説明

シールド掘進機

【課題】オーバカッタに作用する荷重を支持するカッタスポークを大型化することなく、荷重を支持する。
【解決手段】回転カッタ3に、回転カッタ3の周方向に互いに所定角度となるように二つのガイド13を配置し、これら二つのガイド13にそれぞれ、各ガイド13の長手方向に沿って支持部32を移動自在に設け、これら各支持部32に、ビーム状のオーバカッタ4をその長手方向両端部よりも長手方向内側の部分にて回動自在に支持させ、支持部32の一方を回転カッタ3の径方向外側に移動させ、支持部32の他方を回転カッタ3の径方向内側に移動させることにより、オーバカッタ4の長手方向一端部を回転カッタ3の径方向外側に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形断面を掘削する回転カッタと、その回転カッタの外周縁よりも径方向外側の地山を掘削するためのオーバカッタとを備えたシールド掘進機に係り、特に、馬蹄形断面、楕円形断面或いは矩形断面等の異形断面を掘削するためのシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、シールド本体の前部に設けられた回転カッタで地山を掘削して、その後方でセグメントを順次組立てることにより、トンネルを構築していくものである。回転カッタの前面には複数のビットが配置されており、回転カッタを回転させてビットにより地山を掘削するようになっている。
【0003】
ところで、道路の横方向の占有幅が上下方向の占有幅より大きいことから、道路用トンネルの断面は、円形断面よりも、上下方向に比べて横方向が広くなる馬蹄形断面が理想的である。つまり、道路用トンネルを馬蹄形断面とすると、円形断面に比べて上下方向に無駄な空間が少なく、建設コストが安価となるという利点がある。
【0004】
馬蹄形断面、楕円形断面或いは矩形断面等の異形断面を掘削するシールド掘進機としては、例えば、シールド本体の前部に設けられ、掘進方向と平行な軸廻りに回転駆動される回転カッタと、その回転カッタのカッタスポークに設けられ、回転カッタの外周縁よりも径方向外側に出没自在なオーバカッタとを備えたものが知られている。このようなシールド掘進機では、オーバカッタを回転カッタの外周縁よりも径方向外側に突出させ、そのオーバカッタにより回転カッタの外周縁よりも径方向外側の領域を掘削するようになっている。
【0005】
なお、特許文献1には、シールド掘進機の回転カッタのカッタスポーク内に設けられた油圧ジャッキと、隣接する上記カッタスポーク間に、回転カッタの外周縁の周方向に沿うように架け渡して設けられ、その一端が上記油圧ジャッキに連結され、他端が上記カッタスポークに隣接する他のカッタスポークに回動自在に支持されたカッタフレームとを備えたシールド掘進機が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、平行リンク運動をなすカッタフレームを備え、該カッタフレームは外周側の円形フレームとその内側の多角形フレームとを有し、上記円形フレームは複数に分割され、各分割部分と上記多角形フレームとはオーバカッタジャッキにより連結され、且つ、余堀り可能に移動自在であるシールド掘進機が記載されている。
【0007】
また、特許文献3及び4には、シールド本体に回転自在に設けられた円形の回転カッタと、該回転カッタの外周に開閉自在に設けられたスイングカッタとを備えたシールド掘進機が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−355386号公報
【特許文献2】特許第2824039号公報
【特許文献3】特許第2883075号公報
【特許文献4】特許第2883076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のシールド掘進機においては、オーバカッタに作用する荷重を一ヶ所(一本のカッタスポーク)で受けている。このため、オーバカッタに作用する荷重を支持するカッタスポークを大型化することなく(つまり、重量を増加させることなく)、荷重を支持することが課題となっている。
【0010】
また、従来のシールド掘進機においては、オーバカッタの余堀り量は、そのオーバカッタ自体の移動量とほぼ等しく、オーバカッタを移動させるアクチュエータ(例えば、油圧ジャッキ)のストローク量によって決定される。このため、オーバカッタを移動させるアクチュエータを大型化することなく(つまり、アクチュエータのストロークを増加させることなく)、余堀り量を増加させることが課題となっている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、オーバカッタに作用する荷重を支持するカッタスポークを大型化することなく、荷重を支持することができるシールド掘進機を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、オーバカッタを移動させるアクチュエータを大型化することなく、余堀り量を増加させることができるシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、シールド本体の前部に回転自在に設けられ、円形断面を掘削する回転カッタと、該回転カッタに設けられ、上記回転カッタの径方向内側の所定位置から略径方向外側に延出し、且つ、上記回転カッタの周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのガイドと、これら二つのガイドにそれぞれ設けられ、各ガイドの長手方向に沿って移動自在な支持部と、ビーム状に形成され、その長手方向両端部よりも長手方向内側の部分が上記各支持部に回動自在に支持されたオーバカッタと、上記各支持部を上記各ガイドの長手方向に沿って移動するためのアクチュエータとを備え、該アクチュエータにより、上記支持部の一方を上記回転カッタの径方向外側に移動させ、上記支持部の他方を上記回転カッタの径方向内側に移動させることにより、上記オーバカッタの長手方向一端部を上記回転カッタの径方向外側に突出させるものである。
【0014】
ここで、上記アクチュエータが、上記二つのガイドにそれぞれ設けられ、各ガイドの長手方向に沿って伸縮自在なジャッキであり、上記ジャッキの一方を、その伸縮量が所定値となるように制御し、上記ジャッキの他方を、上記ジャッキの一方に従動させる制御手段を備えたものであっても良い。
【0015】
また、上記二つのガイドを、上記回転カッタの回転中心から径方向外側に延出する二本のスポークに設けても良い。
【0016】
また、上記回転カッタの前面及び上記オーバカッタの前面にそれぞれビットを設け、上記オーバカッタのビットを上記回転カッタのビットよりも後方に配置しても良い。
【0017】
また、上記オーバカッタに、コピーカッタを出没自在に設けても良い。
【0018】
さらに、上記オーバカッタの長手方向中間部に、上記コピーカッタを駆動するための流体圧を上記回転カッタ側から上記オーバカッタ側へと中継して供給するための中継部を設けても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
【0020】
(1)オーバカッタに作用する荷重を支持するカッタスポークを大型化することなく、荷重を支持することができる。
【0021】
(2)オーバカッタを移動させるアクチュエータを大型化することなく、余堀り量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。図2は、図1のII−II線矢視断面図である。図3は、図1のIII−III線矢視断面図である。図4は、図1のIV−IV線矢視断面図である。図5は、図1のV−V線矢視断面図である。
【0024】
図1から図5に示すように、シールド掘進機1は、シールド本体2と、シールド本体2の前部に回転自在に設けられ、円形断面を掘削する回転カッタ3とを備えている。シールド本体2は、上下方向(図1中の上下方向)に比べて横方向(図1中の左右方向)に広い馬蹄形断面であって、上下方向の中央よりも下部側で横幅が最も広くなるように形成されている。回転カッタ3は、掘進方向と平行な軸廻りに回転駆動される。
【0025】
シールド本体2の後部には、回転カッタ3及び後述するオーバカッタ4等により掘削した孔内にセグメントを組立ててトンネル(道路用トンネル)を構築するためのエレクタ(図示せず)と、シールド本体2の内周に所定間隔を隔てて複数設けられ、セグメントに反力を取ってシールド本体2を推進させるためのシールドジャッキ(図示せず)とが設けられる。
【0026】
回転カッタ3と、シールド本体2の前端部近傍に設けられたバルクヘッド(隔壁)5との間には、回転カッタ3及びオーバカッタ4等により掘削した土砂(掘削土砂)を取り込むチャンバ6が形成される。バルクヘッド5の下部には、これを貫通してチャンバ6に開口するスクリュコンベア7が設けられる。
【0027】
回転カッタ3は、バルクヘッド5に回転自在に設けられている。回転カッタ3は、その回転中心から径方向外側に延出し、掘進方向と平行な軸廻りに回転されるカッタフレーム8を有している。カッタフレーム8の前面には、その径方向中央にセンタビット(ビット)9が配置され、そのセンタビット9よりも外周側に複数のカッタビット(ビット)10が配置されている。これらセンタビット9及びカッタビット10は、回転カッタ3の外周縁よりも径方向内側の地山に当接される。カッタフレーム8の後面には、後方に延出してチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するための撹拌翼11が設けられている。
【0028】
カッタフレーム8は、中心部材12と、中心部材12に放射状に取り付けられた複数(図示例では六本)のカッタスポーク(スポーク)13、14とを有している。つまり、各カッタスポーク13、14は、回転カッタ3の回転中心から径方向外側に延出している。
【0029】
ここで、カッタスポーク13、14は、第一カッタスポーク13と第二カッタスポーク14との二種類から構成されている。本実施形態では、六本のカッタスポーク13、14のうち四本が第一カッタスポーク13とされ、残りの二本が第二カッタスポーク14とされている。
【0030】
第一カッタスポーク13は、回転カッタ3の周方向に所定間隔を隔てて、少なくとも一つの他の第一カッタスポーク13に隣接される。
【0031】
第二カッタスポーク14は、回転カッタ3の周方向に所定間隔を隔てて、第一カッタスポーク13に隣接される。第二カッタスポーク14には、コピーカッタ15が回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に出没自在に設けられる。
【0032】
回転カッタ3の周方向に隣接する第一カッタスポーク13同士、或いは、回転カッタ3の周方向に隣接する第一カッタスポーク13と第二カッタスポーク14とは、それらの径方向中間部にて中間部材16により連結されている。また、周方向に隣接する第一カッタスポーク13同士は、その外周部にて外周部材17により連結されている。
【0033】
カッタフレーム8の中心部材12には、回転カッタ3のコピーカッタ15及び後述するオーバカッタ4のコピーカッタ18を駆動するための流体圧用の作動流体(本実施形態では、油圧用の作動油)をシールド本体2側から回転カッタ3側へと供給するためのロータリジョイント19が設けられている。ロータリジョイント19は、中心部材12から後方に延出して、バルクヘッド5に支持されている。
【0034】
バルクヘッド5には、ギヤ20を有するリング状部材21が回転自在に支持されている。リング状部材21は、回転カッタ3のカッタフレーム8から後方に延出する複数の中間ビーム22によって、カッタフレーム8と連結されている。中間ビーム22は、回転カッタ3の周方向に所定間隔を隔てて複数設けられる。シールド本体2内には、リング状部材21を回転させるための複数の駆動モータ23(本実施形態では、油圧モータ)が設けられている。駆動モータ23にはピニオン24が取り付けられており、そのピニオン24がリング状部材21に設けられたギヤ20と歯合するようになっている。
【0035】
バルクヘッド5には、リング状部材21を回転自在に支持する支持機構25が設けられている。支持機構25は、ケーシング26と、ケーシング26内に収容され、リング状部材21を支持するための軸受27、28と、シールド本体2内に土砂が侵入するのを防止するためのシール機構29とを有している。
【0036】
回転カッタ3には、回転カッタ3の外周縁よりも径方向内側の所定位置から回転カッタ3の略径方向外側に延出し、且つ、回転カッタ3の周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのガイドが設けられる。
【0037】
本実施形態では、上記二つのガイドは、回転カッタ3の周方向に互いに隣接する二本の第一カッタスポーク13に設けられており、中心部材12に取り付けられた固定スポーク30と、固定スポーク30に収容され、回転カッタ3の径方向(固定スポーク30の長手方向)に移動自在なガイドスポーク31とから構成されている。
【0038】
各第一カッタスポーク13にはそれぞれ、各第一カッタスポーク13の長手方向、つまり回転カッタ3の径方向に沿って移動自在な支持部32が設けられている。
【0039】
各支持部32は、第一カッタスポーク13のガイドスポーク31先端部に設けられたケーシング33と、ケーシング33内に収容され、後述するオーバカッタ本体34のピン35を支持するための軸受36、37、38と、ケーシング33内に土砂が侵入するのを防止するためのシール機構39とを有している。
【0040】
シールド掘進機1は、回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側の地山を掘削するためのオーバカッタ4を備えている。オーバカッタ4は、ビーム状に形成されたオーバカッタ本体34を有している。オーバカッタ本体34は、その長手方向両端部よりも長手方向内側の部分にて各第一カッタスポーク13の支持部32に回動自在に支持されている。本実施形態では、オーバカッタ本体34の長手方向両端部よりも長手方向内側の部分にはピン35が設けられており、このピン35にてオーバカッタ本体34は、各第一カッタスポーク13の支持部32に回動自在に支持されている。
【0041】
各支持部32を、各第一カッタスポーク13の長手方向、つまり回転カッタ3の径方向に沿って移動するためのアクチュエータが設けられる。本実施形態では、上記のアクチュエータは、各第一カッタスポーク13の長手方向に沿って伸縮自在なジャッキ40(本実施形態では、油圧ジャッキ)である。
【0042】
油圧ジャッキ40は、ガイドスポーク31に取り付けられたシリンダチューブ41と、シリンダチューブ41内にその軸方向に摺動自在に設けられ、突出側油室42と没入側油室43とを区画するピストン44と、一端がピストン44に連結され、他端が中心部材12に連結されたロッド45とを有している(図6参照)。
【0043】
本実施形態では、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の油圧ジャッキ40の突出側油室42とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン47を、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の油圧ジャッキ40の没入側油室43とポンプ46と結ぶ油圧供給ライン47と共用にすると共に、上記一方の油圧ジャッキ40の没入側油室43とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン48を、上記他方の油圧ジャッキ40の突出側油室42とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン48と共用にしている(図6参照)。つまり、上記一方の油圧ジャッキ40の突出側油室42と上記他方の油圧ジャッキ40の没入側油室43とに同時に作動油が供給され、上記一方の油圧ジャッキ40の没入側油室43と上記他方の油圧ジャッキ40の突出側油室42とに同時に作動油が供給される。
【0044】
各支持部32を回転カッタ3の径方向外側に移動させる際には、油圧ジャッキ40を伸長させることでガイドスポーク31を回転カッタ3の径方向外側に移動させる。一方、各支持部32を回転カッタ3の径方向内側に移動させる際には、油圧ジャッキ40を縮退させることでガイドスポーク31を回転カッタ3の径方向内側に移動させる。
【0045】
オーバカッタ本体34の長手方向両端部の前面には、複数のカッタビット49が配置されている。これらカッタビット49は、回転カッタ3のカッタビット10よりもわずかに掘進方向後方に配置される(図5参照)。つまり、オーバカッタ本体34の長手方向両端部が回転カッタ3の外周縁よりも径方向内側に位置した状態では、オーバカッタ本体34の長手方向両端部(カッタビット49)は地山には当接されずチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するのみである。また、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出した状態では、オーバカッタ本体34の長手方向一端部(カッタビット49)が回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側の地山に当接されて地山を掘削し、オーバカッタ本体34の長手方向他端部(カッタビット49)は地山には当接されずチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するのみである。
【0046】
オーバカッタ本体34の長手方向両端部にはそれぞれ、コピーカッタ18がオーバカッタ本体34に対して出没自在に設けられている。
【0047】
オーバカッタ本体34の長手方向中間部には、オーバカッタ4のコピーカッタ18を駆動するための流体圧用の作動流体(本実施形態では、油圧用の作動油)を回転カッタ3側からオーバカッタ4側へと中継して供給するための中継部50が設けられる。
【0048】
中継部50は、オーバカッタ本体34の長手方向中間部に取り付けられ、回転カッタ3の略径方向外側に延出する延出部材51を有している。延出部材51は、その先端部が回転カッタ3の周方向に隣接する第一カッタスポーク13同士を連結する中間部材16と外周部材17との間に架け渡された接続部材52に係合される。
【0049】
接続部材52内には、流体圧用の作動流体が流通され、可撓性のある材料(例えば、ゴム等)からなる供給管53aが収容されており、その供給管53aが延出部材51に接続される(図4参照)。オーバカッタ本体34内には、流体圧用の作動流体が流通される供給管53bが収容されており、その供給管の一端部が延出部材51に接続され(図4参照)、他端部がコピーカッタ18に接続される。流体圧用の作動流体は、延出部材51に設けられた供給路(供給穴)51aを通して、接続部材52内の供給管53a側(つまり、回転カッタ3側)からオーバカッタ本体34内の供給管53b側(つまり、オーバカッタ4側)へと供給される。
【0050】
シールド掘進機1は、油圧ジャッキ40によってオーバカッタ本体34の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出させるための制御手段(制御部)54を備えている(図6参照)。
【0051】
オーバカッタ本体34の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出させる際には、回転カッタ3の周方向に互いに隣接する二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の支持部32を回転カッタ3の径方向外側に移動させることにより、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が回転カッタ3の径方向外側に移動されると共に、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の支持部32を回転カッタ3の径方向内側に移動させることにより、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が上記一方の支持部32回りに回転カッタ3の径方向外側へと回動される。
【0052】
制御部54には、回転カッタ3の回転角度を検出するための角度検出手段としての角度センサ(図示せず)が接続されている。
【0053】
制御部54は、角度センサによって検出した回転カッタ3の回転角度を油圧ジャッキ用マップ(図示せず)に入力して油圧ジャッキ40の伸縮量(ストローク)を求める。上記油圧ジャッキ用マップには、回転カッタ3の回転角度に応じた油圧ジャッキ40の伸縮量(ストローク)が予め求められて入力されており、上記油圧ジャッキ用マップに回転カッタ3の回転角度を入力することによって、油圧ジャッキ40の伸縮量(ストローク)が求められる。
【0054】
本実施形態では、制御部54は、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の油圧ジャッキ40のみを、その伸縮量が所定値となるように上記油圧ジャッキ用マップに従って制御し、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の油圧ジャッキ40を、上記一方の油圧ジャッキ40に従動させるようにしている。
【0055】
詳しくは、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の油圧ジャッキ40の突出側油室42に、ポンプ46から作動油が供給されると、この作動油によりシリンダチューブ41が伸長側(すなわち回転カッタ3の径方向外側)に押される。すると、没入側油室43から作動油が適宜排出されて、一方の油圧ジャッキ40が伸長される。これにより、一方の支持部32(ガイドスポーク31)が回転カッタ3の径方向外側に移動される。
【0056】
上記一方の油圧ジャッキ40の突出側油室42にポンプ46から作動油が供給されると同時に、他方の油圧ジャッキ40の没入側油室43にポンプ46から作動油が供給され、この作動油によりシリンダチューブ41が没入側(すなわち回転カッタ3の径方向内側)に押される。すると、突出側油室42から作動油が適宜排出されて、他方の油圧ジャッキ40が縮退される。これにより、他方の支持部32(ガイドスポーク31)が回転カッタ3の径方向内側に移動される。
【0057】
ここで、本実施形態では、油圧ジャッキ40は、突出側油室42側の受圧部(図示せず)の面積が没入側油室43側の受圧部(図示せず)の面積よりも大きく設定されている。そのため、上記一方の油圧ジャッキ40を伸長させる力に比べ、上記他方の油圧ジャッキ40を縮退させる力が小さく、上記他方の油圧ジャッキ40は上記一方の油圧ジャッキ40に従動される。つまり、同時に作動される二本の油圧ジャッキ40のうち伸長すべき油圧ジャッキ40をその伸長量が所定値となるように制御することで、縮退すべき油圧ジャッキ40が伸長すべき油圧ジャッキ40に従動される。
【0058】
また、上記一方の支持部32と上記他方の支持部32との間の距離は常に一定であり、上記一方の油圧ジャッキ40を伸長させることでオーバカッタ本体34は両方の支持部32回りに回動される。そのため、上記他方の油圧ジャッキ40は、上記他方の支持部32の移動量に応じて必然的に縮退されて、上記一方の油圧ジャッキ40に従動される。
【0059】
また、制御部54は、角度センサによって検出した回転カッタ3の回転角度をコピーカッタ用マップ(図示せず)に入力してオーバカッタ4のコピーカッタ18の突出量(ストローク)を求める。上記コピーカッタ用マップには、回転カッタ3の回転角度に応じたコピーカッタ18の突出量(ストローク)が予め求められて入力されており、上記コピーカッタ用マップに回転カッタ3の回転角度を入力することによって、コピーカッタ18の突出量(ストローク)が求められる。
【0060】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
地山を掘削する際には、図7に示すように、駆動モータ23により回転カッタ3を回転駆動させると、その回転カッタ3によって地山が円形断面に掘削されて、円形断面の孔が形成される。
【0062】
また、図7から図9に示すように、回転カッタ3の回転角度に応じて、オーバカッタ本体34の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出させると、回転カッタ3により形成された円形断面の孔の外周縁よりも径方向外側の未掘削領域の地山が、オーバカッタ4(カッタビット49)により掘削されて、円形断面の孔に連続された馬蹄形断面の孔が形成される。
【0063】
さらに、図9に示すように、回転カッタ3の回転角度に応じて、オーバカッタ本体34に設けられたコピーカッタ18をオーバカッタ本体34に対して突出させると、オーバカッタ本体34に設けられたカッタビット49では掘削することができない未掘削の地山をコピーカッタ18により掘削することができる。
【0064】
以上要するに本実施形態によれば、回転カッタ3に、回転カッタ3の回転中心から径方向外側に延出し、且つ、回転カッタ3の周方向に互いに所定角度となるように二本の第一カッタスポーク13を配置し、これら二本の第一カッタスポーク13にそれぞれ、各第一カッタスポーク13の長手方向に沿って支持部32を移動自在に設け、これら各支持部32に、ビーム状のオーバカッタ本体34をその長手方向両端部よりも長手方向内側の部分にて回動自在に支持させるようにしたため、オーバカッタ本体34に作用する荷重を二ヶ所(二本の第一カッタスポーク13)で受けることができる。したがって、オーバカッタ4に作用する荷重を支持する第一カッタスポーク13を大型化することなく(つまり、重量を増加させることなく)、荷重を支持することが可能となる。
【0065】
また本実施形態では、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の支持部32を回転カッタ3の径方向外側に移動させることにより、オーバカッタ本体34の長手方向一端部を回転カッタ3の径方向外側に移動させると共に、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の支持部32を回転カッタ3の径方向内側に移動させることにより、オーバカッタ本体34の長手方向一端部を一方の支持部32回りに回転カッタ3の径方向外側へと回動させて、オーバカッタ本体34の長手方向一端部を回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出させるようにしている。
【0066】
したがって、オーバカッタ4の余堀り量は、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に移動した長さと、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が上記一方の支持部32回りに回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側へと回動した長さとにより設定されるため、オーバカッタ4を移動させるアクチュエータとしての油圧ジャッキ40を大型化することなく(つまり、油圧ジャッキ40のストロークを増加させることなく)、余堀り量を増加させることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、制御部54は、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の油圧ジャッキ40のみを、その伸縮量が所定値となるように制御し、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の油圧ジャッキ40を、上記一方の油圧ジャッキ40に従動させるようにしている。このようにすることで、容易な二本の油圧ジャッキ40の伸縮量(ストローク)制御が可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、オーバカッタ4のカッタビット49を回転カッタ3のカッタビット10よりもわずかに掘進方向後方に配置している。そのため、オーバカッタ本体34全体が回転カッタ3の外周縁よりも径方向内側に位置しているときは、オーバカッタ本体34の長手両端部(カッタビット49)は地山に当接されない。したがって、オーバカッタ本体34はチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するのみで、オーバカッタ4には大きな荷重は作用しない。
【0069】
また、オーバカッタ本体34の長手方向一端部が回転カッタ3の外周縁よりも径方向外側に突出しているときは、オーバカッタ本体34の長手方向一端部(カッタビット49)のみが地山に当接され、オーバカッタ本体34の長手方向他端部(カッタビット49)は地山に当接されない。従って、地山から受ける荷重はオーバカッタ本体34の長手方向一端部に作用し、オーバカッタ本体34の長手方向他端部はチャンバ6内の掘削土砂を撹拌するのみで、オーバカッタ4には大きな荷重は作用しない。
【0070】
このように、オーバカッタ4に大きな荷重が作用せず、且つ、地山から受ける荷重を二本の第一カッタスポーク13で支持することができるため、オーバカッタ本体34をより長く、或いは、第一カッタスポーク13をより小型にすることが可能となる。
【0071】
また本実施形態によれば、オーバカッタ4に、コピーカッタ18を出没自在に設けたため、オーバカッタ本体34に設けられたカッタビット49では掘削することができない未掘削の地山をコピーカッタ18により掘削することができる。
【0072】
さらに本実施形態では、オーバカッタ本体34の長手方向中間部に、コピーカッタ18を駆動するための流体圧用の作動流体を回転カッタ3側からオーバカッタ4側へと中継して供給するための中継部50を設けている。オーバカッタ本体34と回転カッタ3との相対位置が、オーバカッタ本体34の長手方向中間部では比較的変わり難いためである。
【0073】
次に、第二実施形態に係るシールド掘進機を図11から図14に基づいて説明する。
【0074】
図1から図5で示した第一実施形態と同一部材には同一符号を付してその説明を省略して、主に相違点を説明する。
【0075】
図11は、本発明の第二実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。図12は、図11のXII−XII線矢視断面図である。図13は、図11のXIII−XIII線矢視断面図である。図14は、図11のXIV−XIV線矢視断面図である。
【0076】
図11から図14に示すシールド掘進機101においては、回転カッタ103は、八本のカッタスポーク(スポーク)113、114を有している。即ち、本実施形態では、カッタスポーク113、114の本数を第一実施形態のカッタスポーク13、14の本数よりも増やしている。
【0077】
本実施形態では、八本のカッタスポーク113、114のうち四本が第一カッタスポーク113とされ、残りの四本が第二カッタスポーク114とされている。
【0078】
第一カッタスポーク113は、回転カッタ103の周方向に所定間隔を隔てて、少なくとも一つの他の第一カッタスポーク113に隣接される。
【0079】
第二カッタスポーク114は、回転カッタ103の周方向に所定間隔を隔てて、第一カッタスポーク113或いは他の第二カッタスポーク114に隣接される。
【0080】
周方向に隣接する第一カッタスポーク113同士は、その外周部にて外周部材117aにより連結されている。
【0081】
周方向に隣接する第二カッタスポーク114同士は、その外周部にて外周部材117bにより連結されている。
【0082】
第二カッタスポーク114は、オーバカッタ104が駆動された際にオーバカッタ本体134を挿通し得るように、側部が開放された箱状に形成されている(図11参照)。
【0083】
ここで、本実施形態では、第一実施形態とは異なり、オーバカッタ104にコピーカッタが設けられていない。
【0084】
また、本実施形態では、オーバカッタ104のオーバカッタ本体134の全長L1(図11参照)は、第一実施形態のオーバカッタ本体34の全長と等しく設定されている。
【0085】
また、本実施形態では、回転カッタ103の周方向に隣接する第一カッタスポーク113間の角度A(図11参照)は、第一実施形態の第一カッタスポーク13間の角度よりも小さく設定されている。
【0086】
このように設定することで、オーバカッタ104のオーバカッタ本体134の全長L1が同一であっても、周方向に互いに隣接する二本の第一カッタスポーク113に設けられた支持部132間の距離を第一実施形態に比べて短くし、支持部132からオーバカッタ本体134の端部までの長さL2(図11参照)を第一実施形態に比べて長くとることができる。したがって、本実施形態によれば、コピーカッタをオーバカッタ104に設けたり、オーバカッタ104を大型化することなく、オーバカッタ本体134の突出量を大きくすることができ、オーバカッタ104の余堀り量を増加させることが可能となる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0088】
例えば、図10に示すように、上記一方の油圧ジャッキ40の突出側油室42とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン55と、上記一方の油圧ジャッキ40の没入側油室43とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン56と、上記他方の油圧ジャッキ40の突出側油室42とポンプ46と結ぶ油圧供給ライン57と、上記他方の油圧ジャッキ40の没入側油室43とポンプ46とを結ぶ油圧供給ライン58とを、それぞれ独立させて設けても良い。
【0089】
その場合、制御部54が、二本の第一カッタスポーク13のうち一方の第一カッタスポーク13に設けられた一方の油圧ジャッキ40のみを、その伸縮量が所定値となるように上記油圧ジャッキ用マップに従って制御し、他方の第一カッタスポーク13に設けられた他方の油圧ジャッキ40を、上記一方の油圧ジャッキ40に従動させるようにしても良い。
【0090】
また、制御部54が、二本の第一カッタスポーク13に設けられた両方の油圧ジャッキ40を、それらの伸縮量が所定値となるように上記油圧ジャッキ用マップに従って制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面図である。
【図6】オーバカッタの概略図である。
【図7】馬蹄形断面を掘削するシールド掘進機の正面図である。
【図8】馬蹄形断面を掘削するシールド掘進機の正面図である。
【図9】馬蹄形断面を掘削するシールド掘進機の正面図である。
【図10】オーバカッタの変形例を示す概略図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
【図12】図11のXII−XII線矢視断面図である。
【図13】図11のXIII−XIII線矢視断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 シールド掘進機
2 シールド本体
3 回転カッタ
4 オーバカッタ
10 カッタビット(ビット)
13 第一カッタスポーク(スポーク)
18 コピーカッタ
30 固定スポーク(ガイド)
31 ガイドスポーク(ガイド)
32 支持部
40 油圧ジャッキ(アクチュエータ、ジャッキ)
49 カッタビット(ビット)
50 中継部
54 制御部(制御手段)
101 シールド掘進機
103 回転カッタ
104 オーバカッタ
113 第一カッタスポーク(スポーク)
132 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド本体の前部に回転自在に設けられ、円形断面を掘削する回転カッタと、該回転カッタに設けられ、上記回転カッタの径方向内側の所定位置から略径方向外側に延出し、且つ、上記回転カッタの周方向に互いに所定角度となるように配置された二つのガイドと、これら二つのガイドにそれぞれ設けられ、各ガイドの長手方向に沿って移動自在な支持部と、ビーム状に形成され、その長手方向両端部よりも長手方向内側の部分が上記各支持部に回動自在に支持されたオーバカッタと、上記各支持部を上記各ガイドの長手方向に沿って移動するためのアクチュエータとを備え、該アクチュエータにより、上記支持部の一方を上記回転カッタの径方向外側に移動させ、上記支持部の他方を上記回転カッタの径方向内側に移動させることにより、上記オーバカッタの長手方向一端部を上記回転カッタの径方向外側に突出させることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
上記アクチュエータが、上記二つのガイドにそれぞれ設けられ、各ガイドの長手方向に沿って伸縮自在なジャッキであり、
上記ジャッキの一方を、その伸縮量が所定値となるように制御し、上記ジャッキの他方を、上記ジャッキの一方に従動させる制御手段を備えた請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項3】
上記二つのガイドを、上記回転カッタの回転中心から径方向外側に延出する二本のスポークに設けた請求項1又は2記載のシールド掘進機。
【請求項4】
上記回転カッタの前面及び上記オーバカッタの前面にそれぞれビットを設け、上記オーバカッタのビットを上記回転カッタのビットよりも後方に配置した請求項1から3いずれかに記載のシールド掘進機。
【請求項5】
上記オーバカッタに、コピーカッタを出没自在に設けた請求項1から4いずれかに記載のシールド掘進機。
【請求項6】
上記オーバカッタの長手方向中間部に、上記コピーカッタを駆動するための流体圧を上記回転カッタ側から上記オーバカッタ側へと中継して供給するための中継部を設けた請求項5記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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