説明

シール部材

【課題】ガスおよびマイクロ波の通過を抑制可能なシール部材を提供することを課題とする。
【解決手段】シール部材1は、開口901を有する壁部材90と、開口901を塞ぐ蓋部材91と、の間の隙間Cに配置され、弾性体製であって、隙間Cに露出する露出面Fを有し、自身が弾性変形することにより、隙間Cにおけるガスの通過を抑制するガスシール部2と、導体製であって、少なくとも露出面Fに配置され、隙間Cにおけるマイクロ波の通過を抑制するマイクロ波シール部3と、を備える。ガスシール部2の弾性復元力により、シール部材1はガスの通過を抑制することができる。マイクロ波シール部3が隙間Cに介在することにより、シール部材1はマイクロ波の通過を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マイクロ波加熱炉や電子レンジなどに用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子レンジにおいては、扉と、電子レンジ本体の開口と、の間の環状の隙間を介して、調理室から外部に、ガス(例えば熱風)やマイクロ波が漏洩するおそれがある。このため、当該隙間を封止する必要がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
そこで、従来は、扉と開口との間の隙間に弾性を有する枠状のパッキンを配置することにより、隙間からガスが漏洩するのを抑制していた。並びに、隙間付近に枠状のフィンガー部材などを配置することにより、隙間からマイクロ波が漏洩するのを抑制していた。このように、従来は、ガスの漏洩を抑制する部材と、マイクロ波の漏洩を抑制する部材と、を別個独立に配置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90942号公報
【特許文献2】特開2002−93571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガスの漏洩を抑制する部材と、マイクロ波の漏洩を抑制する部材と、を別々に装着すると、その分、電子レンジの扉付近の構造が複雑になる。また、電子レンジの製造コストが高くなる。
【0006】
本発明のシール部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、ガスおよびマイクロ波の通過を抑制可能なシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のシール部材は、開口を有する壁部材と、該開口を塞ぐ蓋部材と、の間の隙間に配置され、弾性体製であって、該隙間に露出する露出面を有し、自身が弾性変形することにより、該隙間におけるガスの通過を抑制するガスシール部と、導体製であって、少なくとも該露出面に配置され、該隙間におけるマイクロ波の通過を抑制するマイクロ波シール部と、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0008】
ガスシール部は、弾性体製である。ガスシール部は、自然状態と比較して、壁部材および蓋部材により、圧縮されている。隙間において、ガスシール部は、弾性復元力を蓄積している。当該弾性復元力により、シール部材は、壁部材および蓋部材のうち少なくとも一方に弾接している。このため、ガスの通過を抑制することができる。
【0009】
マイクロ波シール部は、導体製である。マイクロ波シール部は、少なくともガスシール部の露出面(ガスシール部の表面のうち、ガスシール部が単独で隙間に配置された場合に、隙間に露出する部分)に配置されている。すなわち、マイクロ波シール部は、隙間に表出している。このため、マイクロ波シール部は、マイクロ波の通過を抑制することができる。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記マイクロ波シール部は、金属箔であり、前記ガスシール部が弾性変形することにより、該金属箔は、前記壁部材および前記蓋部材のうち少なくとも一方に、弾接する構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0011】
本構成によると、簡単かつ安価に、ガスシール部の少なくとも露出面に、マイクロ波シール部を配置することができる。また、ガスシール部の弾性変形に応じて金属箔が変形し、金属箔が壁部材および蓋部材のうち少なくとも一方に弾接することにより、隙間におけるガスの通過を抑制することができる。
【0012】
また、例えば、マイクロ波シール部を導電性繊維により形成する場合、導電性繊維同士の交差により、マイクロ波シール部の表面に、ガスシール部の露出面には存在しない凹凸が発現してしまう。このため、当該凹凸を介して、ガスが通過するおそれがある。
【0013】
これに対して、マイクロ波シール部を金属箔とすると、マイクロ波シール部の表面に、ガスシール部の露出面には存在しない凹凸が発現しにくい。すなわち、ガスシール部の露出面の面形状を、金属箔の表面に、忠実に再現することができる。このため、より確実にガスの通過を抑制することができる。
【0014】
また、金属箔は、マイクロ波を反射することができる。このため、例えば、共鳴によりマイクロ波を減衰させマイクロ波の通過を抑制する場合や、水などにマイクロ波を吸収させマイクロ波の通過を抑制する場合と比較して、マイクロ波の損失が小さくなる。このため、マイクロ波のエネルギ効率が高い。
【0015】
(2−1)好ましくは、上記(2)の構成において、前記金属箔は、非磁性体製である構成とする方がよい。例えば、ステンレス、アルミニウム、銅などの非磁性体は、鉄などの磁性体と比較して、マイクロ波を反射しやすい。このため、より確実にマイクロ波の通過を抑制することができる。また、ステンレス、アルミニウム、銅などの非磁性体は、鉄などの磁性体と比較して、マイクロ波により発熱しにくい。このため、金属箔を介して弾性体製のガスシール部が加熱されるのを、抑制することができる。また、マイクロ波の損失が小さくなる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記壁部材および前記蓋部材は、各々、導体製であって、前記マイクロ波シール部は、該壁部材を介して電気的に接地されている構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0017】
本構成によると、隙間は勿論、壁部材および蓋部材におけるマイクロ波の通過を抑制することができる。また、本構成によると、壁部材を介して、マイクロ波を地面に導くことができる。このため、壁部材、蓋部材、シール部材がアンテナとなってマイクロ波を二次放射するのを、抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ガスおよびマイクロ波の通過を抑制可能なシール部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態であるシール部材が配置されるマイクロ波加熱炉の蓋部材付近の分解斜視図である
【図2】図1の両端矢印II区間の拡大断面図である。
【図3】図1のIII−III方向断面図である。
【図4】図3の枠IV内の拡大図である。
【図5】その他の実施形態(その1)のシール部材の断面図である。
【図6】その他の実施形態(その2)のシール部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のシール部材をマイクロ波加熱炉に用いる場合の実施の形態について説明する。
【0021】
まず、本実施形態のシール部材が配置されるマイクロ波加熱炉の構成について、簡単に説明する。図1に、本実施形態のシール部材が配置されるマイクロ波加熱炉の蓋部材付近の分解斜視図を示す。図1に示すように、マイクロ波加熱炉9は、壁部材90と、蓋部材91と、を備えている。
【0022】
壁部材90は、ステンレス製(SUS製)であって、左右方向に延在する角筒状を呈している。壁部材90の内側(図1においては壁部材90の後側)には、加熱室900が区画されている。加熱室900においては、所定のガス(例えば不活性ガス)雰囲気の下、被加熱物にマイクロ波が照射されている。壁部材90には、前後方向に貫通する開口901が開設されている。開口901は、長方形状を呈している。開口901は、加熱室900と外部(図1においては壁部材90の前側)とを連通している。壁部材90は、アース経路(図略)を介して、電気的に接地されている。
【0023】
蓋部材91は、SUS製であって、長方形板状を呈している。蓋部材91は、合計八本のボルト910により、壁部材90に取り付けられている。蓋部材91は、開口901を前側から塞いでいる。
【0024】
次に、本実施形態のシール部材の配置および構成について説明する。図1に示すように、本実施形態のシール部材1は、壁部材90の外面(図1においては前面)に固定されている。シール部材1は、長方形枠状を呈している。シール部材1は、開口901の外側に配置されている。
【0025】
図2に、図1の両端矢印II区間の拡大断面図を示す。図3に、図1のIII−III方向断面図を示す。図4に、図3の枠IV内の拡大図を示す。図2〜図4に示すように、シール部材1は、ガスシール部2と、ステンレス箔3と、を備えている。ステンレス箔3は、本発明の金属箔に含まれる。図3に示すように、シール部材1は、壁部材90と蓋部材91との間の隙間Cを塞いでいる。
【0026】
ガスシール部2は、シリコーンゴム製であって、基部20と、リブ21a〜21dと、を備えている。基部20は、長方形枠状を呈している。基部20は、断面長方形状を呈している。基部20の後面は、壁部材90の前面に固定されている。リブ21a〜21dは、各々、長方形枠状を呈している。図4に点線で示すように、リブ21a〜21dは、各々、自然状態において断面半円状を呈している。リブ21a〜21dは、基部20の前面に形成されている。リブ21a〜21dは、開口901を、四重に囲んでいる。ガスシール部2には、ステンレス箔3がない場合に隙間Cに露出する、露出面Fが配置されている。
【0027】
ステンレス箔3は、ガスシール部2の全面に接着されている。また、ステンレス箔3は、露出面Fの全面を覆っている。図4に示すように、ステンレス箔3は、壁部材90および蓋部材91に接触している。
【0028】
次に、蓋部材91を壁部材90に取り付ける際の、本実施形態のシール部材1の動きについて説明する。図4に点線で示すように、蓋部材91を壁部材90に取り付ける前においては、リブ21a〜21dは、断面半円状を呈している。すなわち、リブ21a〜21dは、自然状態においては、断面半円状を呈している。
【0029】
ボルト910(図1参照)により蓋部材91を壁部材90に取り付けると、ステンレス箔3を介して、リブ21a〜21dの頂部が、蓋部材91の後面に押しつけられる。このため、リブ21a〜21dの頂部が、当該頂部に配置されているステンレス箔3と共に、弾性的に潰される。すなわち、リブ21a〜21dの頂部に配置されているステンレス箔3が、リブ21a〜21dの弾性復元力により、蓋部材91の後面に弾接する。
【0030】
次に、本実施形態のシール部材1の作用効果について説明する。図3に白抜き矢印で示すように、加熱室900のガスおよびマイクロ波は、開口901→隙間Cを介して、外部に漏洩しようとする。しかしながら、隙間Cには、シール部材1が配置されている。ステンレス箔3は、リブ21a〜21dの弾性復元力により、蓋部材91の後面に弾接している。このため、ガスの漏洩を抑制することができる。また、隙間Cは、前後方向全長に亘って、ステンレス箔3により遮蔽されている。このため、マイクロ波の漏洩を抑制することができる。
【0031】
また、壁部材90と蓋部材91とシール部材1とは、電気的に接続されている。並びに、壁部材90は、電気的に接地されている。このため、マイクロ波を地面に導くことができる。また、壁部材90と蓋部材91とシール部材1とにより、加熱室900を導体で包囲することができる。すなわち、加熱室900の周囲にファラデーケージを形成することができる。
【0032】
また、リブ21a〜21dは、開口901を四重に囲んでいる。また、リブ21a〜21dは、蓋部材91に圧接している。このため、ガスおよびマイクロ波の漏洩を、より確実に抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態のシール部材1によると、マイクロ波シール部として、汎用のステンレス箔3を用いている。このため、簡単かつ安価に、ガスシール部2の全面にマイクロ波シール部を配置することができる。
【0034】
また、SUSはマイクロ波を反射しやすい。このため、マイクロ波の漏洩を、より確実に抑制することができる。また、SUSはマイクロ波により発熱しにくい。このため、ステンレス箔3を介してガスシール部2が加熱されるのを、抑制することができる。
【0035】
また、ステンレス箔3がマイクロ波を良好に反射するため、例えば、共鳴によりマイクロ波を減衰させマイクロ波の漏洩を抑制する場合や、水などにマイクロ波を吸収させマイクロ波の漏洩を抑制する場合と比較して、マイクロ波の損失が小さくなる。このため、マイクロ波加熱炉9におけるマイクロ波のエネルギ効率が高くなる。
【0036】
また、例えば、マイクロ波シール部を導電性繊維により形成する場合、導電性繊維同士の交差により、マイクロ波シール部の表面に、ガスシール部2の露出面Fには存在しない凹凸が発現してしまう。このため、当該凹凸を介して、ガスが通過するおそれがある。
【0037】
これに対して、マイクロ波シール部をステンレス箔3とすると、マイクロ波シール部の表面に、ガスシール部2の露出面には存在しない凹凸が発現しにくい。すなわち、ガスシール部2の露出面Fの面形状を、ステンレス箔3の表面に、忠実に再現することができる。このため、より確実にガスの通過を抑制することができる。
【0038】
以上、本発明のシール部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0039】
図5に、その他の実施形態(その1)のシール部材の断面図を示す。図6に、その他の実施形態(その2)のシール部材の断面図を示す。なお、図5、図6に示す部位は、図4の枠IV内に対応している。また、図5、図6において、図4と対応する部位については同じ符号で示す。
【0040】
図5に示すように、リブを有しない平面状のガスシール部2を配置してもよい。こうすると、蓋部材91に対するステンレス箔3の接触面積が大きくなる。すなわち、隙間Cにおけるシール面積が大きくなる。また、蓋部材91とステンレス箔3との間の導通が良好になる。
【0041】
図6に示すように、二つのシール部材1を、開口の外側に、二重に配置してもよい。こうすると、より確実に、ガスおよびマイクロ波の漏洩を抑制することができる。またこの場合、図6に示すように、一方のシール部材1を壁部材90に、他方のシール部材1を蓋部材91に、それぞれ配置してもよい。こうすると、蓋部材91を壁部材90に取り付ける際、二つのシール部材1の位置関係を目安に、蓋部材91の位置決めを行うことができる。また、三つ以上のシール部材1を、開口の外側に、多重に配置してもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、本発明の金属箔としてステンレス箔3を用いた。しかしながら、金属箔としてアルミ箔、銅箔などを用いてもよい。また、上記実施形態においては、シール部材1を壁部材90に固定したが、蓋部材91に固定してもよい。
【0043】
また、マイクロ波シール部として、パンチングメタルやメッシュメタルや発泡金属などを用いてもよい。また、ガスシール部2、4の少なくとも露出面Fに、導体の粒子を含有する塗料を塗布することにより、マイクロ波シール部を形成してもよい。また、ガスシール部2、4の少なくとも露出面Fに、導体を溶射、蒸着、メッキなどすることにより、マイクロ波シール部を形成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、ガスシール部2、4をシリコーンゴム製としたが、ニトリルゴム製、フッ素ゴム製、ウレタンゴム製、エチレンプロピレンゴム製、水素化ニトリルゴム製、クロロプレンゴム製、アクリルゴム製、ブチルゴム製、エピクロルヒドリンゴム製、天然ゴム製としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、本発明のシール部材をマイクロ波加熱炉に用いたが、電子レンジに用いてもよい。この場合、扉と、電子レンジ本体の開口と、の間の環状の隙間に、本発明のシール部材を配置してもよい。こうすると、調理室から外部に、ガス(熱風、蒸気含む)、マイクロ波が漏洩するのを抑制することができる。また、本発明のシール部材は、単独でガスおよびマイクロ波の漏洩を抑制することができるため、電子レンジの扉付近の構造を簡単にすることができる。したがって、電子レンジ自体の奥行きを、薄型化することができる。
【0046】
また、加熱室900で用いるマイクロ波の周波数は、2.45GHzは勿論、800MHz〜30GHzなどであってもよい。また、加熱室900で用いる雰囲気ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、一酸化炭素ガスなどであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:シール部材、2:ガスシール部、3:ステンレス箔(金属箔)、9:マイクロ波加熱炉、20:基部、21a〜21d:リブ、90:壁部材、91:蓋部材、900:加熱室、901:開口、910:ボルト、C:隙間、F:露出面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する壁部材と、該開口を塞ぐ蓋部材と、の間の隙間に配置され、
弾性体製であって、該隙間に露出する露出面を有し、自身が弾性変形することにより、該隙間におけるガスの通過を抑制するガスシール部と、
導体製であって、少なくとも該露出面に配置され、該隙間におけるマイクロ波の通過を抑制するマイクロ波シール部と、
を備えてなるシール部材。
【請求項2】
前記マイクロ波シール部は、金属箔であり、
前記ガスシール部が弾性変形することにより、該金属箔は、前記壁部材および前記蓋部材のうち少なくとも一方に、弾接する請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記壁部材および前記蓋部材は、各々、導体製であって、
前記マイクロ波シール部は、該壁部材を介して電気的に接地されている請求項1または請求項2に記載のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3352(P2011−3352A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144235(P2009−144235)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】