説明

シート状物の延伸機

【課題】コンパクトな構成で円滑な延伸を高速で行うことのできる延伸機を提供する。
【解決手段】シート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備した無端リンク装置を設け、入口側スプロケットから平行状態と末広がり状態に配置されたガイドレールに案内されてシート状物を延伸させ、延伸後にシート状物を外して出口側スプロケットを通って入口側スプロケットに戻るシート状物の延伸機において、リンク装置の折尺部を構成するリンクプレートを回転自在に接続するジョイント用リンク軸の下方に各ガイドレールに案内されるリンク軸ホルダを設け、シート状物側のリンク軸ホルダの下端に一方のガイドレールの両側面を挟んで転動する複数対の横ローラを設けると共にシート状物側に掴み装置を設け、反シート状物側のリンク軸ホルダの下端に他方のガイドレールの両側面を挟んで転動する1対の横ローラを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等を延伸するシート状物の延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状物の延伸機の従来の一例を、特許文献1(特表2006−513069号公報)に示す。特許文献1には、フィルムを保持し、搬送し、そして延伸するための連続するグリッパーを使用して、縦方向および横方向に同時延伸するための延伸装置が示されている。グリッパーはレールによって支持されかつ案内されると共にグリッパー同士を一つに連結する無端チェーンによって前方に駆動され、無端チェーンは一つ以上のスプロケットによって駆動される。
【0003】
前記延伸装置は、延伸されるべきフィルムの両側に、可変離間距離の二つのレールに案内された無端チェーンを具備し、無端チェーンは垂直ピンを中心として互いに連結されたリンクの連続体からなる。グリッパーは二つのうちの一方のピンに連結されるかまたは二つのリンク間に設けられ、かつ二つのレールの第1レールに案内されてチェーンの一方の側に突出する。これに対し案内片は、グリッパー間の、二つのうちの一方のピンに連結されるかあるいは二つのリンク間に設けられる。また、案内片は上記二つのレールの離間距離の変更によって、チェーンの連続するリンクがほぼ一列に並ぶか、または他方で連続するグリッパー同士の間の距離を固定しまたは変更するよう互いに角度をなすように、二つのレールのうちの第2レールに沿って移動する。
【0004】
好ましくは、グリッパーはチェーンの連続するリンクの二つの垂直ヒンジピンのうちの一方を中心として連結された本体を有し、一方、案内片は、先のヒンジピン同士の間に配置されたチェーンの連続するリンクの他方の垂直ヒンジピンを中心として連結されている。
【0005】
間隔片が2つのレール間に配置され、これによってリンクがクランプ同士の距離を固定または変更するように構成されている。
【0006】
2つのレールの間隔が縮まったときチェーンの連続するリンクが一列に並んで最大幅となるが、これは、各グリッパー本体および各案内片が互いに接近するようにリンクとの連結点(ヒンジピン)を押すことで、一列に並ぶように構成されている。このようにリンクとの連結点を押すように作用するためには、各グリッパー本体および各案内片は、レールに対する姿勢が固定されていることが必須である。姿勢が変化してしまうと、リンクとの連結点を正確に押すことができなくなるからである。このため、各グリッパー本体および各案内片は、各レールの両側にそれぞれ2つのアッパーローラと2つのロアローラを備え、レールに沿って案内されるとき、姿勢が固定的に保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−513069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の延伸機では、各グリッパー本体および各案内片は共に、各レールの両側を挟む多数対のローラを介して案内されるため、レールに接触して移動するときローラが円滑に移動できない恐れがある。すなわち、多数対のローラによって各グリッパー本体および各案内片を、共に固定的な姿勢に規制しながら案内するので、各ローラが窮屈な状態で移動することになるためである。これは、円滑な延伸に悪影響を与え、かつ高速移動に適さないので、生産性の低下をきたす恐れがある。
【0009】
また、2つのレールが、サポートによって保持されており、各グリッパー本体と各案内片は共に、このサポートの上方と下方に離して位置させた多数のローラで各レールを挟むように構成される。したがって、レールの上下幅が大きくなると共に、各グリッパー本体および各案内片のレールとの係合構造が複雑で、グリッパー本体および案内片からなる移動部分の寸法、重量が大きくなり、装置が大形化してしまうと共に、高速移動に適さい。そして、サポートの上下のローラ群を合わせて移動させる際のローラの円滑な動きは一層困難となる。
【0010】
さらに、各グリッパー本体および各案内片がレール間に突出しており、両者の突出先端の間にリンクが連結されているため、リンクの長さ寸法が小さくなり、MD方向(フィルムの進行方向)の延伸幅を大きくできない問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑み、コンパクトな構成で円滑な延伸を高速で行うことのできる延伸機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するため、シート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備した無端リンク装置を設け、この無端リンク装置は折尺状に形成された複数個の等長リンク装置よりなり、入口側及び出口側のスプロケットにより駆動され、前記入口側スプロケットから送り出され進行方向に末広がり状態に並行して配置された複数の案内用ガイドレールに案内されてシート状物を延伸させ、延伸後にシート状物を外して前記出口側スプロケットを介して前記入口側スプロケットに戻るように構成されたシート状物の延伸機において、
前記等長リンク装置の折尺部を構成するリンクプレートを回転自在に接続するジョイント用リンク軸の下方に前記各ガイドレールに案内されるリンク軸ホルダを設け、シート状物側のリンク軸ホルダの下端に一方のガイドレールの両側面を挟んで転動する複数対の横ローラを設けると共にシート状物側に前記掴み装置を設け、反シート状物側のリンク軸ホルダの下端に他方のガイドレールの両側面を挟んで転動する1対の横ローラを設けたことを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記複数対の横ローラは隣合う同士のローラが重なるように上下にずらして配置されたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記リンク軸ホルダの下端にさらに、前記ガイドレールの上面に接触して転動する複数の縦ローラを設けたことを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記リンク軸ホルダに設けられた横ローラは、前記ガイドレールの上面に接触して移動する鍔部が形成されたことを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記ガイドレールに案内されるリンク軸ホルダに設けられた複数対の横ローラは、前記ガイドレールを挟んで対称に配置されたことを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記複数対の横ローラは、ガイドレールの同じ位置を両側から挟むように配置されたことを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記反シート状物側のリンク軸ホルダは、ジョイント用リンク軸が前記他方のガイドレールのほぼ真上に位置するように配置されたことを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記シート状物側のリンク軸ホルダはジョイント用リンク軸が前記一方のガイドレールのほぼ真上に位置するように配置されたことを特徴とする。
【0020】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記掴み装置を備えたリンク軸ホルダは、前記複数対の横ローラが一方のガイドレールに接触することにより掴み装置の姿勢が規制された状態でガイドレールに沿って案内されることを特徴とする。
【0021】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、前記掴み装置は一方のガイドレールに対してほぼ直角方向の姿勢を保って、案内されることを特徴とする。
【0022】
また、上記に記載のシート状物の延伸機において、反シート状物側のリンク軸ホルダーは、1対の横ローラによりガイドレールに対して姿勢が変化可能に案内されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コンパクトで軽量な構成で、シート状物の延伸を円滑で高速に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施例の延伸機の平面図である。
【図2】図1の延伸機の等長リンク装置の断面図である。
【図3】本発明実施例の等長リンクを閉じた状態の平面図である。
【図4】図2の矢印Eからみたリンク軸ホルダの位置関係を示す図である。
【図5】図2の矢印Aからみたリンク軸ホルダの一部断面図である。
【図6】図2の矢印Bからみたリンク軸ホルダの一部断面図である。
【図7】図2の矢印Cからみたリンク軸ホルダの一部断面図である。
【図8】本発明実施例のシート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図である。
【図9】同じく反シート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図である。
【図10】同じくシート状物側のリンク軸ホルダの裏面の横ローラとガイドレールの係合関係を示す斜視図である。
【図11】同じく等長リンクを開いた状態の平面図である。
【図12】本発明の他の実施例のシート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図で詳細に説明する。まず、本発明の基本形態である同時二軸延伸機を、図1、図2を用いて説明する。
【0026】
図1は本発明の実施例である同時二軸延伸機の平面図で、図2は同じく等長リンク装置31の断面図で、その構成および動作は以下の通りである。
【0027】
シート状物1の端部を把持する複数(多数)の掴み装置2をシート状物1の両側に具備した無端リンク装置3(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略)は、折尺状に形成された複数個(多数個)の等長リンク装置31より構成される。さらに、無端リンク装置3は、シート状物1の入口側スプロケット4で駆動される。そして、入口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2が開閉されてシート状物1を掴み、予熱区間(図示せず)で延伸に必要な温度に加熱される。
【0028】
さらに、無端リンク装置3は、延伸区間において、進行方向に末広がり状に並行して配置された2本の案内用ガイドレール5、6に案内されて、TD方向(末広がり部分の縦方向)に延伸されると共に、MD方向(横の進行方向)について掴みピッチP1からP2に徐々に拡大することにより、シート状物1を縦横二方向(縦:TD方向、横:MD方向)に同時に延伸する。その後、熱処理区間において所定の温度で熱固定し、冷却区間で急冷し、出口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置2を開閉してシート状物1を外し、外されたシート状物1はそのまま進行させることになる。さらに、無端リンク装置3は、出口側スプロケット7により駆動されて、入口側スプロケット4に戻るように構成される。
【0029】
即ち、シート状物の延伸機は、熱可塑性樹脂のシート状物1の端部を把持する多数の掴み装置2をシート状物1の両側端に具備した無端リンク装置3を設け、該無端リンク装置3は折尺状に形成された多数個の等長リンク装置31よりなり、シート状物1の入口側スプロケット4より駆動され、進行方向に末広がり状に配置された案内用ガイドレール5、6に案内されてシート状物1を延伸させた後シート状物1を外し、出口側スプロケット7により駆動されて、入口側スプロケット4に戻るように構成される。
【0030】
案内用ガイドレールは、図2に示すように凸状部材で断面が矩形に形成され、シート状物側の一方のガイドレール5と、反シート状物側の他方のガイドレール6との並行する一対の組になっている。シート状物側ガイドレール5の中心のほぼ真上には、掴み装置2が連結されたジョイント用リンク軸8が配置され、他方の反シート状物側ガイドレール6の中心のほぼ真上には掴み装置2を有さないジョイント用リンク軸9が配置される。リンク軸8とリンク軸9は、リンクプレート15及び16を回転自在にジョイントするためのリンク軸である。
【0031】
リンク軸8、9の最下端にはそれぞれ案内用ガイドレール5、6を跨ぐようにリンク軸ホルダ10、11が取付けられている。リンク軸ホルダ10、11の両側下方には、それぞれ対をなす横ローラ(ラジアル軸受)12(12a、12b)、13が縦軸を中心に回転自在に取付けられている。上記横ローラ12、13は、等長リンク装置31の動きを規制する案内用ガイドレール5、6の両側面を挟んで転動するように配置されている。横ローラ12、13は円筒形状をしており、その働き(回動)により、常に案内用ガイドレール5、6の両側面に対して実質的に垂直に接触しながら変化(回動)することにより、リンク軸8、9を高速で移動させ、等長リンク装置31を案内用ガイドレールに案内されて高速走行することが可能となる。
【0032】
リンク軸ホルダ10の下方の中央部には、案内用ガイドレール5の上面5aに接触して転動して走行する2個の縦ローラ12dが内蔵して取付けられている。図8はシート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図であり、縦ローラ12dが各対の横ローラ(12a、12b)の中央に内臓されているのが分かる。リンク軸ホルダ11の下方の中央部には、案内用ガイドレール6の上面6aに接触して転動して走行する2個の縦ローラ13aが内蔵して取付けられている。図9は反シート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図であり、縦ローラ13aが1対の横ローラ13の中央に内臓されているのが分かる。
【0033】
縦ローラ12d、13aは、等長リンク装置31の荷重を受け、各ガイドレール5、6の上面5a、6aに伝える。縦ローラ12d、13aは横軸を中心に回転し、それぞれ2個のローラが各ガイドレールの上面に接触するので傾くことが無く、等長リンク装置31を安定して走行させることができる。
【0034】
前記リンク軸ホルダのうち、シート状物1に近いリンク軸ホルダ10には、シート状物に対向する側部が横に突出して掴み装置2の取付け部17が形成されている。この取付け部17には前記掴み装置2が、一体的に取付けられている。
【0035】
図3は等長リンクが閉じた状態の平面図で、図4は図2の矢印Eからみたリンク軸ホルダ10と11の位置関係を示す平面図である。図2に示すリンク軸ホルダ10は、ガイドレール5を挟む一方の対をなす横ローラ12a、12aと、ガイドレール5を挟む他方の対をなす横ローラ12b、12bの4個の横ローラを有する。上記構成のリンク軸ホルダ10は、案内用ガイドレール5に沿って多数並べて配置されている。一方、リンク軸ホルダ11は、ガイドレール6を挟む1対の横ローラ13を有し、案内用ガイドレール6に沿って多数並べて配置されている。
【0036】
リンク軸ホルダ10は、2対の横ローラ12aと12b(4個)でガイドレール5の両側面に2個ずつ接触(2点接触)するので、その姿勢がガイドレール5によって規制される。従って、リンク軸ホルダ10に一体的に取付けられている掴み装置2の姿勢も規制され、図3のようにリンクプレート15、16が閉じた状態と、図10のリンクプレート15、16が開いた状態のいずれにおいても、常にガイドレール5に対してほぼ直角方向(垂直方向)にシート状物1側に突出した姿勢が保たれる。
【0037】
これに対し、リンク軸ホルダ11は、1対の横ローラ13、13でガイドレール6の両側面に1個ずつ接触(1点接触)するので、リンク軸ホルダ10と比べてガイドレール6によって姿勢が強く規制されず、機構的な遊びの範囲でリンク軸9を中心に回動できるので、ガイドレール6に沿って移動する際に円滑な動作がなされる。
【0038】
リンク軸ホルダ10は、横ローラ12aと12bで2対の横ローラが横に並んで配置されているので、1対の横ローラと比べてガイドレール5に沿った方向に大きな設置スペースを必要とする。本実施例では、リンク軸ホルダ10に横ローラ12aと12bを上下にずらし、かつ重ねて設けることにより、ガイドレール5に沿った上記設置スペースを抑制している。
【0039】
図5は図2の矢印Aからみたリンク軸ホルダ10の一部断面図で、図6は図2の矢印Bからみたリンク軸ホルダ10の一部断面図で、図8はリンク軸ホルダ10の裏面の斜視図、図10はリンク軸ホルダ10の裏面と横ローラ12a、12bとガイドローラ5の係合関係を示す斜視図である。
【0040】
横ローラ12bは、ガイドレール5の上部を挟むようにリンク軸ホルダー10の下端に設けられている。横ローラ12aは、ガイドレール5の下部を挟むように、リンク軸ホルダ10の下端から突出させた支持軸12cの先端に設けられている。支持軸12cは、横ローラ12bの厚さ分以上突出しており、両横ローラ12aと12bは接触することなく横方向に重なるように配置することがでる。したがって、この重なり分だけ、ガイドレール5に沿った横ローラ12aと12bの設置寸法が短縮されている。
【0041】
また、図5、図6、図10に示すように、上記同一構成のリンク軸ホルダー10をガイドレール5に沿って多数並べて配置されると、隣接するリンク軸ホルダー10の横ローラ12aと12bが隣り合わせとなるが、この隣り合わせの横ローラ12aと12bとについても、上下に離れていて、接触することが無いので、横方向に重ねて配置することができる。したがって、この重なり分だけ隣接するリンク軸ホルダー10のピッチを小さくすることができる。
【0042】
また図4〜図6に示すように、各対の横ローラ12aと12bがガイドレール5を挟んで対称に配置されるので、リンク軸ホルダー10が安定してガイドレール5に支持された状態で走行が行える。すなわち、横ローラ12a、12aはガイドレール5の下部の両側を挟むように配置され、横ローラ12b、12bはガイドレール5の上部の両側を挟むように配置されているので、ガイドレール5の同一位置(同一高さの位置)を両側から挟むことになり、リンク軸ホルダー10が傾くことなく直立し、各対の横ローラが安定した状態でガイドレール5を挟んで走行することができる。
【0043】
リンク軸ホルダー11は、図4、図7に示すように、横ローラ13が1対でガイドレール6を挟んで対称に配置され、ガイドレール6の同じ位置(同じ高さの位置)を両側から挟んで安定した状態で走行するように構成される。
【0044】
なお、上述したように横ローラ12aの設置スペースを及びピッチを小さくすることにより、リンク軸ホルダー10と11とは、ガイドレールに多数並べて配置されたとき、同一ピッチとなるように構成されている。
【0045】
各リンク軸ホルダー10と11のジョイント用リンク軸8と9は、図3に示すように、それぞれ前記ガイドレール5と6の中心のほぼ真上に位置するように配置されている。このように構成することにより、前記特許文献1のグリッパー本体と案内片がレール間に突出してこの突出先端の間にリンクが連結される構造に比べ、リンク(リンクプレート)の長さをガイドレール5と6の間隔まで長くすることができる。したがって、図3に示す等長リンクの閉じた状態から、図11に示す等長リンクの開いた状態までのMD方向(フィルムの進行方向)の延伸長さ、および延伸倍率を大きくすることができる。換言すれば、同じ延伸長さおよび延伸倍率を達成するのに、ガイドレールの間隔を小さくできるので、延伸装置を小形化できる。
【0046】
上記構成において、案内用ガイドレールに案内される等長リンク装置31の走行動作について説明する。
【0047】
入口側スプロケット4の場所において、図3の等長リンクが閉じた状態にあり、ガイドレール5からほぼ垂直方向に突出した各掴み装置2によりシート状物1の端部をピッチP1の間隔で掴む。等長リンク装置31が、シート状物の入口側スプロケット4より駆動されると、各リンク軸ホルダの横ローラが、それぞれ案内用ガイドレール5と6に接触して回転しながら移動する。
【0048】
横ローラ12(12a、12b)が、末広がり状態に配置された案内用ガイドレール5、6に至ると、両ガイドレール5と6の間隔も次第に狭まって等長リンクが閉じた状態から次第に開いていく。図11に示すように隣接するリンク軸ホルダ10同士、およびリンク軸ホルダ11同士は間隔が広がり、掴み装置2も間隔が広がる。リンク軸ホルダ間隔が広がる領域は、ガイドレール5が図1で末広がり状態とその後の直線状態で、ガイドレール6が5に接近する構成となっている。
【0049】
リンク軸ホルダ10は、ガイドレール5によって姿勢が規制されたまま案内され、掴み装置2はガイドレール5から垂直方向に突出した姿勢の状態でシート状物を延伸する。このように、掴み装置2は、ガイドレールに対し、入口側スプロケット4の場所においてシート状物を掴んだ姿勢の状態を維持しながら延伸動作を行なうことになり、シート状物の把持部分が回転(ツイスト)せずシート状物1が破れることがない。
【0050】
リンク軸ホルダ11は1対の横ローラ13を有するため、ガイドレール6の両側面に1個ずつの横ローラが接触(1点接触)して回動する。横ローラ13とガイドレール6との間に遊びがあるので、ガイドレール6に沿う回動時の互いの力関係により、姿勢の多少の変化が可能である。前述したようにリンク軸ホルダ10は、姿勢が複数対の横ローラ12a、12bによって規制されるので、窮屈な状態で移動することになるが、この窮屈な移動による力がリンクプレート15、16に伝達され、リンク軸ホルダ11の遊び分で緩和される。したがって、リンク軸ホルダ10は、窮屈な状態が緩和されながらガイドレール5に沿って円滑に移動することができる。
【0051】
図12は、本発明の他の実施例のシート状物側のリンク軸ホルダの裏面の斜視図である。リンク軸ホルダ10の両側下方に、それぞれ対をなす横ローラ(ラジアル軸受)12a、12aと12e、12eが縦軸を中心に回転自在に取付けられている。横ローラ12eは、ガイドレール5の上部を挟むようにリンク軸ホルダー10の下端に設けられている。横ローラ12aは、ガイドレール5の下部を挟むように、リンク軸ホルダ10の下端から突出させた支持軸12cの先端に設けられている。支持軸12cは、横ローラ12eの厚さ分以上突出しており、両横ローラ12aと12eは接触することなく横方向に重なるように配置することがでる。したがって、この重なり分だけ、ガイドレール5に沿った横ローラ12aと12eの設置寸法が短縮されている。
【0052】
本実施例では、ガイドレール5の上部を挟む横ローラ12eに、鍔部12fを設けている。この鍔部12fは、横ローラ12eのリンク軸ホルダー10側の端部に設けられ、ガイドレール5の上面5aに接触するように配置される。この鍔部12fは、等長リンク装置31の荷重を受け、この荷重をガイドレール5の上面5aに伝えながら移動する。したがって、図8に示す縦ローラ12dが不要であり、構造が簡単になると共にリンク軸ホルダ10全体を軽くすることができる。
【0053】
また、鍔部12fは円筒状の横ローラ12eの外周に設けられるので、半径が大きくなり設置スペース大きくなる。本実施例では、横ローラ12aと12eを上下にずらして設けているので、鍔部12fと横ローラ12aが接触することがなく、設置寸法が大きくなることがない。
【0054】
図示省略しているが、図9に示す横ローラ13にも鍔部を設けることができる。図12と同様に、鍔部は横ローラ13のリンク軸ホルダー11側の端部に設けられ、ガイドレール6の上面6aに接触するように配置される。横ローラ13の鍔部は、等長リンク装置31の荷重を受け、この荷重をガイドレール6の上面6aに伝えながら移動する。したがって、図9に示す縦ローラ13aが不要であり、構造が簡単になると共に、リンク軸ホルダ11全体を軽くすることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施例によれば、掴み装置2の姿勢を一定に維持した状態でガイドレールを移動し、反シート状物側のリンク軸ホルダを1対の横ローラで姿勢を規制しないでガイドレールを円滑に移動するので、全体として移動を円滑に行うことができ、延伸動作を高速で行うことができる。
【0056】
また、姿勢を一定に維持するためリンク軸ホルダ10に複数対の横ローラを設けているが、横ローラは隣合う同士のローラが重なるように上下にずらして配置されているので、設置スペースを小さく抑え、隣接する掴み装置2のピッチを小さくすることができる。掴み装置2のピッチが小さくなることで、シート状物を小さなピッチで掴むことができ、延伸時に高精度な延伸で延伸されたシート状物の品質を高く維持することができる。
【0057】
さらに、ジョイント用リンク軸は、それぞれ対応するガイドレールのほほ中心の真上に位置するように配置されているので、リンクプレートをガイドレールの設置間隔まで長く設定することができるので、小形の延伸装置(ガイドレールの間隔の狭い装置)で延伸長さおよび延伸倍率を大きく設定することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…シート状物、2…掴み装置、3…無端リンク装置、4…入口側スプロケット、5、6…ガイドレール、5a、6a…ガイドレールの上面、7…出口側スプロケット、8、9…リンク軸、10、11…リンク軸ホルダー、12、12a、12b、12e、13…横ローラ、12a、12b…2対の横ローラ(複数対の横ローラ)、13…1対の横ローラ、12d、13a…縦ローラ、12f…鍔部、15、16…リンクプレート、17…掴み装置の取付け部、31…等長リンク装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備した無端リンク装置を設け、この無端リンク装置は折尺状に形成された複数個の等長リンク装置よりなり、入口側及び出口側のスプロケットにより駆動され、前記入口側スプロケットから送り出され進行方向に末広がり状態に並行して配置された複数の案内用ガイドレールに案内されてシート状物を延伸させ、延伸後にシート状物を外して前記出口側スプロケットを介して前記入口側スプロケットに戻るように構成されたシート状物の延伸機において、
前記等長リンク装置の折尺部を構成するリンクプレートを回転自在に接続するジョイント用リンク軸の下方に前記各ガイドレールに案内されるリンク軸ホルダを設け、シート状物側のリンク軸ホルダの下端に一方のガイドレールの両側面を挟んで転動する複数対の横ローラを設けると共に、シート状物側に前記掴み装置を設け、反シート状物側のリンク軸ホルダの下端に他方のガイドレールの両側面を挟んで転動する1対の横ローラを設けたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項2】
請求項1に記載のシート状物の延伸機において、前記複数対の横ローラは隣合う同士のローラが重なるように上下にずらして配置されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記リンク軸ホルダの下端にさらに、前記ガイドレールの上面に接触して転動する複数の縦ローラを設けたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記リンク軸ホルダに設けられた横ローラは、前記ガイドレールの上面に接触して移動する鍔部が形成されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記ガイドレールに案内されるリンク軸ホルダに設けられた複数対の横ローラは、前記ガイドレールを挟んで対称に配置されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項6】
請求項5に記載のシート状物の延伸機において、前記複数対の横ローラは、ガイドレールの同じ位置を両側から挟むように配置されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記反シート状物側のリンク軸ホルダは、ジョイント用リンク軸が前記他方のガイドレールのほぼ真上に位置するように配置されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記シート状物側のリンク軸ホルダはジョイント用リンク軸が前記一方のガイドレールのほぼ真上に位置するように配置されたことを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、前記掴み装置を備えたリンク軸ホルダは、前記複数対の横ローラが一方のガイドレールに接触することにより掴み装置の姿勢が規制された状態でガイドレールに沿って案内されることを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項10】
請求項9に記載のシート状物の延伸機において、前記掴み装置は一方のガイドレールに対してほぼ直角方向の姿勢を保って、案内されることを特徴とするシート状物の延伸機。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のシート状物の延伸機において、反シート状物側のリンク軸ホルダーは、1対の横ローラによりガイドレールに対して姿勢が変化可能に案内されることを特徴とするシート状物の延伸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−116154(P2012−116154A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270155(P2010−270155)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】