説明

シームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法およびその製造装置、並びに、それらによって製造されたホログラム母型シリンダー版及びエンボスフイルム

【課題】本発明は、高解像度、高精度のレーザー露光装置による継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版の製造方法、製造装置を提供することを課題とするものである。
【解決手段】シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造方法に関して絵柄パターンにレーザー光を照射してできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換するデータ変換装置と、その描画データをレーザービームとして出力する半導体レーザービーム高解像度描画装置とによって前記描画データをシリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射する工程と、その後、現像工程、水洗工程、エッチング工程、水洗工程、メッキ工程そして水洗工程をこの順に行うことによって継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高解像度、高精度のレーザー露光装置による継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版の製造方法、製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラム像が再現できる回折格子のパターンの母型原版は、枚葉タイプであった。
【0003】
ホログラム像が再現できる回折格子のパターンは、近年、クレジットカード、預金通帳、金券などの偽造を防止するための手段として、ホログラムシールとして利用されている。また、ビデオテープや高級腕時計などの商品についても、海賊版が出回るのを防止するために、ホログラムシールが利用されている。この他、装飾用、販売促進用といった目的にも、ホログラムシールが利用されている。このようなホログラムシールには、三次元立体像ではなく二次元の絵柄がモチーフとして用いられることが多い。
【0004】
このようなホログラムシールの原版を作成するには、通常、レーザ光を用いて干渉縞を形成させる光学的なホログラム撮影方法が用いられている。すなわち、二次元の絵柄モチーフが描かれた原稿を用意し、2つに分岐させたレーザ光の一方をこの原稿に照射し、その反射光と分岐したもう一方のレーザ光とを干渉させてその干渉縞を感光材に記録するのである。こうしてホログラム原版が作成できたら、この原版を用いて、プレスの手法によりホログラムシールを量産することができる。
【0005】
しかしながら、上述した従来の光学的なホログラム撮影方法には、鮮明なホログラム像が得られないという問題がある。すなわち、光学的に形成された干渉縞は、振動に敏感であるため、振動を完全に排除した環境でのホログラム撮影を行う必要がある。ところが、かなりの精度の防振台を用いて撮影を行っても、振動を完全に排除することは困難であり、このため、干渉縞の記録像にいわゆる「ボケ」が生じ、コントラストのある明るいホログラム像が得られないのである。
【0006】
また、用いるレーザ光の発振波長にもゆらぎが生じるため、くも硝子状ノイズが避けられない。このように、光学的なホログラム撮影には再現性が悪いという問題があるため、同じ原版を何枚か作成することも困難になる。
【0007】
特許文献1に係る方法は、ホログラムとして記録すべき絵柄パターンを作成する第1の段階と、この絵柄パターンから回折格子パターンを作成する第2の段階と、回折格子パターンを2つの領域に区別した二値パターンを荷電粒子ビーム描画装置により描かせるための描画データを作成する第3の段階と、描画データを荷電粒子ビーム描画装置に与えて回折格子パターンを描画させる第4の段階と、によりホログラム原版の作成を行うようにしたものである。
【0008】
すなわち特許文献1に係るホログラム原版の作成方法の特徴は、従来の光学的なホログラム撮影方法に代えて、荷電粒子ビームを用いた描画により原版上にホログラムパターンを記録する点にある。そのために、まず第1の段階において、閉領域から構成される二次元の絵柄パターンを用意する。そして、第2の段階において、閉領域内に多数の細長い四角形を配置する。この細長い四角形は、微小な幅をもち微小な間隔で配置されるため、回折格子パターンが形成されることになる。続く、第3の段階では、この四角形の内部と外
部とを区別した二値パターンデータが作成される。
【0009】
たとえば、内部の領域を描画領域、外部の領域を非描画領域とした二値パターンデータが作成される。最後の第4の段階では、この二値パターンデータに基づいて、荷電粒子ビームによる描画が行われる。このように荷電粒子ビームによる描画を行えば、鮮明なホログラム像が得られ、また、同じ描画データを用いれば、同じホログラム像が得られるため再現性も非常に良くなるというものである。
【0010】
特許文献1に係る荷電粒子ビーム装置としては、フォトマスク作成用の電子ビーム描画装置を用いることとなり、この装置は、いわゆるバッチ型になるため、作成できる原版は、枚葉タイプの一枚ずつのものである。
【0011】
したがって、特許文献1に係る方法では、シリンダーに継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版を製作することは困難であり、前記枚葉タイプの原版を何枚も作成し、シリンダーに貼り付けていかざるを得ないが、前後左右にそれぞれ継ぎ目が残こってしまうものである。
【0012】
一方、シリンダーに画像を形成する従来技術方法は、四つあり、その第一は、ネガまたはポジ印画フイルムをマスクとして用いて感光性樹脂を塗布したシリンダーに被覆し露光、現像、剥離、メッキ処理するいわゆるグラビア製版方法(化学エッチング法)である。しかし、この方法は、当該フイルムをシリンダーに巻きつけるため、必ず継ぎ目ができてしまう方法である。
【0013】
その第二は、西ドイツ、エンジニアリング、ルードルフ、ヘル社のダイヤモンド針を用いてシリンダーを直接彫刻するヘリオクリッショグラフによる彫刻法である。しかし、画素精度が荒すぎて、ホログラム像を再現できる干渉縞、回折格子より変換される描画データの画素精度とは桁違いなものであるので、この方法は採択は困難である。
【0014】
その第三は、英国のクロスフィールド、エレクトロニクス社のレーザーによる樹脂膜彫刻法であって、詳しくは、シリンダーに静電気を帯させてから、エポキシ樹脂粉末を吹きつけ塗装し、感光膜を形成し、ダイヤモンドの刃で樹脂膜を鏡面に磨き上げ、こり鏡面を炭酸ガスレーザーを照射して、樹脂膜を直接彫刻し、樹脂版をする方法である。しかし、炭酸ガスレーザーの解像度は低く、上記第二の方法の画素精度に近いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平06−337623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、本発明は、高解像度、高精度のレーザー露光装置による継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版の製造方法、製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の問題点の解決に鑑みなされたものである。
【0018】
請求項1の発明は、シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造方法であって、
絵柄パターンに対して、2つに分岐した内の一つのレーザー光を照射し、その反射光と、
分岐したもう一方のレーザー光とを干渉させてできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換を行うデータ変換装置と、
前記データ変換装置により変換された描画データをレーザービームとして出力する半導体レーザービーム高解像度描画装置とを備えるものである。
【0019】
そして、前記半導体レーザービーム高解像度描画装置によって、前記描画データをシリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射する工程と、
その後、現像工程、水洗工程、エッチング工程、水洗工程、メッキ工程そして水洗工程をこの順に行うことによって
継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できる製造方法である。
【0020】
請求項2の発明は、前記シリンダー上の感光性樹脂塗膜への前記半導体レーザービーム高解像度描画装置による描画解像度範囲が、100nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法である。
【0021】
請求項3の発明は、前記シリンダーの真円精度範囲が、60nm〜300nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法である。
【0022】
請求項4の発明は、前記シリンダーの回転パルス精度が、100nm単位で、500nmまでであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法である。
【0023】
請求項5の発明は、シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造装置であって、
絵柄パターンに対して、2つに分岐した内の一つのレーザー光を照射し、その反射光と、分岐したもう一方のレーザー光とを干渉させてできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換を行うデータ変換装置と、
前記データ変換装置により変換された描画データをレーザービームとして出力する半導体レーザービーム高解像度描画装置と、
を備えるものである。
【0024】
そして、前記半導体レーザービーム高解像度描画装置によって、前記描画データをシリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射する工程と、
その後、現像工程、水洗工程、エッチング工程、水洗工程、メッキ工程そして水洗工程をこの順に行うことによって
継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できることを特徴とする製造装置である。
【0025】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法、または、請求項5に記載の製造装置によって、製造された継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版である。
【0026】
請求項7の発明は、請求項6に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版によってエンボスされたホログラム像を再現できる干渉縞または回折格子パターンの描画パターンのレリーフの形成されたことを特徴とするエンボスフイルムまたはシートである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ホログラム像を再現できる回折格子パターンのデータを描画変換できる描画変換装置や高解像度、高精度のレーザー露光装置によって継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版の製造方法、製造装置を提供するものである。
【0028】
請求項1の発明は、シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造方法であって、ホログラム像を再現できる回折格子パターンのデータを、JEOL(登録商標)変換を行うデータ変換装置を用いて描画データに変換し、半導体レーザービーム高解像度描画装置にて、シリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射し、現像、水洗、エッチング、水洗、メッキそして水洗工程を経ることによって継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版を得ることができるという効果を有するものである。
【0029】
請求項2の発明は、前記シリンダー上の感光性樹脂塗膜への描画変換データによる前記半導体レーザービーム描画装置による照射描画によって、従来レベルの1000nmに比べて100nmの高解像度が得られるという効果を有するものである。
【0030】
請求項3の発明は、前記シリンダーの真円精度を、60nm〜300nmの範囲にすることによって、描画ムラの発生が抑制できるという効果を有するものである。
【0031】
請求項4の発明は、前記シリンダーの回転パルス精度を、100nm単位で、500nmまでの範囲で制御することによって、描画位置ずれによるホログラムレリーフの乱れの発生を抑制できるという効果を有するものである。
【0032】
請求項5の発明は、シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造装置であって、
ホログラム像を再現できる回折格子パターンのデータを、JEOL(登録商標)変換を行うデータ変換装置と、
前記半導体レーザービーム高解像度描画装置とを備え、
前記半導体レーザービーム高解像度描画装置によって、前記シリンダー上に感光性樹脂塗膜を設けるものである。
【0033】
そして、前記半導体レーザービーム高解像度描画装置のレーザービームを用いた露光、照射工程と、その後の、現像工程、水洗工程、エッチング工程、水洗工程、メッキ工程そして水洗工程を行うシリンダー版の製造装置を用いることによって、高解像度で継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できるという効果を有するものである。
【0034】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法、または、請求項5に記載の製造装置によって、高解像度で継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できるという効果を有するものである。
【0035】
請求項7の発明は、請求項6に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版を用いることによって、ホログラム像を再現できる高い解像度の回折格子パターンのエンボスフイルムが得られるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1の(a)は本発明の継ぎ目のないシームレスホログラム母型を設けるためのシリンダーの見取り図である。図1の(b)は、図1の(a)のシリンダーに、本発明の継ぎ目のないシームレスホログラム母型を設けたシリンダーの正面略図である。図1の(c)は、図1の(b)の前記原版の凹凸面を、フイルム上のUV樹脂面に重ねて前記UV樹脂面に前記原版の凹凸面をエンボスしたフイルムの平面略図である。
【図2】図2は、本発明のシームレスホログラム母型シリンダー版の製造装置の模式説明図である。
【図3】図3は、シリンダーに、本発明のシームレスホログラム母型版を設けるための製造段階を工程ごとのフロー図にしたものである。
【図4】図4の(a)は、シリンダーに、本発明のシームレスホログラム母型版を設けるための製造段階の一工程において、シリンダーに銅メッキを施したシリンダーの断面略図である。図4の(b)は、図4の(a)の工程により銅メッキされたシリンダーにレーザー感光性樹脂を塗布した工程でのシリンダーの断面略図である。図4の(c)は、図4の(b)工程後のシリンダーに半導体レーザービームにて本発明の描画パターンを焼き付けた際のシリンダーの断面略図である。
【図5】図5の(a)は、図4の(b)のシリンダーに半導体レーザービームにて本発明の描画パターンを露光焼付けた工程後のシリンダー上の未露光部を現像液にて除去した現像工程後のシリンダーの断面略図である。図5の(b)は、図5の(b)の描画パターンの未露光部を現像液にて除去した現像工程後のシリンダーに、塩化第二鉄溶液などの腐食液を用いてエッチングして、未露光部をエッチンググした後のシリンダーの断面略図である。図5の(c)は、図5の(b)のエッチング工程で、エッチングされずに残った描画パターンの露光部を取り除く剥離工程後のシリンダーの断面略図である。
【図6】図6の(a)は、図5の(c)は、シリンダーの断面略図である。図6の(b)は、図6の(a)での剥離工程終了後のシリンダーに対して、Crメツキした後のシリンダーの断面略図であり、これが目的の本発明のシームレスホログラム母型シリンダー版である。図6の(c)は、本発明のシームレスホログラム母型シリンダー版をホログラムエンボス機にセットし、同エンボス面を、UV樹脂を設けたフイルムのUV樹脂面に重ねてエンボスを行った断面略図である。
【図7】図7の(a)は、図6の(c)の断面略図である。図7の(b)は、UV樹脂を設けたフイルムのUV樹脂面に、本発明のシームレスホログラム母型シリンダー版をコピーしたフイルムの断面略図である。図7の(c)は、図7の(b)のフイルムのシームレスホログラム母型の凹凸エンボス面にクロムメッキを施したフイルムの断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、ホログラム像を再現できる回折格子パターンのデータを描画変換できる描画変換装置や高解像度、高精度のレーザー露光装置によって継ぎ目のないシームレスなシリンダータイプのホログラム版の製造方法、製造装置を提供するものである。
【0038】
本発明における、絵柄パターンに対して、2つに分岐した内の一つのレーザー光を照射し、その反射光と、分岐したもう一方のレーザー光とを干渉させてできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換を行うデータ変換装置としては、JEOL(登録商標)変換を行うデータ変換装置を用いることができる。
【0039】
すなわち前記描画データに変換を行うデータ変換装置としては、フォトマスク作成用の日本電子株式会社製の電子ビーム描画装置を用いる場合に一般的に用いられている描画データ変換装置(JEOL(登録商標)変換を行うデータ変換装置)が、本発明で用いる前記描画データに変換を行うデータ変換装置として使用できる。
【0040】
前記描画データに変換を行うデータ変換装置から出力される前記描画データを前記半導体レーザービーム高解像度描画装置に入力し、前記描画データをレーザービームとしてシリンダー上の感光性樹脂塗膜に出力し、露光、照射する工程によって、感光性樹脂塗膜上
に前記描画データが焼き付けられ、その照射部分、照射パターンが、硬化状態となり、現像工程での現像液により、溶解除去されずに、シリンダー上に凸部パターンとして、残存するものである。
【0041】
レーザー直接描画法に用いられるレーザー光源としては、紫外から赤外領域の光を発振する種々のものが知られているが、画像露光に利用できるものとしては、出力、安定性、感光能力、及びコスト等の点から、UV固体レーザー(350〜380nm)、青紫半導体レーザー(390〜430nm)、アルゴンイオンレーザー(488nm)、FD−YAGレーザー(532nm)、及び近赤外半導体レーザー(832nm)、YAGレーザー(1064nm)等が有力視されている。
【0042】
しかし、例えば、波長488nmのアルゴンイオンレーザー、波長532nmのFD−YAGレーザーが実用化に先行しているが、これらは可視光に対する感度を持つ感光性レジスト材を用いる為、黄色灯下でのセーフライト性に劣り、赤色灯照明のような暗室環境下での作業が必要であるという制約がある。一方で、黄色灯照明のような明室環境下での作業が可能な、UVレーザー(波長350〜365nm程度。)も実用化されつつあるが、高解像のパターンに対応出来ない(30〜50μmのライン/スペースが限界)等の難点があり、未完成の状態となっている。
【0043】
他方、近年のレーザー技術の著しい進歩により、光源の寿命が長く(10,000〜20,000時間)、ビーム径も10μm以下への絞り込みが可能となった、本発明においては、前記半導体レーザービーム高解像度描画装置に用いる半導体レーザーとしては、出力1mW〜100Wの連続またはパルスタイプ、で発振波長は赤色〜赤外のものや波長390〜430nmの青紫半導体レーザーが使用できるものである。
【0044】
前記感光性樹脂としては、光重合型、化学増幅ネガ型、または化学増幅ポジ型の感光性樹脂組成物が使用できる。
【0045】
前記感光性樹脂組成物には、たとえば波長390〜430nmの青紫半導体レーザーでの露光の際、該レーザー光を効率よく吸収して、各感光性樹脂組成物の画像形成能を発現させる為に、前記波長390〜430nmに分光感度を持つ増感色素(以下、単に増感色素ということがある)を含有することが好ましい。ここで「分光感度を持つ」とは、例えば、後述する実施例に示した回折分光照射装置による方法において、画像を得る事が出来る事を意味する。
【0046】
かかる増感色素としては公知の増感色素から選ぶ事が出来るが、特に、ジアルキルアミノベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、アクリドン系化合物、イミダゾール/オキサゾール/チアゾール系化合物などが好ましい。またこれらの増感色素は複数を併用しても良い。
【0047】
前記感光性樹脂組成物のうち光重合型のものとしては、カルボキシル基を有するポリマー、エチレン性不飽和化合物、及び光重合開始剤を含有する組成物を挙げる事が出来る。
【0048】
前記カルボキシル基を有するポリマーとしては、アルカリ現像性等の面から、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する構成繰返し単位を少なくとも含むカルボキシル基含有ビニル系樹脂、又はエポキシ樹脂のエチレン性不飽和カルボン酸付加体に多価カルボン酸もしくはその無水物が付加された、不飽和基及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂であるのが好ましく、特に、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する構成繰返し単位を少なくとも含むカルボキシル基含有ビニル系樹脂が好ましい。またこれらの2種以上の混合物を用いる事も出来る。
【0049】
本発明における前記現像工程において、前記レーザービームの照射を受けなかった部分、すなわち未露光部である感光性樹脂塗膜は、現像液により、溶解除去されるものであり、除去された前記未露光部は、銅メッキ面が露出した状態となるものである。
【0050】
前記感光性樹脂として、光重合型のものとしては、カルボキシル基を有するポリマーを用いた場合の現像液としては、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ現像液が使用できるものである。これを用いることによって、未露光部分の前記感光性樹脂膜は溶解されて除去されるものである。
【0051】
前記現像工程の次に水洗工程があり、未露光部分の前記感光性樹脂膜は溶解されて除去されて、銅メッキ面が露出した部分に対してエッチング工程を行い凹部を形成するものである。
【0052】
エッチング工程におけるエッチング液(いわゆる腐食液)としては、銅メッキに対する腐食液としては、塩化第二鉄液を用いることができる。これにより、未露光部分の銅メッキ部分は、凹部となるものである。
【0053】
エッチング工程の後、水洗工程があるが、その後、エッチング工程の腐食によって、腐食されなかった露光部分は、レーザー光により前記感光性樹脂膜が重合して硬化しており、そのまま凸部形状を保持しているものである。
【0054】
エッチング工程、水洗工程の後に、クロムメッキ工程が行われ、凹凸銅メッキ面は、すべて凹凸クロムメッキ面となり、銅メッキ面より、表面硬度が高いものとなるものである。
【0055】
前記クロムメッキ工程の後、水洗工程を行い、本発明のシームレスホログラム母型シリンダー版が出来上がるものである。
【0056】
前記出来上がったシームレスホログラム母型シリンダー版をホログラムエンボス機にセットして、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂フイルムやトリアセチルセルロースフイルムやそれらの積層フイルムなどの上に、UV樹脂(紫外線硬化性樹脂)、たとえば、アクリルオリゴマーなどを塗布し、その塗布面に上記エンボス版にて、ホログラムレリーフパターンをエンボスして、エンボスフイルムが出来上がるものである。
【0057】
次に、前記エンボスフイルムに紫外線照射して、エンボス層を硬化させ、エンボス凹凸状態を固定状態にする。
【0058】
次に、上記エンボス凹凸面にアルミニウム蒸着を行い、アルミニウム蒸着層を設けて、ホログラム像を再現できる干渉縞または回折格子パターンの描画パターンのレリーフの
エンボスフイルムが出来上がるものである。
【実施例】
【0059】
以下にシームレスシリンダー版作成の実施例を説明する。
【0060】
<実施例1>まず、図2のフロー図に示すように、絵画パターン作成装置(10)(一般的なCADが使用できる)によってできた絵画パターンにレーザー光を当て、反射光にもう一方のレーザー光を当ててできる干渉縞や回折格子パターンの作成装置(11)による干渉縞や回折格子パターンのデータを描画データに変換する描画データ変換装置(12)に入力し、次に、その出力である描画データを半導体レーザービーム描画装置(13)
に入力する。
【0061】
図3のフロー図に示すように、金属シリンダーに銅メッキ工程(20)により銅メッキした図4の(a)に示すような銅メッキ層を設けけたシリンダー(30)に、光重合硬化型のカルボキシル基を有するポリマーである感光樹脂液を塗布し、図4の(b)に示すように、乾燥後の膜厚2〜3μmの感光性樹脂膜(31)を設けた。
【0062】
前記感光性樹脂膜(31)に対して、前記半導体レーザービーム描画装置(13)により、近赤外半導体レーザー(832nm)を光源とし、220mJ/cmのレーザー露光量により前記描画データを前記シリンダー上の前記感光性樹脂塗膜(31)に出力し、露光、照射され、前記感光性樹脂塗膜(31)上に前記描画データが焼き付けられ、図4の(c)に示すように、その照射部分、照射パターン(32)が、硬化状態となる。
【0063】
次の現像工程として、前記レーザービームの照射を受けなかった部分(35)、すなわち図4の(c)に示すように、未露光部(35)である感光性樹脂塗膜が現像液により、溶解除去されるものであり、除去された前記未露光部は、銅メッキ面が露出した状態となるものである。
【0064】
本発明における前記現像工程において、前記レーザービームの照射を受けなかった部分、すなわち未露光部である感光性樹脂塗膜は、炭酸カリウム水溶液などのアルカリ現像液により、溶解除去され、除去された前記未露光部は、銅メッキ面が露出した状態となった。
【0065】
前記現像工程の後、水洗工程として、スプレーで30秒間の水洗を行った。
【0066】
次のエッチング工程で、現像工程を経たシリンダーを塩化第二銅溶液に浸漬して、前記シリンダーの未露光部で、現像で感光性樹脂塗膜が溶解除去されて、図5の(c)に示すように、銅メッキ部分が露出した部分をエッチング腐食し、深度10〜30μmの凹部(33)とした。
【0067】
上記エッチング工程で、前記レーザービームの照射を受けて、光重合して硬化した露光部(32)の感光性樹脂塗膜を水酸化ナトリウム水溶液などの強アルカリ水溶液に膨潤後、溶解させ剥離させた。そして、露光部(32)は、銅メッキ面が露出したが、エッチングはされていないので、前記未露光部(35)、すなわち凹部(33)と比較して、結果的に凸部となった。
【0068】
上記剥離工程で、凹凸の銅メッキ面のシリンダーが出来上がったが、このままでエンボス版として使用するには、硬度的にも、耐磨耗性、耐傷性においても、不十分であるので、クロムメッキ、水洗をして、前述の諸強度を高め、図6の(b)に示すように、本発明の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版を作成した。
【0069】
前記クロムメッキ工程、水洗工程を経たシームレスホログラム母型シリンダー版を、ホログラムエンボス加工機にセットし、0PP(二軸延伸ポリプロピレン)/PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)/AC(アクリル樹脂フイルム)/TAC(トリアセチルセルロースフイルム)の積層フイルムのTAC面へUV(紫外線)硬化樹脂を塗布した。
【0070】
その後、前記UV樹脂(紫外線硬化性樹脂)、たとえば、アクリルオリゴマーなどを塗布し、その塗布面に上記エンボス版にて、ホログラムレリーフパターンをエンボスして、エンボスフイルムが出来上がるものである。
【0071】
次に、前記エンボスフイルムに紫外線照射して、エンボス層を硬化させ、エンボス凹凸状態を固定状態にする。さらに、上記エンボス凹凸面にアルミニウム蒸着を行い、アルミニウム蒸着層を設けて、本発明のホログラム像を再現できる干渉縞または回折格子パターンの描画パターンのレリーフのエンボスフイルムが出来上がるものである。
【符号の説明】
【0072】
1、本発明に係る金属シリンダーで、銅メッキがされたもの
2、1のシリンダーの軸
3、本発明の継ぎ目のないシームレスホログラム母型を設けたシリンダー
4、本発明のホログラムレリーフパターン
5、本発明の継ぎ目のないシームレスホログラム母型を設けたシリンダーによって、押し圧エンボスされて凹凸レリーフができたホログラムエンボスフイルム
10、絵画パターン作成装置
11、干渉縞または回折格子パターン
12、11の干渉縞または回折格子パターンを描画データに変換する装置
13、半導体レーザービーム描画装置(レーザー露光装置)
14、各種制御装置
15、シリンダー位置検出センサー
16、シリンダー
17、レーザー露光手段
20、金属シリンダーへの銅メッキ工程
21、銅メッキ済みシリンダーへの感光液塗布工程
22、乾燥工程〜半導体レーザー露光工程
23、現像工程〜水洗工程〜エッチング工程
24、レジスト剥離工程〜水洗工程〜クロムメッキ工程
25、水洗工程〜シリンダーをホログラムエンボス機にセット
26、フイルム上に紫外線硬化樹脂を塗布する工程〜エンボス工程〜アルミニウム蒸着工程
30、銅メッキしたシリンダー
31、30の銅メッキしたシリンダーに半導体レーザー光を吸収して硬化する感光性樹脂を塗布したシリンダー
32、半導体レーザー光を吸収して硬化した感光性樹脂膜の受光部(露光部)
33、エッチング工程で、腐食液によってエッチングを受けて凹部となった非照射部(未露光部)
35、半導体レーザー光が、照射しなかった非照射部(未露光部)
40、クロムメッキ工程を経クロムメッキ部
41、フイルム
42、41のフイルム上に塗布された紫外線硬化樹脂層
43、42の紫外線硬化樹脂層がエンボスされた凹凸状態
44、43紫外線硬化樹脂層がエンボスされた凹凸状態にアルミニウム蒸着されたアルミニウム蒸着凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造方法であって、
絵柄パターンに対して、2つに分岐した内の一つのレーザー光を照射し、その反射光と、分岐したもう一方のレーザー光とを干渉させてできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換を行うデータ変換装置と、
前記データ変換装置により変換された描画データをレーザービームとして出力する半導体レーザービーム高解像度描画装置と、
を備え、
前記半導体レーザービーム高解像度描画装置によって、前記描画データをシリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射する工程と、
その後、現像工程、水洗工程、エッチング工程、水洗工程、メッキ工程そして水洗工程をこの順に行うことによって
継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版が製造できることを特徴とするシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法。
【請求項2】
前記シリンダー上の感光性樹脂塗膜への前記半導体レーザービーム高解像度描画装置による描画解像度範囲が、100nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法。
【請求項3】
前記シリンダーの真円精度範囲が、60nm〜300nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法。
【請求項4】
前記シリンダーの回転パルス精度が、100nm単位で、500nmまでであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版の製造方法。
【請求項5】
シリンダーロールに直接描画によるホログラム母型版の製造装置であって、
絵柄パターンに対して、2つに分岐した内の一つのレーザー光を照射し、その反射光と、分岐したもう一方のレーザー光とを干渉させてできる干渉縞や回折格子パターンのデータを、描画データに変換を行うデータ変換装置と、
前記データ変換装置により変換された描画データをレーザービームとして出力する半導体レーザービーム高解像度描画装置と、
を具備し、
前記半導体レーザービーム高解像度描画装置によって、前記描画データをシリンダー上の感光性樹脂塗膜に露光、照射することを特徴とするシームレスホログラム母型シリンダー版の製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とする継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版。
【請求項7】
請求項6に記載の継ぎ目のないシームレスホログラム母型シリンダー版によって、エンボスされたホログラム像を再現できる干渉縞または回折格子パターンの描画パターンのレリーフの形成されたことを特徴とするエンボスフイルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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