説明

シール装置

【課題】シールすべき部材の端面に凹溝加工を必要とすることなく、組付性が非常に良好なシール装置を提供する。
【解決手段】第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとの間に、シールリング34を配置する。シールリング34は、内周側と外周側とが階段状に形成された環状且つ板状からなる。そして、少なくとも、シールリング34の内周側の上面及び外周側の下面は、弾性部材からなる。さらに、シールリング34の内周側と外周側との段差部分は、第1ハウジング31と第2ハウジング33の離間方向に弾性力を発揮する弾性変形可能な部分である。従って、第1ハウジング31と第2ハウジング33とによりシールリング34を押圧した場合には、第1ハウジング31とシールリング34の内周側の上面の弾性部材とが密着し、第2ハウジング33とシールリング34の外周側の下面の弾性部材とが密着することで、シールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材の間をシールするシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材の間をシールするために、例えば、2部材の対向する端面の間にOリングを配置していた。また、他の2部材の間をシールするための構成として、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、2部材の間に配置されるU字型のシール部材と、そのU字型のシール部材の内側に配置されたバネ部材とを備える構成が開示されている。
【特許文献1】特開平11−210886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、Oリングを用いる場合には、一方の部材の端面にOリングを取り付ける凹溝を形成しなければならない。そのため、加工コストが増大する。また、Oリングを用いる場合には、シールすべき2部材の端面が環状である場合に限られる。さらに、シールすべき2部材の端面が、円環状ではなく、角部が形成されるような複雑な環状の場合には、Oリングの組付けが非常に困難であり、組付性が非常に悪い。そのため、製造コストが増大する。
【0004】
また、特許文献1に開示された構成の場合には、シール部材とバネ部材との2部材が必要となり、部品点数が増加する。さらに、バネ部材をシール部材の内側に配置しなければならず、組付けが容易とは言えない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シールすべき部材の端面に凹溝加工を必要とすることなく、組付性が非常に良好なシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシール装置は、第1端面を有する第1部材と、第1端面に対向して配置される第2端面を有する第2部材と、第1端面と第2端面との間に第1端面及び第2端面により押圧された状態で配置され、第1端面と第2端面との間をシールするシール部材とを備える。
【0007】
そして、第1端面及び第2端面により押圧される前の状態におけるシール部材は、第1接触部と、第2接触部と、弾性変形部とを備える。第1接触部は、板状からなり、第1端面に接触可能で且つ弾性部材からなる第1面と第2端面に対向して離間する第2面とを備える。第2接触部は、板状からなり、第1接触部の対向位置からずれた位置に配置され、且つ、第2端面に接触可能で且つ弾性部材からなる第3面と第1端面に対して離間する第4面とを備える。弾性変形部は、第1接触部及び第2接触部に一体接合され、第1端面と第2端面とが対向する方向に弾性変形可能な部材である。
【0008】
つまり、シール部材は、階段状のような形状からなる。具体的には、第1接触部と第2接触部とが段差を有するように配置されている。そして、これら第1接触部と第2接触部との間を弾性変形部が連結している。ここで、弾性変形部は、上述したように、第1端面と第2端面とが対向する方向に弾性変形可能である。従って、第1端面及び第2端面によりシール部材が押圧される場合には、第1接触部と第2接触部とが近接する方向に移動する。このとき、弾性変形部には、第1接触部と第2接触部とを離間させる方向に弾性力が作用する。
【0009】
ここで、シール部材が、第1端面及び第2端面により押圧された場合(以下、単に「押圧された場合」という)について説明する。第1接触部の第1面は、シール部材が第1端面及び第2端面により押圧される前(以下、単に「押圧前の場合」という)において、上述したように、第1部材の第1端面に接触可能である。そして、第1接触部の第1面は、シール部材が押圧された場合には、第1部材の第1端面に接触した状態を維持する。このとき、第1接触部の第1面は、弾性部材からなるので、第1端面により圧縮変形される。
【0010】
また、第1接触部の第2面は、シール部材が押圧前の場合において、第2部材の第2端面に対向して離間している。そして、第1接触部の第2面は、シール部材が押圧された場合には、第2部材の第2端面に対向して離間した状態を維持する場合と、第2部材の第2端面に接触する場合とがある。これらは、第1部材と第2部材との相対移動量及び押圧力に応じて異なる。なお、シール部材が押圧された場合に第1接触部の第2面が第2部材の第2端面から離間した状態を維持する場合には、押圧前の場合に比べて、第2面と第2端面との離間距離は狭くなっている。
【0011】
また、第2接触部の第3面は、シール部材が押圧前の場合において、上述したように、第2部材の第2端面に接触可能である。そして、第2接触部の第3面は、シール部材が押圧された場合には、第2部材の第2端面に接触した状態を維持する。このとき、第2接触部の第3面は、弾性部材からなるので、第2端面により圧縮変形される。
【0012】
また、第2接触部の第4面は、シール部材が押圧前の場合において、第1部材の第1端面に対向して離間している。そして、第2接触部の第4面は、シール部材が押圧された場合には、第1部材の第1端面に対向して離間した状態を維持する場合と、第1部材の第1端面に接触する場合とがある。これらは、第1部材と第2部材との相対移動量及び押圧力に応じて異なる。なお、シール部材が押圧された場合に第2接触部の第4面が第1部材の第1端面から離間した状態を維持する場合には、押圧前の場合に比べて、第4面と第1端面との離間距離は狭くなっている。
【0013】
そして、シール部材が押圧された場合には、弾性変形部には、上述したように、第1接触部と第2接触部とが離間する方向に弾性力が作用する。つまり、弾性変形部は、第1接触部の第1面を第1部材の第1端面に押圧するように作用し、第2接触部の第3面を第2部材の第2端面に押圧するように作用する。従って、弾性変形部の弾性力により、第1接触部の第1面と第1部材の第1端面、及び、第2接触部の第3面と第2部材の第2端面は、密着性が高まる。
【0014】
従って、本発明のシール装置によれば、少なくとも第1接触部の第1面及び第2接触部の第3面が弾性部材からなることにより、第1接触部の第1面と第1部材の第1端面、及び、第2接触部の第3面と第2部材の第2端面がそれぞれ確実に密着する。さらに、弾性変形部の弾性力により、これらの密着性がさらに高まる。つまり、確実に、第1部材と第2部材との間をシールすることができる。
【0015】
さらに、従来のOリングを用いる場合のように、第1部材の第1端面又は第2部材の第2端面に凹溝を形成する必要がない。従って、加工コストの低減を図ることができる。さらに、本発明のシール部材は、環状に限られるものではない。従って、環状でない2部材の間をシールすることが可能となる。さらに、本発明のシール部材は、円環状に限られるものではないため、種々の形状に形成することができる。従って、第1部材の第1端面及び第2部材の第2端面が、例えば角部が形成されるような複雑な環状の場合であっても、シール部材をこれら2部材の端面の形状に合わせた形状とすることが容易にできる。さらには、Oリングのように凹溝に挿入することもない。つまり、シール部材の組付性が非常に良好となる。
【0016】
また、本発明のシール部材は、第1接触部、第2接触部、及び、弾性変形部が一体となった1部品からなる。従って、特許文献1に開示された構成のように、2部品構成ではない。その結果、部品点数の低減、及び、組付性の容易化を図ることができる。さらに、特許文献1に開示されたシール部材はU字型形状をなしており、U字型形状のシール部材の内側にバネ部材を配置している。このように、第1部材と第2部材との間にこのシール部材及びバネ部材を配置した場合には、第1部材の第1端面と第2部材の第2端面との離間距離は、シール部材のU字状の対向部分の厚みとバネ部材の厚みとを加えた分に相当する。これに対して、本発明のシール部材は、第1接触部と第2接触部とが相互に対向しないようにずれた位置に配置されている。従って、第1部材の第1端面と第2部材の第2端面との離間距離は、最小の状態で、第1接触部、第2接触部、及び、弾性変形部のうち最も厚い部材の厚みに相当する距離とすることができる。つまり、本発明のシール装置は、特許文献1のシール構成に比べて、第1端面と第2端面との離間距離を狭くすることができる。従って、本発明のシール装置を採用した装置は、小型化を図ることができる。
【0017】
ここで、上述においては、シール部材の表面のうち弾性部材からなる部分は、少なくとも第1接触部の第1面及び第2接触部の第3面とした。これは、少なくとも、第1部材の第1端面には第1接触部の第1面が接触し、且つ、第2部材の第2端面には第2接触部の第3面が接触するためである。ところで、第1部材と第2部材との相対移動量及び押圧力によっては、第2部材の第2端面と第1接触部の第2面とが接触し、且つ、第1部材の第1端面と第2接触部の第4面とが接触する場合がある。さらに、弾性変形部の両表面も、第1部材の第1端面及び第2部材の第2端面に接触する場合がある。
【0018】
そこで、このような場合には、以下のようにすると、さらにシール性を高めることができる。すなわち、弾性変形部は、板状からなり、弾性部材からなる両表面を備え、第1接触部の第2面及び第2接触部の第4面は、弾性部材からなるようにする。これにより、第1部材の第1端面に、第1接触部の第1面、第2接触部の第4面、及び、弾性変形部の一方側の面が接触した場合に、これらの接触箇所全てがシール性を発揮する。さらに、第2部材の第2端面に、第2接触部の第3面、第1接触部の第2面、及び、弾性変形部の他方側の面が接触した場合に、これらの接触箇所全てがシール性を発揮する。従って、シール性を大きく向上できる。
【0019】
ここで、第1接触部、第2接触部、及び、弾性変形部からなるシール部材は、例えば、以下のようにしてもよい。例えば、シール部材は、金属や樹脂などの高剛性材料からなる部材と、この部材の両面側に例えばゴムなどの粘弾性材料を配置した構成とし、これを屈曲変形して階段状に形成するようにしてもよい。この場合、上述した弾性部材とはゴムに相当する。この他に、シール部材は、ゴムなどの粘弾性材料のみからなるようにしてもよい。つまり、シール部材の全てが粘弾性材料からなるようにしてもよい。
【0020】
また、上述において、第1部材の第1端面と第2部材の第2端面との離間距離は、最小の状態で、第1接触部、第2接触部、及び、弾性変形部のうち最も厚い部材の厚みに相当する距離となることを説明した。この状態とは、換言すると、以下のような状態となる。すなわち、シール部材は、第1端面及び第2端面により押圧された状態において、第1接触部、第2接触部、及び、弾性変形部は、同一平面上に位置するような状態である。このようにすることで、第1部材の第1端面と第2部材の第2端面との離間距離を確実に最小化することができる。
【0021】
なお、第1部材、第2部材、シール部材は、以下のような形状の場合に、本発明のシール装置を確実に適用することができる。例えば、第1端面及び第2端面は、環状からなり、シール部材は、環状からなる場合である。
【0022】
この場合、例えば、シール部材が第1端面及び第2端面により押圧される前の状態において、第1接触部の第1面は、環状面からなり、第1端面に全周接触可能であり、第2接触部の第3面は、環状面からなり、第2端面に全周接触可能であるようにするとよい。このように、第1接触部の第1面が第1端面に全周接触可能であり、且つ、第2接触部の第3面が第2端面に全周接触可能であるようにすることで、環状部材間をより確実にシールすることができる。
【0023】
また、他の例としては、第1部材は、第1端面側に凹部が形成されるようにし、さらに、この凹部に配置され、配線を挿通可能なグロメットを備える場合には、以下のようにするとよい。すなわち、シール部材が第1端面及び第2端面により押圧される前の状態において、第1接触部の第1面は、環状面からなり、第1端面又はグロメットに全周接触可能であり、第2接触部の第3面は、環状面からなり、第2端面に全周接触可能であるようにする。このように、グロメットが配置される場合であっても、確実にシールすることができる。なお、グロメットが第1接触部の第1面に確実に接触するために、グロメットは弾性部材からなり、このグロメットの端面は第1部材の第1端面よりも僅かに突出するようにしておくとよい。
【0024】
そして、上述したシール装置は、例えば、車両用舵角比可変操舵装置に適用することができる。この場合、第1部材及び第2部材の少なくとも何れか一方は、車両用舵角比可変操舵装置のハウジングとなる。車両用舵角比可変操舵装置のハウジングの内部には、モータ、及び、高精度の減速機などが収納されている。そのため、車両用舵角比可変操舵装置は、非常に高い防水性、防塵性が要求される。さらには、車両用舵角比可変操舵装置は、小型化及び低コスト化の要請が非常に高い装置である。そこで、本発明のシール装置を車両用舵角比可変操舵装置に適用することで、非常に高い防水性、防塵性を確保しつつ、小型化、さらには製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のシール装置によれば、シールすべき部材の端面に凹溝加工を必要とすることなく、組付性が非常に良好とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明のシール装置を車両用操舵装置に適用した場合を例に挙げて説明する。まず、本実施形態における車両用操舵装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、車両用操舵装置1の軸方向断面図である。
【0027】
まずは、車両用操舵装置1の概略構成について説明する。車両用操舵装置1は、図1の上側に配置されるステアリングホイール(図示せず)と図1の下側に配置されるラックシャフト(図示せず)との間のステアリングシャフト(図示せず)の部分に搭載されている。つまり、図1において、車両用操舵装置1の上側には、ステアリングホイールが連結されており、車両用操舵装置1の下側には、ラックシャフトが連結されている。
【0028】
さらに、車両用操舵装置1は、舵角比可変操舵装置2と、トルク検出装置3とを備える。舵角比可変操舵装置2は、ステアリングホイールの操舵角と車輪(図示せず)の転舵角との比(いわゆる、舵角比)を変化させることのできる装置である。トルク検出装置3は、ステアリングホイールの操舵により生じたトルクを検出する装置である。このトルク検出装置3は、電動パワーステアリング装置の一部を構成し、ラックシャフトに配置された電動パワーステアリング装置の電動機を駆動するための信号を出力する。
【0029】
次に、車両用操舵装置1の詳細構成について説明する。図1に示すように、車両用操舵装置1は、舵角比可変操舵装置2と、トルク検出装置3と、これらを収納するハウジング部4とから構成される。
【0030】
舵角比可変操舵装置2(本発明における車両用舵角比可変操舵装置)は、入力シャフト11と、出力シャフト12と、電動機13と、減速機14と、ロック装置15とを備えている。
【0031】
入力シャフト11は、上端側がステアリングシャフトに連結される。従って、入力シャフト11は、ステアリングホイールの操舵角を入力する。出力シャフト12は、入力シャフト11に入力された操舵角に対して、電動機13の駆動により変化された回転角を出力する。
【0032】
電動機13は、出力シャフト12の外周側に回転可能に配置されたロータシャフト13aと、後述する第1ハウジング31に固定されたステータ13bとから構成される。そして、ステータ13bのコイルに電流を供給することにより、ロータシャフト13aが回転する。減速機14は、ハーモニックドライブ減速機からなる。この減速機14は、入力シャフト11、出力シャフト12、ロータシャフト13aにそれぞれ噛合されている。具体的には、この減速機14のウェーブジェネレータは、ロータシャフト13aに噛合されている。減速機14のステータギヤは、入力シャフト11に噛合されている。減速機14のドリブンギヤは、出力シャフト12に噛合されている。すなわち、減速機14は、入力シャフト11の回転を出力シャフト12に伝達すると共に、電動機13により出力される回転を減速して出力シャフト12に伝達している。
【0033】
ロック装置15は、後述する第1ハウジング31に固定されている。このロック装置15は、第1ハウジング31に対するロータシャフト13aの回転をロックするための装置である。
【0034】
トルク検出装置3は、トーションバー21と、ピニオンシャフト22と、検出器23とを備えている。トーションバー21は、上端側が出力シャフト12に結合されている。一方、トーションバー21の下端側は、ピニオンシャフト22に結合されている。つまり、トーションバー21は、ピニオンシャフト22に対して出力シャフト12に生じるトルクに応じて捻られる。ピニオンシャフト22は、下端側にピニオンギヤ22aが形成されている。このピニオンギヤ22aは、ラックシャフトのラックギヤに噛合する。検出器23は、出力シャフト12の下端側部分の外周側、且つ、ピニオンシャフト22の外周側に配置されている。そして、この検出器23は、出力シャフト12の回転角とピニオンシャフト22の回転角を検出することができる。つまり、検出器23は、出力シャフト12に生じるトルクを検出することができる。
【0035】
ハウジング部4は、第1ハウジング31と、グロメット32と、第2ハウジング33と、シールリング34とを備えている。ここで、ハウジング部4については、図1〜図3を参照しながら説明する。図2は、第1ハウジング31と第2ハウジング33とが組み付けられる前におけるハウジング部4の状態を示す斜視図である。図3は、図2に示すシールリング34の軸方向断面図を示す。
【0036】
第1ハウジング31(本発明における第1部材)は、図1及び図2に示すように、筒状をなしている。具体的には、第1ハウジング31は、図1の上側ほど階段状に細くなるような筒状をなしている。この第1ハウジング31の内部には、主として、舵角比可変操舵装置2が収納されている。さらに、第1ハウジング31の図1の上端の開口穴からは、入力シャフト11が上方へ向かって突出している。第1ハウジング31の図1の下端の開口穴からは、出力シャフト12が下方へ向かって突出している。また、第1ハウジング31の下端面31a(本発明における第1端面)は、図1のほぼ水平な平坦面状で、ほぼ環状に形成されている。ただし、第1ハウジング31の下端側には、図1の上側に凹んだ矩形状からなる凹部31b(図2に示す)が形成されている。さらに、第1ハウジング31の下端面31aの一部は、第2ハウジング33と固定するためのボルト(図示せず)を挿通するフランジ部31cを形成している。
【0037】
グロメット32は、ゴム製であって、直方体形状をなしている。さらに、グロメット32は、舵角比可変操舵装置2の電動機13などに接続される配線を挿通するために、複数の穴(図2に示す)が形成されている。このグロメット32は、第1ハウジング31に形成された凹部31bに嵌合するように配置される。ここで、グロメット32の図2の上下方向の幅は、凹部31bの図2の上下方向の深さよりも僅かに大きく形成されている。これは、後述するシールリング34とグロメット32の下端面とを確実に接触させるためである。
【0038】
第2ハウジング33(本発明における第2部材)は、図1及び図2に示すように、筒状をなしている。この第2ハウジング33は、第1ハウジング31の図1の下方側に対向して配置されている。そして、第2ハウジング33の内部には、主として、トルク検出装置3が収納されている。さらに、第2ハウジング33の図1の下端の開口穴からは、ピニオンシャフト22が下側に向かって突出している。さらには、第2ハウジング33の図1の下端の開口穴からは、検出器23に接続される配線が取り出されている。また、第2ハウジング33の上端面33a(本発明における第2端面)は、図1のほぼ水平な平坦面状で、環状に形成されている。そして、この第2ハウジング33の上端面33aは、第1ハウジング31の下端面31aと対称的な形状をなしている。つまり、第2ハウジング33の上端面33aの全面が、第1ハウジング31の下端面31aに対向している。さらに、第2ハウジング33の上端面33aの一部は、第1ハウジング31と固定するためのボルトを挿通するフランジ部33bを形成している。
【0039】
シールリング34(本発明におけるシール部材)は、図1〜図3に示すように、板状であって、環状をなしている。このシールリング34は、図1に示すように、第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとの間に、図1の上下方向に押圧された状態で挟まれている。従って、シールリング34は、第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとの間をシールしている。さらに、シールリング34は、グロメット32の下端面と第2ハウジング33の上端面33aとの間に、図1の上下方向に押圧された状態で挟まれている。従って、シールリング34は、グロメット32の下端面と第2ハウジング33の上端面33aとの間をシールしている。
【0040】
ここで、シールリング34は、第1ハウジング31又はグロメット32と第2ハウジング33とにより押圧された状態で取り付けられる。そして、このシールリング34は、これらに押圧される前の状態の形状と、押圧された後の状態の形状とで異なる。そこで、以下に、押圧される前の状態のシールリング34と、押圧された後の状態のシールリング34とに分けて説明する。
【0041】
まず、第1ハウジング31、グロメット32、及び第2ハウジング33に押圧される前の状態におけるシールリング34について、図2及び図3を参照して説明する。
【0042】
図2に示すように、シールリング34の全体的な形状は、第2ハウジング33の上端面33aに対応する環状をなしている。さらに、シールリング34には、第1ハウジング31及び第2ハウジング33を固定するためのボルトを挿通する穴が形成されている。このシールリング34は、図3に示すように、鋼板の両側面(図3の上下面)にゴムが接着されている。そして、シールリング34の板厚は、ほぼ一定である。さらに、図2及び図3に示すように、シールリング34の内周側と外周側とは、段差を有している。つまり、鋼板及びゴムが屈曲形成された状態となる。
【0043】
このシールリング34の詳細な構成について説明する。シールリング34は、第1接触部41と、第2接触部42と、弾性変形部43とから構成される。第1接触部41は、シールリング34の内周側に位置する部分である。つまり、第1接触部41は、環状であって、平坦板状をなしている。そして、この第1接触部41は、図3の上下方向中央に配置される鋼板部41aと、その上側に接着された第1ゴム部41bと、鋼板部41aの下側に接着された第2ゴム部41cとからなる。つまり、第1ゴム部41bの上面(本発明における第1面)は、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面に対向している。また、第2ゴム部41cの下面(本発明における第2面)は、第2ハウジング33の上端面33aに対向している。さらに、シールリング34が第1ハウジング31等に押圧される前においては、第1ゴム部41bの上面は第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面に接触することが可能であるが、第2ゴム部41cの下面は第2ハウジング33の上端面33aに対して離間している状態となる。
【0044】
第2接触部42は、シールリング34の外周側に位置する部分である。つまり、第2接触部42は、環状であって、平坦板状をなしている。さらに、第2接触部42は、第1接触部41の対向位置からずれた位置に配置されている。つまり、第2接触部42は、第1接触部41の図3の上下方向に対してずれた位置に配置されている。そして、この第2接触部42は、図3の上下方向中央に配置される鋼板部42aと、その下側に接着された第3ゴム部42bと、鋼板部42aの上側に接着された第4ゴム部42cとからなる。つまり、第3ゴム部42bの下面(本発明における第3面)は、第2ハウジング33の上端面33aに対向している。また、第4ゴム部42cの上面(本発明における第4面)は、第1ハウジング31の下端面31aに対向している。さらに、シールリング34が第1ハウジング31等に押圧される前においては、第3ゴム部42bの下面は第2ハウジング33の上端面33aに接触することが可能であるが、第4ゴム部42cの上面は第1ハウジング31の下端面31aに対して離間している状態となる。
【0045】
弾性変形部43は、第1接触部41の外周端と第2接触部42の内周端とに一体的に接合されている部分である。つまり、弾性変形部43は、環状であって、図3の上側に向かって縮径するような形状からなる。そして、弾性変形部43は、第1接触部41及び第2接触部42と同様に、図3の上下方向中央に配置される鋼板部43aと、その上側に接着される第5ゴム部43bと、鋼板部43aの下側に接着される第6ゴム部43cとからなる。つまり、第5ゴム部43bの上面は、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面に傾斜した状態で対向している。また、第6ゴム部43cの下面は、第2ハウジング33の上端面33aに傾斜した状態で対向している。
【0046】
そして、弾性変形部43は、第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとが対向する方向、すなわち図3の上下方向に弾性変形可能である。つまり、第1接触部41と第2接触部42とが近接する方向に移動した場合、弾性変形部43には、第1接触部41と第2接触部42とを離間する方向に弾性力が作用する。
【0047】
次に、第1ハウジング31、グロメット32、及び、第2ハウジング33に押圧された後の状態におけるシールリング34について、図1を参照して説明する。この場合、図1に示すように、シールリング34は、環状であって、平坦板状となっている。つまり、第1接触部41、第2接触部42、及び、弾性変形部43の全てが、同一平面上に位置している。
【0048】
ここで、第1ハウジング31等に押圧される前の状態から押圧された後の状態までにおけるシールリング34の変形過程について説明する。まず、第1ハウジング31及びグロメット32と、第2ハウジング33との間に、図3に示すように、シールリング34を配置する。続いて、第1ハウジング31及びグロメット32と、第2ハウジング33との離間距離を小さくする。そうすると、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面が、シールリング34の第1接触部41の第1ゴム部41bの上面に接触する。このとき、第2ハウジング33の上端面と第1接触部41の第2ゴム部41cの下面とは、離間している。さらに、第2ハウジング33の上端面33aが、シールリング34の第2接触部42の第3ゴム部42bの下面に接触する。このとき、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面と第2接触部42の第4ゴム部42cの上面とは、離間している。そして、弾性変形部43の第5ゴム部43b及び第6ゴム部43cは、第1ハウジング31、グロメット32、及び、第2ハウジング33に対して、傾斜した状態で対向し、且つ、離間している。
【0049】
続いて、第1ハウジング31及びグロメット32と、第2ハウジング33との離間距離をさらに小さくする。そうすると、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面が、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面を押圧する。従って、第1ゴム部41bは、図3の上下方向に圧縮変形する。第2ハウジング33の上端面33aが、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面を押圧する。従って、第3ゴム部42bは、図3の上下方向に圧縮変形する。弾性変形部43は、第1ハウジング31、グロメット32、及び、第2ハウジング33に対する傾斜角度が緩やかになるように変形する。従って、弾性変形部43は、第1接触部41及び第2接触部42に対して、第1接触部41と第2接触部42とが離間する方向に弾性力を発揮する。つまり、この弾性変形部43の弾性力により、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面は、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面を押圧する。また、弾性変形部43の弾性力により、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面は、第2ハウジング33の上端面33aを押圧する。
【0050】
このように、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面は、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面に対して押圧され合いながら接触している。従って、第1ゴム部41bの上面と、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面との密着力は、非常に高くなる。さらに、第2接触部43の第3ゴム部42bの下面は、第2ハウジング33の上端面33aに対して押圧され合いながら接触している。従って、第3ゴム部42bの下面と、第2ハウジング33の上端面33aとの密着力は、非常に高くなる。
【0051】
続いて、図1に示すように、第1ハウジング31及びグロメット32と、第2ハウジング33との離間距離を、最小となる状態まで小さくする。そうすると、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面が、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面をさらに押圧する。従って、第1ゴム部41bは、図1の上下方向に圧縮変形する。そして、第2ハウジング33の上端面33aが、第1接触部41の第2ゴム部41cの下面に接触し、押圧する。従って、第2ゴム部41cは、図1の上下方向に圧縮変形する。
【0052】
また、第2ハウジング33の上端面33aが、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面をさらに押圧する。従って、第3ゴム部42bは、図1の上下方向に圧縮変形する。そして、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面が、第2接触部42の第4ゴム部42cの上面に接触し、押圧する。従って、第4ゴム部42cは、図1の上下方向に圧縮変形する。
【0053】
さらに、弾性変形部43は、第1ハウジング31、グロメット32、及び、第2ハウジング33に対して、傾斜していない状態で対向するような角度に変形する。そして、弾性変形部43の第5ゴム部43bの上面が、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面に接触し、押圧される。さらに、弾性変形部43の第6ゴム部43cが、第2ハウジング33の上端面33aに接触し、押圧される。そして、弾性変形部43は、第1接触部41及び第2接触部42に対して、第1接触部41と第2接触部42とが離間する方向にさらに大きな弾性力を発揮する。つまり、この弾性変形部43の弾性力により、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面は、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面を押圧する。また、弾性変形部43の弾性力により、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面は、第2ハウジング33の上端面33aを押圧する。
【0054】
つまり、弾性変形部43の弾性力が作用しつつ、第1接触部41、第2接触部42、及び、弾性変形部43が、同一平面上に位置するような状態となる。このように、各部41、42、43が同一平面上に位置するような状態となることにより、上述したように、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面、第2接触部42の第4ゴム部42cの上面、及び、弾性変形部43の第5ゴム部43bの上面が、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面に対して接触し、押圧される。従って、シールリング34の上記部分全てが、第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面との間をシールしている。
【0055】
また、第1接触部41の第2ゴム部41cの下面、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面、及び、弾性変形部43の第6ゴム部43cの下面が、第2ハウジング33の上端面33aに対して接触し、押圧される。従って、シールリング34の上記部分全てが、第2ハウジング33の上端面33aとの間をシールしている。
【0056】
ここで、第1ハウジング31、第2ハウジング33、及び、シールリング34のうち、固定されるボルトの付近においては、第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33との離間距離は、ほとんど変化しない。従って、この付近においては、シールリング34の全ての面により、シール性を発揮する。
【0057】
しかし、ボルトの位置から遠ざかるほど、車体振動などが生じた場合には、第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとの離間距離が大きくなるように動作するおそれがある。ここで、上述したように、シールリング34の弾性変形部43は、第1接触部41と第2接触部42とを離間する方向に弾性力を常に作用させている。従って、車体振動などにより第1ハウジング31の下端面31aと第2ハウジング33の上端面33aとの離間距離が大きくなるような場合であっても、弾性変形部43の弾性力により、第1接触部41の第1ゴム部41bの上面が第1ハウジング31の下端面31a及びグロメット32の下端面に接触した状態を維持する。さらに、弾性変形部43の弾性力により、第2接触部42の第3ゴム部42bの下面が第2ハウジング33の上端面33aに接触した状態を維持する。従って、このような場合であっても、確実にシールすることができる。
【0058】
また、シールリング34を配置する位置は、第1ハウジング31の下端面31a又はグロメット32の下端面と、第2ハウジング33の上端面33aとの間である。つまり、従来のようにOリングを配置するための凹溝を形成する必要がない。従って、加工コストの低減を図ることができ、さらに組付性を良好とすることができる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、環状の第1ハウジング31と環状の第2ハウジング33との間に、シールリング34を配置するようにした。従って、上記実施形態においては、シールリング34は、環状とした。しかし、シールすべき部分が環状でない場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】車両用操舵装置1の軸方向断面図である。
【図2】第1ハウジング31と第2ハウジング33とが組み付けられる前におけるハウジング部4の状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すシールリング34の軸方向断面図を示す。
【符号の説明】
【0061】
1:車両用操舵装置、 2:舵角比可変操舵装置、 3:トルク検出装置、
4:ハウジング部、
11:入力シャフト、 12:出力シャフト、 13:電動機、
13a:ロータシャフト、 13b:ステータ、 14:減速機、 15:ロック装置、
21:トーションバー、 22:ピニオンシャフト、 22a:ピニオンギヤ、
23:検出器、
31:第1ハウジング、 32:グロメット、 33:第2ハウジング、
34:シールリング、
41a、42a、43a:鋼板部、 41b:第1ゴム部、 41c:第2ゴム部、
42b:第3ゴム部、 42c:第4ゴム部、 43b:第5ゴム部、
43c:第6ゴム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面を有する第1部材と、
前記第1端面に対向して配置される第2端面を有する第2部材と、
前記第1端面と前記第2端面との間に前記第1端面及び前記第2端面により押圧された状態で配置され、前記第1端面と前記第2端面との間をシールするシール部材と、
を備えるシール装置であって、
前記第1端面及び前記第2端面により押圧される前の状態における前記シール部材は、
板状からなり、前記第1端面に接触可能で且つ弾性部材からなる第1面と前記第2端面に対向して離間する第2面とを備える第1接触部と、
板状からなり、前記第1接触部の対向位置からずれた位置に配置され、且つ、前記第2端面に接触可能で且つ弾性部材からなる第3面と前記第1端面に対して離間する第4面とを備える第2接触部と、
前記第1接触部及び前記第2接触部に一体接合され、前記第1端面と前記第2端面とが対向する方向に弾性変形可能な弾性変形部と、
を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記弾性変形部は、板状からなり、弾性部材からなる両表面を備え、
前記第1接触部の前記第2面及び前記第2接触部の前記第4面は、弾性部材からなる請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
前記第1端面及び前記第2端面により押圧された状態において、前記第1接触部、前記第2接触部、及び、前記弾性変形部は、同一平面上に位置する請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記第1端面及び前記第2端面は、環状からなり、
前記シール部材は、環状からなる請求項1〜3の何れか一項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記シール部材が前記第1端面及び前記第2端面により押圧される前の状態において、
前記第1接触部の前記第1面は、環状面からなり、前記第1端面に全周接触可能であり、
前記第2接触部の前記第3面は、環状面からなり、前記第2端面に全周接触可能である請求項4記載のシール装置。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1端面側に凹部が形成され、
前記凹部に配置され、配線を挿通可能なグロメットをさらに備え、
前記シール部材が前記第1端面及び前記第2端面により押圧される前の状態において、
前記第1接触部の前記第1面は、環状面からなり、前記第1端面又は前記グロメットに全周接触可能であり、
前記第2接触部の前記第3面は、環状面からなり、前記第2端面に全周接触可能である請求項4記載のシール装置。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも何れか一方は、車両用舵角比可変操舵装置のハウジングである請求項1〜6の何れか一項に記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−146961(P2007−146961A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342084(P2005−342084)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】