シール材
【課題】真空保持性と耐腐食ガス性を長期的に維持できるシール材を提供すること。
【解決手段】腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7とからなる。耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状である。弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有するものである。かつ、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設した。
【解決手段】腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7とからなる。耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状である。弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有するものである。かつ、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置等に使用される耐腐食ガス性に優れたシール材に係り、特には、シール性に加え、耐プラズマ性、耐腐食性を兼ね備えたシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置に使用されるシール材は、真空環境を作り出すために、一般にフッ素ゴムのOリングが用いられていたが、このOリングは、半導体のドライエッチングや液晶パネルの表面処理プロセスに於て、反応性ガス(具体的には、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化硫黄)雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は、反応性ガスと酸素ガスとの混合気体雰囲気下でのプラズマ処理という過酷な条件に曝されるため、劣化(腐食)して発塵し、半導体ウエハー上にコンタミ(不純物・異物)を付着させる原因となっていた。
一方、耐腐食ガス性(耐反応ガス性及び耐プラズマ性)を有する材料には、フッ素樹脂等が挙げられるが、フッ素樹脂は弾性が小さいので、シール性が充分でなく接面漏れが発生し、真空を保持する目的には使用できなかった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するため、図11に示すように、従来の装着溝に装着されるOリングは、合成ゴムの部位40と耐腐食性材料の部位41とから成り、合成ゴムの部位40を大気22側に配置し、耐腐食性材料の部位41を腐食ガス21側に配置することで、耐腐食性材料の部位41は合成ゴムの部位40を腐食ガス21から保護し、合成ゴムの部位40は真空を維持できた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−2328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図11に示した従来のシール材は断面が円形であるため、そのOリングが相手部材20から圧縮荷重を受けた圧縮使用状態に於て、耐腐食性材料の部位41は装着溝及び相手部材20に密着する範囲が少ない。従って、合成ゴムの部位40と耐腐食性材料の部位41との隣接部分で、耐腐食性材料の部位41は、合成ゴムを腐食ガス21から完全に保護することができず、長期的に合成ゴムの劣化を抑止して真空を維持することができない問題があった。具体的には、シール面に樹脂(耐腐食性材料の部位41)が存在すると、(i)接面漏れを起こす。
また、(ii)シール面に2種類の材料(樹脂とゴム)が混在するので、シール性が不安定であり、例えば、ねじれがあると、樹脂(耐腐食性材料の部位41)のみがシール面に存在することになり、シール性が格段に低下したり、逆に、ゴム(合成ゴムの部位40)のみがシール面に存在する場合、腐食性ガスの種類によっては、耐性がなく、シール性を保つことができなくなるという問題があった。
そこで、本発明は、真空保持性(密封性)と耐腐食ガス性を具備し、その真空保持性(密封性)と耐腐食ガス性を長期的に維持できるシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るシール材は、開口部と、第1側壁面と、第2側壁面と、底壁面とを、有する環状の装着溝内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室側の第1側壁面に対向して配設される耐腐食用リングと、第2側壁面側に配設される弾性シール本体と、から成り、上記耐腐食用リングは、装着未圧縮状態に於て第2側壁面側に拡大しつつ開口する勾配面を有する嵌込凹部を備えた横断面形状略C字状であり、上記弾性シール本体は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面側に膨出する弧状部と、上記底壁面側と上記開口部に相対的に接近する相手部材側にそれぞれ膨出する突隆部と、上記嵌込凹部内に挿嵌される突部と、を有し、上記突部の上記底壁面側の端面を該底壁面と平行に配設すると共に、上記突部の上記相手部材側の端面を該相手部材と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面と各端面に対向する上記嵌込凹部の上記勾配面との間に三角形状隙間を形成したものである。
【0006】
また、開口部と、相互に該開口部側に近づくにつれて接近する第1側壁面・第2側壁面と、底壁面とを、有する環状の蟻溝形の装着溝内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室側の第1側壁面に対向して配設される耐腐食用リングと、第2側壁面側に配設される弾性シール本体と、から成り、上記耐腐食用リングは、装着未圧縮状態に於て第2側壁面側に拡大しつつ開口する勾配面を有する嵌込凹部を備えた横断面形状略C字状であり、上記弾性シール本体は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面側に膨出する弧状部と、上記底壁面側と上記開口部に相対的に接近する相手部材側にそれぞれ膨出する突隆部と、上記嵌込凹部内に挿嵌される突部と、を有し、上記突部の上記底壁面側の端面を該底壁面と平行に配設すると共に、上記突部の上記相手部材側の端面を該相手部材と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面と各端面に対向する上記嵌込凹部の上記勾配面との間に三角形状隙間を形成したものである。
【0007】
また、上記突隆部は、上記装着溝の底壁面と上記相手部材に圧接する平坦部を有する横断面略矩形状とした。
【0008】
また、装着未圧縮状態に於て、上記底壁面側の上記平坦部は、上記耐腐食用リングの底壁面側の端縁より底壁面側へ突出し、上記相手部材側の上記平坦部は、上記耐腐食用リングの相手部材側の端縁より相手部材側へ突出して形成された。
【0009】
また、装着未圧縮状態に於て、上記耐腐食用リングの上記底壁面・相手部材側の両端縁は、その接線が上記第2側壁面側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている。
【0010】
また、上記耐腐食用リングはフッ素樹脂から成り、上記弾性シール本体はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成っている。
また、半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係るシール材によれば、耐腐食用リングは、腐食ガスが弾性シール本体側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体は、大気が腐食ガス側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体は腐食ガスによって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部の底壁面側の端面を底壁面と平行に配設すると共に、突部の相手部材側の端面を相手部材と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リングの両端縁は、底壁面・相手部材とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体の各端面と勾配面との間に三角形状隙間を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リングの両突出端部が弾性シール本体(の突部)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リングは横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材と相手部材との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガスが弾性シール本体に接触することを防ぎ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態に示す図面に基づき本発明を詳説する。
本発明のシール材は、主に半導体の製造や液晶パネルの表面処理に用いられるプラズマエッチング装置に使用されるものである。
図1〜図3に示す第1の実施形態に於て、図1と図3に示す23はシール取付部材であり、シール取付部材23は装着溝5を具備し、装着溝5は、開口部4と、相互にその開口部4に近づくにつれて接近する第1側壁面1・第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の横断面台形の蟻溝である。また、第1の実施形態では、装着溝5は、第1側壁面1を内周側に配設し、第2側壁面2を外周側に配設している。なお、この環状には円形状、矩形状及びその他の形状も含まれる。
【0013】
本発明はその装着溝5内に装着される(全体が環状の)シール材30であって、図1と図3に示す20は装着溝5の開口部4に相対的に接近する相手部材である。また、シール取付部材23と相手部材20のそれぞれ向かい合う対向面23a,20a、及び、シール取付部材23の底壁面3は、互いに平行に配設されている。
【0014】
図1は、シール材30が装着溝5内に装着されシール材30が相手部材20から圧縮荷重を受けていない状態──装着未圧縮状態──を示し、図2は、シール材30が装着溝5へ装着される前の状態──自由状態──を示す。また、図3は、シール材30が装着溝5内に装着されて相手部材20から圧縮荷重を受けている状態──圧縮使用状態──を示す。
【0015】
図1に示す装着未圧縮状態に於て、Zは、反応性ガス(具体的には、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化硫黄)やプラズマ状態にあるガス等が含まれる腐食ガス21を収納する腐食ガス収納室であり、第1側壁面1は腐食ガス収納室Z側に配置され、第2側壁面2は大気22側に配置されている。
シール材30は、第1側壁面1側に(接近又は接触するように)配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に(接近又は接触するように)配設される弾性シール本体7と、から成り、言い換えると、耐腐食用リング6は内周側に配置され、弾性シール本体7は外周側に配置されている。
【0016】
図1に於て、耐腐食用リング6は、横断面形状略C字状に形成され、第2側壁面2側──大気側──に(テーパ状に)拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する(環状の)嵌込凹部8を備えている。即ち、嵌込凹部8は、底部24と、底部24の両端から第2側壁面2側へ互いに離間するように延伸する勾配面17,18と、から形成されている。また、耐腐食用リング6の底壁面3・相手部材20側の両端縁12,13は、その接線X,Yが第2側壁面2側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている。
【0017】
弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て、第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、耐腐食用リング6の上記嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有している。
【0018】
突部10の底壁面3側の端面15は底壁面3と平行に配設され、相手部材20側の端面16は相手部材20(の対向面20a)と平行に配設されている。つまり、突部10の両端面15,16は互いに平行に配設されている。
そして、突部10の各端面15,16と各端面15,16に対向する勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19が設けられている。
【0019】
また、突隆部11,11は、底壁面3と相手部材20に圧接(接触)する平坦部14,14を有する横断面略矩形状に形成されている。
そして、装着未圧縮状態に於て、底壁面3側の平坦部14は、耐腐食用リング6の底壁面3側の端縁12より底壁面3側へ突出して配置され、相手部材20側の平坦部14は、耐腐食用リング6の相手部材20側の端縁13より相手部材20側へ突出して配置されている。
【0020】
図2に示す自由状態に於て、耐腐食用リング6と弾性シール本体7の形状について詳しく説明する。なお、図2の(A)は耐腐食用リング6の嵌込凹部8に弾性シール本体7の突部10を嵌め込んだ状態───嵌込組付状態───の断面図、(B)は分解した弾性シール本体7の断面図、(C)は分解した耐腐食用リング6の断面図を示す。なお、耐腐食用リング6と弾性シール本体7とを、嵌め合わせる前後では、それぞれの形状の変化はほとんど生じない。
耐腐食用リング6の嵌込凹部8の底部24は、弧状の凹曲面に形成され、嵌込凹部8の反対側には半円弧状の圧着面部25が形成されている。また、耐腐食用リング6の両端に有する突出端部28,28の厚さ寸法は、その先端へ向かうにつれて大きく(厚く)なるように設定されている。
【0021】
弾性シール本体7の突部10の先端部には、図2(A)に示す嵌込組付状態で、嵌込凹部8の底部24と対向する弧状の凸曲面部26が形成され、凸曲面部26と底部24との間には逃げ用空間部27が設けられ、シール材30を装着溝5に容易に装着することができるようになっている。
【0022】
また、耐腐食用リング6は、PFA、FEP、PTFE等のフッ素樹脂製であり、中でも、耐腐食性の点でPTFEが最も好ましい。弾性シール本体7は、公知のゴム材料であれば良く、具体的には、シリコーンゴム製、フッ素ゴム製、又はニトリルゴム製等が適用でき、中でも、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が優れている点で、シリコーンゴム製、フッ素ゴム製が好ましい。さらに、シール材30が物理的劣化(イオン化した原子が弾性シール本体7を削り取るように傷つけること)の起こり易い箇所に装着される場合は、弾性シール本体7はシリコーンゴム製であることが好ましく、シール材30が化学的劣化(反応性ガスが弾性シール本体7に接触し、腐食劣化させること)の起こり易い箇所に装着される場合は、弾性シール本体7はフッ素ゴム製であることが好ましい。
【0023】
さらに、弾性シール本体7は、特に酸素プラズマ処理(酸素ラジカル状態)の環境下で用いられる場合、以下に記す耐酸素プラズマ性に優れた(ア)又は(イ)の素材から成型されることが好ましい。
(ア)は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、又は、及び、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体 100重量部に対して、硫酸バリウム20〜100 重量部を配合して成る組成物をポリオール加硫した素材である。
(イ)は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、又は、及び、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体 100重量部に対して、さらに四フッ化エチレン樹脂 0.5〜30重量部を配合して成る素材である。
【0024】
また、本発明のシール材が酸素ラジカルが発生する箇所、言い換えれば、プラズマが少なく酸素ラジカルが存在する箇所に配設される場合は、耐腐食用リング6の素材として、(耐プラズマ性と耐酸素ラジカル性を有する)上記フッ素樹脂を適用する方が好ましい。
【0025】
図10に示すように、本発明が使用されるプラズマエッチング装置等は、腐食ガス収納室Zを有し、腐食ガス収納室(反応管)Z内に配設されたプラズマを除去するための内管(エッチトンネル)44内では、N2 Oと希ガス、N2 とO2 と希ガス、又は、O2 と希ガスをプラズマ励起し、酸素励起活性種として酸素ラジカルが発生する。
つまり、プラズマと酸素ラジカルが混在するガスを、腐食ガス収納室Zで発生させ、腐食ガス収納室Zの内管(エッチトンネル)44でプラズマを除去し、酸素ラジカルのみにて半導体ウエハーの表面処理(エッチング等)を行う。表面処理後、内管44内の酸素ラジカルは、開閉扉46aを開放し配管45cから排出され、一方、表面処理された半導体ウエハーは、別の開閉扉46bを開けて取り出される。
【0026】
具体的には、例えば、本シール材30が、腐食ガス収納室Zと配管45aとの連結部Lや、腐食ガス収納室Zに通ずる配管45a,45b同士の連結部M等(のプラズマと酸素ラジカルが混在する場所)に配設される場合は、耐腐食用リング6の材質として耐プラズマ性に優れたシリコーンゴム製を適用することが好ましく、一方、本シール材30が、酸素ラジカルを排出する配管45cと腐食ガス収納室Zとの連結部(開閉扉46aの密閉部)Pや、半導体ウエハーを取り出す開閉扉46bの密閉部Q等(のプラズマが少ない場所)に配設される場合は、耐腐食用リング6をフッ素樹脂製とすることが望ましい。
【0027】
図4と図5に示す第2の実施の形態に於て、図4は装着未圧縮状態を示す。また、図5は分解した自由状態を示し、(A)は弾性シール本体7の断面図であり、(B)は耐腐食用リング6の断面図である。
この場合、環状の装着溝5の第1側壁面1は外周側に配設され、第2側壁面2は内周側に配設されている。そして、第1側壁面1(外周)側には、耐腐食用リング6が配置され、第2側壁面2(内周)側には、弾性シール本体7が配置されている。
なお、図4と図5に於て、図1・図2と同一の符号は図1・図2と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0028】
図6と図7に示す第3の実施の形態に於て、図6は装着未圧縮状態を示し、図7は圧縮使用状態を示す。
装着溝5の第1側壁面1と第2側壁面2は、底壁面3に直交して形成されている。即ち、装着溝5は、第1側壁面1と第2側壁面2が互いに平行に配設された横断面正方形又は長方形に形成された環状の溝である。
また、装着溝5の第1側壁面1は内周側に配設され、第2側壁面2は外周側に配設されている。そして、第1側壁面1(内周)側には、耐腐食用リング6が配設され、第2側壁面2(外周)側には、弾性シール本体7が配設されている。
なお、図6と図7に於て、図1・図3と同一の符号は図1・図3と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0029】
また、第1側壁面1と第2側壁面2が底壁面3に直交して形成される環状の装着溝5に於て、耐腐食用リング6を外周側に配設し、弾性シール本体7を内周側に配設した(第1側壁面1を外周側に配設し、第2側壁面2を内周側に配設した)シール材を本発明の第4の実施形態としてもよい(図示省略)。
【0030】
本発明のシール材は設計変更自由であり、弾性シール本体7の素材として、上記のものの他に、エチレン−プロピレンゴム又は水素添加ニトリルゴムを適用してもよい。
【0031】
図8と図9は比較例を示し、図8は装着未圧縮状態を示し、図9は圧縮使用状態を示す。
図8に於て、この比較例のシール材50は、蟻溝型の装着溝5内に装着されており、第1側壁面1に対向して配設される弾性シール本体70と、第2側壁面2に対向して配設される耐腐食用リング60と、から成っている。
比較例のシール材50の弾性シール本体70は、本発明のシール材30の弾性シール本体7と同一形状であるが、比較例のシール材50が有する耐腐食用リング60は、本発明が有する耐腐食用リング6と形状が異なっている。
【0032】
以下、比較例の耐腐食用リング60と本発明が有する耐腐食用リング6との相違点について説明する。
まず、比較例の耐腐食用リング60は略C字状に形成されているが、嵌込凹部80は第2側壁面2側へ向かって互いに平行に配設される平行面62,62を有し、本発明のような勾配面17,18を有していない(図1参照)。言い換えれば、耐腐食用リング60の両突出端部61,61は、装着未圧縮状態で、弾性シール本体70の突部71との間に隙間は設けられておらず、接触して配設されている。
また、耐腐食用リング60の底壁面3側と相手部材20側の端縁には、平坦面部63,63が形成され、各平坦面部63,63は底壁面3と平行に配設されている。
【0033】
比較例のシール材50が圧縮荷重を受け図9に示す圧縮使用状態となった場合、耐腐食用リング60は弾性変形して、両突出端部61,61の先端が弾性シール本体70の突部71の基部へ食い込む(応力集中が生じる)。そして、突部71の基部が局部的に圧縮されることにより、破損原因となるクラックが発生し、シール性が短期間で低下する。
また、平坦面部63,63と底壁面3・相手部材20との間に隙間49,49が生じ完全に密着しないので、収納室Zからの腐食ガス21が弾性シール本体70側へ漏れ、弾性シール本体70が劣化し易い。
即ち、比較例のシール材50では、製品寿命が短く、長期的にシール性を維持できないものである。
なお、図8と図9に於て、図1・図3と同一の符号は同様の構成であるので説明を省略する。
【0034】
上述した本発明のシール材の使用方法(作用)について説明する。
まず、図2(A)に示すように、耐腐食用リング6の嵌込凹部8内に、弾性シール本体7の突部10を挿嵌して組み合わせ、自由状態にあるシール材30を形成する。
次に、突部10の先端(凸曲面部26)と嵌込凹部8の底部24とが接近又は接触するように、シール材30を圧縮しながら装着溝5内に押し込んで装着し、図1に示す装着未圧縮状態とする。
【0035】
そして、シール取付部材23と相手部材20とを相対的に接近させると、シール材30は圧縮荷重を受け図3に示すように圧縮使用状態になる。この時、耐腐食用リング6は圧縮弾性変形して、圧着面部25は底壁面3・第1側壁面1・相手部材20に密着する。詳しくは、圧着面部25の両端縁12,13が底壁面3・相手部材20とそれぞれ密着し、圧着面部25の中間部が第1側壁面1と密着している。そして、嵌込凹部8の勾配面17,18は、凸突部10の端面15,16とそれぞれ密着し、隙間19,19(図1参照)は消滅する。
【0036】
また、弾性シール本体7の突隆部11,11は、圧縮荷重により圧縮され潰され、平坦部14,14は、底壁面3・相手部材20と高い面圧にて密着する。そして、弾性シール本体7の圧縮弾性変形による体積移動にて、弧状部9は第2側壁面2側へさらに膨出し第2側壁面2と密着する。
【0037】
以上のように、本発明のシール材は、開口部4と、第1側壁面1と、第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の装着溝5内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7と、から成り、耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状であり、弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有し、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、各端面15,16と各端面15,16に対向する嵌込凹部8の勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体7は腐食ガス21によって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体7の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体7の各端面15,16と勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両突出端部28,28が弾性シール本体7(の突部10)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リング6は横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材23と相手部材20との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガス21が弾性シール本体7に接触することを防ぎ得る。
【0038】
また、開口部4と、相互に開口部4側に近づくにつれて接近する第1側壁面1・第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の蟻溝形の装着溝5内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7と、から成り、耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状であり、弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有し、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、各端面15,16と各端面15,16に対向する嵌込凹部8の勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体7は腐食ガス21によって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体7の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体7の各端面15,16と勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両突出端部28,28が弾性シール本体7(の突部10)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リング6は横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材23と相手部材20との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガス21が弾性シール本体7に接触することを防ぎ得る。
【0039】
また、突隆部11,11は、装着溝5の底壁面3と相手部材20に圧接する平坦部14,14を有する横断面略矩形状としたので、圧縮使用状態に於て、平坦部14,14が底壁面3と相手部材20に確実に密着でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【0040】
また、装着未圧縮状態に於て、底壁面3側の平坦部14は、耐腐食用リング6の底壁面3側の端縁12より底壁面3側へ突出し、相手部材20側の平坦部14は、耐腐食用リング6の相手部材20側の端縁13より相手部材20側へ突出して形成されたので、圧縮使用状態に於て、突隆部11,11が圧縮荷重により圧縮され潰されることにより、弾性シール本体7の平坦部14,14は底壁面3と相手部材20に高い面圧にて密着できる。これにより、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【0041】
また、装着未圧縮状態に於て、耐腐食用リング6の底壁面3・相手部材20側の両端縁12,13は、その接線X,Yが第2側壁面2側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されているので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ確実に圧着して、密封性を一層向上させることができる。
【0042】
また、耐腐食用リング6はフッ素樹脂から成り、弾性シール本体7はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成るので、耐腐食用リング6は、耐腐食ガス性───耐反応ガス性及び耐プラズマ性───を長期的に維持でき、弾性シール本体7は、真空維持力(弾発力)を長期的に維持できる。このことにより、耐腐食用リング6と弾性シール本体7の劣化による発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
【0043】
半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられるので、反応性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は、反応性ガスと酸素ガスの混合気体雰囲気下に於て、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側に接触するのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図2】自由状態を示す断面図であって、(A)は耐腐食用リングの嵌込凹部に弾性シール本体の突部を嵌め込んだ状態の断面図、(B)は弾性シール本体の断面図、(C)は耐腐食用リングの断面図である。
【図3】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図5】自由状態を示す断面図であって、(A)は弾性シール本体の断面図、(B)は耐腐食用リングの断面図である。
【図6】第3の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図7】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図8】比較例を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図9】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図10】説明用の概略図である。
【図11】従来のシール材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 第1側壁面
2 第2側壁面
3 底壁面
4 開口部
5 装着溝
6 耐腐食用リング
7 弾性シール本体
8 嵌込凹部
9 弧状部
10 突部
11 突隆部
12 端縁
13 端縁
14 平坦部
15 端面
16 端面
17 勾配面
18 勾配面
19 隙間
20 相手部材
X 接線
Y 接線
Z 腐食ガス収納室
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置等に使用される耐腐食ガス性に優れたシール材に係り、特には、シール性に加え、耐プラズマ性、耐腐食性を兼ね備えたシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置に使用されるシール材は、真空環境を作り出すために、一般にフッ素ゴムのOリングが用いられていたが、このOリングは、半導体のドライエッチングや液晶パネルの表面処理プロセスに於て、反応性ガス(具体的には、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化硫黄)雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は、反応性ガスと酸素ガスとの混合気体雰囲気下でのプラズマ処理という過酷な条件に曝されるため、劣化(腐食)して発塵し、半導体ウエハー上にコンタミ(不純物・異物)を付着させる原因となっていた。
一方、耐腐食ガス性(耐反応ガス性及び耐プラズマ性)を有する材料には、フッ素樹脂等が挙げられるが、フッ素樹脂は弾性が小さいので、シール性が充分でなく接面漏れが発生し、真空を保持する目的には使用できなかった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するため、図11に示すように、従来の装着溝に装着されるOリングは、合成ゴムの部位40と耐腐食性材料の部位41とから成り、合成ゴムの部位40を大気22側に配置し、耐腐食性材料の部位41を腐食ガス21側に配置することで、耐腐食性材料の部位41は合成ゴムの部位40を腐食ガス21から保護し、合成ゴムの部位40は真空を維持できた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−2328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図11に示した従来のシール材は断面が円形であるため、そのOリングが相手部材20から圧縮荷重を受けた圧縮使用状態に於て、耐腐食性材料の部位41は装着溝及び相手部材20に密着する範囲が少ない。従って、合成ゴムの部位40と耐腐食性材料の部位41との隣接部分で、耐腐食性材料の部位41は、合成ゴムを腐食ガス21から完全に保護することができず、長期的に合成ゴムの劣化を抑止して真空を維持することができない問題があった。具体的には、シール面に樹脂(耐腐食性材料の部位41)が存在すると、(i)接面漏れを起こす。
また、(ii)シール面に2種類の材料(樹脂とゴム)が混在するので、シール性が不安定であり、例えば、ねじれがあると、樹脂(耐腐食性材料の部位41)のみがシール面に存在することになり、シール性が格段に低下したり、逆に、ゴム(合成ゴムの部位40)のみがシール面に存在する場合、腐食性ガスの種類によっては、耐性がなく、シール性を保つことができなくなるという問題があった。
そこで、本発明は、真空保持性(密封性)と耐腐食ガス性を具備し、その真空保持性(密封性)と耐腐食ガス性を長期的に維持できるシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るシール材は、開口部と、第1側壁面と、第2側壁面と、底壁面とを、有する環状の装着溝内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室側の第1側壁面に対向して配設される耐腐食用リングと、第2側壁面側に配設される弾性シール本体と、から成り、上記耐腐食用リングは、装着未圧縮状態に於て第2側壁面側に拡大しつつ開口する勾配面を有する嵌込凹部を備えた横断面形状略C字状であり、上記弾性シール本体は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面側に膨出する弧状部と、上記底壁面側と上記開口部に相対的に接近する相手部材側にそれぞれ膨出する突隆部と、上記嵌込凹部内に挿嵌される突部と、を有し、上記突部の上記底壁面側の端面を該底壁面と平行に配設すると共に、上記突部の上記相手部材側の端面を該相手部材と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面と各端面に対向する上記嵌込凹部の上記勾配面との間に三角形状隙間を形成したものである。
【0006】
また、開口部と、相互に該開口部側に近づくにつれて接近する第1側壁面・第2側壁面と、底壁面とを、有する環状の蟻溝形の装着溝内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室側の第1側壁面に対向して配設される耐腐食用リングと、第2側壁面側に配設される弾性シール本体と、から成り、上記耐腐食用リングは、装着未圧縮状態に於て第2側壁面側に拡大しつつ開口する勾配面を有する嵌込凹部を備えた横断面形状略C字状であり、上記弾性シール本体は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面側に膨出する弧状部と、上記底壁面側と上記開口部に相対的に接近する相手部材側にそれぞれ膨出する突隆部と、上記嵌込凹部内に挿嵌される突部と、を有し、上記突部の上記底壁面側の端面を該底壁面と平行に配設すると共に、上記突部の上記相手部材側の端面を該相手部材と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面と各端面に対向する上記嵌込凹部の上記勾配面との間に三角形状隙間を形成したものである。
【0007】
また、上記突隆部は、上記装着溝の底壁面と上記相手部材に圧接する平坦部を有する横断面略矩形状とした。
【0008】
また、装着未圧縮状態に於て、上記底壁面側の上記平坦部は、上記耐腐食用リングの底壁面側の端縁より底壁面側へ突出し、上記相手部材側の上記平坦部は、上記耐腐食用リングの相手部材側の端縁より相手部材側へ突出して形成された。
【0009】
また、装着未圧縮状態に於て、上記耐腐食用リングの上記底壁面・相手部材側の両端縁は、その接線が上記第2側壁面側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている。
【0010】
また、上記耐腐食用リングはフッ素樹脂から成り、上記弾性シール本体はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成っている。
また、半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係るシール材によれば、耐腐食用リングは、腐食ガスが弾性シール本体側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体は、大気が腐食ガス側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体は腐食ガスによって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部の底壁面側の端面を底壁面と平行に配設すると共に、突部の相手部材側の端面を相手部材と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リングの両端縁は、底壁面・相手部材とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体の各端面と勾配面との間に三角形状隙間を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リングの両突出端部が弾性シール本体(の突部)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リングは横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材と相手部材との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガスが弾性シール本体に接触することを防ぎ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態に示す図面に基づき本発明を詳説する。
本発明のシール材は、主に半導体の製造や液晶パネルの表面処理に用いられるプラズマエッチング装置に使用されるものである。
図1〜図3に示す第1の実施形態に於て、図1と図3に示す23はシール取付部材であり、シール取付部材23は装着溝5を具備し、装着溝5は、開口部4と、相互にその開口部4に近づくにつれて接近する第1側壁面1・第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の横断面台形の蟻溝である。また、第1の実施形態では、装着溝5は、第1側壁面1を内周側に配設し、第2側壁面2を外周側に配設している。なお、この環状には円形状、矩形状及びその他の形状も含まれる。
【0013】
本発明はその装着溝5内に装着される(全体が環状の)シール材30であって、図1と図3に示す20は装着溝5の開口部4に相対的に接近する相手部材である。また、シール取付部材23と相手部材20のそれぞれ向かい合う対向面23a,20a、及び、シール取付部材23の底壁面3は、互いに平行に配設されている。
【0014】
図1は、シール材30が装着溝5内に装着されシール材30が相手部材20から圧縮荷重を受けていない状態──装着未圧縮状態──を示し、図2は、シール材30が装着溝5へ装着される前の状態──自由状態──を示す。また、図3は、シール材30が装着溝5内に装着されて相手部材20から圧縮荷重を受けている状態──圧縮使用状態──を示す。
【0015】
図1に示す装着未圧縮状態に於て、Zは、反応性ガス(具体的には、四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化硫黄)やプラズマ状態にあるガス等が含まれる腐食ガス21を収納する腐食ガス収納室であり、第1側壁面1は腐食ガス収納室Z側に配置され、第2側壁面2は大気22側に配置されている。
シール材30は、第1側壁面1側に(接近又は接触するように)配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に(接近又は接触するように)配設される弾性シール本体7と、から成り、言い換えると、耐腐食用リング6は内周側に配置され、弾性シール本体7は外周側に配置されている。
【0016】
図1に於て、耐腐食用リング6は、横断面形状略C字状に形成され、第2側壁面2側──大気側──に(テーパ状に)拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する(環状の)嵌込凹部8を備えている。即ち、嵌込凹部8は、底部24と、底部24の両端から第2側壁面2側へ互いに離間するように延伸する勾配面17,18と、から形成されている。また、耐腐食用リング6の底壁面3・相手部材20側の両端縁12,13は、その接線X,Yが第2側壁面2側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている。
【0017】
弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て、第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、耐腐食用リング6の上記嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有している。
【0018】
突部10の底壁面3側の端面15は底壁面3と平行に配設され、相手部材20側の端面16は相手部材20(の対向面20a)と平行に配設されている。つまり、突部10の両端面15,16は互いに平行に配設されている。
そして、突部10の各端面15,16と各端面15,16に対向する勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19が設けられている。
【0019】
また、突隆部11,11は、底壁面3と相手部材20に圧接(接触)する平坦部14,14を有する横断面略矩形状に形成されている。
そして、装着未圧縮状態に於て、底壁面3側の平坦部14は、耐腐食用リング6の底壁面3側の端縁12より底壁面3側へ突出して配置され、相手部材20側の平坦部14は、耐腐食用リング6の相手部材20側の端縁13より相手部材20側へ突出して配置されている。
【0020】
図2に示す自由状態に於て、耐腐食用リング6と弾性シール本体7の形状について詳しく説明する。なお、図2の(A)は耐腐食用リング6の嵌込凹部8に弾性シール本体7の突部10を嵌め込んだ状態───嵌込組付状態───の断面図、(B)は分解した弾性シール本体7の断面図、(C)は分解した耐腐食用リング6の断面図を示す。なお、耐腐食用リング6と弾性シール本体7とを、嵌め合わせる前後では、それぞれの形状の変化はほとんど生じない。
耐腐食用リング6の嵌込凹部8の底部24は、弧状の凹曲面に形成され、嵌込凹部8の反対側には半円弧状の圧着面部25が形成されている。また、耐腐食用リング6の両端に有する突出端部28,28の厚さ寸法は、その先端へ向かうにつれて大きく(厚く)なるように設定されている。
【0021】
弾性シール本体7の突部10の先端部には、図2(A)に示す嵌込組付状態で、嵌込凹部8の底部24と対向する弧状の凸曲面部26が形成され、凸曲面部26と底部24との間には逃げ用空間部27が設けられ、シール材30を装着溝5に容易に装着することができるようになっている。
【0022】
また、耐腐食用リング6は、PFA、FEP、PTFE等のフッ素樹脂製であり、中でも、耐腐食性の点でPTFEが最も好ましい。弾性シール本体7は、公知のゴム材料であれば良く、具体的には、シリコーンゴム製、フッ素ゴム製、又はニトリルゴム製等が適用でき、中でも、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が優れている点で、シリコーンゴム製、フッ素ゴム製が好ましい。さらに、シール材30が物理的劣化(イオン化した原子が弾性シール本体7を削り取るように傷つけること)の起こり易い箇所に装着される場合は、弾性シール本体7はシリコーンゴム製であることが好ましく、シール材30が化学的劣化(反応性ガスが弾性シール本体7に接触し、腐食劣化させること)の起こり易い箇所に装着される場合は、弾性シール本体7はフッ素ゴム製であることが好ましい。
【0023】
さらに、弾性シール本体7は、特に酸素プラズマ処理(酸素ラジカル状態)の環境下で用いられる場合、以下に記す耐酸素プラズマ性に優れた(ア)又は(イ)の素材から成型されることが好ましい。
(ア)は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、又は、及び、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体 100重量部に対して、硫酸バリウム20〜100 重量部を配合して成る組成物をポリオール加硫した素材である。
(イ)は、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、又は、及び、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体 100重量部に対して、さらに四フッ化エチレン樹脂 0.5〜30重量部を配合して成る素材である。
【0024】
また、本発明のシール材が酸素ラジカルが発生する箇所、言い換えれば、プラズマが少なく酸素ラジカルが存在する箇所に配設される場合は、耐腐食用リング6の素材として、(耐プラズマ性と耐酸素ラジカル性を有する)上記フッ素樹脂を適用する方が好ましい。
【0025】
図10に示すように、本発明が使用されるプラズマエッチング装置等は、腐食ガス収納室Zを有し、腐食ガス収納室(反応管)Z内に配設されたプラズマを除去するための内管(エッチトンネル)44内では、N2 Oと希ガス、N2 とO2 と希ガス、又は、O2 と希ガスをプラズマ励起し、酸素励起活性種として酸素ラジカルが発生する。
つまり、プラズマと酸素ラジカルが混在するガスを、腐食ガス収納室Zで発生させ、腐食ガス収納室Zの内管(エッチトンネル)44でプラズマを除去し、酸素ラジカルのみにて半導体ウエハーの表面処理(エッチング等)を行う。表面処理後、内管44内の酸素ラジカルは、開閉扉46aを開放し配管45cから排出され、一方、表面処理された半導体ウエハーは、別の開閉扉46bを開けて取り出される。
【0026】
具体的には、例えば、本シール材30が、腐食ガス収納室Zと配管45aとの連結部Lや、腐食ガス収納室Zに通ずる配管45a,45b同士の連結部M等(のプラズマと酸素ラジカルが混在する場所)に配設される場合は、耐腐食用リング6の材質として耐プラズマ性に優れたシリコーンゴム製を適用することが好ましく、一方、本シール材30が、酸素ラジカルを排出する配管45cと腐食ガス収納室Zとの連結部(開閉扉46aの密閉部)Pや、半導体ウエハーを取り出す開閉扉46bの密閉部Q等(のプラズマが少ない場所)に配設される場合は、耐腐食用リング6をフッ素樹脂製とすることが望ましい。
【0027】
図4と図5に示す第2の実施の形態に於て、図4は装着未圧縮状態を示す。また、図5は分解した自由状態を示し、(A)は弾性シール本体7の断面図であり、(B)は耐腐食用リング6の断面図である。
この場合、環状の装着溝5の第1側壁面1は外周側に配設され、第2側壁面2は内周側に配設されている。そして、第1側壁面1(外周)側には、耐腐食用リング6が配置され、第2側壁面2(内周)側には、弾性シール本体7が配置されている。
なお、図4と図5に於て、図1・図2と同一の符号は図1・図2と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0028】
図6と図7に示す第3の実施の形態に於て、図6は装着未圧縮状態を示し、図7は圧縮使用状態を示す。
装着溝5の第1側壁面1と第2側壁面2は、底壁面3に直交して形成されている。即ち、装着溝5は、第1側壁面1と第2側壁面2が互いに平行に配設された横断面正方形又は長方形に形成された環状の溝である。
また、装着溝5の第1側壁面1は内周側に配設され、第2側壁面2は外周側に配設されている。そして、第1側壁面1(内周)側には、耐腐食用リング6が配設され、第2側壁面2(外周)側には、弾性シール本体7が配設されている。
なお、図6と図7に於て、図1・図3と同一の符号は図1・図3と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0029】
また、第1側壁面1と第2側壁面2が底壁面3に直交して形成される環状の装着溝5に於て、耐腐食用リング6を外周側に配設し、弾性シール本体7を内周側に配設した(第1側壁面1を外周側に配設し、第2側壁面2を内周側に配設した)シール材を本発明の第4の実施形態としてもよい(図示省略)。
【0030】
本発明のシール材は設計変更自由であり、弾性シール本体7の素材として、上記のものの他に、エチレン−プロピレンゴム又は水素添加ニトリルゴムを適用してもよい。
【0031】
図8と図9は比較例を示し、図8は装着未圧縮状態を示し、図9は圧縮使用状態を示す。
図8に於て、この比較例のシール材50は、蟻溝型の装着溝5内に装着されており、第1側壁面1に対向して配設される弾性シール本体70と、第2側壁面2に対向して配設される耐腐食用リング60と、から成っている。
比較例のシール材50の弾性シール本体70は、本発明のシール材30の弾性シール本体7と同一形状であるが、比較例のシール材50が有する耐腐食用リング60は、本発明が有する耐腐食用リング6と形状が異なっている。
【0032】
以下、比較例の耐腐食用リング60と本発明が有する耐腐食用リング6との相違点について説明する。
まず、比較例の耐腐食用リング60は略C字状に形成されているが、嵌込凹部80は第2側壁面2側へ向かって互いに平行に配設される平行面62,62を有し、本発明のような勾配面17,18を有していない(図1参照)。言い換えれば、耐腐食用リング60の両突出端部61,61は、装着未圧縮状態で、弾性シール本体70の突部71との間に隙間は設けられておらず、接触して配設されている。
また、耐腐食用リング60の底壁面3側と相手部材20側の端縁には、平坦面部63,63が形成され、各平坦面部63,63は底壁面3と平行に配設されている。
【0033】
比較例のシール材50が圧縮荷重を受け図9に示す圧縮使用状態となった場合、耐腐食用リング60は弾性変形して、両突出端部61,61の先端が弾性シール本体70の突部71の基部へ食い込む(応力集中が生じる)。そして、突部71の基部が局部的に圧縮されることにより、破損原因となるクラックが発生し、シール性が短期間で低下する。
また、平坦面部63,63と底壁面3・相手部材20との間に隙間49,49が生じ完全に密着しないので、収納室Zからの腐食ガス21が弾性シール本体70側へ漏れ、弾性シール本体70が劣化し易い。
即ち、比較例のシール材50では、製品寿命が短く、長期的にシール性を維持できないものである。
なお、図8と図9に於て、図1・図3と同一の符号は同様の構成であるので説明を省略する。
【0034】
上述した本発明のシール材の使用方法(作用)について説明する。
まず、図2(A)に示すように、耐腐食用リング6の嵌込凹部8内に、弾性シール本体7の突部10を挿嵌して組み合わせ、自由状態にあるシール材30を形成する。
次に、突部10の先端(凸曲面部26)と嵌込凹部8の底部24とが接近又は接触するように、シール材30を圧縮しながら装着溝5内に押し込んで装着し、図1に示す装着未圧縮状態とする。
【0035】
そして、シール取付部材23と相手部材20とを相対的に接近させると、シール材30は圧縮荷重を受け図3に示すように圧縮使用状態になる。この時、耐腐食用リング6は圧縮弾性変形して、圧着面部25は底壁面3・第1側壁面1・相手部材20に密着する。詳しくは、圧着面部25の両端縁12,13が底壁面3・相手部材20とそれぞれ密着し、圧着面部25の中間部が第1側壁面1と密着している。そして、嵌込凹部8の勾配面17,18は、凸突部10の端面15,16とそれぞれ密着し、隙間19,19(図1参照)は消滅する。
【0036】
また、弾性シール本体7の突隆部11,11は、圧縮荷重により圧縮され潰され、平坦部14,14は、底壁面3・相手部材20と高い面圧にて密着する。そして、弾性シール本体7の圧縮弾性変形による体積移動にて、弧状部9は第2側壁面2側へさらに膨出し第2側壁面2と密着する。
【0037】
以上のように、本発明のシール材は、開口部4と、第1側壁面1と、第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の装着溝5内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7と、から成り、耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状であり、弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有し、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、各端面15,16と各端面15,16に対向する嵌込凹部8の勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体7は腐食ガス21によって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体7の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体7の各端面15,16と勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両突出端部28,28が弾性シール本体7(の突部10)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リング6は横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材23と相手部材20との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガス21が弾性シール本体7に接触することを防ぎ得る。
【0038】
また、開口部4と、相互に開口部4側に近づくにつれて接近する第1側壁面1・第2側壁面2と、底壁面3とを、有する環状の蟻溝形の装着溝5内に装着される環状のシール材であって、腐食ガス収納室Z側の第1側壁面1に対向して配設される耐腐食用リング6と、第2側壁面2側に配設される弾性シール本体7と、から成り、耐腐食用リング6は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面2側に拡大しつつ開口する勾配面17,18を有する嵌込凹部8を備えた横断面形状略C字状であり、弾性シール本体7は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面2側に膨出する弧状部9と、底壁面3側と開口部4に相対的に接近する相手部材20側にそれぞれ膨出する突隆部11,11と、嵌込凹部8内に挿嵌される突部10と、を有し、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、各端面15,16と各端面15,16に対向する嵌込凹部8の勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側へ流れるのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。従って、弾性シール本体7は腐食ガス21によって劣化しないので、真空保持性を長期的に維持でき、かつ、その劣化による弾性シール本体7の発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
また、突部10の底壁面3側の端面15を底壁面3と平行に配設すると共に、突部10の相手部材20側の端面16を相手部材20と平行に配設したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ(接触面積が広い)面的圧着して、密封性が向上する。
さらに、装着未圧縮状態に於て、弾性シール本体7の各端面15,16と勾配面17,18との間に三角形状隙間19,19を形成したので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両突出端部28,28が弾性シール本体7(の突部10)へ食い込む(応力集中が生じる)ことがなく、その結果、破損原因となるクラック等を抑制できるので、シール材としての製品寿命(シール性等の特性の維持)を長くすることができる。
また、耐腐食用リング6は横断面形状が略C字状であるので、圧縮弾性変形し易く、シール取付部材23と相手部材20との間隔の増減にも対応可能であり、安定姿勢を保ちつつ、腐食ガス21が弾性シール本体7に接触することを防ぎ得る。
【0039】
また、突隆部11,11は、装着溝5の底壁面3と相手部材20に圧接する平坦部14,14を有する横断面略矩形状としたので、圧縮使用状態に於て、平坦部14,14が底壁面3と相手部材20に確実に密着でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【0040】
また、装着未圧縮状態に於て、底壁面3側の平坦部14は、耐腐食用リング6の底壁面3側の端縁12より底壁面3側へ突出し、相手部材20側の平坦部14は、耐腐食用リング6の相手部材20側の端縁13より相手部材20側へ突出して形成されたので、圧縮使用状態に於て、突隆部11,11が圧縮荷重により圧縮され潰されることにより、弾性シール本体7の平坦部14,14は底壁面3と相手部材20に高い面圧にて密着できる。これにより、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【0041】
また、装着未圧縮状態に於て、耐腐食用リング6の底壁面3・相手部材20側の両端縁12,13は、その接線X,Yが第2側壁面2側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されているので、圧縮使用状態に於て、耐腐食用リング6の両端縁12,13は、底壁面3・相手部材20とそれぞれ確実に圧着して、密封性を一層向上させることができる。
【0042】
また、耐腐食用リング6はフッ素樹脂から成り、弾性シール本体7はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成るので、耐腐食用リング6は、耐腐食ガス性───耐反応ガス性及び耐プラズマ性───を長期的に維持でき、弾性シール本体7は、真空維持力(弾発力)を長期的に維持できる。このことにより、耐腐食用リング6と弾性シール本体7の劣化による発塵が起こらないので、製品に不純物が付着することがなくなる。
【0043】
半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられるので、反応性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は、反応性ガスと酸素ガスの混合気体雰囲気下に於て、耐腐食用リング6は、腐食ガス21が弾性シール本体7側に接触するのを抑止でき、弾性シール本体7は、大気22が腐食ガス21側(真空側)へ入り込むのを阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図2】自由状態を示す断面図であって、(A)は耐腐食用リングの嵌込凹部に弾性シール本体の突部を嵌め込んだ状態の断面図、(B)は弾性シール本体の断面図、(C)は耐腐食用リングの断面図である。
【図3】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図5】自由状態を示す断面図であって、(A)は弾性シール本体の断面図、(B)は耐腐食用リングの断面図である。
【図6】第3の実施の形態を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図7】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図8】比較例を示す装着未圧縮状態の断面図である。
【図9】圧縮使用状態を示す断面図である。
【図10】説明用の概略図である。
【図11】従来のシール材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 第1側壁面
2 第2側壁面
3 底壁面
4 開口部
5 装着溝
6 耐腐食用リング
7 弾性シール本体
8 嵌込凹部
9 弧状部
10 突部
11 突隆部
12 端縁
13 端縁
14 平坦部
15 端面
16 端面
17 勾配面
18 勾配面
19 隙間
20 相手部材
X 接線
Y 接線
Z 腐食ガス収納室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(4)と、第1側壁面(1)と、第2側壁面(2)と、底壁面(3)とを、有する環状の装着溝(5)内に装着される環状のシール材であって、
腐食ガス収納室(Z)側の第1側壁面(1)に対向して配設される耐腐食用リング(6)と、第2側壁面(2)側に配設される弾性シール本体(7)と、から成り、
上記耐腐食用リング(6)は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面(2)側に拡大しつつ開口する勾配面(17)(18)を有する嵌込凹部(8)を備えた横断面形状略C字状であり、 上記弾性シール本体(7)は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面(2)側に膨出する弧状部(9)と、上記底壁面(3)側と上記開口部(4)に相対的に接近する相手部材(20)側にそれぞれ膨出する突隆部(11)(11)と、上記嵌込凹部(8)内に挿嵌される突部(10)と、を有し、
上記突部(10)の上記底壁面(3)側の端面(15)を該底壁面(3)と平行に配設すると共に、上記突部(10)の上記相手部材(20)側の端面(16)を該相手部材(20)と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面(15)(16)と各端面(15)(16)に対向する上記嵌込凹部(8)の上記勾配面(17)(18)との間に三角形状隙間(19)(19)を形成したことを特徴とするシール材。
【請求項2】
開口部(4)と、相互に該開口部(4)側に近づくにつれて接近する第1側壁面(1)・第2側壁面(2)と、底壁面(3)とを、有する環状の蟻溝形の装着溝(5)内に装着される環状のシール材であって、
腐食ガス収納室(Z)側の第1側壁面(1)に対向して配設される耐腐食用リング(6)と、第2側壁面(2)側に配設される弾性シール本体(7)と、から成り、
上記耐腐食用リング(6)は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面(2)側に拡大しつつ開口する勾配面(17)(18)を有する嵌込凹部(8)を備えた横断面形状略C字状であり、 上記弾性シール本体(7)は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面(2)側に膨出する弧状部(9)と、上記底壁面(3)側と上記開口部(4)に相対的に接近する相手部材(20)側にそれぞれ膨出する突隆部(11)(11)と、上記嵌込凹部(8)内に挿嵌される突部(10)と、を有し、
上記突部(10)の上記底壁面(3)側の端面(15)を該底壁面(3)と平行に配設すると共に、上記突部(10)の上記相手部材(20)側の端面(16)を該相手部材(20)と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面(15)(16)と各端面(15)(16)に対向する上記嵌込凹部(8)の上記勾配面(17)(18)との間に三角形状隙間(19)(19)を形成したことを特徴とするシール材。
【請求項3】
上記突隆部(11)(11)は、上記装着溝(5)の底壁面(3)と上記相手部材(20)に圧接する平坦部(14)(14)を有する横断面略矩形状とした請求項1又は2記載のシール材。
【請求項4】
装着未圧縮状態に於て、上記底壁面(3)側の上記平坦部(14)は、上記耐腐食用リング(6)の底壁面(3)側の端縁(12)より底壁面(3)側へ突出し、上記相手部材(20)側の上記平坦部(14)は、上記耐腐食用リング(6)の相手部材(20)側の端縁(13)より相手部材(20)側へ突出して形成された請求項3記載のシール材。
【請求項5】
装着未圧縮状態に於て、上記耐腐食用リング(6)の上記底壁面(3)・相手部材(20)側の両端縁(12)(13)は、その接線(X)(Y)が上記第2側壁面(2)側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項6】
上記耐腐食用リング(6)はフッ素樹脂から成り、上記弾性シール本体(7)はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成る請求項1,2,3,4又は5記載のシール材。
【請求項7】
半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられる請求項1,2,3,4,5又は6記載のシール材。
【請求項1】
開口部(4)と、第1側壁面(1)と、第2側壁面(2)と、底壁面(3)とを、有する環状の装着溝(5)内に装着される環状のシール材であって、
腐食ガス収納室(Z)側の第1側壁面(1)に対向して配設される耐腐食用リング(6)と、第2側壁面(2)側に配設される弾性シール本体(7)と、から成り、
上記耐腐食用リング(6)は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面(2)側に拡大しつつ開口する勾配面(17)(18)を有する嵌込凹部(8)を備えた横断面形状略C字状であり、 上記弾性シール本体(7)は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面(2)側に膨出する弧状部(9)と、上記底壁面(3)側と上記開口部(4)に相対的に接近する相手部材(20)側にそれぞれ膨出する突隆部(11)(11)と、上記嵌込凹部(8)内に挿嵌される突部(10)と、を有し、
上記突部(10)の上記底壁面(3)側の端面(15)を該底壁面(3)と平行に配設すると共に、上記突部(10)の上記相手部材(20)側の端面(16)を該相手部材(20)と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面(15)(16)と各端面(15)(16)に対向する上記嵌込凹部(8)の上記勾配面(17)(18)との間に三角形状隙間(19)(19)を形成したことを特徴とするシール材。
【請求項2】
開口部(4)と、相互に該開口部(4)側に近づくにつれて接近する第1側壁面(1)・第2側壁面(2)と、底壁面(3)とを、有する環状の蟻溝形の装着溝(5)内に装着される環状のシール材であって、
腐食ガス収納室(Z)側の第1側壁面(1)に対向して配設される耐腐食用リング(6)と、第2側壁面(2)側に配設される弾性シール本体(7)と、から成り、
上記耐腐食用リング(6)は、装着未圧縮状態に於て第2側壁面(2)側に拡大しつつ開口する勾配面(17)(18)を有する嵌込凹部(8)を備えた横断面形状略C字状であり、 上記弾性シール本体(7)は、装着未圧縮状態の横断面に於て第2側壁面(2)側に膨出する弧状部(9)と、上記底壁面(3)側と上記開口部(4)に相対的に接近する相手部材(20)側にそれぞれ膨出する突隆部(11)(11)と、上記嵌込凹部(8)内に挿嵌される突部(10)と、を有し、
上記突部(10)の上記底壁面(3)側の端面(15)を該底壁面(3)と平行に配設すると共に、上記突部(10)の上記相手部材(20)側の端面(16)を該相手部材(20)と平行に配設し、装着未圧縮状態に於て、上記各端面(15)(16)と各端面(15)(16)に対向する上記嵌込凹部(8)の上記勾配面(17)(18)との間に三角形状隙間(19)(19)を形成したことを特徴とするシール材。
【請求項3】
上記突隆部(11)(11)は、上記装着溝(5)の底壁面(3)と上記相手部材(20)に圧接する平坦部(14)(14)を有する横断面略矩形状とした請求項1又は2記載のシール材。
【請求項4】
装着未圧縮状態に於て、上記底壁面(3)側の上記平坦部(14)は、上記耐腐食用リング(6)の底壁面(3)側の端縁(12)より底壁面(3)側へ突出し、上記相手部材(20)側の上記平坦部(14)は、上記耐腐食用リング(6)の相手部材(20)側の端縁(13)より相手部材(20)側へ突出して形成された請求項3記載のシール材。
【請求項5】
装着未圧縮状態に於て、上記耐腐食用リング(6)の上記底壁面(3)・相手部材(20)側の両端縁(12)(13)は、その接線(X)(Y)が上記第2側壁面(2)側へ拡大する円弧状にそれぞれ形成されている請求項1,2,3又は4記載のシール材。
【請求項6】
上記耐腐食用リング(6)はフッ素樹脂から成り、上記弾性シール本体(7)はフッ素ゴム又はシリコーンゴムから成る請求項1,2,3,4又は5記載のシール材。
【請求項7】
半導体製造装置用又は液晶パネルの表面処理装置に用いられる請求項1,2,3,4,5又は6記載のシール材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−100900(P2007−100900A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293759(P2005−293759)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
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