説明

シール剤配置方法およびそれに用いる減圧容器

【課題】シール剤を配置したい部分に気泡を残存させずにシール剤を配置することにより、シール切れやシール不良等の発生を低減するとともにシール剤配置量を安定化する。
【解決手段】本発明のシール剤配置方法は、シール剤の配置の準備工程として、シリンジ33内に収容したシール剤32中の泡を除去する第1工程と、シール剤供給ユニット38を減圧ポンプ40に接続して、シリンジ33内を所定の気圧に減圧する第2工程と、シール剤供給ユニット38をセットした減圧容器30の容器部31内を所定の気圧に減圧した後、シリンジ33内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にしたときに生じる差圧によって、シリンジ33に接続された配管35内およびシール剤供給ノズル36内にシール剤32を収容する第3工程とを順次行った後、シール剤供給ユニット38を取り出して、シール剤供給装置に装着して、シール剤32を前記所定の部分に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール剤を所定の部分に配置するシール剤配置方法、および、それに用いる減圧容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシール剤配置方法として、シール剤を配置したい部分にシール剤をディスペンサーで塗布して配置する方法がある。この従来方法では、脱泡したシール剤をシリンジに充填し、このシリンジに接続した塗布ノズルからシール剤を供給しながらシール剤を配置したい部分に塗布して配置していた。
シール剤を配置したい部分の代表としては、ディスプレイパネルの外周部のような、パネル構造体の基板間の空間部に外部から湿分などが入り込まないようにしたい部分がある。また、ディスプレイパネルとしては、粒子群などの表示媒体を駆動させる表示方式のものや、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示方式のものや、プラズマ表示方式のものや、液晶表示方式のものなどがあるが、何れの方式のものも表示媒体をパネル基板間の空間に収納しているため、表示媒体収納空間に湿分などの外部環境の影響が及ばないようにするために、パネル外周部にシール剤を配置している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のシール剤配置方法は、シリンジに充填したシール剤中に気泡が存在するとシール性能が損なわれる問題を有している。すなわち、上記従来のシール剤配置方法では、シリンジに充填した脱泡済みのシール剤を塗布ノズルに搬送供給する際に、脱泡済みのシール剤の中に再度気泡ができてしまうことがあり、その場合、気泡入りのシール剤が塗布されてしまい、好ましくない。
例えば、シール剤を配置してパネル基板を貼り合わせた直後に図11(a)に示す状態にしても、シール剤中に気泡があった場合には、シール剤の硬化後には、図11(b)に示すように基板とシール剤との間に隙間が空くことがある。
【0004】
本発明は、シール剤を配置したい部分にシール剤を配置する際に、シール剤中に気泡を残存させないようにすることにより、シール切れやシール不良等の発生を低減するとともにシール剤配置量を安定化する技術(シール剤配置方法およびそれに用いる減圧容器)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のシール剤配置方法は、シール剤を所定の部分に配置するシール剤配置方法であって、前記シール剤の配置の準備工程として、シリンジ内を減圧して、シリンジ内に収容したシール剤中の泡を除去する第1工程と、前記シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットを、減圧ポンプに接続することによって、前記シリンジ内を所定の気圧に減圧する第2工程と、前記シール剤供給ユニットをセットした減圧容器内を所定の気圧に減圧した後、前記シリンジ内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にして、そのときに生じる差圧によって、前記シリンジに接続された前記配管内および前記シール剤供給ノズル内にシール剤を収容する第3工程と、を順次行った後、前記シール剤供給ユニットを前記減圧容器から取り出して、シール剤供給装置に装着して、シール剤を前記所定の部分に配置することを特徴とする。
【0006】
上記本発明のシール剤塗布方法の好適例としては、前記所定の減圧気圧が、大気圧より0.08Pa以上減圧されていること、がある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の減圧容器は、減圧ポンプと接続された配管および大気と接続された配管を有する減圧容器であって、シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットのシリンジ内と、大気または減圧ポンプとの接続を切換可能に配置したバルブ付きの配管である第1の配管と、一端が前記減圧容器に接続され、他端が前記第1の配管の減圧ポンプとの接続経路の途中と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第2の配管と、一端が前記減圧容器に接続され、他端が大気と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第3の配管と、前記減圧容器内の圧力を測定する圧力測定器と、を有するとともに、前記シール剤供給ユニットを装着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明のシール剤配置方法によれば、シール剤を所定の部分に配置する準備工程として、シリンジ内を減圧して、シリンジ内に収容したシール剤中の泡を除去する第1工程と、前記シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットを、減圧ポンプに接続することによって、前記シリンジ内を所定の気圧に減圧する第2工程と、前記シール剤供給ユニットをセットした減圧容器内を所定の気圧に減圧した後、前記シリンジ内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にして、そのときに生じる差圧によって、前記シリンジに接続された前記配管内および前記シール剤供給ノズル内にシール剤を収容する第3工程と、を順次行った後、前記シール剤供給ユニットを前記減圧容器から取り出して、シール剤供給装置に装着して、シール剤を前記所定の部分に配置するから、その際に用いるシール剤中には気泡が残存しない状態となる。したがって、シール切れやシール不良等の発生を低減するとともにシール剤配置量を安定化するシール剤配置方法を提供することができる。
【0009】
上記本発明の減圧容器によれば、減圧ポンプと接続された配管および大気と接続された配管を有する減圧容器であって、シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットのシリンジ内と、大気または減圧ポンプとの接続を切換可能に配置したバルブ付きの配管である第1の配管と、一端が前記減圧容器に接続され、他端が前記第1の配管の減圧ポンプとの接続経路の途中と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第2の配管と、一端が前記減圧容器に接続され、他端が大気と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第3の配管と、前記減圧容器内の圧力を測定する圧力測定器と、を有するとともに、前記シール剤供給ユニットを装着可能であるから、前記本発明のシール剤配置方法に適した減圧容器となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明のシール剤配置方法を好適に適用できる一例となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルについて説明する。この帯電粒子移動方式のディスプレイパネルでは、対向する2枚の基板間の空間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、ディスプレイパネルを設計する必要がある。このようなパネル構造体では、パネル内部に外部環境からの影響が及ばないようにシール剤を配置することが重要である。
【0012】
本発明のシール剤配置方法を好適に適用して作製したパネル構造体の一例として帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの例を、図1(a),(b)〜図4(a),(b)、図5(a)〜(d)に基づき説明する。
【0013】
図1(a),(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(画素電極)と基板2に設けた電極6(画素電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。電極は、基板の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0014】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。電極は、基板の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0015】
図3(a)、(b)に示す例では、ライン電極が対向直交交差して形成する画素電極対をそれぞれ配置した3個のセルで表示単位(1ドット)を構成するカラー表示の例を示している。図3(a)、(b)に示す例では、帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体としてはセル21−1〜21−3の全てに白色表示媒体3Wと黒色表示媒体3Bとを充填し、第1のセル21−1の観察者側に赤色カラーフィルター22Rを設け、第2のセル21−2の観察者側に緑色カラーフィルター22Gを設け、第3のセル21−3の観察者側に青色カラーフィルター22Bを設け、第1のセル21−1、第2のセル21−2および第3のセル21−3の3個のセルで表示単位(1ドット)を構成している。本例では、カラー表示を行う際に、図3(a)に示すように、観察者側に、第1セル21−1〜第3のセル21−3の全てにおいて白色表示媒体3Wを移動することで、観察者に対し白色ドット表示を行うか、あるいは、図3(b)に示すように、観察者側に、第1セル21−1〜第3のセル21−3の全てにおいて黒色表示媒体3Bを移動することで、観察者に対し黒色ドット表示を行っている。なお、図3(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各セルにおける表示媒体の移動のさせ方で、多色カラー表示が行える。
【0016】
図4(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される1種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5と黒色電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させる。そして、図4(a)に示すように、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図4(b)に示すように、黒色電極6の色を観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図4(a)、(b)に示す例では、手前にある隔壁は省略している。電極として無色透明電極を用い、電極の下に黒色板を配置した構成にしても同様の表示が行える。
【0017】
図5(a)〜(d)に示す例では、まず、図5(a)、(c)に示すように、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1の外側に設けた外部電界形成手段7と基板2の外側に設けた外部電界形成手段8との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図5(b)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図5(d)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図5(a)〜(d)において、手前にある隔壁は省略している。また、基板1の内側には導電部材9を設けるとともに、基板2の内側には導電部材10を設けている。これら導電部材は設けなくてもよい。
本発明のシール剤配置方法は、上述したようなパネル構造体のパネル空間と外部環境との境シール剤を配置するときに特に好適な方法として用いることができる。
【0018】
以下、本発明のシール剤配置方法をディスプレイパネルの製造方法に適用した場合について詳細に説明する。図6は本発明のシール剤配置方法のシール剤配置の準備工程に用いる減圧容器の一例の構成を示す図である。本発明の減圧容器30は、図6に示すように、減圧容器容器部31と、シリンジ33とシール剤供給ノズル(以下、ノズルという)36とを配管35を介して接続したシール剤供給ユニット38のシリンジ33内と、大気または減圧ポンプ40との接続を切換可能に配置したシリンジ内大気開放バルブ37およびシリンジ内減圧バルブ39付きの配管である第1の配管34と、一端が減圧容器容器部31に接続され、他端が第1の配管34の減圧ポンプ40との接続経路の途中と接続されるように配置した減圧容器内減圧バルブ42付きの配管である第2の配管41と、一端が減圧容器容器部31に接続され、他端が大気と接続されるように配置した減圧容器内大気開放バルブ44付きの配管である第3の配管43と、減圧容器容器部31内の圧力を測定する圧力測定器45と、を有するとともに、シール剤供給ユニット38を装着可能に構成されている。なお、上記ノズル36の近傍(下部)には、シール剤を配置する基板(ディスプレイパネルを構成する2枚のパネル基板)を載置する部材(図示せず)が設けられているものとする。
【0019】
上記ディスプレイパネルとする2枚の基板(パネル基板)としては、ガラス基板、樹脂シート基板、樹脂フィルム基板等が挙げられ、他のパネル構造体のパネル板としても、ガラス板、樹脂板、ガラスシート、樹脂シート、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0020】
次に、図6を用いて、本発明のシール剤配置方法について説明する。本発明のシール剤配置方法は、シール剤を配置したい部分へシール剤を配置する準備工程として、「シリンジ33内を減圧して、シリンジ33内に収容したシール剤32中の泡を除去する第1工程」と、「シリンジ33とシール剤供給ノズル36とを配管35を介して接続したシール剤供給ユニット38を、減圧ポンプ40に接続することによって、シリンジ33内を所定の気圧に減圧する第2工程」と、「シール剤供給ユニット38をセットした減圧容器容器部31内を所定の気圧に減圧した後、シリンジ33内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にして、そのときに生じる差圧によって、シリンジ33に接続された配管35内およびシール剤供給ノズル36内にシール剤32を収容する第3工程」と、を順次行った後、シール剤供給ユニット38を減圧容器30から取り出して、図示しないシール剤供給装置(ディスペンサー等)に装着して、シール剤32を所定の部分に配置することを特徴としている。なお、「所定の部分」とは、図7(a)、(b)に斜線を付けて示すように、ディスプレイパネルの最外周隔壁の外側の部分である。以下、図面に基づいて各工程をさらに詳しく説明する。
【0021】
[第1工程]
まず、シール剤32をシリンジ33に充填する。次に、シール剤32を充填したシリンジ33を遠心分離機等にかけて、シリンジ33中のシール剤32を脱泡する。これにより、シリンジ33に充填したシール剤32中の内の泡が除去される。なお、「脱泡済みシール剤32を充填したシリンジ33」を予め所定数用意しておくことが、作業効率を高める上で好ましい。
【0022】
[第2工程]
まず、図8(a)に示すように、配管35を介してノズル36をシリンジ33に接続して、シール剤供給ユニット38とする。次に、シール剤供給ユニット38のシリンジ33部を図6に示す減圧容器30の配管34(第1の配管)に接続する。次に、配管34(第1の配管)に設けられたシリンジ内大気開放バルブ37および配管43(第3の配管)に設けられた減圧容器内大気開放バルブ44を閉じ、配管34(第1の配管)に設けられたシリンジ内減圧バルブ39および減圧容器容器部31内を開放するとともに減圧ポンプ40を作動させることにより、シリンジ33内のシール剤上部の空間を所定の減圧気圧にした後、安定化する。その際の減圧気圧は、大気圧より0.08Pa以上減圧にすればよい。
【0023】
[第3工程]
まず、図8(b)に示すように、シール剤供給ユニット38のシリンジ33内を所定の減圧気圧に保持した状態で、シリンジ内減圧バルブ39を閉じるとともにシリンジ内大気開放バルブ37を開放することにより、減圧容器容器部31内を大気圧にして、差圧を生じさせる。この差圧によって、シリンジ33内に充填された脱泡済みシール剤32が配管35を経てノズル36に供給され、配管35内およびノズル36内に脱泡済みシール剤32が収容された状態になるので、次に、ノズル36の先端よりシール剤32が出てきたことで、ノズル36内にシール剤32が充填されたことを確認してから、減圧容器内減圧バルブ42を閉じるとともに減圧容器内大気開放バルブ44を開放する。その後、大気圧に戻った時点で(大気圧に戻ったことは、圧力測定器45で確認する)、配管35を介してノズル36が接続されたシリンジ33を減圧容器30から取り出す。これにより、配管35を介してノズル36が接続されたシリンジ33は、配管35内およびノズル36内に泡の無いシール剤32が収容された状態になる。
【0024】
[シール剤を基板に配置する工程(別装置;シール剤供給装置を用いる)]
まず、図8(c)に示すように、配管35内およびノズル36内に泡の無いシール剤32が収容されたシリンジ33を、図示しないシール剤配置装置(ディスペンサー等)に接続(セット)する。次に、シール剤配置装置(ディスペンサー等)を作動させることにより、大気圧下で、シール剤配置対象部材である2枚の基板の周辺部にシール剤32を配置する。ディスペンサーを用いる場合には、シール剤を塗布して配置することができる。
【0025】
本発明のシール剤配置方法および該方法を適用したディスプレイパネルの製造方法によれば、シール剤32を所定の部分に配置する準備工程として、シリンジ33内を減圧して、シリンジ33内に収容したシール剤32中の泡を除去する第1工程と、シリンジ33とシール剤供給ノズル36とを配管35を介して接続したシール剤供給ユニット38を、減圧ポンプ40に接続することによって、シリンジ33内を所定の気圧に減圧する第2工程と、シール剤供給ユニット38をセットした減圧容器容器部31内を所定の気圧に減圧した後、シリンジ33内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にして、そのときに生じる差圧によって、シリンジ33に接続された配管35内およびシール剤供給ノズル36内にシール剤32を収容する第3工程と、を順次行った後、シール剤供給ユニット38を減圧容器30から取り出して、シール剤供給装置に装着して、シール剤32を前記所定の部分に配置するから、その際に用いるシール剤中には気泡が残存しない状態となる。したがって、シール切れやシール不良等の発生を低減するとともにシール剤配置量を安定化するシール剤配置方法を提供することができる。したがって、図7に示すディスプレイパネルのようなパネル構造体に適用した場合には、図9(a)に示すように配置した気泡が残存しないシール剤が硬化することになるので、図9(b)に示すように硬化後のシール剤が2枚のパネル基板間を確実にシールすることになり、図11(b)に示すような基板とシール剤との間に隙間は生じず、シール切れ不良の発生を低減するとともにシール剤配置量を安定化するシール剤配置方法となる。
また、本発明の減圧容器は、図6に示すように構成されているから、本発明のシール剤配置方法および該方法を適用したディスプレイパネルの製造方法に適したシール剤供給装置となる。
【0026】
以下、本発明の対象となるディスプレイパネルを構成する各部材について図7および図9を用いて説明する。
【0027】
基板(パネル基板)としては、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフィン(PES)、アクリル等の 有機高分子系基板や、ガラスシート、石英シート、金属シート等を用い、表示面側にはこのうち透明なものを用いる。基板の厚みは、2〜2000μmが好ましく、さらに5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型ディスプレイパネルとする場合に不都合がある。
【0028】
必要に応じて基板に設ける電極や導電部材の形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピローラ、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、金属箔をラミネートする方法(例えば圧延銅箔法)や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極や導電部材は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、表示面側基板に設ける電極や導電部材の厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。背面側基板に設ける電極や導電部材の厚みは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はないので、金属電極や金属部材も好適に用いられる。
【0029】
隔壁については、表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され設けるが、表示媒体の種類によっては隔壁を設けないこともできる。隔壁の形状は、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは5〜500μm、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm、特に好ましくは10〜50μmに調整される。隔壁の高さは基板間距離と同じにするが、部分的に基板間距離よりも低くすることもできる。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図10に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示状態の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載するディスプレイパネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0030】
帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として気体中空間で駆動させる方式のディスプレイパネルでは、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a),(b)〜図4(a),(b)、図5(a)〜(d)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分、ディスプレイパネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるようにディスプレイパネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、ディスプレイパネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール剤、シール方法として本発明の方法を施すことが肝要である。
【0031】
本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm、特に好ましくは10〜50μmに調整される。シール性を高めるには基板間ギャップは狭い方が好ましく、表示媒体を収納する部分よりもシール部となる部分の基板間ギャップを狭めることも好適に実施できる。
対向する基板間の気体中空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のシール剤配置方法は、様々な装置、機器において外部環境との接触を避けるためにシール剤を配置するときに好適に用いられる。
特に、板やフィルムなどのシートを貼り合わせたパネル構造体のパネル空間に外部環境から湿分が浸入するのを防ぐために用いるシール剤の配置方法として好適である。
前記パネル構造体としては、種々の方式のディスプレイパネルがあり、これらディスプレイパネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(PersonalDigital Assistants )と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(PointOf Presence 、Point Of Purchase advertising )、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、外部電界形成手段によって表示を書き換える表示部(いわゆるリライタブルペーパー)としても好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a),(b)は本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの原理的構成を示す図である。
【図2】(a),(b)は本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの原理的構成を示す図である。
【図3】(a),(b)は本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの原理的構成を示す図である。
【図4】(a),(b)は本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの原理的構成を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の対象となる帯電粒子移動方式のディスプレイパネルの原理的構成を示す図である。
【図6】本発明のシール剤配置方法のシール剤配置の準備工程に用いる減圧容器の一例の構成を示す図である。
【図7】(a)、(b)は本発明のシール剤配置方法をディスプレイパネルの製造方法に適用した場合のシール剤を配置したい所定の部分を説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、本発明のシール剤配置方法の第2工程、第3工程およびシール剤を基板に配置する工程を説明するための図である。
【図9】(a),(b)は本発明のシール剤配置方法の効果を説明するための図である。
【図10】本発明の対象となるディスプレイパネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【図11】(a)、(b)は従来のシール剤配置方法における不具合を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
1、2 基板
3W 白色表示媒体
3B 黒色表示媒体
3Wa 負帯電性白色粒子
3Ba 正帯電性黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7,8 外部電界形成手段
9,10 導電部材
21−1 第1のセル
21−2 第2のセル
21−3 第3のセル
22R 赤色カラーフィルター
22G 緑色カラーフィルター
22B 青色カラーフィルター
30 減圧容器
31 減圧容器容器部
32 シール剤(脱泡済みシール剤)
33 シリンジ
34 第1の配管
35 配管(シリンジとノズルとを接続する配管)
36 シール剤供給ノズル(ノズル)
37 シリンジ内大気開放バルブ
38 シール剤供給ユニット
39 シリンジ内減圧バルブ
40 減圧ポンプ
41 第2の配管
42 減圧容器内減圧バルブ
43 第3の配管
44 減圧容器内大気開放バルブ
45 圧力測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール剤を所定の部分に配置するシール剤配置方法であって、
前記シール剤の配置の準備工程として、
シリンジ内を減圧して、シリンジ内に収容したシール剤中の泡を除去する第1工程と、
前記シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットを、減圧ポンプに接続することによって、前記シリンジ内を所定の気圧に減圧する第2工程と、
前記シール剤供給ユニットをセットした減圧容器内を所定の気圧に減圧した後、前記シリンジ内を所定の減圧気圧に保持した状態から大気開放した状態にして、そのときに生じる差圧によって、前記シリンジに接続された前記配管内および前記シール剤供給ノズル内にシール剤を収容する第3工程と、
を順次行った後、
前記シール剤供給ユニットを前記減圧容器から取り出して、シール剤供給装置に装着して、シール剤を前記所定の部分に配置することを特徴とするシール剤配置方法。
【請求項2】
前記所定の減圧気圧が、大気圧より0.08Pa以上減圧されていることを特徴とする請求項1に記載のシール剤配置方法。
【請求項3】
減圧ポンプと接続された配管および大気と接続された配管を有する減圧容器であって、
シリンジとシール剤供給ノズルとを配管を介して接続したシール剤供給ユニットのシリンジ内と、大気または減圧ポンプとの接続を切換可能に配置したバルブ付きの配管である第1の配管と、
一端が前記減圧容器に接続され、他端が前記第1の配管の減圧ポンプとの接続経路の途中と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第2の配管と、
一端が前記減圧容器に接続され、他端が大気と接続されるように配置したバルブ付きの配管である第3の配管と、
前記減圧容器内の圧力を測定する圧力測定器と、
を有するとともに、前記シール剤供給ユニットを装着可能であることを特徴とする減圧容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−285603(P2009−285603A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142642(P2008−142642)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】