説明

シート

【課題】
性質が相反する水と油の両者を同時に吸着することができるようにし、汗取り用のハンカチや下着用生地に使用することができるシートを提供できるようにすることにある。
【解決手段】
本発明にかかるシートは、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維とを混在させた状態でシートに形成することにより、当該シートの少なくとも一面に吸水性部分と吸油性部分とを有して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンカチやタオルのような小物から下着にまで使用される編地並びに布帛等を包含するシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
汗には水分と皮脂が含まれており、上記ハンカチやタオル並びに下着は主として吸水性を有する綿糸やシルク等の天然繊維の素材が用いられている。
こうした吸水性を有する素材の場合、吸油性が殆どないことから、肌から分泌された皮脂や汗に含まれる皮脂が残され、この皮脂のために肌がぎらついたり、べとついたりしてしまうという問題があった。
このようなぎらつきや、べとつきは「油取り紙」でその原因となる皮脂を拭い去るようにしている。
【0003】
上記のように汗の水分と皮脂とを個別にとる場合、面倒である上、汗用拭き取り材と皮脂用拭き取り材とをそれぞれ用意しなくてはならないという問題があった。
特に、下着の場合は着替えたりする必要があり、実用的ではない。
そこで、繊維自体に吸水性と吸油性とを持たせるようにしたものが開発され、これを不織布にしたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
ところが、吸水性と吸油性とを有する繊維で形成された不織布で汗を拭くと、汗の水分が繊維に多量に吸着されてしまい、その水分が障壁(バリア)として作用するために皮脂が吸着され難くなってしまうとういう問題があった。
逆に、油を多量に吸わせた場合には、水が弾かれてしまうという問題もあり、要するに、従来のものは、ひとつのシートを油若しくは水の拭き取りに使用することができるものの、同時に双方を吸着させようとした場合、十分な吸着効果を得ることができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−34635
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、目的は性質が相反する水と油の両者を同時に吸着することができるようにし、汗取り用のハンカチや下着用生地に使用することができるシートを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明にかかるシートは、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維とを混在させた状態でシートに形成することにより、当該シートの少なくとも一面に吸水性部分と吸油性部分とを同一面に有して構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0007】
本発明にかかるシートでは、経糸及び緯糸からなる織布であって、複数の経糸のうち、少なくとも一部の経糸が吸油性を有する繊維であって、少なくとも一本の緯糸が吸水性を有する繊維にすることもできる。
【0008】
また、シートが編地であって、当該編地の編糸が、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維との給糸の切り換えや、給糸位置(先行・後行)が切り替えられて編成されることにより、編地に吸水性部分と吸油性部分とを同一面に形成することもできる。
【0009】
さらには、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維をシート状の基布からループパイル若しくはカットパイルとして立設されていることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維とを混在させた状態でシートに形成することにより、当該シートの少なくとも一面に吸水性部分と吸油性部分とを有して構成してあることから、吸水性部分で水を吸着しながらも、同一面の吸油性部分で油を吸着することができる。
【0011】
このとき、一般的に吸油性を有する部分は撥水(疎水)性を有することから、吸水部分に吸着された水が吸油性部分に影響を及ぼすことがなく、油は吸油部分に吸着されることになる。
これにより、性質が相反する水と油の両者を一つのシートで同時に吸着することができるので、汗取り用のハンカチから下着用生地等幅広く利用することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるシートの最も好ましい例を図面に基づいて説明するが、本発明は以下の実施の例に限られるものではない。
【実施例】
【0013】
図1は本発明にかかる布製のハンカチ(シート)の斜視図、図2はそのII−II線断面図
であって、図中符号1はハンカチを全体的に示す。
このハンカチ1は、平織りで形成された生地であって、上面及び下面の各払拭面2には吸水性部分3と吸油性部分4とが交互にストライプ状に形成されている。
【0014】
このハンカチ1は、図3に示すように吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6とを複数本づつ交互に略等間隔設けて巻き取られた図外のビームから供給される経糸7に緯糸8を打ち込んだものである。
ここで、打ち込まれる緯糸8は生地を形成できるものであれば吸水性や吸油性は問題とならない。
【0015】
因みに、吸水性を有する繊維5は、動物性繊維を含む天然繊維では精練等により脱脂を行なうことにより得られる。
一方、合成繊維ではその断面形状を折り曲げた扁平なものにして毛細管現象によるものや水溜り用の空洞や、吸湿性を有する樹脂を紡糸して吸湿性を備えさせることもできる。
また、吸油性を有する繊維6は油溶性のオイリングやワキシンング施して疎水性を付与することにより得ることができる。
【0016】
上記のように形成されたハンカチ1で汗を拭いた場合、汗の大部分を占める水分は吸水性部分3に吸着され、肌から分泌されて皮膚の表面に付着している皮脂や汗の中に微量に含まれる皮脂等の油分は吸油性部分4に吸着される。
つまり、ハンカチ1で水分と皮脂とが混在している肌の表面部分を払拭すると、水分は吸油性部分ではその疎水性により弾かれ、吸水性部分3で吸着される。
逆に、皮脂等の油分が吸水性部分3に接しても吸水性部分3では吸着されることなく、吸油性部分4でのみ吸着される。
【0017】
このように、ハンカチ1の同一面(払拭面)2に形成された吸水性部分3と吸油性部分4とはこれらに吸着された水分と油分が干渉したり影響を及ぼしたりすることがなく、吸水性部分3と吸油性部分4は夫々の機能を維持することができる。
したがって、一枚のハンカチ1で、水分と油分とを同時に吸着することができるのである。
【0018】
上記の例では、吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6とを複数本づつ交互に略等間隔設けた経糸7を使用して吸水性部分3と吸油性部分4をストライプ状に形成するようにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば図4に示すようにこの経糸7に加えて緯糸8をコップチェンジ等により、吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6とを複数本づつ交互に略等間隔打ち込むことにより、吸水性部分3若しくは吸油性部分4を格子状に形成することができる。
【0019】
また、上記の平織りでは上面及び下面の各払拭面2には吸水性部分3と吸油性部分4とが交互にストライプ状に形成されているが、二重折や後述のパイル地のように片面に吸水性部分3と吸油性部分4を形成することもできる。
即ち、本発明は上記の平織りの生地に限られず、図5に示すように吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6をシート状の基布9からループパイルを立ち上げたループパイル地(タオル地)や、図6の先端を開いたカットパイル地にすることもできる。
この場合、パイルを形成する経糸7を、吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6とを複数本づつ交互に略等間隔設格子状に設けて巻き取られたものを使用する。この図5及び図6では断面の位相を異ならせて示してある。
【0020】
更に、図示は省略したが、本発明は上記の平織りの生地に代えて編地にすることができる。
編地の場合、吸水性を有する繊維5を給糸するヤーンフィーダと吸油性を有する繊維6を給糸するヤーンフィーダとを設け、数コースづつ切り替えたり両者をキャリッジに連動して同行させ、その選考側と後行側とを切り替えるようにすると、一つの編地に吸水性部分と吸油性部分とを形成することができる。
また、本発明は上記のようにハンカチやタオル地に限られるものではなく下着等の素材や家庭の布巾や雑巾若しくはその素材としても広く利用することができる利点がある。
【0021】
加えて、上記の例では吸水性を有する繊維5と吸油性を有する繊維6とを使用してシートの少なくとも一面に吸水性部分と吸油性部分とを同一面に形成するようにしてあるが、例えば綿糸で一旦、綿布や編地を形成した後、フッソ樹脂をスポット的に塗布やプリントして当該部分を吸油部分にすることにより、吸水性部分と吸油性部分とを同一面に形成する「後加工」もできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】は本発明にかかるハンカチ(シート)の斜視図である。
【図2】は図1におけるII―II線断面図である。
【図3】は本発明にかかるハンカチの織製の概略を示す斜視図である。
【図4】は本発明にかかるハンカチの変形例を示す斜視図である。
【図5】は本発明にかかるハンカチの別の変形例を示す斜視図である。
【図6】は本発明にかかるハンカチの更に別の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・ハンカチ
2・・・払拭面
3・・・吸水性部分
4・・・吸油性部分
5・・・吸水性を有する繊維
6・・・吸油性を有する繊維
7・・・経糸
8・・・緯糸
9・・・基布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維とを混在させた状態でシートに形成することにより、当該シートの少なくとも同一面に吸水性部分と吸油性部分とを有してなるシート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートが経糸及び緯糸からなる織布であって、複数の経糸のうち、少なくとも一部の経糸が吸油性を有する繊維であって、少なくとも一本の緯糸が吸水性を有する繊維である請求項1に記載のシート。
【請求項3】
請求項1に記載のシートが編地であって、当該編地の編糸が、吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維との給糸の切り換えや、給糸位置(先行・後行)が切り替えられて編成されて、編地に吸水性部分と吸油性部分とが形成されているもの。
【請求項4】
吸水性を有する繊維と吸油性を有する繊維をシート状の基布からループパイル若しくはカットパイルとして立設されている請求項1に記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−348433(P2006−348433A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177840(P2005−177840)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(501396130)
【Fターム(参考)】