説明

シールドトンネルの分岐合流部施工方法

【課題】 分岐合流シールド掘進機で本線トンネルを直接切削しつつ本線トンネルに分岐合流トンネルを接合させて、効率良く分岐合流部を形成できるシールドトンネルの分岐合流部施工方法を提供する。
【解決手段】 長軸13aの長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備えるランブシールド掘進機13を使用し、長軸13aの長さを最短にして分岐合流部10に接近させる工程と、長軸13aの長さを伸ばした状態として本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15を切削して中壁設置区間10aを形成する工程と、長軸13aの長さを本線シールドトンネル11側に収縮しつつトンネル外郭体15を切削して車線確保区間10bを形成する工程と、長軸13aの長さを最短にしてトンネル外郭体15をさらに切削しながら車線擦り付け区間10cを形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本線シールドトンネルに分岐合流シールドトンネルを接合してトンネルの分岐合流部を形成するシールドトンネルの分岐合流部施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に先行形成された本線トンネルにランプトンネル等の分岐合流トンネルを接続する工法として、分岐合流部分の地盤を開削して立坑を設け、この立坑の内部において本線トンネルと分岐合流トンネルとを接合する工法が考えられる。また、このような開削工法は、特に都市部においては、地上での施工スペースや用地の確保等に問題がある上、周囲への環境問題も生じやすくなることから、地中において分岐合流トンネルと本線トンネルとを接合する工法として、例えば本線トンネルと分岐合流トンネルとを間隔をおいて別々に施工し、この間隔部分の上下を覆って山留部材を圧入したり、地盤改良を行ってから、当該間隔部分を掘削して両者を繋ぐ工法(例えば、特許文献1参照)や、本線トンネルの分岐部または合流部に大断面のトンネルを形成し、この大断面のトンネル内部から分岐(合流)方向に小断面のシールドトンネルを分岐合流トンネルとして掘進していく工法(例えば、特許文献2参照)等、種々の工法が提案されている。
【0003】
また、これらの分岐合流トンネルと本線トンネルとを地中で接合する従来の工法では、地中の深部において大掛かりな地盤改良や山留支保工を施す必要があるため、施工コストが増大し、工期も長くなる。これに対して、施工コストの低減や、工期の短縮を図ることを目的として、シールド掘進機によって地中に先行形成された本線トンネルの接合側面部分を分岐合流トンネル用のシールド掘進機によって切削可能に構成し、この切削可能な部分を直接切削させつつ分岐合流トンネル用のシールド掘進機を掘進させ、本線トンネルに到達させることにより、本線トンネルと分岐合流トンネルとを地中で連通させる工法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2839440号公報
【特許文献2】特開2001−355385号公報
【特許文献3】特開2004−211361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本線トンネルの接合側面部分を分岐合流トンネル用のシールド掘進機によって直接切削させて本線シールドトンネルに分岐合流シールドトンネルを接合する場合、本線トンネルは、接合側面部分が切削されて断面欠損を生じることになり、本体覆工が施されるまでの間、分岐合流部分の構造が周囲の地盤からの土圧や水圧に対して不安定な状態となりやすい。したがって、円形断面を備える分岐合流トンネル用のシールド掘進機の全体を、円形断面を備える本線トンネルの接合側面部分に貫通させて本線トンネルの内部に到達させる方法は、本線トンネルの断面欠損が大きくなりすぎて施工が困難である。また、本線トンネルの径を大きくして断面が欠損する部分の割合を小さくすることも考えられるが、本線トンネルが不必要に大きくなりすぎて不経済であるため現実的ではない。
【0005】
このようなことから、特許文献3に記載のシールドトンネルの分岐合流部施工方法では、本線トンネルを形成するための本線シールド掘進機として、図8(a)〜(c)に示すように、円形の本体部分50から幅方向外側に張り出す拡幅部51を、必要に応じて片側又は両側に形成することが可能なシールド掘進機を使用し、図9に示すように、通常の円形断面の掘進工区52aから、分岐合流トンネル53との接合部分とは反対側に拡幅部51を突出させて形成する工区52bに移り、突出させた拡幅部51の側縁が後方の円形断面の本線トンネル54の側縁の延長線上に来るように、本体部分50の中心線50cを側方に移動させる工区52cを経て、分岐合流トンネル53との接合部分の側にも拡幅部51を突出させて形成する工区52dに移り、しかる後に、この接合部分の側の小径の拡幅部51において、ランブシールド掘進機55を本線トンネル54に到達させて分岐合流トンネル53を接合する方法が採用されている。
【0006】
また、特許文献3に記載のシールドトンネルの分岐合流部施工方法では、例えば分岐合流トンネル53内の道路車線を、本線トンネル内の道路車線に擦り付けるのに必要な距離を確保する工区52dにおいて、両側に拡幅部51を突出させた状態の本線シールド掘進機で本線トンネル54を形成したら、本体部分50の中心線を元の円形断面の中心線の位置に復帰させるように本線シールド掘進機を側方に移動させる工区52eを経て、両側の拡幅部51を後退させた後に、本線シールド掘進機による通常の円形断面の掘進工区52gに復帰することになる。
【0007】
しかしながら、このようなシールドトンネルの分岐合流部施工方法では、本線シールド掘進機の拡幅部51を外側に進退させたり、本線シールド掘進機を側方に移動させながら掘進作業を行う必要があるため、施工工程が煩雑になって管理が難しくなると共に、施工精度も低下しやすい。また、例えば道路車線等を確保するための空間以外の、余分な断面部分の掘進作業や覆工作業も多くなって、効率の良い施工を行うことが困難である。
【0008】
本発明は、簡易な施工工程に従って、分岐合流トンネル用のシールド掘進機で本線トンネルの接合側面部分を直接切削しつつ、本線トンネルに分岐合流トンネルを接合させて分岐合流部を形成することができると共に、余分な断面部分の掘進作業や覆工作業を抑制して、効率の良い施工を行うことのできるシールドトンネルの分岐合流部施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本線シールドトンネルに分岐合流シールドトンネルを接合してトンネルの分岐合流部を形成するシールドトンネルの分岐合流部施工方法であって、前記分岐合流シールドトンネルを形成する分岐合流シールド掘進機として、長軸の長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備えるシールド掘進機を使用し、前記長軸の長さを最短にした状態で前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて前記分岐合流部に接近させる工程と、前記長軸の長さを伸ばした状態とし、シールド掘進機により切削可能な切削セグメントを用いて接合側面部分を形成した前記分岐合流部における前記本線シールドトンネルのトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の中壁設置区間を形成する工程と、前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態を保持したまま、前記長軸の長さを前記本線シールドトンネル側に収縮しつつ、前記接合側面部分のトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の車線確保区間を形成する工程と、前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態を保持したまま、前記長軸の長さを最短にして、前記接合側面部分のトンネル外郭体をさらに切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の車線擦り付け区間を形成する工程とを含むシールドトンネルの分岐合流部施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明のシールドトンネルの分岐合流部施工方法によれば、前記分岐合流部の中壁設置区間を形成する工程では、前記長軸の長さを最短にした分岐合流シールド掘進機を前記分岐合流部に近接又は接触させた後に、前記長軸の長さを前記本線シールドトンネル側に伸張して伸ばした状態としつつ、前記接合側面部分のトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させることもできる。
【0011】
さらに、本発明のシールドトンネルの分岐合流部施工方法によれば、前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態は、前記分岐合流シールドトンネルの略長円断面形状の上下の直線部分から本線シールドトンネル側の曲線部分へのコーナー部分が、各々円形断面の本線シールドトンネルの円周部分に位置するような位置関係で重なった状態となっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシールドトンネルの分岐合流部施工方法によれば、簡易な施工工程に従って、分岐合流トンネル用のシールド掘進機で本線トンネルの接合側面部分を直接切削しつつ、本線トンネルに分岐合流トンネルを接合させて分岐合流部を形成することができると共に、余分な断面部分の掘進作業や覆工作業を抑制して、効率の良い施工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法は、例えば高速道路のジャンクション部において、図1に示すように、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との分岐合流部10を地中に形成するべく、シールド工法による本線トンネル11に、シールド工法による分岐合流トンネル12を地中で直接接合する際に採用されたものである。本実施形態によれば、本線シールドトンネル11の標準断面は、例えば車線幅員が3.25mmの3車線の道路を設けることのできる大きさの円形断面となっており(図2参照)、分岐合流シールドトンネル12の標準断面は、例えば車線幅員が3.5mmの2車線の道路を設けることのできる大きさの略長円形断面となっている(図2参照)。
【0014】
また、本実施形態の分岐合流部施工方法は、本線シールドトンネル11に対して、分岐合流シールド掘進機13を、分岐合流シールドトンネル12内の道路線形に応じた緩い角度で斜めに擦り付けるように接近させ、当該分岐合流シールド掘進機13のカッター板13aによって、本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15を構成する、接合側面部分11aに配置されたシールド掘進機によって切削可能な切削セグメント15a(図2参照)を切削させつつ、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに食い込ませる工法を採用して(図2参照)、本線シールドトンネル11を分岐合流シールドトンネル12に連通させるものである。
【0015】
ここで、本実施形態によれば、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との分岐合流部10は、本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15が分岐合流シールド掘進機13によって切削されて、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aと分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aとが交差又は重複して配置される部分である。また、本実施形態によれば、分岐合流シールド掘進機13は、分岐合流シールドトンネル12内の道路線形を本線シールドトンネル11内の道路線形に合流させるのに必要な距離を確保できるように、予め設定された所定の延長で分岐合流部10の掘進作業を行った後に、例えばその掘進作業の終端位置に埋殺しされたり、或いはスキンプレートを残して内部の機械や設備が撤去されて、分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16の一部として利用されることになる。
【0016】
そして、本実施形態のシールドトンネルの分岐合流部施工方法は、本線シールドトンネル11に分岐合流シールドトンネル12を接合してトンネルの分岐合流部10を形成するための施工方法であって、分岐合流シールドトンネル12を形成する分岐合流シールド掘進機13として、長軸13aの長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備えるシールド掘進機を用いて施工され、図2〜図6に示すように、以下の工程a)〜d)を含んでいる。
【0017】
a) 長軸13aの長さを最短にした状態で分岐合流シールド掘進機13を掘進させて分岐合流部10に接近させる工程(図2参照)。
b) 長軸13aの長さを伸ばした状態とし、シールド掘進機により切削可能な切削セグメント15aを用いて接合側面部分11aを形成した分岐合流部10における本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15を切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10の中壁設置区間10aを形成する工程(図3,図4参照)。
c) 中壁設置区間10aの始終点14(図1参照)での断面における本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との重なり状態(図4参照)を保持したまま、長軸13aの長さを本線シールドトンネル11側に収縮しつつ、接合側面部分11aのトンネル外郭体15aを切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10の車線確保区間10bを形成する工程(図4,図5参照)。
d) 中壁設置区間10aの始終点14での断面における本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネルとの重なり状態(図4参照)を保持したまま、長軸13aの長さを最短にして、接合側面部分11aのトンネル外郭体15aをさらに切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10の車線擦り付け区間10cを形成する工程(図6参照)。
【0018】
また、本実施形態では、中壁設置区間10aの始終点14での断面における本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との重なり状態は、図4に示すように、分岐合流シールドトンネル12の略長円断面形状の上下の直線部分17から本線シールドトンネル11側の曲線部分18へのコーナー部分19が、各々円形断面の本線シールドトンネル11の円周部分に位置するような位置関係で重なった状態となっている。
【0019】
本実施形態によれば、長軸13aの長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備える分岐合流シールド掘進機13として、例えば特開2001−317292号公報に記載のシールド掘進機を使用することができる。特開2001−317292号公報に記載のシールド掘進機は、例えば、シールド本体の前部に、公転支持体をシールド軸心周りに回転自在に配設し、この公転支持体に、シールド軸心と平行で楕円シールド軸心から所定距離偏心したカッタ自転軸を回転自在に配設し、このカッタ自転軸の前部に設けられたカッタヘッドを、正面視で頂部がルーロの三角形の頂点位置に膨出する形状とし、トンネルの通常部と拡張部とを連続掘削可能としたものである。また、通常部の掘削時に、公転支持体を所定位置で固定し、カッタ自転軸を回転駆動して例えば円形に近い断面のトンネルを掘削するように構成し、拡張部の掘削時に、公転支持体とカッタ自転軸とを同一方向で回転速度比が3対1となるように回転駆動することにより、楕円形断面或いは略長円形断面のシールドトンネルを掘削するように構成したものである。
【0020】
なお、本実施形態では、例えば車線幅員が3.5mmの2車線の道路を設けるための分岐合流シールドトンネル12を形成できる大きさの略長円形断面として、分岐合流シールド掘進機13は、その短軸13bの長さが例えば10200mm程度、最短にした状態の長軸13aの長さが例えば12000mm程度の大きさの略長円形断面を備えている。また分岐合流シールド掘進機13は、その長軸13aを最短にした状態から例えば14700mm程度の長さまで、2700mm程度のスライド幅sで長軸13aを伸張させることができるようになっている。さらに、本線シールドトンネル11は、例えば車線幅員が3.25mmの3車線の道路を設けることのできる大きさの円形断面として、外径が例えば15300mm程度の大きさの円形断面を備えている。
【0021】
本実施形態のシールドトンネルの分岐合流部施工方法によれば、上記a)の分岐合流シールド掘進機13を分岐合流部10に接近させる工程では、図2に示すように、分岐合流部10の後方において、長軸13aの長さを最短にした状態で分岐合流シールド掘進機13を掘進させつつ、本線シールドトンネル11に対して緩い角度で斜めに擦り付けるようにしながら分岐合流シールド掘進機13を接近させる。分岐合流部10に接近してきたら、分岐合流部10の手前に例えば50m程度の長さの拡幅区間20a(図1参照)を設けて、長軸13aの長さを徐々に伸張させつつ分岐合流シールド掘進機13を掘進させ、分岐合流部10の直前で、長軸13aの長さが最も伸びた状態となるようにする(図3参照)。
【0022】
上記b)の分岐合流部10の中壁設置区間10aを形成する工程では、図3に示す長軸13aの長さが最も伸びた状態となった分岐合流シールド掘進機13を、本線シールドトンネル11に対してさらに斜めに擦り付けるように前進させることにより、切削セグメント15aによって形成された本線シールドトンネル11の接合側面部分11aのトンネル外郭体15を切削しながら、図4に示すように、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに食い込ませて、例えば50m程度の長さの、分岐合流シールド掘進機13の最大拡幅区間20bでもある中壁設置区間10aを形成する(図1参照)。
【0023】
また、本実施形態では、中壁設置区間10aの終端部分である始終点14では、上述のように、略長円断面形状の分岐合流シールドトンネル12の直線部分17から曲線部分18へのコーナー部分19が、本線シールドトンネル11の円周部分に位置するような位置関係となっている。このような位置関係を保持することにより、始終点14より先は、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との間に中間壁21を設けなくても、安定した構造のトンネル覆工体をトンネル11,12の内部に一体として設けることが可能になる。したがって、中壁設置区間10aの始終点14よりも先の、分岐合流部10の車線確保区間10bや車線擦り付け区間10cでは、中間壁21を設けることなく、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との重なり部分でこれらの接合側面部分11aや接合側部12aを撤去して、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12とが一体として連続する大きな断面のトンネル空間が形成されることになる(図5参照)。
【0024】
なお、本実施形態では、分岐合流シールド掘進機13によって、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aを切削する作業に先立って、例えば切削セグメント15aを取外し容易なPC鋼線を用いて周方向に緊結する工法、本線シールドトンネル11の内部に仮設中柱を立設配置する工法、仮設中柱よりも切削セグメント15a側に分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な貧配合固化材を充填固化する工法、分岐合流部10の周囲の地盤に地盤改良を施す工法等が適宜採用され、工事の効率化、本線シールドトンネル11や分岐合流シールドトンネル12の安定化、周囲の地盤の安定化等が図られることになる。
【0025】
また、例えば本線シールドトンネル11の接合側面部分11aが切削されると共に、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aが撤去されてから、トンネルの本体覆工が施されるまでの間、本線シールドトンネル11の内壁面と、分岐合流シールドトンネル12の内壁面との間に横方向仮設支持梁を設置する工法、分岐合流シールドトンネル12の内部に仮設中柱を立設配置する工法等が適宜採用され、本線シールドトンネル11や分岐合流シールドトンネル12の安定化、周囲の地盤の安定化等が図られることになる。
【0026】
上記c)の分岐合流部10の車線確保区間10bを形成する工程では、中壁設置区間10aの始終点14での断面における本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との安定した重なり状態を保持したまま、図4に示す分岐合流シールド掘進機13の長軸13aの長さが最も伸びた状態から、図5に示すように、長軸13aの長さを本線シールドトンネル11側に収縮しつつ分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、例えば80m程度の長さの、分岐合流シールド掘進機13の縮幅区間20cでもある車線確保区間10bを形成する(図1参照)。
【0027】
すなわち、車線確保区間10bは、分岐合流シールドトンネル12内の2車線の幅員を保持したまま、分岐合流シールドトンネル12内の道路を本線シールドトンネル11内の道路に斜めに近づけてゆく部分であり、分岐合流シールドトンネル12内の道路が本線シールドトンネル11内の道路に近づく分、分岐合流シールドトンネル12の外側の部分が不要な部分となるため、長軸13aの長さを縮小しつつ分岐合流シールドトンネル12の幅を狭めながら掘進してゆく区間である。
【0028】
上記d)の分岐合流部10の車線擦り付け区間10cを形成する工程では、中壁設置区間10aの始終点14での断面における本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との安定した重なり状態を保持したまま、図6に示すように長軸13aの長さを最短にして、接合側面部分11aのトンネル外郭体15aをさらに切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、例えば120m程度の長さの、分岐合流シールド掘進機13の標準断面区間20dでもある車線擦り付け区間10cを形成する(図1参照)。
【0029】
すなわち、車線擦り付け区間10cは、2車線の幅員を減少させつつ、分岐合流シールドトンネル12内の道路を本線シールドトンネル11内の道路に斜めに擦り付けてゆく部分である。幅員の減少に伴なって、分岐合流シールドトンネル12内の車線外側に余分な空間23(図1参照)が形成されることになるが、分岐合流シールド掘進機13を本線シールドトンネル11の内部にさらに食い込ませると、安定したトンネル11,12の構造を保持することが難くなることから、中壁設置区間10aの始終点14での安定した重なり状態を保持したまま、長軸13aの長さを最短にした標準断面の分岐合流シールド掘進機13により、これの中心軸22aを本線シールドトンネル11の中心軸22bと平行にしつつ掘進してゆく区間である。
【0030】
また、車線擦り付け区間10cでは、分岐合流シールドトンネル12内の車線を本線シールドトンネル11内の車線に合流させるのに必要な長さで分岐合流シールド掘進機13による掘進を行ったら、上述のように、分岐合流シールド掘進機13は、その終端位置に埋殺しにしたり、或いはスキンプレートを残して内部の機械や設備を撤去して、分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16の一部として利用されることになる。
【0031】
そして、本実施形態のシールドトンネルの分岐合流部施工方法によれば、分岐合流シールド掘進機13として、長軸13aの長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備えるシールド掘進機を使用し、上述の工程a)〜d)によって分岐合流部10を形成するので、本線シールドトンネル11の断面形状を円形に保持したまま、分岐合流シールド掘進機13の長軸13aの長さを伸縮させるだけの簡易な施工工程に従って、分岐合流シールド掘進機13で本線トンネル11の接合側面部分11aを直接切削しつつ、本線トンネル11に分岐合流トンネル12を接合させて安定した分岐合流部10を形成することができると共に、余分な断面部分の掘進作業や覆工作業を抑制して、効率の良い施工を行うことが可能になる。
【0032】
図7は、本発明の他の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法を示すものである。図7に示すシールドトンネルの分岐合流部施工方法では、分岐合流部10の中壁設置区間10aを形成する工程において、分岐合流部10の手前に拡幅区間20a(図1参照)を設けるこことなく、例えば30m程度の長さの近接区間20eを介して、長軸13aの長さを最短にした分岐合流シールド掘進機13を分岐合流部10に近接させる。また、例えば12m程度の長さの接触区間20fにおいて分岐合流シールド掘進機13を本線シールドトンネル11に接触させて切削を開始してから、例えば39m程度の長さの拡幅区間20gにおいて長軸13aの長さを本線シールドトンネル11側に伸張して伸ばした状態としつつ、接合側面部分11aのトンネル外郭体15を切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、中壁設置区間10aを形成するようにしたものである。
【0033】
図7に示すシールドトンネルの分岐合流部施工方法によっても、上記実施形態の分岐合流部施工方法と同様の作用効果が奏されると共に、分岐合流部10の手前に拡幅区間20aを設けることなく、中壁設置区間10aに拡幅区間20gを重複させて設け、長軸13aの長さを本線シールドトンネル11側に伸張して伸ばした状態としつつ、接合側面部分11aのトンネル外郭体15を切削しながら分岐合流シールド掘進機13を掘進させて中壁設置区間10aを形成するので、図1における中壁設置区間10a及び拡幅区間20aの車線外側の余分な空間24を生じさせることがなくなる。これによって、例えば地上の道路幅等によって、地中における幅方向の建築限界が制限されている場合でも、このような建築限界からはみ出すことなく分岐合流部10を形成することが可能になる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本線シールドトンネルは、円形断面以外の、楕円断面や略矩形断面等を備えるシールドトンネルであっても良い。また、分岐合流部を形成する本線シールドトンネルや分岐合流シールドトンネルは、道路トンネル以外の、例えば地下鉄用のトンネルや、下水道用のトンネル等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法によって形成される分岐合流部を説明する平断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法の工程を説明する図1のA−Aに沿った断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法の工程を説明する図1のC−Cに沿った断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法の工程を説明する図1のD−Dに沿った断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法の工程を説明する図1のE−Eに沿った断面図である。
【図7】本発明の好ましい他の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流部施工方法によって形成される分岐合流部を説明する平断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、従来のシールドトンネルの分岐合流部施工方法において本線トンネルに分岐合流トンネルを接合させる工程を説明する断面図である。
【図9】従来のシールドトンネルの分岐合流部施工方法において本線トンネルに分岐合流トンネルを接合させる工程を説明する平断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 分岐合流部
10a 中壁設置区間
10b 車線確保区間
10c 車線擦り付け区間
11 本線シールドトンネル
11a 本線シールドトンネルの接合側面部分
12 分岐合流シールドトンネル
12a 分岐合流シールドトンネルの接合側部
13 分岐合流シールド掘進機
13a 分岐合流シールド掘進機(分岐合流シールドトンネル)の長軸
13b 分岐合流シールド掘進機(分岐合流シールドトンネル)の短軸
14 中壁設置区間の始終点
15 本線シールドトンネルのトンネル外郭体
15a 切削セグメント(接合側面部分のトンネル外郭体)
16 分岐合流シールドトンネルのトンネル外郭体
17 分岐合流シールドトンネルの略長円断面形状の直線部分
18 分岐合流シールドトンネルの略長円断面形状の曲線部分
19 直線部分から曲線部分へのコーナー部分
20a,20g 拡幅区間
20b 最大拡幅区間
20c 縮幅区間
20d 標準断面区間
20e 近接区間
20f 接触区間
21 中間壁
22a 標準断面の分岐合流シールド掘進機の中心軸
22b 本線シールドトンネルの中心軸
23,24 車線外側の余分な空間
s 分岐合流シールド掘進機13の長軸方向へのスライド幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線シールドトンネルに分岐合流シールドトンネルを接合してトンネルの分岐合流部を形成するシールドトンネルの分岐合流部施工方法であって、
前記分岐合流シールドトンネルを形成する分岐合流シールド掘進機として、長軸の長さを調整可能にして略長円断面形状のシールドトンネルを形成する機構を備えるシールド掘進機を使用し、
前記長軸の長さを最短にした状態で前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて前記分岐合流部に接近させる工程と、
前記長軸の長さを伸ばした状態とし、シールド掘進機により切削可能な切削セグメントを用いて接合側面部分を形成した前記分岐合流部における前記本線シールドトンネルのトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の中壁設置区間を形成する工程と、
前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態を保持したまま、前記長軸の長さを前記本線シールドトンネル側に収縮しつつ、前記接合側面部分のトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の車線確保区間を形成する工程と、
前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態を保持したまま、前記長軸の長さを最短にして、前記接合側面部分のトンネル外郭体をさらに切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて、前記分岐合流部の車線擦り付け区間を形成する工程とを含むシールドトンネルの分岐合流部施工方法。
【請求項2】
前記分岐合流部の中壁設置区間を形成する工程では、前記長軸の長さを最短にした分岐合流シールド掘進機を前記分岐合流部に近接又は接触させた後に、前記長軸の長さを前記本線シールドトンネル側に伸張して伸ばした状態としつつ、前記接合側面部分のトンネル外郭体を切削しながら前記分岐合流シールド掘進機を掘進させる請求項1に記載のシールドトンネルの分岐合流部施工方法。
【請求項3】
前記中壁設置区間の始終点での断面における前記本線シールドトンネルと前記分岐合流シールドトンネルとの重なり状態は、前記分岐合流シールドトンネルの略長円断面形状の上下の直線部分から本線シールドトンネル側の曲線部分へのコーナー部分が、各々円形断面の本線シールドトンネルの円周部分に位置するような位置関係で重なった状態である請求項1又は2に記載のシールドトンネルの分岐合流部施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−77637(P2007−77637A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265264(P2005−265264)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】