説明

シールド電線の保持構造

【課題】シールド電線の振動に起因してコネクタに加えられる力を低減するとともに、シールド電線が振動することによって損傷することを回避する。
【解決手段】電子部品1は、内部に基板3を収容したハウジング4を備え、基板3にはシールド電線5が接続されるコネクタ35が表面実装されている。ハウジング4は、接地されるケース8と、基板3全体を覆うようにケース8に取付けられたカバー10とから構成されている。また、ケース8には基板3が収容されている。そして、ケース8にはシールド電線5のシールド編組部6が取付けられる第2取付片23が設けられ、シールド編組部6は圧着板25によって取付面23aに圧着された状態で保持されている。そして、第2取付片23の先端部はシールド電線5側とは反対側に折曲された折曲部26として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に表面実装されたコネクタに接続されるシールド電線の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板に表面実装されたコネクタにシールド電線を接続し、基板に表面実装された電子部品にシールド電線から信号を入力する技術が知られている。ところが、このような技術に用いられるシールド電線が、例えば、車載された状態で使用される場合にはシールド電線が振動することがある。そして、シールド電線が振動すると、その振動がコネクタに伝わることでコネクタに過大な力が加えられコネクタが基板表面上から剥離することがある。
【0003】
また、従来、L形の支持板にケーブルを固着してケーブルの振動を抑制するケーブル導入口構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたケーブル導入口構造では、筺体の天井板にL形の支持板が取付けられており、その支持板の垂直面にケーブルが密接している。そして、支持板には半円形の凹部が設けられた金属板からなる止め金が取付けられており、支持板と密接しているケーブルの部位は凹部によって支持板に押付けられた状態で固着されている。
【特許文献1】実開平1−156597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されたケーブル導入口構造は頻繁に振動する電子機器に適用することは意図されていない。したがって、このケーブル導入口構造では、ケーブル(シールド電線)に振動が加えられると、止め金で止められている部位より上方に存在するケーブルは振動しケーブルは支持板の端部と擦れ合うこととなる。そして、このケーブル導入口構造において、ケーブルと支持板の端部とが擦れ合うと支持板の端部に設けられている角部によってケーブルが傷つけられるという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド電線の振動に起因してコネクタに加えられる力を低減するとともに、シールド電線が振動することによって損傷することを回避するシールド電線の保持構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、接地される金属製ケースと、前記金属製ケースに収容されるとともに前記金属製ケースを介して接地される状態で取付けられている基板と、前記基板に表面実装されるとともにシールド電線が接続されるコネクタと、前記金属製ケースに設けられ、前記シールド電線のシールド部が取付けられており、先端部に前記シールド電線側とは反対側に折曲された折曲部が形成された取付片と、前記取付片に取付けられ、前記シールド部を前記取付片と電気的に導通させた状態で前記シールド電線を保持する保持部材とを備えていることを要旨とする。
【0007】
この発明では、シールド部は、電気的に導通するように取付片に取付けられているため金属製ケースを介して接地される。したがって、シールド電線の周囲に存在するノイズがシールド電線内の信号線にまで入りこむことを抑制できる。
【0008】
また、取付片と保持部材とによってコネクタ近傍のシールド電線は保持されるため、取付片とコネクタとの間に存在するシールド電線が振動することは抑制される。したがって、コネクタに加えられる振動は低減され、シールド電線の振動に起因してコネクタが基板から剥離することは抑制される。
【0009】
また、シールド電線が振動しても、取付片には折曲部が形成されているため取付片の端部がシールド電線と接触することは回避される。したがって、シールド電線が振動しても、取付片の端部とシールド電線の部位とが擦れ合うことはなくシールド電線が損傷することは回避される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基板と前記ケースとの間に、前記基板と前記ケースとの間の間隔を一定に保持する接地用スペーサが前記基板及び前記ケースに当接する状態で設けられていることを要旨とする。
【0011】
例えば、基板が締結部材(例えば、ねじ)だけを介して接地されている場合、締結部材によって基板をケースに締結する際や締結後に締結部材に振動が加えられた際に、締結部材と基板との接触が線接触となるおそれがあるため接触状態が不安定である。しかし、この発明では、基板及びケースと当接する接地用スペーサが設けられており、接地用スペーサは基板とケースとにそれぞれ面圧が付与された状態で当接するため、接地用スペーサと基板との接触が線接触になり難い。したがって、基板が接続部材だけを介して接地される場合に比べて、基板を接地用スペーサを介して安定して接地させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記接地用スペーサは、樹脂製スペーサと、前記樹脂製スペーサと一体成形された金属製スリーブとを備えていることを要旨とする。
【0013】
この発明では、樹脂製スペーサがケースと基板との間に当接する状態で設けられているため、ケースに加えられた振動は樹脂製スペーサを介して基板に伝達される。この時、樹脂製スペーサは、その共振周波数が基板の共振周波数と異なるため基板と共振することは抑制される。また、樹脂製スペーサは、その硬度が金属製スリーブに比べて低いため振動が基板に伝わるまでに振動の大きさを減衰させることができる。したがって、ケースが振動した場合であってもコネクタと基板との接合部に生じる応力の原因である基板の振動を抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、車両に搭載される電子機器に設けられていることを要旨とする。
この発明では、頻繁に振動する車両に搭載された電子機器に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シールド電線の振動に起因してコネクタに加えられる力を低減するとともに、シールド電線が振動することによって損傷することを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した車両に搭載される電子機器に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、電子機器1においては平面視略矩形状で金属(例えば、アルミニウム)からなる土台2が設けられている。土台2には、車両に搭載するための図示しない装着孔が設けられている。そして、土台2上には基板3を収容可能なハウジング4が設けられている。
【0017】
ハウジング4は、平面視長方形状で、かつ一側部と一側部と連なる上方の一部とが開放された形状に形成された金属製のケース8と、第1ねじ9によってケース8に取付けられる金属製のカバー10とから構成されている。
【0018】
ケース8にはその底部に土台2と直接接する底壁12が設けられ、底壁12には第1、第2壁部14,15が立設されている。第1壁部14はケース8の短手方向(矢印Y1の方向)に沿って延びるように一対設けられている。
【0019】
各第1壁部14には、その上端にケース8の長手方向(矢印Y2の方向)に沿いつつケース8内に向って延びる第1取付片16が設けられている。各第1壁部14に設けられた第1取付片16には第1ねじ孔17が設けられ、第1ねじ孔17はカバー10に設けられた第1挿通孔18と対応する位置にある。両第1壁部14の間には、各第1壁部14と連続する第2壁部15が設けられている。
【0020】
第2壁部15には、その上端にケース8の短手方向に沿って延びるとともに基板3より上方に位置する庇部20が設けられている。庇部20には、その両側に平面視半円弧状で基板3に対する第2ねじ19の取付け及び取外し作業を可能にする作業開口部21が設けられている。庇部20は中央部が長く形成されるとともに、その先端側が屈曲されることで上方へ向って延びる取付片としての第2取付片23が形成されている。第2取付片23の先端部には、第2壁部15側へ折り曲げられた折曲部26が形成されている。第2取付片23は折曲部26より下側で、かつ第2壁部15側とは反対側の面に取付面23aを構成し、取付面23aには一対の第2ねじ孔24が設けられている。
【0021】
また、ケース8にはその内部に接地用スペーサ11を介して基板3が取付けられている。図2に示すように、接地用スペーサ11は樹脂製スペーサ31と、樹脂製スペーサ31にモールドされて一体に成形された金属製のスリーブ30とから構成されている。接地用スペーサ11は基板3の裏面全体と当接して基板3とケース8との間の間隔を一定に保持する。
【0022】
スリーブ30はその長さが樹脂製スペーサ31の厚みと同じであり、基板3の裏側に印刷された図示しないグランドパターンと当接している。スリーブ30には締結部材としての第2ねじ19と螺合可能な雌ねじ部32が形成され、雌ねじ部32は第2挿通孔22及び底壁12に設けられた第3挿通孔33と対応する位置に配置されている。そして、第2挿通孔22、スリーブ30の雌ねじ部32、第3挿通孔33及び土台2に設けられた第4挿通孔34には第2ねじ19が挿通され、第2ねじ19は土台2内に回転不能に収容されたナット37と螺合している。なお、第2ねじ19は第1取付片16によって覆われないように、ケース8の短手方向における第1取付片16の両側に配置されている。また、第2壁部15側における第2挿通孔22、雌ねじ部32及び第3挿通孔33の上方には作業開口部21(図1参照)が存在している。
【0023】
基板3は表面上に図示しない配線が形成されるとともに、図示しない電子部品が表面実装されたプリント基板であり、その4隅には第2挿通孔22が設けられている。そして、図1に示すように、基板3には図示しないコネクタ35が表面実装されている。コネクタ35は基板3の表面上においてその真上に第2取付片23が位置する箇所に設けられている。
【0024】
そして、車両に搭載された図示しない装置と接続されているシールド電線5は、その末端に設けられたプラグ7がコネクタ35に差し込まれてコネクタ35と接続されている。シールド電線5には、取付面23aと対応する部分の被覆体が取り除かれてシールド部としてのシールド編組部6が露出している。
【0025】
そして、金属製の圧着板25にはその両端に取付ねじ27を挿通可能な取付孔28が設けられるとともに、取付孔28によって挟まれた中央部がU字状に湾曲されて凹部29が形成されている。保持部材としての圧着板25は取付ねじ27によって取付面23aに取付けられ、取付けられた圧着板25はシールド電線5のシールド編組部6を押圧する。そして、図1の2点鎖線で示すように、圧着板25が取付面23aに取付けられた状態においては、シールド電線5のシールド編組部6は取付面23aに圧着されるとともに取付面23aと凹部29とによって保持されている。
【0026】
カバー10は第1挿通孔18に挿通された第1ねじ9が第1ねじ孔17と螺合することでケース8に取付けられている。図3に示すように、カバー10はケース8に取付けられた状態において基板3(図1参照)全体を覆うとともに、金属製の第1ねじ9を介してケース8と電気的に接続されることで接地されている。カバー10には、第2取付片23と対応する位置に平面視半円形状の開口部36が設けられている。
【0027】
開口部36はハウジング4内から外部にシールド電線5を導出するために設けられている。したがって、開口部36は、シールド電線5が第2取付片23に固定された状態で、第2取付片23、圧着板25、取付ねじ27及びシールド電線5の通過を許容する大きさに形成されている。
【0028】
なお、この実施形態においては、土台2側を電子機器1の下側とし、カバー10側を電子機器1の上側として説明したが、電子機器1は必ずしも土台2が下側でカバー10が上側となる状態で使用されるとは限らず、例えば、土台2が鉛直状態あるいは傾斜した状態で使用箇所に取付けられる場合もある。
【0029】
次に、前記のように構成された電子機器1の作用を説明する。
土台2が車両のボディに取付けられた状態で車両に搭載された電子機器1は動作している間、信号をシールド電線5内の図示しない信号線からコネクタ35を介して基板3表面上の図示しない電子部品に入力する。この時、シールド編組部6は接地されているため、シールド編組部6はシールド電線5外部の電磁的・静電気的なノイズに対する遮蔽効果をより高めた状態で発揮することができる。また、図示しない信号線によって信号を伝える時、その信号からノイズが放射されることも低減される。さらに、基板3はスリーブ30及びケース8を介して接地されているため、基板3の基準電位は車体の電位と同じに設定され基板3から発生するノイズ自体を低減することもできる。
【0030】
また、車両が振動すると車両の振動に伴ってシールド電線5は、上下に振動することや、図4の二点鎖線で示すように取付面23aと直交する方向に振動することがある。しかし、図4に示すように、第2取付片23及び圧着板25によって、コネクタ35の上方に位置するシールド電線5の部位は保持されているため、シールド電線5に振動が加えられた場合、シールド電線5は保持されている部分より上側の部分だけが振動する。そして、コネクタ35と第2取付片23との間に存在するシールド電線5の部分は振動しない。したがって、車両が振動することによってシールド電線5からコネクタ35に加えられる振動は低減されており、シールド電線5の振動に起因してコネクタ35が基板3表面上から剥離することは抑制される。そして、シールド電線5が上下に振動して撓んだ場合でも、シールド電線5は取付面23aと接触するのみであり、シールド電線5は第2取付片23の端部に形成されている角部23bと接触することはない。したがって、シールド電線5が振動しても第2取付片23の角部23bとシールド電線5とが擦れ合うことはなく、シールド電線5が損傷することは回避される。
【0031】
また、電子機器1が動作すると基板3からはノイズが放射され、そのノイズは電子機器1の外部へ漏出しようとする。しかし、図3に示すように、カバー10が基板3(図1参照)全体を覆っているため、ノイズがカバー10によって遮蔽され、電子機器1の外側に漏洩することは抑制される。また、電子機器1の周辺にノイズを放射する装置があっても外部ノイズがハウジング4内に浸入して基板3が外部ノイズによって悪影響を受けることは抑制される。
【0032】
本実施形態では、次の効果を得ることができる。
(1)シールド電線5のシールド編組部6は取付面23aに圧着された状態で取付面23aと凹部29とによって挟持されている。したがって、シールド編組部6は外部からの電磁的・静電気的なノイズに対する遮蔽効果をより高めた状態で発揮させることができる。
【0033】
(2)コネクタ35の真上に位置するシールド電線5の部位は、第2取付片23及び圧着板25によって保持されている。したがって、シールド電線5の振動に起因してコネクタ35が基板3から剥離することは抑制される。
【0034】
(3)第2取付片23の先端部はシールド電線5側とは反対側に折り曲げられた折曲部26として形成されている。したがって、シールド電線5が振動しても、シールド電線5が第2取付片23の先端部によって傷付けられることは回避される。
【0035】
(4)接地用スペーサとしてのスリーブ30が基板3とケース8との間に設けられ、スリーブ30は基板3とケース8とにそれぞれ当接している。このため、スリーブ30は基板3とケース8とに面圧を付与した状態で接しているため、締結部材としてのねじだけで基板3とケース8とを電気的に接続する場合に比べて接触状態を良好に保つことができる。したがって、基板3の基準電位をスリーブ30を介して安定的にケース8に接地することができる。
【0036】
(5)接地用スペーサ11は金属製のスリーブ30と、樹脂製スペーサ31とから構成され、樹脂製スペーサ31は基板3及びケース8との間に介在し、かつ基板3及びケース8と当接している。したがって、ケース8が振動した場合、その振動は樹脂製スペーサ31を介して基板3に伝達される。そして、樹脂製スペーサ31は、その共振周波数が基板3の共振周波数と異なるため、電子機器1の振動に伴って基板3が共振することは抑制される。また、樹脂製スペーサ31は、その硬度が金属製のスリーブ30に比べて低いため振動を基板3に伝達させるまでに振動の大きさを減衰させることができる。そのため、コネクタ35と基板3との接合部(実装部)に生じる応力の原因となる基板3の振動を抑制できる。
【0037】
(6)頻繁に振動する車両に電子機器1を搭載した場合であっても、電子機器1に不具合が生じることは回避され、電子機器1はその機能を十分に発揮させることができる。
(7)ケース8に取付けられたカバー10は基板3全体を覆っている。したがって、基板3から放射されたノイズがハウジング4の外側に漏出することや、外部からのノイズがハウジング4内部に侵入することによって基板3に悪影響を与えられることは抑制される。
【0038】
(8)放射ノイズを遮蔽する機能を有するカバー10はケース8及び第1ねじ9を介して接地されている。そして、放射ノイズを遮蔽するカバー10を接地すれば、カバー10が放射ノイズを遮蔽する際にそのエネルギーをカバー10によって吸収させることができるので、より効果的に放射ノイズの漏洩を防止する機能を発揮させることができる。
【0039】
(9)樹脂製スペーサ31とスリーブ30とは一体成形されている。ここで、外形が円筒形であるスリーブが樹脂製スペーサと別体に構成される場合、スリーブに形成された雌ねじ部にねじを螺合しようとして回動するとスリーブが空回りするおそれがあり、所定のトルクでねじをスリーブに螺合させることは難しい。しかし、スリーブ30が樹脂製スペーサ31と一体成形されていればスリーブ30は樹脂製スペーサ31によって回り止めされる。したがって、第2ねじ19をスリーブ30の雌ねじ部32に螺合させる際にも空回りすることは抑制され、所望のトルクで第2ねじ19をスリーブ30に螺合させることができる。
【0040】
(10)ケース8はその一側部と一側部と連なる上方の一部とが開放された形状に形成されるとともに、ケース8の開放部からケース8の内部に基板3及び接地用スペーサ11を配置可能に構成されている。したがって、ケース8の構造を基板3に表面実装されたコネクタ35上に第2取付片23が位置する構造にしても、ケース8内に支障なく基板3及び接地用スペーサ11を収容させることができる。
【0041】
(11)図示しない装着孔が設けられている土台2上にハウジング4が設けられている。したがって、土台2をねじ等の締結部材を用いて車両の所定部位に装着させることができるため、車両への電子機器1の搭載が容易である。
【0042】
実施の形態は、前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ ハウジング4が取付けられている土台2を省略してもよい。この場合、例えば、車両の構造部位にブラケットを取付け、ブラケットを接地するとともにブラケットにねじ穴を設ける。そのうえで、第2ねじ19の長さを延長してブラケットに設けられたねじ穴に螺合させれば、土台2が省略された電子機器を車両に搭載させることができる。
【0043】
○ ケース8の形状を変更してもよい。ケース8の形状は、内部に基板3を取付けることができる形状であれば平面視楕円形状や平面視多角形状に変更してもよい。そして、ケース8の形状が変更した場合には、ケース8の形状に対応するようにカバー10の形状も変更してよい。
【0044】
○ シールド部が取付けられる取付片を庇部20の先端側に形成する代わりに、他の部位に形成してもよい。例えば、コネクタ35が第1取付片16の真下近傍に位置している場合には、第1取付片16を延長し、その先端側を略直角に屈曲して上方へ向かって延びるように形成することでシールド編組部6が取付けられる取付片を形成してもよい。
【0045】
○ 保持部材としての圧着板25を構成する材質を変更してもよい。例えば、金属の代わりに樹脂によって圧着板を構成してもよい。
○ 圧着板25の代わりに保持部材としてワイヤを用いてもよい。この場合、取付面23aにシールド電線5のシールド編組部6を押し付けた状態で、ワイヤによって第2取付片23及びシールド編組部6をまとめて縛り付ければシールド電線5は取付面23aに圧着された状態で保持される。
【0046】
○ シールド電線5が備えるシールド部としてシールド編組部6の代わりに、他の部材によってシールド部を構成してもよい。例えば、信号線の周りを覆うように設けられたばら線でシールド部を構成してもよいし、信号線の周りを覆うように設けられたアルミ箔でシールド部を構成してもよい。
【0047】
○ ナット37の取付け位置を変更してもよい。例えば、第2ねじ19の雄ねじ部の長さを延長し、ナット37が土台2の下方で第2ねじ19と螺合するように変更してもよい。
【0048】
○ スリーブ30には雌ねじ部32を形成しなくともよい。この場合であっても、第2ねじ19をスリーブ30の中空部に挿通しナット37と螺合させれば、接地用スペーサ11を介して基板3をケース8に取付けることができる。また、スリーブ30に雌ねじ部32を形成しない場合には、ナット37を省略し、第4挿通孔34の代わりに土台2に有底のねじ穴を設けてもよい。この場合、第2ねじ19を第2挿通孔22、スリーブ30の雌ねじ部32、第3挿通孔33に挿通し、第2ねじ19をねじ穴に螺合させれば接地用スペーサ11を介して基板3をケース8に取付けることができる。
【0049】
○ スリーブ30と樹脂製スペーサ31とを別体に構成してもよい。この場合、例えば、ブロック状で、十分に基板3を支持可能な大きさの樹脂製スペーサと雌ねじ部が形成されていないスリーブとを準備する。そして、樹脂製スペーサ31を基板3と底壁12との間に配置するとともに、スリーブ30を第2挿通孔22及び第3挿通孔33と対応する位置に配置する。樹脂製スペーサ31及びスリーブ30がそれぞれ基板3及び底壁12と当接する状態で基板3をケース8に取付ける。このように構成すれば、スリーブ30によって基板3をケース8を介して接地させることができ、なおかつ、樹脂製スペーサによって基板3が共振することを抑制できる。
【0050】
○ 接地用スペーサ11を構成する樹脂製スペーサ31を省略して、スリーブ30だけで接地用スペーサを構成してもよい。このような場合であっても、スリーブ30は基板3とケース8との間の間隔を保持しつつ基板3及びケース8と当接することができるため、ケース8を介して安定的に基板3を接地させることができる。
【0051】
○ 接地用スペーサ11を省略してもよい。例えば、接地用スペーサ11の代わりに、表面にグランドパターンが形成された基板と絶縁体からなるとともに基板を支持する支持部材とを準備する。そして、基板とケースとの間に支持部材を介在させた状態で、締結部材としてのねじによって基板をケースに締結し、ねじによって基板をケースに接地してもよい。ただし、この場合には、基板とケースとを締結する時にねじがグランドパターンと片当たりの状態で接して線接触となる場合や、電子機器が振動した時にねじがグランドパターンに対して傾いて線接触となる場合があるため、基板の接地状態が不安定である。
【0052】
○ 本発明は、自動車に搭載された電子機器1に限らず、振動が加えられる状態でシールド電線5が使用されシールド電線5を保持する必要がある電子機器であれば適用することができる。そして、本発明のシールド電線の保持構造を適用することにより、シールド電線の損傷を抑制するとともにコネクタが基板から剥離することを抑制できる。また、シールド電線が振動しない状態で使用され、そのシールド電線を保持する電子機器に対して本発明を適用してもよい。
【0053】
以下の技術的思想は前記実施形態から把握できる。
○ 前記基板には前記ケースと電気的に接続されるグランドパターンが形成されており、前記基板は締結部材によって前記ケースに取付けられている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシールド電線の保持構造。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態における電子機器の概略分解斜視図。
【図2】電子機器の模式部分断面図。
【図3】カバーによって基板を遮蔽した状態の電子機器を示す模式斜視図。
【図4】電子機器の模式部分断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…電子機器、3…基板、4…ハウジング、5…シールド電線、6…シールド部としてのシールド編組部、8…ケース、10…カバー、11…接地用スペーサ、23…取付片としての第2取付片、25…保持部材としての圧着板、26…折曲部、30…スリーブ、31…樹脂製スペーサ、35…コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地される金属製ケースと、
前記金属製ケースに収容されるとともに前記金属製ケースを介して接地される状態で取付けられている基板と、
前記基板に表面実装されるとともにシールド電線が接続されるコネクタと、
前記金属製ケースに設けられ、前記シールド電線のシールド部が取付けられており、先端部に前記シールド電線側とは反対側に折曲された折曲部が形成された取付片と、
前記取付片に取付けられ、前記シールド部を前記取付片と電気的に導通させた状態で前記シールド電線を保持する保持部材とを備えているシールド電線の保持構造。
【請求項2】
前記基板と前記ケースとの間に、前記基板と前記ケースとの間の間隔を一定に保持する接地用スペーサが前記基板及び前記ケースに当接する状態で設けられている請求項1に記載のシールド電線の保持構造。
【請求項3】
前記接地用スペーサは、樹脂製スペーサと、
前記樹脂製スペーサと一体成形された金属製スリーブとを備えている請求項2に記載のシールド電線の保持構造。
【請求項4】
車両に搭載される電子機器に設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシールド電線の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−198414(P2008−198414A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30255(P2007−30255)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】