説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】昇降装置の初期動作時にシート積載部のロックを自動的に解除可能に構成して、ユーザビリティを向上させたシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート給送装置13は、装置本体50Aに対して着脱可能なカセット本体302A、及び昇降動作可能な中板304を有する給紙カセット302と、中板304を昇降動作させる昇降装置とを備えている。給紙カセット302は、中板304をカセット本体302Aに対しロックするロック位置と中板304の上昇時にロックを解除するロック解除位置とに移動可能なロック部材310を有している。そして、昇降装置は、カセット本体302Aへの給紙カセット302の装着状態にて、ロック部材310でロックされた中板304を上昇させる際に、中板304の上昇動作に先立ってロック部材310をロック解除位置に移動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載部を有する給紙カセットを備えたシート給送装置、及びこのシート給送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置は、シートを収納する給紙カセットを備え、給紙カセットから送り出されたシートに画像を形成する構成を備えている。
【0003】
近年、物流の効率化が求められる中で梱包材の小型軽量化が進み、その結果として、画像形成装置の輸送時に乱雑に扱われて、装置本体に与える振動や衝撃による外力が大きくなる傾向にある。そのため、給紙カセットの中板が振動して中板自体に損傷を受けたり、シートを給送するピックアップローラに中板が衝突してローラ部を破損させたりするおそれが出てきた。そこで、多くの画像形成装置において、輸送時に、発泡スチロールやダンボール等の緩衝材もしくは、専用の固定部材などによって給紙カセットに設けられている中板を固定していた(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、従来の給紙カセットを図19(a),(b),(c)に示す。図19(c)に示すように、給紙カセット901に備えられた中板902は、回動軸部903aによりカセット本体903に対して上下方向に回動自在に支持されている。中板902は、不図示のスプリングによって、シート束のシート供給側の端部を押し上げて、不図示のピックアップローラに所定の押圧力で圧接させる。中板902で押し上げられたシートは、ピックアップローラによって、安定した状態でカセット本体903から送り出される。
【0005】
そして、画像形成装置の輸送時には、ロック部材904が、その係合部904aを中板902の貫通孔902a(図19(a))に貫通させて、カセット本体903の底部903c(図19(b))における被係合部903bに係止させる。このように従来は、底部903cに装着されるロック部材904により、中板902を浮き上がらないようにロックして、給紙カセット901の中板902が振動、損傷する等の不都合の発生を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−175742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来技術では、画像形成装置の取扱説明書等により、固定部材904が給紙カセット901から除去されるべき部品であることをユーザに知らせて、ユーザに取り外すことを求めているものの、除去作業自体が忘れられることも多かった。また、画像形成装置を使用し始める際、給紙カセット901の固定部材904は、カセット本体903の底部903cから取り外すのが煩雑であり、必ずしもユーザビリティに優れたものとはいえなかった。このことは、今後もニーズが高まると予想される画像形成装置のプラグインプレイ(ユーザが電源プラグをコンセントに差し込みスイッチを入れるだけで、装置を自動的に使用可能な状況にすること)を実現するという観点においても、技術的な課題となっている。
【0008】
本発明は、中板としてのシート積載部を昇降させる給紙カセットを備えたシート給送装置にて、昇降装置の初期動作時にシート積載部のロックを自動的に解除可能にし、ユーザビリティを向上させたシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、装置本体に対して着脱可能なカセット本体、及び昇降動作可能なシート積載部を有する給紙カセットと、前記シート積載部を昇降動作させる昇降装置と、を備えるシート給送装置において、前記給紙カセットに、前記シート積載部を前記カセット本体に対しロックするロック位置と前記シート積載部の上昇時に前記ロックを解除するロック解除位置とに移動可能なロック部材を設け、前記昇降装置は、前記装置本体への前記給紙カセットの装着状態にて、前記ロック部材でロックされた前記シート積載部を上昇させる際に、前記シート積載部の上昇動作に先立って前記ロック部材を前記ロック解除位置に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、輸送時等にカセット本体にロック部材でシート積載部をロックされた給紙カセットに対し、昇降装置による初期動作時に自動的にロックを解除することが可能になる。このため、従来のようにユーザが固定部材をいちいち除去する作業を行う必要がなく、ユーザビリティに優れた給紙カセットを備えたシート給送装置を提供することができる。また、昇降装置として既存のものを利用することが可能になることから、低コスト化の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態における画像形成装置の概略断面図。
【図2】本発明に係る第1の実施形態におけるシート給送装置の後方斜視図。
【図3】第1の実施形態における加圧駆動ユニットの斜視図。
【図4】図3の加圧駆動ユニットの駆動フレームを取り外して背面側から見た斜視図。
【図5】給紙カセットの中板加圧に作用するラックの位置及び給紙カセット自体を検知する部分を示す斜視図。
【図6】給紙カセットの中板加圧に作用するラック単体の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図7】中板が固定され、加圧(押し上げ)されていない状態の給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図、(c)は主にラックとロック部材の位置関係を示す図、(d)は中板とロック部材との状態を示す図。
【図8】図7から、加圧モータの駆動で中板の固定を解除し、中板の加圧を開始する直前の給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図、(c)は主にラックとロック部材の位置関係を示す図、(d)は中板とロック部材との状態を示す図。
【図9】図8から、中板の加圧を行い、シート供給状態にした給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図、(c)は主にラックとロック部材の位置関係を示す図、(d)は中板とロック部材との状態を示す図。
【図10】図9から、さらに中板の加圧を行った給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図、(c)は主にラックとロック部材の位置関係を示す図、(d)は中板とロック部材との状態を示す図。
【図11】本発明に係る第2の実施形態のシート給送装置における、中板が固定され、かつ、加圧されていない状態の給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図。
【図12】図11から、加圧モータの駆動で中板の固定を解除し、中板の加圧を開始する直前の給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図。
【図13】図12から、さらに中板の加圧を行った給紙カセットの背部状態図。(a)は背面図、(b)は加圧モータの回転力をカセットギヤに伝達する歯車列の斜視図。
【図14】本発明に係る第3の実施形態におけるシート収納部を引き出した状態のシート給送装置図。(a)はシート収納部の斜視図、(b)はシート収納部の平面図。
【図15】ピックアップローラ及びフィードローラを示す図。(a)は斜視図、(b)は分離部を含めた側面図。
【図16】第3の実施形態におけるシート給送装置の給紙カセットの部分的な背部状態図。(a)は中板を固定し、加圧されていない状態の図、(b)は中板の固定を解除完了した時の図、(c)は中板の加圧を開始する直前の図、(d)は中板の加圧を行った給紙カセットの背部状態図。
【図17】図16の(a)、(b)、(c)、(d)それぞれに対応して、(a)、(b)、(c)、(d)に給紙カセットの中板側から見た、中板の加圧に関連する部品の状態遷移を表す図。
【図18】図16の(a)、(b)、(c)、(d)それぞれに対応して、(a)、(b)、(c)、(d)に中板とロック部材の位置関係を示す概略的な部分断面図。
【図19】従来例における給紙カセットの中板固定の図。(a)はロック部材の把手側(シート積載側)からの斜視図、(b)は給紙カセットの裏側からみたロック部材の係止部を示す斜視図、(c)は給紙カセットの全体図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
<第1の実施形態>
図1〜図10を用いて、本実施形態におけるシート給送装置13及びこれを備えた画像形成装置50について説明する。以下の説明では、まず図1を用いて画像形成装置50の全体構成について説明する。次いで、図2〜図10を用いて、給紙カセット302の構成について説明する。
【0014】
[画像形成装置の全体構成]
まず、画像形成装置50の全体構成について、図1を参照して説明する。図1に示す画像形成装置50は、シート積載部である中板304から給送されるシートSに画像を形成する画像形成部を有する装置本体50Aを備えている。この装置本体50Aに、水平方向に対し傾斜して並設された4個のプロセスカートリッジ7(7a〜7d)を備えている。プロセスカートリッジ7(7a〜7d)は、夫々1個の像担持体としての電子写真感光体ドラム1(1a〜1d)を備えている。また、画像形成装置50には、各部を統括的に制御する制御部40が設けられている。なお、画像形成部は、後述する感光体ドラム1、中間転写ベルト5及び二次転写部15等で構成されている。
【0015】
電子写真感光体ドラム(以下、「感光体ドラム」という)1は、不図示の駆動部材によって、図1中、時計回り方向(矢印Q方向)に回転駆動される。感光体ドラム1(1a〜1d)の各周囲には、その回転方向に従って順に、感光体ドラムに作用する以下のプロセス機構(2、3、4、5、6)が配置されている。
【0016】
すなわち、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電ローラ2(2a〜2d)、及び、静電潜像を現像剤であるトナーを用いて現像する現像ユニット4(4a〜4d)が配置されている。また、転写後の感光体ドラム1表面に残ったトナーを除去するクリーニング部材6(6a〜6d)が配置されている。さらに、画像情報に基づいてレーザビームを照射し、感光体ドラム1に静電潜像を形成するスキャナユニット3、感光体ドラム1上の4色の現像剤(以下、「トナー」という)画像が一括して転写される中間転写ベルト5が配置されている。感光体ドラム1、帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6は、一体的にカートリッジ化され、画像形成装置50の装着部に対して着脱可能なプロセスカートリッジ7を構成している。
【0017】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ10、テンションローラ11及び二次転写対向ローラ33に張架されて、矢印R方向に回動可能に構成されている。また、各感光体ドラム1(1a〜1d)に対向して、中間転写ベルト5の内側に一次転写ローラ12(12a〜12d)が配設されており、バイアス印加装置(不図示)により転写バイアスを印加する構成となっている。
【0018】
感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム1が矢印Q方向に回転し、中間転写ベルト5が矢印R方向に回転し、さらに一次転写ローラ12に正極性のバイアスが印加されることにより、順次、中間転写ベルト5上に一次転写される。そして、中間転写ベルト5に4色のトナー像が重なった状態で二次転写部15まで搬送される。
【0019】
一方、トナー画像転写後に、感光体ドラム1表面に残ったトナーは、クリーニング部材6によって除去され、除去されたトナーは感光体ユニット26(26a〜26d)内の除去トナー室に回収される。
【0020】
上記画像形成動作と同期してシート給送装置13やレジストローラ対17等からなる搬送機構によってシートSが搬送される。シート給送装置13は、シートSを中板304に積載した給紙カセット302が着脱可能に収納される給送部24と、シートSを給送するピックアップローラ(給送ローラ)8と、送り出されたシートSを搬送する搬送ローラ対16とを有している。給紙カセット302は、図1における装置本体50Aの手前方向へ引き抜くことが可能に構成されている。ユーザは給紙カセット302を引き抜き、画像形成装置50の装置本体50Aから取り外した後、シートSをセットして装置本体50Aに挿入することで、シート補給を完了させる。給紙カセット302に収納されたシートSは、中板304の上昇で上方のピックアップローラ8に圧接され、ピックアップローラ8で送り出されながら分離パッド9で一枚ずつ分離され(摩擦片分離方式)、搬送ローラ対16によって下流側に搬送される。
【0021】
そして、シート給送装置13から搬送されたシートSは、レジストローラ対17によって二次転写部15に搬送される。二次転写部15において、二次転写ローラ18に正極性のバイアスが印加されることにより、搬送されたシートSに中間転写ベルト5上の4色のトナー像が二次転写される。
【0022】
シートSへの二次転写後に中間転写ベルト5上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置23によって除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、装置本体50Aの上方隅部(図の上部左側)に配置された廃トナー回収容器34に回収される。
【0023】
一方、二次転写ローラ18の上方に配置された定着装置14は、シートSに形成されたトナー画像に熱及び圧力を加えて定着させるように構成されている。定着装置14は、定着ベルト14a及び加圧ローラ14bを有している。定着ベルト14aは円筒形状であり、ヒータ等の発熱部材が接着されたベルトガイド部材(不図示)にガイドされている。定着ベルト14aと加圧ローラ14bとが所定の力で圧接されることで定着ニップが形成されている。
【0024】
感光体ドラム1、中間転写ベルト5及び二次転写部15等で構成される画像形成部から搬送されるシートSが、未定着トナー画像を形成された状態で定着ベルト14aと加圧ローラ14b間の定着ニップで加熱及び加圧されて、未定着トナー画像を定着される。その後、トナー画像を定着されたシートSは、排出ローラ対19によって排出トレイ20に排出される。
【0025】
次いで、図1乃至図10を参照して、本実施形態におけるシート給送装置13について説明する。即ち、シート給送装置13は、装置本体50Aに対して着脱可能なカセット本体302A、及び下降側の待機位置と上昇側の使用位置との間で昇降動作可能な中板304を有する給紙カセット302と、中板304を昇降動作させる昇降装置とを備えている。この昇降装置は、後述する加圧駆動ユニット100、カセットギヤ320、ラック部材319、空転回動アーム321、中板スプリング318、回動アーム317、及び押圧レバー316等から構成されている。
【0026】
なお、本発明並びに本実施形態(後述する第2、第3の実施形態も含む)において、「待機位置」は、中板304(シート積載部)が上昇力を受けずにその使用前の下降位置(待機する位置)にある状態を意味している。また、「使用位置」は、中板304(シート積載部)が上昇してその上のシートをピックアップローラ8,303(給送ローラ)に押し当てて給送可能とする「給送位置」を意味している。更に、「ロック位置」は、ロック部材310が中板304をカセット本体302Aに固定するように突出した位置を意味し、「ロック解除位置」は、ロック部材310が中板304をカセット本体302Aから解放するように後退した位置を意味している。
【0027】
図2に示すように、シート給送装置13における給送部24は、装置本体50Aに対して着脱可能な給紙カセット302と、装置本体50A側に配置された加圧駆動ユニット100とを備えている。給紙カセット302には、シートSを積載するシート積載部としての中板304が、回動軸部304bを支点として回転自在となるように配設されている。中板304の下側には、中板304を押し上げるリフト機構としての押圧レバー316が配設されている。押圧レバー316の先端は、カセット本体302Aの中央部で中板304の裏面に接触している。
【0028】
給紙カセット302には、シート束の後端を規制する後端規制板307が配設されている。シート束の後端とは、シート供給(給送)方向(図2の矢印イ方向)の上流側の端部である。後端規制板307は、後端規制レバー322を操作することによりシート供給方向(シート給送方向)の上流側と下流側とに移動できるように構成されている。また、給紙カセット302には、シート束の幅方向を規制するサイド規制板306,306が配設されている。
【0029】
図2及び図5に示すように、給紙カセット302の後側(図2の手前側)の後面壁302cにおけるシート供給方向下流側には、回動アーム317、ラック部材319、カセットギヤ320が配設されている。ラック部材319は、駆動源である加圧駆動ユニット100からの駆動力を受けて中板304を上昇させる方向に移動し且つカム部319gを一体に有している。回動アーム317の突起部317aと、ラック部材319のボス部319aを支点として揺動する空転回動アーム321の突起部321aとの間には、弾性体である中板スプリング318が掛け渡されている。中板スプリング318は、ラック部材319からの駆動力を中板304に上昇力として伝達する回動アーム317に一端を取り付けられた引張りバネ(引張りコイルスプリング)からなり、シートをピックアップローラ8に押し付ける力を中板304に加えている。
【0030】
本実施形態では、加圧駆動ユニット100、カセットギヤ320、ラック部材319、空転回動アーム321、中板スプリング318、回動アーム317及び押圧レバー316により昇降装置が構成されている。昇降装置は、装置本体50Aへの給紙カセット302の装着状態にて、後述のロック部材310で待機位置にロックされた中板304を使用位置に上昇させる際に、中板304の上昇動作に先立ってロック部材310をロック解除位置に移動させるように構成される。この昇降装置は、後述するように、ロック部材310によるロックの解除動作の完了後に中板304の上昇動作を開始させる。
【0031】
図5及び図6に示すように、ラック部材319はその歯部319bが、カセット本体302Aの後面壁302cに回転自在に支持されたカセットギヤ320に噛み合っている。カセットギヤ320は、加圧駆動ユニット100からの駆動力をラック部材319に伝達する。なお、符号319cは作動位置を検知するための検知用突起部を、319eは第1回転止め凸部を、319fは第2回転止め凸部を、それぞれ示している。
【0032】
図3及び図4に示すように、加圧駆動ユニット100は、駆動前フレーム100a及び駆動後フレーム100bの2つのフレームで構成されている。これらフレーム100a,100b内には、順次配列されたウォームギヤ109、減速ギヤ108、減速ギヤ107及び駆動伝達ギヤ101が隣同士で互いに噛み合う歯車列を備えた駆動機構が配設されている。
【0033】
駆動伝達ギヤ101は、給紙カセット302を装置本体50Aに装着したときにカセットギヤ320に噛み合う。駆動伝達ギヤ101は、駆動伝達軸102に回転自在に支持されている。この駆動伝達軸102は、図7(b)に示すように、給紙カセット302が装置本体50Aに装着されたとき孔部302jに嵌合する。これにより、駆動伝達ギヤ101とカセットギヤ320との軸間距離が正確に保持され、加圧駆動ユニット100からの駆動力が給紙カセット302側に円滑に伝達される。
【0034】
駆動伝達ギヤ101は、ギヤスプリング106によって図4における矢印B方向に付勢されている。駆動伝達ギヤ101は、加圧駆動ユニット100を給紙カセット302の後面壁302cに組み込む際、カセットギヤ320と円滑に噛み合わなかった場合に、ギヤスプリング106に抗して図4における矢印B方向と反対側に退避する。これにより、駆動伝達ギヤ101自身と、カセットギヤ320との破損を防ぐ。図4の矢印B方向と逆の方向に退避した駆動伝達ギヤ101は、加圧モータ110が回動することでカセットギヤ320に噛み合う。
【0035】
図4に示すように、駆動後フレーム100b(図3)には軸107a,108aが設けられており、これら軸107a,108aには減速ギヤ107,108がそれぞれ回転自在に支持されている。軸107a,108aは、駆動前フレーム100aに形成された孔(不図示)にそれぞれ嵌合することによって位置決めされる。加圧モータ110は、その回転軸にウォームギヤ109を取り付けられた状態で駆動後フレーム100bに固定されている。このように、加圧駆動ユニット100は、減速機構としてウォームギヤ109を有することで大きな減速比を得ており、これにより加圧駆動ユニット100が小型化されている。
【0036】
画像形成装置50の装置本体50A(図1)には、給紙カセット302に突設されている位置決めボス302a(図5)に嵌合する位置決め孔(不図示)が給紙カセット302に対向して設けられている。位置決めボス302a,302a相互の係合、及び駆動伝達軸102と位置決め孔との係合により、装置本体50Aのフレームを介して加圧駆動ユニット100と給紙カセット302とが正確に位置決めされて、給紙カセット302側に駆動力が確実に伝達される。
【0037】
給紙カセット302には、図5に示すように、カセットギヤ320の近傍に位置するように検知用突起部105が配設されている。この検知用突起部105に対向する装置本体50A側の駆動前フレーム100aには、図3に示す検知部としてのフォトインタラプタ103が配設されている。同様に、給紙カセット302には、図5に示すように、ラック部材319の端部に検知用突起部319cが設けられている。この検知用突起部319cに対向する駆動前フレーム100aには、図3に示す検知部としてのフォトインタラプタ104が配設されている。
【0038】
従って、装置本体50A内に給紙カセット302が装着されると、検知用突起部105がフォトインタラプタ103を遮光することに基づき、制御部40が給紙カセット302の有無を判断する。また、給紙カセット302の装着状態においてフォトインタラプタ104が検知用突起部319cを検知することに基づき、制御部40がラック部材319の位置を検出する。
【0039】
ラック部材319は、駆動源である加圧駆動ユニット100からの駆動力を下流に伝達する移動に伴ってロック位置のロック部材310をロック解除位置に切換える第1移動部を構成している。中板スプリング(第2移動部)318は、ラック部材(第1移動部)319からの駆動力を中板304に上昇力として伝達するように移動する第2移動部を構成している。空転回動アーム321は、中板スプリング318の他端を取り付けられてその回動可能状態から中板スプリング318を牽引可能な牽引位置で係合凸部321cをボス部319aによって係止されるようにラック部材319に回動可能に支持されている。このような空転回動アーム321は、ラック部材319と中板スプリング318との間にてラック部材319によるロック解除位置への切換えの完了後に中板スプリング318に駆動力が伝わるように時間差を付ける空移動部を構成している。
【0040】
次に、図7〜図10に基づいて、本実施形態の給紙カセット302における、中板304の固定構成及びその解除動作と、中板304の押し上げ動作に関して、詳細に説明する。なお、図7は、中板304が固定されて加圧されていない状態の給紙カセット302の背部状態図である。(a)は背面図、(b)は加圧モータ110の回転力をカセットギヤ320に伝達する歯車列の斜視図、(c)は主にラック部材319とロック部材310の位置関係を示す図、(d)は図2における(イ)で示す部分の部分拡大図である。
【0041】
給紙カセット302には、ロック部材310が設けられている。このロック部材310は、下降した待機位置の中板304をカセット本体302Aに対してロックするロック位置(図7(c)の位置)と、使用位置への中板304の上昇時にロックを解除するロック解除位置(図8〜9(c)の位置)とに移動可能である。給紙カセット302に配置されたロック部材310は、フック状先端部310a、係合凹部310b,310c、及び従動部310dを有している。
【0042】
給紙カセット302における位置決めボス302aの近傍内方には、シート給送方向(図7(c)の左右方向)と直交する幅方向(同図の上下方向)に、複数箇所(本実施形態では4箇所)のガイド部302hが間隔をあけて設けられている。これら複数のガイド部302hは、幅方向に沿って一直線状になるように配列されており、これらに沿って挿入されたロック部材310を、幅方向に沿って摺動自在となるように支持している。
【0043】
例えば、運搬されてきた画像形成装置50の梱包を開けてユーザが装置本体50Aを初めて使用する初期使用時、ロック部材310は、次のようになっている。つまり、ロック部材310は、図7(d)に示すように、フック状先端部310aを、中板304の所定位置に形成された係合穴部304aに係合することによって、中板304をカセット本体302Aにロックしている。このような図7(a)〜(d)に示す状態において、ロック部材310の縁部の一部に形成された係合凹部310bが、給紙カセット302の一部に一体的に設けられたスナップフィット部の係合凸部302dと係合している。このため、ロック部材310が給紙カセット302に対して移動することはなく、中板304のカセット本体302Aに対するロックが解除されることはない。
【0044】
係合凹部310b,310cは、ロック部材310における係合凸部302dに対向する縁部の中央部分に所定の間隔をあけて形成されている。ロック部材310のロック位置では、係合凹部310bに係合凸部302dが係合可能であり、ロック部材310のロック解除位置では、係合凹部310cに係合凸部302dが係合可能である。なお、係合凹部310b,310c及び係合凸部302dにより、給紙カセット302に設けられ且つロック位置とロック解除位置とでラック部材319をそれぞれ係止可能な係止部が構成されている。
【0045】
そして、給紙カセット302が装置本体50Aの所定部位に挿入された後、主電源の入力で加圧モータ110が始動されると、加圧モータ110の駆動力が、ウォームギヤ109、減速ギヤ108,107を介して駆動伝達ギヤ101に伝達される。ここで、駆動伝達ギヤ101が給紙カセット302側のカセットギヤ320に噛み合い、カセットギヤ320がラック部材319の歯部319bに噛み合っているため、駆動伝達ギヤ101の回転運動がラック部材319の直線運動に変換される。従って、駆動伝達ギヤ101が、ラック部材319を、カセットギヤ320を介して図8(b)の矢印C方向に移動させる。
【0046】
ラック部材319の左上端部における左下部にはボス部319aが突出形成されており、このボス部319aによって空転回動アーム321がその下部を回動自在に支持されている。ラック部材319の矢印C方向への移動に伴い、ボス部319aに下部を回動自在に連結された空転回動アーム321は、次のようになる。つまり、空転回動アーム321は、ラック部材319の左上端部の中央部分に突出形成された第1回転止め凸部319eから離間するように、ボス部319aを中心として図8(a)の矢印D方向に回動する。そして、空転回動アーム321がさらに回動を続けると、その下部に形成された係合凸部321cが、ラック部材319の左上端部における左下部に形成された第2回転止め凸部319fに当接して、ラック部材319に対する空転回動アーム321の回動が停止する。従って、両者の相対位置が変わらないまま、中板スプリング318によって突起部321aが引っ張られる形で、回動アーム317が図8(a)の反時計方向に回動し始める。
【0047】
回動アーム317が回動動作を開始する前、即ち中板304の押し上げ開始前に、ラック部材319に設けられたカム部319gが、ロック部材310の従動部310dに摺接する。そして、従動部310dを給紙カセット302のガイド部302hに沿って図8(c)の矢印E方向に移動させる。これにより、ロック部材310は、図7(d)のロック位置から図8(d)のロック解除位置に移行する。
【0048】
これにより、図8(d)に示すように、ロック部材310のフック状先端部310aが中板304の係合穴部304aから外れるため、中板304のカセット本体302Aに対するロック状態がユーザの手によらず、自動的に解除される。また、この解除動作に伴い、給紙カセット302の一部に一体的に設けられたスナップフィット部の係合凸部302dと、ロック部材310の係合凹部310cとが係合する。これにより、給紙カセット302に対して、所定の移動力を超えない範囲でロック部材310が再度ロック位置に戻ることを防ぐことで、ロック部材310は図8(c)のロック解除位置に固定される。
【0049】
なお、図8(c)、図9(c)、図10(c)におけるロック解除位置に固定されたロック部材310は、再度の輸送に際しては、次のようになる。つまり、ラック部材319が図7(c)の初期位置に戻ってカム部319gが従動部310dに当接しない状態に位置した状態にて、図8(c)の矢印Eと反対方向に押圧操作されることにより、凹部310cから係合凸部302dが外れて凹部310bに係合する。これにより、ロック部材310は、図7(c)に示すロック位置に再びセットされる。
【0050】
次に、ラック部材319の検知用突起部319c(図5)がフォトインタラプタ104(図3)を遮光することで検知されると、フォトインタラプタ104の検知信号が制御部40に伝達される。これにより、フォトインタラプタ103の検知信号に基づいて加圧モータ110の回転駆動が停止される。停止前の加圧モータ110の回転により、ラック部材319が図8(b)の矢印C方向に移動することで、回動アーム317が、空転回動アーム321を介して中板スプリング318に引っ張られ、図9(a)における時計方向(矢印H方向)に回動させられる。
【0051】
このため、中板304が、回動アーム317の一端に取り付けられている押圧レバー316(図2)によって押し上げられ(図10(a))、中板304上に積載されているシートSが、ピックアップローラ8(図1)に対して圧接される。その結果、シートSとピックアップローラ8との間に、所定の給紙圧が発生し、反力が発生する。その反力が加圧駆動ユニット100に加わって加圧駆動ユニット100に逆転方向の回転力となるが、ウォームギヤ109の進み角と摩擦角との関係により逆転しないように構成されている。即ち、ウォームホイールとしての減速ギヤ108とウォームとしてのウォームギヤ109との噛み合いによって、加圧駆動ユニット100の逆転が防止される。従って、回動アーム317が押圧レバー316により中板304を押圧して、シートSをピックアップローラ8に押圧している給紙圧は、所定の給紙圧に保持される。
【0052】
以上のように、本実施形態のシート給送装置13によると、ユーザの手を煩わせることなく、給紙カセット302の中板304を押し上げる既存の加圧駆動を利用して、中板304の固定を自動解除することができる。つまり、輸送時等にカセット本体302Aにロック部材310で中板304をロックされた給紙カセット302に対し、昇降装置による初期動作時に自動的にロックを解除することが可能になる。このため、従来のようにユーザが固定部材をいちいち除去する作業を行う必要がなく、ユーザビリティに優れた給紙カセット302を備えたシート給送装置13を提供することができる。
【0053】
また、本実施形態では、中板304のロック解除後に中板304の押し上げ動作を行っている。即ち、空転回動アーム321と回動アーム317間に掛け渡された中板スプリング318が、カム部319gでロック部材310をロック解除方向に移動させた後に、回動アーム317及び押圧レバー316を介して中板304を上昇動作させるように時間差をつける。つまり、ロック部材310の解除過程において、ロック解除の開始タイミングが中板304の上昇動作の開始タイミングより早くなるような時間差が設けられる。これにより、ロックが適正に解除されないうちに中板304が押し上げられて、関係する部材が変形したり、加圧モータ110に対する負荷が甚大となって許容負荷を超えたりするような不都合の発生を回避することができる。
【0054】
これにより、モータの脱調が発生したりするような不都合の発生を確実に防止することができ、モータ自体の要求出力を小さく抑え、装置の小型化や低コスト化を可能にすることができる。また、中板304の押し上げ動作開始タイミングと中板304のロック解除タイミングとの間に時間差が設けられることにより、中板304上昇時の負荷が作用する前の加圧モータ110の負荷が小さいうちにロック部材310の解除動作を完了することができる。さらには、モータの脱調を防ぐために、上記負荷に対応できる大きな出力のモータを使用せざるを得ないといった、コストアップや装置大型化の問題も回避することができる。また、昇降装置として既存のものを利用することも可能になることから、低コスト化を実現可能にすることができる。
【0055】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態におけるシート給送装置13及び画像形成装置50について、図11〜13を参照して説明する。
なお、本実施形態では、中板スプリング318の構成がやや異なり、ラック部材319に回動可能に支持された空転回動アーム(空移動部)321が無い点以外の構成は、第1の実施形態と同様である。このため、第1の実施形態での説明と重複する部分に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図11(a)は、本実施形態に係る給紙カセット302の中板304が固定され、かつ、加圧されていない状態の給紙カセット302の背部状態図である、図11(b)は、加圧モータ110の回転力をカセットギヤ320に伝達する歯車列を示す斜視図である。
【0056】
図11(a),(b)に示すように、本実施形態の給紙カセット302では、第1の実施形態の空転回動アーム321に代えて、中板スプリング318におけるラック部材319側のフックを長丸形状の長丸フック部318aとして構成している。即ち、本実施形態のラック部材319は、第1の実施形態の、空転回動アーム321を支持するボス部319a、第1回転止め凸部319e、第2回転止め凸部319fが無い。そして、それらに代えて、ラック部材319の左上端部に中板スプリング318支持用の突起部319hが突出形成されている。この突起部319hは、図11(a)の手前側に突出すると共に、下部が下側に突出形成されて、係合された中板スプリング318の長丸フック部318aがラック部材319の動作時に外れないように構成されている。
【0057】
本実施形態では、昇降装置は、加圧駆動ユニット100、カセットギヤ320、ラック部材319、長丸フック部318aを有する中板スプリング318、回動アーム317、及び押圧レバー316等から構成されている。
【0058】
このような構成を備えた本実施形態では、給紙カセット302が装置本体50A内に装着されて、加圧モータ110が駆動を開始すると、ラック部材319が図11(a)における矢印F方向に移動させられる。この際、ラック部材319の突起部319hは、中板スプリング318の長丸フック部318aの左端部に当接するまでは内方を矢印J方向(図12(a),(b))に空移動するだけである。この間、中板スプリング318に引っ張り力が作用したり、その下流の回動アーム317が回動したりすることはない。
【0059】
さらに加圧モータ110が駆動を続け、ラック部材319が矢印F方向にさらに移動すると、突起部319hが長丸フック部318aの左端部に当接して中板スプリング318を同方向に引っ張り始める。このため、回動アーム317が図13(a)における矢印M方向に回動し始め、中板304が、図13(a)に示すように、積載されたシートSをピックアップローラ8(図1)に圧接させる上昇位置(使用位置)に押し上げられる。
【0060】
以上の本実施形態では、駆動源である加圧駆動ユニット100からの駆動力を受けて中板304を上昇させる方向に移動し且つカム部319gを一体に有するラック部材319が第1移動部を構成している。また、ラック部材319からの駆動力を中板304に上昇力として伝達する回動アーム317に一端を取り付けられた中板スプリング(引張りバネ)318が第2移動部を構成している。さらに、中板スプリング318の他端に形成された長丸フック部(空移動リング部)318aと、長丸フック部318aをラック部材319に移動可能に支持する突起部319hとにより空移動部が構成されている。
【0061】
なお、本実施形態では、ラック部材319側(他端側)のフックを長丸フック部318aとして構成した例を説明したが、これに代えて、長丸フック部318aを回動アーム317側(一端側)に設けても同様の効果が得られることは明らかである。
【0062】
以上説明した本実施形態によっても、給紙カセット302の中板304を押し上げる加圧駆動を利用して、ラック部材319のカム部319gによりロック部材310を移動させて中板304のロックを自動的に解除することができる。また、第1の実施形態と同様に、中板304の押し上げ動作の開始タイミングと中板304のロック解除タイミングとを異なる設定にしたことで、加圧モータ110の負荷が小さい間にロック部材310の解除動作を完了することができる。よって、ユーザビリティに優れ、さらに、装置の低コスト化、装置の小型化を実現することができる。
【0063】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る第3の実施形態のシート給送装置13及び画像形成装置50について、図14〜図17を参照して説明する。
【0064】
ここでは、シート搬送路の幅方向における略中央部にピックアップローラやフィードローラ、リタードローラを配置して給送する構成のシート給送装置に本発明を適用した例について詳細に説明する。なお、図14(a)は装置本体50Aから給紙カセット302を引き出す状態を示す斜視図、図14(b)は給紙カセット302を示す平面図である。図15(a)は給送部の一部を示す斜視図、図15(b)は給送部の一部を示す側面図、図16(a)〜(d)は装置本体50Aから取り外した状態の給紙カセット302を示す斜視図である。また、図17は、図16の(a)〜(d)それぞれに対応して、(a)〜(d)に給紙カセット302の中板304側から見た、中板の加圧に関連する部品の状態遷移を表す図である。図18は、図16の(a)〜(d)それぞれに対応して、(a)〜(d)に中板とロック部材の位置関係を示す概略的な部分断面図である。
【0065】
本実施形態では、第1及び第2の実施形態で説明したような摩擦分離板方式ではなく、リタードローラ方式を採用している。給送部24(図1参照)は、装置本体50Aに対して着脱可能な給紙カセット302と、装置本体50A側に配置された加圧駆動ユニット100とを備えている。図14(a),(b)に示すように、給紙カセット302を矢印N方向に引き出すことにより、中板304が自然に倒伏されるため、給紙カセット302へのシートの補給が容易となっている。
【0066】
給紙カセット302の手前側には、給紙カセット302の着脱時にユーザが操作する不図示の把手が設けられており、左右両側には、カセットレール部302fが配置されている。給紙カセット302は、引き出し時に途中で停止するように構成されている。カセットレール部302fは、装置本体50Aに設けられている不図示のレール保持部材に保持され、その状態で中板304にシートが積載可能にされている。
【0067】
給紙カセット302の、リタードローラ311の上流側近傍にはニップガイド352が設けられ、ピックアップローラ(給送ローラ)303で給送されたシートを、正確にフィードローラ308とリタードローラ311のニップ部に導くことが可能となっている。画像形成装置50の装置本体50Aには、シート搬送面としてのシート搬送ガイド350が、シート給送方向下流側に、給紙カセット302と分離して設けられている。
【0068】
図14(a),(b)及び図15(a),(b)に示すように、リタードローラ311は、軸311aと、装置本体50Aからの駆動伝達経路内に設けられたトルクリミッタ351とを備えている。このトルクリミッタ351により、シートが無い状態、もしくはフィードローラ308及びリタードローラ311間で1枚のシートを搬送している状態では、リタードローラ311は、シート給送方向に追従回転(連れ回り)するように構成されている。
【0069】
また、複数枚重なったシートがフィードローラ308とリタードローラ311とのニップ部に進入した状態では、リタードローラ311は追従回転することなく逆回転する。これにより、フィードローラ308に接するシートは、シート間での滑りにより送り方向に搬送される。リタードローラ311に接するシートは、リタードローラ311の逆回転によって給紙カセット302に戻される。
【0070】
装置本体50A内の制御部40から、シートを送り出すトリガがかかると、不図示のモータからの動力を受け、不図示のソレノイドによる動力の接続により、フィードローラ308に駆動力が伝達される。本実施形態においては、1回転制御されるものであり、このようにフィードローラ308が1回転制御されると、これに伴いピックアップローラ(給送ローラ)303が数回回転し、シートを送り出すように構成されている。
【0071】
なお、ピックアップローラ303は、送り出したシートの先端がフィードローラ308及びリタードローラ311とのニップ部に到達すると、不図示のリフト機構により上方に退避し、シートから離間するように構成されている。このように、ピックアップローラ303をシートから離間させることにより、ピックアップローラ303がシート搬送分離の際の負荷になることがない。また、リタードローラ311によって戻されたシートを確実に給紙カセット302に戻すことができるため、分離性が向上する。
【0072】
また、図15(a)、(b)において、309は伝達部材としての遊星ギヤである。遊星ギヤ309は、シートを給送する際には、図15(a)に示すようにピックアップローラ303の軸303aに設けられた第1ギヤ354と、フィードローラ308の軸308aに設けられた第2ギヤ355とにそれぞれ噛合するようになっている。
【0073】
この遊星ギヤ309が、遊星ギヤ309と共にフィードローラ308の回転をピックアップローラ303に伝達する駆動伝達部を構成する第1ギヤ354及び第2ギヤ355に噛合する。これにより、フィードローラ308の回転が遊星ギヤ309を介してピックアップローラ303に伝達される。ここで、遊星ギヤ309は、図15(b)に示すように、フィードローラ308の軸308aに回動自在に取り付けられたアーム部材356に回転自在に取り付けられている。
【0074】
シート給送の際、フィードローラ308が図15(b)の矢印で示すシート給送方向に回転すると、第2ギヤ355と噛合した遊星ギヤ309はフィードローラ308と共に回転する。しかし、このとき遊星ギヤ309を介してアーム部材356には下方、即ち遊星ギヤ309をピックアップローラ303の第1ギヤ354に噛合させる方向に回動する力が加わる。これにより、アーム部材356は下方回動し、遊星ギヤ309はピックアップローラ303の第1ギヤ354に噛合し、フィードローラ308の回転をピックアップローラ303に伝達する第1位置に移動するように構成されている。
【0075】
一方、1回転制御された後、停止し、この後、リタードローラ311によってフィードローラ308が連れ回りすると、遊星ギヤ309には逆転する方向の力が加わる。このように遊星ギヤ309の回転に伴って遊星ギヤ309とアーム部材356との間に摩擦力が発生するように構成されている。このため、遊星ギヤ309に逆転方向の力が加わると、この摩擦力により遊星ギヤ309を介してアーム部材356には遊星ギヤ309を第1ギヤ354から離間する方向の力が加わる。
【0076】
これにより、アーム部材356は上方回動し、これに伴い遊星ギヤ309は、第1ギヤ354との噛合が解除され、フィードローラ308の回転をピックアップローラ303に伝達しない第2位置に移動するようになる。この結果、フィードローラ308が逆回転してもピックアップローラ303は逆回転することはない。フィードローラ308とリタードローラ311とでニップされたシートは、シート給送方向下流に給送されるが、シートの先端はシート搬送ガイド350に沿って搬送される。
【0077】
ここで、図16〜図18に基づいて、本実施形態の給紙カセット302における、中板304のロックと中板304の押し上げ動作に関して、詳細な説明を行う。なお、本実施形態では、中板304のロック機構など、前述した第1の実施形態での説明の重複する部分に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、昇降装置は、加圧駆動ユニット100、カセットギヤ320、セクタギヤ330、レバー部材332、押圧板部材331、回動アーム317、及び押圧レバー316等から構成されている。また、本実施形態では、第1及び第2の実施形態で説明したロック部材310のフック状先端部310aと反対の側に備えていた従動部310dは、これと同じ位置から上方に延びて上下方向に延在する従動部310eとして構成されている。
【0079】
図16に示すように、給紙カセット302は、カセットギヤ320と直接噛合った状態で装置本体50A側から加圧駆動力を受け、回動軸330bを中心として時計回り方向と反時計回り方向とに回動するセクタギヤ330を有している。セクタギヤ330には、縁部の下部近傍(所定位置)に長丸穴部330aが形成されている。また、セクタギヤ330の背面側には、中板304に固定された押圧板部材331が配置されており、押圧板部材331には、長丸穴部330aに摺動自在に嵌合するボス部331aが突出形成されている。押圧板部材331は、セクタギヤ330の時計回り方向の回動に伴って長丸穴部330aの端部に係合して同方向に回動するように構成されている。
【0080】
また、セクタギヤ330の外周縁部の外側には、給紙カセット302のボス部302gと嵌合し且つ回動するレバー部材332が配設されている。レバー部材332は、給紙カセット302のカセット本体壁部に突出形成されたボス部302gに回動自在に支持されたギヤ部332aを有している。さらに、レバー部材332は、スライド穴部を有し且つ一端がギヤ部332aに所定角度で接合された直線部332bと、直線部332bのスライド穴部に摺動自在に嵌合されたスライダ333とを有している。ギヤ部332aは、セクタギヤ330と噛合っている。
【0081】
また、給紙カセット302のカセット本体壁部の上下方向には、ガイド長穴部302iが形成されている。このガイド長穴部302iには、直線部332bのスライド穴部に摺動自在に嵌合した軸部333aを介して、スライダ333がスライド移動自在に嵌合されている。この軸部333aは、軸受334を介して、レバー部材332の直線部332bのスライド穴部にスライド可能に嵌合している。ここで、軸部333aは、軸受334と回動関係にある。
【0082】
また、図18(a)〜(d)に示すように、スライダ333の背面側には、カム部333bが突出形成されている。このカム部333bが原動側のカムとして、ロック部材310の上下方向に延在する従動側のカム面である従動部310eに作用する。
【0083】
以上の本実施形態では、駆動源である加圧駆動ユニット100からの駆動力を受けて中板304を上昇させる方向に回動すると共に所定位置に長丸穴部330aを有するセクタギヤ330により、第1移動部が構成されている。また、長丸穴部330aに摺動自在にボス部(突出部)331aを嵌合させた押圧板部材331と、押圧板部材331に連結され且つセクタギヤ330に噛合するギヤ部332aを有するレバー部材332とにより、第2移動部が構成されている。さらに、長丸穴部330aとボス部331aとにより、空移動部が構成されている。
【0084】
以上の構成において、加圧駆動ユニット100が駆動すると、以下のようになる。つまり、その動作に伴い、図16(a)及び図17(a)に示す中板304がロック部材310でロックされ且つ加圧されていない状態から、セクタギヤ330が回動軸330bを中心として、図16(b)の矢印Uの方向に回転する(図17(b)も参照)。これに伴い、レバー部材332が給紙カセット302のボス部302gを中心として矢印Vの方向に回転し、これにより、スライダ333が給紙カセット302の下方向にスライド移動する。
【0085】
レバー部材332のスライド穴の部分では、ボス部302gと軸受334との間に圧縮スプリング336が設けられている(図16(a)の部分拡大図を参照)。図16(a)における破線矢印Wのように、圧縮スプリング336を介して軸受334に対して荷重を作用させ、図16(a)→(b)→(c)→(d)というレバー部材332の状態遷移を補助している。同時に、装置本体50Aの使用中に、図16(b)→(a)というように、ギヤ部332aが逆遷移する不都合を防止している。
【0086】
このようにして、図18(a)から図18(b)に示すように、カム部333bが図18(b)の矢印(ロ)の方向に、従動部310eのカム面に沿って摺動することにより、ロック部材310が押されて図18(b)における矢印(ハ)の方向に移動する。これにより、中板304の係合穴部304aからロック部材310のフック状先端部310aの係止が外れ、中板304のロックが解除される。そして、図16(b)から図16(c),(d)にかけて、さらにセクタギヤ330が回動することで、押圧板部材331、回動アーム317及び押圧レバー316を介して中板304が押し上げられていき、シート給送動作に入る。
【0087】
以上の本実施形態においても、中板304の加圧駆動ユニット100を動力源にして、中板304のロックを自動的に解除することができる。また、扇状のセクタギヤ330と押圧板部材331とを備える本構成においても、長丸穴部330a及びボス部331aを介して、中板304の押し上げ動作開始タイミングと中板304のロック解除タイミングとに時間差をつけている。これにより、加圧モータ110の負荷が小さい間にロック部材310の解除動作を完了することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,5,15…画像形成部(感光体ドラム,中間転写ベルト,二次転写部)、13…シート給送装置、50…画像形成装置、50A…装置本体、100…駆動源(加圧駆動ユニット)、302…給紙カセット、302A…カセット本体、304…シート積載部(中板)、304a…係合穴部、310…ロック部材、310a…フック状先端部、302d,310b,310c…係止部(係合凸部,係合凹部,係合凹部)、310d,310e…従動部、316…押圧レバー、317…回動アーム、318…第2移動部,引張りバネ(中板スプリング)、318a,319h…空移動部(空移動リング部(長丸フック部),突起部)、319…第1移動部(ラック部材)、319g…カム部、320…カセットギヤ、321…空移動部(空転回動アーム)、330…第1移動部(セクタギヤ)、330a,331a…空移動部(長丸穴部,突出部(ボス部))、331,332…第2移動部材(押圧板部材,レバー部材)、332…レバー部材、332a…ギヤ部、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して着脱可能なカセット本体、及び昇降動作可能なシート積載部を有する給紙カセットと、前記シート積載部を昇降動作させる昇降装置と、を備えるシート給送装置において、
前記給紙カセットに、前記シート積載部を前記カセット本体に対しロックするロック位置と前記シート積載部の上昇時に前記ロックを解除するロック解除位置とに移動可能なロック部材を設け、
前記昇降装置は、前記装置本体への前記給紙カセットの装着状態にて、前記ロック部材でロックされた前記シート積載部を上昇させる際に、前記シート積載部の上昇動作に先立って前記ロック部材を前記ロック解除位置に移動させる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、前記ロック部材による前記ロックの解除動作の完了後に前記シート積載部の前記上昇動作を開始させる、ことを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記昇降装置は、
駆動源からの駆動力を下流に伝達する移動に伴って前記ロック位置の前記ロック部材を前記ロック解除位置に切換える第1移動部と、
前記第1移動部からの前記駆動力を前記シート積載部に上昇力として伝達するように移動する第2移動部と、
前記第1移動部と前記第2移動部との間にて前記第1移動部による前記切換えの完了後に前記第2移動部に前記駆動力が伝わるように時間差を付ける空移動部と、を有することを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記第1移動部は、前記駆動源からの駆動力を受けて前記シート積載部を上昇させる方向に移動し且つカム部を一体に有するラック部材であり、
前記第2移動部は、前記ラック部材からの前記駆動力を前記シート積載部に上昇力として伝達する回動アームに一端を取り付けられた引張りバネであり、
前記空移動部は、前記引張りバネの他端を取り付けられてその回動可能状態から前記引張りバネを牽引可能な牽引位置で係止されるように前記ラック部材に回動可能に支持された空転回動アームである、
ことを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1移動部は、前記駆動源からの駆動力を受けて前記シート積載部を上昇させる方向に移動し且つカム部を一体に有するラック部材であり、
前記第2移動部は、前記ラック部材からの前記駆動力を前記シート積載部に上昇力として伝達する回動アームに一端を取り付けられた引張りバネであり、
前記空移動部は、前記引張りバネの前記一端又は他端に形成された空移動リング部と、前記空移動リング部を前記ラック部材に移動可能に支持する突起部とから構成される、
ことを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記第1移動部は、前記駆動源からの駆動力を受けて前記シート積載部を上昇させる方向に回動すると共に所定位置に長丸穴部を有するセクタギヤであり、
前記第2移動部は、前記長丸穴部に摺動自在に突出部を嵌合させた押圧板部材と、前記押圧板部材に連結され且つ前記セクタギヤに噛合するギヤ部を有するレバー部材とから構成され、
前記空移動部は、前記長丸穴部と前記突出部とから構成される、
ことを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記給紙カセットは、前記ロック位置と前記ロック解除位置とで前記ロック部材をそれぞれ係止可能な係止部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載のシート給送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のシート給送装置と、
前記シート積載部から給送されるシートに画像を形成する画像形成部を有する前記装置本体と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−188241(P2012−188241A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53318(P2011−53318)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】