説明

シート穿孔装置及びこれを備えた後処理装置

【課題】複数のパンチ部材を穿孔方向に移動する駆動機構において駆動部の故障が少なく、カムとパンチ部材との位置関係を正確に位置制御する。
【解決手段】複数のパンチ部材を上下移動するムプレートを所定ストロークで往復動する際に、螺旋カム溝を有する円筒カムを駆動モータで回転し、そのカム溝にスライドカムに設けたフォロアピンを嵌合する。そして螺旋カム溝にはカムプレートが左限又は右限に位置するとき、円周方向に回転する環状溝を連結してその一部にフォロアピンの円周方向への運動を制限するストッパ部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートにファイル穴を穿孔するシート穿孔装置に係わり、耐久性と安全性に富んだ穿孔機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の穿孔装置は、シートの搬送経路中に配置され通過するシートにファイリング穴のパンチ処理した後に下流側の処理トレイなどに収容している。そして装置構造は、フレームにパンチ部材を上下動可能に配置し、各パンチ部材をカム機構などで上下動している。
【0003】
この穿孔動作のためのカム機構としては回転軸に偏心カムを配置し、カムの回転でパンチ部材を上下動する機構と、所定ストロークで往復動する板カム(スライドカム板)にV字状カム溝を形成してパンチ部材を上下動している。
【0004】
例えば特許文献1には、複数のパンチ部材を所定間隔で直線的に配列し、パンチの穿孔方向と直交する方向にカム板を設けてパンチ部材を上下動させている。直線方向に所定ストロークで往復動するカム板にはV字状のカム溝が形成され、この溝に各パンチ部材に設けたカムピンを係合させている。そしてカム板は装置フレームに往復動可能に支持すると共に、駆動モータで往復動させている。
【0005】
この駆動モータとカム板とは、モータの回転を、ラック‐ピニオン機構で連結している。つまりに装置フレームにカム板を往復移動可能に取付け、このカム板にラックを一体成形してモータの回転軸に連結したピニオンを噛合させている。
そしてカム板にセンサフラグを設け、その位置をセンサで検出して右限位置と左限位置との間でモータを正逆転することによって往復動させている。
また、この場合に文献1には開示されていないが所定ストロークで往復動するカム板にはストッパが設けてあり、その右限位置と左限位置との間でのみ往復動するように運動規制している。
【0006】
一方、モータの回転を直線運動に変換する機構としては、ラック‐ピニオン機構、螺旋カム機構、ハートカム機構などが知られている。このようにループ状に連続運動するカム機構と、直線往復運動するカム機構のいずれも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−260087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように所定ストロークで往復動するカム板で複数のパンチ部材を上下動するパンチ機構は既に知られている。この場合に従来は、カム板と駆動モータとをラック‐ピニオン機構で駆動連結しているため、歯車の動作音による騒音と歯車のバックラッシュによるパンチ動作の位置ズレなどの問題が知られている。
例えば複数のパンチ部材に時間差を設けてパンチ動作させることによって負荷トルクの軽減を図ろうとすると、バックラッシュによるパンチの位置ズレが発生してトルク軽減が得られない結果をもたらせている。
【0009】
そこで本出願人は、カム板と駆動モータとを螺旋カム機構で駆動伝達することを試みた。これによって騒音の問題とパンチの位置ズレの問題の解決が得られた。
【0010】
ところが、螺旋カム機構を採用すると、駆動モータで螺旋カムを回転させてカム溝に係合したフォロアピンでカム板(スライドカム)に往復運動を生起することとなる。そして螺旋カム溝には、所定角度位置でフォロアピンを停止するストッパが右限、左限、両位置に設けてある。
【0011】
ところが、カム板の位置を検出するセンサの故障、センサ信号のノイズ影響、動作プログラムの暴走、などによって螺旋カム溝を備えた円筒カムが必要以上に回転する問題が生ずる。例えば左限位置を検出するセンサ信号が、故障、ノイズなどの影響を受けるとモータは停止することなく左限方向に回り続ける。その結果、フォロアピンか螺旋カムのカム壁(ストッパ壁)が破損するか、若しくは駆動モータが故障する問題が発生する恐れがある。
【0012】
本発明は、所定ストロークで往復動するカム部材によって複数のパンチ部材を穿孔方向に移動する駆動機構において駆動部の故障が少なく、カムとパンチ部材との位置関係を正確に位置制御することができ耐久性に富んだ穿孔装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するため本発明は、複数のパンチ部材を上下移動するムプレートを所定ストロークで往復動する際に、螺旋カム溝を有する円筒カムを駆動モータで回転し、そのカム溝にスライドカムに設けたフォロアピンを嵌合する。
そして螺旋カム溝にはカムプレートが左限又は右限に位置するとき、円周方向に回転する環状溝を連結してその一部にフォロアピンの円周方向への運動を制限するストッパ部材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、所定ストロークで往復動するカムプレートでパンチ部材にパンチ動作させる際に、カムプレートを往復動する螺旋カム溝に右限、左限位置でフォロアピンを円周方向に旋回動させる環状溝を連設させ、この環状溝にその運動を制限するストッパ部材を設けたものであるから以下の顕著な効果を奏する。
【0015】
モータの回転を直線運動に変換してカムプレートに伝達する螺旋カム溝に右限、左限位置のときフォロアピンを円周方向に旋回動させる環状溝を設け、この溝に運動規制するストッパ部材を設けてあるから、フォロアピンとカム溝が破損する恐れがない。
つまり、センサ故障、検出信号のノイズ、動作プログラムを暴走などの原因が発生しても、螺旋カム溝もこれに係合したフォロアピンもいずれも破損する恐れがない。
【0016】
これと共に駆動モータに過剰の負荷が及んで発熱による事故或いはモータ故障に発展することがない。なお、ストッパ部材の運動規制強度は、オペレータ作業、メンテナンス作業でカムプレートとモータの位置を手作業で変更整可能であって、フォロアピン・カム壁などが破損しない範囲で設定する。
【0017】
またそのための構造はカムプレートに往復運動を伝達する螺旋カム溝に円周方向への回転を許容する環状溝を連設し、この溝にフォロアピンの運動を制限するストッパ部材を設けたのみであるから、至って簡単な構造で安価に採用することが出来る。
【0018】
更に、本発明におけるストッパ部材は、カム溝とカムフォロアピンの少なくとも一方を、他方との係合を解除する方向に移動可能に構成し、所定の力が作用したとき円周方向への運動を許容するように構成する。これによって簡単な構造でモータの故障とパンチ機構の故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わるシート穿孔装置の全体構成の説明図。
【図2】図1の装置における要部説明図であり、(a)は図1の縦断説明図を示し、(b)は作動カム手段(カムプレート)のカム形状を示す。
【図3】図1の装置における駆動機構の説明図であり、(a)は全体構成図を示し、(b)は作動カムと駆動カム手段との位置関係を示す説明図。
【図4】図3の駆動機構における円筒カム(螺旋カム)の構造を示す説明図を示し、(a)は全体斜視図であり、(b)はストッパ機構の説明図。
【図5】図4の螺旋カムとフォロアピンの係合状態を示す示し、(a)(b)はその一実施形態を、(c)(d)は、異なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図示の好適な実施の形態について本発明を詳述する。図1は本発明に係わるシート穿孔装置の全体構成を示す。図1のシート穿孔装置はベースフレーム1と、穿孔動作する複数のパンチ部材4と、刃受孔5と、パンチ部材を穿孔動する駆動手段Mで構成されている。
【0021】
ベースフレーム1は上部フレーム2と下部フレーム3で構成され、シートの通過間隙dを隔てて上部フレーム2と下部フレーム3が対向配置されている。
上部フレーム2には複数のパンチ部材4a,4b,4c…が直線状に配列され、各パンチ部材は上部フレーム2に上下動可能に軸受け支持されている。
各パンチ部材4(4a、4b、4c、4d、4eを総称する)は、第1グループ4A(4b,4d;2穴穿孔)と第2グループ4B(4a,4c,4e;3穴穿孔)に区分けされ、選択的に穿孔動作するように構成されている。
つまり後述する駆動手段の作動方向(回転方向)によって第1グループ4Aのパンチが穿孔動作を執行し、反対方向の回転で第2グループ4Bのパンチが穿孔動作するように構成される。このため各パンチ部材4はファイル穴の規格に応じた間隔で直線上に配列されている。
【0022】
図示の上部フレーム2は、図2に示すように断面コ字状(チャンネル鋼材)のフレーム材で構成され、上下に対向する上フランジ部2aに軸受2yが下フランジ部2bに軸受2zが形成されている。この軸受2y、2zはそれぞれ複数のパンチ部材4を個々に軸受け支持するように上下対向する位置に配置されている。そしてパンチ部材4の移動方向が穿孔方向(図1及び図2上下、X方向)に設定されている。
【0023】
上記パンチ部材4は第1グループ4Aと第2グループ4Bに区割してあるが、これはファイル穴を例えば2穴穿孔する場合と3穴穿孔する場合に用途に応じて切り換える構成を示す。
つまり図1において第1グループ4Aは2つのパンチ部材4b,4dで、第2グループ4Bは3つのパンチ部材4a,4c,4eでグループ分けされている。このグループ分けは2穴と3穴に限らず、2穴4穴切り換え、3穴4穴切り換えなどの組み合わせであっても良い。
【0024】
上記各パンチ部材4は、ロッド形状(軸形状)に形成され下端部に穿孔刃4xが形成され、その刃先は逆U字状、逆V字状など先鋭形状に形成されている。
このよう刃先4xを先鋭形状に形成したのは、複数のパンチ部材に、ほぼ同時(後述する位相差は存在するが略々同時)に穿孔動作させるため、刃先を先鋭形状にして負荷トルクを低減するためである。
このほかパンチ部材を回転させながら上死点から下死点に移動する穿孔方向を採用する場合には、刃先4xを逆U字状、逆V字状に形成することによってパンチ部材の回転でシートにせん断力を付与するためである。
【0025】
上記下部フレーム3は、上部フレーム2との間にシートの通過間隔dが形成され、シートを載置する紙載面(ガイド面;図2参照)6と、各パンチ部材4に対向する位置に刃受孔5(5a,5b,5c,5d,5e)が配置されている。
そして上部フレーム2との間隔dにシートを挿入し、パンチ部材4を上死点から下死点に移動する過程で刃先4xが刃受孔5に貫挿してシートにファイル穴を穿孔することとなる。下部フレーム3の下方には、屑紙片を回収する屑ボックス7が設けられている。
【0026】
この屑ボックス7はベースフレーム1(上部材フレームか又は下部フレーム)に着脱可能に取付けられている。図示のものは、下部フレーム3にスライドレール(不図示)が設けてあり、このレールに屑ボックス7がスライド可能に支持されている。
従って屑ボックス7は図2前後方向に引き出し可能に装着され、内部に収納した屑紙片を取り除くことができるように構成している。
【0027】
[駆動機構の説明]
上述のパンチ部材4を穿孔方向に上下動する機構について「カムプレート構成」「ドライブ構成」の順に説明する。
「カムプレート構成」
上述のベースフレーム1(図示のものは上部フレーム2)に所定ストロークStで往復動するカムプレート8が設けられ、このカムプレート8に各パンチ部材4を上死点Upと下死点Dpとの間で上下動する作動カム溝9が設けられている。このカム溝9に後述するパンチ部材4のカムピン10が嵌合してある。
【0028】
カムプレート8には複数のパンチ部材4に対応する位置にカム溝9(9a,9b,9c)が設けられ、この各カム溝9には各パンチ部材4に植設されたフォロアピン10(10a〜10d;以下「カムピン」という)が係合してある。
カム溝9は、V字形状に形成され、カムプレート8の移動に伴ってパンチ部材4を上死点Upから下死点Dpの間で往復動する(図2(b)参照)。
このカム溝9は水平方向成分9xと傾斜垂直方向成分9yで構成され、水平方向成分9xでパンチ部材4を上死点Upに静止保持し、傾斜垂直方向成分9yでパンチ部材4を上方から下方に、また下方から上方に移動する溝形状に構成されている。
【0029】
上記カムプレート8は上部フレーム2に穿孔方向(X方向)と直交する方向(図1水平方向)に所定ストロークStで往復動するように取り付けられている。そしてこのカムプレート8は偏平形状の板状部材に形成され、このプレートを摺動可能に支持するレール部材11(11a〜11d)が上部フレーム2の上下フランジ部に折曲げ形成されている。
この他、カムプレート8とベースフレーム1とは、一方に植設ピンを、他方にこのピント係合するスリット溝を設けてカムプレート8をスライダブリに支持しても良い。
【0030】
上記カムプレート8に形成されたカム溝9について説明する。カム溝9は図1に示すように複数のパンチ部材4に対向する位置に形成され、前述したように第1グループ4Aと第2グループ4Bに区割されている。そして水平方向成分9xと、傾斜垂直方向成分9yを有するV字カムで形成されている。
【0031】
このとき図2(b)に示すように、第1、第2グループに属するパンチ部材4は、同時に穿孔動作することなく動作タイミングを時間的にズラして穿孔動作するようにカム溝9は間隔δずつ位相差を有するようになっている。
例えば2穴穿孔の時には第1のパンチ部材4bが先に、第2のパンチ部材4dが後に穿孔動作するように位相差δが設けられている。同様に3穴穿孔の時には、パンチ部材4a、4c、4eの順に穿孔するようになっている。これは駆動モータDmに作用する負荷トルクを軽減するためである。
【0032】
次に上述のカムプレート8を所定ストロークで往復動する駆動手段Mの構成について説明する。カムプレート8は駆動モータDmの正逆転によって所定ストロークStで往復直線動する。
このときカムプレート8のカム溝9は図1に示すようにストロークStで、その右限位置Hp1からセンタCpに移動するときには2穴穿孔(第1グループ4A)を実行し、左限位置Hp2からセンタCpに移動するときには3穴穿孔(第2グループ4B)を実行する。
従ってカムプレート8のホームポジションの選択によってグループ分けされた複数のパンチ部材4を選択して穿孔動作させるように構成される。
【0033】
なお、前述のカムプレート8には、その位置を検出するフラグ12と作動部センサS1、S2が設けられている。このセンサS1、S2は後述する駆動部センサS3と共同してカムプレート8のセンタ位置Cpと右限位置Hp1と左限位置Hp2を検出する。
【0034】
上記カムプレート8には、駆動モータDmと伝動手段14が連結されている。駆動モータDmは正逆転可能なDCモータ、ステッピングモータ等で構成され、その正逆方向回転でプレート8をセンタ位置Cpと第1第2ポジジョンHp1、Hp2間で往復動する。
このため駆動モータDmの回転軸(駆動軸)13を減速歯車機構14で駆動カム手段15に伝達する。
【0035】
駆動カム手段15は、駆動モータDmの回転運動を直線運動に変換してカムプレート8に伝達する。このためベースフレーム1(図示のものは下部フレーム2)に駆動モータDmと、その減速歯車機構14と、駆動カム手段15が取り付けられている。
図示の駆動カム手段15は、円筒カム15aで構成されカムプレート8の運動方向(図1Y方向)は沿って螺旋カム溝16が形成されている。
【0036】
このような構成で、円筒カム15aの回転でその外周に形成された螺旋カム溝16は、これに嵌合したフォロアピン17を図示Y方向に直線往復動する。螺旋カム溝16は等ピッチでフォロアピン17を等速運動で左右直線方向に移動する。
このフォロアピン10はカムプレート8に一体に形成され、その詳細な構造は後述する。図3にドライブ機構を示すが、駆動モータDmから減速歯車機構14で円筒カム15aに正逆方向の回転を伝達するように連結されている。円筒カム15aには外周に螺旋カム溝16が形成され、この螺旋カム溝16にフォロアピン17が嵌合されている。
【0037】
このような構成において駆動モータDmで円筒カム15aを反時計方向(矢印方向)に回転すると、フォロアピン17は図3(b)右端(第1ホームポジション)から左端に移動する。
また駆動モータDmを逆回転するとフォロアピン10は図3左端(第2ホームポジション)から右端に移動する。このフォロアピン17の右限位置Hp1と左限位置Hp2との間の往復運動で所定のストロークStが設定される。
【0038】
そして図1に示すようにフォロアピン17は右限位置Hp1と左限位置Hp2との間をストロークStで往復動し、その中間点であるセンタ位置Cpで、第1グループ4Aと第2グループ4Bが切り換えられる。
特に図示しないが、制御手段(駆動モータDmのドライバ回路を制御する例えば制御PCPU)は第1グループ4Aの穿孔が選択された時にはカムプレート8を第1ホームポジションHp1に移動し、第2グループ4Bの穿孔が選択された時には第2ホームポジジョンHp2に移動する。
【0039】
そして各ホームポジションからセンタ位置Cpに移動する過程で穿孔動作を実行する。この移動は駆動モータDmの回転量を前述の作動部センサS1S2と後述する駆動部センサS3で制御する。
また第1、第2グループの穿孔動作を連続して実行するときには、各ホームポジジョンHp1,Hp2からセンタ位置Cpに移動し、次いでセンタ位置Cpからホームポジジョンに復帰移動する動作で後続シートに穿孔し、これを繰り返すことによって連続穿孔する。
なお、装置の元ホームポジジョンは第1ホームポジションHp1に設定(デホルト設定)されている。
【0040】
駆動カム手段15としては回転運動を直線運動に変換する種々のカム機構が採用可能であり、図示の螺旋カム溝16に限定されるものではない。例えばカム溝がループ状に形成されたハート形カムであっても回転運動を直線運動に変換することが可能である。
【0041】
本発明の駆動カム手段15について図4(a)に従って説明する。前述したように駆動モータDmと同様に下部フレーム3に円筒カム15aが回転可能に軸受支持されている。この円筒カム15aには受動歯車14xが一体に形成され、この歯車には駆動モータDmに連結した減速歯車14a、14b…が連結されている。
従って駆動モータDmの回転で円筒カム15aを正逆方向に回転することが可能となる。
【0042】
円筒カム15aの外周には、カムプレート8のストローク方向に螺旋カム溝16が形成されている。この螺旋カム溝16にはカムプレート8に一体形成(植設)したフォロアピン17が係合してある。
このような構成において駆動モータDmで円筒カム15aを回転すると、これに形成された螺旋カム溝16に沿ってフォロアピン17が左右動し、カムプレート8を所定ストロークで往復動することとなる。
【0043】
上記円筒カム15aには、カムプレート8の位置を検出する駆動部センサS3が次のように設けられている。円筒カム15aには円周方向にセンサフラグ18が配置され、その位置を検知することによって円筒カムの角度位置を検出することができる。
【0044】
上述の作動部センサS1、S2と駆動部センサS3の作用について説明する。カムプレート8をスライダブリに支持する上部フレーム2には、第1ホームポジションHp1を検出するセンサS1と、第2ホームポジションHp2を検出するセンサS2が配置されている。一方カムプレート8にはセンサフラグ12が設けられている。
そしてフラグ12をセンサS1が検出する時にはカムプレート8は第1ホームポジションHp1(2穴穿孔時の動作開始点)に位置し、センサS2がフラグを検出する時には第2ホームポジションHp2(3穴穿孔の動作開始点)に位置している。
これと共に円筒カム15aに配置されているフラグ18がセンサS3に位置するときにはカムプレート8はセンタ位置Cpに位置することを検知する。
【0045】
従って、センサS1がOFF、センサS2がOFF、センサS3がONの時にはカムプレート8はセンタ位置Cpに位置している。
そこで第1ホームポジジョンHp1とセンタ位置Cpとの間でカムプレート8を往復動するときには第1グループ4A(例えば2穴穿孔)のパンチ動作が繰り返され、第2ホームポジジョンHp2とセンタ位置Cpとの間で往復動するときには第2グループ4B(例えば3穴穿孔)のパンチ動作が繰り返されることとなる。これらのセンサS1、S2、S3の検出信号により穿孔動作の制御が可能となる。
【0046】
本発明は上述の円筒カム15(駆動カム手段)を次のように構成したことを特徴としている。前述の螺旋カム溝16のピッチと長さは、モータの負荷トルクとカムプレート8のストロークStを考慮して設定する。
そして螺旋カム溝16にはカムプレート8の右限、左限位置で閉じることなく環状溝19a,19bが連続するように形成されている。つまり図4に示すように螺旋カム溝16には左限位置に環状溝19aが、右限位置に環状溝19bが連続するように連結されている。
【0047】
つまり円筒カム15aは中央部の螺旋カム溝16は所定ピッチで傾斜したカム面に形成され、左右端部はピッチ角度が実質的に[ゼロ]である、環状溝19a、19bで形成されている。
この環状溝19にフォロアピン17が位置するときには実質的にカムプレート8は左右動することなくその位置にとどまる。
【0048】
上記環状溝19とカムプレート8の作動カム溝9との関係は、環状溝19にフォロアピン17が位置するときには、カム溝9はすべてのパンチ部材4を上死点位置Upに保持する位置関係に設定されている。
これは円筒カム15aがコントロール不能となったときフォロアピン17は環状溝19に沿って円周方向に周回動するためであり、このときパンチ部材4が穿孔方向に動作して不慮の事故を引き起こさないためである。
【0049】
上記カムプレート8は駆動モータDmによって往復動し、パンチ部材4を穿孔方向に上下動する。このときシートジャム、装置故障、停電などで装置が停止すると、使用者(オペレータ)がカムプレート8を手動で位置移動してジャムシートを除去するなどの処置を施す。
このメンテナンス操作のためカムプレート8に操作摘み(不図示)、モータ回転軸に手動ハンドル(不図示)を設ける場合がある。このような不規則操作のときカム溝9の位置とパンチ部材4の位置が狂うことがある。
例えば複数のパンチ部材4を負荷トルクを軽減するために位相差δを形成して穿孔タイミングを時間的にずらす前述の構成を採用したときには、この位置を再現できなくなる恐れがある。
【0050】
そこで螺旋カム溝16でカムプレート8を往復駆動する場合には、カム溝に右限位置Hp1又は左限位置Hp2を超えてカム位置が移動しないようにストッパ壁を設ける必要がある。
このストッパ壁は、センサの故障、ノイズ、制御プログラムの暴走、モータのドライブ回路の暴走などで停止すべきモータが回転し続けるとストッパ壁を破損、フォロアピンを破損、などの故障と、モータの発熱、故障などを招く。
【0051】
[ストッパ機構の第1実施形態]
その実施形態は、環状溝19の円周方向の一部に径路切換片25が設けてある。図4に示すように螺旋カム溝16と環状溝19(19a、19b)との分岐部にはフラッパ片25が支軸25xで揺動可能に設けられている。このフラッパ片25は図4(b)に示すように円筒カム15aが反時計方向に回転するときにはフラッパ片25は破線方向に揺動してフォロアピン17が環状溝19に沿って旋回動するように案内する。
【0052】
このフラッパ片25は図示しない付勢スプリングで図示実線方向に付勢され、円筒カム15aを時計方向回転するときには環状溝19に沿って旋回動するフォロアピン17を螺旋カム溝16に向けて案内する。
これは駆動モータDmが暴走回転したとき、螺旋カム溝16のピッチ角度に応じてフォロアピン17は螺旋溝の進み方向に移動する(図4に示すピッチ角度では左限位置側に移動)。そして環状溝19bによってフォロアピン17の破損を未然に防止することとなる。
【0053】
そして駆動モータDmの暴走の原因が解決した時にはフォロアピン17は螺旋カム溝16側に復帰することが好ましい(装置の再起動のため)。
このため図示の装置は円筒カム15aが暴走回転方向と反対方向に回転すると、運動規制手段(フラッパ片25、後述のストッパ壁21、ストッパ片24)で自動的に螺旋カム溝16に復帰するように構成してある。
なお、図示しないが螺旋カム溝16の右限位置にも同様の環状溝19aが設けてあり、この場合との運動規制手段は回転方向が反対方向となる。
【0054】
[ストッパ機構の第2実施形態]
図5(a)(b)に示す実施形態は、フォロアピン17を、これと係合する環状溝19からストッパ壁21を乗り越えるように移動可能に構成する実施形態を示す。
図示のものはベースフレーム1に設けたブラケット22にフォロアピン17をスプリング23で出没可能に取り付ける。
そしてスプリング23の付勢力でフォロアピン17が環状溝18に嵌合し、スプリング23に抗する力が及んだ時にはフォロアピン17は環状溝18から離脱する方向に上下移動可能に構成する。
【0055】
図5(a)(b)は、右限位置と左限位置、それぞれに形成されている環状溝19a、19bの一方を示すが、右限位置と左限位置に対象となる位置に対向するストッパ壁21が設けてある。このストッパ壁21には円筒カム15aの回転方向(図示矢印方向;図5反時計方向)にモータの駆動力が伝達される。
【0056】
そして、ストッパ壁21には図示するようなジャンプ面21jが形成してあり、円筒カム15aが矢印方向に回転するときに、ストッパ壁21にフォロアピン17が突き当たるとその作用でカムプレート8は停止する。
そして予め設定した所定の力Fを越えると、フォロアピン17はスプリング23の抗力に反して環状溝19との係合を解除する方向(図5上方向)に移動する。このピンの浮き上がり作用でフォロアピン17はストッパ壁21を乗り越えて、環状溝18に沿って周回動する。また、円筒カム15aを反対方向(時計方向)に回転すると、フォロアピン17はストッパ壁21を乗り越えることなく螺旋カム溝16に沿って移動する。
【0057】
このように駆動モータDmが暴走したとき、円筒カム15aは連続して回転し、フォロアピン17を損壊する恐れが生ずる。このときフォロアピン17は右限又は左限の何れか(モータの回転方向によって決定される)に移動する。この右限又は左限位置に螺旋カム溝16と連続して環状溝19a、19bが設けられているのでフォロアピン17は破損することなくこの環状溝19に沿って旋回動を繰り返す。
そしてストッパ壁21はオペレータがカムプレート8を手動操作したときにフォロアピン17にそれ以上の移動を阻止する力が及びその操作を禁止する作用を果たす。
【0058】
このような構成において、駆動モータDmをポジションセンサSの信号で正逆回転すると、カムプレート8はホームポジションHpからセンタ位置Cp間で往復移動し、第1グループ4Aのパンチ部材4b,4dに、又は第2グループ4Bのパンチ部材4a,4c,4dに穿孔動作を実行させる。
【0059】
その過程でシートジャムなどの装置停止の不具合が発生すると、オペレータはカムプレート8の位置を手動で移動してジャムシートを除去する。このときカムプレート8を右限又は左限位置を超えて移動しないようにストッパ壁21が阻止力として作用する。
また、モータの過剰回転が発生したときにはフォロアピン17はスプリング23の作用で壁面を乗り越えて環状溝19内を円周方向に旋回運動する。
このためストッパ壁の破損すること、フォロアピンを破損すること、あるいは駆動モータの発熱事故、故障を未然に防止することが可能となる。
【0060】
[ストッパ機構の第3実施形態]
図5(c)(d)に示す実施形態は、環状溝19に形成するストッパ手段が所定圧力以上で係合解除方向に移動する場合を示す。
環状溝19には、弾性部材から形成したストッパ片24が設けてあり、このストッパ片24は弾性に富んだ板バネで構成されている。そして環状溝19内にフォロアピン17の運動を遮るように突出して配置され、所定以上の力がフォロアピン17から作用するとバネ力で図5(c)の状態から(d)の状態に退避する。その作用は前述の第1実施形態と同様であり、同一符合を付して説明を省略する。
【0061】
次に図3(b)に示す、作動カム9と駆動カム手段15の位置関係について説明する。作動カム9は前述したようにカムプレート8に複数のパンチ部材4に対応する位置に配置され、パンチ部材4のカムピン10が係合されている。
この作動カム9は図示するように各パンチ部材4を上死点Upに保持する水平方向溝9xとパンチ部材4を上死点Upと下死点Dpとの間で上下移動する傾斜垂直方向溝9yとを有するV字状溝カムで構成されている。
【0062】
そして前述の螺旋カム溝16はその右限端に環状溝19aが形成され、左限端に環状溝19bが形成されている。そしてカムプレート8の作動カム9と円筒カム15aの螺旋カム溝16及び環状溝19とは、フォロアピン17が螺旋カム溝16に沿って移動するときには各パンチ部材4を上死点Upと下死点Dpとの間で上下移動する。
これと共にフォロアピン17が環状溝19に沿って旋回動する時には各パンチ部材4を上死点Upに位置保持する位置関係に構成されている。
【符号の説明】
【0063】
1 ベースフレーム
2 上部フレーム
2a 上フランジ部
2b 下フランジ部
2y 軸受
2z 軸受
3 下部フレーム
4 パンチ部材(4a、4b、4c、4d、4e)
4A 第1グループ(4b,4d)
4B 第2グループ(4a,4c,4e)
8 カムプレート
9 作動カム溝
9x 水平方向成分
9y 傾斜垂直方向成分
10 フォロアピン
12 フラグ
13 回転軸(駆動軸)
14 減速歯車機構
14x 受動歯車
15 駆動カム手段
15a 円筒カム
16 螺旋カム溝
17 フォロアピン
18 センサフラグ
19a、19b 環状溝
20 ストッパ手段
21 ストッパ壁
22 ブラケット
23 スプリング
24 ストッパ片
25 フラッパ片
S1,S2 作動部センサ
S3 駆動部センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線上に配列され穿孔方向に上下動する複数のパンチ部材と、
前記穿孔方向と略直交する方向に所定ストロークで往復動するカムプレートと、
前記カムプレートに形成され前記複数のパンチ部材がそれぞれ上死点と下死点との間で上下動する作動カム溝と、
前記パンチ部材に穿孔動作させるための駆動モータと、
前記駆動モータの回転を直線運動に変換して前記カムプレートに伝達する駆動カム手段と、
を備え、
前記駆動カム手段は、
装置フレームに回動可能に支持され前記カムプレートの移動方向に沿って形成された螺旋カム溝を有する円筒カムと、
この円筒カムに前記駆動モータの回転を伝達する伝動手段と、
で構成され、
前記カムプレートには、装置フレームに直線往復動可能に支持されると共に前記螺旋カム溝に係合するフォロアピンが設けられ、
前記円筒カムには、
前記螺旋カム溝の左限端又は右限端に連なる環状溝が設けられ、この環状溝は前記フォロアピンが円周方向に旋回動可能となるように構成され、
前記環状溝の一部には前記フォロアピンを前記環状溝側に案内するか前記螺旋カム溝側に案内するか方向選択する運動規制手段が設けられていることを特徴とするシート穿孔装置。
【請求項2】
前記運動規制手段は、前記環状溝と前記螺旋カム溝との分岐部に設けられ前記円筒カムの回転方向に応じて前記フォロアピンを前記環状溝側に案内するか前記螺旋カム溝側に案内するストッパ部材であることを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項3】
前記カムプレートに形成された前記作動カム溝は、
各パンチ部材を上死点に保持する水平方向溝と、
各パンチ部材を上死点と下死点との間で上下動する傾斜垂直方向溝と、
を有するV字形状に構成され、
前記カムプレートは、
前記フォロアピンが前記螺旋カム溝に沿って移動するときには各パンチ部材を上死点と下死点との間で上下動し、
前記フォロアピンが前記環状溝に沿って旋回動するときには各パンチ部材を上死点に位置保持することを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項4】
前記環状溝のストッパ部材は、
前記円筒カムの一方向回転ではフォロアピンの円周方向運動を許容し、反対方向回転ではフォロアピンの円周方向運動を拒否して螺旋カム溝へ移動させることを特徴とする請求項2に記載のシート穿孔装置
【請求項5】
前記環状溝のストッパ部材は、
前記フォロアピンの円周方向への移動を阻止するストッパ壁で構成され、
前記フォロアピンは、
前記環状溝の係合方向に出没可能に形成され、
このストッパ壁とフォロアピンとは所定以上の力が作用するとフォロアピンが円周方向に移動可能となることを特徴とする請求項2に記載のシート穿孔装置
【請求項6】
前記環状溝のストッパ部材は、
前記フォロアピンの円周方向への移動を阻止するストッパ壁で構成され、
このストッパ壁はフォロアピンの移動軌跡内に出没可能に形成され、
所定以上の力が作用すると前記フォロアピンの円周方向への移動を許容することを特徴とする請求項2に記載のシート穿孔装置。
【請求項7】
前記環状溝と前記作動カム溝とは、
前記環状溝に前記フォロアピンが係合するとき、
前記複数のパンチ部材を上死点位置に待機させる位置関係に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項8】
前記作動カム溝は略V字形状のカム溝で形成され、
前記複数のパンチ部材を上死点位置と下死点位置との間で上下動するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート穿孔装置。
【請求項9】
シートを順次搬送する搬送経路と、
前記搬送経路から送られたシートを一時的に載置する処理トレイと、
前記処理トレイに配置された後処理手段と、
前記処理トレイから送られたシートを収容するスタックトレイと、
を備え、
前記搬送経路には搬送するシートにファイリング穴を穿孔するシート穿孔装置が配置されると共に、
このシート穿孔装置は請求項1乃至8のいずれか1項に記載の構成を備えていることを特徴とする後処理装置。
【請求項10】
前記後処理手段は前記処理トレイ上に集積されたシートに綴じ処理を施すステープルユニットであることを特徴とする請求項9に記載の後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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