説明

シールド付きフラットケーブル

【課題】要求される特性インピーダンスの調整を図ることができ、自動車の例えば、スライドドアなどの可動部の動きに対応した屈曲性能を備えたシールド付きフラットケーブルを提供する。
【解決手段】
複数の平角導体14を備えたフラットケーブル体を、いずれかをコア平角導体14Cとするコアフラットケーブル体11で構成し、該コアフラットケーブル体11の両外側に、コア平角導体14Cの幅以上の幅を有する幅広平角導体14Wを備えたシールドフラットケーブル体12を夫々配置し、コアフラットケーブル体11とシールドフラットケーブル体12との間に、これらフラットケーブル体11,12の間隔を所定間隔に保つスペーサ部材13を介在させたケーブル積層体10を保持するネット状保持部材20を、該ケーブル積層体10の外側に備え、ネット状保持部材20及びスペーサ部材13を可撓性部材で構成したシールド付きフラットケーブル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気、電子機器に用いられるフラットケーブルに関し、特に高速、大容量の通信用として用いるに好適なシールド付きフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド付きフラットケーブルは、近年、AV機器やOA機器、液晶テレビやプラズマテレビなどのデジタル機器の発達、普及に伴い、高速伝送ケーブルとしての使用が要求されている。
【0003】
フラットケーブルを高速伝送ケーブルとして使用する場合、特性インピーダンスを目的値に整合させることが重要となり、これを実現するためになされた発明が様々な文献に開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1のシールド付きフラットケーブルは、導体群の上下両面に、接着剤付き絶縁プラスチックフィルムを設け、その接着剤付き絶縁プラスチックフィルムの少なくとも片面にシールド材を設け、シールド材が配置される側の上記接着剤付き絶縁プラスチックフィルムの厚さを、120μm以上に設定している。
【0005】
このように導体群と導電性接着剤層との距離を確保することでフラットケーブルの特性インピーダンスの整合を図ることができ、用途によっては、薄膜汎用品を複数枚貼り合わせることで、フラットケーブルを200μm以上の総厚として特性インピーダンスの整合を図ることもある。
【0006】
特許文献1のシールド付きフラットケーブルは、このようにシールド材を厚くすることで特性インピーダンスを満足させることができ、また、ノイズ性能も向上させることができる。
【0007】
しかし、上述したように、特性インピーダンスの整合を図る際に、薄膜汎用品を複数枚貼り合わせてフラットケーブルの厚みを厚くすることがあるため、屈曲性能が著しく低下するという難点がある。
【0008】
一方、最近では、自動車内には多数の電子制御ユニット(ECU)を搭載し、これらの電子制御ユニットをCAN通信回路を介して電装品と接続して自動制御しており、フラットケーブルは、高速伝送ケーブルの中でも「CAN」(Controller Area Network)と称する制御プロトコルに対応したCAN通信ケーブルとしての性能を満たすことが求められている。
【0009】
なお、CANは、自動車をメインターゲットとした標準インターフェースとして規格され(ISO11898)、従来の方式と比較して通信速度が非常に速く、ノイズに強いため、近年、急速に普及しつつある制御プロトコルである。
【0010】
例えば、フラットケーブルをCAN通信ケーブルとして適用するためには、フラットケーブルの特性インピーダンスは、95〜140Ωを満たすことが要求される。
【0011】
さらに、フラットケーブルは、このようなCAN通信に対応した電気的な性能が要求されるが、その他にも、自動車のスライドドア(SDC)等の可動部に設置されることもあるため、可動部の動作に応じて屈曲した動きが要求されることから、屈曲性能も満足する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−299704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明では、特性インピーダンスの調整を図ることができ、加えて、自動車の例えば、スライドドアなどの可動部の動きに対応した優れた屈曲性能を備えたシールド付きフラットケーブルの提供を目的とする。特に、車載機器間のデータ転送に特化したCAN通信ケーブルに好適なシールド付きフラットケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、幅方向へ所定間隔ごとに並列配置した複数の導体を備えたフラットケーブル体を、該複数の導体のうち少なくとも1本をコア導体とするコアフラットケーブル体として構成し、該コアフラットケーブル体の厚み方向の両外側に、前記コア導体の幅以上の幅を有する幅広導体を備えたシールドフラットケーブル体をそれぞれ配置し、前記コアフラットケーブル体と前記シールドフラットケーブル体との厚み方向の間に、これらフラットケーブル体の間隔を所定間隔に保つスペーサ部材を介在させたケーブル積層体を構成し、前記ケーブル積層体を一体に保持する積層体保持部材を、該ケーブル積層体の外側に備え、前記積層体保持部材および前記スペーサ部材を、可撓性部材で構成したシールド付きフラットケーブルであることを特徴とする。
【0015】
前記コア導体とは、複数の導体の中でも例えばCAN通信用の導体としてデータを高速伝送するために設定した導体を示す。
【0016】
CAN通信用の導体としてデータを高速伝送するために設定した前記コア導体は、例えば、メッキ無し平角導線、或いは、必要に応じ錫メッキ平角導線により構成することができるが、これら導体に限定するものではない。
【0017】
スペーサ部材は、絶縁性を有する部材であれば特に限定せず、所望の特性インピーダンスを得ることができるという観点で、コア導体の幅が1.4〜2.5mmの範囲の場合、スペーサの厚みが約0.5〜1.0mmであることが好ましいが、厚みは特に限定しない。
【0018】
スペーサ部材は、可撓性、絶縁性を有していれば、合成樹脂で形成するなど材質は特に限定しないが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート等オレフィン系樹脂素材を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂は、絶縁性、強度に加え、耐寒性にも優れているため、自動車用の室外において配索した場合も劣化し難く品質を確保することができる。
【0019】
前記積層体保持部材および/または前記スペーサ部材は、後述するネット状シートであることが好ましいが、この構成に限定せず、特に材質、形態は限定しない。
【0020】
この発明の態様として、前記ケーブル積層体および前記積層体保持部材を外側から保護する外装部材を備え、該外装部材を、可撓性部材により形成することができる。
【0021】
前記外装部材は、エラストマーなどの樹脂、合成ゴム、天然ゴムなど、可撓性を有する部材であれば特に限定しない。
【0022】
前記外装部材は、環状、断面視C型の部材など特に形態は限定しないが、積層体保持部材を全長に亘って外側から保護できる点でチューブ状(管状)であることが好ましい。
【0023】
またこの発明の態様として、前記コア導体を、複数の前記導体のうち少なくとも幅方向において隣合う2本の導体に設定し、前記コア導体の幅の3分の2以上の部分を、前記幅広導体の幅方向内側に相当する部分に配置することができる。
【0024】
前記コア導体を、該コア導体の幅の3分の2以上の部分が前記幅広導体の幅方向内側に相当する部分に配置していれば、コア導体として用いる上で要求されるノイズ性能を満たすことができる。
【0025】
特に、前記コア導体は、2分の1以上の部分が前記幅広導体の幅方向内側に相当する部分に配置していることが、前記幅広導体によるシールド効果を得ることができ、ノイズ性能をより向上させることができる点で、より好ましい。
【0026】
さらに、該コア導体の幅全体が前記幅広導体の幅方向内側に相当する部分に配置した構成であれば、前記幅広導体によるシールド効果をより顕著に得ることができ、優れたノイズ性能を得ることができる点で特に好ましい。
【0027】
またこの発明の態様として、前記幅広導体を複数本備え、これら幅広導体を幅方向へ並列配置して前記シールドフラットケーブル体に備えることができる。
【0028】
このように前記シールドフラットケーブル体は、1本の幅広導体を備えた1芯ケーブルに限らず、2芯以上の多芯ケーブル体として構成することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記積層体保持部材および/または前記スペーサ部材を、メッシュ状シートで形成することができる。
【0030】
メッシュ状シートは、例えば、縦糸と横糸をネット状に編成したもの、経糸と横糸との交点を熱溶着してネット状に形成したもの、或いは、シート状の表面に多数の連通孔を配設してネット状に形成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、要求される特性インピーダンスへの調整を図ることができ、加えて、自動車の例えば、スライドドアなどの可動部の動きに対応した優れた屈曲性能を備えたフラットケーブルを提供することができる。
【0032】
特に、車載機器間のデータ転送に特化したCAN通信ケーブルに好適なシールド付きフラットケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態のシールド付きフラットケーブルの分解斜視図。
【図2】第1実施形態のケーブル積層体の断面図。
【図3】第1実施形態のケーブル積層体の構造説明図。
【図4】特性インピーダンスとスペーサ部材の厚みとの関係を示すグラフ。
【図5】第2実施形態のケーブル積層体の断面図。
【図6】第2実施形態のケーブル積層体の説明図。
【図7】第2実施形態のケーブル積層体の他の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態におけるシールド付きフラットケーブル1は、図1、図2および図3に示すように、後述するケーブル等の帯状の長尺部材を厚み方向に複数本積層してなるケーブル積層体10と、ケーブル積層体10の長さ方向全体に亘ってケーブル積層体10を外周側から一体に保持するネット地で形成したネット状保持部材20と、ネット状保持部材20のさらに外側から前記ケーブル積層体10を保護する外装チューブ30とで構成している。
【0035】
なお、図1中においてシールド付きフラットケーブル1の一部のみを示した分解斜視図であるが、シールド付きフラットケーブル1は必要な長さで形成され、車両内部等において所定箇所に配索されるものである。図2は、ケーブル積層体10を長さ方向に対して直交方向に切断したときの断面を模式的に示した図である。図3は、ケーブル積層体10を構成する各部材を所定間隔を隔てて上下方向に配置した図である。
【0036】
前記ケーブル積層体10は、厚み方向(図2中の上下方向)の中間部分にコアフラットケーブル体11を備え、厚み方向の両外側に、シールドフラットケーブル体12をそれぞれ配置し、前記コアフラットケーブル体11と前記シールドフラットケーブル体12との厚み方向の間に、これらフラットケーブル体の間隔を所定間隔に保つスペーサ部材13を介在させた構成である。
【0037】
ケーブル積層体10を構成するコアフラットケーブル体11、シールドフラットケーブル体12およびスペーサ部材13は、互いに固着しない状態で積層されている。
【0038】
コアフラットケーブル体11は、幅方向(図2中の左右方向)に略等間隔を隔てて並列配置した4本の帯状の平角導体14と、該平角導体14を表裏から挟み込んで一体的に囲繞する絶縁性(不導電性)ラミネートシート15で構成している。
【0039】
並列配置した4本の平角導体14は、いずれもメッキ無しの平角銅線により同一サイズで形成しているが、4本の平角導体14のうち、幅方向の中央で隣合う2本の平角導体14を、シールド付きフラットケーブル1をCAN通信ケーブルとして用いる際に、CAN通信データ伝送用の導体としてのコア平角導体14Cに設定している。
【0040】
シールドフラットケーブル体12は、1本の帯状の幅広平角導体14Wと、該幅広平角導体14Wを表裏から挟み込んで一体的に囲繞する絶縁性ラミネートシート15で構成している。
【0041】
シールドフラットケーブル体12に備えた幅広平角導体14Wは、前記コア平角導体14Cの少なくとも2本分の幅以上の幅を有する幅、詳しくは、コアフラットケーブル体11に並列配置した4本の平角導体14の間を跨いでこれら4本の平角導体14を並列配置したときの全長と略同じ幅広に形成している。
【0042】
幅広平角導体14Wは、該幅広平角導体14Wの中間部分がシールドフラットケーブル体12の幅方向の中間部分と一致するよう備えているため、幅方向の中央において隣合う2本のコア平角導体14Cは、幅広平角導体14Wの幅方向外側へはみ出さずに、すなわち、幅広平角導体14Wの幅方向内側に相当する部分に配置されている。
【0043】
なお、幅広平角導体14Wは、コア平角導体14Cを用いたCAN通信データ伝送の際のシールドおよびアース用導体として用いるものであるが、幅広平角導体14Wをデータ伝送用導体として用いることを排除するものではない。
【0044】
スペーサ部材13は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート等のオレフィン系樹脂素材により絶縁性を有するネット状シートで形成し、伸縮性、柔軟性を兼ね備えており、可撓性(屈曲性)に優れたシート状部材である。
【0045】
ネット状保持部材20は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂により、可撓性(屈曲性)に優れたネット状をした細長い筒状に形成している。すなわち、ネット状保持部材20は、伸縮性、柔軟性に優れているため、筒状の内部に配したケーブル積層体10をその伸縮力により一体に保持している。
【0046】
外装チューブ30は、エラストマー樹脂により細長い筒状部材で形成し、ケーブル積層体10の断面よりも一回り大きな内径を有した偏平形状で形成している(図1参照)。
【0047】
続いて上述したスペーサ部材13の厚みに関して、第1実施形態のシールド付きフラットケーブル1を、CAN通信ケーブルに要求される特性インピーダンスを満たすよう構成する上で必要となるスペーサ部材13の厚みの設定方法について説明する。
【0048】
CAN通信ケーブルに要求される特性インピーダンスは、一般に95〜140Ωであるとされ、次の数式(1)を用いて算出することができる。
【0049】
【数1】

ここで、数式(1)中のμは、絶縁体の比透磁率、εは、絶縁体の比誘電率を示し、Aは、絶縁性ラミネートシート15の厚さ、Bは、スペーサ部材13の厚み、Wは、コア平角導体14Cの幅を示し、本実施例では、μ=1.0、ε=3.2、A=0.09mmに設定している。
【0050】
数式(1)に基いて、スペーサ部材13の厚み(B)を0〜1.0mmまで変化させた場合のスペーサ部材13の厚み(B)と特性インピーダンスとの関係は、図4のグラフのとおりあらわされる。
【0051】
なお、図4中の4本の線形グラフは、コア平角導体14Cの幅(W)が1.4mm、1.5mm、1.6mm、2.5mmのそれぞれの場合についての波形を示している。
【0052】
図4からも明らかなとおり、コア平角導体14Cの幅(W)が1.4mm、1.5mm、1.6mm、2.5mmのそれぞれの場合についてCAN通信ケーブルとして要求される特性インピーダンスの値95〜140Ωを満たすためには、スペーサ部材13の厚み(B)は、0.5〜1.0mm付近が望ましいことが分かる。
【0053】
また、本実施例と同時に特性インピーダンスに関して、数式(1)に基いて算出される近似値と実測値との違いの検証を行なった。
【0054】
詳しくは、コア平角導体14Cの幅(W)が1.4mm、1.5mmのそれぞれの場合において、スペーサ部材13の厚みBを0.6mmに設定した場合の特性インピーダンスを実測した。測定結果は、図4中にプロットしたとおりである。
なお、図4中、コア平角導体14Cの幅(W)が1.4mmの場合は、「▲」マークでプロットし、1.5mmの測定値の場合は、「●」マークでプロットしている。
【0055】
図4中に示すとおり、この実測値は、それぞれのコア平角導体14Cの幅(W)に対応する線形波形が、スペーサ部材13の厚みBが0.6mmにおいて示す近似値と略一致することから、数式(1)に基いて算出される近似値と実測値との間に誤差は殆どなく、無視できる範囲であることが明らかとなった。
【0056】
以上より、図4、或いは、数式(1)に基いて所望の特性インピーダンスを満たすようスペーサの厚みBを決定することができ、所望の特性インピーダンスを満たしたシールド付きフラットケーブル1を得ることができることが明らかになった。
【0057】
上述したシールド付きフラットケーブル1は、以下の作用、効果を奏することができる。
本実施形態のシールド付きフラットケーブル1は、コアフラットケーブル体11の厚み方向の両外側に、幅広平角導体14Wを備えたシールドフラットケーブル体12をそれぞれ配置した構成であるため、該シールドフラットケーブル体12を、シールドおよびアースとして作用させることができ、ノイズ性能を格段に向上させることができる。
【0058】
さらに、前記コアフラットケーブル体11と前記シールドフラットケーブル体12との間に、スペーサ部材13を介在させた構成であるため、スペーサ部材13の材質、厚み、形状などに応じて特性インピーダンスの調整を図ることができる。
【0059】
また、ネット状保持部材20によりケーブル積層体10を一体に保持しているため、該ケーブル積層体10が屈曲してもケーブル積層体10、すなわち、コアフラットケーブル体11、シールドフラットケーブル体12およびスペーサ部材13は、互いに分離せずに優れた一体性に保つことができる。
【0060】
ケーブル積層体10およびネット状保持部材20を外側から保護する外装チューブ30を備えることにより、ケーブル積層体10およびネット状保持部材20の耐久性を向上させることができる。よって、シールド付きフラットケーブル1を屋外に配しても外的要因に対してしっかりとケーブル積層体10およびネット状保持部材20を保護することができる。
【0061】
ケーブル積層体10は、コアフラットケーブル体11、シールドフラットケーブル体12およびスペーサ部材13のそれぞれを固着せずに積層しただけの構成であるため、これらコアフラットケーブル体11、シールドフラットケーブル体12およびスペーサ部材13のそれぞれは、長手方向への相対移動が許容されるとともに、幅方向においても、ある程度の相対移動が許容される。よって、ケーブル積層体10は、優れた屈曲性能を備えることができる。
【0062】
加えて、スペーサ部材13、ネット状保持部材20および外装チューブ30は、可撓性部材で形成している。
【0063】
従って、シールド付きフラットケーブル1は、自動車のスライドドアやトランクなどの可動部分に配索した場合においても、これら可動部分の動作に応じて適宜、屈曲し、可動部分の動作に柔軟に対応することができる。
【0064】
また、前記ネット状保持部材20および/または前記スペーサ部材13は、可撓性(伸縮性、柔軟性)に優れたメッシュ状シートで形成しているため、上述したように屈曲性能に優れたシールド付きフラットケーブル1を構成することができることに加え、メッシュ状シートは、軽量であるため、例えば、前記スペーサ部材13の厚みを厚くしてもシールド付きフラットケーブル1全体を軽量に保つことができる。
【0065】
シールド付きフラットケーブル1は、上述したように様々な作用、効果を奏することができるが、上述した実施形態に限定せず、他の実施形態で構成してもよい。
以下では、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2について説明するが、第1実施形態のシールド付きフラットケーブル1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
(第2実施形態)
例えば、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2は、図5に示すように、前記シールドフラットケーブル体12に、前記幅広平角導体14W2を、例えば2本備えるとともに、これら2本の幅広平角導体14W2を、幅方向へ並列配置した構成である。
なお、図5は、ケーブル積層体10を長さ方向に対して直交方向に切断したときの断面を模式的に示した図である。
【0067】
詳しくは、第2実施形態の幅広平角導体14W2は、第1実施形態の幅広平角導体14W(図2参照)の幅方向の中間部分に該幅広平角導体14W自体が存在しない部分が構成されるよう2つに分断したときの各幅広平角導体と同様の構成である。
【0068】
この構成の場合、幅方向へ2本並列配置した第2実施形態の幅広平角導体14W2は、幅方向の中間部分において幅広平角導体14W自体が存在しない部分を有する配置形態となり、この部分だけ第2実施形態の幅広平角導体14W2の2本分の幅は、第1実施形態の幅広平角導体14Wの幅と比較してトータル長さが短くなるから、シールド付きフラットケーブル1全体の軽量化を図ることができるとともに、コストの低減を図ることができる。
【0069】
なお、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2についても、上述したスペーサ部材13の厚みの設定方法と同様の方法でスペーサ部材13の厚みを設定することができる。
【0070】
続いて、コア平角導体14Cと幅広平角導体14W,14W2とのノイズ性能を満足するための関係について説明する。
コアフラットケーブル体11、スペーサ部材13およびシールドフラットケーブル体12は、互いに固着せずに積層しているため、コアフラットケーブル体11とシールドフラットケーブル体12とが幅方向へある程度相対移動する(ずれる)場合がある。
【0071】
この場合でも、図2および図5に示すように、コア平角導体14Cの幅全体が、幅広平角導体14W,14W2の幅方向内側に相当する部分に配置されていれば、優れたノイズ性能に保つことができる。
【0072】
仮に、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2において、コアフラットケーブル体11とシールドフラットケーブル体12とが幅方向へある程度相対移動した場合、図6に示すように、2本のコア平角導体14Cのうち一本のコア平角導体14Cが、幅広平角導体14W2の幅方向の一方の端部(例えば、図6中の左側端部el)から幅方向外側にはみ出した場合を想定する。
なお、図6では、図5に示したケーブル積層体10を構成するコアフラットケーブル体11がシールドフラットケーブル体12に対して相対移動した断面図を示し、さらに、図6では、並列配置した4本の平角導体14のうち、図中左側2本の平角導体14をコア平角導体14Cに設定している。
【0073】
この場合、ある程度のノイズ性能の低下が起こるが、コア平角導体14Cの幅の3分の2以上の部分が、前記幅広平角導体14W2の幅方向内側に相当する部分に配置されている限り、すなわち、幅方向外側へはみ出したコア平角導体14Cが図6に示す位置よりも右側へ納まる限り、ノイズ性能の低下の度合いを要求特性を満たす範囲内に留めることができることが実験的に明らかになっている。
【0074】
よって、シールド付きフラットケーブル1,2は、前記コア平角導体14Cの幅全体が、幅広平角導体14W2の幅方向内側に相当する部分に配置されるよう構成しているため、コアフラットケーブル体11がシールドフラットケーブル体12に対して幅方向へある程度(コア平角導体14Cの幅の3分の2以下の範囲で)ずれても、優れたノイズ性能に保つことができる。
【0075】
特に、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2では、コアフラットケーブル体11とシールドフラットケーブル体12とが幅方向において相対移動することにより、図6に示すように、コア平角導体14Cが、幅広平角導体14Wの幅方向の両端部el,erのうち、並列配置された他方の幅広平角導体14Wが存在しない側の端部elから外側へはみ出してずれる場合がある。
【0076】
さらにその他にも図7に示すように、コア平角導体14Cが、幅広平角導体14W2の幅方向の両端部er,elのうち、並列配置された他方の幅広平角導体14W2が存在する側の端部erから外側へはみ出す場合がある。
なお、図7は、図6とは逆方向にコアフラットケーブル体11がシールドフラットケーブル体12に対して相対移動した図を示し、さらに、図7では、並列配置した4本の平角導体14のうち、中央側で隣合う2本の平角導体14をコア平角導体14Cに設定している。
【0077】
コア平角導体14Cが上述したいずれの方向へずれた場合もノイズ性能は低下するが、後者の場合(図7を用いて説明した方)が、ノイズ性能が低下する影響を低減することができることが実験的に明らかになった。
【0078】
以上より、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2は、幅広平角導体14Wを幅方向へ所定間隔ごとに断続的に並列配置されているが、上述したとおりコア平角導体14Cの幅が幅広平角導体14W2に対して3分の2以上、幅方向外側へはみ出さない限り、シールド、アースとしての機能は確保されるため、要求特性を満たすノイズ性能に保つことができる。
【0079】
さらに、第2実施形態のシールド付きフラットケーブル2は、並列配置した2本の幅広平角導体14W2の間には、導体が存在しない分、全体としての軽量化、コスト低減を図ることができるというメリットも得ることができる。
【0080】
上述した実施形態と、この発明の構成との対応において、平角導体14は、導体に対応するものとし、以下同様に、
コア平角導体14Cは、コア導体に対応し、
幅広平角導体14Wは、幅広導体に対応し、
ネット状保持部材20は、積層体保持部材に対応し、
外装チューブ30は、外装部材に対応するものとする。
【符号の説明】
【0081】
1,2…シールド付きフラットケーブル
10…ケーブル積層体
20…ネット状保持部材
30…外装チューブ
11…コアフラットケーブル体
12…シールドフラットケーブル体
13…スペーサ部材
14…平角導体
14C…コア導体
14W,14W2…幅広平角導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向へ所定間隔ごとに並列配置した複数の導体を備えたフラットケーブル体を、該複数の導体のうち少なくとも1本をコア導体とするコアフラットケーブル体として構成し、
該コアフラットケーブル体の厚み方向の両外側に、
前記コア導体の幅以上の幅を有する幅広導体を備えたシールドフラットケーブル体をそれぞれ配置し、
前記コアフラットケーブル体と前記シールドフラットケーブル体との厚み方向の間に、
これらフラットケーブル体の間隔を所定間隔に保つスペーサ部材を介在させたケーブル積層体を構成し、
前記ケーブル積層体を一体に保持する積層体保持部材を、該ケーブル積層体の外側に備え、
前記積層体保持部材および前記スペーサ部材を、可撓性部材で構成した
シールド付きフラットケーブル。
【請求項2】
前記ケーブル積層体および前記積層体保持部材を外側から保護する外装部材を備え、
該外装部材を、可撓性部材により形成した
請求項1に記載のシールド付きフラットケーブル。
【請求項3】
前記コア導体を、複数の前記導体のうち少なくとも幅方向において隣合う2本の導体に設定し、
前記コア導体の幅の3分の2以上の部分を、前記幅広導体の幅方向内側に相当する部分に配置した
請求項1、又は、請求項2に記載のシールド付きフラットケーブル。
【請求項4】
前記幅広導体を複数本備え、これら幅広導体を幅方向へ並列配置して前記シールドフラットケーブル体に備えた
請求項3に記載のシールド付きフラットケーブル。
【請求項5】
前記積層体保持部材および/または前記スペーサ部材を、メッシュ状シートで形成した
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のシールド付きフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113927(P2011−113927A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271946(P2009−271946)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】