説明

シート積載装置及び画像形成装置

【課題】 排出されるシートのカールを抑えつつ、積載シートの良好な整列性を確保できるシート積載装置を提供する。
【解決手段】 シート排出方向上流端部が排紙ローラ対11、12に近い位置と排紙ローラ対11、12から離れた位置との間を揺動可能な排紙トレイ13が、シートのシート排出方向下流端部を近い位置で受け取った後、離れた位置に揺動するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載装置及び画像形成装置に関し、特に排出されたシートを良好に積載するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、ファクシミリ、複写機、マルチファンクションプリンタ等の画像形成装置では、排出された画像形成済みシートや読取済み原稿を積載する排紙トレイを備えたシート積載装置が設けられている。このような排紙トレイとしては、所定の角度だけシート積載面を傾斜させ、排出されたシートを、シート積載面の傾斜を利用して自重により整合させようとしたものがある。しかしながら、排紙トレイに積載されるシート積載量が少ない場合は、排紙トレイにシートを排出するシート排出部からの落下距離が大きいためシートの落下位置が安定しない。また、シート積載量が多いとシート排出部から排出されるシートが既に積載されたシートの傾斜した上面を上方に向かって滑走する際の抵抗が大きくなり、排出シートのシート排出方向下流端部が途中で止まってしまう可能性がある。このように、シート積載面の傾斜角度を一定に構成した排出トレイにおいては、排紙トレイに積載されるシート積載量の多少にかかわらず、排出されるシートを良好に積載させることが困難であった。そこで、排紙トレイに積載されるシート積載量の多少に左右されずに、排出されるシートを良好に積載させることができるものとして特許文献1が提案されている。この特許文献1に記載のスタック装置においては、シート積載面のシート排出方向下流端側が上流端側よりも高くなるよう傾斜させた排紙トレイのシート積載面の傾斜角度を可変にできるようになっている。より具体的には、排紙トレイのシート排出方向下流端側を支点としてシート排出方向上流端部を上向き付勢する弾性付勢手段が排紙トレイに設けられ、シート積載量に応じて排紙トレイのシート積載面の傾斜角度を可変としている。排紙トレイのシート積載面の傾斜が、排紙トレイに積載されたシート積載量が少ない場合には緩やかで、シート積載面の傾斜角度が一定の場合よりシート排出部からの落下距離が小さくなるようにする。また、シート積載量が多い場合にはシート積載面の傾斜が急となり、シート積載面の傾斜角度が一定の場合より排出シートのシート排出方向下流端部の着地点が遠くになるように、排紙トレイのシート排出方向下流端側を支点として上下揺動可能に構成されている。
【特許文献1】特開平11−060023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、排出される後続シートのシート排出方向下流端部の湾曲の向き、いわゆる先端カールの大きさや排紙トレイ上に積載されたシート上面の表面性は、両面プリント、カラープリント等の用途に合わせて多岐にわたってきている。画像形成装置の性能もユーザの多種多様なシートのニーズに応えて向上させることがさらに必要となっている。従来のように、排紙トレイをシート積載量に応じて上下揺動可能な構成としても、排紙トレイに積載されたシート積載量が少なく、排紙トレイのシート積載面の傾斜が緩やかな場合、シート積載面の傾斜を利用したシートの整合ができない可能性がある。
【0004】
上述したように、シート先端カールの大きさや向き、積載シート上面の表面性は多岐にわたってきているため、従来の技術ではあらゆるシートを良好に排紙トレイに積載させることは非常に困難となってきている。
【0005】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、排出されるシートのカールを抑えつつ、良好な整列性を確保することができるシート積載装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るシート積載装置は、シートを排出するシート排出部と、前記シート排出部により排出されたシートを積載し、シート排出方向下流端部側を中心としてシート排出方向上流端部側が揺動可能な排紙トレイと、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部を揺動させる揺動手段と、を備え、前記排紙トレイは、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部が前記シート排出部に近い位置で前記シート排出部から排出されたシートのシート排出方向下流端部を受け取った後、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部が前記シート排出部から下方に離れた位置に揺動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のように、排出されるシートの下流端部を排紙トレイの上流端部がシート排出部に近い第1の位置で受け取った後、シート排出部から離れた第2の位置に揺動することにより、排出されるシートのカールを抑えつつ、良好な整列性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明の第1の実施の形態に係るシート積載装置を備えた画像形成装置の一例であるカラープリンタの概略を示す断面図である。本実施の形態では4色のトナー像を形成する電子写真方式のカラー画像形成装置について説明する。
【0009】
図1において実施の形態の画像形成装置100は像担持体である4個の感光体ドラム1a〜1dを備えている。そして、各感光体ドラム1の周囲には、ドラム表面を均一に帯電する帯電手段2a〜2d、画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1上に静電潜像を形成する露光手段3a〜3dが設けられている。また、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像手段4a〜4d、感光体ドラム1上のトナー像をシートに転写させる転写ローラ5a〜5dが配設されて感光体ドラムとともに画像形成手段が構成されている。さらに、転写後の感光体ドラム1表面に残った転写後トナーを除去するクリーニング手段6a〜6d等が配設されて画像形成手段が構成されている。本実施の形態においては、感光体ドラム1と帯電手段2、現像手段4、トナーを除去するクリーニング手段6は一体的にプロセスカートリッジ7a〜7dを形成している。
【0010】
給送部8から給送されたシートSは、転写手段9の転写ベルト9aによって画像形成手段へ搬送され、各色トナー像が順次転写された後、定着部10で画像定着されて排紙ローラ対11、12によって排出トレイ13へ排出される。
【0011】
両面記録の際は、定着部10でシートSが定着されて排紙ローラ対11、12によって排出される前に、排紙ローラ対11、12を逆転することにより、両面搬送経路15に搬送される(矢印A方向)。両面搬送経路15に搬送されたシートSは、斜送ローラ16を通過し、Uターンローラ17及びレジストローラ8dによって再び画像形成手段まで搬送される。シート排出部としての排紙ローラ対は、排紙駆動ローラ12と排紙従動ローラ11とからなる。
【0012】
(画像形成構成)
像担持体としての感光体ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に有機光導電体層(OPC)を塗布して構成したものである。感光体ドラム1は、その両端部をフランジによって回転自在に支持されており、一方の端部に不図示の駆動モータからの駆動力を伝達することにより、図柱反時計回り方向に回転駆動される。各帯電手段2はローラ状に形成された導電性ローラで、このローラを感光体ドラム1表面に当接させると共に、不図示の電源によって帯電バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム1表面を一様に帯電させるものである。露光手段3はポリゴンミラーを有し、このポリゴンミラーには不図示のレーザーダイオードから画像信号に対応する画像光が照射される。
【0013】
現像手段4は、トナー収納部4a1、4b1、4c1、4d1と現像ローラ4a2、4b2、4c2、4d2等から構成される。トナー収納部4a1〜4d1は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナーを収納し、現像ローラ4a2〜4d2は、感光体表面に隣接し、回転駆動されると共に現像バイアス電圧を印加することにより現像を行う。また、後述する転写ベルト9aの内側には、4個の感光体ドラム1a〜1dに対向して転写ベルト9aに当接する転写ローラ5a〜5dがそれぞれ併設されている。これら転写ローラ5は不図示の転写バイアス用電源で接続されており、転写ローラ5から正極性の電荷が転写ベルト9aを介してシートSに印加される。そして、この電界により、感光体ドラム1に接触中のシートSに感光体ドラム1上の負極性の各色トナー像が順次転写され、カラー画像が形成される。
【0014】
次に、本実施の形態に係るシート積載装置について図2〜図5を用いて説明する。
【0015】
まず、上述した画像形成装置100に一体的に組み込まれた本実施の形態に係るシート積載装置の構成について図2(a)、図2(b)を用いて説明を行う。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るシート積載装置の断面を示した図である。図2(a)では、揺動カム20の回転半径が最も長くなる位置でカムスライダ22と係合し、排紙トレイ13は揺動バネ23を介して排紙トレイ13の上流端部が排紙ローラ対11、12に最も近い位置(最上支点)で弾性的にカムスライダ22に保持されている。揺動カム20は揺動手段を構成し、カムスライダ22とともに支持部を構成する揺動バネ23は、コイルばねであり、排紙トレイ13上に積載されたシートの重量とつりあう長さに変化する。
【0017】
一方、図2(b)では、揺動カム20の回転半径が最も短くなる位置でカムスライダ22と係合し、排紙トレイ13は揺動バネ23を介して排紙トレイ13の上流端部が排紙ローラ対11、12から最も離れた位置(最下支点)でカムスライダ22に保持される。カム軸21を中心としたカム駆動機構(図示せず)による揺動カム20のR方向の回転に伴い、カムスライダ22が不図示のスライド部をZ方向に上下する。この動作に伴い排紙トレイ13は、排紙トレイ13のシート排出方向下流端側に位置した揺動中心Pを揺動支点とし、図中Y方向に上下に揺動可能となっている。
【0018】
次に、図3を用いて排紙制御について説明する。図3は本実施例に係る画像形成装置100の概略制御ブロック図である。
【0019】
画像形成装置100は、装置動作を統括制御する画像形成制御部110を有する。制御部50は、制御の中心的素子(制御手段)たるCPU111を有し、このCPU111には、記憶手段として、ROM等のメインメモリ112が接続されている。メインメモリ112には、CPU111が実行するプログラムや各種データが格納されている。CPU111は、メインメモリ112に記憶されたデータ、プログラム等に従って画像形成装置100をシーケンス動作させる。
【0020】
画像形成制御部110には、画像処理部(ビデオコントローラ)120が接続されている。画像処理部120は、画像形成装置100に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器140からの画像信号を受信し、信号を画像形成装置100における画像形成に係る信号に変換して、画像形成制御部110のCPU111に送信する。CPU111は、変換された画像形成信号に従って、画像形成装置100の各部の動作を制御する。
【0021】
そして、給送部8から画像形成手段に至る搬送経路中に設けられた紙種検知センサ130からの検知信号は、CPU111に入力される。CPU111は、紙種検知センサ130から入力された検知信号から紙種を判断する。そして、CPU111は、紙種に応じて排紙シーケンスを変更する。つまり、CPU111は、紙種と対応づけてメインメモリ112に記憶されている移排紙シーケンスの中から、適切な排紙シーケンスを選択する。CPU111は、こうして選択した排紙シーケンスに応じて、揺動カム20の駆動源であるモータ80の駆動を行う信号を発生する。モータ80は、この信号に応じて所定量で揺動カム20を回転駆動する。
【0022】
次に、本実施の形態に係る排紙動作について図4、図5を用いて説明する。
【0023】
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、排紙トレイ13上に積載シートが少ない状態での排紙動作を説明する図である。
【0024】
まず、図4(a)は、定着部10で画像定着されたシートSが、排紙ローラ対11、12によって排紙トレイ13へ排出されるところを示している。この時、揺動カム20は回転半径の最も長い位置でカムスライダ22と係合している。このとき、排紙トレイ13は、揺動バネ23を介して最上支点で保持されている状態であり、排紙ローラ対11、12のニップ位置からシートS先端が排紙トレイ13上の積載シートS’上面に着地するまでの高さが低い状態となる。つまり、排紙ローラ対11、12のニップ位置から排紙トレイ13上の積載シートS’上面の落差が小さくなる。これにより、仮にシートS先端が下向きカールだったとしても、落差によって発生するシートSのシート排出方向部端の垂れ下がりカールを抑えることができ、その結果、シートSは丸まることなく排出される。
【0025】
次に、図4(b)は、図4(a)より揺動カム20がR方向に60度回転した状態を示しており、シートSが図4(a)よりさらに搬送された状態である。後続シートSのシート排出方向下流端部が排紙トレイ13上の既積載シートS’に接した後、揺動カム20は図中矢印R方向に回転し、カムスライダ22が不図示のスライド部をZ1方向に下降し、排紙トレイ13は矢印Y1方向に徐々に下がっていく。排紙トレイ13上の既積載シートS’は、後続シートSのシート排出方向下流端部が既積載シートS’上面に接触しながらシート排出方向に移動することにより図中矢印Q方向に押し出し力Fを受ける。この時、後続シートSのカール方向や大きさ、また既積載シートS’上面の表面性によっては、既積載シートS’がQ方向に一旦動く場合もある。しかしながら、排紙トレイ13の上流端部側が下降し、傾斜角度が大きくなっていくと、後続シートSから受ける押し出し力Fより傾斜角度による既積載シートS’が滑り落ちる力fの方が大きくなっていくので、徐々に既積載シートS’は矢印T方向に戻されていく。
【0026】
その後、図4(c)の状態、つまり排紙トレイ13が最下支点で保持されている位置まで移動するため、後続シートSのシート排出方向上流端部が排紙ローラ対11、12を抜けた後では、押し出し力Fは無くなり、既積載シートS’が滑り落ちる力fは最大となる。これにより、排紙トレイ13上の既積載シートS’は、図中矢印T方向に戻され、積載シートの整列性がよくなる。排紙トレイ13上への排出が完了した後続シートSも同様に、矢印T方向に滑り落ちる。矢印T方向に戻されたシートは排紙トレイ13の後端積載壁に当接してシート搬送方向上流端部が整合される。揺動カム20は、さらにR方向に180度回転し、後続シートSのシート排出方向下流端部が排紙トレイ13上の既積載シートS’上面に接する前に、排紙トレイ13は図4(a)の位置に再び戻る。このように、シートSの1枚の排紙動作中に、排紙トレイ13は図4(a)〜図4(c)に示した状態となり、連続プリント中は上述した動作を繰り返すこととなる。
【0027】
次に、図5(a)、図5(b)を用いて、排紙トレイ13上に積載シートが多い状態での排紙動作を説明する。尚、揺動カム20及びカムスライダ22の動作は積載シートが少ない状態と同じであるので説明を省略する。
【0028】
排紙トレイ13は、排紙トレイ下部に配置された揺動バネ23のバネ荷重と排紙トレイ13上に積載された積載シートの重量とつりあう位置まで揺動する。つまり、排紙トレイ13上の積載シートが少ない場合は、図3に示すように揺動バネ23のバネ高さはほとんど変わらない。
【0029】
一方、図5(a)に示す様に、排紙トレイ13上の積載シートが多い場合は、積載シートの重量分、揺動バネ23は圧縮される。図4(a)と図5(a)を比べてわかるように、排紙ローラ対11、12のニップ位置から後続シートSのシート排出方向下流端部が排紙トレイ13上の既積載シートS’上面に着地するまでの高さはほとんど同じとなる。このようにすることで、シートSのシート排出方向下流端部が下向きカールだった場合でも、落差によって発生するシートSのシート排出方向下流端部の垂れ下がりカールを抑えることができ、その結果、シートSは丸まることなく排出される。このように、本実施の形態においては、排紙トレイ13下部にカムスライダ22及び揺動カム20を設け、揺動バネ23ごと排紙トレイ13を揺動させているが、上述した排紙トレイ本来の機能は損なっていない。
【0030】
また、図5(b)は図4(c)同様、排紙トレイ13が最下支点で保持されている状態であり、排紙トレイ13上の積載シートS’が多い場合でも、図中T方向に積載シートS’が戻される力が働き、積載シートの良好な整列性が確保される。排紙トレイ13上への排出が完了した後続シートSも同様に、矢印T方向に滑り落ちる。
【0031】
以上説明したように、排紙トレイ13上の積載シートの量が少ない状態から多い状態まで、シート1枚の排紙動作の中で揺動カムを回転させ、排紙トレイ13を揺動させることで、積載シートの丸まりや落下を防ぎ、積載シートの良好な整列性が確保できる。尚、排紙トレイ13の揺動動作は1枚ごとに限らない。例えば、所定枚数ごとに、あるいは一つの画像形成ジョブが完了するごとに排紙トレイ13の上流端部を下方に揺動させるようにしてもよい。但し、積載シートの表面性、ジョブ中のシートの枚数等を加味し、シート積載面を滑り落ちたシートが確実に排紙トレイ13の後端積載壁に当接し、シート搬送方向上流端部が整合されるようにする必要がある。
【0032】
本実施の形態においては、揺動カム20の回転開始タイミングを定着部10と排紙ローラ対11、12の間に配設した排紙センサ(不図示)でのシートSの先端が通過するタイミングを起点としている。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態について図6(a)、図6(b)を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と異なる部分のみ説明し、第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付することで説明を省略する。
【0034】
第1の実施の形態では、揺動スライダの上下スライド駆動源としてカムを用いたが、第2の実施の形態では揺動手段として、ラック&ピニオン機構を用いている。
【0035】
図6(a)は、ラックスライダ24はピニオン軸25を中心としたピニオン26の回転によって最上点に位置し、その結果、排紙トレイ13は揺動バネ23を介して最上支点で保持されている状態を示している。一方、図6(b)は、ラックスライダ24がピニオン26の回転によって最下点に位置し、その結果、排紙トレイ13は揺動バネ23を介して最下支点で保持されている状態を示している。
【0036】
次に、本実施の形態に係る排紙動作について説明する。図6(a)に示すように、ピニオン駆動機構(図示せず)によるピニオン26のC方向の回転に伴い、ラックスライダ24が不図示のスライド部をZ1方向に下降する。それに伴い、排紙トレイ13は、排紙トレイ13のシート排出方向下流端側に位置した揺動中心Pを揺動支点とし、図中Y1方向に揺動する。また、図6(b)に示すように、不図示の駆動機構によるピニオン26のR方向の回転により、ラックスライダ24が不図示のスライド部をZ2方向に上昇する。それに伴い、排紙トレイ13は、排紙トレイ13のシート排出方向下流端側に位置した揺動中心Pを揺動支点とし、図中Y2方向に揺動する。
【0037】
その他の排紙動作は第1の実施の形態と同じである。上述したように、本実施の形態も第1の実施の形態と同様に、シート1枚の排紙動作の中で、排紙トレイ13の最上支点と最下支点間の揺動を繰り返す。このようにすることで、排紙トレイ13上の積載シートの量が少ない状態から多い状態まで、積載シートの丸まりや落下を抑えることができ、積載シートの良好な整列性を確保することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0039】
上述した第1、第2の実施の形態に係る構成において、揺動カム20又はピニオン26の回転開始タイミングや回転速度を、シートの種類に応じて変更する構成とすれば、さらに最適な積載シートの良好な整列性を確保することが可能となる。その際、シートの種別(紙種)を認識する方法として、画像形成装置100内に備わった紙種検知センサ130(図3)によってシート表面性や厚みを検知する、あるいはユーザによるパソコンへの入力により紙種の認識を行う等が考えられる。上記認識方法による紙種検知信号、あるいは紙種入力の結果に基づき、紙種(例えば表面性や厚み等)を画像形成制御部110へ認識させ、自動的に最適なシート排紙制御を選択する制御構成とすることで、さらなる最適な排紙状態を作り出すことができる。
【0040】
また、図7にこの動作のフローチャートを示す。図7を用いて具体的に説明すると、まず、よる紙種検知信号、あるいは紙種入力の結果に基づいて紙種認識を行う(S1、S2)。普通紙、厚紙、ラフ紙等の紙シートの場合は、図8(a)に示すようにシート1枚の排紙動作の中で、排紙トレイの最上支点と最下支点間の揺動を繰り返す通常シーケンスとなる(S3)。この効果は、第1、第2の実施の形態で説明したとおりである。
【0041】
一方、認識された紙種がフィルムシートであった場合、図8(b)に示したフィルムシートシーケンスに移行する(S4)。フィルムシートシーケンスでは、OHPシートやグロスフィルム等の表面性の良いフィルム系のシートにおいて、さらなる効果を発揮する。OHPシートやグロスフィルム等は、紙からできているシートとは違い、定着で加熱されると柔らかくなり、冷却されると固まる性質がある。その際、柔らかい状態、つまり加熱された状態から、冷却されていく過程におけるシートの形状によって、シートの最終的な形状(カール)が決まってしまう。実験結果によれば、OHPシートのカールは55〜70℃の時のシート形状で決まり、70℃以上ではOHPシートに十分な柔軟性があり、55℃以下では硬くなり、どちらの温度状態で屈曲が与えられてもカールが残る状態は発生せず、また変化もしない。OHPシートでカールが10mm以上発生してしまうと、プロジェクタで投影した際、ピントがぼけてしまい、図が歪んだり字が読みづらくなったりする等の支障をきたす可能性が有る。例えば、定着温度が約180℃の場合、定着部10を通過したOHPシートは、定着部10と排紙ローラ対11、12の間を通過中のときは約80℃の温度状態となる。次に排紙ローラ対11、12を出た直後時のときは約60℃となる。従って、OHPシートは、定着部10から排紙ローラ対11、12までの間に屈曲を受けても柔軟性があるため屈曲によるカールは発生しない。しかしながら、排紙トレイ13上に排出される時、排紙ローラ対11、12と排紙トレイ13上面との落差Hが大きくなると、排紙ローラ対11、12を出た直後時にOHPシートはその直後時に保有している柔軟性と自重により垂れ下り屈曲を生じる。そして、外気や排紙トレイ13との接触による冷却で55℃以下に急速に温度が下るためその形状で硬化し、カールを形成してしまう。
【0042】
そこで本実施の形態においては、上述したカールをさらに抑制し、かつ排出されるシートの良好な積載整列性が確保できるシーケンスを用いることとした。
【0043】
前述した紙種認識方法により、装置本体がOHPシート等のフィルムシートと認識する(S4)と、画像形成制御部110は図8(b)に示すフィルムシートシーケンスを選択する。シートSがOHPシート等のフィルム系である場合、シートSのシート排出方向上流端部が排紙ローラ対11、12から排出され、排紙トレイ13に着地するまでの間、排紙トレイ13は図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すように最上支点を維持する。シートSが排紙トレイ13に積載された後、排紙トレイ13は図4(c)、図5(b)、図6(b)に示すように最下支点に移動し、その後、再び図4(a)、図5(a)、図6(a)に示す最上支点へ移動する。
【0044】
この動作により、排紙ローラ対11、12と排紙トレイ13上面との落差Hは、シートSの排出動作中は常に小さい状態を維持する。これにより、シートSは排紙トレイ13上に直線的に搬送され、平面状態で冷却硬化できるので、カールの発生を第1、第2の実施の形態よりも抑制することができる。また、フィルム系シートは、ラフ紙と違い、表面性が良いので、第1の実施の形態で説明したようなシートによる押し出し力Fは小さくなる。その結果、排紙動作中、排紙トレイ13が最上支点で維持されても、積載シートを押し出す量は非常に少なくなる。仮に少し押し出されたとしても、積載後に排紙トレイ13が最下支点へ移動することで、積載シートは戻され、積載シートの良好な整列性は確保される。
【0045】
また、本実施の形態においては第1、第2の実施の形態と同様、排紙トレイ13上への積載枚数が増加すると、その積載シートの重さによって排紙トレイ13は揺動バネ23を押し縮めながら徐々に下降していく。そのため、排紙トレイ13上の積載シートの量が少ない状態から多い状態まで、フィルム系シートのカール低減と良好な整列性を確保することができる。
【0046】
上述したように、揺動カム20又はピニオン26の回転開始タイミングや回転速度を、シートの種類に応じて変更する構成とすれば、最適な積載シートの整列性を確保することが可能となる。また、予め設定されたシートSの長さの情報をもとに、カムの回転速度を決定してもよい。
【0047】
ここで、積載性を低下させる原因の1つとして、既積載シート上面の表面性と後続シートのシート排出方向下流端部のカール方向について以下に説明する。図9は、既積載シート上面の表面性と後続シートの先端カールによる積載性の関係を模式的に示している。
【0048】
図9(a)と図9(b)に示されるように、次に排紙トレイに排出されようとするシートの先端カールが上向きの場合、既積載シート上面の繊維の向きが順目であろうと逆目であろうと積載性に影響は与えない。これは、後続シートの先端カールの向きが上向きであるため、後続シートのシート排出方向下流端部と既積載シート上面が直接触れず、後続シートのシート排出方向下流端部が積載シート上面に引っ掛らないので、押し出す力が弱く積載シートは乱れないためである。一方、図9(c)、図9(d)に示したように、排紙トレイに排出されようとする後続シートの先端カールが下向きの場合、後続シートのシート排出方向下流端部が積載シート上面に引っ掛りやすくなる。この場合、図9(c)に示されるように既積載シートの上面の繊維方向が順目であれば、後続シートのシート排出方向下流端部が既積載シートの上面に引っ掛るものもあるが、その可能性は比較的少なく、積載性の低化はそれほどでもない。しかしながら、図9(d)のように逆目の場合、後続シートのシート排出方向下流端部が既積載シートの上面に引っ掛り易く、後続シートの排紙方向に積載シートが押され、積載が乱されたり、排紙トレイ上から積載シートが落下したりする可能性がある。
【0049】
なお、上述した実施の形態において、本発明に係るシート積載装置を画像形成装置100に一体的に組み込んだ構成について説明したが、本発明に係るシート積載装置を、画像形成装置本体とは別装置、例えばフィニッシャ等に適用しても有効である。
【0050】
また、フィニッシャ等の別装置に適用した際は、フィニッシャ制御部をフィニッシャに搭載し、画像形成装置本体側の制御部と通信しながらフィニッシャを制御するか、あるいは画像形成装置本体側の制御部から直接、フィニッシャを制御する。
【0051】
さらに、上述した実施の形態において、排紙トレイの揺動を、揺動カム20又はピニオン26の回転のみで行う構成について説明したが、積載シートの上面位置を一定にするために上面検知センサを設けるようにしてもよい。この場合、上面検知信号に応じて揺動カム20又はピニオン26の回転を逆方向に切り換える。このような構成にすることによって、さらに、排出されるシートの良好な積載整列性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート積載装置を備えた画像形成装置の一例であるカラープリンタの構成を示す図。
【図2】上記シート積載装置の構成を示す図。
【図3】上記シート積載装置を制御するコントローラの制御ブロック図。
【図4】上記シート積載装置の、少数枚積載時における排紙トレイの動作を示す図。
【図5】上記シート積載装置の、多数枚積載時における排紙トレイの動作を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るシート積載装置における、排紙トレイの動作を示す図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るシート積載装置のフローチャート。
【図8】上記シート積載装置のシーケンス図。
【図9】既積載シート上面の表面性と後続シートの先端カールとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0053】
7 プロセスカートリッジ
10 定着部
11 排紙従動ローラ
12 排紙駆動ローラ
13 排紙トレイ
20 揺動カム
21 カム軸
22 カムスライダ
23 揺動バネ
24 ラックスライダ
25 ピニオン軸
26 ピニオン
100 画像形成装置
200 シート積載装置
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを排出するシート排出部と、
前記シート排出部により排出されたシートを積載し、シート排出方向下流端部側を中心としてシート排出方向上流端部側が揺動可能な排紙トレイと、
前記排紙トレイを揺動させる揺動手段と、を備え、
前記排紙トレイは、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部が前記シート排出部に近い位置で前記シート排出部から排出されたシートのシート排出方向下流端部を受け取った後、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部が前記シート排出部から下方に離れた位置に揺動することを特徴とするシート積載装置。
【請求項2】
前記排紙トレイを弾性的に支持する支持部を有し、前記揺動手段は、前記支持部に係合して前記排紙トレイを揺動させることを特徴とする請求項1に記載のシート積載装置。
【請求項3】
前記揺動手段は、カムを有し、前記カムの回転により前記排紙トレイを揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート積載装置。
【請求項4】
前記揺動手段は、ラックとピニオンを有し、前記ピニオンの回転により前記排紙トレイを揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート積載装置。
【請求項5】
前記排紙トレイは、前記揺動手段により排出されるシートの1枚ごとに揺動されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート積載装置。
【請求項6】
前記排紙トレイは、前記揺動手段により排出されるシートの所定枚数ごとに揺動されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート積載装置。
【請求項7】
前記シート排出部により排出されるシートがフィルムシートである場合、前記排紙トレイのシート排出方向上流端部が前記シート排出部に近い位置から前記前記シート排出部から下方に離れた位置への揺動のタイミングを遅くすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート積載装置。
【請求項8】
画像を形成する画像形成手段と、画像形成されたシートを積載する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のシート積載装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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