとつき、成型できる状態にならなかった。澱粉の量を増やすと成型性は改善されるものの、口腔内での溶解時に澱粉特有の粘りが感じられた。
【0026】
【表1】


(実験2)シートの成形性に及ぼす糖質の種類の影響
シートの成形性、食感に及ぼすトレハロース含量および糖質の影響を調べるためシートを以下のように調製した。市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、ショ糖、キシリトール、マルチトール(いずれも市販)と澱粉を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機による成形が可能かどうかを調べた。
【0027】
その結果、表2に示すように、いずれの糖質もベトツキがある、硬すぎるなどの欠点があり、成形には適さなかった。
【0028】
【表2】


(実験3)シートの成形性・食感に及ぼすトレハロースおよび蒟蒻加工品含量の影響
市販されている蒟蒻加工品は水飴、乾燥蒟蒻粉末、澱粉からなる粉末であり、溶液を吸収し約2.6倍に膨潤する性質を有する。この蒟蒻加工品を適量配合することにより、蒟蒻の繊維構造内に溶液をとりこみ膨潤することにより、固形化を促進し、ベトツキの抑制を意図したものである。
【0029】
シートの成形性、食感に及ぼすトレハロース含量および蒟蒻加工品の影響を調べるためシートを以下のように調製した。市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、高純度含水結晶トレハロース((株)林原商事販売 商品名「トレハ」)と蒟蒻加工品(三栄源エフ・エフ・アイ(株)販売 商品名「サンスマート400」)を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機によって厚さ1.8mmのシート状に成形した後、一晩、50℃の恒温乾燥機内に入れて、適度な硬度を与えるため乾燥した。各配合の生地のローラ圧延時のベトツキや、製品時の食感、特に口腔内での溶解性について調べた。
【0030】
結果を表3に示す。蒟蒻加工品を5%〜20%、トレハロースを50%〜65%に配合することにより、適度な硬さと柔軟性を有し、口腔内での溶解性に優れ、清涼感を伴う従来にはないシート状食品を得た。表3における○、△、×の意味は表1におけると同様であり、他表においても特記のない限り同様である。
【0031】
【表3】


(実験4)シートの成形性・食感に及ぼすトレハロースおよびソルビトール含量の影響
実験3の結果から食感に影響を及ぼさない蒟蒻加工品の最大量20%を基準とし、トレハロースの一部をソルビトール粉抹で置き換える試験を行った。市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、これに対し、蒟蒻加工品(三栄源エフ・エフ・アイ(株)販売 商品名「サンスマート400」)20gと高純度含水結晶トレハロース((株)林原商事販売 商品名「トレハ」)及びD−ソルビトール(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「D−ソルビトール」)を合わせて50gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機によって厚さ1.8mmのシート状に成形した。各配合の生地のローラ圧延時のベトツキや、製品時の食感、特に口腔内での溶解性について調べた。
【0032】
結果を表4に示す。蒟蒻加工品を20%配合した場合、実験3のトレハロースを50%から25%にし、残り分の25%をソルビトールにおきかえても成形は可能であった。
【0033】
【表4】


(実験5)シートの成形性・食感に及ぼすトレハロース及び不溶性食物繊維含量の影響
実験2で供した蒟蒻と同様、膨潤性を有する不溶性食物繊維を用い、シートの成形性・食感に及ぼす影響を調べた。ここで用いる不溶性食物繊維(シトラスファイバー)はセルロース、ヘミセルロースを主成分とし、溶液を吸収して約22倍に膨潤する性質を有する。市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、澱粉(松谷化学工業(株)販売 商品名「パセリP」)2.5g及び高純度含水結晶トレハロース((株)林原商事販売 商品名「トレハ」)と不溶性食物繊維(大日本住友製薬(株)販売 商品名「ヘルバセルAQプラスCF-D/100」)を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機によって厚さ1.8mmのシート状に成形した後、一晩、50℃の恒温乾燥機内に入れて、適度な硬度を与えるため乾燥した。
【0034】
各配合の生地のローラ圧延時のベトツキや、製品時の食感、特に口腔内での溶解性について調べた結果を表5に示す。その結果、セルロースが0.05重量%の添加量でも、成型性と食感に優れたシート状食品を得た。
【0035】
【表5】


(実験6)シートの成形性・食感に及ぼす澱粉含量および不溶性食物繊維含量の影響
実験3で不溶性食物繊維(シトラスファイバー)の配合が良好な成績を得たことから、不溶性食物繊維(シトラスファイバー)を一定にし、澱粉の配合量を減らしたときに、成形性に与える影響を調べた。
【0036】
市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、澱粉(松谷化学工業(株)販売 商品名「パセリP」)2.5g及び高純度含水結晶トレハロース((株)林原商事販売 商品名「トレハ」)と不溶性食物繊維(大日本住友製薬(株)販売 商品名「ヘルバセルAQプラスCF-D/100」)を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、生地の成形性を判断した。その結果を表6に示す。不溶性食物繊維0.2重量%の添加によって、澱粉の配合量を減らしても成型可能な生地となった。
【0037】
【表6】


(実験7)シートの成形性・食感に及ぼす水溶性食物繊維及び澱粉含量の効果
実験3、実験4、実験5、実験6において蒟蒻、食物繊維(シトラスファイバー)をトレハロースと組み合わせることにより、良好な成績を得たことから、同様の吸水膨潤性を他の食物繊維についてもその効果を調べた。
【0038】
市販の梅酢エキス((株)紀州ほそ川販売 商品名「梅BX70」)20gにD−ソルビトール液(三菱商事フードテック(株)販売 商品名「ソルビット」)10gを添加して液分とし、澱粉(松谷化学工業(株)販売 商品名「パセリP」)及び高純度含水結晶トレハロース((株)林原商事販売 商品名「トレハ」)と寒天粉末(大日本住友製薬(株)販売 商品名「ウルトラ寒天」)またはタマリンドガム(大日本住友製薬(株)販売 商品名「グリロイド4S」)またはペクチン(大日本住友製薬(株)販売 商品名「H&FペクチンアミドCF010」)を合わせて70gとなるように混合したものを加え攪拌し、一定時間静置した後、ローラ圧延機によって厚さ1.8mmのシート状に成形した後、一晩、50℃の恒温乾燥機内に入れて、適度な硬度を与えるため乾燥した。
【0039】
各配合の生地のローラ圧延時のベトツキや、製品時の食感、特に口腔内での溶解性について調べた結果を表7に示す。その結果、不溶性食物繊維に加え水溶性食物繊維についても同様な効果が得られた。
【0040】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0041】
近年、食における咀嚼回数の減少が問題視されている中で、本発明による製品は有用な素材を咀嚼という、本来の行為によって摂取する機会を促し、健康に寄与するものであり、また口腔内で溶解することから幼児にも安心して与えることができ、嗜好性にも優れていることから、本製品を継続して利用することにより、顎の筋肉の健全な発育を促すことに寄与するものである。
【0042】
これは老齢者にも同様であり、特に義歯を使用している人に対しても、歯に付着せず、心地よく摂取することができ、咀嚼回数の減少を防ぎ、唾液をはじめとする消化液の分泌を促し、顎筋肉の老化を軽減するものである。またトレハロースや糖アルコールが製品重量の半分程度を占めていることも特記すべき事項である。トレハロースと糖アルコールは砂糖に比べ、摂食後の血糖値の上昇が緩慢であり、膵臓への負荷が少ない。
【0043】
本製品を食間に適度に摂取すれば空腹感を抑えることができ、生活習慣病や老化防止にも役立つものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材にトレハロースと澱粉と食物繊維とを混合撹拌して生地とし、当該生地よりシート状又はタブレット状の成形食品を製造することを特徴とするシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法。
【請求項2】
前記トレハロースを25重量%以上、前記澱粉を0.5〜10重量%とすることを特徴とする請求項1に記載のシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法。
【請求項3】
前記食物繊維は、蒟蒻、セルロース、ヘミセルロース、寒天、タマリンドガム、グアーガム、サイリウムシードガム、ペクチンなどの不溶性又は水溶性食物繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、食品素材にトレハロース、澱粉及び食物繊維に加えて、糖質、増粘剤、ゲル化剤、甘味料、酸味料、調味料、色素、香料、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどのファイトケミカル、コラーゲンやヒアルロン酸などの高分子物質その他の機能性素材のいずれか一つ以上を使用することを特徴とするシート状又はタブレット状の成形食品の製造方法。

【公開番号】特開2011−182783(P2011−182783A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24708(P2011−24708)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(596033174)株式会社紀州ほそ川 (9)
【Fターム(参考)】