説明

シールプレートを備えたガスタービン燃焼器

【課題】空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工を容易にすると共にシールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保したシールプレートを備えたガスタービン燃焼器の提供。
【解決手段】燃料ノズルと空気孔を備えた空気孔プレートを設けたガスタービン燃焼器において、燃焼器ライナと空気孔プレートとが嵌め合う部分にシール部材を配設し、空気孔プレートに備えた空気孔のうち、燃料ノズルの近傍に位置した空気孔の部分に燃料ノズルと同軸となる直管状に形成した直管部を備え、燃焼室の近傍に位置した空気孔の部分に燃焼室の軸に対して傾斜角を付与した傾斜状に形成した傾斜部を備え、空気孔プレートは、直管部を形成した直管空気孔プレートと傾斜部を形成した傾斜空気孔プレートとの複数の部材によって構成し、直管空気孔プレートの部材の材質は、傾斜空気孔プレートの部材の材質と異なる材質によって形成して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールプレートを備えたガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器で発生するNOxは、窒素含有量の少ない燃料(天然ガスや灯油、軽油等)を用いる場合、空気中の窒素が酸化されて発生するサーマルNOxが大部分である。
【0003】
サーマルNOxの生成は温度依存性が高いため、これらの燃料を使用するガスタービンでは、一般に、火炎温度の低減が低NOx燃焼法の基本思想である。
【0004】
火炎温度を低減する方策として、燃料と空気を予め混合した後に燃焼させる予混合燃焼が知られている。
【0005】
しかし、従来型の予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器の場合は、燃焼用空気の温度が高い場合や、燃料の自発火温度が低い場合などに、予混合器内部で燃料が燃焼する「逆火」が発生する可能性がある。
【0006】
そのため、逆火を防止しつつ、火炎温度を適度に制御して低NOx化を図るために、特許3960166号公報に開示されているような、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流として燃焼室に噴出する技術が有効である。
【0007】
また、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流として燃焼室に噴出させる場合に、空気ノズルプレートに形成した空気流路の一部に傾斜角を持たせることで空気流に旋回をかけて火炎を安定に保持することに加え、その空気流路の上流部には傾斜角を持たない直管部を設けて燃料を直管部内で噴出させて、燃料濃度の非対称性を緩和し十分なNOx低減効果を発揮させるガスタービン燃焼器に関する技術が特開2008−111651号公報に開示されている。
【0008】
また、特開2011−58758号公報には、空気流路となる多数の空気孔を備えた空気ノズルプレートに形成される空気流路を、空気流路の直管部を構成する空気ノズルプレートのベースプレートと、前記空気流路の傾斜部を構成する空気ノズルプレートの旋回プレートとの別部材として構成するガスタービン燃焼器に関する技術が開示されている。
【0009】
一方、前記特開2008−111651号公報に開示された構造のガスタービン燃焼器のバーナを燃焼室に対向して配設させる際には、燃焼室を形成する燃焼器ライナとバーナとの隙間から空気が燃焼室内に漏れることを抑制するため、バーナの外周にシール部材を取り付けることが考えられるが、このようなシール部材の一例が前記特許3960166号公報の図面に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許3960166号公報
【特許文献2】特開2008−111651号公報
【特許文献3】特開2011−58758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開2008−111651号公報に記載されたガスタービン燃焼器のように、一体構造の空気ノズルプレートに空気流路となる空気孔を形成する場合に、空気流路として直管部と旋回角を有する傾斜部とがつながった形状の空気流路を加工することは、空気ノズルプレートの表側と裏側の両側から直管部と傾斜部をそれぞれ機械加工することになるので加工精度を保つことが難しい。しかも、前記した複雑な形状の空気流路を多数、空気ノズルプレートに設けなければならないので、前記した複雑な形状の空気流路の機械加工が非常に困難である。
【0012】
また、特開2011−58758号公報に記載されたガスタービン燃焼器のように、空気流路を形成した空気ノズルプレートを、空気流路の直管部を構成するベースプレートと、前記空気流路の傾斜部を構成する旋回プレートとの2つの別部材として構成する場合、空気ノズルプレートの空気流路の加工は容易となるが、燃焼室を形成する燃焼器ライナとバーナとの隙間から空気が燃焼室内に漏れることを抑制するために、特許3960166号公報に記載されているようなシール部材を燃焼器ライナとバーナとの間に設置した場合には、以下のような課題が生じることになる。
【0013】
即ち、空気流路の直管部を備えた空気ノズルプレートのベースプレートは燃焼室内に直接面していないため、燃焼ガスからの加熱が無い上、空気流路を通過する空気によって冷却されるため、空気流路の傾斜部を備えた空気ノズルプレートの旋回プレート(燃焼ガスに面するため加熱される)に比べて温度が低くなる。
【0014】
一方、燃焼器ライナは内部が燃焼ガスの流路となるため、その温度は傾斜部を備えた空気ノズルプレートの旋回プレートと同等の温度となる。その結果、直管部を備えたベースプレートの外周面と燃焼器ライナの内周面との間の間隙が大きくなり、燃焼器ライナとバーナとの間に設置したシール部材に加わる押し付け力が低下してシール性が悪化する可能性が大きくなる。
【0015】
つまり、直管部と傾斜部を有する空気流路となる空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工の容易性と、空気孔プレートと燃焼器ライナの間隙に設けたシールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保すること、との両立を図ることは非常に困難である。
【0016】
本発明の目的は、直管部と傾斜部を有する空気流路となる空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工を容易にすると共に、空気孔プレートと燃焼器ライナの間隙に設けたシールプレートの変形量を適度に保持して、シールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保することが可能な、シールプレートを備えたガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のシールプレートを備えたガスタービン燃焼器は、気体燃料をガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出する複数の燃料ノズルと、燃焼用空気をガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出する複数の空気孔を備えた空気孔プレートを設け、気体燃料と燃焼用空気を同軸噴流としてガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出するように前記燃料ノズルと空気孔プレートに備えた前記空気孔とが対となるように概略同軸上にそれぞれ配置し、前記ガスタービン燃焼器の燃焼室を形成する燃焼器ライナと前記空気孔プレートとが嵌め合う部分にシール部材を配設し、前記空気孔プレートに備えた複数の空気孔のうち、前記燃料ノズルの近傍に位置し、空気の流れの上流側となる空気孔の部分は前記燃料ノズルと同軸となる直管状に形成した直管部を備え、前記空気孔プレートに備えた複数の空気孔のうち、前記燃焼室の近傍に位置し、空気の流れの下流側となる空気孔の部分は前記燃焼室の軸に対して傾斜角を付与した傾斜状に形成した傾斜部を備え、前記複数の空気孔を設けた空気孔プレートは、前記直管部を形成した直管空気孔プレートと、この直管空気孔プレートの下流側に配置されて前記傾斜部を形成した傾斜空気孔プレートによって構成し、前記直管空気孔プレートの部材の材質は、前記傾斜空気孔プレートの部材の材質と異なる材質によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、直管部と傾斜部を有する空気流路となる空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工を容易にすると共に、空気孔プレートと燃焼器ライナの間隙に設けたシールプレートの変形量を適度に保持して、シールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保することが可能な、シールプレートを備えたガスタービン燃焼器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器の側断と、このガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの全体構成を示した概略構成図。
【図2】図2は図1に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器に設置された燃料ノズルの詳細を示す断面図。
【図3】図3は図1に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器に設置したシール部材を示すもので、ガスタービン燃焼器のバーナを燃焼器ライナ内に挿入する前のシール部材の状況を示す部分断面図。
【図4】図4は図3に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器に設置したシール部材を示すもので、ガスタービン燃焼器のバーナを燃焼器ライナ内に挿入した際のシール部材の状況を示す部分断面図。
【図5】図5は図3に示した本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器に設置したシール部材を示すもので、ガスタービン燃焼器のバーナを燃焼器ライナ内に挿入してガスタービンを燃焼させた場合のシール部材の状況を示す部分断面図。
【図6】比較例のガスタービン燃焼器を燃焼させた場合のシール部材の状況を示す部分断面図。
【図7】図7は本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器の概略構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例であるガスタービン燃焼器について図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器について図1及び図2を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器2の構成を側断面図で示すと共に、本実施例のガスタービン燃焼器2を備えたガスタービンプラントの全体構成を示した概略構成図である。
【0023】
図1に示したように、ガスタービンプラントは、空気101を圧縮して高圧の燃焼用空気102を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される圧縮空気102と燃料(201、202)とを混合して燃焼ガス105を生成するガスタービン燃焼器2と、このガスタービン燃焼器2で生成された燃焼ガス105が導入されて駆動されるガスタービン3と、このガスタービン3の回転によって駆動されて発電する発電機4から構成されている。
【0024】
なお、圧縮機1とガスタービン3及び発電機4とはロータ20によって相互に連結されており、前記ガスタービン3の回転によって圧縮機1を駆動するとともに、圧縮機1に連結された発電機4を駆動するように構成されている。
【0025】
上記ガスタービン燃焼器2は、燃料(201、202)を噴射する多数の燃料ノズル5、各燃料ノズルに対向し燃焼用空気104が通過する空気孔6を多数備えた概略円盤状の空気孔プレート7、空気孔プレート7の下流かつ外周に配置され、空気孔6を出た燃料と空気の混合気を燃焼させる燃焼室8を形成する概略円筒状の燃焼器ライナ9、これらの構成部品を内部に収納する概略円筒状の燃焼器外筒10、燃焼器外筒の端部に配置され燃料ノズル5が取り付けられるとともに燃料の供給流路となっている概略円盤状の燃焼器カバー11から構成されている。
【0026】
圧縮機1で圧縮された空気102は、ガスタービン燃焼器2に流入し、燃焼器外筒10と燃焼器ライナ9の間を流れる。その空気102の一部は、燃焼器ライナ9の冷却空気103として燃焼室8に流入する。
【0027】
また、その空気の残りは燃焼用空気104として空気孔プレート7に設けられた空気孔6を通り、ガスタービン燃焼器2の燃焼室8に流入する。
【0028】
本実施例のガスタービン燃焼器2では、燃料供給系統201および燃料供給系統202が配設され、これらの燃料供給系統201及び燃料供給系統202には、それぞれ遮断弁211、212、及び流量制御弁221、222を備えており、複数設置された燃料ノズル5に供給する燃料流量を個別に制御することができるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、本実施例のガスタービン燃焼器2は複数の燃料ノズル5を備えており、これらの燃料ノズル5は、それぞれの燃料ノズル5に燃料を分配する燃料ヘッダー231、232に接続されている。
【0030】
本実施例のガスタービン燃焼器2では、燃料ヘッダー231は燃焼器軸中心に位置しており、概略円盤状の空間を構成している。また、燃料ヘッダー232は燃料ヘッダー231の周囲に位置しており、概略環状の空間を構成している。
【0031】
これらの燃料ヘッダー231、232には、それぞれ燃料供給系統201、202から燃料を個別に供給している。このような構成により複数設置された燃料ノズル5は、2系統の燃料系統(燃料ヘッダー231に接続するF1群および燃料ヘッダー232に接続するF2群)に群分けすることができ、群分けされた燃料系統をまとめて燃料の供給量を制御することができる。
【0032】
図2に本実施例のガスタービン燃焼器2に設置された燃料ノズル5と、前記燃料ノズル5の近傍に位置し、上流側に配置された円盤状の空気孔プレートを構成する直管空気孔プレート7aに設けられた空気流路の上流側となる空気孔の直管部6aと、燃焼室8の近傍に位置し、下流側に配置された円盤状の空気孔プレートを構成する傾斜空気孔プレート7bに設けられた空気流路の下流側となる旋回角を有する空気孔の傾斜部6bの詳細を示す。
【0033】
上流側に配置された前記直管空気孔プレート7aの材質は、耐熱合金よりも線膨張係数の大きなステンレス鋼で形成され、下流側に配置された前記傾斜空気孔プレート7bの材質は耐熱合金で形成され、前記直管空気孔プレート7aと前記傾斜空気孔プレート7bとが材質の異なる別部材によって形成されている。
【0034】
図2に示した燃料ノズルについて、バーナ中央の燃料ヘッダー231に接続するF1群のうちの1本の燃料ノズル5を例に説明すると、燃料ノズル5は概略円筒状であり、その一端は燃料ヘッダー231に接続しており、燃料ノズル5の内部には燃料ヘッダー231から供給された燃料201が流れる構造となっている。
【0035】
燃料ノズル5の他端は、燃焼室8に面して設置され、上流側に配置された円盤状の空気孔プレートを構成する直管空気孔プレート7aに設けられた空気流路の上流側となる空気孔の直管部6aに対してほぼ同軸上に対向するように配設されており、燃料ノズル5を流下する燃料201は前記直管空気孔プレート7aに形成した空気流路の上流側となる空気孔の直管部6aを通過する空気104に包み込まれて前記直管部6aに流入し、その後、下流側に配置された円盤状の空気孔プレートを構成する傾斜空気孔プレート7bに設けられた空気流路の下流側となる空気孔の傾斜部6bを通過して燃焼室8内へ噴出される。
【0036】
ここで空気孔プレートは、燃料ノズル5の近傍に位置する上流側の直管空気孔プレート7aと、燃焼室8の近傍に位置する下流側の傾斜空気孔プレート7bとの2つのプレート部材から構成されている。
【0037】
燃料ノズル5に近い上流側の直管空気孔プレート7aに設けられた複数の空気孔の直管部6aは、その円筒軸が燃料ノズル5の軸と同軸となっており、空気孔の直管部6aの内部に先端部分が挿入された燃料ノズル5とあいまって、燃料と空気が偏り無く空気孔の直管部6aの内部に流入できるようになっている。
【0038】
一方、ガスタービン燃焼器2の燃焼室8に近い下流側の傾斜空気孔プレート7bに設けられた複数の空気孔の傾斜部6bは、その円筒軸が燃料ノズル5の軸に対してそれぞれ傾斜角を持って、環状に沿って配設されている。
【0039】
この空気孔の傾斜部6bを通って燃焼室8内に噴出される空気流は、個々の空気流の集合体としてバーナ軸周りに旋回がかかるようになっており、燃焼室8内でこの旋回流によって生じる中央の低流速域に火炎が保持されるようになっている。
【0040】
このように、直管空気孔プレート7aに設けられた上流側の空気孔の直管部6aを直管状とすることで燃料と空気の偏りをなくして混合を均一化し、傾斜空気孔プレート7bに設けられた下流側の空気孔の傾斜部6bを傾斜状とすることで全体の保炎性能を向上させることができる。
【0041】
また、この場合、内部に空気孔の直管部6aを形成した前記直管空気孔プレート7aの部材と、内部に空気孔の傾斜部6bを形成した前記傾斜空気孔プレート7bの部材とをそれぞれ別部材として構成することで、空気流路の途中で角度が変化する空気孔の直管部6aと空気孔の傾斜部6bを容易に加工できる。
【0042】
図1に示すように、本実施例のガスタービン燃焼器2においては、バーナ中央の燃料ヘッダー231に接続するF1部分の空気孔プレートを構成する燃料ノズル5の近傍に位置する上流側の直管空気孔プレート7aと、該直管空気孔プレート7aの下流側となる燃焼室8の近傍に位置する傾斜空気孔プレート7bのうち、前記傾斜空気孔プレート7bに形成した空気流路には空気孔の傾斜部6bを設けているが、バーナ中央の周囲となる燃料ヘッダー231の周囲に位置する燃料ヘッダー232に接続するF2部分の空気孔プレートを構成する燃料ノズル5の近傍に位置する上流側の直管空気孔プレート7aと、該直管空気孔プレート7aの下流側となる燃焼室8の近傍に位置する傾斜空気孔プレート7bのうち、前記傾斜空気孔プレート7bに形成した空気流路には空気孔の傾斜部6bが設けられていない。
【0043】
これは、バーナ中央のF1部分では旋回流によって火炎を確実に保炎し燃焼の安定性を確保しているが、その周囲のF2部分の火炎は中央のF1火炎の燃焼熱によって保炎しているため、保炎のための旋回流を必要としていないためである。
【0044】
この結果、F2空気に旋回をかけないことでF2火炎が燃焼器ライナ9に接近することが無く、燃焼器ライナ9を高温の燃焼ガスから保護することができる。
【0045】
前記傾斜空気孔プレート7bに形成した空気孔の傾斜部6bのうち、F2部分の傾斜部6bの傾斜角については、本実施例のガスタービン燃焼器2の構造以外にも、F1部分と同様に全体に旋回をかけることで、バーナ全体としての保炎性を向上させることや、傾斜部6bの傾斜角をライナ軸に対して内向き(軸中央向き)とすることで、F2火炎を燃焼器ライナ9からさらに遠ざけることもできる。
【0046】
いずれにしても、空気孔の傾斜部6bの加工性向上のためには、空気孔の直管部6aのみを設けた直管空気孔プレート7aの部材と、傾斜した空気孔の傾斜部6bを設けた傾斜空気孔プレート7bの複数の部材で空気孔プレート7の部材とをそれぞれ別部材として構成することが肝要である。
【0047】
空気孔の直管部6aを加工した後の直管空気孔プレート7aと、空気孔の傾斜部6bを加工した後の傾斜空気孔プレート7bは、ボルト締結することで一体構造の空気孔プレートを構成することができる。
【0048】
この場合、直管空気孔プレート7aと傾斜空気孔プレート7bの間には微視的な空隙ができるため接触熱抵抗が発生し、燃焼ガスから傾斜空気孔プレート7bに伝わった熱が直管空気孔プレート7aには伝熱しにくくなる。このことは、直管空気孔プレート7aの温度を下げる効果がある。
【0049】
尚、前記したボルト締結以外に、溶接や摩擦接合などによって、接触熱抵抗を生じさせること無く直管空気孔プレート7aと傾斜空気孔プレート7bとを一体化する方法も考えられるが、これらの場合は直管空気孔プレート7aの温度が下がりにくくなる。
【0050】
次に、図3から図5を用いて、本実施例のガスタービン燃焼器2における直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bと、燃焼器ライナ9との間隙に設けたシールプレート12との関係について詳細に説明する。
【0051】
図3は本実施例のガスタービン燃焼器2における直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bを燃焼器ライナ9に挿入する前の状態、即ち、ガスタービン燃焼器2の組立前の状態を示しており、燃焼器ライナ9と、燃料ノズルと空気プレートから構成されるバーナとの隙間から空気が燃焼室8内に漏れることを抑制するために、シールプレート12が上流側の直管空気孔プレート7aの外周面の取り付け位置13aで取り付けられている。
【0052】
図4は本実施例のガスタービン燃焼器2において、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bと燃焼器ライナ9の間隙に設けたシールプレート12について、ガスタービン燃焼器2の直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bを燃焼器ライナ9に挿入した後の状態、即ち、ガスタービン燃焼器2の組立後の状態を示している。
【0053】
この図4では、シールプレート12について、図3に示した直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bが燃焼器ライナ9に挿入前の状態は点線で示しており、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bが燃焼器ライナ9に挿入した後の状態は実線で示し、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bを燃焼器ライナ9に挿入する前後の状態、即ち、ガスタービン燃焼器2の組立前後の状態を比較できるようにしてある。
【0054】
ここで、図3中にhで示したガスタービン燃焼器2の組立前のシールプレート12の高さは、燃焼器ライナ9と直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bとの半径方向の間隙(図4中にHで示した)よりも大きいので、ガスタービン燃焼器2の組立時に直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bを燃焼器ライナ9に挿入した際に、シールプレート12の状態は、図4に点線で示したガスタービン燃焼器2の組立前の状態から、実線で示したガスタービン燃焼器2の組立後の状態に、該シールプレート12を取り付けた直管空気孔プレート7aの外周面の位置13aを支点として半径方向内方に弾性変形する。
【0055】
そして、前記シールプレート12は半径方向内方への弾性変形によって、前記直管空気孔プレート7aの外周面に取り付けられた取り付け位置13aよりも下流側の位置で、このシールプレート12に燃焼器ライナ9の内周面と接触する第1の接触部13bを備えると共に、この第1の接触部13bよりも下流側の位置で前記シール部材12が傾斜空気孔プレート7bの外周面と接触する第2の接触部を備えるように配置される。
【0056】
即ち、前記シールプレート12は、前記燃焼器ライナ外周面に取り付けられた位置13aよりも下流側に位置する第1の接触部13bで燃焼器ライナ9の内周面と接触し、更に傾斜空気孔プレート7bの外面とは第1の接触部13bよりも下流側に位置する第2の接触部13cで接触することでシールの働きをする。
【0057】
このとき前記シールプレート12は、点線で示した変形前の形状から、実線で示した変形後の形状へと弾性変形しているため応力が発生している。また、元の形状に戻ろうとする力でシール性を保っている。
【0058】
ところで、シールプレート12の弾性変形が過剰であると、シール性は保たれるが発生応力が大きくなり、シールプレート12の寿命を損なうことになる。反対にシールプレート12の弾性変形が過小であるとシール性が不足する。そのため、シールプレート12の変形量を適度に保つ必要がある。
【0059】
そこで、図5に、本実施例のガスタービン燃焼器2において、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bと燃焼器ライナ9の間隙に設けたシールプレート12について、ガスタービン燃焼器2の直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bを燃焼器ライナ9に挿入したガスタービン燃焼器2の組立後に、ガスタービン燃焼器を燃焼させた高温時の状況であるガスタービン燃焼器の運転時の状態を示す。
【0060】
図5に示すように、直管空気孔プレート7aの材質を傾斜空気孔プレート7bの材質の耐熱合金よりも線膨張係数の大きなステンレス鋼で形成した場合は、温度が低い直管空気孔プレート7aの半径方向外方への熱伸び量は、点線で示したガスタービン燃焼器の燃焼前の状態から、実線で示したガスタービン燃焼器の燃焼時の状態に線膨張係数が大きい分だけ大きくなる。
【0061】
また、温度が高い傾斜空気孔プレート7bの半径方向外方への熱伸び量は、点線で示したガスタービン燃焼器の燃焼前の状態から、実線で示したガスタービン燃焼器の燃焼時の状態に線膨張係数が小さい分だけ少さくなり、前記傾斜空気孔プレート7bの半径方向外方への熱伸び量と前記傾斜空気孔プレート7bの半径方向外方への熱伸び量が実線で示したように同じ半径方向外方への熱伸び量とすることが可能となる。
【0062】
その結果、シールプレート12についてみると、点線で示したガスタービン燃焼器燃焼前の変形前の状態から、実線で示したガスタービン燃焼器燃焼時の変形後の形状へと弾性変形する。
【0063】
このシールプレート12の変形状態は、図4に示したガスタービン燃焼器組立後のシールプレート12の変形状態の場合と同様となる。
【0064】
そのため本実施例のガスタービン燃焼器2においては、燃料ノズル5の近傍に位置する直管空気孔プレート7aと、前記直管空気孔プレート7aの下流側となる燃焼室の近傍に位置する傾斜空気孔プレート7bとを2つの異なる部材で構成すると共に、前記直管空気孔プレート7aの材質を、前記傾斜空気孔プレート7bの材質である耐熱合金よりも線膨張係数の大きなステンレス鋼で形成することにより、前記シールプレート12の変形量は適度な変形量の範囲に保つことができ、この結果、シールプレート12の寿命を損なうことなく、シールプレート12によって燃焼器ライナと前記直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bとの間で適切なシール性を確保することができる。また、ガスタービン燃焼器2の組立て性を損なう恐れも無くなる。
【0065】
また、直管空気孔プレート7aの材質に使用するステンレス鋼は、耐熱合金に比べると切削加工性が良いため、直管空気孔プレート7aの材料及び傾斜空気孔プレート7bの材料を共に耐熱合金とした場合に比べて加工が容易になる利点もある。
【0066】
更に、直管空気孔プレート7aの材料に使用するステンレス鋼は、耐熱合金に比べると材料コストが安いため、直管空気孔プレート7aの材料及び傾斜空気孔プレート7bの材料を共に耐熱合金とした場合に比べて低コストになる利点もある。
【0067】
本実施例のガスタービン燃焼器2では、図5に示したように、直管空気孔プレート7aは燃焼ガスからの加熱を受けず、燃焼器ライナ9に比べると温度が低いため、直管空気孔プレートに取り付けたシールプレートのほうが低温となり、変形力に対する強度が高まるほか、クリープ変形も発生しにくくなり、シール部材としての信頼性が向上する利点がある。
【0068】
また、直管空気孔プレート7aの円筒の外側にシールプレート12を取り付けることができるので、燃焼器ライナ9の円筒の内側に取り付ける場合に比べると、作業性が良くなる利点もある。
【0069】
次に、図1〜図5に示した上記した本実施例のガスタービン燃焼器についての理解を深めるために、参考までに比較例のガスタービン燃焼器について説明する。
【0070】
図6は比較例のガスタービン燃焼器を燃焼させた場合のシール部材の状況を示す部分断面図であり、空気プレートが直管空気孔プレート7aの部材と、傾斜空気孔プレート7bの部材とを別体に構成し、空気孔の直管部6aを有する直管空気孔プレート7aの材質及び空気孔の傾斜部6bを有する傾斜空気孔プレート7bの材質を、燃焼器ライナ9の材質と同じ耐熱合金で形成している。
【0071】
図6に示した比較例のガスタービン燃焼器では、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bが、燃焼器ライナ9と同一の材質を用いているので、ガスタービン燃焼器が燃焼時に傾斜空気孔プレート7bと燃焼器ライナ9はともに燃焼ガスによって加熱されるため、ほぼ同等の温度となる。
【0072】
一方、直管空気孔プレート7aは燃焼ガスからの加熱を受けないため、直管空気孔プレート7aの温度は傾斜空気孔プレート7bや燃焼器ライナ9の温度よりも低くなる。
【0073】
ところが、これらの部材の材料にはいずれも耐熱合金が使用されているので、傾斜空気孔プレート7bと燃焼器ライナ9の熱伸びは同等となる(図6中の点線から実線への変形)が、直管空気孔プレート7aの熱伸びはライナ9の熱伸びよりも小さくなる。
【0074】
その結果、直管空気孔プレート7aとライナ9の間隙が広がることにより、シールプレート12についてみると、点線で示した変形前の形状から実線で示した変形後の形状の差(変形量)は小さくなってシールプレート12の寿命は保たれるものの、シール性が不足することが懸念される。
【0075】
このようなシールプレート12のシール性の不足に対して、ガスタービン燃焼器の燃焼前の状態においてシールプレート12のつぶれ量を予め大きくしておき、図6に示したガスタービン燃焼器の燃焼時の高温の状態において適度なシール性を確保できるようにすることも考えられが、しかしその場合は、燃焼前にシールプレート12に発生する応力が大きくなるため、シールプレート12の寿命が短くなる。また、燃焼器ライナ9に空気孔プレート7を挿入する際の組立てに必要な力が大きくなるため、特別な機械や工具が必要となってガスタービン燃焼器の組立の容易性を損なうことになる。
【0076】
これに対して上記したように本実施例によれば、直管部と傾斜部を有する空気流路となる空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工を容易にすると共に、空気孔プレートと燃焼器ライナの間隙に設けたシールプレートの変形量を適度に保持して、シールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保することが可能な、シールプレートを備えたガスタービン燃焼器が実現できる。
【実施例2】
【0077】
図7は本発明の第2の実施例であるガスタービン燃焼器2の概略構成を示した部分断面図であり、図1に示した第1実施例のガスタービン燃焼器2と異なる点は、シールプレート12が燃焼器ライナ9の内周面に取り付け位置13a’の位置で取り付けられている点にある。
【0078】
前記シールプレート12は、前記燃焼器ライナ9の内周面に取り付けられた取り付け位置13a’よりも下流側の位置で、このシールプレート12に直管空気孔プレート7aの外周面と接触する第1の接触部13b’を備えると共に、この第1の接触部13b’よりも下流側の位置で前記シール部材12が前記燃焼器ライナ9の内周面と接触する第2の接触部13c’を備えるように配置されることで、シールの働きをしている。
【0079】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃焼時には、燃焼器ライナ9と直管空気孔プレート7aの間隙の変化によってシールプレート12のシール性が影響を受ける。そのため、空気孔プレートを本実施例のように、空気孔の直管部6aを備えた直管空気孔プレート7aと、旋回角を有する空気孔の傾斜部6bを備えた傾斜空気孔プレート7bとの2つの異なる部材で構成すると共に、前記直管空気孔プレート7aの材質を、前記傾斜空気孔プレート7bの材質である耐熱合金よりも線膨張係数の大きなステンレス鋼で形成することにより、前記シールプレート12の変形量は適度な変形量の範囲に保つことができ、この結果、シールプレート12の寿命を損なうことなく、シールプレート12によって燃焼器ライナ9と前記直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bとの間で適切なシール性を確保することができる。
【0080】
また、本実施例のガスタービン燃焼器2を図7に示したような構造とすることで、燃焼器ライナ9に直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bで構成した空気孔プレートを挿入する際のガスタービン燃焼器の組立がスムーズになる利点もある。
【0081】
即ち、ガスタービン燃焼器の組立時に、燃焼器ライナ9の内周面に設置されたシールプレート12は、取り付け位置13a’の位置を基点に第1の接触部13bおよび第2の接触部13c’の位置が図7の右方向にスライドするように変形するため、図7に示したように燃焼器ライナ9にシールプレート12を取り付けて、直管空気孔プレート7a及び傾斜空気孔プレート7bで構成した空気孔プレートを図7の左側から右方向に挿入した場合に、シールプレート12を折り曲げるような組立時の不具合を防止できる。
【0082】
本実施例によれば、直管部と傾斜部を有する空気流路となる空気孔を多数形成した空気孔プレートの加工を容易にすると共に、空気孔プレートと燃焼器ライナの間隙に設けたシールプレートの変形量を適度に保持して、シールプレートの寿命を損なわずに適切なシール性を確保することが可能な、シールプレートを備えたガスタービン燃焼器が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は空気孔プレートと燃焼器ライナとの間にシールプレートを備えたガスタービン燃焼器に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:圧縮機、2:ガスタービン燃焼器、3:タービン、4:発電機、5:燃料ノズル、6a:直管部、6b:傾斜部、7a:直管空気孔プレート、7b:傾斜空気孔プレート7、8:燃焼室、9:燃焼器ライナ、10:燃焼器外筒、11:燃焼器カバー、12:シールプレート、13a、13a’:取り付け位置、13b、13b’:第1の接触部、13c、13c’:第2の接触部、20:ロータ、101:ガスタービン吸い込み空気(大気圧)、102:圧縮空気、103:冷却空気、104:燃焼用空気、105:燃焼ガス、106:タービン排ガス、201:F1燃料、202:F2燃料、211:F1燃料遮断弁、212:F2燃料遮断弁、221:F1燃料制御弁、222:F2燃料制御弁、231:F1燃料ヘッダー、232:F2燃料ヘッダー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料をガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出する複数の燃料ノズルと、燃焼用空気をガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出する複数の空気孔を備えた空気孔プレートを設け、
気体燃料と燃焼用空気を同軸噴流としてガスタービン燃焼器の燃焼室に噴出するように前記燃料ノズルと空気孔プレートに備えた前記空気孔とが対となるように概略同軸上にそれぞれ配置し、
前記ガスタービン燃焼器の燃焼室を形成する燃焼器ライナと前記空気孔プレートとが嵌め合う部分にシール部材を配設し、
前記空気孔プレートに備えた複数の空気孔のうち、前記燃料ノズルの近傍に位置し、空気流路の上流側となる空気孔の部分に前記燃料ノズルと同軸となる直管状に形成した直管部を備え、
前記空気孔プレートに備えた複数の空気孔のうち、前記燃焼室の近傍に位置し、空気流路の下流側となる空気孔の部分に前記燃焼室の軸に対して傾斜角を付与した傾斜状に形成した傾斜部を備え、
前記複数の空気孔を設けた空気孔プレートは、前記直管部を形成した直管空気孔プレートの部材と、この直管空気孔プレートの下流側に配置されて前記傾斜部を形成した傾斜空気孔プレートの部材との複数の部材によって構成し、
前記直管空気孔プレートの部材の材質は、前記傾斜空気孔プレートの部材の材質と異なる材質によって形成されていることを特徴とするシールプレートを備えたガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のシールプレートを備えたガスタービン燃焼器において、
前記直管空気孔プレートの部材の材質は、その線膨張率が前記傾斜空気孔プレートの部材の材質の線膨張率よりも大きな線膨張率を有する材質によって形成されていることを特徴とするシールプレートを備えたガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシールプレートを備えたガスタービン燃焼器において、
前記シール部材は前記直管空気孔プレートの外周面に取り付けられており、更に前記シール部材は前記燃焼器ライナ外周面の取り付け位置よりも下流側の位置で該シール部材が前記燃焼器ライナの内周面と接触する第1の接触部を備えると共に、前記第1の接触部よりも下流側の位置で該シール部材が前記傾斜空気孔プレートの外周面と接触する第2の接触部を備えるように配置されていることを特徴とするシールプレートを備えたガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシールプレートを備えたガスタービン燃焼器において、
前記シール部材は前記燃焼器ライナの内周面に取り付けられており、更に前記シール部材は前記燃焼器ライナ内周面の取り付け位置よりも下流側の位置で該シール部材が前記直管空気孔プレートの外周面と接触する第1の接触部を備えると共に、前記第1の接触部よりも下流側の位置で該シール部材が前記燃焼器ライナ内周面と接触する第2の接触部を備えるように配置されていることを特徴とするシールプレートを備えたガスタービン燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108423(P2013−108423A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253378(P2011−253378)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)