説明

シールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法

【課題】地下構造物の大きさに関わらず、地下構造物の躯体の外側にトンネルを到達させることができるシールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法を提供すること。
【解決手段】本線トンネル拡幅部11から、シールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて2本の坑7を掘削する。そして、坑7内から拡底深礎17を構築した後、坑7の間を掘削してシールド掘削機受口27の上部29を構築する。次に、拡底深礎17の間、拡底深礎17の側方および拡底深礎17の本体を掘削し、シールド掘削機受口27の中央部33および下部39を構築する。その後、シールド掘削機45をシールド掘削機受口27に貫入させ、シールド掘削機受口27に配置された受口貼付凍結管43とシールド掘削機45のフード部59の先端に配置されたシールド掘削機貼付凍結管51とを用いて、両者間を凍結して止水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下トンネルのランプ部を構築するために、本線トンネルとランプトンネルを併設し、その間の地盤を掘削して、本線トンネルとランプトンネルとを一体化する方法があった(例えば、特許文献1参照)。また、合流分岐部等に用いる拡幅部をトンネルの掘削時に施工する工法があった(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−353264号公報
【特許文献2】特開2004−143917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トンネルの掘削時に施工された拡幅部の幅がランプトンネルの幅より小さい場合、拡幅部の躯体の外側にシールド掘削機の到達受口を設置できず、ランプトンネルのシールド掘削機を到達させることができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地下構造物の大きさに関わらず、地下構造物の躯体の外側にトンネルを到達させることができるシールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地下構造物の外側にシールド掘削機を到達させる際のシールド掘削機受口の構築方法であって、地下構造物内から、シールド掘削機到達予定位置の頂部の両側方付近に向けて2本の坑を掘削する工程(a)と、前記坑内から鉛直方向に杭を構築する工程(b)と、前記坑の間を掘削し、シールド掘削機受口の上部を構築する工程(c)と、前記杭の間、杭の側方および杭本体を掘削し、前記シールド掘削機受口の中央部および下部を構築する工程(d)と、を具備することを特徴とするシールド掘削機受口の構築方法である。
【0007】
工程(a)で掘削する2本の坑は、導坑、または、導坑と横坑からなる坑である。工程(b)で構築する杭は、H鋼を芯材とすることが望ましい。また、杭は、例えば、工程(d)で掘削される部分が流動化処理土または砂で形成され、掘削されない部分がコンクリートで形成される。工程(d)では、坑内に流動化処理土を充填することが望ましい。シールド掘削機受口には、必要に応じて凍結管が配置される。
【0008】
第2の発明は、地下構造物の外側にシールド掘削機を到達させる方法であって、地下構造物の外側のシールド掘削機到達予定位置に設置したシールド掘削機受口と、到達するシールド掘削機のフード部先端との、少なくとも一方に止水手段を配置し、前記シールド掘削機が前記シールド掘削機受口に貫入した際に、前記シールド掘削機のフード部と前記シールド掘削機受口との間を前記止水手段を用いて止水することを特徴とするシールド掘削機の到達方法である。
【0009】
シールド掘削機が大深度の地山を掘削する場合には、止水手段としてシールド掘削機受口とシールド掘削機のフード部先端との双方に貼付凍結管を設け、シールド掘削機がシールド掘削機受口に貫入した後、凍結により止水を行うのが望ましい。
【0010】
シールド掘削機が地下水の存在する中深度の地山を掘削する場合には、止水手段としてシールド掘削機受口またはシールド掘削機のフード部先端に貼付凍結管を設け、シールド掘削機がシールド掘削機受口に貫入した後、凍結により止水を行うのが望ましい。
【0011】
シールド掘削機が浅深度の地山を掘削する場合や地下水位が低い場合には、例えば、止水手段としてシールド掘削機のフード部先端に注入口を設け、シールド掘削機がシールド掘削機受口に貫入した後、注入口から薬液注入を行って止水する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地下構造物の大きさに関わらず、地下構造物の躯体の外側にトンネルを到達させることができるシールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、ランプトンネルの到達部付近における本線トンネル3の水平断面図を、図2は、ランプトンネルの到達部付近における本線トンネル3の垂直断面図を、図3は、地山1に坑7を掘削した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図1は、図3に示す矢印D−Dによる断面図である。図2は、図1に示す矢印B−Bによる断面図である。図3は、図1に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0014】
図1に示すように、地山1に構築された地下構造物である本線トンネル拡幅部11は、本線トンネル3の施工時や本線トンネル3の施工後に形成される。本線トンネル拡幅部11は、例えば、本線トンネルの一方の側部に設けられる。
【0015】
ランプトンネルを掘削するシールド掘削機45(図9)は、図1、図2に示すように、ランプトンネル構築位置13を矢印Cに示す方向に掘進し、本線トンネル拡幅部11の端部の外側に位置するシールド掘削機到達予定位置4に到達する予定である。シールド掘削機到達予定位置4は、シールド掘削機が到達するための受口が構築されるシールド掘削機受口構築予定位置5でもある。
【0016】
シールド掘削機到達予定位置4にランプトンネルのシールド掘削機45(図9)を到達させるには、まず、図1から図3に示すように、本線トンネル拡幅部11の内部15から、シールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて2本の坑7を掘削する。2本の坑7のうち、本線トンネル3に近い側に掘削される坑7は、導坑7bである。また、本線トンネル3から遠い側に掘削される坑7は、横坑9と導坑7aとからなる。
【0017】
図4は、拡底深礎17を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図4に示す工程では、坑7aの内部から鉛直方向に地山1を掘削し、杭である拡底深礎17aを構築する。また、同様に坑7bの内部から拡底深礎17bを構築する。拡底深礎17は、H鋼19を芯材とする。拡底深礎17は、下部にコンクリート23が、中央部および上部に流動化処理土21または砂が充填される。
【0018】
図5は、シールド掘削機受口27の上部29を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図5に示す工程では、まず、シールド掘削機受口構築予定位置5(図1から図3)の上部の掘削範囲25を掘削する。掘削範囲25は、2本の坑7の間の地山1である。そして、シールド掘削機受口27の上部29を設置する。シールド掘削機受口27の上部29は、H鋼19を芯材とする拡底深礎17で支持される。
【0019】
図6は、シールド掘削機受口27の中央部33を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図6に示す工程では、シールド掘削機受口構築予定位置5(図1から図3)の中央部の掘削範囲31が掘削され、シールド掘削機受口27の中央部33が設置される。掘削範囲31は、2本の拡底深礎17の間の地山1、拡底深礎17の側方の地山1、拡底深礎17の本体である。掘削範囲31は、上下2段に分割される。
【0020】
図6に示す工程では、まず、上段の掘削範囲31aを掘削し、2本の坑7内に流動化処理土35を充填する。そして、シールド掘削機受口27の中央部33の上部33aを設置し、切梁・腹起(図示せず)を設置する。その後、下段の掘削範囲31bを掘削し、シールド掘削機受口27の中央部33の下部33bを設置して、切梁・腹起(図示せず)を設置する。
【0021】
図7は、シールド掘削機受口27の下部39を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図7に示す工程では、まず、シールド掘削機受口構築予定位置5(図1から図3)の下部の掘削範囲37を掘削する。掘削範囲37は、2本の拡底深礎17の間の地山1、拡底深礎17の本体である。そして、シールド掘削機受口27の下部39を設置する。
【0022】
なお、拡底深礎17は、図6に示す工程および図7に示す工程で掘削される部分が流動化処理土21または砂で形成され、掘削されない部分がコンクリート23で形成される。
【0023】
図8は、シールド掘削機受口27の施工が完了した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図を示す。図8に示す工程では、シールド掘削機受口27の内部に流動化処理土41を充填し、本線トンネル3内の補強部材(図示せず)を撤去する。
【0024】
図9は、シールド掘削機45の到達後のシールド掘削機受口27付近の垂直断面図である。図9は、図8に示す矢印E−Eによる断面に、ランプトンネルのシールド掘削機45が到達した状態を示す。
【0025】
図9に示すように、シールド掘削機受口27の内周面47は、シールド掘削機45の掘進方向に所定の間隔をおいて、第1の凍結管である受口貼付凍結管43が設置される。また、シールド掘削機45は、フード部59の先端のスキンプレート49の外周面57に、第2の凍結管であるシールド掘削機貼付凍結管51が設置される。
【0026】
図1および図2に示すランプトンネル構築予定位置13を掘進してきたシールド掘削機45は、図9に示すように、カッタ55でシールド掘削機受口27に充填された流動化処理土41を切削して、シールド掘削機受口27に貫入する。シールド掘削機45は、シールド掘削機貼付凍結管51とシールド掘削機受口27の受口貼付凍結管43とが対向する位置まで貫入する。
【0027】
図9に示す工程では、シールド掘削機45がシールド掘削機受口27に貫入した後、受口貼付凍結管43とシールド掘削機貼付凍結管51とを用いて、シールド掘削機受口27とシールド掘削機45のフード部59との間を凍結して凍土53を形成し、地下水を止水する。
【0028】
このように、本実施の形態では、本線トンネル拡幅部11の内部15からシールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて坑7を掘削し、坑7内から拡底深礎17を形成する。そして、本線トンネル拡幅部11の端部の外側に、シールド掘削機受口27を拡底深礎17で支持しつつ構築する。これにより、本線トンネル拡幅部11よりも幅の大きなシールド掘削機受口27を構築し、ランプトンネルのシールド掘削機45を到達させることができる。
【0029】
また、シールド掘削機受口27の内周面47に受口貼付凍結管43を、シールド掘削機45のフード部59のスキンプレート49の外周面57にシールド掘削機貼付凍結管51を設置することにより、シールド掘削機45がシールド掘削機受口27に到達した際、シールド掘削機45とシールド掘削機受口27との間を確実に止水することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、地下構造物の例として本線トンネル拡幅部11を用いたが、本発明のシールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法は、トンネル以外の他の地下構造物の外側にシールド掘削機受口を構築する場合にも適用できる。また、本実施の形態では、杭として拡底深礎17を構築したが、深礎は必ずしも拡底とする必要はない。
【0031】
また、本実施の形態では、シールド掘削機受口構築予定位置5に向けて掘削する2本の坑7のうち、一方を横坑9と導坑7aとからなる坑とし、他方を導坑7bとしたが、坑7の構成はこの限りでない。図10は、シールド掘削機受口構築予定位置5に向けて他の構成の坑を掘削する例を示す図である。
【0032】
図10の(a)図は、構築予定のシールド受口の幅に対し、本線トンネル拡幅部11aの幅が非常に小さい場合の例を示す。図10の(a)図に示す例では、シールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて、横坑55aと導坑57aからなる坑と、横坑55bと導坑57bとからなる坑とを掘削する。
【0033】
図10の(b)図は、構築予定のシールド受口の幅よりも、本線トンネル拡幅部11bの幅が大きい場合の例を示す。図10の(b)図に示す例では、シールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて、導坑59aと導坑59bとを掘削する。
【0034】
シールド掘削機受口構築予定位置5の頂部の両側方付近に向けて掘削する坑の構成は、地下構造物に対するシールド掘削機受口の大きさや、地下構造物とシールド掘削機受口構築予定位置との位置関係等に応じて、適切に設定される。
【0035】
さらに、本実施の形態では、シールド掘削機受口27に受口貼付凍結管43を設け、シールド掘削機45にシールド掘削機貼付凍結管51を設け、これらの凍結管を用いてシールド掘削機受口27とシールド掘削機45との間を凍結して止水を行ったが、止水の態様は上述したものに限らず、地下水の有無や掘削深度などの状況に応じて望ましいものを選択すればよい。
【0036】
例えば、シールド掘削機受口27のみ、または、シールド掘削機45のフード部59の先端のみに貼付凍結管を設け、凍結により止水を行ってもよい。また、シールド掘削機45のフード部59の先端に注入口を設け、薬液注入により止水してもよい。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかるシールド掘削機受口の構築方法およびシールド掘削機の到達方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ランプトンネルの到達部付近における本線トンネル3の水平断面図
【図2】ランプトンネルの到達部付近における本線トンネル3の垂直断面図
【図3】地山1に坑7を掘削した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図4】拡底深礎17を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図5】シールド掘削機受口27の上部29を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図6】シールド掘削機受口27の中央部33を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図7】シールド掘削機受口27の下部39を構築した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図8】シールド掘削機受口27の施工が完了した状態での本線トンネル3付近の垂直断面図
【図9】シールド掘削機45の到達後のシールド掘削機受口27付近の垂直断面図
【図10】シールド掘削機受口構築予定位置5に向けて他の構成の坑を掘削する例を示す図
【符号の説明】
【0039】
1………地山
3………本線トンネル
5………シールド掘削機受口構築予定位置
7………坑
7a、7b、57a、57b、59a、59b………導坑
9、55a、55b………横坑
11………本線トンネル拡幅部
15………内部
17………拡底深礎
19………H鋼
21、35、41………流動化処理土
23………コンクリート
27………シールド掘削機受口
29………上部
33………中央部
39………下部
43………受口貼付凍結管
45………シールド掘削機
51………シールド掘削機貼付凍結管
59………フード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の外側にシールド掘削機を到達させる際のシールド掘削機受口の構築方法であって、
地下構造物内から、シールド掘削機到達予定位置の頂部の両側方付近に向けて2本の坑を掘削する工程(a)と、
前記坑内から鉛直方向に杭を構築する工程(b)と、
前記坑の間を掘削し、シールド掘削機受口の上部を構築する工程(c)と、
前記杭の間、杭の側方および杭本体を掘削し、前記シールド掘削機受口の中央部および下部を構築する工程(d)と、
を具備することを特徴とするシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項2】
前記2本の坑が、導坑、または、導坑と横坑からなる坑であることを特徴とする請求項1記載のシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項3】
前記杭が、H鋼を芯材とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項4】
前記杭は、前記工程(d)で掘削される部分が流動化処理土または砂で形成され、掘削されない部分がコンクリートで形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項5】
前記工程(d)で、前記坑内に流動化処理土を充填することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項6】
前記シールド掘削機受口に凍結管が配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシールド掘削機受口の構築方法。
【請求項7】
地下構造物の外側にシールド掘削機を到達させる方法であって、
地下構造物の外側のシールド掘削機到達予定位置に設置したシールド掘削機受口と、到達するシールド掘削機のフード部先端との、少なくとも一方に止水手段を配置し、
前記シールド掘削機が前記シールド掘削機受口に貫入した際に、前記シールド掘削機のフード部と前記シールド掘削機受口との間を前記止水手段を用いて止水することを特徴とするシールド掘削機の到達方法。
【請求項8】
前記止水手段が凍結管であることを特徴とする請求項7記載のシールド掘削機の到達方法。
【請求項9】
前記止水手段が前記シールド掘削機のフード部先端に設けられた注入口であることを特徴とする請求項7または請求項8記載のシールド掘削機の到達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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