シールリング
【課題】蟻溝12に装着されるシールリング3において、蟻溝12からのシールリング3の脱落や、シールリング3の捩れや誤装着を防止し、蟻溝12への装着性を向上させる。
【解決手段】蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備え、前記挿入部31が、蟻溝12の溝底12cに密接可能な底面31aと、蟻溝12の一方の傾斜立上り面12dに密接可能な側部仰斜面31bと、蟻溝12の他方の傾斜立上り面12eに対して非接触の側部俯斜面31cと、他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。好ましくは、未装着状態における側部仰斜面31bの傾斜角θ3が、蟻溝12の一方の傾斜立上り面12dの傾斜角θ1よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状と略対応するものとする。
【解決手段】蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備え、前記挿入部31が、蟻溝12の溝底12cに密接可能な底面31aと、蟻溝12の一方の傾斜立上り面12dに密接可能な側部仰斜面31bと、蟻溝12の他方の傾斜立上り面12eに対して非接触の側部俯斜面31cと、他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。好ましくは、未装着状態における側部仰斜面31bの傾斜角θ3が、蟻溝12の一方の傾斜立上り面12dの傾斜角θ1よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状と略対応するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蟻溝に装着して使用されるシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や液晶製品の製造装置では、各種真空処理システムを利用し、真空環境下で、半導体デバイスの製造に必要なシリコンウエハの加工プロセスや液晶ガラスの製造プロセスを実行する。図8〜図11は、このような真空環境を創出するための真空チャンバにおけるゲートバルブ、スリットバルブ、チャンバリッド等の開閉部分を密封するために用いられる、従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【0003】
これらの図において、参照符号100は、上述の真空チャンバ等を構成する部材であって、不図示の開口部の外周に沿って、蟻溝101が形成されている。この蟻溝101は、溝肩102,103側の溝幅が相対的に狭く、溝底101c側の溝幅が相対的に広くなるように傾斜した一対の傾斜立上り面101a,101bを有する。
【0004】
図示の従来技術のうち、図8は、蟻溝101に装着したシールリング200がOリングからなるものであり(例えば下記の特許文献1参照)、図9は、蟻溝101に装着したシールリング200が、Oリングの断面形状の一部201を蟻溝101の一方の傾斜立上り面101bに密接嵌合するように膨出させた形状のものであり、図10は、蟻溝101に装着したシールリング200が、溝底101cへの着座部202及びリップ203を有するものであり、図11は、蟻溝101に装着したシールリング200が、溝底101cに密接される平坦な底面204と、その両側から斜め外向きに立ち上がる一対の斜面205,205と、その先端にそれぞれ形成され溝肩102,103の内側(傾斜立上り面101a,101b)に当接される肩部206,206と、更にこの肩部206,206間から半円弧の凸面状に形成され溝肩102,103間から突出した頭部207とを有するものである(例えば下記の特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平4−127460号公報
【特許文献2】特開2003−14126号公報
【0006】
しかしながら、上記従来技術のうち、図8のものは、シールリング200としてOリングを用いているため、チャンバの開閉に伴い、部材100に対して進退する不図示の相手部材との接離が繰り返されることによって、蟻溝101内で捩れを発生しやすく、捩れが著しい場合は、密封性の低下や、シールリング200の破断を生じるおそれがある。また、シールリング200に相手部材との粘着を生じた場合は、チャンバの開放に際して、このシールリング200が相手部材に追随して蟻溝101から飛び出してしまうおそれもある。
【0007】
また、図9又は図10のように、シールリング200を異形断面としたものは、蟻溝101内での捩れを防止するには有効であるが、相手部材との粘着による蟻溝101からの飛び出しを防止するのに有効であるとは言えず、しかも、蟻溝101に正規と異なる姿勢でも装着(誤装着)できるため、誤装着に気付かないおそれがある。
【0008】
更に、図11(特許文献2)によれば、シールリング200に肩部206,206が突設されているため、Oリング等に比較して蟻溝101内への装着性が悪いものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、蟻溝に装着されるシールリングにおいて、蟻溝からのシールリングの脱落や、シールリングの捩れや誤装着を防止し、かつ蟻溝への装着性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1に係る発明は、蟻溝への挿入部と、前記蟻溝から突出する頭部を備え、前記挿入部が、前記蟻溝の溝底に密接される底面と、この底面の内周側及び外周側のうち一方から立ち上がり、前記蟻溝における一方の傾斜立上り面に密接される側部仰斜面と、前記底面の内周側及び外周側のうち他方から立ち上がり、前記蟻溝の内面に対して非接触の側部俯斜面を有するものである。
【0011】
請求項2の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、側部俯斜面と頭部との間にあって、蟻溝における他方の傾斜立上り面の溝肩側の端部に掛止される被掛止凸面を有するものである。
【0012】
請求項3の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、挿入部を、側部仰斜面又は側部俯斜面が溝底に対して垂直になるように捩った時に、この挿入部の溝幅方向の肉厚が、溝肩間の幅以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、蟻溝への未装着状態における側部仰斜面の傾斜角が、前記蟻溝の一方の傾斜立上り面の傾斜角よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状をなすものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るシールリングによれば、蟻溝内への挿入部が、溝底及び一方の傾斜立上り面に密接嵌合されるので、頭部が相手部材と粘着することによる蟻溝からのシールリングの飛び出し・脱落を有効に防止することができ、蟻溝への装着時の捩れや誤装着も防止することができる。
【0015】
請求項2の発明に係るシールリングによれば、蟻溝内への挿入部が、溝底及び一方の傾斜立上り面に密接嵌合されると共に、その反対側の被掛止凸面が他方の傾斜立上り面の上端の溝肩と掛合されるので、相手部材との粘着による蟻溝からの飛び出し・脱落を一層有効に防止することができる。
【0016】
請求項3の発明に係るシールリングによれば、蟻溝に装着する際に、側部仰斜面又は側部俯斜面が溝底に対して垂直になるように捩ることによって、挿入部を溝肩間から溝内へ挿入できるので、容易に装着することができる。
【0017】
請求項4の発明に係るシールリングによれば、蟻溝への装着状態において、未装着状態での断面形状への復元力が、側部仰斜面を、蟻溝における一方の傾斜立上り面へ押し付けるように作用するので、蟻溝との掛合力が増大し、相手部材との粘着による蟻溝からの飛び出し・脱落を、一層有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るシールリングを、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は、本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバを示す概略的な斜視図、図3は、本発明における第一の形態のシールリングを示す装着状態の断面図、図4は、第一の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図、図5は第一の形態のシールリングの装着過程を示す断面図である。
【0019】
図1又は図2に示されるように、半導体製造装置の真空チャンバは、シリコンウエハ等のワーク4を出し入れするための開口部11を有する本体側のハウジング1と、開口部11を開閉する蓋体2を備えており、この蓋体2による閉塞状態において、開口部11の外周を密封状態に保持するためのシールリング3が、ハウジング1又は蓋体2に前記開口部11の外周に沿って形成した後述の蟻溝に装着されている。以下の説明では、便宜上、図1のように、シールリング3がハウジング1側に装着されるものとする。
【0020】
図3に示される第一の形態において、ハウジング1には、開口部11の外周に沿って蟻溝12が形成されている。この蟻溝12は、溝肩12a,12b間の幅が相対的に狭く、溝底12c側の幅が相対的に広くなるように、溝内へ倒れるように角度θ1で傾斜した一対の傾斜立上り面12d,12eを有する。溝肩12a,12bはR面加工がなされている。また、この蟻溝12に装着されたシールリング3は、ゴム状弾性材料で無端状に成形されたものであって、蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備える。
【0021】
詳しくは、シールリング3における挿入部31は、蟻溝12の溝底12cに密接可能な底面31aと、この底面31aの内周側から傾斜角度θ1をなして立ち上がり、蟻溝12の一方(内周側)の傾斜立上り面12dに密接可能な側部仰斜面31bと、前記底面31aの外周側から側部仰斜面31bと略平行に立ち上がり、蟻溝12の他方(外周側)の傾斜立上り面12eと非接触の側部俯斜面31cと、この側部俯斜面31cと前記頭部32との間にあって、前記他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。そして、底面31aに対して側部仰斜面31bのなす角度θ2(=90°−θ1)は、蟻溝12の溝底12cと傾斜立上り面12dがなす角度と同等に形成されている。また、内周側の側部仰斜面31bと頭部32との間の窪み31eは、内周側の溝肩12aと嵌合されるようになっている。
【0022】
挿入部31は、図5に示されるように、側部仰斜面31b又は側部俯斜面31cが蟻溝12の溝底12cに対して垂直になるように捩った時の溝幅方向の肉厚t1、言い換えれば、図4に示されるように側部仰斜面31b及び側部俯斜面31cと直交する方向の肉厚t1が、溝肩12a,12b間の幅w以下となっている。また、被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝肩12a,12b間の溝幅wと同等、好ましくは溝幅wより僅かに大きいものとなっている。
【0023】
一方、シールリング3における頭部32は、挿入部31の窪み31eから被掛止凸面31dにかけて、曲面状の突出形状をなしている。
【0024】
したがって、以上のように構成されたシールリング3を蟻溝12に装着するには、まず、このシールリング3を、図3に示される原形状態から、図5に示されるように、側部仰斜面31b又は側部俯斜面31cが蟻溝12の溝底12cに対して略垂直になるように捩れば、t1<wであることから、シールリング3の挿入部31は溝肩12a,12b間から蟻溝12内へ容易に挿入することができる。このため、挿入部31の挿入後に捩りを解除すれば、ゴムの復元力によって、挿入部31が溝肩12aを支点にして蟻溝12内を変位して、底面31a及び側部仰斜面31bがそれぞれ蟻溝12の溝底12c及び傾斜立上り面12dに密接され、しかも被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝幅wと同等もしくは僅かに大きい程度であるため、被掛止凸面31dが外周側の溝肩12bから溝内へ容易に通過して、傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に当接され、図3に示される装着状態となる。
【0025】
すなわち、この形態のシールリング3によれば、図5のように捩りながら挿入部31を蟻溝12へ挿入するだけで、容易に装着することができるのである。このため、シールリング3が挿入抵抗によって捩れたり、うねりを生じたり、損傷するようなこともない。
【0026】
そして、このシールリング3は、溝肩12a,12b間から突出した頭部32が、図1に示される蓋体2に適当な荷重で密接されることによって、このシールリング3が圧縮され、その反力で、挿入部31における底面31a及び側部仰斜面31bが、適当な面圧で蟻溝12の内面(溝底12c及び傾斜立上り面12d)に密接し、密封機能を発揮するものである。
【0027】
また、このシールリング3は、挿入部31の底面31aと側部仰斜面31bのなす角度θ2(=90°−θ1)が、蟻溝12の溝底12cと傾斜立上り面12dがなす角度と同等であるため、良好な密接嵌合状態となり、捩れを生じない。したがって、安定した密封機能を奏する。
【0028】
また、挿入部31における側部俯斜面31cは、蟻溝12の傾斜立上り面12eから後退していて、両者間には空間Sが存在しているため、シールリング3が蓋体2との密接により圧縮された状態では、この空間Sが、圧縮による挿入部31の逃げ(膨出)を許容する。
【0029】
ここで、図1に示される蓋体2によってシールリング3が圧縮荷重を受けた状態が、比較的長時間にわたって保持された場合は、シールリング3を形成しているゴム状弾性材料の粘着性によって、このシールリング3の頭部32が、前記蓋体2に粘着することがある。そして、このような粘着を生じた状態で、蓋体2がハウジング1から離間する方向(図3における上方)へ移動した場合は、シールリング3も追随して蟻溝12から飛び出す方向へ引っ張られる。しかしながら、シールリング3の挿入部31も、その平坦な底面31aが平坦な溝底12cに粘着し、その粘着面積は、曲面をなす頭部32に比較して大きく、しかも、シールリング3が飛び出し方向へ引っ張られると、挿入部31の側部仰斜面31cが蟻溝12の傾斜立上り面12dに沿って移動しようとするので、傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に対する被掛止凸面31dの掛り代が大きくなる。したがって、蟻溝12からの飛び出しを有効に防止して、確実に蟻溝12に保持することができる。
【0030】
更に、このシールリング3は、断面形状が比較的簡素であるため、簡素な金型(例えば2枚割)によって成形することができ、成形コストを抑えることができる。
【0031】
なお、シールリング3の挿入部31の底面31a及び側部仰斜面31bと、蟻溝12の溝底12c及び傾斜立上り面12dの間には、適当なつぶし代を持たせるようにすることが、一層好ましい。また、窪み31eの内径φ(図4参照)は、内周側の溝肩12aの外径より僅かに小径とすることによって、内径側への張りを持たせても、捩れや飛び出しを防止するのに有効である。
【0032】
次に、図6は、上述した第一の形態によるシールリングを、いわゆる片面蟻溝に装着した例を示す断面図である。すなわち、図6に示される蟻溝(片面蟻溝)12は、内周側が溝内へ倒れるように角度θ1で傾斜した傾斜立上り面12dとなっているのに対し、外周側が垂直立上り面12fとなっている。また、溝肩12a,12b間の幅wは、図3及び図5に示されるものと同等である。
【0033】
したがって、この場合も、シールリング3は、図3に示される原形状態から、図5と同様に捩った状態で挿入部31を溝肩12a,12b間から蟻溝12内へ挿入し、捩りを解除するだけで、ゴムの復元力によって、挿入部31が溝肩12aを支点にして溝内を変位し、底面31a及び側部仰斜面31bがそれぞれ溝底12c及び傾斜立上り面12dに密接され、しかも被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝幅wと同等もしくは僅かに大きい程度であるため、被掛止凸面31dが外周側の溝肩12bから溝内へ容易に通過して、垂直立上り面12fに当接され、図5に示される装着状態となる。
【0034】
また、このような蟻溝12への装着状態においては、蟻溝12の垂直立上り面12fとシールリング3の被掛止凸面31dの間には掛り代が設定されないが、次の理由から、相手材に粘着することにより飛び出し方向へ引っ張られた場合のシールリング3の飛び出しが有効に防止される。
【0035】
すなわち、この場合も、シールリング3の挿入部31における平坦な底面31aと平坦な溝底12cとの粘着面積は、曲面をなす頭部32に比較して大きく、しかも、シールリング3が飛び出し方向へ引っ張られると、挿入部31の側部仰斜面31cが蟻溝12の傾斜立上り面12dに沿って移動しようとするので、垂直立上り面12fに対する被掛止凸面31dの圧接力(摩擦力)が大きくなるからである。
【0036】
次に、図7は、本発明における第二の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。この形態によるシールリング3は、未装着状態における側部仰斜面31bの傾斜角θ3が、蟻溝12において前記側部仰斜面31bが密接される傾斜立上り面12dの傾斜角θ1よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、先に説明した図3に示される装着状態での断面形状を、その断面に沿って角度θ4だけ回転させた形状に略対応するものである(θ4=θ3−θ1)。
【0037】
なお、ここで「略対応」と表現しているのは、シールリング3は、図3に示される装着状態では締め代によってある程度の圧縮変形を受けるので、図7に示される未装着状態の断面形状は、装着状態での断面形状を、その断面に沿って角度θ3だけ回転させた形状と完全に同一ではないからである。
【0038】
したがって詳しくは、この形態によるシールリング3は、蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備え、挿入部31は、蟻溝12の溝底12cに対して密接可能であって未装着状態では角度θ4だけ傾斜した底面31aと、この底面31aの内周側から立ち上がり、蟻溝12の傾斜立上り面12dに密接可能であって未装着状態では角度θ3だけ傾斜した(蟻溝12の傾斜立上り面12dに対して角度θ4だけ傾斜した)側部仰斜面31bと、前記底面31aの外周側から側部仰斜面31bと略平行に立ち上がり、蟻溝12の傾斜立上り面12eと非接触の側部俯斜面31cと、この側部俯斜面31cと前記頭部32との間にあって、前記他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。また、内周側の側部仰斜面31bと頭部32との間の窪み31eは、内周側の溝肩12aと嵌合されるようになっている。
【0039】
この第二の形態のシールリング3によれば、第一の形態と同様、図5のように捩りながら挿入部31を蟻溝12へ挿入するだけで、容易に装着することができ、シールリング3が挿入抵抗によって捩れたり、うねりを生じたり、損傷するようなこともない。
【0040】
また、図3に示される装着状態では、シールリング3は、図7に示される断面形状から、図における時計方向へ、角度θ4だけ捩り変形を受けた状態にあるので、反時計方向への復元力が残留している。そして、この残留復元力によって、シールリング3の挿入部31は、側部仰斜面31bを蟻溝12の傾斜立上り面12dへ押し付けると共に被掛止凸面31dを傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に対する掛り代を増大させるように付勢されるので、蟻溝12からの飛び出しを一層有効に防止して、確実に蟻溝12に保持することができる。
【0041】
したがって、この第二の形態のシールリング3を、先の図6のような蟻溝(片面蟻溝)12に装着した場合も、蟻溝12からの飛び出しを有効に防止することができる。
【0042】
なお、図示の形態では、シールリング3の挿入部31における内周側に側部仰斜面31b、外周側に側部俯斜面31c及び被掛止凸面31dを有するものとしたが、これと対称の断面形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバの一例を示す概略的な斜視図である。
【図2】本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバの他の例を示す概略的な斜視図である。
【図3】本発明における第一の形態のシールリングを示す装着状態の断面図である。
【図4】本発明における第一の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。
【図5】本発明における第一の形態によるシールリングの装着過程を示す断面図である。
【図6】本発明における第一の形態によるシールリングを、片面蟻溝に装着した例を示す断面図である。
【図7】本発明における第二の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。
【図8】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図9】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図10】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図11】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ハウジング
12 蟻溝
12a,12b 溝肩
12c 溝底
12d,12e 傾斜立上り面
12f 垂直立上り面
3 シールリング
31 挿入部
31a 底面
31b 側部仰斜面
31c 側部俯斜面
31d 被掛止凸面
31e 窪み
32 頭部
【技術分野】
【0001】
本発明は、蟻溝に装着して使用されるシールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や液晶製品の製造装置では、各種真空処理システムを利用し、真空環境下で、半導体デバイスの製造に必要なシリコンウエハの加工プロセスや液晶ガラスの製造プロセスを実行する。図8〜図11は、このような真空環境を創出するための真空チャンバにおけるゲートバルブ、スリットバルブ、チャンバリッド等の開閉部分を密封するために用いられる、従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【0003】
これらの図において、参照符号100は、上述の真空チャンバ等を構成する部材であって、不図示の開口部の外周に沿って、蟻溝101が形成されている。この蟻溝101は、溝肩102,103側の溝幅が相対的に狭く、溝底101c側の溝幅が相対的に広くなるように傾斜した一対の傾斜立上り面101a,101bを有する。
【0004】
図示の従来技術のうち、図8は、蟻溝101に装着したシールリング200がOリングからなるものであり(例えば下記の特許文献1参照)、図9は、蟻溝101に装着したシールリング200が、Oリングの断面形状の一部201を蟻溝101の一方の傾斜立上り面101bに密接嵌合するように膨出させた形状のものであり、図10は、蟻溝101に装着したシールリング200が、溝底101cへの着座部202及びリップ203を有するものであり、図11は、蟻溝101に装着したシールリング200が、溝底101cに密接される平坦な底面204と、その両側から斜め外向きに立ち上がる一対の斜面205,205と、その先端にそれぞれ形成され溝肩102,103の内側(傾斜立上り面101a,101b)に当接される肩部206,206と、更にこの肩部206,206間から半円弧の凸面状に形成され溝肩102,103間から突出した頭部207とを有するものである(例えば下記の特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平4−127460号公報
【特許文献2】特開2003−14126号公報
【0006】
しかしながら、上記従来技術のうち、図8のものは、シールリング200としてOリングを用いているため、チャンバの開閉に伴い、部材100に対して進退する不図示の相手部材との接離が繰り返されることによって、蟻溝101内で捩れを発生しやすく、捩れが著しい場合は、密封性の低下や、シールリング200の破断を生じるおそれがある。また、シールリング200に相手部材との粘着を生じた場合は、チャンバの開放に際して、このシールリング200が相手部材に追随して蟻溝101から飛び出してしまうおそれもある。
【0007】
また、図9又は図10のように、シールリング200を異形断面としたものは、蟻溝101内での捩れを防止するには有効であるが、相手部材との粘着による蟻溝101からの飛び出しを防止するのに有効であるとは言えず、しかも、蟻溝101に正規と異なる姿勢でも装着(誤装着)できるため、誤装着に気付かないおそれがある。
【0008】
更に、図11(特許文献2)によれば、シールリング200に肩部206,206が突設されているため、Oリング等に比較して蟻溝101内への装着性が悪いものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、蟻溝に装着されるシールリングにおいて、蟻溝からのシールリングの脱落や、シールリングの捩れや誤装着を防止し、かつ蟻溝への装着性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1に係る発明は、蟻溝への挿入部と、前記蟻溝から突出する頭部を備え、前記挿入部が、前記蟻溝の溝底に密接される底面と、この底面の内周側及び外周側のうち一方から立ち上がり、前記蟻溝における一方の傾斜立上り面に密接される側部仰斜面と、前記底面の内周側及び外周側のうち他方から立ち上がり、前記蟻溝の内面に対して非接触の側部俯斜面を有するものである。
【0011】
請求項2の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、側部俯斜面と頭部との間にあって、蟻溝における他方の傾斜立上り面の溝肩側の端部に掛止される被掛止凸面を有するものである。
【0012】
請求項3の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、挿入部を、側部仰斜面又は側部俯斜面が溝底に対して垂直になるように捩った時に、この挿入部の溝幅方向の肉厚が、溝肩間の幅以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明に係るシールリングは、請求項1に記載の構成において、蟻溝への未装着状態における側部仰斜面の傾斜角が、前記蟻溝の一方の傾斜立上り面の傾斜角よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状をなすものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るシールリングによれば、蟻溝内への挿入部が、溝底及び一方の傾斜立上り面に密接嵌合されるので、頭部が相手部材と粘着することによる蟻溝からのシールリングの飛び出し・脱落を有効に防止することができ、蟻溝への装着時の捩れや誤装着も防止することができる。
【0015】
請求項2の発明に係るシールリングによれば、蟻溝内への挿入部が、溝底及び一方の傾斜立上り面に密接嵌合されると共に、その反対側の被掛止凸面が他方の傾斜立上り面の上端の溝肩と掛合されるので、相手部材との粘着による蟻溝からの飛び出し・脱落を一層有効に防止することができる。
【0016】
請求項3の発明に係るシールリングによれば、蟻溝に装着する際に、側部仰斜面又は側部俯斜面が溝底に対して垂直になるように捩ることによって、挿入部を溝肩間から溝内へ挿入できるので、容易に装着することができる。
【0017】
請求項4の発明に係るシールリングによれば、蟻溝への装着状態において、未装着状態での断面形状への復元力が、側部仰斜面を、蟻溝における一方の傾斜立上り面へ押し付けるように作用するので、蟻溝との掛合力が増大し、相手部材との粘着による蟻溝からの飛び出し・脱落を、一層有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るシールリングを、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は、本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバを示す概略的な斜視図、図3は、本発明における第一の形態のシールリングを示す装着状態の断面図、図4は、第一の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図、図5は第一の形態のシールリングの装着過程を示す断面図である。
【0019】
図1又は図2に示されるように、半導体製造装置の真空チャンバは、シリコンウエハ等のワーク4を出し入れするための開口部11を有する本体側のハウジング1と、開口部11を開閉する蓋体2を備えており、この蓋体2による閉塞状態において、開口部11の外周を密封状態に保持するためのシールリング3が、ハウジング1又は蓋体2に前記開口部11の外周に沿って形成した後述の蟻溝に装着されている。以下の説明では、便宜上、図1のように、シールリング3がハウジング1側に装着されるものとする。
【0020】
図3に示される第一の形態において、ハウジング1には、開口部11の外周に沿って蟻溝12が形成されている。この蟻溝12は、溝肩12a,12b間の幅が相対的に狭く、溝底12c側の幅が相対的に広くなるように、溝内へ倒れるように角度θ1で傾斜した一対の傾斜立上り面12d,12eを有する。溝肩12a,12bはR面加工がなされている。また、この蟻溝12に装着されたシールリング3は、ゴム状弾性材料で無端状に成形されたものであって、蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備える。
【0021】
詳しくは、シールリング3における挿入部31は、蟻溝12の溝底12cに密接可能な底面31aと、この底面31aの内周側から傾斜角度θ1をなして立ち上がり、蟻溝12の一方(内周側)の傾斜立上り面12dに密接可能な側部仰斜面31bと、前記底面31aの外周側から側部仰斜面31bと略平行に立ち上がり、蟻溝12の他方(外周側)の傾斜立上り面12eと非接触の側部俯斜面31cと、この側部俯斜面31cと前記頭部32との間にあって、前記他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。そして、底面31aに対して側部仰斜面31bのなす角度θ2(=90°−θ1)は、蟻溝12の溝底12cと傾斜立上り面12dがなす角度と同等に形成されている。また、内周側の側部仰斜面31bと頭部32との間の窪み31eは、内周側の溝肩12aと嵌合されるようになっている。
【0022】
挿入部31は、図5に示されるように、側部仰斜面31b又は側部俯斜面31cが蟻溝12の溝底12cに対して垂直になるように捩った時の溝幅方向の肉厚t1、言い換えれば、図4に示されるように側部仰斜面31b及び側部俯斜面31cと直交する方向の肉厚t1が、溝肩12a,12b間の幅w以下となっている。また、被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝肩12a,12b間の溝幅wと同等、好ましくは溝幅wより僅かに大きいものとなっている。
【0023】
一方、シールリング3における頭部32は、挿入部31の窪み31eから被掛止凸面31dにかけて、曲面状の突出形状をなしている。
【0024】
したがって、以上のように構成されたシールリング3を蟻溝12に装着するには、まず、このシールリング3を、図3に示される原形状態から、図5に示されるように、側部仰斜面31b又は側部俯斜面31cが蟻溝12の溝底12cに対して略垂直になるように捩れば、t1<wであることから、シールリング3の挿入部31は溝肩12a,12b間から蟻溝12内へ容易に挿入することができる。このため、挿入部31の挿入後に捩りを解除すれば、ゴムの復元力によって、挿入部31が溝肩12aを支点にして蟻溝12内を変位して、底面31a及び側部仰斜面31bがそれぞれ蟻溝12の溝底12c及び傾斜立上り面12dに密接され、しかも被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝幅wと同等もしくは僅かに大きい程度であるため、被掛止凸面31dが外周側の溝肩12bから溝内へ容易に通過して、傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に当接され、図3に示される装着状態となる。
【0025】
すなわち、この形態のシールリング3によれば、図5のように捩りながら挿入部31を蟻溝12へ挿入するだけで、容易に装着することができるのである。このため、シールリング3が挿入抵抗によって捩れたり、うねりを生じたり、損傷するようなこともない。
【0026】
そして、このシールリング3は、溝肩12a,12b間から突出した頭部32が、図1に示される蓋体2に適当な荷重で密接されることによって、このシールリング3が圧縮され、その反力で、挿入部31における底面31a及び側部仰斜面31bが、適当な面圧で蟻溝12の内面(溝底12c及び傾斜立上り面12d)に密接し、密封機能を発揮するものである。
【0027】
また、このシールリング3は、挿入部31の底面31aと側部仰斜面31bのなす角度θ2(=90°−θ1)が、蟻溝12の溝底12cと傾斜立上り面12dがなす角度と同等であるため、良好な密接嵌合状態となり、捩れを生じない。したがって、安定した密封機能を奏する。
【0028】
また、挿入部31における側部俯斜面31cは、蟻溝12の傾斜立上り面12eから後退していて、両者間には空間Sが存在しているため、シールリング3が蓋体2との密接により圧縮された状態では、この空間Sが、圧縮による挿入部31の逃げ(膨出)を許容する。
【0029】
ここで、図1に示される蓋体2によってシールリング3が圧縮荷重を受けた状態が、比較的長時間にわたって保持された場合は、シールリング3を形成しているゴム状弾性材料の粘着性によって、このシールリング3の頭部32が、前記蓋体2に粘着することがある。そして、このような粘着を生じた状態で、蓋体2がハウジング1から離間する方向(図3における上方)へ移動した場合は、シールリング3も追随して蟻溝12から飛び出す方向へ引っ張られる。しかしながら、シールリング3の挿入部31も、その平坦な底面31aが平坦な溝底12cに粘着し、その粘着面積は、曲面をなす頭部32に比較して大きく、しかも、シールリング3が飛び出し方向へ引っ張られると、挿入部31の側部仰斜面31cが蟻溝12の傾斜立上り面12dに沿って移動しようとするので、傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に対する被掛止凸面31dの掛り代が大きくなる。したがって、蟻溝12からの飛び出しを有効に防止して、確実に蟻溝12に保持することができる。
【0030】
更に、このシールリング3は、断面形状が比較的簡素であるため、簡素な金型(例えば2枚割)によって成形することができ、成形コストを抑えることができる。
【0031】
なお、シールリング3の挿入部31の底面31a及び側部仰斜面31bと、蟻溝12の溝底12c及び傾斜立上り面12dの間には、適当なつぶし代を持たせるようにすることが、一層好ましい。また、窪み31eの内径φ(図4参照)は、内周側の溝肩12aの外径より僅かに小径とすることによって、内径側への張りを持たせても、捩れや飛び出しを防止するのに有効である。
【0032】
次に、図6は、上述した第一の形態によるシールリングを、いわゆる片面蟻溝に装着した例を示す断面図である。すなわち、図6に示される蟻溝(片面蟻溝)12は、内周側が溝内へ倒れるように角度θ1で傾斜した傾斜立上り面12dとなっているのに対し、外周側が垂直立上り面12fとなっている。また、溝肩12a,12b間の幅wは、図3及び図5に示されるものと同等である。
【0033】
したがって、この場合も、シールリング3は、図3に示される原形状態から、図5と同様に捩った状態で挿入部31を溝肩12a,12b間から蟻溝12内へ挿入し、捩りを解除するだけで、ゴムの復元力によって、挿入部31が溝肩12aを支点にして溝内を変位し、底面31a及び側部仰斜面31bがそれぞれ溝底12c及び傾斜立上り面12dに密接され、しかも被掛止凸面31dと窪み31eの間の肉厚t2は、溝幅wと同等もしくは僅かに大きい程度であるため、被掛止凸面31dが外周側の溝肩12bから溝内へ容易に通過して、垂直立上り面12fに当接され、図5に示される装着状態となる。
【0034】
また、このような蟻溝12への装着状態においては、蟻溝12の垂直立上り面12fとシールリング3の被掛止凸面31dの間には掛り代が設定されないが、次の理由から、相手材に粘着することにより飛び出し方向へ引っ張られた場合のシールリング3の飛び出しが有効に防止される。
【0035】
すなわち、この場合も、シールリング3の挿入部31における平坦な底面31aと平坦な溝底12cとの粘着面積は、曲面をなす頭部32に比較して大きく、しかも、シールリング3が飛び出し方向へ引っ張られると、挿入部31の側部仰斜面31cが蟻溝12の傾斜立上り面12dに沿って移動しようとするので、垂直立上り面12fに対する被掛止凸面31dの圧接力(摩擦力)が大きくなるからである。
【0036】
次に、図7は、本発明における第二の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。この形態によるシールリング3は、未装着状態における側部仰斜面31bの傾斜角θ3が、蟻溝12において前記側部仰斜面31bが密接される傾斜立上り面12dの傾斜角θ1よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、先に説明した図3に示される装着状態での断面形状を、その断面に沿って角度θ4だけ回転させた形状に略対応するものである(θ4=θ3−θ1)。
【0037】
なお、ここで「略対応」と表現しているのは、シールリング3は、図3に示される装着状態では締め代によってある程度の圧縮変形を受けるので、図7に示される未装着状態の断面形状は、装着状態での断面形状を、その断面に沿って角度θ3だけ回転させた形状と完全に同一ではないからである。
【0038】
したがって詳しくは、この形態によるシールリング3は、蟻溝12内への挿入部31と、蟻溝12から突出する頭部32を備え、挿入部31は、蟻溝12の溝底12cに対して密接可能であって未装着状態では角度θ4だけ傾斜した底面31aと、この底面31aの内周側から立ち上がり、蟻溝12の傾斜立上り面12dに密接可能であって未装着状態では角度θ3だけ傾斜した(蟻溝12の傾斜立上り面12dに対して角度θ4だけ傾斜した)側部仰斜面31bと、前記底面31aの外周側から側部仰斜面31bと略平行に立ち上がり、蟻溝12の傾斜立上り面12eと非接触の側部俯斜面31cと、この側部俯斜面31cと前記頭部32との間にあって、前記他方の傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に掛止される被掛止凸面31dを有する。また、内周側の側部仰斜面31bと頭部32との間の窪み31eは、内周側の溝肩12aと嵌合されるようになっている。
【0039】
この第二の形態のシールリング3によれば、第一の形態と同様、図5のように捩りながら挿入部31を蟻溝12へ挿入するだけで、容易に装着することができ、シールリング3が挿入抵抗によって捩れたり、うねりを生じたり、損傷するようなこともない。
【0040】
また、図3に示される装着状態では、シールリング3は、図7に示される断面形状から、図における時計方向へ、角度θ4だけ捩り変形を受けた状態にあるので、反時計方向への復元力が残留している。そして、この残留復元力によって、シールリング3の挿入部31は、側部仰斜面31bを蟻溝12の傾斜立上り面12dへ押し付けると共に被掛止凸面31dを傾斜立上り面12eの溝肩12b側の端部に対する掛り代を増大させるように付勢されるので、蟻溝12からの飛び出しを一層有効に防止して、確実に蟻溝12に保持することができる。
【0041】
したがって、この第二の形態のシールリング3を、先の図6のような蟻溝(片面蟻溝)12に装着した場合も、蟻溝12からの飛び出しを有効に防止することができる。
【0042】
なお、図示の形態では、シールリング3の挿入部31における内周側に側部仰斜面31b、外周側に側部俯斜面31c及び被掛止凸面31dを有するものとしたが、これと対称の断面形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバの一例を示す概略的な斜視図である。
【図2】本発明に係るシールリングが用いられる半導体製造装置の真空チャンバの他の例を示す概略的な斜視図である。
【図3】本発明における第一の形態のシールリングを示す装着状態の断面図である。
【図4】本発明における第一の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。
【図5】本発明における第一の形態によるシールリングの装着過程を示す断面図である。
【図6】本発明における第一の形態によるシールリングを、片面蟻溝に装着した例を示す断面図である。
【図7】本発明における第二の形態のシールリングを示す未装着状態の断面図である。
【図8】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図9】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図10】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【図11】従来技術によるシールリングの装着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ハウジング
12 蟻溝
12a,12b 溝肩
12c 溝底
12d,12e 傾斜立上り面
12f 垂直立上り面
3 シールリング
31 挿入部
31a 底面
31b 側部仰斜面
31c 側部俯斜面
31d 被掛止凸面
31e 窪み
32 頭部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟻溝(12)への挿入部(31)と、前記蟻溝(12)から突出する頭部(32)を備え、前記挿入部(31)が、前記蟻溝(12)の溝底(12c)に密接される底面(31a)と、この底面(31a)の内周側及び外周側のうち一方から立ち上がり、前記蟻溝(12)における一方の傾斜立上り面(12d)に密接される側部仰斜面(31b)と、前記底面(31a)の内周側及び外周側のうち他方から立ち上がり、前記蟻溝(12)の内面に対して非接触の側部俯斜面(31c)を有することを特徴とするシールリング。
【請求項2】
側部俯斜面(31c)と頭部(32)との間にあって、蟻溝(12)における他方の傾斜立上り面(12e)の溝肩(12b)側の端部に掛止される被掛止凸面(31d)を有することを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項3】
挿入部(31)を、側部仰斜面(31b)又は側部俯斜面(31c)が溝底(12c)に対して垂直になるように捩った時に、この挿入部(31)の溝幅方向の肉厚(t1)が、溝肩(12a,12b)間の幅(w)以下であることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項4】
蟻溝(12)への未装着状態における側部仰斜面(31b)の傾斜角(θ3)が、前記蟻溝(12)の一方の傾斜立上り面(12d)の傾斜角(θ1)よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状に略対応することを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項1】
蟻溝(12)への挿入部(31)と、前記蟻溝(12)から突出する頭部(32)を備え、前記挿入部(31)が、前記蟻溝(12)の溝底(12c)に密接される底面(31a)と、この底面(31a)の内周側及び外周側のうち一方から立ち上がり、前記蟻溝(12)における一方の傾斜立上り面(12d)に密接される側部仰斜面(31b)と、前記底面(31a)の内周側及び外周側のうち他方から立ち上がり、前記蟻溝(12)の内面に対して非接触の側部俯斜面(31c)を有することを特徴とするシールリング。
【請求項2】
側部俯斜面(31c)と頭部(32)との間にあって、蟻溝(12)における他方の傾斜立上り面(12e)の溝肩(12b)側の端部に掛止される被掛止凸面(31d)を有することを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項3】
挿入部(31)を、側部仰斜面(31b)又は側部俯斜面(31c)が溝底(12c)に対して垂直になるように捩った時に、この挿入部(31)の溝幅方向の肉厚(t1)が、溝肩(12a,12b)間の幅(w)以下であることを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【請求項4】
蟻溝(12)への未装着状態における側部仰斜面(31b)の傾斜角(θ3)が、前記蟻溝(12)の一方の傾斜立上り面(12d)の傾斜角(θ1)よりも大きくなるように、未装着状態における断面形状が、装着状態における断面形状をその断面に沿って回転させた形状に略対応することを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−321922(P2007−321922A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154884(P2006−154884)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
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