説明

ジアミノジフェニルスルホンから誘導された繊維と耐熱性繊維とのブレンドを含むフィルターフェルトおよびバグフィルター

本発明は、フェルト中のポリマー繊維および耐熱性繊維の100重量部を基準として、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有する20〜75重量部のポリマーステープルファイバーと;メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択された25〜80重量部の耐熱性ステープルファイバーとの均質ステープルファイバーブレンドを含むフィルターフェルトおよびバグフィルターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した濾過性能を有するフィルターフェルトおよびバグフィルターに関する。かかるフィルターフェルトおよびバグフィルターは、熱ガス、例えば、150℃以上の温度のガスを濾過するのに特に有用である。一実施形態では、バグフィルターは、アスファルトプラントで排出基準を満たすために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
Forstenに付与された米国特許第4,100,323号明細書および同第4,117,578号明細書に開示されているなどの、アラミドステープルファイバーを含有する熱ガス濾過用のフィルターフェルトおよびバグフィルターは公知であり、アスファルトプラント、石炭プラント、および他の工業会社からの粒子状物質から環境を守るために使用されている。かかるプラントおよび非常に厳しい化学環境からの環境影響の高い可能性のために、フィルターは耐えなければならず、耐久性、濾過効率、および/または耐化学薬品性を向上させる可能性を有するいかなる改善も望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、フェルト中のポリマー繊維および耐熱性繊維の100重量部を基準として、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有する20〜75重量部のポリマーステープルファイバーと;メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択された25〜80重量部の耐熱性ステープルファイバーとの均質ステープルファイバーブレンドを含むフィルターフェルトに関する。本発明はまた、かかるフィルターフェルトから製造されたバグフィルターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】フィルターフェルトを含むバグフィルターの一実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一実施形態では、本発明は、ジアミノジフェニルスルホンモノマーから誘導されたポリマーステープルファイバーと、メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択された耐熱性ステープルファイバーとから製造されたフィルターフェルトおよびバグフィルターに関する。ポリスルホンアミド繊維(PSA)として知られる繊維は、ポリ(スルホンアミド)ポリマーから製造され、その芳香族含有率のために良好な耐熱性を有し、かつまた、この繊維から製造された布により大きい可撓性を与える低い弾性率を有するが;この繊維は低い引張破壊強度を有する。この低い繊維引張強度は、これらの繊維から製造された布の機械的特性に主に影響を及ぼし、保護衣布でなどの、多くの用途でこの可撓性繊維を利用する能力を制限する。しかしながら、PSA繊維ブレンドで製造された濾過フェルトは、著しくより低い圧力降下およびより長いサイクル時間で濾過効率の損失を意外にも全く示さないことが分かった。これは、より長いバグ寿命およびより低い運転費の可能性を提供する。
【0006】
この図は、フィルターバッグの一実施形態を例示する。フィルターバッグ1は、閉端2、開口端3、および管状部分4を有する。示される実施形態では、フィルターバッグはまた、バッグの開口端に取り付けられたばねスチール金属止め輪5を有する。このバッグの管状部分4は重なり合って、三重縫い7で縫い合わされた継ぎ目6を形成する濾過フェルトからなる。この実施形態におけるバッグの閉端はまた、管状部分用に使用されるフェルトの端に8で縫い付けられている濾過フェルトからなる。この図は好ましい実施形態を示すが、Wittemeierらに付与された米国特許第3,524,304号明細書;Hixenbaughに付与された同第4,056,374号明細書;Petersonに付与された同第4,310,336号明細書;Reierに付与された同第4,481,022号明細書;Tafaraに付与された同第4,490,253号明細書;および/またはTafaraに付与された同第4,585,833号明細書に開示されているものなどの、バグフィルターの他の可能性がある構成、配向、および特徴が使用されてもよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、この図に示されるような、フィルターバッグの閉端2は、管状部分に縫い付けられたフィルターフェルトのディスクである。幾つかの他の実施形態では、閉端は、ある他の材料製であることができ、例えば幾つかの状況では、金属閉端が必要とされるかもしれない。他の実施形態では、閉端は、超音波で、接着剤で、もしくは熱で継ぎ合わせるか、または縫合以外のある他の方法で封止することができる。別の実施形態では、バッグの管状部分に使用されるフェルトは、ひとまとめにするかまたは折り重ね、次に封止して閉端を形成することができる。幾つかの実施形態では、バッグの開口端3は、バッグをセルプレートに取り付けるためのハードウェアを提供されてもよい。幾つかの他の実施形態では、バッグの開口端は、特別にデザインされたセルプレート上にバッグを滑らせることによってぴったりの適合(snug fit)が成し遂げられるような大きさに作られてもよい。
【0008】
濾過フェルトは、エア−レイド不織布、ウェット−レイド不織布、またはカーディング装置で製造される不織布の製造方法をはじめとする、不織シート形成法によって製造することができ;かかる形成シートは、スパンレーシング、ハイドロレーシング、ニードルパンチング、または不織シートを生み出すことができる他の方法によって布へと一体化することができる。米国特許第3,508,308号明細書および同第3,797,074号明細書に開示されているスパンレース法;ならびに米国特許第2,910,763号明細書および同第3,684,284号明細書に開示されているニードルパンチング法は、不織布および不織フェルトの製造に有用である当該技術分野で公知の方法の例である。
【0009】
幾つかの好ましい実施形態では、不織フェルトは、ニードルパンチフェルトであり;幾つかの他の好ましい実施形態では、不織フェルトはスパンレースフェルトである。フェルトの坪量は典型的には1平方ヤード当たり8〜16オンス(1平方メートル当たり270〜540グラム)であり、好ましい一実施形態では、1平方ヤード当たり12〜14オンス(1平方メートル当たり400〜480グラム)である。
【0010】
幾つかの実施形態では、フィルターバッグの管状部分4および任意選択的に閉端2は、濾過フェルトの単層である。幾つかの他の実施形態では、管状部分は、バッグの脈動中に安定性を提供するスクリムまたは強化クロスによって支持される濾過フェルトでできている。幾つかの好ましい実施形態では、不織フェルトは、フェルト中のステープルファイバーと相溶性である繊維で製造されている支持織スクリムを含む。このフェルトの一タイプは、1平方ヤード当たり4〜8オンス(1平方メートル当たり135〜270グラム)、好ましくは1平方ヤード当たり6オンス(1平方メートル当たり200グラム)の坪量を有するクロスラップバットへステープルファイバーを変換するための標準カーディング装置およびクロスラッピング装置を用いて製造することができる。必要ならば、これらのバットは次に、例えば、標準ニードルパンチ機で、連結するかまたは軽く一体化することができる。これらのバットの2つ以上を次に、1平方ヤード当たり1〜4オンス(1平方メートル当たり34〜135グラム)、好ましくは1平方ヤード当たり2オンス(1平方メートル当たり70グラム)の坪量を有する織スクリムのどちらかの面上に置くことができ;3層は両面上で数回ニードルパンチされて濾過フェルトを生成する。幾つかの好ましい実施形態では、織スクリムは、ポリフェニレンスルフィド繊維、パラ−もしくはメタ−アラミド繊維、ガラス繊維、アクリル繊維またはそれらの混合物を含む。
【0011】
この図に示される好ましい実施形態では、濾過フェルトは重ね合わせられて継ぎ目6を有するフィルター材料のシリンダーを形成し、それは次に、メタ−アラミド繊維、パラ−アラミド繊維、フルオロポリマー繊維、ガラス繊維、またはそれらの組み合わせもしくはブレンドの、3〜6重糸撚りを有する糸などの、高温糸で縫い合わせられる。他の実施形態では、重なり合った継ぎ目は、超音波、接着剤、熱、または全てのこれらの継ぎ合わせ法のある組み合わせによって封止することができる。
【0012】
バグフィルターの一特徴は、それが、フェルト中のポリマー繊維および耐熱性繊維の総重量を基準として、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有する20〜75重量部のポリマーステープルファイバーと;メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択された25〜80重量部の耐熱性ステープルファイバーとの均質ステープルファイバーブレンドを含む不織フェルトを含むことである。好ましい実施形態では、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有するポリマーステープルファイバーは、50〜70重量部の量で均質ブレンド中に存在する。別の好ましい実施形態では、耐熱性ステープルファイバーは、30〜50重量部の量で均質ブレンド中に存在する。ステープルファイバーは、ステープルファイバー種がフェルト中に一様に混合され、分配されていることを意味する、均質ブレンドとしてフェルト中に配置される。これは、フェルトの任意の一部分においていずれか1つの種類の繊維の高い濃度を有するいかなる局部的な区域も回避するように、フェルト中で一様な混合物を形成する。
【0013】
均質ステープルファイバーブレンドは、多くの方法によって形成することができる。例えば、一実施形態では、異なる種類のステープルファイバーのベールから得られた捲縮ステープルファイバーの塊は、ピッカーなどの装置によって解き、次に、空気搬送などの、任意の利用可能な方法によってブレンドして、より一様な混合物を形成することができる。代わりの実施形態では、ステープルファイバーは、ピッカーでの繊維開繊の前にブレンドして混合物を形成することができる。さらに別の可能な実施形態では、ステープルファイバーは、カッターブレンドされてもよい、すなわち、様々な繊維種のトウを組み合わせ、次にステープルへカットすることができる。繊維のブレンドを次に不織フェルトへ変換することができる。一実施形態では、これは、繊維のエア−レイイングまたはウェットレイイングなどの、他の方法が用いられてもよいが、カードなどの装置を用いて繊維ウェブを形成する工程を含む。必要ならば、繊維ウェブを次に、コンベヤーによって、クロスラッパーなどの装置に送って、個々のウェブをジグザグ構造で互いのトップ上に置くことによってクロスラップ構造物を生み出すことができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、ジフェニルジアミノスルホンモノマーから誘導されたポリマー繊維および耐熱性繊維は両方とも、1フィラメント当たり1.5〜3デニール(1フィラメント当たり1.7〜3.3デシテックス)の線密度を有する。好ましい一実施形態では、耐熱性繊維の線密度は、1フィラメント当たり1.8デニール(1フィラメント当たり2.0デシテックス)より大きく、1フィラメント当たり2.2デニール(1フィラメント当たり2.4デシテックス)以下である。使用されるステープルファイバーは好ましくは、1.5〜3インチ(38〜76mm)のカット長を有し、捲縮しており、1インチ当たり4〜10捲縮(1センチメートル当たり1.5〜4捲縮)の捲縮頻度を有する。
【0015】
4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたアミンモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマー含有するポリマーステープルファイバーとは、ポリマー繊維が構造:
NH2−Ar1−SO2−Ar2−NH2
(式中、Ar1およびAr2は、炭素原子の任意の非置換もしくは置換6員環芳香族基であり、Ar1およびAr2は同じまたは異なるものである)
を一般に有するモノマーから製造されたことを意味する。幾つかの好ましい実施形態では、Ar1およびAr2は同じものである。さらにより好ましくは、炭素原子の6員環芳香族基は、SO2基に対してメタ−またはパラ−配向結合を有する。このモノマーまたはこの一般構造を有する多数のモノマーが相溶性溶媒中で酸モノマーと反応させられてポリマーを生成する。有用な酸モノマーは一般に、
Cl−CO−Ar3−CO−Cl
(式中、Ar3は、任意の非置換もしくは置換芳香環構造であり、Ar1および/またはAr2と同じまたは異なるものであることができる)
の構造を有する。幾つかの好ましい実施形態では、Ar3は炭素原子の6員環芳香族基である。さらにより好ましくは、炭素原子の6員環芳香族基はメタ−またはパラ−配向結合を有する。幾つかの好ましい実施形態では、Ar1およびAr2は同じものであり、Ar3はAr1およびAr2の両方とも異なる。例えば、Ar1およびAr2は両方とも、メタ配向結合を有するベンゼン環であることができるが、Ar3は、パラ配向結合を有するベンゼン環であることができる。有用なモノマーの例としては、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイルなどが挙げられる。幾つかの好ましい実施形態では、この酸は、塩化テレフタロイルまたはそれと塩化イソフタロイルとの混合物であり、アミンモノマーは4,4’ジアミノジフェニルスルホンである。幾つかの他の好ましい実施形態では、アミンモノマーは、3:1の重量比の4,4’ジアミノジフェニルスルホンと3,3’ジアミノジフェニルスルホンとの混合物であり、それは両スルホンモノマーを有するコポリマーから製造された繊維を生成する。
【0016】
さらに別の好ましい実施形態では、ポリマーステープルファイバーは、スルホンアミンモノマーとパラフェニレンジアミンおよび/またはメタフェニレンジアミンに由来するアミンモノマーとから誘導された両繰り返し単位を有するコポリマーを含有する。幾つかの好ましい実施形態では、スルホンアミド繰り返し単位は、他のアミド繰り返し単位に対して3:1の重量比で存在する。幾つかの実施形態では、アミンモノマーの少なくとも80モルパーセントはスルホンアミンモノマーまたはスルホンアミンモノマーの混合物である。便宜上、本明細書では、省略形「PSA」は、以前に記載されたようなスルホンモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーで製造された全クラスの繊維の全てを表すために用いられる。
【0017】
一実施形態では、スルホンモノマーから誘導されたポリマーおよびコポリマーは好ましくは、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、またはそれらの混合物などのジアルキルアミド溶媒中での1種以上のジアミンモノマーと1種以上の塩化物モノマーとの重縮合によって製造することができる。この種の重合の幾つかの実施形態では、塩化リチウムまたは塩化カルシウムなどの無機塩もまた存在する。必要ならば、ポリマーは、水などの非溶媒での沈殿によって単離し、中和し、洗浄し、乾燥させることができる。ポリマーはまた、直接にポリマー粉末を生成する界面重合によっても製造することができ、ポリマー粉末は次に繊維製造のための溶媒に溶解させることができる。
【0018】
ポリマーまたはコポリマーは、重合溶媒か、ポリマーまたはコポリマー用の別の溶媒かのどちらか中のポリマーまたはコポリマーの溶液を使用する、溶液紡糸によって繊維へ紡糸することができる。繊維紡糸は、当該技術分野において公知であるように、マルチフィラメント糸もしくはトウを生み出すために乾式紡糸、湿式紡糸、または乾式ジェット湿式紡糸(空隙紡糸としても知られる)によって多孔紡糸口金によって成し遂げることができる。紡糸後のマルチフィラメント糸もしくはトウ中の繊維は次に、ステープルファイバーおよび有用な繊維を製造するための従来技法を必要に応じて用いて中和する、洗浄する、乾燥させる、または熱処理するために処理することができる。例示的な乾式、湿式、および乾式ジェット湿式紡糸法は、米国特許第3,063,966号明細書;同第3,227,793号明細書;同第3,287,324号明細書;同第3,414,645号明細書;同第3,869,430号明細;同第3,869,429号明細書;同第3,767,756号明細書;および同第5,667,743号明細書に開示されている。
【0019】
スルホンアミンモノマーを含有するPSA繊維またはコポリマーの具体的な製造方法は、Wangらの中国特許出願公開第1389604A号明細書に開示されている。この参考文献は、ジメチルアセトアミド中で等モル量の塩化テレフタロイルと共重合させられた50〜95重量パーセントの4,4’ジアミノジフェニルスルホンと5〜50重量パーセントの3,3’ジアミノジフェニルスルホンとの混合物から形成されたコポリマー溶液を紡糸することによって製造されたポリスルホンアミド繊維(PSA)として知られる繊維を開示している。Chenらの中国特許出願公開第1631941A号明細書はまた、ジメチルアセトアミド中で等モル量の塩化テレフタロイルと共重合させられた10:90〜90:10の質量比の4,4’ジアミノジフェニルスルホンと3,3’ジアミノジフェニルスルホンとの混合物から形成されたPSAコポリマー紡糸液の調製方法を開示している。コポリマーのさらに別の製造方法は、Sokolovらに付与された米国特許第4,169,932号明細書に開示されている。この参考文献は、重合の速度を上げるために第三級アミンを使用するポリ(パラフェニレン)テレフタルアミド(PPD−T)の製造を開示している。この特許はまた、PPD−Tコポリマーがパラフェニレンジアミン(PPD)の5〜50モルパーセントを、4,4’ジアミノジフェニルスルホンなどの別の芳香族ジアミンで置き換えることによって製造できることを開示している。
【0020】
耐熱性ステープルファイバーは、メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択される。幾つかの好ましい実施形態では、耐熱性繊維は、一般に1デニール当たり3グラム(1デシテックス当たり2.7グラム)である、PSA繊維の破壊靱性より大きい破壊靱性、および1デニール当たり30〜60グラム(1デシテックス当たり27〜55グラム)の低い引張弾性率を有する。幾つかの実施形態では、耐熱性繊維は、1デニール当たり少なくとも3.5グラム(1デシテックス当たり3.2グラム)の破壊靱性を有する。幾つかの他の実施形態では、耐熱性繊維は、1デニール当たり少なくとも4グラム(1デシテックス当たり3.6グラム)以上の破壊靱性を有する。より高い靱性の耐熱性ステープルファイバーの添加は、ステープルファイバーのブレンドから製造された最終濾過フェルトおよびフィルターバッグの向上した強度および耐久性になると考えられる。
【0021】
25重量パーセントほどに少ない量での比較的より高い強度の耐熱性ステープルファイバーの添加は、フェルト強度の増大に寄与することができると考えられる。幾つかの他の実施形態では、30重量パーセント超から50重量パーセント以下の量での比較的より高い強度およびより高い弾性率の織物ステープルファイバーの添加は、フィルターバッグに使用するための好ましいフェルトを提供することができると考えられる。幾つかの特に好ましい濾過フェルトおよびバッグでは、ポリマーまたはPSAステープルファイバーは、より高い引張強度およびより高い弾性率のポリメタフェニレンイソフタルアミドステープルファイバーと組み合わせられる。かかるフェルトは、より高い量のポリメタフェニレンイソフタルアミドステープルファイバーから全体として製造されたフェルトより低い剛性を有し、それ故より可撓性である。ポリメタフェニレンイソフタルアミドおよびPSA繊維は両方とも高い難燃性を有し、それ故、より低い強度だが高度に可撓性のPSA繊維と、より高い強度およびより高い弾性率のポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維との組み合わせは、生じた濾過フェルトが十分な熱性能を有することを確実にするであろう。
【0022】
メタ−アラミド繊維は、メタ配向合成芳香族ポリアミドポリマーを含む。ポリマーには、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合している、主として芳香族であるポリアミドホモポリマー、コポリマー、およびそれらの混合物が含まれ得る。環は非置換であるまたは置換されていることができる。ポリマーは、2つの環またはラジカルが分子鎖に沿って互いにメタ配向であるときにはメタ−アラミドである。好ましくは、コポリマーは、ポリマーを形成するのに使用される主要なジアミンを10パーセント以下の他のジアミンで置き換えられているか、またはポリマーを形成するのに使用される主要な二酸塩化物を10パーセント以下の他の二酸塩化物で置き換えられている。添加物をアラミドと共に使用することができ;13重量パーセントほどに多いまでの他のポリマー材料をアラミドとブレンドするまたは接合できることが分かった。好ましいメタ−アラミド繊維はポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)およびそのコポリマーである。かかる一メタ−アラミド繊維は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能なNomex(登録商標)アラミド繊維であるが、メタ−アラミド繊維は、帝人株式会社(東京、日本)から入手可能な、商標Conex(登録商標);ユニチカ株式会社(大阪、日本)から入手可能な、Apyeil(登録商標);Yantai Spandex Co.Ltd.(Shandong Province,China)から入手可能な、New Star(登録商標)メタ−アラミド;およびGuangdong Charming Chemical Co.Ltd.(Xinhui in Guangdong,China)から入手可能な、Chinfunex(登録商標)Aramid 1313で、様々なスタイルで入手可能である。メタ−アラミド繊維は本質的に難燃性であり、乾式または湿式紡糸によって紡糸することができるが;米国特許第3,063,966号明細書;同第3,227,793号明細書;同第3,287,324号明細書;同第3,414,645号明細書;および同第5,667,743号明細書は、使用できるアラミド繊維の有用な製造方法を例示するものである。
【0023】
アクリル繊維は、全アクリル繊維の少なくとも85重量%であるアクリロニトリル単位を含む。アクリロニトリル単位は−(CH2−CHCN)−である。アクリル繊維は、アクリロニトリルと共重合可能な15重量%以下のエチレン系モノマーと共に85重量%以上のアクリロニトリルで構成されたアクリルポリマーおよびこれらのアクリルポリマーの2つ以上の混合物から製造することができる。アクリロニトリルと共重合可能なエチレン系モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、メタクリロニトリル、アリルスルホン酸、メタンスルホン酸ならびにスチレンスルホン酸が挙げられる。アクリルポリマーおよび繊維の例示的な一製造方法は、米国特許第3,047,455号明細書に開示されている。アクリル繊維は、Solutia,Inc.およびBayer Inc.をはじめとする多数の会社によって商業的に製造されてきたし;特に好ましい一アクリル繊維は、Sterling Fibers,Inc.(Pace,FL)から商業的に入手可能である。アクリルステープルファイバーを含有するステープルファイバーブレンドは、それらのより低い長期熱安定性のために、30重量%以下のそれらのアクリルステープルファイバーを含有することが好ましい。
【0024】
ポリフェニレンスルフィド繊維は、良好な耐熱性、耐化学薬品性、および耐加水分解性を有する。これらの繊維の構成単位の少なくとも90%は、−(C64−S)−のフェニレンスルフィド構造単位を有するポリマーまたはコポリマーのものである。ポリフェニレンスルフィド繊維は、American Fibers and Fabricsによって商品名Ryton(登録商標)で、東レ株式会社によってToray PPS(登録商標)で、呉羽化学工業株式会社によってFortron(登録商標)で、および東洋紡績株式会社によってProcon(登録商標)で販売されている。
【0025】
パラ−アラミド繊維は、2つの環またはラジカルが分子鎖に沿って互いにパラ配向であるアラミドポリマーから製造される。メタ−アラミド繊維と同様に、添加物を使用することができ、10重量パーセントほどに多いまでの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできること、またはアラミドのジアミンを10パーセントほどに多くの他のジアミンで置き換えられたか、もしくはアラミドの二酸塩化物を10パーセントほどに多くの他の二酸塩化物で置き換えられたコポリマーを使用できることが分かった。本発明の実施において、好ましいパラ−アラミドはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である。パラ−アラミド繊維の製造方法は、例えば、米国特許第3,869,430号明細書;同第3,869,429号明細書;および同第3,767,756号明細書に概して開示されている。かかる芳香族ポリアミド有機繊維および様々な形態のこれらの繊維は、E.I.du Pont de Nemours & Company(Wilmington,Delaware)から入手可能であり、商標Kevlar(登録商標)繊維で販売され、帝人株式会社(日本)から商標Twaron(登録商標)繊維で販売されている。本明細書における目的のためには、帝人株式会社(東京、日本)から入手可能であり、コポリ(p−フェニレン/3,4’ジフェニルエステルテレフタルアミド)から製造されるTechnora(登録商標)繊維はパラ−アラミド繊維と考えられる。
【0026】
試験方法
濾過効率は、VDI 3926を用いて測定された。VDI 3926では、濾過効率(塵漏洩とも呼ばれる)は、1立方メートル当たりのミリグラム(mg/m3)単位で測定され、圧力降下はパスカル(Pa)単位で測定され、サイクル時間は秒単位で測定される。濾過効率はフィルターを通過した塵の量を表す。圧力降下は、塵ケーキを放出するための2パルス間の差圧である。ある圧力降下が得られるとき(VDI 3926では最大圧力降下は1000Paに設定される)、逆流が自動的に生み出される。VDI 3926は、初期サイクル、引き続きフィルター老化をシミュレートするための10,000サイクル、および最終のさらなる30サイクルに基づいている。濾過効率、圧力降下およびサイクル時間は、最終30サイクルの終わりに測定される。
【実施例】
【0027】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、それらによって限定されることを意図されない。全ての部および百分率は、特に示されない限り重量による。
【0028】
実施例1
2インチ(50mm)カット長を有する30重量部の1フィラメント当たり2デニール(1フィラメント当たり2.2デシテックス)メタ−アラミド繊維(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から商標Nomex(登録商標)繊維で入手可能な)と、1.8インチ(50mm)カット長を有する70重量部の1フィラメント当たり約1.7デニール(1フィラメント当たり2デシテックス)PSA繊維(Shanghai Tanlon Fiber Co,Ltd.から商標Tanlon(登録商標)で入手可能な)とを含有する均質ステープルファイバーブレンドを、ベールからのステープルファイバーを組み合わせ、混合することによって製造した。標準カーディングおよびクロスラッピング装置を用いて、これらのステープルファイバーをクロスラップバットへ変換し、それらを次に標準ニードルパンチ機で連結するかまたは軽く一体化した。これらのバットの2つを次に組み合わせ、両面上で数回ニードルパンチして濾過フェルトを製造した。比較として、上記と同じ手順を用いて、100パーセントの1フィラメント当たり2デニール(1フィラメント当たり2.2デシテックス)Nomex(登録商標)メタ−アラミド繊維の2つのバットを含有する層状フェルトを調製した。両フェルトを次に、手順VDI 3926を用いて濾過効率について評価した。30/70%m−アラミド/PSAステープルファイバーブレンドから製造された濾過フェルトは、アスファルトプラントについてのEPA排出限界に容易に合格した。加えて、30/70%m−アラミド/PSAステープルファイバーブレンドから製造された濾過フェルトの性能は、表に示されるように、100%メタ−アラミド構造と比較したときに優れた性能を有した。PSAステープルファイバーの添加は意外にも、著しくより低い圧力降下およびより長いサイクル時間で濾過効率の損失を全く示さない。これは、より長いバグ寿命およびより低い運転費の可能性を提供する。
【0029】
実施例2
均質ステープルファイバーブレンドが50重量部の同じメタ−アラミドステープルファイバーと50重量部の同じPSAステープルファイバーとを含有したことを除いて実施例1を繰り返した。m−アラミド/PSAステープルファイバーブレンドから製造された濾過フェルトは再び、表に示されるように、100%メタ−アラミド構造と比較したときに、優れた性能を有した。加えて、本実施例は、フェルトがより高い坪量を有するけれども、m−アラミド/PSAステープルファイバーブランドから製造されたフェルトがより低い圧力降下を有したことを示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例3
図におけるように組み立てられたときにフィルターバッグが、おおよそ120インチ(305cm)長さであり、かつ、7インチ(18cm)ダブル平面幅を有する管状部分を有するようにフェルトをカットすることによって実施例1のフェルトからフィルターバッグを製造する。管状部分の側面上の継ぎ目で三重縫いで、バッグの端部分を結び付けるためにフェルトを縫い合わせる。5インチ(13cm)止め輪トップを次にバッグの開口端に取り付ける。バッグを次に、パルス−ジェットバグハウスでアスファルトプラント塵粒子を濾過するために使用する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルト中のポリマーステープルファイバーおよび耐熱性ステープルファイバーの100重量部を基準として;
a)4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有する20〜75重量部のポリマーステープルファイバーと;
b)メタ−アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、およびパラ−アラミド繊維からなる群より選択された25〜80重量部の耐熱性ステープルファイバーと
の均質ステープルファイバーブレンドを含むフィルターフェルト。
【請求項2】
4,4’ジアミノジフェニルスルホン、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物からなる群より選択されたモノマーから誘導されたポリマーまたはコポリマーを含有する前記ポリマーステープルファイバーが50〜70重量部の量で存在する請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項3】
前記耐熱性ステープルファイバーが30〜50重量部の量で存在する請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項4】
前記ポリマーステープルファイバーに使用されるポリマーまたはコポリマーの少なくとも80モルパーセントがスルホンアミンモノマーまたはスルホンアミンモノマーの混合物から誘導される請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項5】
ニードルパンチフェルトの形態の請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項6】
スパンレースフェルトの形態の請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項7】
前記ポリマーステープルファイバーの1フィラメント当たりのデニールが1.5〜3.0(1フィラメント当たり1.7〜3.3デシテックス)である請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項8】
前記耐熱性ステープルファイバーの1フィラメント当たりのデニールが1.5〜3.0(1フィラメント当たり1.7〜3.3デシテックス)である請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項9】
1平方ヤード当たり8〜16オンス(1平方メートル当たり270〜540グラム)の坪量を有する請求項1に記載のフィルターフェルト。
【請求項10】
1平方ヤード当たり12〜14オンス(1平方メートル当たり400〜480グラム)の坪量を有する請求項9に記載のフィルターフェルト。
【請求項11】
請求項1に記載のフィルターフェルトを含むバグフィルターであって、管状部分、1つの閉端および1つの開口端を有し、前記フィルターフェルトが不織フェルトであり、かつバグフィルターの前記管状部分を少なくとも形成するバグフィルター。

【公表番号】特表2010−536564(P2010−536564A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522051(P2010−522051)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/073937
【国際公開番号】WO2009/026477
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】