説明

シール装置、および蒸気タービン

【課題】接触による破損を防止でき、回転部と静止部との間を通って漏洩する蒸気の量を少なくでき、蒸気タービンの発電効率を高めることができるシール装置、およびこのシール装置を備えた蒸気タービンを提供することを課題とする。
【解決手段】実施形態に係るシール装置は、回転するタービン動翼の先端に対向して、ダイアフラム外輪に設けられた凹部に支持され、タービン動翼の径方向に揺動可能に設けられた揺動片と、この揺動片からタービン動翼に向けて径方向に凸設され、タービン動翼の先端と揺動片との間の隙間を狭めるシールフィンと、揺動片の径方向への揺動を緩衝する径方向ダンパーと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービンノズルを含む静止部とタービン動翼を含む回転部との間の隙間に取り付けられるシール装置、およびこのシール装置を備えた蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を抑制するため、各種発電プラントにおいて、発電効率の改善が強く望まれている。また、発電に必要な燃料の消費量を減らしたり、二酸化炭素の排出量を減らしたりする種々の取り組みもなされている。
【0003】
発電効率を低下させる1つの要因として、タービン段落の損失が上げられる。タービン段落の損失には、様々なものがあり、翼形状そのものに起因するプロファイル損失、翼列間を流れる流体力に起因する二次流れ損失、作動流体が翼列間を通過せずに翼列の外に漏洩する外部漏洩損失などがある。
【0004】
このうち、外部漏洩損失は、タービンノズルを含む静止部とタービン動翼を含む回転部との間の隙間、例えば、タービン動翼の先端と静止部との間にある隙間を通る蒸気の漏れに起因する。回転部と静止部の接触を防止するため、両者の間には隙間が必要であり、このような外部漏洩損失が無くなることはない。
【0005】
蒸気がタービン翼列の外に漏洩すると、その分、タービンを回すための蒸気が減り、タービン出力が低下する。また、漏洩した蒸気がタービン翼列を通った後の作動蒸気に合流する際、流れ方向の違いに起因した損失が発生する。
【0006】
このため、従来の蒸気タービンでは、回転部と静止部との間の隙間にシールフィンを取り付けて、蒸気の漏洩を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−297980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した外部漏洩損失を抑制するため、タービン動翼を含む回転部と静止部との間の隙間を狭めると、タービン動翼の回転によってシールフィンが静止部に接触し易くなり、シールフィンが破損したり、接触によりタービン動翼の回転軸が振動してタービンの運転が不能になったり、接触による発熱により回転部に損傷を生じたりする不具合を生じる。
【0009】
このような不具合を防止するため、逆に、シールフィンが接触しないように、回転部と静止部との間の隙間を広げると、その分、漏洩する蒸気が多くなって、タービン動翼を回転するための蒸気の量が少なくなり、発電効率が低下してしまう。
【0010】
よって、接触による破損を防止でき、回転部と静止部との間を通って漏洩する蒸気の量を少なくでき、蒸気タービンの発電効率を高めることができるシール装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係るシール装置は、回転するタービン動翼の先端に対向して、ダイアフラム外輪に設けられた凹部に支持され、タービン動翼の径方向に揺動可能に設けられた揺動片と、この揺動片からタービン動翼に向けて径方向に凸設され、タービン動翼の先端と揺動片との間の隙間を狭めるシールフィンと、揺動片の径方向への揺動を緩衝する径方向ダンパーと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るシール装置を備えた蒸気タービンの要部を示す部分拡大断面図である。
【図2】図2は、図1の蒸気タービンのタービン段落の1つを示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は、図2の揺動片の支持構造を示す部分拡大断面図である。
【図4】図4は、図3の揺動片が僅かに揺動した状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】図5は、第2の実施形態に係るシール装置を示す部分拡大断面図である。
【図6】図6は、第3の実施形態に係るシール装置を示す部分拡大断面図である。
【図7】図7は、第4の実施形態に係るシール装置を示す部分拡大断面図である。
【図8】図8は、図7の要部を部分的に拡大して示す部分拡大断面図である。
【図9】図9は、第5の実施形態に係るシール装置を示す部分拡大断面図である。
【図10】図10は、第6の実施形態に係るシール装置を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
図1には、第1の実施形態に係るシール装置10を備えた蒸気タービン1の要部を示す部分拡大断面図を示してある。図2には、図1のタービン段落の1つを拡大した部分拡大断面図を示してある。図3には、図2の揺動片11の支持構造を説明するための部分拡大断面図を示してある。
【0014】
図1に示すように、蒸気タービン1は、複数段のタービンノズル2を備えた静止部4、および複数段のタービン動翼6を備えた回転部8を有する。静止部4は、蒸気タービン1の略円筒形のケーシング100の内面側に固設された複数段のタービンノズル2を有する。回転部8は、ケーシング100内で静止部4に対して回転可能に設けられたローター5および複数段のタービン動翼6を有する。
【0015】
すなわち、回転部8は、図示矢印S方向に流れる蒸気を各タービン段落のタービンノズル2を介してタービン動翼6に吹き付けることで回転される。つまり、蒸気の流れは、複数段のタービン動翼6を取り付けたローター5を回転させる。蒸気タービン1は、このローター5の回転力を取り出して電力に変える。
【0016】
図1では、軸方向に並んだ3つのタービン段落を部分的に図示してあるが、タービン段落の数は任意に設定可能である。1つのタービン段落は、図2に示すように、蒸気の流れ方向(図示矢印S方向)に沿って上流側に配置されたタービンノズル2と下流側に配置されたタービン動翼6を含む。
【0017】
より詳細には、各タービン段落は、それぞれ、蒸気の流れ方向に沿って上流側に周方向に並んだ複数のタービンノズル2を備え、下流側に周方向に並んだ複数のタービン動翼6を備えている。つまり、ここでは図示を省略してあるが、各タービン段落のタービンノズル2は、周方向に等間隔で並んで複数設けられており、各タービン段落のタービン動翼6も、周方向に等間隔で並んで複数設けられている。
【0018】
各タービン段落の複数のタービンノズル2は、ケーシング100に固設されたダイアフラム外輪3aとダイアフラム内輪3bとの間に取り付けられている。また、各タービン段落の複数のタービン動翼6は、その基端部が、ローター5の外周から一体に凸設された略円環状のローターディスク5aに植設され、ローター5からその径方向外方へ放射状に延びている。そして、複数のタービン動翼6は、複数のタービンノズル2に対して軸方向に入れ子状に配置されている。
【0019】
各タービン段落のタービンノズル2を固定したダイアフラム内輪3bの内周面には、軸方向に並んで、略円環状の複数のラビリンスパッキン7が取り付けられている。これら複数のラビリンスパッキン7は、軸方向に並んだタービン段落の翼列間を通過せずにダイアフラム内輪3bとローター5の外周面との間の隙間S1を通過しようとする漏洩蒸気をシールするために設けられている。
【0020】
また、ローター5の外周面から凸設された略円環状のローターディスク5aには、それぞれ、少なくとも1つの通気孔5bがディスクを貫通して隣接するタービン段落を連通するように設けられている。この通気孔5bは、隣接するタービン段落間における圧力差を少なくするために設けられている。
【0021】
各タービン段落における複数のタービン動翼6の外周端には、軸方向の同じ位置に取り付けられた複数のタービン動翼6を固定するためのスナッバ9が取り付けられている。そして、このスナッバ9の外周面上(ここでは、この部位をタービン動翼の先端と見做す場合もある)には、後述するシールフィン13と協働して漏洩蒸気をシールするための2条の突起9a(図2)が周方向に沿って凸設されている。
【0022】
また、各タービン段落のタービン動翼6の先端、すなわちスナッバ9の外周面に対して径方向に離間対向した位置には、複数枚の略矩形板状の揺動片11が周方向に分割されて設けられている。複数枚の揺動片11は、互いに近接して周方向に並べて円形状につなげて配置されるが、ここでは1つの揺動片11のみを代表して図示してある。なお、本実施形態において、各揺動片11は、同じタービン段落のタービンノズル2を固定したダイアフラム外輪3aによって揺動可能に支持されている。
【0023】
図3に拡大して示すように、各揺動片11の揺動の基端は、蒸気の流れ方向に沿って上流側(図示左側)に隣接して配置された静止部4のダイアフラム外輪3aの凹部12内に収容配置されている。凹部12の下流側(図示右側)にある開口12aは、上下の壁によって狭められており、開口12aの下端側の壁部12bの上端12cが揺動片11の揺動の支点として機能する。
【0024】
揺動片11は、凹部12内に配置された基端部11aが開口12aから突出した先端部より重くなるような重量バランスに形成されており、壁部12bの上端12cで支えた状態でちょうどバランスする形状にされている。言い換えると、揺動片11は、揺動の先端が大きく開口12aから外方に突出しており、スナッバ9の外周面に対して離接する方向(すなわち径方向)に揺動可能となっている。このように、揺動片11の重心位置に支点を設けることにより、重力の影響を相殺することができ、周方向の全ての位置に配置された揺動片11を同じように動作させることができる。
【0025】
なお、壁部12bの上端12cは、断面が円弧状に丸められており、揺動片11の下面に設けられた溝11bに緩く嵌め込まれている。言い換えると、揺動片11は、その下面側に、支点12cを受け入れる溝11bを有する。このように、揺動片11の揺動の支点として機能する壁部12bの上端12cを円弧状に丸めることで、揺動片11の揺動をスムーズにでき、揺動片11を僅かな力で揺動させることができる。
【0026】
揺動片11がスナッバ9の外周面に対向する図示下面側には、スナッバ9の2本の突起9aと協働して漏洩蒸気をシールするための複数のシールフィン13が突設されている。これら複数のシールフィン13は、その先端が接触する可能性のあるスナッバ9より少なくとも削られ易い金属材料によって形成されている。つまり、両者が接触した場合、シールフィン13が削れるようになっている。
【0027】
本実施形態では、スナッバ9の2本の突起9aに対応して、各揺動片11に5枚のシールフィン13を取り付けた。より具体的には、スナッバ9の突起9aに対向する位置に比較的短いシールフィン13aを取り付けて、各突起9aを軸方向に挟む位置に比較的長いシールフィン13bを取り付けた。これにより、スナッバ9の外周面と揺動片11の下面との間の隙間S2を狭めることができ、且つこの狭めた隙間を通る蒸気の流路を波状に湾曲させることができ、蒸気の流通抵抗を大きくすることができる。つまり、このような構造の流路によって、漏洩蒸気の量をさらに少なくできる。
【0028】
また、揺動片11の基端部と凹部12の内壁12d(図示上端の壁)との間には、径方向ダンパーとして機能するバネ14が取り付けられている。このバネ14は、定常状態(伸びても縮んでもない状態)で、タービン動翼6の径方向に沿う姿勢にされて、凹部12内に取り付けられている。
【0029】
より詳細には、揺動片11を、その下面に取り付けられた複数枚のシールフィン13それぞれの先端が一定の微小隙間Sminを介してスナッバ9の外周面に対向する姿勢に配置するように、バネ14が取り付けられる。言い換えると、バネ14は、定常状態で、揺動片11を上述した微小隙間Sminを形成可能な中立位置に配置する。
【0030】
図4には、タービン動翼6の回転によってスナッバ9の外周面(突起9aの表面を含む)にシールフィン13の先端が接触して揺動片11が図示上方に僅かに揺動した状態を図示してある。図4では、特に、揺動片11の揺動の支点に最も近いシールフィン13の先端がスナッバ9の外周面に接触した状態を図示してある。
【0031】
タービン動翼6は、その回転によって僅かに振動する。また、スナッバ9は、その回転位置によって外周面の形状僅かに凸凹になっている。このため、蒸気タービン1の動作中、スナッバ9の外周面はタービン動翼6の径方向に僅かに移動する。このように、スナッバ9の外周面が僅かに径方向に移動すると、微小隙間Sminを介して対向したシールフィン13の先端に接触する場合がある。
【0032】
図4では、揺動支点に最も近いシールフィン13の先端がスナッバ9の外周面に接触した状態を図示してあるが、必ずしもこのシールフィン13が最初に接触するとは限らない。つまり、スナッバ9の形状は均一ではなく、シールフィン13も経時的に摩滅するため、タービン動翼6の回転位置によっては他のシールフィン13に最初に接触する可能性もある。いずれにしても、最初に接触したシールフィン13によって揺動片11が跳ね上げられて微小隙間Sminが維持される。
【0033】
すなわち、図示のようにスナッバ9の外周面がシールフィン13の先端に接触すると、シールフィン13を取り付けた揺動片11が図4に示すように上方に僅かに揺動して、接触による圧力を逃がす。このとき、バネ14が揺動片11の径方向への揺動を緩衝する径方向ダンパーとして機能する。
【0034】
また、図4の状態で、バネ14は、定常状態から僅かに伸びて、揺動片11を元の中立位置へ戻す方向に付勢する。これにより、接触の後、極めて短い時間で、揺動片11がニュートラル位置に戻り、微小隙間Sminが維持される。つまり、このバネ14は、揺動片11の振動を減衰させる機能も持つ。
【0035】
以上のように、揺動片11は、タービン動翼6の先端に対向して径方向に揺動可能に配置されており、複数のシールフィン13のうちいずれか1つのシールフィン13が僅かにスナッバ9に接触しただけで、僅かな力によって図示上方に揺動することができ、シールフィン13の破損や摩滅を防止することができる。
【0036】
特に、本実施形態によると、複数のシールフィン13を揺動片11の図示下面側に取り付けたため、少なくとも1つのシールフィン13がスナッバ9に接触した時点で揺動片11を跳ね上げることができ、両者間の微小隙間Sminを維持することができる。これにより、タービン動翼6の先端と揺動片11との間の隙間を、常に微小隙間Sminにすることができ、この隙間から漏洩する蒸気の量を減らすことができ、発電効率を高めることができる。
【0037】
また、見方を変えると、本実施形態のようにタービン動翼6の径方向に揺動する揺動片11を用いることで、微小隙間Smin自体を極めて小さく設計することができる。つまり、シールフィン13がスナッバ9に接触した場合であっても、揺動片11がスナッバ9から離間する径方向に瞬時に揺動するため、このような接触を気にすることなく、シールフィン13の先端をスナッバ9に近付けることができる。これにより、微小隙間Sminを通る漏洩蒸気の量を極めて微量にでき、発電効率を高めることができる。
【0038】
さらに、本実施形態によると、摩滅により交換が必要となるシールフィン13を揺動片11側に取り付けたため、シールフィン13の交換時期がきたら揺動片11ごと交換することができ、スナッバ9を交換する場合と比較して、交換作業が容易であり、交換する部品も安価にでき、メンテナンスコストを安価にできる。
【0039】
図5には、第2の実施形態に係るシール装置20の部分拡大断面図を示してある。本実施形態のシール装置20は、上述した第1の実施形態のシール装置10と略同じ構造を有するため、ここでは第1の実施形態と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施形態のシール装置20は、揺動片11の図示下面側に複数のシールフィン13を備える代わりに、タービン動翼6の先端に装着されたスナッバ9の外周面に複数のシールフィン22を備えている。このため、本実施形態では、スナッバ9は、揺動片11に対向する外周面上に突起9aを持たない。本実施形態では、シールフィン22は、スナッバ9と一体に径方向(図示上方)に凸設されている。つまり、スナッバ9の外周面には、軸方向に離間した複数のシールフィン22が一体に設けられている。
【0041】
これに対し、揺動片11の図示下面には、アブレイダブル層として機能する快削材層24が貼り付けられている。本実施形態では、この快削材層24の表面とスナッバ9から凸設された複数のシールフィン22の先端との間に微小隙間Sminを形成するように、揺動片11およびバネ14を取り付けた。言い換えると、バネ14は、定常状態で、シールフィン22と快削材層24との間に微小隙間Sminを形成する中立位置に揺動片11を位置決めする。
【0042】
この状態で、タービン動翼6が径方向に移動してシールフィン22の先端が快削材層24に接触すると、揺動片11が図示上方に跳ね上げられて接触によるシールフィン22の損傷が防止される。同時に、快削材層24がシールフィン22の接触によって削られて、シールフィン22の接触による摩滅が防止される。このため、上述した第1の実施形態と比較して、微小隙間Sminをより狭く設定することができ、発電効率をより高めることができる。
【0043】
図6には、第3の実施形態に係るシール装置30の部分拡大断面図を示してある。本実施形態のシール装置30は、シールフィン13の代りに鋼毛によって形成されたブラシ32を有する以外、上述した第1の実施形態のシール装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第1の実施形態と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
揺動片11を持たない従来のシール装置に本実施形態のような鋼毛ブラシを利用した場合、タービン動翼6のスナッバ9との間の接触によってブラシが磨耗し、ブラシによるシール効果が著しく低下することが予想される。
【0045】
これに対し、本実施形態のように、揺動片11のスナッバ9に対向する面(図示下面)にブラシ32を設けた場合、揺動片11がブラシ32とスナッバ9との間の接触を回避するように揺動するため、ブラシ32の磨耗は少なくなる。このため、本実施形態によると、長期にわたって良好なシール効果を発揮でき、発電効率を高めることができる。
【0046】
図7には、第4の実施形態に係るシール装置40の部分拡大断面図を示してある。また、図8には、図7のシール装置40の要部を部分的に拡大した部分拡大断面図を示してある。本実施形態のシール装置40は、軸方向ダンパーとして機能するバネ42を有する以外、上述した第1の実施形態のシール装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第1の実施形態と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
バネ42は、揺動片11’の軸方向(図示左右方向)への移動を緩衝する。具体的には、本実施形態の揺動片11’は、ダイアフラム外輪3aの凹部12内に配置された基端部11a’が図示下方にL字状に折り曲げられており、バネ42は、このL字状に折り曲げられた基端部11a’と開口部12aの下の壁部12bの内面との間に配置されている。
【0048】
また、揺動片11’は、自身の軸方向に沿った移動を許容するため、その下面に、軸方向に幅広にされた溝11b’(図8参照)を有する。揺動片11’は、この溝11b’に壁部12bの丸くされた上端12cを嵌め込むことで、揺動可能に支持されるとともに、軸方向への移動を許容される。
【0049】
蒸気タービン1の回転部8は、静止部4より熱容量が小さいため、流れる蒸気の熱により静止部4より大きく熱膨張する。本実施形態では、回転部8のローター5の熱膨張に起因して、タービン動翼6およびスナッバ9が蒸気の流れ方向に沿って下流側へ僅かに移動する。この際、揺動片11’に取り付けられたシールフィン13の先端にスナッバ9の突起9aが接触する可能性がある。
【0050】
本実施形態では、熱膨張によって移動したスナッバ9の突起9aによってシールフィン13の先端が軸方向に押されたとき、揺動片11’が軸方向に移動して、接触圧を逃がすようになっている。このため、本実施形態においても、シールフィン13が接触によって破損する心配がなく、長期にわたって発電効率を高めることができる。
【0051】
図9には、第5の実施形態に係るシール装置50の部分拡大断面図を示してある。本実施形態のシール装置50は、揺動片11”の揺動の先端11”c(図中右端)が図示下方にL字状に折り曲げられて、その折り曲げられた先端11”cに、タービン動翼6の側面に向けて軸方向に延設されたシールフィン52を有する以外、上述した第4の実施形態のシール装置40と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第4の実施形態と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
本実施形態において、タービン動翼6が回転部8の熱膨張によって軸方向下流側(図示右側)に移動すると、タービン動翼6の側面(本実施形態ではスナッバ9の下流側の側面)がシールフィン52に接触し、揺動片11”が図示右方に移動される。この移動により、シールフィン52の損傷が防止される。
【0053】
以上のように、本実施形態によると、揺動片11”に取り付けられた径方向に延びた複数のシールフィン13によってスナッバ9と揺動片11”との間の隙間S2を通る漏洩蒸気の量を少なくできることに加え、揺動片11”の先端11”cに取り付けられた軸方向に延びたシールフィン52によって漏洩蒸気をさらに少なくでき、第4の実施形態と比較して漏洩蒸気の量を少なくすることができる。よって、本実施形態によると、蒸気タービン1の発電効率をさらに高めることができる。
【0054】
図10には、第6の実施形態に係るシール装置60の部分拡大断面図を示してある。本実施形態のシール装置60の揺動片61は、その支点61a近くからスナッバ9の上流側側面(図中左側)に沿って図示下方に一体に延びた板状部材62を有する。また、この板状部材62の図示下端近くからスナッバ9に向けて軸方向下流側に延びたシールフィン63が取り付けられている。これ以外の構造は、上述した第4の実施形態と略同じ構造であるため、ここでは、同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態のシール装置60の軸方向に延びたシールフィン63は、スナッバ9と揺動片61の間の隙間S2に流れる漏洩蒸気の量を予め少なくするよう機能する。蒸気タービン1の回転部8は、軸方向に沿って両側に熱膨張する可能性があり、タービン動翼6がタービンノズル2に近付く方向(図中左方向)に移動した場合に、スナッバ9の図中左側側面がシールフィン63に接触する。
【0056】
この場合、スナッバ9の移動によって揺動片61が図示左側に押圧され、バネ42が縮んで揺動片61が図示左側に移動される。これにより、スナッバ9のシールフィン63に対する押圧力が逃がされて、シールフィン63の損傷が防止される。
【0057】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のシール装置によれば、タービン動翼6の先端に対向するシールフィンを備えた揺動片を持つことにより、タービン動翼6が軸方向に移動した際のシールフィンに対する接触を少なくでき、シールフィンの損傷を防止することができる。また、上述した少なくともひとつの実施形態のシール装置によると、タービン動翼の先端とシールフィンとの間の隙間を小さくすることができ、この隙間を通る漏洩蒸気の量を少なくでき、発電効率を向上させることができる。
【0058】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、同じタービン段落を構成するタービン動翼6の上流側のタービンノズル2を取り付けたダイアフラム外輪3aに揺動片11を取り付けた場合について説明したが、これに限らず、下流側の異なるタービン段落のタービンノズル2を取り付けたダイアフラム外輪3aに揺動片11を取り付けても良い。
【符号の説明】
【0060】
1…蒸気タービン、2…タービンノズル、3a…ダイアフラム外輪、3b…ダイアフラム内輪、4…静止部、5…ローター、5a…ローターディスク、5b…通気孔、6…タービン動翼、7…ラビリンスパッキン、8…回転部、9…スナッバ、9a…突起、10…シール装置、11…揺動片、12…凹部、13…シールフィン、14…バネ、61a…支点、S2…隙間、Smin…微小隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するタービン動翼の先端に対向して、ダイアフラム外輪に設けられた凹部に支持され、上記タービン動翼の径方向に揺動可能に設けられた揺動片と、
この揺動片から上記タービン動翼に向けて上記径方向に凸設され、該タービン動翼の先端と上記揺動片との間の隙間を狭めるシールフィンと、
上記揺動片の上記径方向への揺動を緩衝する径方向ダンパーと、
を有するシール装置。
【請求項2】
上記タービン動翼の先端には、上記シールフィンの先端と入れ子状の突起が設けられている請求項1のシール装置。
【請求項3】
上記揺動片を揺動可能に支持した上記凹部の支持部が断面円弧状にされている請求項1のシール装置。
【請求項4】
上記タービン動翼の軸方向に沿った上記揺動片の移動を緩衝する軸方向ダンパーをさらに有する請求項1のシール装置。
【請求項5】
上記揺動片を揺動可能に支持した上記凹部の支持部が断面円弧状にされており、
上記揺動片は、上記凹部の支持部を受け入れる上記軸方向に幅広にされた溝を有する請求項4のシール装置。
【請求項6】
上記揺動片の揺動支点から上記シールフィンを超えて延びた先端は、上記タービン動翼の側面に沿って折り曲げられており、
該折り曲げられた先端には、上記タービン動翼の側面に向けて別のシールフィンが凸設されている請求項4のシール装置。
【請求項7】
上記揺動片の揺動支点と上記シールフィンとの間から上記タービン動翼の側面に沿って延びた板状部材をさらに有し、
上記板状部材の先端には、上記タービン動翼の側面に向けて別のシールフィンが凸設されている請求項4のシール装置。
【請求項8】
回転するタービン動翼の先端に対向して、ダイアフラム外輪に設けられた凹部に支持され、上記タービン動翼の径方向に揺動可能に設けられた揺動片と、
上記タービン動翼の先端から上記揺動片に向けて上記径方向に凸設され、該タービン動翼の先端と上記揺動片との間の隙間を狭めるシールフィンと、
上記揺動片の揺動を緩衝する径方向ダンパーと、
を有するシール装置。
【請求項9】
上記揺動片の上記シールフィンの先端に対向する面に貼り付けられた快削材層をさらに有する請求項8のシール装置。
【請求項10】
上記径方向ダンパーは、上記シールフィンの先端が一定の微小隙間を介して上記タービン動翼の先端に対向する中立位置に上記揺動片を付勢するように上記径方向に延設されたバネである請求項1のシール装置。
【請求項11】
タービン動翼を含む回転部と、
タービンノズルを含む静止部と、
請求項1乃至請求項10のいずれかのシール装置と、
を有する蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−19381(P2013−19381A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154849(P2011−154849)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】