説明

シームレス膜物質を有する膜袋、その使用及びそれを用いる濾過装置

透過物収集のための、シームレス膜物質(43)中に完全に封入されたある嵩を含んでなる膜袋(40);少なくとも1つの上記のシームレス膜袋を含んでなる濾過装置;膜型バイオリアクターにおける、水濾過又は廃水精製における、ならびに流体、蒸気及び粒子の混合物の濾過又は分離のための少なくとも1つの上記のシームレス膜袋の使用。2つのスペーサー布(11,12)がモノフィラメント(15)により離れて置かれ、透過路(23)を形成する。膜物質(43,44)が袋の境界(41)に沿って該空間を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、シームレス膜物質を有する膜袋、その使用ならびにそのような膜袋が導入された膜ポケット又はカートリッジとしても知られる濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、水分野(water−world)において膜型バイオリアクター(MBRs)に多くの興味が持たれてきた。MBRは2つの基本的なプロセス−生分解及び膜分離−が1つのプロセスに組み合わされたものであり、ここでは懸濁された固体及び生分解を担う微生物が膜濾過装置により処理水から分離される。今日まで研究は、家庭、工業ならびに家庭及び工業混合廃水処理プラント、工業生産プロセスからの濃縮流、廃棄物処理部位からの浸出水の処理ならびに汚泥の脱水のためのMBRsの適用性に集中してきた。廃水用途のための膜型バイオリアクターの成功は、飲用水生産プロセスにおけるMBR概念の適用の研究に導いた。
【0003】
廃水MBR−用途において、リアクターにおける生物学的処理は膜濾過による物理的処理と組み合わされる。沈降プロセスの代わりに膜濾過を用いることにより、リアクターにおける高い汚泥装入量を保持することができ、それは(理論的に)低い汚泥生産を以って高い生分解速度に導く。15〜20g/lの汚泥濃度がMBR−文献で言及されている。プロセスの高い有効性は、高度に濃縮された流れの処理及び小さいフットプリントを有するシステムの設計を可能にするであろう。事実、8〜12g/lの最大保持可能汚泥濃度の故に膜濾過に必要な面積がより小さいこと及び沈降タンクが不要になることにより、フットプリントは減少する。さらに、通常の沈降システムにおけるより高い汚泥生産速度が記録された。
【0004】
特許文献1は、有機繊維から成る多孔質基材の表面上に多孔質樹脂層を形成することにより製造され、多孔質樹脂層を形成する樹脂の一部が多孔質基材の一部の少なくとも表面層中に浸透して少なくとも表面層部分において多孔質基材と複合層を形成する分離膜を開示している。
【0005】
特許文献2は、多孔質基材の表面上に形成される多孔質樹脂層及び多孔質樹脂層を形成する樹脂の一部を多孔質基材と一体化させることにより形成される組み合わせ層を有し:2dB≦dA(ここでdAは処理されるべき液体の側の表面上の平均孔径であり;dBは透過した液体の側の表面上の平均孔径である)の関係を満足する孔が多孔質樹脂層の両表面上に形成される分離膜を開示している。
【0006】
特許文献3は、支持板の表面及び流路材料上の液体中の不純物を除去するための液体分離膜の両方の上に流路材料が配置された濾過膜要素(filter membrane element)を開示しており、濾過膜要素は支持板の一部の上で支持板の両表面を貫通する水収集のためのギャップを有し;水収集のためのギャップは透過水の取り出し口の方向に配置され、透過水の出口と通じている。
【0007】
特許文献4は、少なくとも1つの濾過装置を含んでなる平板積層フィルターカートリッジを開示しており、ここで該濾過装置は:内縁;該内縁の外周を囲み且つ該内縁から離れて置かれた外膜;該内縁と該外膜の間に延び、それぞれ該内縁に接着された全内周ならびに別の該外周の少なくとも1つ及び該外膜に接着されてそれらの間に空間を形成し、濾過
されるべき溶液の流路として働く全外周を有する上部及び下部濾過フィルム;ならびに該上部及び下部濾過フィルムの両面の少なくとも1つの上ならびに該上部及び下部濾過フィルムの間に配置された紙、不織布及びネットから作られる少なくとも1つのフィルム支持膜を含んでなる。特許文献4はさらに、濾過フィルム支持膜は上部及び下部濾過フィルムに全く接着されず、それは内側から濾過フィルムを支持するためのみに与えられることを開示している。
【0008】
特許文献5は:隣接する膜カートリッジから適切に離れて互いに平行に垂直に置かれた複数の平らで硬い膜カートリッジ;互いに向き合った膜カートリッジの間に区画されるギャップと向かい合わせの膜カートリッジの膜表面に平行な流れを供給するためのクリーニング流発生手段;ならびに各膜カートリッジ中の透過液の通路に通じる各膜カートリッジ中の透過液を吸収するための吸収手段を含んでなる、処理タンク中の処理液中に浸された濾過膜モジュールを開示しており;各膜カートリッジは膜支持板及びその外面を覆う濾過膜を有し;濾過膜を支持する膜支持板は硬い構造部材の使用により中空にされ、板の内部は透過液の通路を形成し、膜支持板は濾過膜と向き合った表面上に形成される開口部を有し、開口部は透過液の通路に通じている。膜カートリッジは図27に例示されるような膜袋であることができる。
【0009】
特許文献6は、それぞれ濾過膜ポケットの内部空間の脱水のための少なくとも1つの開口部を有し、互いに平行に垂直に且つ好ましくは互いに同じ間隔で硬いホルダー中に置かれ、そして隣接濾過膜ポケットの間に介在する空間を液体が広範囲に横断するように配置された多数の濾過膜ポケットを有し、濾過膜ポケットが実質的に平らで柔軟であるように形成され、向かい合った面上で濾過膜ポケット開口部を介して吸収される液を奪い取る(carrying off)ための少なくとも1つの吸引ライン(suction line)を有するホルダーと固定的に連結されていることならびに濾過膜ポケットが柔軟な液体透過性コア及び/又は複数の柔軟な透過性コア要素を有することを特徴とする廃水のクリーニングのための濾過−モジュールを開示している。
【0010】
特許文献7は、比較的柔軟で透過物の通過を許す縦に長い透過流通路材料ならびにその両側に沿って置かれた平らな部材を有し、封止部分は上端及びその左右両端において周囲端の3つの側をしっかりと接着することにより形成され、袋形態として形成される四辺形の平らな平面状膜を構成する要素を開示している。特許文献7はさらに、膜支持部材が備えられる平らな平面状膜の封止されない周囲端における片側は、膜支持部材の上部の両側の上の表面上に約1.5cmの高さで重ねられ、平らな平面状膜を支持するために膜支持部材に融着されること;膜支持部材より厚さにおいて大きなヘッドが膜支持部材の両端において形成されること;ならびに膜支持部材の流路に通じ且つ透過物を取り出すために用いられるノズルがヘッドの両方に備えられることを開示している。
【0011】
特許文献8は、第2の態様において、膜支持体の表面上に膜−形成性ポリマーの溶液を流延し、懸濁された(suspended)固化浴中に支持体を沈めていわゆる転相法により半透膜部品を形成することによる平らな膜支持体の形成を開示しており、ここで定着効果により選択透過膜を支持体に接着することができ、ここで支持体の表面層を構成する不織布中への膜−形成性ポリマー溶液の浸透は、ゲル化の後に繊維により停止する。
【0012】
上記の先行文献の膜板(フィルターポケット、4面の(four−sided)平らな平面状膜を有する袋)は、別々の構成部品(2つの膜、スペーサー及び支持体)を一緒にし、2つの膜を互いに向かい合わせてそれらの膜支持体と一緒に置き、スペーサーをそれらの間に置いてギャップを作ることにより形成される。生ずる多数の構築段階;膜の剥離及びはがれを生ずるモジュール支持体への膜の劣った接着;ならびに膜のそれらの支持体への劣った接着の結果として十分な圧力を用いて膜をバック−フラッシング(back−
flushing)できない故の運転上の問題を含むこれらの概念の弱点は、特許文献9及び特許文献10において提出された。
【0013】
特許文献9は、外部フィルター層及び膜材料の少なくとも1つの層を含んでなる、特に流体媒体の濾過のための枠なし板−形フィルター要素を開示しており、ここで外部フィルター層の間に少なくとも1つの内層が設けられ、それは少なくとも1つの面上に複数の突起を含んでなり、それは面を横切って分布し、互いからある間隔で取り付けられ、その突起の末端表面は外部流体−透過性層のための接触面を形成する。しかしながら強化構造への膜層の接着は劣っており、用いることができるバックフラッシュ圧を低くする。
【0014】
特許文献11は、支持体及び保護層としての布層を有する少なくとも1つのフィルター膜を持つフィルター媒体を開示しており、それは、別の布層を有する少なくとも1つの他のフィルター膜が支持体及び保護層として存在すること、2つの隣接するフィルター膜の間に第3の布層が延びていること、ならびに2つの隣接するフィルター膜が第3の布層を介して延びる2つの他の布層の糸を介して互いに連結していることを特徴とする。
【0015】
特許文献10は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により結び付けられ且つ離れて置かれる上部及び下部布表面を有するスペーサー布から成る透過路を含んでなる一体化(integrated)透過路(IPC)膜を開示しており、該透過路は2つの膜層の間に挟まれ、ここで該膜層は多数の点において該上部及び下部布表面を用いて連結されている。IPC膜カートリッジは、バックフラッシュ圧への高い抵抗性を有し、それによりそれらの有効性を向上させ、且つ特許文献10はさらに、ドープコーティングされた(dope coated)スペーサー布の両面上に異なる条件を適用することにより、両面において異なる孔径特性を有する非対称スペーサー布−強化膜を得ることが可能であることを開示している。
【0016】
しかしながら、特許文献10は以下の製造段階:
●スペーサー布準備段階:スペーサー布(編まれた、織られた又は不/織の)を巻き出し;スペーサー布を垂直位置に導き、そしてスペーサー布を広げて(二次加工方向に垂直に)折り目形成を妨げる;
●スペーサー布コーティング段階:ドープコーティングされたスペーサー布を得るための両面コーティング系及びスペーサー布の両面上における(両面において同じレベル)自動的なドープ供給を用いるドープの同時両面コーティング;
●表面孔形成段階:両面コーティングされたスペーサー布の水蒸気相との接触。ドープコーティングされたスペーサー布の両面に異なる条件を適用することにより、両面において異なる孔径特性を有する非対称スペーサー布−強化膜を得ることも可能である。
●嵩形成段階(bulk formation step):生成物の熱水浴中への凝析;
●後−処理段階:水溜めにおける化学品の洗い出し;ならびに
●乾燥段階:生成物の乾燥
を開示している。
【0017】
特許文献10は、膜層を通過せずに流体が透過路から又は透過路に直接移動するのを妨げるために配置される平面状膜の周辺(perimeter)におけるシーラントの好ましい存在も開示している。さらに、特許文献10(用途1)に開示されているIPC−膜の使用の1つの例示において、エポキシ/ポリウレタンのようなシーラント、いずれかのゴム又はホットメルトあるいは融着でさえ、IPC−MBR膜1の少なくとも2つの(好ましくは向かい合った)端において密封するために必要であるとみなされた。IPC−膜のそれぞれの封止には、1つのIPC−膜のための有意な手動調整(manutenti
on)が必要であり、高い生産コストを意味する。さらに、シーラントの存在は、隠された領域を作ってそれにより濾過有効性を低下させることにより、濾過プロセスの有効性を低下させる。さらに、IPC膜で作られる膜カートリッジの封止は弱点を構成し得、それは許され得るバックフラッシュ圧を、及び膜カートリッジの濾過容量も制限する。
【0018】
従って、膜を通過せずに流体が透過路から又は透過路に直接移動するのを妨げるために配置される膜の周辺におけるシーラントを必要としない一体化透過路を有する膜装置を開発するのが望ましい。
【0019】
先行技術:
これまでに、以下の先行技術の文書が出願人に既知である:
2005年4月14日に公開された特許文献11
1999年9月14日に公開された特許文献7
2001年11月20日に公開された特許文献3
2003年5月13日に公開された特許文献1
2003年5月20日に公開された特許文献2
1994年1月4日に公開された特許文献8
1996年1月9日に公開された特許文献5
2003年5月8日に公開された特許文献6
2006年2月16日に公開された特許文献10
2006年6月1日に公開された特許文献9
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】日本特許第2003−135939A号明細書
【特許文献2】日本特許第2003−144869A号明細書
【特許文献3】日本特許第2001−321645号明細書(日本特許第2001−321645A号明細書)
【特許文献4】米国特許第4,871,456号明細書
【特許文献5】米国特許第5,482,625号明細書
【特許文献6】国際公開第03/037489号パンフレット(国際公開第03/037489A号パンフレット)
【特許文献7】日本特許第11−244672A号明細書
【特許文献8】米国特許第5,275,725号明細書
【特許文献9】国際公開第2006/056159A号明細書
【特許文献10】国際公開第2006/015461A号明細書
【特許文献11】カナダ特許第2 552 533A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の側面
本発明の側面は、膜を通過せずに流体が透過路から又は透過路に直接移動するのを妨げるために配置される膜の周辺におけるシーラントを必要としない一体化透過路を有する膜装置を提供することである。
【0022】
膜の最外表面におけるより大きな開口部を、膜と一体化透過路の間の界面に有する、非対称孔を持つ膜を有する膜装置を提供することも、本発明の側面である。
【0023】
本発明のさらなる側面及び利点は、下記の記述から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の概略
驚くべきことに、均一な構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋であって、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられた布の第1及び第2部分を含んでなり、モノフィラメントスペーサー糸は、好ましくはスペーサー布の第1及び第2部分を介してループを形成し;場合によりループを有することができる布の第1及び第2部分に膜物質を含浸させてそれらの最内表面の間に一体化透過路を有する2つの膜を形成し;2つの膜は端を有し、膜のそれぞれの対応する端は膜間の距離を架橋する膜物質により連結され(joined together);一体化透過路から透過物を抽出するために管が設けられ;そして好ましくはスペーサー布のいずれも一体化透過路と不連続な膜の最外表面上に暴露されないシームレス膜袋が実現され得ることが見出された。
【0025】
さらに、驚くべきことに、そのようなシームレス膜袋は、膜の最外表面より大きな開口部を膜と一体化透過路の間の界面に有する所望の非対称孔を有することが見出された。
【0026】
本発明の側面は、シームレス膜物質中に完全に封入された透過物収集のためのある嵩(a volume)を含んでなる膜袋により与えられる。
【0027】
本発明の側面は、少なくとも1つの上記の膜袋を含んでなる濾過装置によっても与えられる。
【0028】
本発明の側面は、膜型バイオリアクターにおける少なくとも1つの上記の膜袋の使用によっても与えられる。
【0029】
本発明の側面は、水濾過又は廃水精製における少なくとも1つの上記の膜袋の使用によっても与えられる。
【0030】
本発明の側面は、流体、蒸気及び粒子の混合物の濾過又は分離のための少なくとも1つの上記の膜袋の使用によっても与えられる。
【0031】
本発明のさらなる側面は、従属クレイムにおいて開示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な記述:
定義
本発明の開示において用いられる「シームレス」という用語は、膜濾過に関与することができない接着剤、積層、プレス成形(pressing)、融着などからのような継ぎ目がないことを意味する。結果として、膜袋[40]の膜物質[43,104]は、すべ
ての方向において全体が多孔質である。
【0033】
本発明の開示において用いられる「膜袋」という用語は、少なくとも1つの膜を含んでなる袋を意味する。
【0034】
本発明の開示において用いられる「シームレス膜袋」という用語は、その嵩から透過物を抽出するための場合による管を除いて、シームレス膜物質(膜材料)中に完全に封入された透過物収集のためのある嵩を意味する。
【0035】
本発明の開示において用いられる「一体化透過路」という用語は、膜袋中に封入された嵩を意味し、すなわち透過路は膜袋自身から分離不可能である。
【0036】
本発明の開示において用いられる「スペーサー布」という用語は、例えば表糸及びパイル糸から構成される糸の3次元一体構造を有する布を意味する。そのような布は織布又は不織布であることができ、そして好ましくは編布、編組布(braided)又はかぎ針編布(crocheted)である。
【0037】
本発明の開示において用いられる「均一なスペーサー布」という用語は、布の第1及び第2部分中に異なる網目寸法を有する領域がないスペーサー布を意味する。これは、異なる網目寸法を有するスペーサー布の第1及び第2部分を排除しない。
【0038】
本発明の開示において用いられる「不均一スペーサー布」という用語は、異なる網目寸法を有する布の第1及び第2部分の領域があるスペーサー布を意味する。
【0039】
本発明の開示において用いられる「スペーサー布の部分」という用語は、スペーサー布の一体部分又は層を意味する。
【0040】
本発明の開示において用いられる「膜物質」という用語は膜材料、すなわち膜性を有する材料である。膜物質は均一又は不均一であることができる。
【0041】
本発明の開示において用いられる「膜袋の境界」という用語は、膜袋の端を区画するために、スペーサー布の膜物質を含浸させられた第1及び第2部分の間のあらかじめ区画される空間が膜物質により満たされている、すなわちスペーサー布の第1及び第2部分が膜物質により架橋されている膜袋の部分を意味する。
【0042】
本発明の開示において用いられる「スペーサー布の第1及び第2層を膜物質でコーティングする」という用語は、スペーサー布の第1及び第2層(部分)に膜物質を適用することを意味し、膜物質は適用条件に依存してスペーサー布の第1及び第2層(部分)に部分的に又は完全に浸透し、それによりスペーサー布の第1及び第2部分を部分的に又は完全に膜物質で埋め込む。
【0043】
本発明の開示において用いられる「膜物質で埋め込まれる」という用語は、膜物質を含浸させられ、埋め込みの結果となることを意味する。
【0044】
本発明の開示において用いられる「膜物質を含浸させられた」という用語は、例えばドクターブレードコーティング、押出コーティング又はスロットコーティングのようなコーティング法を用いて、膜ドープがスペーサー布に浸透し、続いて膜ドープが膜物質に転換されるようなやり方で、膜ドープをスペーサー布に適用した結果を意味する。
【0045】
本発明の開示において用いられる「連続領域」という用語は、典型的には直線状(re
ctilinear)であるあらかじめ区画される領域を囲む領域を意味する。1つのあらかじめ区画される領域を囲む連続領域の部分は、隣接するあらかじめ区画される領域を囲む連続領域の一部を形成することができるか、あるいは隣接する連続領域間に膜ドープの含浸がないギャップがあることができる。
【0046】
本発明の開示において用いられる「膜ドープ」という用語は、続く少なくとも1つのプロセス段階中に膜物質に転換され得る単数又は複数の組成物を意味する。
【0047】
本発明の開示において用いられる「網目」という用語は、網目構造又は布中に封入されるすべての種類の開放空間を意味する。従って「網目」という用語は、網目又は布内の孔又は開口部も指す。
【0048】
本発明の開示において用いられる「実質的に平面状の」という用語は、巨視的な湾曲を有していないことを意味する。
【0049】
本発明の開示において用いられる「実質的に平行な」という用語は、−25°〜+25°の互いに対する角度を有することを意味する。この平行性は、一体化透過路の一体化性の故に、いずれの膜袋の形にも関係する。
【0050】
本発明の開示において用いられる「実質的に垂直な」という用語は、70°〜110°の輸送方向に対する角度を有することを意味する。
【0051】
本発明の開示において用いられる「実質的に含まない」という用語は、30%未満、好ましくは20%未満そして好ましくは10%未満を意味する。
【0052】
本発明の開示において用いられる「膜継ぎ目」という用語は、膜物質から成る実質的に平行な膜の端の間の接合部を意味する。
【0053】
「スロットのリップ」という用語は、布の輸送方向に垂直に置かれるスロットの場合、スロットのいずれかの面上にある輸送方向に平行な含浸ヘッドの部分を意味する。
【0054】
本発明の開示において用いられる「スロットのリップの長さ」という用語は、輸送方向に垂直なスロットの端と輸送方向に平行な含浸ヘッドの隣接する部分の端の間の距離、すなわち図9における「L」又は「L」を意味する。
【0055】
本発明の開示において用いられる「スロット面」という用語は、スロットの4つの面を形成する表面を意味する。
【0056】
本発明の開示において用いられる「スロット開口部の高さ」という用語は、布の輸送方向に垂直なスロット面の間の平均距離、すなわち図9における「h」を意味する。
【0057】
本発明の開示において用いられる「スロットの高さ」という用語は、スロット開口部とスロットに連結されるマニホールドの間の距離、すなわち図9におけるkを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図の簡単な記述
【図1】図1は、モノフィラメント糸により離れて置かれた第1及び第2部分を有する不均一スペーサー布の略図を示す。スペーサー布は、第2領域により範囲を定められた第1領域を含んでなる。
【図2】図2は、本発明に従うが、一体化透過路から透過物を抽出するための管がない、均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の略図を示す。
【図3】図3は、一体化透過路から透過物を抽出するための管を有する、本発明に従うシームレス膜袋の略図を示す。
【図4】図4は、透過物収集のための嵩が底面及び上面の両方において、ならびに側壁に沿って完全に膜物質により封入されている、不均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の断面の略図を示す。
【図5】図5は、袋の側壁を介して挿入される透過物の収集のための管を含んでなる、図4のシームレス膜袋の略図を示す。
【図6】図6は、膜に平行な一体化透過路を貫く断面としての、個々の袋に分離される前の、均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の列の一部の略図を示し、ここで灰色の領域は膜物質を示し、矢印はスペーサー布の輸送方向を示す。
【図7】図7は、4つのシームレス膜袋を側面において示す、シームレス膜袋の端の間の中間の図6の断面に垂直な断面としての、個々の袋に分離される前の、均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の列の一部の略図を示し、ここで矢印はスペーサー布の輸送方向を示す。
【図8】図8は、スペーサー布の第1及び第2部分が少なくとも部分的に膜ドープで埋め込まれるのみでなく、それらの間の空間も膜ドープで満たされるあらかじめ区画される連続領域の含浸のための、より詳細な膜ドープ含浸/埋め込み系を略図的に示す。
【図9】図9は、輸送方向に平行な連続領域の部分において増加する量の膜ドープを与え、それによりあらかじめ区画される領域において、膜ドープを用いる少なくとも部分的なスペーサー布の第1及び第2部分の埋め込みのみでなく、それらの間の空間の充填も実現されるように適応させられた含浸ヘッド[106]及び[106’]を略図的に示す。
【図10】図10は、本発明に従う均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋のための製造ラインの略図を示し、ここで[108]は供給ローラーであり、[109]は補正ローラーであり、[110]は膜ドープ含浸系であり、[111]は蒸気相(冷蒸気)(転相のため)であり、[112]は浸漬浴(転相のため)であり、[113]は輸送ローラーであり、そして[114]は巻き取りローラーである。
【図11】図11は、膜ドープを含浸させられた図1の不均一スペーサー布の断面の略図を示す。
【図12】図12は、スペーサー布に膜ドープを含浸させ/埋め込むため及び膜ドープを膜物質に転換するための、不均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋用の製造ラインの略図を示す。
【0059】
シームレス膜物質を有する膜袋
本発明の側面は、透過物収集のためのある嵩を含んでなる膜袋により与えられ、ここで嵩はシームレス膜物質中に完全に封入される。
【0060】
本発明に従う膜袋の第1の態様に従うと、嵩は一体化透過路である。
【0061】
本発明に従う膜袋の第2の態様に従うと、膜袋はさらに、嵩から透過物を抽出するための管[51,105]を含んでなる。
【0062】
本発明に従う膜袋の第3の態様に従うと、膜袋はさらに、膜物質のための多孔質支持体を含んでなる。
【0063】
本発明に従う膜袋の第4の態様に従うと、膜袋はさらに膜物質のための多孔質支持体を含んでなり、多孔質支持体はスペーサー布である。
【0064】
本発明に従う膜袋の第5の態様に従うと、膜袋はさらに、スペーサー布を含んでなる。
【0065】
本発明に従う膜袋の第6の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、0.5〜15mmの布の第1及び第2部分の間の距離が好ましく、1〜10mmの距離が特に好ましく、1.5〜7mmの距離が特別に好ましい。
【0066】
本発明に従う膜袋の第7の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、モノフィラメント糸の一部は膜物質中に埋め込まれる。
【0067】
本発明に従う膜袋の第8の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、あらかじめ規定される距離におけるモノフィラメント糸を用いる布の第1及び第2部分の結び付けは、布層を構成しない。
【0068】
本発明に従う膜袋の第9の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、布の第1及び第2部分の結び付けは、第3の布層を貫いて延びる2つの他の布層の糸を介する2つの隣接する濾過膜の互いへの連結を構成しない。
【0069】
本発明に従う膜袋の第10の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は保護層を構成しない。
【0070】
本発明に従う膜袋の第11の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、布の第1及び第2部分を結び付けているモノフィラメント糸により占有される嵩のパーセンテージは30%もしくはそれ未満であり、10%もしくはそれ未満が好ましく、5%もしくはそれ未満が特に好ましい。
【0071】
本発明に従う膜袋の第12の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、嵩が第1及び第2部分の間にはさまれ、膜物質が膜袋の境界に沿ってスペーサー布を満たし、膜袋の境界は、膜物質で埋め込まれたスペーサー布の第1及び第2部分の間の空間を満たす膜物質から成る。
【0072】
本発明に従う膜袋の第13の態様に従うと、嵩は実質的に膜物質を含まない。
【0073】
本発明に従う膜袋の第14の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、モノフィラメント糸は好ましくはスペーサー布の第1[11,101]
及び第2[12,101’]部分を介してループを形成し、そして特に好ましくは、ループは膜物質で埋め込まれ/含浸させられている。膜構造中へのそのようなモノフィラメント糸のループの導入は、ループが動く自由がないことを意味し、それはシームレス袋を非常に硬くし、大きな表面、例えば2mx2mを有する膜袋の製造を可能にする。
【0074】
本発明に従う膜袋の第15の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は膜物質で少なくとも50%埋め込まれ/含浸させられ、膜物質で少なくとも80%埋め込まれ/含浸させられるのが好ましい。
【0075】
本発明に従う膜袋の第16の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は、嵩と不連続なスペーサー布の第2部分の最外表面の上に少なくとも20μmの厚さが与えられるように、膜物質を含浸させられ、膜物質の少なくとも50μmの厚さが好ましい。
【0076】
本発明に従う膜袋の第17の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、膜物質で埋め込まれたスペーサー布の第1及び第2部分は実質的に互いに対して平行であり、±1mmの互いに対する平行性が好ましい。
【0077】
本発明に従う膜袋の第18の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれたスペーサー布の第1及び第2部分は実質的に平面状である。
【0078】
本発明に従う膜袋の第19の態様に従うと、膜物質は、嵩と不連続な膜袋の最外表面における開口部より大きな開口部を、膜物質と嵩の間の界面に有する非対称孔を持つ膜を与える。
【0079】
本発明に従う膜袋の第20の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、スペーサー布のいずれも、嵩と不連続な膜袋の最外表面上に暴露されていない。
【0080】
本発明に従う膜袋の第21の態様に従うと、膜袋はスペーサー布(10]を含んでなり、スペーサー布はスペーサー布の第1(11]及び第2(12]部分を含んでなり、ここで:スペーサー布の第1及び第2部分はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸(15]により離れて置かれ且つ結び付けられ;スペーサー布の第1及び第2部分は、少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ;透過物収集のための嵩がスペーサー布の第1及び第2部分の間にはさまれ;膜物質はモノフィラメント糸の一部を埋め込み;膜物質は膜袋の境界に沿ってスペーサー布を完全に満たし;且つここで嵩はそれにより膜物質(43]中に完全に封入され、膜袋をシームレスにする。
【0081】
膜袋[40]は、好ましくは一定のあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸[15,103]により結び付けられ且つ離れて置かれる第1部分[11,101]及び第
2[12,101’]部分を含んでなるスペーサー布を含む。スペーサー布内に、部分[11,101]及び[12,101’]の間にはさまれて嵩[23,102]が位置する。第1部分[11]及び第2部分[12]の両方は網目を含んでなる布で作られ、膜物質[43,104]を含浸させられる。膜物質[43,104]は、含浸の故に多数の点で第1部分[11,101]及び第2[12,101’]部分に結合する。多数の点は膜袋の表面全体に及んで広がり、これらの点は好ましくは第1及び第2部分全体に均一に広がっている。膜物質[43,104]は、第1及び第2部分の布の網目を満たす及び/又は塞ぐために、少なくとも部分的に第1[11]及び第2[12]部分を埋め込む。膜物質はスペーサー糸[15,103]の一部も埋め込み、ここでこれらの部分はスペーサー布の第1[11,101]又は第2[12,101’]部分と噛み合っている。
【0082】
膜袋[40]の境界[41]に沿って、スペーサー布は完全に−内側[44]においても−膜物質で満たされる。結果として嵩[23]は完全に封入され、膜物質[43,104]により周囲から隔離される。膜物質[43,104]は嵩[23,102]の回り全体、間に嵩[23,102]が挟まれている第1部分[11,101]及び第2部分[12,101’]上の両方ならびに又2つの部分[11,101]及び[12,101’]の間の袋の端[44]に沿って与えられる。
【0083】
本発明に従う膜袋の第22の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分の一部は、透過物収集のための嵩の領域内の多数の点で膜物質中に埋め込まれている。
【0084】
本発明に従う膜袋の第23の態様に従うと、膜袋はさらにスペーサー布を含んでなり、ここでスペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられたスペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分中に含まれる網目は膜物質により満たされる。
【0085】
本発明に従う膜袋の第24の態様に従うと、膜袋はさらに不均一スペーサー布を含んでなり、不均一スペーサー布は、第1の構造を有するスペーサー布の第1及び第2部分の1つもしくはそれより多い第1領域ならびに第2の構造を有するスペーサー布の第1及び第2部分の1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなる。
【0086】
図4に示される1つの態様に従うと、膜物質[43,104]中に封入された嵩[23,102]を含んでなる膜袋[40]が与えられる。嵩[23,102]は、透過物収集に適しているような寸法を有する。従って、封入された嵩[23]を透過路とみなすことができる。
【0087】
膜袋[40]は、例えば長方形の底を有する角柱様の形を有することができるが、他の形は等しく可能である(例えば円筒形)。封入された嵩[23,102]も長方形の底[42]及び側壁[44]を有する角柱様の形を有することができ、側壁の高さはスペーサー布の第1部分[11,101]及び第2部分[12,101’]の間の間隔により規定される。
【0088】
本発明に従う膜袋の第25の態様に従うと、膜袋は少なくとも10バールのバックウォッシュ(backwash)圧に耐えることができる。
【0089】
本発明に従う膜袋の第26の態様に従うと、膜物質は全体的に且つすべての方向におい
て多孔質である。
【0090】
本発明に従うスペーサー布を含んでなる膜袋の第27の態様に従うと、膜は巻き取りローラー上で巻き取られることができる。
【0091】
本発明に従う膜袋の第28の態様に従うと、膜袋はさらに少なくとも1種の汚染物、例えばペルフルオロ−オクタン酸(PFOA)を吸着するための媒体を含んでなる。
【0092】
本発明に従う均一構造を有するスペーサー布を含んでなる典型的なシームレス膜袋は、0.5mx0.5m、0.5mx1m、1.5mx0.7m及び1.0mx1.0mの寸法を有する。本発明に従う0.1mx0.1mの寸法を有するシームレス膜袋が製造され、それを最高で少なくとも17バールの圧力でバック−フラッシングすることができる。
【0093】
本発明に従う均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋を、材料の選択に依存して、最高で120℃の温度で用いることができる。
【0094】
均一スペーサー布に基づくシームレス膜物質を有する膜袋
本発明に従う膜袋の第29の態様に従うと、膜袋はさらに均一なスペーサー布を含んでなる。
【0095】
本発明の側面は、均一なスペーサー布(10]、透過物収集のためのある嵩(23]を含んでなる膜袋により実現され、スペーサー布はスペーサー布の第1(11]及び第2(12]部分を含んでなり、ここで:スペーサー布の第1及び第2部分はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸(15]により離れて置かれ且つ結び付けられ;スペーサー布の第1及び第2部分は、少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ;透過物収集のための嵩がスペーサー布の第1及び第2部分の間に挟まれ;膜物質はモノフィラメント糸の一部を埋め込み;膜物質は膜袋の境界に沿ってスペーサー布を満たし;且つここで嵩を完全に封入する膜物質(43]はシームレスである。
【0096】
本発明の側面は、均一構造を有するスペーサー布を含んでなる膜袋により実現され、スペーサー布はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられた布の第1及び第2部分を含んでなり、モノフィラメントスペーサー糸は、好ましくはスペーサー布の第1及び第2部分を介してループを形成し;ここで場合によりループを有することができる布の第1及び第2部分に膜物質を含浸させて、好ましくは互いに対して実質的に平行であり、且つそれらの最内表面の間に一体化透過路を有する2つの膜を形成し、2つの膜は好ましくは非対称な孔及び端を有し、膜のそれぞれの対応する端は膜間の距離を架橋する膜物質により連結され、一体化透過路から透過物を抽出するために管が設けられ、そして好ましくはスペーサー布のいずれも膜の最外表面上に暴露されない。
【0097】
図2は、本発明に従うが、一体化透過路から透過物を抽出するための管がない、均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の略図を示し、ここで[101]はスペーサー布の第1部分であり、[101’]は第2部分であり、[102]はモノフィラメントスペーサー糸[103]を用いて保持されるスペーサー布の第1及び第2部分の間の空間である。膜物質は番号[104]により示される。
【0098】
図3は、一体化透過路から透過物を抽出するための管[105]を有する、本発明に従う均一構造を有するスペーサー布を含んでなるシームレス膜袋の略図を示す。[101]はスペーサー布の第1部分であり、[101’]は第2部分であり、[102]はモノフィラメントスペーサー糸[103]を用いて保持されるスペーサー布の第1及び第2部分
の間の空間である。膜物質は番号[104]により示される。
【0099】
不均一スペーサー布に基づくシームレス膜物質を有する膜袋
本発明に従う膜袋の第30の態様に従うと、膜袋はさらに不均一なスペーサー布を含んでなる。
【0100】
本発明の側面は、スペーサー布(10]及び透過物収集のためのある嵩(23]を含んでなる膜袋によっても実現され、スペーサー布はスペーサー布の第1(11]及び第2(12]部分を含んでなり、ここでスペーサー布の第1及び第2部分はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸(15]により離れて置かれ且つ結び付けられ;スペーサー布(10]は、第1部分中の布及び第2部分中の布が第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域(13]ならびに第1部分中の布及び第2部分中の布が第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域(14]を含んでなり、第2の構造は第1の構造より大きい網目を有し;1つもしくはそれより多い第1領域のそれぞれは、1つもしくはそれより多い第2領域により完全に回りの範囲を定められ;1つもしくはそれより多い第1領域において、スペーサー布の第1部分及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれて、第1部分及び第2部分の間に膜物質を含まない嵩(23]を残し;スペーサー布の1つもしくはそれより多い第2領域において、スペーサー布は膜物質で満たされている。
【0101】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第1の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなる。
【0102】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第2の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、そしてスペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1領域の繰り返しパターンを含んでなる。
【0103】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第3の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、そしてスペーサー布の第1及び第2部分のそれぞれにおいて、1つの第2領域は第1領域のそれぞれを輪郭付ける(囲む)。
【0104】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第4の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、そしてスペーサー布の第1及び第2部分のそれぞれにおいて、第2領域は第1領域の間に網目の形態で延びている。
【0105】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第5の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び
付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、そしてスペーサー布の第1及び第2部分のそれぞれにおいて、第1の中心領域[42]中における第1部分[11]及び第2部分[12]の布は、第2の境界領域[41]中におけるより小さい網目を含んでなる。第1領域[42]は封入された嵩[23]の上に延び、そこでスペーサー布は膜物質により満たされていない。第2領域41において、スペーサー布は膜物質で完全に満たされている。
【0106】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第6の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2の部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、第2構造は第1構造より大きな網目を有し、ここでスペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、且つここでスペーサー布の第1及び第2部分の第2領域ならびにそれらの間の空間は完全に膜物質で満たされてシームレスな境界を形成し、スペーサー布の第1及び第2部分の第1領域間の空間は実質的に膜物質を含まない。
【0107】
本発明に従う不均一なスペーサー布を含んでなる膜袋の第7の態様に従うと、スペーサー布は、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸を用いて離して置かれ且つ結び付けられたスペーサー布の第1及び第2部分を含んでなり、スペーサー布の第1及び第2の部分はそれぞれ第1の構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2の構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、第1構造は第2構造より大きな網目を有し、ここでスペーサー布の第1及び第2部分は少なくとも部分的に膜物質で埋め込まれ、且つここでスペーサー布の第1及び第2部分の第1領域ならびにそれらの間の空間は完全に膜物質で満たされてシームレスな境界を形成し、スペーサー布の第1及び第2部分の第2領域間の空間は実質的に膜物質を含まない。
【0108】
スペーサー布
スペーサー布は1つの布(編布、織布又は不織布型の布)から成り、その2つの部分はスペーサーモノフィラメント糸[15,103]を用いて多数の点で、例えば1つの方向でインチ(25.4mm)当たり最高で30個の点及び実質的に垂直な方向でインチ(25.4mm)当たり最高で60個の点で布の第1及び第2部分に結び付けられている。
【0109】
スペーサーモノフィラメント糸[15,103]はスペーサー布の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分とからまり、それらの部分を離して保ち且つ特定の距離でそれらを一緒に保持する。スペーサーモノフィラメント糸[15,103]は、好ましくはスペーサー布の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を介してループを形成する。スペーサー布の第1[101]及び第2[101’]部分の間の距離[102]は、それらの間のスペーサーモノフィラメント糸[103]の長さにより決定される。2つの部分[11,101]及び[12,101’]の間の間隔(spacing
distance)は、好ましくは0.5mm〜15mm、より好ましくは0.5〜10mmの範囲内である。
【0110】
スペーサー布の厚さ、すなわち第1部分の最外表面から第2部分の最外表面までの距離は、典型的には1〜15mmの範囲内である。
【0111】
モノフィラメント糸は、好ましくは50〜500μmの範囲内の直径を有し、60〜150μmの範囲内の直径が特に好ましく、80〜100μmの範囲内の直径が特別に好ま
しい。モノフィラメント糸は、好ましくは滑らかな表面を有する。
【0112】
スペーサー布の第1及び第2部分は、好ましくは20〜80%の範囲内の開放領域、すなわち布により占有されない領域を有し、40〜60%の範囲内の開放領域が特に好ましい。
【0113】
スペーサー布の第1及び第2部分は、好ましくは100μm〜800μmの範囲内の厚さを有し、150〜500μmの厚さ範囲が特に好ましい。
【0114】
スペーサー布の第1及び第2部分は、好ましくは3000μmの最大網目寸法を以って少なくとも200μmの網目寸法を有する。
【0115】
スペーサー布中で用いられるマルチフィラメント糸は、好ましくは50〜500μmの範囲内の直径を有し、60〜150μmの範囲内の直径が特に好ましく、80〜100μmの範囲内の直径が特別に好ましい。スペーサー布中で用いられるマルチフィラメント糸は、やはり好ましくは、スペーサー布の第1及び第2部分中に含浸される膜物質に侵入し得るばら糸のない表面仕上げを有する、すなわち滑らかな表面を有するフラットヤーン(flat yarn)型のものである。
【0116】
機械方向又は機械方向に垂直な方向で引っ張られる時に破断のないスペーサー布の最大伸び率は、好ましくは1〜10%であり、1〜3%の範囲内の最大伸び率が特に好ましい。製造プロセスの後にスペーサー布を予備収縮させるか及び/又は熱硬化(固定)させることにより、そのような低い弾性を得ることができる。処理時間及び温度は、スペーサー布の構成及び用いられる糸の直径に依存する(ループ及びモノフィラメント糸ならびにスペーサー布のマルチフィラメント糸の熱−固定)。
【0117】
スペーサー布の第1及び第2部分の表面の間に1バール又は1kg/cmの力を適用する時のスペーサー布の最大圧縮は、好ましくは10%である。それぞれ直径が60μmの二重の薄いモノフィラメントを用いることにより、又は直径が100〜150μmのより厚いモノフィラメント糸を用いることにより、これを実現することができる。
【0118】
そのようなスペーサー布を、Multibar Raschel丸編機(Karl Mayer Textilmaschinenfabrik,Germany)のような機械の上で製造することができる。この機械は、最高で4mの幅及び最高で100mの長さでスペーサー布を編むことができる。スペーサー布を円形に編み、次いで切断して平面状スペーサー布を得、最後にスプール上に巻き取る。スペーサー布を平編機(flat knitting machine)上で編むこともできる。
【0119】
スペーサー布の第1及び第2部分の布は、好ましくはマルチフィラメント糸で作られる。スペーサー布の第1及び第2部分で用いられる糸は、スペーサーモノフィラメント糸の型と同じ型のものであることができる。
【0120】
布糸及び/又はスペーサー糸に適した材料には、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド/ナイロン(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、モノクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、すべての金属(Fe、Cu、ステンレススチールなど)が含まれる。布糸及び/又はスペーサー糸に特に好ましい材料はポリエステルである。
【0121】
スペーサー布はSCOTKNIT 3Dの商品名の下にSCOTT & FYFEから、CULZEAN TEXTILE SOLUTIONS、SOUTHERN WEAVING COMPANY及びMUELLER TEXTIL GMBHから入手可能である。
【0122】
約1000μmより小さい網目寸法を有するスペーサー布は閉面構造(closed−face structure)布として既知であり、それよりずっと大きい網目寸法を有するスペーサー布は開面構造(open−face structure)布として既知である。均一な構造を有する、すなわちスペーサー布の第1及び第2部分の両方が均一な網目寸法を有するスペーサー編織布は3つの変形:両方とも閉面構造を有する第1及び第2部分;開面構造を有する第1及び第2部分;ならびに閉面構造を有する第1部分と開面構造を有する第2部分あるいはその逆において製造される。
【0123】
スペーサー編織布[10]を、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分がそれぞれ第1構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域及び第2構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域を含んでなり、第2構造が第1構造より大きな網目寸法を有する不均一構造で製造することもできる。第1領域[13]のそれぞれは第2領域[14]により周り全体が境界付けられ、その場合2つの部分[11]及び[12]の布は、第1構造の網目より大きな網目(又は孔、開口部)を含んでなる第2構造を有し、「島構造」を生ずる。第2領域は布全体に連続的な網目を形成することができる。結果として2つの部分[11]及び[12]は隔離された第1領域[13]を含んでなり、それは第2領域[14]により囲まれる(輪郭付けられる)。そのような布は「アイランドクロススペース布(island cloth space fabric)」として既知であり、第1及び第2部分がそれぞれ互いに対応する開及び閉面構造の繰り返し領域を有する。布はいずれの種類のものであることもでき、すなわち織布又は不織布であることができ、好ましくは編布、編組布又はかぎ針編布である。さらに、スペーサー糸[15]は、両方の部分[11]及び[12]中の第1領域[13]が互いに向き合うように、すなわちそれらが布の両面[11]及び[12]において対応する位置で配置されるように、2つの部分[11]及び[12]をあらかじめ規定される距離で一緒に保つ。2つの部分の布のそれぞれが第2領域中でそれぞれの第1領域中より大きな網目寸法を有する限り、第1部分の布及び第2部分の布は同じである必要はない。
【0124】
不均一スペーサー布の場合のスペーサー布は、第1の網目寸法を有する第1領域及び第2の網目寸法を有する第2領域の繰り返しパターンで形成されることができる。第1領域の網目寸法は、好ましくは500〜750μmの範囲内であり、第2領域の網目寸法は、好ましくは1000μm〜10,000μmの範囲内であり、1000〜2000μmの範囲が特に好ましい。第1領域、いわゆる「閉面島」は、200mm〜4000mmの辺長を有する長方形であることができる。長方形の第1領域を第2領域の帯で分割することができ、隣接する第1領域の間の間隔(すなわち第2領域の幅)は10mm〜100mmであり、それはさらに0.1〜1cmの直径を有する孔を含有することができる。第1領域は長方形以外の形、例えば円形、多角形などを有することができる。
【0125】
濾過装置
本発明の側面は、少なくとも1つの本発明に従う膜袋を含んでなる濾過装置によっても実現される。
【0126】
本発明に従う濾過装置の第1の態様に従うと、1つもしくはそれより多い膜袋が、好ましくは実質的に平らであり、互いに平行な枠内に吊り下げられるか又は乗せられる。
【0127】
均一スペーサー布に基づく少なくとも1つのシームレス膜袋の製造方法
本発明の側面はさらに、少なくとも1つのシームレス膜袋の製造方法により実現され、その方法は:(i)均一構造を有し、あらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸[103]により離れて置かれ且つ結び付けられた布の第1[101]及び第2部分[101’]を含んでなるスペーサー布を準備し;(ii)少なくとも1つの含浸装置[106]に近接して布を輸送し;(iii)スペーサー布の第1[101]及び第2部分[101’]ならびにスペーサー布の第1[101]及び第2部分[101’]へのモノフィラメント糸の結び点に、少なくとも1つの含浸装置[106]を用いて膜ドープ[107]を含浸させ、あらかじめ区画される連続領域において、布の第1及び第2部分のみでなく、それらの間の空間も含浸させられるようにし、それにより少なくとも1つのシームレス膜袋前駆体を製造し;(iv)少なくとも1つの膜袋前駆体から少なくとも1つの膜袋を形成し、少なくとも1つの膜袋のそれぞれはシームレス膜物質で完全に封入された嵩[102]を含んでなり;そして(v)場合により嵩から透過物を抽出するための管[105]を挿入する段階を含んでなる。さらに、膜の最外表面におけるより大きな開口部を、膜及びシームレス膜物質で完全に封入された嵩(一体化透過路)の間の界面に有する非対称孔を、転相プロセスの間に形成する。
【0128】
連続領域の含浸は、布の第1及び第2部分のみ、すなわち連続領域が囲む布の領域の含浸に用いられるものと異なる組成を有する膜ドープを用いて実現され得る。さらに、少なくとも1つの異なる含浸ヘッドを用いて連続領域の含浸を行なうことができ、輸送方向に平行な連続領域の部分に、輸送方向に実質的に垂直な連続領域の部分のために用いられるものと異なる膜ドープを含浸させることができる。しかしながら、膜ドープを用いる含浸は、膜ドープを含浸させられた布が少なくとも1つのシームレス膜袋に転換される前に完了しなければならない。
【0129】
本発明に従う方法の第1の態様に従うと、モノフィラメントスペーサー糸は、スペーサー布の第1及び第2部分を介してループを形成し、それは好ましくは膜ドープで埋め込まれる。スペーサー布の第1及び第2部分中のループの、膜ドープを用いる埋め込みは、含浸プロセスの間に行なわれる。
【0130】
本発明に従う方法の第2の態様に従うと、膜ドープは1つより多い湿潤層において布に与えられる。
【0131】
本発明に従う方法の第3の態様に従うと、膜ドープは異なる組成を有する1つより多い湿潤層において布に与えられ、それにより異なる組成を有する最外部分を持つ膜を与える。
【0132】
図6は、膜に平行な一体化透過路を貫く断面としての、個々の単位(units)に分離される前のシームレス膜袋の列の一部の略図を示し、ここで灰色の領域は膜物質を示し、矢印はスペーサー布の輸送方向を示す。
【0133】
図7は、4つのシームレス膜袋を側面において示す、シームレス膜袋の端の間の中間の図6の断面に垂直な断面としての、個々の単位に分離される前のシームレス膜袋の列の一部の略図を示し、ここで矢印はスペーサー布の輸送方向を示す。
【0134】
膜は、スペーサー布の第1及び第2部分に、場合により同時に、膜ドープを含浸させ、スペーサー布の第1及び第2部分中の網目が実質的に満たされ、且つスペーサー布の第1及び第2部分の間の空間もあらかじめ区画された連続領域において満たされるようにすることにより、その場で形成される。膜は続いて、転相プロセスにおいて膜ドープ中の溶媒が膜ポリマーの非溶剤によりドープから抽出され、続いて非溶剤中で膜ポリマーを凝析させるプロセスにより形成される。膜ドープ中の単数種もしくは複数種の溶媒の抽出は、蒸
気[蒸気−誘導相分離(VIPS)]及び/又は液体[液体−誘導相分離(LIPS)]との接触を用いて実現され得る。転相プロセスの間の蒸気又は液体の使用は、得ることができる孔径を決定し、VIPSを用いて≦10μmの孔径が得られ、LIPSを用いて≦50nmの孔径が得られる。VIPSは独立して、膜ドープの薄い含浸層のみのために十分である。
【0135】
適した非溶剤には水蒸気相(好ましくは0.02〜5バールの蒸気圧における、特に好ましくは0.05〜0.2バールの蒸気圧における水蒸気又は冷蒸気)、水又は水と非プロトン性溶媒、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMAC)ならびにイソプロパノールのようなアルコールとの混合物が含まれる。
【0136】
凝析媒体は通常、膜袋前駆体の外面上で膜ドープに接触し、一体化透過路中に浸透しない。次いで膜形成が外側から始まるので、外側に最小の孔を有する非対称孔径を持つ膜が得られる。
【0137】
あるいはまた、溶媒の蒸発により膜形成を行なう(乾式転相)。膜ドープは2種の溶媒を含んでなることができ、その場合、より低い沸点を有する溶媒が最初に蒸発して膜物質が形成される。より高い沸点を有する溶媒は膜物質の孔内に捕獲され、後に蒸発する。
【0138】
本発明に従う方法の第4の態様に従うと、含浸プロセスが完了した後且つ膜袋の形成の前に、含浸させられた布の第1及び第2部分の間の空間を気体又は液体で満たし、膜袋の形成の間に作られる孔の形及び寸法に影響を与える。
【0139】
本発明に従う方法の第5の態様に従うと、少なくとも1つの膜袋の形成は、少なくとも部分的に蒸気−誘導相分離を含む。
【0140】
本発明に従う方法の第6の態様に従うと、膜ドープは膜に転換され;少なくとも1つの膜袋は少なくとも2つの膜袋を含んでなる。1つのあらかじめ区画される領域を封入する連続領域の一部は、隣接するあらかじめ区画される領域を囲む連続領域の一部を形成することができるか、あるいは隣接連続領域の間に膜ドープの含浸のないギャップがあることができる。
【0141】
本発明に従う方法の第7の態様に従うと、膜ドープは膜に転換され;少なくとも1つの膜袋は少なくとも2つの膜袋を含んでなり、それらは続いて互いから分離されて少なくとも2つのシームレス膜袋となる。
【0142】
本発明に従う方法の第8の態様に従うと、少なくとも2つの膜袋前駆体は互いから分離され;それぞれの膜袋前駆体はシームレス膜袋に転換される。そのような分離は、2つの隣接する膜袋の間の連続領域の一部又は隣接する連続領域の間の膜ドープの含浸のないギャップを介する切断を含むことができる。
【0143】
本発明に従う方法の第9の態様に従うと、含浸は押出コーティング法を用いて行なわれる。
【0144】
本発明に従う方法の第10の態様に従うと、含浸はスロットコーティング法を用いて行なわれる。
【0145】
スペーサー布の第1及び第2部分の連続的含浸は、好ましくは含浸スロットを経てスペーサー布を輸送することにより実現され、スロットはスペーサー布の第1及び第2部分の
表面にほとんど触るかもしくはわずかに押し入りさえして、スペーサー布の第1及び第2部分の間の空間も膜ドープで満たされるあらかじめ区画される連続領域中を除いて、スペーサー布の第1及び第2部分の間の空間を、実質的に膜ドープを含まないままにしながら、膜ドープを用いる実質的に完全な含浸が実現されるようにする。必要な量の膜ドープは、ポンプを用いて供給系を介して供給される流量又は量を調節することにより、スロットを介して供給される。
【0146】
図9は、スペーサー布の第1及び第2部分の間の空間も膜ドープで満たされるあらかじめ区画される連続領域の外側の含浸のためのより詳細な膜ドープ含浸系を略図的に示す。「v」はスペーサー布の輸送速度であり、[101]及び[101’]はスペーサー布の第1及び第2部分であり、そして[102]はモノフィラメントスペーサー糸[103]を用いて保持されるスペーサー布の第1及び第2部分の間の空間である。[106]及び[106’]は含浸ヘッドであり、[107]は膜ドープであり、kは膜ドープの流れの方向におけるスロットの長さであり、hはスロット開口部の高さであり、dはスペーサー布の第1及び第2部分の厚さであり、そしてDはスペーサー布の厚さの半分であり、すなわちスペーサー布の第1及び第2部分の間の距離は2(D−d)である。
【0147】
膜ドープの必要量すべてが損失なしで堆積する場合、供給系(feed)により供給されるm/秒における量、Qは、布により完全に吸収され、式(1):
Q=v x d x w ..................(1)により与えられ、ここでdはmにおける湿潤層厚さであり;wはmにおける含浸(流延)幅であり;そしてvはm/秒における輸送速度である。言い換えると、それは体積/mのみに依存する。
【0148】
輸送方向に実質的に垂直な連続領域の部分における膜継ぎ目を実現するために、式(2):
=v x D x w .................(2)により与えられる最少量の膜ドープ、Qを含浸ヘッド[106]及び[106’]のそれぞれにおいて与えなければならない。必要な膜ドープを用いる一体化透過路の充填を与えるのに必要な時間、流量を増加させるか又は輸送速度を低下させることにより、この膜ドープ流の増加を実現することができる。
【0149】
輸送方向における連続領域の部分における膜継ぎ目を実現するために、スペーサー布の第1部分及び各膜継ぎ目幅に関してスペーサー布の第1部分と第2部分の間の距離の半分を満たすのに必要な膜ドープ量における増加を与えるように含浸ヘッド[106]を適応させねばならず、且つスペーサー布の第1部分及びシームレス膜袋の列のための各膜継ぎ目幅のために必要な膜継ぎ目幅に関してスペーサー布の第1部分と第2部分の間の距離の半分を満たすのに必要な膜ドープ量における増加を与えるように含浸ヘッド[106’]を適応させねばならない。より広い含浸ヘッドの両端に限られた幅を有する別の含浸ヘッドを与えることにより、これを達成することができる。あるいはまた、例えば図8に示すようにスロット開口部の幅を増加させることにより、膜継ぎ目の限られた幅のために必要な膜ドープ量の増加を与えるように、必要な間隔でヘッドを適応させた含浸ヘッドを与えることができ、図8において[101]及び[101’]はスペーサー布の第1及び第2部分であり、[102]はモノフィラメントスペーサー糸[103]を用いて保持されるスペーサー布の第1及び第2部分の間の空間であり、[107]は膜ドープであり、そして[106]及び[106’]は含浸ヘッドである。スロットのリップとスペーサー布の間の距離は、好ましくは+0.5〜−0.5mmの範囲内である。スロットのリップの長さ、L及びLは、好ましくは0.25〜25mmの範囲内である。スロット開口部の高さは、好ましくは0.2〜2mmの範囲内である。スロットの高さは、好ましくは10〜100mmの範囲内である。
【0150】
本発明に従う方法の第11の態様に従うと、布の輸送方向に平行な膜袋前駆体の端は、膜ドープの量を局部的に増加するように適応させられた含浸ヘッドを用いて作られる。
【0151】
本発明に従う方法の第12の態様に従うと、布の輸送方向に平行な膜袋前駆体の端は、膜ドープの量を増加させる別のスロットを用いて作られる。
【0152】
本発明に従う方法の第13の態様に従うと、布の輸送方向に実質的に垂直な膜袋前駆体の端は、膜ドープの流れを局部的に増加させることにより作られる。
【0153】
本発明に従う方法の第14の態様に従うと、布の輸送方向に実質的に垂直な膜袋前駆体の端は、輸送速度を局部的に低下させることにより作られる。
【0154】
本発明に従う方法の第15の態様に従うと、実質的に平行な膜の対応する端の間の膜−接合部の外側で、一体化透過路が膜ドープを実質的に含まないように、布の第1及び第2部分に膜ドープが与えられる。
【0155】
本発明に従う方法の第16の態様に従うと、布の第1及び第2部分の少なくとも50%が膜ドープを含浸させられるようにそれらに膜ドープが与えられ、少なくとも80%が膜ドープを含浸させられるのが好ましい。
【0156】
本発明に従う方法の第17の態様に従うと、膜ドープを用いる布の第1及び第2部分の含浸は、同時に行なわれる。
【0157】
本発明に従う方法の第18の態様に従うと、布の第1及び第2部分のみでなく、それらの間の空間も含浸させられるあらかじめ区画される連続領域の含浸は、同じ含浸系を用いて行なわれる。
【0158】
本発明に従う方法の第19の態様に従うと、方法は、手動の介在を必要としない方法であり、すなわち完全に自動化された連続法である。
【0159】
本発明に従う方法の第20の態様に従うと、輸送速度/方法のプロセス速度(process speed of the process)は少なくとも0.5m/分であり、0.5〜5m/分の範囲内の輸送速度が好ましい。
【0160】
不均一スペーサー布に基づく少なくとも1つのシームレス膜袋の製造方式(method)
本発明の側面は膜袋の製造方法により実現され、その方法は:布の第1(11]及び第2(12]部分を含んでなるスペーサー布(10]を準備し、ここで第1及び第2部分はあらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸(15]により離れて置かれ且つ結び付けられ且つここでスペーサー布は第1部分の布及び第2部分の布が第1構造を有する1つもしくはそれより多い第1領域(13]ならびに第1部分の布及び第2部分の布が、第1構造より大きい網目を持つ第2構造を有する1つもしくはそれより多い第2領域(14]を含んでなり、且つここで1つもしくはそれより多い第1領域のそれぞれは1つもしくはそれより多い第2領域により回り全体の範囲を定められ;第1[11]及び第2[12]部分に膜ドープ[33]を含浸させ、ここで1つのもしくはそれより多い第1領域において、ドープは少なくとも部分的に第1部分及び第2部分を埋め込んで第1部分[11]及び第2[12]部分の間に膜ドープを含まない空間[23]を残し、且つここで1つもしくはそれより多い第2領域において、ドープはスペーサー布を満たし;そして膜を形成する段階[35,36]を含んでなる。
【0161】
膜ドープを用いるスペーサー布[10]の第1[11]及び第2[12]部分の含浸の段階に、スペーサー布の両部分[11]及び[12]は外側からコーティングされる。第1の態様に従うと、コーティング段階は図12に例示されるような二面垂直コーティング機(two−sided vertical coating machine)で行なわれる。図12のコーティング機は、スペーサー布[10]の両面の同時コーティングを可能にする。従って、スペーサー布[10]はスプール[31]から巻き出され、膜ドープ[33]で満たされた二面コーティング装置[32]に供給される。
【0162】
スペーサー布の両部分[11]及び[12]のコーティングは、第1領域[13]において、膜ドープが布の外側に与えられ、少なくとも部分的にスペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分を埋め込むようなものでなければならない。膜ドープの浸透の程度は、スペーサー布の第1及び第2部分の第1及び第2領域の網目寸法、スペーサー布に膜ドープが適用される速度、例えばダブルドクターブレード系又はダブルローラーバー系により膜ドープがスペーサー布に適用されるせん断応力、適用されているドープとスペーサー布が接触している時間ならびに膜ドープの粘度に依存する。従ってスペーサー布の閉面構造領域において、膜ドープの浸透の程度は開面構造領域中よりずっと遅いであろう。従って、第1領域[13]において、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の閉面構造網目は膜ドープにより満たされるか又は塞がれ、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の間の空間中への膜ドープの浸透は部分的のみであり得る。膜ドープは空間を閉塞(close off)させてはならない。従って第1領域13において、膜ドープはスペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の布に含浸される。第1領域において、膜ドープは、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の布の多数の部分を埋め込む。それにより膜ドープは、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の布を介して走るスペーサー糸の一部も埋め込む。(例えばスペーサー糸15のループ]。スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の布を少なくとも部分的に埋め込むことにより、スペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の第1領域における布への膜ドープの強い結合を得ることができる。
【0163】
第2領域14において布は、第1領域におけるより大きな網目(又は開口部、孔)を含んでなり、それは膜ドープがスペーサー布中に入り、第2領域においてスペーサー布を完全に充填することを可能にする。第2領域におけるスペーサー布の充填は、好ましくは両面から行なわれる(すなわちスペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の両方の最外面から)。第2領域における布の網目寸法に基づき、膜ドープの粘度は所望の接触時間で完全な充填を達成するように適応させられねばならない。
【0164】
含浸段階の結果として含浸スペーサー布[34]が得られ、そこではスペーサー布の第1[11]及び第2[12]部分の両方が膜ドープを含浸させられて、それぞれ層[21]及び[22]を形成し、且つ第2領域において、膜ドープは完全にスペーサー布を埋め込む。従って図11に例示される通り、第1領域がコーティングされた層[21]及び[22]の間に挟まれるエアポケット[23]を含んでなるコーティングされたスペーサー布が得られる。エアポケット[23]は、第1領域の境界に沿って第2領域を満たす膜ドープにより、外部周囲から完全に隔離される。
【0165】
続く段階は膜形成を含んでなる。膜物質は膜ドープから形成される。コーティングされたスペーサー布を凝析媒体の蒸気[35]と、及び/又は通常は液体状態で与えられる凝析媒体[36]自身と接触させることにより、膜ドープを凝析させることができる(湿式転相)。蒸気相接触は表面孔形成を与えるが、液相接触はバルク孔(bulk pore)形成を与える。凝析媒体はスペーサー布の外面において膜ドープと接触するが、エアポケット[23]内に浸透しない。従って第1領域において、非対称な孔径分布を有し、外側に最小の孔を有する膜が得られる。膜形成は外側から始まる。膜形成は内側から開始されない。別の態様に従うと、膜形成は溶媒の蒸発により行なわれる(乾式転相)。膜ドープは2種類の溶媒を含んでなることができる。その場合、より低い沸点を有する溶媒が最初に蒸発して膜物質が形成される。より高い沸点を有する溶媒は膜物質の孔内に捕獲され、後に蒸発する。
【0166】
本発明に従う方式の第1の態様に従うと、布を準備する段階は、第1領域及び第2領域の間のスペーサー布中に管を挿入することを含んでなる。
【0167】
本発明に従う方式の第2の態様に従うと、第2領域は1〜10mmの範囲内の寸法を有する網目を含んでなる。
【0168】
本発明に従う方式の第3の態様に従うと、方式はさらに、例えばナイフにより、第2領域中で且つそれに沿ってスペーサー布を切断する段階[37]を含んでなる。結果として単独の(single)第1領域又は第1領域のグループが得られ、それらを集めて膜袋を形成する。
【0169】
本発明に従う方式の第4の態様に従うと、方式はさらに、スペーサー布の製造の間に、スペーサー布中に封入された嵩[23]から透過物を抽出するための管の挿入を含む。含浸段階は、一体化された透過物収集管を有する膜袋を得ることを可能にする。
【0170】
膜ドープ
本発明に従う方法の第21の態様及び本発明に従う方式の第5の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマーを含んでなる液体ポリマー溶液である。
【0171】
本発明に従う方法の第22の態様及び本発明に従う方式の第6の態様に従うと、膜ドープは10s−1のせん断において1000〜100,000の粘度を有し、10,000〜50,000s−1の範囲内の粘度が好ましい。
【0172】
本発明に従う方法の第23の態様及び本発明に従う方式の第7の態様に従うと、膜ドープは少なくとも1種の膜ポリマー及びそれのための少なくとも1種の有機溶媒を含んでなる。
【0173】
本発明に従う方法の第24の態様及び本発明に従う方式の第8の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマー、それのための有機溶媒及び親水性充填剤材料を含んでなる。
【0174】
本発明に従う方法の第25の態様及び本発明に従う方式の第9の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマー、親水性充填剤材料及び非プロトン性溶媒を含んでなる。
【0175】
本発明に従う方法の第26の態様及び本発明に従う方式の第10の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマー、親水性充填剤材料、非プロトン性溶媒及びグリセロールのような安定化を含んでなる。
【0176】
グリセロールのような親水性化剤及び安定剤を、転相プロセスが完了した後だが乾燥の前に導入することもできる。
【0177】
親水性充填剤は、膜の親水性及びその汚れ挙動(fouling behaviour)に影響を及ぼす。多くの場合、溶媒混合物における変動は、異なるフィルム形態及び従って膜性能を生ずる。
【0178】
本発明に従う方法の第27の態様及び本発明に従う方式の第11の態様に従うと、膜ドープは、ポリスルホン(PSU)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド(PA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVPP(架橋PVP)、セルロース系誘導体[酢酸セルロース(CA)、三酢酸セルロース(CTA)など]、ポリカーボネートブロックポリマー及びそれらの混合物/ブレンドより成る群から選ばれる膜ポリマーを含んでなる。
【0179】
本発明に従う方法の第28の態様及び本発明に従う方式の第12の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマーとしてゴムを含んでなる。
【0180】
本発明に従う方法の第29の態様及び本発明に従う方式の第13の態様に従うと、膜ドープは膜ポリマーとしてゴムを含んでなり、ゴムはシリコーンゴム、ポリメチルペンテン、クロロプレン、SBR、NBR、ウレタン、Hypalon(R)、ネオプレン、ニトリル、ブナ(Buna)、ウレタン、エピクロロヒドリン、Viton(R)、EPDM、ブチル(Butyl)、天然ゴム(ラテックス)、アクリルゴム、フルオロエラストマー及びペルフルオロエラストマーより成る群から選ばれる。
【0181】
さらに別の適した膜ポリマーには塩素化ポリ(塩化ビニル)(CPVC)、アクリロニトリルと例えば塩化ビニル又はエチルアクリレートとのコポリマー、ポリ(エチレンスクシネート(PESU)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)及びセルロース系誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ならびにセルローストリカルバニレート(CTC)、それらの混合物/ブレンドならびにそれらのグラフト化誘導体(スルホン化、アクリル化、アミノ化など)が含まれる。
【0182】
適した親水性充填剤材料にはポリマー、無機材料及びそれらの組み合わせが含まれる。適した親水性ポリマーにはポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、メチルセルロース及びポリエチレンオキシドが含まれる。
【0183】
適した親水性無機材料にはTiO、HfO、Al、ZrO、Zr(PO、Y、SiO、ペロブスカイト酸化物材料及びSiCが含まれる。
【0184】
適した非プロトン性溶媒にはN−メチル−ピロリドン(NMP)、N−エチル−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、トリエチルホスフェート及びそれらの混合物が含まれる。水中におけるポリスルホン−NMP溶液の浸漬により形成されるフィルムは多孔質である。しかしながら、水中におけるポリスルホン−NMP−THF溶液の浸漬では異なる膜構造を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
工業的用途
本発明に従うシームレス膜袋を枠なし膜カートリッジとして用いることができる。そうでなかったら、膜袋の境界に沿って、それに枠を備えることもできる。本発明に従うシームレス膜袋を精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透法、膜蒸留、浸透気化法、ガス分離、生物学的に活性な種(例えば酵素及びバイオフィルムリアクター)の固定のための濾過
要素として;膜接触器(membrane contactors)、例えば担持液体膜(supported liquid membranes)、パートラクション(pertraction)、水脱ガス、エアレーション(aeration)、加湿(蒸気浸透)、制御放出において;ならびに空調:ガス/空気清浄化などにおいて用いることができ、それは、それらが有効にバックウォッシングされ得(backwashed)、高圧に耐えることができ、それにより頻繁なクリーニングの必要なく長期間の運転を可能にするからである。それらを膜型バイオリアクター(透過物取出しのため)及び他の膜用途において用いることもできる。
【実施例】
【0186】
下記で本発明を比較実施例及び本発明の実施例により例示し、それらに本発明を制限することはない。これらの実施例中に与えられるパーセンテージ及び比率は、他にことわらなければ重量による。
【0187】
本発明の実施例中で用いられるスペーサー布は、モノフィラメント糸で第1及び第2部分に結ばれて保持され、3mmのそれらの間の距離を有して実質的に互いに対して平行な100μm厚さの編まれた第1及び第2部分を有するMUELLER TEXTIL GMBH,WIEHL,GERMANYからの5754−0320型ポリエステル編織布であり、モノフィラメント糸はスペーサー布の第1及び第2部分中でループを形成する。
【0188】
成分:
A−100P NT=A−100P NT、SOLVAYからのポリエーテルスルホン(PES)。
K−90 =Luviscol(R) K−90、BASFからのポリ(ビニルピロリドン)(PVP)。
1015/1001=1015/1001型、SOLVAYからのポリフッ化ビニリデン(PVDF)。
ACE H827 =KANE ACE H827、KANEGAFUCHI K.K.からの塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)。
MeCell =ACROS ORGANICSからのメチルセルロース。
【0189】
本発明の実施例1
膜ドープの組成:
【0190】
【表1】

【0191】
図10に略図的に示される装置を用い、含浸系[110]を介してスペーサー布の第1
及び第2部分に膜ドープを適用した。含浸速度、すなわちスペーサー布の輸送速度は1m/分であり、各含浸ヘッドは、80℃の温度において400mL/m.分の膜ドープを、スペーサー布の第1及び第2部分のそれぞれに与え、輸送方向に平行なシームレス膜袋の端のために、より大きなスロット開口部によって1200mL/m.分が与えられ、輸送方向に実質的に垂直なシームレス膜袋の端は、輸送速度を低下させることにより実現された。
【0192】
図9は、一体化透過路も膜ドープで満たされるあらかじめ区画される連続領域の外側の含浸のための含浸系をより詳細に示す。
【0193】
図10に戻って言及すると、0.07バールの水蒸気圧における冷蒸気区域[111]を用い、冷蒸気区域を横切る5秒の間に膜ドープにおける転相を実現し、続いて凝析させて布の第1及び第2部分において安定な膜を形成し、続いて60℃における浸漬浴[112]中で洗浄及び濯ぎを行なって溶媒、それぞれN−エチル−ピロリドン、グリセロール、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−ピロリドンを除去した。
【0194】
水蒸気中で転相を行なうこと及び水蒸気の温度は、膜中の孔径を決定し、それは0.3〜0.5μmの範囲内であった。
【0195】
膜の透過性を向上させるために、60℃においてハイドロクロラス アシッド(hydrochlorous acid)の2000ppm水溶液を用いる24時間の膜の処理が必要であった。
【0196】
最後に、まだ個々の単位に分離されていない得られるシームレス膜袋をスプール[114]上に巻き取った。最後の段階に、含浸されられたスペーサー布から個々の膜袋を切断し、一体化透過路が同じ組成を有する多孔質膜物質により封入されているおかげでシームレスである0.5m x 1.0mの膜袋を与えた。
【0197】
Agfa −Gevaert N.V.において、銀−含有廃水の処理に関し、膜型バイオリアクター中でシームレス膜袋を評価した。汚泥は粘着性の塊を形成しないことが見出され、少なくとも15バールの圧力までバック−フラッシングが可能であった。化学的酸素要求量(COD)濃度における90%より大きい低下が実現され、窒素濃度における80%より大きい低下が実現された。
【0198】
本発明の実施例2
不均一スペーサー布(アイランドクロススペーサー布)のための膜ドープの組成:
【0199】
【表2】

【0200】
図1に略図的に示される「アイランドクロススペーサー布」の両部分の第1及び第2領域に膜ドープ4を適用するために用いられる、「静水ヘッド含浸方式(hydrostatic head impregnation method)」を用いる垂直コーティング装置を図12に略図的に示す。含浸法では、スペーサー布をスプール31からローラ
ーを超えて、膜ドープを含有する含浸ヘッド中に供給し、含浸ヘッドでは、例えばダブルドクターブレード系又はダブルローラーバー系を用いて膜ドープがスペーサー布に適用された。含浸ヘッドは、編織布と同じ幅を有するスリットを含有し、ドープが含浸ヘッドに供給された。ヘッド中のドープの高さは自動的に制御された。
【0201】
編織布に入るドープの容積流は、ヘッド中のドープの柱により加えられる静水圧、不織不の輸送の速度及びスペーサー布の領域の孔径に依存する。スペーサー布の輸送速度は1m/分であり、静水ヘッドは高さが10cmであった。膜ドープの温度は30℃であった。含浸ヘッドを介する通過の間に、膜ドープは「アイランドクロススペーサー布」の第1及び第2部分のそれぞれに適用され、それによりスペーサー布の「島」領域及び「外洋(ocean)」輪郭領域(端)を含浸させた。「用いられたアイランドクロススペーサー布」は、22.5cmの輸送方向に垂直な合計の幅を有した。それぞれの「閉面構造の島」(基本的な要素)の寸法は27.5 x 18.5cmであり、「外洋開面構造輪郭」領域は、図1に略図的に示す通り、島領域から離れる(away from)すべての方向において2cmであった。不織布の合計の厚さは4mmであり、2つの面の間の距離は3mmであった。輪郭領域中の開口部の寸法は2mmであった。
【0202】
含浸段階の後、スペーサー布に4秒の接触時間で水蒸気相区域(0.035バールの蒸気圧)を通過させ、それにより転相プロセスを起こさせ、0.3〜5μmの孔径を有する孔を実現させ、その後、含浸スペーサー布に温水凝析浴(50℃)を通過させて溶媒、N−メチル−ピロリドン及びグリセロールを除去した。
【0203】
続いて、まだ個々の袋に分離されていない得られる膜袋を、巻き取りスプール上に巻き取った。まだ分離されていない膜袋を有するスプールを、続いてpH10における2000ppmのNaOCl溶液中に40℃で2時間浸漬し、次いで脱イオン水で洗浄し、乾燥した。最後に各膜袋(295mm x 205mm)を含浸スペーサー布から切断し、一体化透過路が同じ組成を有する多孔質膜物質により封入されているおかげでシームレスであるシームレス膜袋を与えた。
【0204】
本発明を詳細に記述してきたが、ここで、添付の請求項中に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、その中で多数の修正を行い得ることが当該技術分野における熟練者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過物収集のための、シームレス膜物質中に完全に封入されたある嵩(a volume)を含んでなる膜袋。
【請求項2】
該嵩が一体化透過路である請求項1に従う膜袋。
【請求項3】
該膜袋がさらに該嵩から透過物を抽出するための管[51,105]を含んでなる請求項1又は2に従う膜袋。
【請求項4】
該膜袋がさらに該膜物質のための多孔質支持体を含んでなる請求項1〜3のいずれか1つに従う膜袋。
【請求項5】
該多孔質支持体がスペーサー布である請求項4に従う膜袋。
【請求項6】
該スペーサー布があらかじめ規定される距離でモノフィラメント糸により離れて置かれ且つ結び付けられた該スペーサー布[10]の第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を含んでなり、該スペーサー布の該第1及び第2部分は少なくとも部分的に該膜物質で埋め込まれ、該嵩は該第1及び第2部分の間に挟まれ、該膜物質は膜袋の境界に沿ってスペーサー布を満たし、該膜袋の境界は、該膜物質に埋め込まれた該スペーサー布の第1及び第2部分の間の空間を満たす膜物質から成る請求項5に従う膜袋。
【請求項7】
該膜物質で埋め込まれた該スペーサー布の該第1及び第2部分が互いに対して実質的に平行である請求項6に従う膜袋。
【請求項8】
該膜物質で少なくとも部分的に埋め込まれた該スペーサー布の該第1及び第2部分が実質的に平面状である請求項6又は7に従う膜袋。
【請求項9】
該スペーサー布が均一なスペーサー布である請求項5〜8のいずれか1項に従う膜袋。
【請求項10】
該スペーサー布が不均一なスペーサー布である請求項5〜8のいずれか1項に従う膜袋。
【請求項11】
該スペーサー布のいずれも、該嵩と不連続な該膜袋の最外表面上に暴露されていない請求項5〜10のいずれか1項に従う膜袋。
【請求項12】
該モノフィラメント糸が該スペーサー布の該第1[11,101]及び第2[12,101’]部分を介してループを形成し、該ループは該膜物質で埋め込まれる請求項6〜11のいずれか1項に従う膜袋。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1に従うシームレス膜袋を含んでなる濾過装置。
【請求項14】
膜型バイオリアクターにおける少なくとも1つの請求項1に従うシームレス膜袋の使用。
【請求項15】
水濾過又は廃水精製における少なくとも1つの請求項1に従うシームレス膜袋の使用。
【請求項16】
流体、蒸気及び粒子の混合物の濾過又は分離のための少なくとも1つの請求項1に従うシームレス膜袋の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−527290(P2010−527290A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508786(P2010−508786)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055588
【国際公開番号】WO2008/141935
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(593194476)アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (50)
【出願人】(509319258)
【Fターム(参考)】