説明

シール装置

【課題】主軸内部等への異物の侵入を確実に防止できるのは勿論のこと、コストを低減することができるとともに、装置の電源が落とされた場合等であっても省エネ化を図った上で対応可能なシール装置を提供する。
【解決手段】主軸装置21内部の温度を検出するための温度検出センサ4a、4bと、主軸装置21外部の温度を検出するための温度検出センサ4cと、主軸22の回転速度を検出するための回転速度検出センサ5と、主軸装置21内へ圧縮エアを供給するためのエア供給装置2と、各センサ4a、4b、4c、5と電気的に接続され、各センサにおいて検出される主軸装置21内部の温度、主軸装置21外部の温度、及び主軸22の回転速度にもとづいて、エア供給装置2による主軸装置21内への圧縮エアの供給の要否を制御する制御装置3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば主軸等といった回転体を備えてなる回転体装置内への外気の侵入を防止するためのシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば主軸を回転可能に軸支した主軸装置を有する工作機械において、主軸装置は切削液や粉塵等といった微少な異物を多く含んだ雰囲気中で使用される場合が多い。このような雰囲気中で主軸装置を使用するにあたっては、主軸と主軸を軸支する主軸カバーとの隙間から侵入する異物により、軸受やモータなどの寿命が低下するといった問題がある。特に、主軸を高速で回転させた場合、主軸装置内部で発熱して内部の空気が膨張し、主軸の外部へ空気を放出した状態となるため、この状態から主軸の回転を停止もしくは減速させると、内部温度が下がる過程において外部の空気を吸い込むため、上記問題が顕著となる。
【0003】
そこで、主軸を停止もしくは減速させた際における外気の吸い込みを防止すべく、カバーに比較的大きな空気流通孔を形成して、主軸の内外での圧力バランスを安定に保つことにより、切削液や粉塵等の異物の侵入を防止しようしたものが、従来考案されている(たとえば、特許文献1)。
また、圧力検出センサを用いることにより、主軸回転中におけるラビリンス部等の圧力を検出して、常に正圧となるようにラビリンス部へエアを供給することにより、主軸内部への異物の侵入を防止しようとするものもある(たとえば、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−261603号公報
【特許文献2】特公平8−22494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ただ空気流通孔を開設するといった特許文献1のような構成では、異物侵入防止といった効果に限界がある。また、特許文献2のような構成では、ラビリンス部内の空気圧を検出しなければならないため、温度検出センサ等と比較して高価な圧力検出センサを用いる必要があり、コスト高を招くことになる。さらに、たとえば圧力調整装置の電源を落とした場合や停電等により急に電源が落ちた場合には、エアの供給が途中で停止してしまい主軸内部への異物の侵入を許してしまったり、電源を再び入れたり停電が復旧するまでエアを供給し続けて無駄に消費してしまったりするといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、主軸内部等への異物の侵入を確実に防止できるのは勿論のこと、コストを低減することができるとともに、装置の電源が落とされた場合等であっても省エネ化を図った上で対応可能なシール装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、回転体を回転可能に軸支してなる回転体装置への外気の侵入を防止するためのシール装置であって、前記回転体装置内部の温度を検出するための第一温度検出手段と、前記回転体装置が設置されている雰囲気の温度を検出するための第二温度検出手段と、前記回転体装置における前記回転体の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、前記回転体装置内へ圧縮性流体を供給するための流体供給手段と、前記第一温度検出手段、前記第二温度検出手段、及び前記回転速度検出手段と電気的に接続され、各検出手段において検出される前記回転体装置内部の温度、前記回転体装置が設置されている雰囲気の温度、及び前記回転体の回転速度にもとづいて、前記流体供給手段による前記回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御手段が、第一温度検出手段、及び第二温度検出手段による温度検出を周期的に行い、前回の検出値と今回の検出値との差にもとづいて、流体供給手段による回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、流体供給手段において、回転体装置内へ供給する圧縮性流体の流量を制御可能としたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、制御手段が、第一温度検出手段及び第二温度検出手段による検出値をもとに流体供給手段による圧縮性流体の供給時間を決定し、前記圧縮性流体の供給を開始してから前記供給時間の経過をもって前記圧縮性流体の供給を停止することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、流体供給手段に、圧縮性流体を貯留可能な圧縮性流体貯留手段と、該圧縮性流体貯留手段内における圧縮性流体の圧力を測定可能な圧力計とを備え、前記圧縮性流体貯留手段にて圧縮性流体の圧力を調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一温度検出手段、第二温度検出手段、及び回転速度検出手段と電気的に接続され、各検出手段において検出される回転体装置内部の温度、回転体装置が設置されている雰囲気の温度、及び回転体の回転速度にもとづいて、流体供給手段による回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御する制御手段を備えた。したがって、回転体装置内への異物を含んだ外気の侵入を確実に防止することができる上、回転体装置内の圧力等を監視する従来のものと比較して、安価に構成することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、制御手段が、第一温度検出手段、及び第二温度検出手段による温度検出を周期的に行い、前回の検出値と今回の検出値との差にもとづいて、流体供給手段による回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御するため、より適正な圧縮性流体の供給動作を行うことができ、ひいては消費する圧縮性流体の低減等といった省エネ化を実現することができる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、流体供給手段において、回転体装置内へ供給する圧縮性流体の流量を制御可能としているため、回転体装置の状態に応じてより適正な対応をとることができる。
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、第一温度検出手段及び第二温度検出手段による検出値をもとに流体供給手段による圧縮性流体の供給時間を決定し、圧縮性流体の供給を開始してから供給時間の経過をもって圧縮性流体の供給を停止するようにしている。したがって、圧縮性流体の供給に係る制御が容易なものとなり、圧縮性流体の供給開始直前の温度を検出した後には、第一温度検出手段、第二温度検出手段等への電力供給を停止して、無駄な電力消費を抑えることができる。また、圧縮性流体の供給を確実に停止させることができ、圧縮性流体を必要以上に供給するといった事態も生じず、更なる省エネ化を実現することができる。
加えて、請求項5に記載の発明によれば、流体供給手段に、圧縮性流体を貯留可能な圧縮性流体貯留手段と、該圧縮性流体貯留手段内における圧縮性流体の圧力を測定可能な圧力計とを備え、圧縮性流体貯留手段にて圧縮性流体の圧力を調整可能としている。したがって、制御手段が補助電源を備えていれば、たとえ停電等によりコンプレッサーが停止した場合であっても、圧縮性流体の供給を行うことができ、回転体装置内への異物の侵入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる工作機械のシール装置について、図面にもとづき説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るシール装置1を示したブロック構成図である。
シール装置1は、主軸(回転体)22を回転可能に軸支してなる主軸装置(回転体装置)21に対し、主軸装置21内部への異物を含んだ外気の侵入を防止するためのものであって、主軸装置21内へ圧縮エア(圧縮性流体)を供給するためのエア供給装置(流体供給手段)2と、エア供給装置2によるエア供給動作及び主軸装置21における主軸22の回転動作を制御する制御装置(制御手段)3とを備えてなる。
【0011】
主軸装置21は、軸受24、24・・介してケーシング23に主軸22を回転自在に軸支してなるものである。ケーシング23には、主軸装置21内部へ連通する供給孔25、25が開設されており、該供給孔25を介して後述するエア供給装置2から圧縮エアを主軸装置21内部へ供給可能となっている。また、主軸装置21の前部及び後部には、主軸装置21内の温度を検出するための温度検出センサ(第一温度検出手段)4a、4bが取り付けられている。さらに、主軸装置21の後端部には、主軸22の回転速度を検出するための回転速度検出センサ(回転速度検出手段)5が取り付けられている。加えて、主軸装置21の近傍には、主軸装置21が設置されている雰囲気の温度(以下、外部の温度と称す)を検出するための温度検出センサ(第二温度検出手段)4cが設置されている。そして、温度検出センサ4a、4b、4c及び回転速度検出センサ5は、制御装置3と電気的に接続されており、検出信号(たとえば、主軸装置21内部の温度に係る信号や主軸22の回転速度に係る信号)を制御装置3へ出力するようになっている。
【0012】
エア供給装置2は、エアを圧縮して送り出すためのコンプレッサー6、エア供給の有無を切り換えるための方向制御弁7、供給するエアの流量を調整するための流量制御弁8、及びタイマー9等を備えてなるものである。そして、制御装置3による制御のもとで方向制御弁7、流量制御弁8、及びタイマー9が動作し、供給孔25、25を介して主軸装置21内へエアを供給するようになっている。
【0013】
制御装置3は、補助バッテリー付電源10から電源を供給されており、後述の如くして温度検出センサ4a、4b、4cにて検出される主軸装置21内部の温度及び主軸装置21外部の温度と、回転速度検出センサ5にて検出される主軸22の回転速度とから圧縮エアの供給量等を決定し、エア供給装置2を動作させて主軸装置21内部へエアを供給するようになっている。
【0014】
ここで、制御装置3による主軸装置21への圧縮エアの供給に係る制御について、図2に示すフローチャートをもとに説明する。
まず、制御装置3の電源がONされる(S1)と、制御装置3は、各種設定(たとえば、温度検出センサ4a等により各種パラメータを検出する周期となるサンプリング周期、主軸最高回転速度、主軸装置21へ圧縮エアを供給するタイミングを決定する回転速度減速比、温度に係るパラメータ等)を読み込む。次に、各種検出センサ4a、4b、4c、5によるデータの計測を開始し(S2)、主軸22の前側を支持する軸受24近傍の温度、主軸22の後側を支持する軸受24近傍の温度、主軸装置21外部の温度、及び主軸22の回転速度が制御装置3に入力される。そして、S3において、上記データの計測回数が予め設定されている計測回数に到達したか否かが判断され、到達していない場合には、再びS2へ戻り、各種データの計測を行う。尚、S2におけるデータ計測は、予め設定されたサンプリング周期毎に行われる。
【0015】
以下、S3にて判断する計測回数について、図3等をもとに説明する。図3(a)は、サンプリング周期毎に計測した温度波形の一例を示したグラフ図であり、横軸は時間(min)、縦軸は、前側の軸受近傍の温度と後側の軸受近傍の温度との平均値と、主軸の周囲温度との差(以下、主軸内部温度上昇値とする)となっている。また、図3(b)は、図3(a)における主軸内部温度上昇値を移動平均フィルタで処理して示したグラフ図である。
S3にて判断する計測回数とは、サンプリング周期毎に計測した各種データを平均化する周期である。サンプリング周期毎に計測されるデータは、図3(a)に示す如く、1℃程度の幅で変動している場合があるため、圧縮エア供給の要否を判別する精度を向上させるためには、データの平均化等の処理が必要となる。図3(a)の波形は、主軸22を最高回転速度で回転させている状態から停止させた際の温度変化を示しており、最高回転速度で回転している状態にあっては、主軸装置21の内部温度は飽和状態にある。そして、主軸22の停止とともに温度が下がり始め、温度の減少量Δtemp1が飽和状態における温度の数%になるまでの時間をΔt1とする。この減少量Δtemp1は、主軸装置21へ圧縮エアの供給を開始する設定値であり、任意に決定可能であるが、1〜5%以内とするのが好ましい。ここで、各種データを計測するサンプリング周期がΔt1以上になると圧縮エアを供給するタイミングが遅れてしまうため、サンプリング周期はΔt1以下とする必要がある。つまり、サンプリング周期は「Δt1/計測回数(S3にて判断する予め設定された計測回数)」となるため、計測回数は「Δt1/サンプリング周期」で決定されることになる。また、判別精度の向上のため、S4において主軸装置21内部の計測温度に対する移動平均フィルタ、1次遅れフィルタなどの処理を行い、その結果にもとづいて下記S5及びS6における判断を行う。
【0016】
上述したような計測回数の判断を行った(S3)結果、データ計測の計測回数が所定の計測回数に到達した場合には、データの平均化を行った(S4)後、現在の計測データ(処理後のデータ)と前回(1回前)の計測データ(処理後のデータ)との差が規定値を満たすか否か、すなわち主軸22が確実に減速中であるか否かを判断する(S5)。ここで、NOと判断した場合には、S9へとすすみ、制御装置3の電源がOFFでなければ、S2へ戻る。また、S5における判断においてYESと判断した場合には、前回の主軸内部温度上昇値と現在の主軸内部温度上昇値との差が予め設定された設定値を満たすか否かを判断する(S6)。尚、既に圧縮エアの供給状態にある場合には、S5をとばしてS6へすすむ。
【0017】
以下、S5及びS6における判断について図3(特に、図3(b))をもとに説明する。
図3(b)において、主軸装置21の内部温度が飽和状態にある場合には、主軸22が最高回転速度で回転し続けているため、S5の条件が満たされない。ここで、主軸22の回転を停止させると温度が急に下がり始めるため、S5の条件が満たされ、S6へすすむことになる。そして、前回の主軸内部温度上昇値と現在(今回S4にて算出した)の主軸内部温度上昇値との差量Δtemp2が、圧縮エアの供給を開始するとして予め定められた設定値(たとえば、「前回の主軸内部温度上昇値」×0.05)を満たしているか否かを判断し、満たしている場合には、S7へすすむ。一方、差量Δtemp2が設定値に満たない場合、S9へとすすみ、制御装置3の電源がOFFでなければ、S2へ戻る。このように制御装置3では、主軸装置21内部の温度にもとづき、圧縮エアの供給の要否を決定している。
【0018】
そして、制御装置3は、差量Δtemp2が設定値を満たしていると判断する(S6における判断の結果、YESと判断する)と、主軸装置21内部の温度と主軸装置21外部の温度とから主軸装置21内へ供給する圧縮空気の流量を決定し、流量制御弁8へ信号を出力する(S7)。また、方向制御弁7を切り換えて(S8)圧縮エアの主軸装置21内への供給を開始する。さらに、S9において、制御装置3の電源がOFFでなければ、S2へ戻り、圧縮エアの供給後も各種データの計測を継続する。
【0019】
圧縮エアの供給開始後、主軸装置21内部の温度が一定値に収束し始めると、S6において圧縮エアの供給を停止するか否かが判断される。すなわち、圧縮エア供給開始後には、S6において、前回の主軸内部温度上昇値と現在の主軸内部温度状況値との差量Δtemp3が、圧縮エアの供給を停止するとして予め定められた設定値(たとえば、「前回の主軸内部温度上昇値」×0.001)以下となったか否かが判断される。そして、該条件が満たされていると判断した場合には、圧縮エアの流量を0として(S7)方向制御弁7を切り換え(S8)、圧縮エアの供給を停止する。
【0020】
以上のように、本実施例に係る制御装置3では、主軸装置21内部の温度、主軸装置21外部の温度、及び主軸22の回転速度を常時監視して、主軸装置21内への圧縮エアの供給の要否及び供給量を制御し、主軸装置21内部への異物を含んだ外気の侵入を防止している。尚、圧縮エアの供給停止に係るS6での判断に、圧縮エアの供給開始時の主軸内部温度上昇値と現在の主軸内部温度状況値との差量Δtemp4を差量Δtemp3の代わりに用いて、該差量Δtemp4が設定値(たとえば「圧縮エアの供給開始時の主軸内部温度上昇値×0.9)を満たした場合に、圧縮エアの供給を停止するようにしてもよい。
【0021】
一方、加工の終了等に伴い、制御装置3の電源がOFFされた場合であっても、主軸装置21内部の温度が主軸装置21外部の温度よりも高い間は、圧縮エアを主軸装置21内部へ供給する必要がある。そこで、制御装置3の電源がOFFされた場合における主軸装置21への圧縮エアの供給に係る制御について、図4に示すフローチャートをもとに説明する。
【0022】
まず、制御装置3の電源がOFFされる(S20)と、補助バッテリー付電源10に備えられている補助バッテリーがONとする(S21)。次に、各種温度検出センサ4a、4b、4cにて検出した温度にもとづき、主軸内部温度上昇値を周期的に算出して、前回の主軸内部温度上昇値と現在の主軸内部温度上昇値との差量が、圧縮エアの供給を開始するとして予め設定された設定値(たとえば、「前回の主軸内部温度上昇値」×0.1)を満たすか否かを判断する(S22)。そして、設定値を満たしていると判断した場合には、各種温度検出センサ4a、4b、4cへの電力供給を停止するとともに、S23において、圧縮エアを供給する供給時間を決定する。尚、S22における判断の結果、差量が設定値を満たしていないと判断した場合には、S28へとすすみ、補助電源をOFFとして制御を終了する。
【0023】
ここで、S23における圧縮エアの供給時間の決定について、図5等にもとづき説明する。
主軸装置21内部の温度が主軸装置21外部の温度と比較して15℃上昇している状態で制御装置3の電源がOFFされた場合を考える。主軸装置21内部の温度低下は、1次遅れ系の次式(1)で推定することができるため、図5に示したような曲線に沿って減少すると考えられる。
Temp1 = Temp0 × exp(−t/T) ・・・ (1)
(Temp0:現在の主軸内部温度状況値、t:時間、T:時定数)
したがって、上記式(1)にもとづいて、図5に示すΔtemp5が、圧縮エアの供給を停止するとして予め定められた設定値(たとえば、Temp0×0.9)となる時間を推定することができる。そこで、制御装置3は、上記式(1)をもとに算出した時間を圧縮エアの供給時間として算出する(S23)とともに、算出した供給時間を方向制御弁7に取り付けられているタイマー9へ出力する。
【0024】
次に、圧縮エアを供給する際の主軸装置21内部の温度や主軸装置21外部の温度から圧縮エアの流量を決定して、流量制御弁8を調整する(S24)。また、方向制御弁7を切り換えて圧縮エアの主軸装置21内への供給を開始する(S25)。その後、S23で算出された供給時間が経過したか否かを監視し(S26)て、供給時間が経過すると、方向制御弁7を再び切り換えて、圧縮エアの供給を停止し(S27)、補助電源をOFFとして(S28)、主軸装置21への圧縮エアの供給制御を終了する。
【0025】
以上、本実施例に係るシール装置1によれば、制御装置3の電源がONである場合、制御装置3にて主軸装置21内部の温度、主軸装置21外部の温度、及び主軸22の回転速度を常時監視しており、該監視要素にもとづいて主軸装置21内への圧縮エアの供給の要否及び供給量を制御するようにしている。したがって、主軸装置21内部への異物を含んだ外気の侵入を確実に防止することができる上、主軸装置21内の圧力等を監視するものと比較して、安価に構成することができる。
【0026】
また、主軸装置21内部の温度が下がりきる前に、制御装置3の電源がOFFされた場合であっても、補助バッテリーにより主軸装置21内部への圧縮エアの供給を継続するため、主軸装置21内部への異物を含んだ外気の侵入をより確実に防止することができる。
さらに、補助バッテリーにより制御を行う場合には、主軸装置21内部の温度低下を上記式(1)にもとづいて推定し、該推定結果にもとづいて圧縮エアの供給時間を算出して、圧縮エアの供給を行うようにしている。したがって、圧縮エアの供給に係る制御が容易なものとなり、各種温度センサ4a、4b、4c等への電力供給を停止して、無駄な電力消費を抑えることができるとともに、圧縮エアを必要以上に供給する(すなわち、圧縮エアの供給が停止されない)といった事態も生じず、省エネ化を実現することができる。
【0027】
なお、本発明のシール装置に係る構成は、上記実施形態に記載の態様に何ら限定されるものではなく、エア供給装置、制御装置、各種検出センサの設置位置や設置数等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0028】
たとえば、上記実施形態に記載のものは、コンプレッサーからの圧縮エアの供給が常に可能な状態であることを前提としているが、停電が発生した場合や、加工終了と共にコンプレッサーの電源も停止する場合等が考えられるため、該事態に対応すべくエア供給装置に係る構成を図6に示すように変更することも可能である。図6は、エア供給装置2’について示したブロック構成図である。
エア供給装置2’は、コンプレッサー6、方向制御弁7、流量制御弁8、及びタイマー9に加え、圧縮エアタンク(圧縮性流体貯留手段)11と圧力計12とを備えてなる。そして、コンプレッサー6の電源がONである場合には、上記実施形態に記載した態様にて圧縮エアの供給を行う一方、コンプレッサー6の電源がOFFとなった場合には、圧縮エアタンク11内にて圧縮エアの圧力を調整してから供給するようになっている。このような圧縮エアタンク11及び圧力計12を備えることにより、停電等によってコンプレッサー6の電源がOFFした場合であっても、圧縮エアの供給を行うことができ、主軸装置21内部への異物の侵入を防止することができる。
尚、圧縮エアの供給を、常に圧縮エアタンク11及び圧力計12により行う(すなわち、コンプレッサー6を設置しない)ように構成することも可能である。
【0029】
また、上記実施形態に記載のものは、制御装置の電源がOFFされた場合のみ、供給時間を算出して圧縮エアの供給を行うといった構成を採用しているが、制御装置の電源がONである場合にも、該供給時間を算出して圧縮エアの供給/停止を制御するようにしても何ら問題はない。このように常に供給時間を算出して圧縮エアの供給/停止を制御する構成とすることにより、圧縮エア供給時にリアルタイムで主軸装置内部の温度等を監視する必要がなくなるため、圧縮エアの供給動作に係る制御を容易なものとすることができる、といった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】シール装置を示したブロック構成図である。
【図2】制御装置による圧縮エアの供給制御について示したフローチャート図である。
【図3】(a)はサンプリング周期毎に計測した温度波形の一例を示したグラフ図であり、(b)は(a)における主軸内部温度上昇値を移動平均フィルタで処理して示したものである。
【図4】電源OFF時における圧縮エアの供給制御について示したフローチャート図である。
【図5】主軸装置内部における温度低下の推定曲線を示したグラフ図である。
【図6】エア供給装置の変更例を示したブロック構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・シール装置、2、2’・・エア供給装置、3・・制御装置、4a、4b、4c・・温度検出センサ、5・・回転速度検出センサ、6・・コンプレッサー、7・・方向制御弁、8・・流量制御弁、9・・タイマー、10・・補助バッテリー付電源、11・・圧縮エアタンク、12・・圧力計、21・・工作機械、22・・主軸、23・・ケーシング、24・・軸受、25・・供給孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を回転可能に軸支してなる回転体装置への外気の侵入を防止するためのシール装置であって、
前記回転体装置内部の温度を検出するための第一温度検出手段と、前記回転体装置が設置されている雰囲気の温度を検出するための第二温度検出手段と、前記回転体装置における前記回転体の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、前記回転体装置内へ圧縮性流体を供給するための流体供給手段と、前記第一温度検出手段、前記第二温度検出手段、及び前記回転速度検出手段と電気的に接続され、各検出手段において検出される前記回転体装置内部の温度、前記回転体装置が設置されている雰囲気の温度、及び前記回転体の回転速度にもとづいて、前記流体供給手段による前記回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするシール装置。
【請求項2】
制御手段が、第一温度検出手段、及び第二温度検出手段による温度検出を周期的に行い、前回の検出値と今回の検出値との差にもとづいて、流体供給手段による回転体装置内への圧縮性流体の供給の要否を制御することを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
流体供給手段において、回転体装置内へ供給する圧縮性流体の流量を制御可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
制御手段が、第一温度検出手段及び第二温度検出手段による検出値をもとに流体供給手段による圧縮性流体の供給時間を決定し、前記圧縮性流体の供給を開始してから前記供給時間の経過をもって前記圧縮性流体の供給を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置。
【請求項5】
流体供給手段に、圧縮性流体を貯留可能な圧縮性流体貯留手段と、該圧縮性流体貯留手段内における圧縮性流体の圧力を測定可能な圧力計とを備え、前記圧縮性流体貯留手段にて圧縮性流体の圧力を調整可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−119808(P2008−119808A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309493(P2006−309493)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】