説明

シール構造及びそれに用いる金属シール材

【課題】交換等の際に金属シール材を第1及び第2部材から容易に取り外せるようにする。
【解決手段】シール構造20は、第1部材21と第2部材22との間に金属シール材10が介設されている。第1部材21及び金属シール材10は、相手材接触部21a,10aが固着阻止被膜21b,12で被覆されていると共に、第2部材22及び金属シール材10も、相手材接触部22a,10bが固着阻止被膜22b,12で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材との間に金属シール材が介設されたシール構造及びそれに用いる金属シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
高いシール性を要するCVD装置やその他の実験装置等では、装置の仕様が多様化しており、装置の使用条件によっては、ゴムシール材や樹脂シール材では、その材料特性から使用に耐え得ない場合がある。そのような場合には、耐熱性、耐極低温性、耐油性、及び耐薬品性に優れる金属シール材が用いられることとなる。
【0003】
特許文献1には、ガスケット(金属シール材) を、ニッケル、ニッケル合金又はステンレス鋼にて形成し、かつ継手のナイフエッジに当接してシール面となる部分を切削して凹溝を形成することが開示されている。そして、該凹溝は、両側面からなるランド部に対して一段低く構成され、ガスケットの製造から装着までの過程において、ランド部によりガスケット同士又は載置台等に接触することが防止され、打痕、擦り傷を生じることがない、と記載されている。
【特許文献1】特開2003−90437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような事情から、金属シール材は、高温、高圧力又は高真空といった過酷な条件下に置かれることが多く、そのため、定期的に、或いは、必要に応じて新しいものに交換される。
【0005】
しかしながら、金属シール材は、かかる過酷な条件下、特に繰り返し高温雰囲気下に置かれると、金属フランジ等の相手材との間で拡散結合による固着を生じ、相手材からの取り外しが困難となる。このような場合に、金属シール材を破壊して無理矢理取り外そうとして相手材のシール面を傷付けてしまうと、装置自体の再使用ができなくなってしまう。
【0006】
また、金属シール材の表面に金属メッキが施されているような場合、金属メッキが相手材に固着し、金属シール材の交換を繰り返すうちに相手材に固着して残った金属メッキが堆積すると、シール性能の低下を招くこととなる。
【0007】
これに対し、拡散係数の小さい材料を選定することが考えられるが、金属材料では高い効果を期待することはできず、また、シール面に予め固着防止剤を塗布しておくことも考えられるが、装置内部のクリーンさが要求されるような場合にはこれを使用することはできない。
【0008】
本発明は、交換等の際に金属シール材を第1及び第2部材から容易に取り外せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシール構造は、第1部材と第2部材との間に金属シール材が介設されたものであって、
上記第1部材及び上記金属シール材の少なくとも一方は、相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていると共に、
上記第2部材及び上記金属シール材の少なくとも一方も、相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、第1部材と金属シール材との間に固着阻止被膜が介在すると共に、第2部材と金属シール材との間に固着阻止被膜が介在するので、金属シール材の第1及び第2部材への固着が阻止され、交換等の際に金属シール材を第1及び第2部材から容易に取り外すことができる。
【0011】
本発明の金属シール材は、第1部材と第2部材との間に介設されるものであって、
少なくとも相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の金属シール材は、上記固着阻止被膜が、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiB、CrN、ZrN、TaN、BN及びダイヤモンドライクカーボンのうちから選ばれるいずれかで形成されているものであってもよい。
【0013】
本発明の金属シール材は、シール材本体がステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金、鉄合金、並びにコバルト合金のうちから選ばれるいずれかで形成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1部材と金属シール材との間に固着阻止被膜が介在すると共に、第2部材と金属シール材との間に固着阻止被膜が介在するので、交換等の際に金属シール材を第1及び第2部材から容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)及び(b)は、実施形態1に係る金属シール材10を示す。
【0017】
この金属シール材10は、平面視ドーナツ盤状に形成されたシール材本体11が固着阻止被膜12で全体が被覆された構成となっている。また、金属シール材10は、内周部分10aと外周部分10bとが厚さ方向の相互に平行な異なる平面内に配置され、それらを連結する中間部分10cが内周部分10aから外周部分10bに向かって滑らかに延びるように形成されている。金属シール材10は、例えば、外径Dが18〜45mm、内径dが13〜38mm、盤厚さtが0.7〜1.0mm、また、本体厚さTが1.8〜3.0mmに形成されている。
【0018】
シール材本体11は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金、鉄合金、並びにコバルト合金のうちから選ばれる金属材料で形成されている。
【0019】
固着阻止被膜12は、例えば、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiB、CrN、ZrN、TaN、BN及びダイヤモンドライクカーボンのうちから選ばれるいずれかの材料で形成されている。固着阻止被膜12は、膜厚さが0.1〜30μmに形成されていることが好ましく、1〜5μmに形成されていることがより好ましい。
【0020】
この金属シール材10は、金属板に打抜き加工やプレス加工などの公知の塑性加工を施してシール材本体11を作製し、それにCVD法やPVD法などの公知の成膜加工を施して固着阻止被膜12を形成することにより製造することができる。
【0021】
なお、金属シール材10には、シール材本体11と固着阻止被膜12との間に金や銀やニッケル等の金属メッキ層が設けられていてもよい。
【0022】
図2は、実施形態1に係るシール構造20を示す。
【0023】
このシール構造20は、第1部材21の第1平坦面21aと材2部材22の第2平坦面22aとの間の均一幅の隙間に金属シール材10が介設されたものである。
【0024】
第1及び第2部材21,22のそれぞれは、例えば、ステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金、鉄合金、並びにコバルト合金のうちから選ばれる金属材料で形成された継手部材等である。
【0025】
金属シール材10は、内周部分10aが第1部材21に接触すると共に外周部分10bが第2部材22に接触しており、その内周部分10a及び外周部分10bが固着阻止被膜12で被覆された相手材接触部に構成されている。
【0026】
第1部材21と第2部材22との間の隙間は金属シール材10の本体厚さTよりも小さく、従って、金属シール材10は、本体厚さT’に圧縮されて設けられている。この圧縮量は例えば28〜40%であり、金属シール材10の第1及び第2部材21,22への接触圧力は例えば130〜170MPaである。
【0027】
以上のような構成よれば、第1部材21と金属シール材10との間に固着阻止被膜12が介在すると共に、第2部材22と金属シール材10との間に固着阻止被膜12が介在するので、交換等の際に金属シール材10を第1及び第2部材22から容易に取り外すことができる。
【0028】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係るシール構造20を示す。なお、実施形態1のものと同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
【0029】
このシール構造20では、金属シール材10に加えて、第1及び第2部材21,22の第1及び第2平坦面21a,22aも固着阻止被膜21b,22bで被覆されている。そして、第1及び第2部材22の金属シール材10との接触部が、固着阻止被膜21b,22bで被覆された相手材接触部に構成されている。
【0030】
第1及び第2部材21,22の固着阻止被膜21b,22bは、例えば、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiB、CrN、ZrN、TaN、BN及びダイヤモンドライクカーボンのうちから選ばれるいずれかの材料で形成されている。固着阻止被膜21b,22bは、金属シール材10の固着阻止被膜12と同一材料で形成されていても、異種材料で形成されていてもいずれでもよい。また、第1部材21の固着阻止被膜21bと第2部材22の固着阻止被膜22bとは同一材料で形成されていても、異種材料で形成されていてもいずれでもよい。固着阻止被膜21b,22bは、膜厚さが0.1〜30μmに形成されていることが好ましく、1〜5μmに形成されていることがより好ましい。
【0031】
なお、第1及び第2部材21,22のそれぞれと固着阻止被膜21b,22bとの間には金や銀やニッケル等の金属メッキ層が設けられていてもよい。
【0032】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0033】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係るシール構造20を示す。なお、実施形態1のものと同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
【0034】
このシール構造20では、金属シール材10が固着阻止被膜で被覆されておらず、第1及び第2部材21,22の第1及び第2平坦面21a,22aが固着阻止被膜21b,22bで被覆されている。そして、第1及び第2部材21,22の金属シール材10との接触部が、固着阻止被膜21b,22bで被覆された相手材接触部に構成されている。
【0035】
第1及び第2部材21,22の固着阻止被膜21b,22bは、例えば、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiB、CrN、ZrN、TaN、BN及びダイヤモンドライクカーボンのうちから選ばれるいずれかの材料で形成されている。第1部材21の固着阻止被膜21bと第2部材22の固着阻止被膜22bとは同一材料で形成されていても、異種材料で形成されていてもいずれでもよい。固着阻止被膜21b,22bは、膜厚さが0.1〜30μmに形成されていることが好ましく、1〜5μmに形成されていることがより好ましい。
【0036】
なお、第1及び第2部材21,22のそれぞれと固着阻止被膜21b,22bとの間には金や銀やニッケル等の金属メッキ層が設けられていてもよい。
【0037】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0038】
(その他の実施形態)
実施形態1〜3では、平面視ドーナツ盤状金属シール材10を例としたが、特にこれに限定されるものではなく、他の形状のものであってもよい。
【0039】
実施形態1及び2では、金属シール材10全体が固着阻止被膜12で被覆されたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、少なくとも第1及び第2部材21,22との相手材接触部が固着阻止被膜12で被覆されていればよい。
【0040】
実施形態2及び3では、第1及び第2部材21,22の第1及び第2平坦面21a,22a全体が固着阻止被膜21b,22bで被覆されたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、少なくとも金属シール材10との相手材接触部が固着阻止被膜21b,22bで被覆されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、第1部材と第2部材との間に金属シール材が介設されたシール構造及びそれに用いる金属シール材について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は実施形態1に係る金属シール材の平面図であり、(b)は(a)におけるIB−IB断面図である。
【図2】実施形態1に係るシール構造を示す断面図である。
【図3】実施形態2に係るシール構造を示す断面図である。
【図4】実施形態3に係るシール構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 金属シール材
10a 内周部分
10b 外周部分
10c 中間部分
11 シール材本体
12 固着阻止被膜
20 シール構造
21 第1部材
21a 第1平坦面
21b 固着阻止被膜
22 第2部材
22a 第2平坦面
22b 固着阻止被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に金属シール材が介設されたシール構造であって、
上記第1部材及び上記金属シール材の少なくとも一方は、相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていると共に、
上記第2部材及び上記金属シール材の少なくとも一方も、相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
第1部材と第2部材との間に介設される金属シール材であって、
少なくとも相手材接触部が固着阻止被膜で被覆されていることを特徴とする金属シール材。
【請求項3】
請求項2に記載された金属シール材であって、
上記固着阻止被膜は、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiB、CrN、ZrN、TaN、BN及びダイヤモンドライクカーボンのうちから選ばれるいずれかで形成されていることを特徴とする金属シール材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された金属シール材であって、
シール材本体がステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金、鉄合金、並びにコバルト合金のうちから選ばれるいずれかで形成されていることを特徴とする金属シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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