説明

シール装置およびこれを備えたボイラ

【課題】クリンカ等の落下に伴う水飛沫によって生じる熱衝撃が、耐火材およびシールプレートに加わることを防止したシール装置およびこれを備えたボイラを提供することを目的とする。
【解決手段】微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉と、該火炉の下部に設けられ該火炉内より生じる灰等を収容する灰処理装置と、の間に設けられ、上端が前記火炉の炉底部に接続され、下端が前記灰処理装置内に溜められた水の中に差し込まれることにより、前記火炉を外気からシールするシール装置であって、前記火炉の炉底部より支持されたシールプレートと、前記シールプレートを熱から保護する断熱材と、前記断熱材をクリンカ等の落下衝撃から保護する耐火材と、耐熱性を有する耐熱シートと、を備え、前記耐熱シートが、前記耐火材よりも前記火炉中心側に設けられていることを特徴とするシール装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ火炉下部に設けられたシール装置およびこれを備えたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭をミルにより微細化した微粉炭を燃料とする石炭焚きボイラにおいて、火炉で燃焼した微粉炭の一部は、クリンカとなって落下し排出される。火炉の下部には灰処理装置が設置されており、火炉から落下したクリンカは、灰処理装置内の水で冷却された後に、コンベア等により排出される。
【0003】
この火炉と灰処理装置の間には、ボイラ火炉内の圧力維持のため、外気からシールをするシール装置が設けられている。
【0004】
シール装置は、上端がボイラ火炉の炉底下側に固設され、下端は灰処理装置の上部トラフ内の水中に浸漬されたシールプレートを備えている。ボイラ火炉は熱膨脹により下方に伸びるので、その伸び代を水中で吸収する構造になっている。そして、シールプレートの内側には、火炉の輻射熱からシールプレートを保護するための、耐火材および断熱材が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−273708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この耐火材は、火炉からの輻射熱に曝されている環境下において、クリンカが灰処理装置内の水面に落下する際に生じる水飛沫によって急冷却される。このような加熱と急冷却との繰り返しによる熱衝撃によって、耐火材は剥離・脱落しやすくなる。耐火材が脱落すると、繊維質で強度を有しない断熱材も劣化・脱落してしまう。その結果、シールプレートが直接火炉からの輻射熱に曝されて高温となり、火災、やけど等の原因となる。
【0006】
また、耐火材は防水性がなく、熱疲労に対して非常にもろいため、灰処理装置内の水面近傍のシールプレートには耐火材を施工することができない。したがって、この水面近傍のシールプレートには、水面の変動によって加熱と冷却が繰り返されて大きな熱応力がかかると共に、乾湿を繰り返すことによって、亀裂・変形等の損傷が生じる。
【0007】
耐火材をメンテナンスする際には、ボイラを停止し、シール装置の下部に足場等を組む必要があるため、スケジュール上の制約も大きい。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、クリンカ等の落下に伴う水飛沫によって生じる熱衝撃が、耐火材およびシールプレートに加わることを防止したシール装置およびこれを備えたボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるシール装置は、微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉と、該火炉の下部に設けられ該火炉内より生じる灰等を収容する灰処理装置と、の間に設けられ、上端が前記火炉の炉底部に接続され、下端が前記灰処理装置内に溜められた水の中に差し込まれることにより、前記火炉を外気からシールするシール装置であって、前記火炉の炉底部より支持されたシールプレートと、前記シールプレートを熱から保護する断熱材と、前記断熱材をクリンカ等の落下衝撃から保護する耐火材と、耐熱性を有する耐熱シートと、を備え、前記耐熱シートが、前記耐火材よりも前記火炉中心側に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このようなシール装置によれば、火炉内で生成されるクリンカ等の塊が灰処理装置内の水面に落下する際の水飛沫が耐熱シートにかかることになるので、耐火材に直接かかることを防止することができる。これにより、火炉からの輻射熱による加熱と、水飛沫がかかることによる急冷却とを繰り返すことにより生じる熱衝撃によって、耐火材が剥離・脱落してしまうことを防止することができる。また、耐火材の剥離・脱落防止により、耐火性を有しない断熱材の劣化を防止することができる。その結果、シールプレートが直接加熱されて高温となってしまうことを防ぎ、やけど等の人的災害や火災の発生を防止し、ボイラの安全性を向上させることが可能となる。
また、耐火材または断熱材のメンテナンス頻度を大幅に低減でき、メンテナンスコストを削減することが可能となる。
さらに、耐熱シートによって、火炉からの輻射熱の遮蔽効果や、耐熱シートに付着した水飛沫が気化する際の吸熱反応が期待でき、シールプレートの温度上昇を抑えることができる。
【0011】
また、本発明にかかるシール装置は、前記耐熱シートが、複数重ねて設けられていることを特徴とする。
耐熱シートを複数重ねることにより、耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明にかかるシール装置は、前記耐熱シートと前記耐火材との間には、隙間が形成されていることを特徴とする。
【0013】
耐熱シートと耐火材との間に隙間が形成されているので、耐熱シートにかかった水飛沫が耐火材に浸透することを防止することができる。
【0014】
また、本発明にかかるボイラは、微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉と、該火炉の下部に設けられ該火炉内より生じる灰等を収容する灰処理装置と、これら火炉および灰処理装置との間に設けられた請求項1から3のいずれかに記載されたシール装置と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
このようなボイラによれば、安全性を向上させることができ、耐火材のメンテナンスのために定期的に停止させる必要もない。
【発明の効果】
【0016】
耐火材の火炉中心側に耐熱シートを設けることにより、クリンカ落下時の水飛沫が直接耐火材にかかることを防ぎ、熱衝撃によって耐火材が脱落することを防止したシール装置およびボイラを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係るシール装置およびこれを備えたボイラの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、微粉炭を燃料とする石炭炊きボイラの火炉の下部に設けられたシール装置およびその周辺が示されている。なお、図示していないが、火炉の上方には燃焼ガスが流通するダクトが接続されている。このダクトの各位置には、多数の伝熱管が配置されており、最終的には過熱蒸気が得られるようになっている。
シール装置1は、石炭をミルにより粉砕した微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉2の下部に設けられている。シール装置1の下部には、火炉2より生じる灰等を含むクリンカ10を収容する灰処理装置3が設けられている。灰処理装置3には、クリンカ10を冷却するために水が溜められている。
【0018】
シール装置1は、上端が火炉2の炉底下側に固定され、下端が灰処理装置3内の水中に浸漬されたシールプレート7を備えている。火炉2およびシールプレート7は、熱膨脹により下方に伸びるので、その伸び代を水中で吸収する構造になっている。また、このような構造とすることにより、火炉2を外気からシールすることが可能となっている。
シールプレート7の火炉2中心側には、火炉2の輻射熱からシールプレート7を保護する断熱材6が設けられている。また、断熱材6の火炉2中心側には、断熱材6を火炎から保護する耐火材5が設けられている。さらに、耐火材5の火炉2中心側には、耐火材5を水飛沫11から保護する耐熱シート8が設けられている。
【0019】
耐熱シート8は、耐熱性を有した可撓性を有する薄板であり、例えばセラミックスやシリカが用いられる。また、耐熱シート8は、耐火材5との間に隙間を設けるために、例えば6mm厚のガスケットを介してボルトとナットとで挟みこむことにより、耐火材5に固定する。耐熱シート8と耐火材5との間に隙間を設ける理由は、耐熱シート8に付着した水飛沫11が耐熱シート8を浸透して耐火材5に到達することを防止するためである。さらに耐熱シート8は複数重ねて設けられている。
なお、耐熱シート8は、クリンカ10が落下する際の水飛沫11がかかる範囲にて耐火材5を保護すれば良く、耐火材5の全面を覆う必要はない。また、耐熱シート8は、下端が水面より50mm程度上部となるように設けられていれば、耐火材5を水飛沫11より保護することが可能であるが、水中に浸漬するように設けても問題はない。
耐熱シート8は、横断面が矩形状とされたシール装置の各面に対して、それぞれ設けられている。この場合、耐熱シート8が熱膨脹するため、隣り合う耐熱シート8の側部同士を繋ぎ合わせることはせず、隙間ができないように側部がオーバーラップした状態で設けられている。
【0020】
本実施形態にかかる微粉炭ボイラに設けられたシール装置1は、クリンカ10が火炉2より落下した際に、以下のように用いられる。
火炉2で燃焼した微粉炭の一部は、クリンカ10となって落下し排出される。火炉2から落下したクリンカ10は、シール装置1を通って灰処理装置3に入り、灰処理装置3内の水で冷却される。クリンカ10が灰処理装置3内の水面に落下する際に水飛沫11が生じる。
【0021】
耐熱シート8は、水飛沫11から耐火材5を保護するように耐火材5よりも火炉側に取り付けられているため、耐火材5に水飛沫11がかかることを防止することができる。これにより、火炉2からの輻射熱による加熱と、水飛沫11がかかることによる急冷却とを繰り返すことにより生じる熱衝撃によって、耐火材5が剥離・脱落してしまうことを防止することができる。また、耐火材5の剥離・脱落防止により、耐火性を有しない断熱材6の劣化を防止することができる。その結果、シールプレート7が直接加熱されて高温となってしまうことを防ぎ、火災の発生を防止し、ボイラの安全性を向上させることが可能となる。
また、耐火材5または断熱材6のメンテナンス頻度を大幅に低減でき、メンテナンスコストを削減することが可能となる。
さらに、耐熱シート8によって、火炉2からの輻射熱の遮蔽効果や、耐熱シート8に付着した水飛沫11が気化する際の吸熱反応が期待でき、シールプレート7の温度上昇を抑制することも可能となる。
【0022】
また、耐熱シート8と耐火材5との間に隙間が形成されているので、耐熱シート8にかかった水飛沫が耐火材に浸透することを防止することができる。
さらに、耐熱シート8を、複数重ねて設けることにより、耐熱シート8の耐久性を向上させるとともに、耐熱シートにかかった水飛沫が、耐火材に浸透することを効果的に防止することができる。
【0023】
以上のとおり、本実施形態にかかるシール装置によれば、クリンカ10落下時の水飛沫11による熱衝撃が耐火材5に生じることを防ぎ、耐火材5の剥離・脱落を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るボイラ火炉下部に設けられたシール装置およびその周辺を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シール装置
2 火炉
3 灰処理装置
5 耐火材
6 断熱材
7 シールプレート
8 耐熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉と、該火炉の下部に設けられ該火炉内より生じる灰等を収容する灰処理装置と、の間に設けられ、
上端が前記火炉の炉底部に接続され、下端が前記灰処理装置内に溜められた水の中に差し込まれることにより、前記火炉を外気からシールするシール装置であって、
前記火炉の炉底部より支持されたシールプレートと、前記シールプレートを熱から保護する断熱材と、前記断熱材をクリンカ等の落下衝撃から保護する耐火材と、耐熱性を有する耐熱シートと、を備え、
前記耐熱シートが、前記耐火材よりも前記火炉中心側に設けられていることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記耐熱シートが、複数重ねて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記耐熱シートと前記耐火材との間には、隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
微粉炭等の固体燃料を燃焼させる火炉と、
該火炉の下部に設けられ該火炉内より生じる灰等を収容する灰処理装置と、
これら火炉および灰処理装置との間に設けられた請求項1から3のいずれかに記載されたシール装置と、
を備えていることを特徴とするボイラ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−209030(P2008−209030A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44032(P2007−44032)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】