説明

ジイオドメチル−p−トルイルスルホン含有シアノアクリレートモノマー調合物

【課題】抗菌剤が重合を妨害せず、十分効果的な量の抗菌剤がポリマーフィルムから放出され得、後での使用のために調合物が長期間安定である抗菌調合物およびその抗菌調合物を用いた創傷端部閉鎖方法を提供する。
【解決手段】 本抗菌調合物は、創傷閉鎖用接着剤を形成するための重合性抗菌調合物であって、シアノアクリレートモノマーおよびジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる。また本創傷端部閉鎖方法では、本重合性抗菌調合物を使用して形成した微生物の生長を実質的に抑制するポリマーフィルムで、接近させられた創傷端部を閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2003年9月8日出願の米国暫定出願シリアル番号60/501,100号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
〔背景〕
種々の局所的使用について種々の重合性シアノアクリレートモノマー調合物が開示されてきた。具体的には、このような調合物は、創傷または切開部の接近させられた端部上にポリマーフィルムを形成することにより、創傷の閉鎖における外科用縫合糸および/またはステープルの代替物または補助物として使用されてきた。得られたポリマーフィルムの細菌バリア特性を改良するために、抗菌剤をシアノアクリレートモノマー調合物中に取り入れることができる。しかしながら、後日での使用(すなわち後日での重合)のために、調合物が長期間安定であることが望まれる場合には、抗菌剤が、シアノアクリレートモノマー調合物の時期尚早な重合を起こさせないものであることが重要である。その上、シアノアクリレートモノマー調合物を、たとえば接近させられた創傷端部に塗布する場合には、抗菌剤が重合を妨害してはならない。更に、抗菌剤は、シアノアクリレートモノマー調合物の機械的強度に、いかなる有害効果も有していてはならない。最後に、効果的であるのに十分な量の抗菌剤がポリマーフィルムから放出され得るものでなければならない。
【0003】
この点について、米国特許第6,214,332号には、シアノアクリレートモノマーと種々の抗菌剤(ポリビニルピロリドン−ヨウ素(polyvinylpyrollidone- iodine)、硝酸銀、ヘキサクロロフェン、メルブロミン、テトラサイクリン−塩酸、テトラサイクリン水和物およびエリスロマイシン等)との適合性についての記載がある。この文献には、固体の状態のポリビニルピロリドン−ヨウ素を使用すると、室温で貯蔵された場合、8週間安定で、30秒以内で重合してポリマーフィルムを形成し、かつ、抗菌効果を示すシアノアクリレートモノマー調合物が得られることが示されている。
【0004】
しかしながら、従来の抗菌剤の多くは、上述の基準の一つ以上を満たすことができないため、シアノアクリレートモノマー調合物中での使用には不適である。例えば、抗菌剤には第四級アンモニウム塩が一般的に用いられるが、これらは、米国特許出願第2003/0007948A号ならびに米国特許第5,928,611号および第6,767,552号に記載されているように、シアノアクリレートモノマーの重合を開始することも知られている。それゆえ、この調合物が長い期間安定であることが要求される場合には、第四級アンモニウム塩を抗菌剤としてシアノアクリレートモノマー調合物中で使用することは好ましくない。
【0005】
ジイオドメチル−p−トルイルスルホンは、広い範囲をカバーする抗菌剤であるため、抗菌剤としての使用に好ましい。例えば、抗菌性を有する外科的切開用ドレープへの使用について、ジイオドメチル−p−トルイルスルホン{例えばAmical−48(ダウ社から商業的に入手可能)}とアクリルホットメルト接着剤ポリマーとのブレンド物が、米国特許第6,216,699号に報告されている。このようなブレンド物が、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、緑膿菌(P. aeruginosa)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、セパシア菌(P. cepacia)、汚物腸内菌(E.cloacae)、霊菌(S. Marcescens)、化膿性ブドウ球菌(S. pyogenes)、大腸連鎖球菌−バンコマイシン耐性(E. faecalis-Vancomycin Resistant)、カンジダアルビカンス(C. albicans)および枯れ草菌(B. subtilis)等のいくつかの有機体に対して抑制域を示すことが報告されている。しかしながら、形成されたポリマー中におけるジイオドメチル−p−トルイルスルホンの使用または、ポリマー溶融物中への直接の混合によるジイオドメチル−p−トルイルスルホンの使用は、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンが、本明細書に記載されたシアノアクリレートモノマー調合物等のプレ重合性(prepolymeric)組成物との共用に適切であることを保証するものではない。
【0006】
それゆえ、後日での使用(すなわち後日での重合)のために、調合物が長期間安定であることが望まれる場合に、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンが、シアノアクリレートモノマー調合物の時期尚早な重合を起こさせず;シアノアクリレートモノマー調合物が、たとえば接近させられた創傷端部に塗布されたときにジイオドメチル−p−トルイルスルホンが重合を妨害せず;かつ、効果的であるのに十分な量のジイオドメチル−p−トルイルスルホンがポリマーフィルムから放出され得るものである、シアノアクリレートモノマーとジイオドメチル−p−トルイルスルホンとの安定な調合物を有することが望まれる。
【0007】
〔本発明の概要〕
以下に、創傷閉鎖用接着剤の形成に使用し得るシアノアクリレートモノマーとジイオドメチル−p−トルイルスルホンとを含んでなる重合性抗菌調合物について説明する。
【0008】
〔詳細な説明〕
本発明は、創傷閉鎖用接着剤として機能し得るポリマーフィルムを形成するための、シアノアクリレートモノマーおよびジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる重合性抗菌調合物であって、その中にジイオドメチル−p−トルイルスルホンを取り入れることによりこのポリマーフィルムの細菌バリア特性が改良された重合性抗菌調合物に関する。
【0009】
本発明に使用される式(I)の好ましいモノマーとしては、α−シアノアクリレートがある。これらのモノマーは本技術分野で公知であり、式
【化1】

を有する{ここで、R2は水素であり、R3は、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)または置換基を有するヒドロカルビル基;--R4--O--R5--O--R6の式を有する基(ここで、R4は2〜4個の炭素原子を持つ1,2−アルキレン基、R5は2〜4個の炭素原子を持つアルキレン基、R6は1〜6個の炭素原子を持つアルキル基);または次の式を有する基
【化2】

(ここで、R7
【化3】

であり、R8は有機基である)である}。
【0010】
適切なヒドロカルビルおよび置換基を有するヒドロカルビル基の例には、1〜16個の炭素原子を持つ、直鎖状または分枝鎖状のアルキル基;アシロキシ基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはハロアルキル基で置換された直鎖状または分枝鎖状のC1−C16アルキル基;2〜16個の炭素原子を持つ、直鎖状または分枝鎖状のアルケニル基;2〜12個の炭素原子を持つ、直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基;シクロアルキル基;アラルキル基;アルキルアリール基;およびアリール基が含まれる。
【0011】
有機基R8は、置換されていても非置換であってもよく、直鎖でも、枝分れしていても、環式であっても、飽和していても不飽和であっても、芳香族であってもよい。このような有機基の例には、C1−C8アルキル基、C2−C8アルケニル基、C2−C8アルキニル基、C3−C12脂環基、フェニルおよび置換基を有するフェニル等のアリール基ならびに、ベンジル、メチルベンジルおよびフェニルエチル等のアラルキル基が含まれる。その他の有機基としては、置換基を有する炭化水素基{例えばハロ(例えば、クロロ−、フルオロおよびブロモ置換基を有する炭化水素)およびオキシ−(例えば、アルコキシ置換基を有する炭化水素)置換基を有する炭化水素基}が含まれる。好ましい有機基としては、1〜約8個の炭素原子を持つアルキル、アルケニルおよびアルキニル基ならびにそれらのハロ置換基を有する誘導体がある。4〜6個の炭素原子を持つアルキル基が特に好ましい。
【0012】
式(I)のシアノアクリレートモノマー中、R3は、好ましくは1〜10個の炭素原子を持つアルキル基または、式--AOR9を有する基である(ここで、Aは、2〜8個の炭素原子を持つ、二価の直鎖状または分枝鎖状のアルキレンまたはオキシアルキレン基であり、R9は、1〜8個の炭素原子を持つ、直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)。式--AOR9で表される基の例には、1−メトキシ−2−プロピル、2−ブトキシエチル、イソプロポキシエチル、2−メトキシエチルおよび2−エトキシエチルが含まれる。
【0013】
本発明で使用される好ましいα−シアノアクリレートモノマーとしては、2−オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレートまたは1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレートがある。
【0014】
式(I)のα−シアノアクリレートは、本技術分野で公知の方法によって作製し得る。例えば、米国特許第2,721,858号および3,254,111号が参照される。これらのそれぞれは参照により本明細書に包含される。例えば、本α−シアノアクリレートは、非水性有機溶媒中、塩基性触媒の存在下、アルキルシアノアセテートとホルムアルデヒドとの反応と、その後の重合禁止剤の存在下における無水中間体ポリマーの熱分解によって作製し得る。生物医学的使用には、低水分量で本質的に不純物を含まないようにして作製されたα−シアノアクリレートモノマーが好ましい。
【0015】
式(I)のα−シアノアクリレート(ここで、R3が--R4--O--R5--O--R6の式を有する基である)は、木村等の米国特許第4,364,876号に開示された方法で作製することができる。本文献は参照により本明細書に包含される。木村等の方法では、本α−シアノアクリレートが、シアノ酢酸をアルコールでエステル化するか、あるいは、アルキルシアノアセテートとアルコールとでエステル交換してシアノアセテートを作製し;触媒の存在下、モル比が0.5〜1.5:1(好ましくは0.8〜1.2:1)で、このシアノアセテートとホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとを縮合することにより縮合物を得;この縮合反応混合物を、直接または縮合触媒を除去した後、解重合して粗シアノアクリレートを生成させ、この粗シアノアクリレートを蒸留して高純度シアノアクリレートを形成することによって作製される。
【0016】
式(I)のα−シアノアクリレート(ここで、R3が式
【化4】

を有する基である)は、クロネンタール(Kronenthal)等の米国特許第3,995,641号に記載された手順で作製することができる。本文献は参照により本明細書に包含される。クロネンタール等の方法では、このようなα−シアノアクリレートモノマーが、α−シアノアクリル酸のアルキルエステルと環状1,3−ジエンとを反応させてディールス−アルダー付加物(Diels-Alder adduct)を形成し、次いで、これをアルカリ加水分解に供し、次いで、酸性化することにより対応するα−シアノアクリル酸付加物を形成することにより作製される。このα−シアノアクリル酸付加物は、好ましくはブロモ酢酸アルキルによってエステル化し、対応するカルボアルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物(carbalkoxymethyl alpha-cyanoacrylate adduct)を生成させる。あるいは、このα−シアノアクリル酸付加物を塩化チオニルと反応させて、α−シアノアクリリルハライド付加物(alpha-cyanoacrylyl halide adduct)に転換してもよい。α−シアノアクリリルハライド付加物は、次いで、アルキルヒドロキシアセテートまたはメチル基置換アルキルヒドロキシアセテートと反応させ、それぞれ、対応するカルボアルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物(carbalkoxymethyl alpha-cyanoacrylate adduct)またはカルボアルコキシアルキルα−シアノアクリレート付加物(carbalkoxy alkyl alpha- cyanoacrylate adduct)を生成させる。環状1,3−ジエンブロック基は最終的に除去され、若干不足した量の無水マレイン酸の存在下付加物を加熱することにより、カルボアルコキシメチルα−シアノアクリレート付加物またはカルボアルコキシアルキルα−シアノアクリレート付加物が、対応するカルボアルコキシアルキルα−シアノアクリレートに変換される。
【0017】
式(I)のモノマーの例には、式
【化5】

(II)
のシアノペンタジエノエート(cyanopentadienoates)およびα−シアノアクリレートが含まれる(ここで、Zは--CH=CH2であり、R3は上記の定義の通りである)。式(II)のモノマー(ここで、R3は1〜10個の炭素原子を持つアルキル基である)、すなわち、2−シアノペンタ−2,4−ジエン酸エステルは、塩化亜鉛等の触媒の存在下、適切な2−シアノアセテートをアクロレインと反応させることにより作製し得る。
【0018】
本発明によれば、本シアノアクリレートモノマー調合物中の成分には、フリーラジカル安定剤、アニオン系安定剤、可塑剤、増粘剤等が含まれるが、これらに限られるわけではない。詳細は、米国特許第5,981,621号および第6,433,096号に記載されている。これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に包含される。
【0019】
本シアノアクリレートモノマー調合物には、任意的に、モノマーから形成されたポリマーフィルムに柔軟性を与える少なくとも一つの可塑剤も含まれ得る。可塑剤は湿気をほとんどまたは全く含まないことが好ましく、モノマーの安定性または重合性に有意の影響を及ぼすべきではない。このような可塑剤は、創傷、切開部、すり傷、荒れ(sore)に対する閉鎖または被覆または、接着剤の柔軟性が望ましいその他の用途に有用である。
【0020】
適切な可塑剤の例には、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリ(p−クレジル)(tri (p-cresyl) phosphate)、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチレート、ジエチルセバケート(diethyl sebacate)、アジピン酸ジオクチル、ミリスチル酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、トリメリット酸トリオクチル(trioctyl trimellitate)、グルタル酸ジオクチル(dioctyl glutarate)およびこれらの混合物が含まれる。クエン酸トリブチルおよびアセチルクエン酸トリブチルが好ましい可塑剤である。
【0021】
約0.5〜約25重量%または約1〜約20重量%または約3〜約15重量%または約5〜約7重量%の範囲の量の可塑剤の添加により、可塑剤を持たないポリマーフィルムに比し、ポリマーフィルムの伸度と強靱性とが上昇する。
【0022】
本増粘剤は、既知の増粘剤{ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)およびセルロースアセテートブチレート等を含むがこれらに限られるわけではない}の中から選択し得る。適切な増粘剤には、例えば、ポリシアノアクリレート、ポリオキサレート(polyoxalates)、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトンコポリマー、ポリ(カプロラクトン+DL−ラクチド+グリコリド)、ポリオルトエステル(polyorthoesters)、ポリアルキルアクリレート、アルキルアクリレートと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリアルキルメタクリレートおよび、アルキルメタクリレートとブタジエンとのコポリマーが含まれる。アルキルメタクリレートおよびアルキルアクリレートの例には、ポリ(ブチルメタクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)や、種々のアクリレートおよびメタクリレートモノマーのコポリマー{ポリ(ブチルメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)等}もある。ある種の外科用用途等の用途には、生分解性ポリマー増粘剤が好ましい。本増粘剤は、シアノアクリレートモノマー調合物の余分な加熱なしにシアノアクリレートモノマー調合物に添加でき、シアノアクリレートモノマー調合物中に一様に取り入れられたままになるように、室温(すなわち20〜25℃)でシアノアクリレートモノマー調合物に溶解可能であることが好ましい。
【0023】
本シアノアクリレートモノマー調合物に添加される増粘剤の量は、増粘剤の分子量に依存する。本増粘剤がシアノアクリレートモノマー調合物の約0.5〜25.0重量%を構成することが好ましい。好ましい実施形態では、本増粘剤はシアノアクリレートモノマー調合物の約1.0〜10.0%を構成し、より好ましくは1.0〜5.0%を構成する。本増粘剤が高い分子量を持つ実施形態、好ましくは少なくとも100,000または少なくとも500,000または少なくとも1,000,000の分子量を持つ実施形態がある。本増粘剤は、モノマーと適合するように(すなわち、重合、結合力または安定性に悪影響を与えないように)選択される。使用されるべき増粘剤の量は、当業者が、過度の実験をせずに、既知の技術を使用して決定し得る。
【0024】
ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定した本シアノアクリレートモノマー調合物の粘度が、約5〜500センチポアズ、好ましくは30〜400センチポアズである実施形態がある。
【0025】
本シアノアクリレートモノマー調合物には、任意的に、少なくとも一つのアニオン系気相安定剤と少なくとも一つのアニオン系液相安定剤との両方も含まれ得る。これらの安定剤は時期尚早な重合を抑制する。このような安定剤には、アニオン系安定剤およびラジカル安定剤の混合物も含まれ得る。安定剤の混合物には、開始剤に接触する際にモノマーの重合を抑制せず、選択された増粘剤と適合する限りどのようなものも含まれる。
【0026】
適切なラジカル安定剤の例には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびt−ブチルヒドロキノンが含まれる。
【0027】
本アニオン系気相安定剤は、既知の安定剤(二酸化硫黄、三フッ化ホウ素およびフッ化水素を含むがこれらに限定されるわけではない)の中から選択され得る。本シアノアクリレートモノマー調合物に加えられるアニオン系気相安定剤の量は、一緒に選択された液相安定剤の種類に依存し、安定化されるべきモノマーおよび本シアノアクリレートモノマー調合物のために使用される包装材料にも依存する。それぞれのアニオン系気相安定剤が、100万分の200部(200ppm)未満の濃度となるように添加されることが好ましい。好ましい実施形態では、それぞれのアニオン系気相安定剤が、約1〜200ppm、より好ましくは約10〜75ppm、更により好ましく約10〜50ppm、そして最も好ましくは10〜20ppm存在する。使用すべき量は、当業者が、過度の実験をせずに、既知の技術を使用して決定し得る。
【0028】
気相が、とりわけ二酸化硫黄アニオン系安定剤を含む実施形態がある。気相が、とりわけ三フッ化ホウ素またはフッ化水素安定剤を含む実施形態がある。実施形態によっては、二酸化硫黄と三フッ化ホウ素またはフッ化水素との組合せが好ましい。
【0029】
液相アニオン系安定剤が非常に強い酸である実施形態がある。ここで使用される非常に強い酸は、水溶液のpKaが1.0未満の酸である。非常に強い酸安定剤として適切なものには、非常に強い鉱酸および/または酸素酸(oxygenated acid)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。このような非常に強い酸の例には、硫酸(pKaは−3.0〜−5.2)および過塩素酸(pKaは−5.0)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。この非常に強い酸の液相アニオン系安定剤が、添加されて1〜200ppmの最終濃度を与える実施形態がある。この非常に強い酸の液相アニオン系安定剤は、約5〜80ppmの濃度で存在することが好ましく、10〜40ppmの濃度がより好ましい。使用すべき非常に強い酸の液相アニオン系安定剤の量は、当業者が、過度の実験をせずに決定し得る。この非常に強い酸の液相アニオン系安定剤は、硫酸、過塩素酸またはクロロスルホン酸であることが好ましく、この非常に強い酸の液相アニオン系安定剤が硫酸であることがより好ましい。
【0030】
二酸化硫黄が気相アニオン系安定剤として使用され、硫酸が液相アニオン系安定剤として使用される実施形態がある。少なくとも一つの気相安定剤と少なくとも一つの液相アニオン系安定剤との組合せが好ましい。例えば、二酸化硫黄と硫酸との組合せ、二酸化硫黄と過塩素酸との組合せ、二酸化硫黄とクロロスルホン酸との組合せ、三フッ化ホウ素と硫酸との組合せ、三フッ化ホウ素と過塩素酸との組合せ、三フッ化ホウ素とクロロスルホン酸との組合せ、三フッ化ホウ素とメタンスルホン酸との組合せ、フッ化水素と硫酸との組合せ、フッ化水素と過塩素酸との組合せ、フッ化水素とクロロスルホン酸との組合せおよびフッ化水素とメタンスルホン酸との組合せを使用し得る。とりわけ、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄および硫酸の組合せを使用することもできる。これら二つのタイプのアニオン系安定剤は、これらの安定剤が、選択された接着性シアノアクリレートモノマー調合物、安定剤相互ならびに、包装材料および、シアノアクリレートモノマー調合物を製造し包装するために使用される装置に適合し得るように組み合わせて選択される。言い換えれば、気相安定剤、液相安定剤およびモノマーの組み合わせは、包装の後に安定化された実質的に未重合の接着性シアノアクリレートモノマー調合物が存在するようなものでなければならない。
【0031】
本シアノアクリレートモノマー調合物には、時期尚早な重合を抑制する少なくとも一つの他のアニオン系安定剤も任意的に含まれ得る。本明細書では、これらの剤を、この強いまたは非常に強い液相アニオン系安定剤(以下、これは「主」アニオン系安定剤と称される)と対比して、補助的アニオン系活性剤と称する。補助的アニオン系活性剤は、本シアノアクリレートモノマー調合物に、その硬化速度を調節するために加え得る。
【0032】
補助的アニオン系活性剤は、通常、主アニオン系安定剤よりpKaの高い酸であり、接着剤の硬化速度および安定性ならびに硬化した接着剤の分子量をより正確にコントロールするために使用し得る。主アニオン系安定剤と補助的活性剤との混合物は、本シアノアクリレートモノマー調合物の化学作用が損なわれず、本シアノアクリレートモノマー調合物の所望の重合を著しく抑制しない限り、どのようなものでもよい。更に、この混合物は、医療用シアノアクリレートモノマー調合物中、許容しがたいレベルの毒性を示すべきでない。
【0033】
適切な補助的アニオン系活性剤には、水溶液のpKaイオン化定数が2〜8の範囲、好ましくは2〜6の範囲、最も好ましくは2〜5の範囲のものが含まれる。このような適切な補助的アニオン系安定剤の例には、リン酸(pKaは2.2)、酢酸(pKaは4.8)、安息香酸(pKaは4.2)、クロル酢酸(pKaは2.9)、シアノ酢酸等の有機酸およびこれらの混合物があるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、これらの補助的アニオン系安定剤が、酢酸または安息香酸等の有機酸である。酢酸および/または安息香酸の量が約25〜500ppmである実施形態がある。酢酸の濃度は、一般的に50〜400ppmであり、好ましくは75〜300ppm、より好ましくは100〜200ppmである。リン酸のようなより強い酸を使用するときには、20〜100ppm、好ましくは30〜80ppm、より好ましくは40〜60ppmの濃度が使用され得る。
【0034】
上述したように、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンとアクリルホットメルト接着用ポリマーとの混合物が、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、セパシア菌、汚物腸内菌、霊菌、化膿性ブドウ球菌、大腸連鎖球菌−バンコマイシン耐性、カンジダアルビカンスおよび枯れ草菌を含むいくつかの有機体に対して、抑制域を示すことが報告されている。したがって、この抗菌剤は、例えば、カンジダアルビカンスに対して約5ppmの最低抑制濃度を持つ、広い範囲をカバーする抗菌剤である。
【0035】
最低抑制濃度は、培養期間後、可視的生長の発達を防止する最低濃度である。最低殺菌濃度は、当初の細菌の接種物中で1000倍以上の減数を達成する最低濃度である。最低抑制濃度(MIC)および最低殺菌濃度(MBC)は、試験管希釈手順を使用して評価される。
【0036】
抑制域テストは、関心の対象である菌株に対する、拡散性の剤の抗菌効果を評価するための一般的に使用される微生物学的テストである。拡散性の剤がディスクから拡散していくに従い、濃度は対数的に減少する。本剤に対する有機体の感度は、生長が起こらなくなるゾーンである抑制域の外観とサイズとによって判断される。この材料の周りの生長を示さない領域が抑制域を表す。すなわち、その特定の感染用の有機体に対し、殺菌剤の濃度が、最低抑制濃度(MIC)より大きくなっている。この材料の周りのクリアな領域は、感染用の有機体が殺され、または拡散性の剤によって抑制されたことを示している。
【0037】
ジイオドメチル−p−トルイルスルホン(DIMPTS)は、少なくとも15,000ppm(wt./wt.)までシアノアクリレートモノマーに溶解する。したがって、この場合の調合物は、約500ppm(0.05%)〜約10,000ppm(1.00%)の範囲のジイオドメチル−p−トルイルスルホン濃度を持ち得る。ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの濃度は、約700ppm(0.07%)〜約7,000ppm(0.70%)が好ましく、約2800ppm(0.28%)がより好ましい。
【0038】
本シアノアクリレートモノマー調合物は、ガラスパッケージ、プラスチックパッケージ、メタルパッケージおよびフィルムに形成されたパッケージ等を含むがこれに限られない材料から製作される任意のタイプの適切な容器で包装し得る。容器または本シアノアクリレートモノマー調合物の成分に許容しがたい損傷を与え、または許容しがたい劣化を生じさせることなく、本シアノアクリレートモノマー調合物をディスペンスし得、殺菌し得る容器が適切な容器である。プラスチックの多くが、乾式加熱殺菌に使用される温度(一般的には少なくとも160℃)では安定性に欠けるため、乾式加熱で殺菌を達成する場合にはガラスが特に好ましい。容器のタイプの例には、アンプル、バイアルびん、注射器、ピペット等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましい実施形態では、この容器にシール可能な容器が含まれる。
【0039】
生物医学的な用途については、本発明に係るシアノアクリレートモノマー調合物が殺菌される場合がある。殺菌は当業者に公知の技術によって達成することができ、化学的方法、物理的方法および照射殺菌法を含むがこれらに限定されるわけではない方法によって達成されることが好ましい。化学的方法の例には、エチレンオキシドまたは過酸化水素蒸気への暴露が含まれるが、これらに限定されるわけではない。物理的方法の例には、加熱(乾式加熱または湿式加熱)による殺菌が含まれるが、これらに限定されるわけではない。照射殺菌法の例には、γ線照射、電子線照射およびマイクロ波照射があるが、これらに限定されるわけではない。乾式加熱殺菌および湿式加熱殺菌ならびに電子線殺菌が好ましい方法である。シアノアクリレートモノマー調合物が医療用途に使用されるべき実施形態では、殺菌されたシアノアクリレートモノマー調合物が、その可使時間中生体組織に対し毒性レベルが低いものでなければならない。
【0040】
使用中、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる本シアノアクリレートモノマー調合物は、以下のステップ:(a)少なくとも二つの組織面を一緒に保持し、組織の突き合わせ面を形成するステップ、(b)この組織の突き合わせ面を横切って接着用生体適合性シアノアクリレートモノマー調合物を塗布するステップおよび、(c)このシアノアクリレートモノマー調合物を重合させ、組織の突き合わせ面に生体適合性フィルムを形成させるステップ、により組織の突き合わせ面を横切って生体適合性フィルムを形成し得る。
【0041】
本シアノアクリレートモノマー調合物が硬化して、ラテックス基質上のフィルムが切開部の上に形成されると、このフィルムとラテックス基質とで形成された構成の機械的強度を、下記の破裂試験法によってテストすることができる。このポリマーフィルムは、少なくとも約10〜20psi(換算値は0.70〜1.4kg/cm2)の範囲の破裂強度を有することが好ましく、より好ましくは少なくとも約12〜20psi(換算値は0.84〜1.4kg/cm2)の範囲の破裂強度を有する。
【0042】
〔実施例〕
以下の非限定的な例で本発明について更に説明する。以下の例は、十分な量のジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含む、市販の安定化された2−オクチルシアノアクリレート調合物(Ethicon, Inc., ニュージャージー州、サマーヴィルより、DERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveという名前で販売されている)が、加熱殺菌および/または長期間の熱老化後安定であることを証明している。これらの殺菌されまたは熱老化処理されたモノマーサンプルは、適切な条件下重合し、標準的な抗菌感染条件において抗菌活性を示すポリマーフィルムを生じ得る。
【0043】
〔実施例1〕
酸で洗浄し、オーブンで乾燥した九つのホウ珪酸塩(boro-silicate)(米国特許−1)ガラス製アンプルに、種々の濃度のジイオドメチル−p−トルイルスルホン(DIMPTS)の入った2−オクチルシアノアクリレートを充填した。
【0044】
1.5028gのDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveと0.0012gの固体のジイオドメチル−p−トルイルスルホンとをアンプルに入れた。このアンプルを十分に撹拌し、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを2−オクチルシアノアクリレート中に溶解させた。得られた溶液の0.4966gを、アンプル#1中に入れ、0.4760gの溶液をアンプル#2に入れ、最初のアンプル(アンプル#3)には0.5302gを残した。
【0045】
1.5090gのDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveおよび0.0025gの固体のジイオドメチル−p−トルイルスルホンをアンプル中に入れた。このアンプルを十分に撹拌し、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを2−オクチルシアノアクリレート中に溶解させた。得られた溶液の0.5103gをアンプル#4に入れ、0.4991gの溶液をアンプル#5に入れ、最初のアンプル(アンプル#6)には0.4996gを残した。
【0046】
1.5134gのDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveおよび0.0046gの固体のジイオドメチル−p−トルイルスルホンをアンプル中に入れた。このアンプルを十分に撹拌し、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを2−オクチルシアノアクリレート中に溶解させた。得られた溶液の0.5100gをアンプル#7に入れ、0.4978gの溶液をアンプル#8に入れ、最初のアンプル(アンプル#9)には0.5056gを残した。
【0047】
アンプル#1、#4および#7は、160℃の乾式加熱に65分間曝露した。アンプル#2、#5および#8は、15kGyのγ線照射に曝露した。アンプル#3、#6および#9は、20kGyのγ線照射に曝露した。
【表1】

【0048】
65分間の160℃の熱への曝露後、アンプル#1には顕著な曇りが生じた。18時間後に点検すると、アンプル#1の内容物は、依然曇った状態の溶液であり、以前に較べ幾分粘稠になっていたが、依然流動性を有していた。84時間後の点検では、アンプル#1の内容物は曇っており、非常に粘稠で、固化しているとも言える状態であった。
【0049】
アンプル#4は熱への暴露の後、実質的に透明だった。しかしながら、色は、当初のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveの紫色の代わりに灰色になっていた。アンプル#7には、熱への暴露の後、目に見える変化はなかった。
【0050】
アンプル#2、#3、#5、#6、#8および#9は、γ線照射によってホウ珪酸ガラス中に誘発される変化に特有のガラスの色変化を示した。ガラス製アンプルに対するこの色変化にもかかわらず、殺菌の翌日のこれらのアンプルには、目に見える調合物の変色はなかった。実施例1および表Iに示されたサンプルのテスト結果は実施例2および表II(B)に示されている。
【0051】
〔実施例2〕
本明細書に記載された調合物の抗菌効能を、黄色ブドウ球菌ATCC 6538;表皮ブドウ球菌ATCC 51625(メチシリン耐性);エンテロコッカス-フェシウム(Enterococcus faecium)ATCC 700221(バンコマイシン耐性);大腸菌ATCC 8739;緑膿菌ATCC 9027;および、カンジダアルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231に対してテストした。感染用有機体の培養物を、20mLの殺菌したトリプチケースソイブロス(Trypticase Soy Broth)(TSB)中、35〜37℃で16〜24時間掛けて生長させた。
【0052】
トリプチケースソイ寒天(Trypticase Soy Agar)(TSA)プレートを評価に用いた。希釈には0.85%の食塩水を用いた。全ての培地は、使用前に蒸気殺菌した。約20mLの融解培地を殺菌した使い捨てのペトリ皿(100×15mm)へ注ぎ込むことによって寒天プレートを作製した。これらの寒天プレートは、ラミナーフローフード下で固化した。
【0053】
一昼夜の培養物を渦流処理し(vortexed)、1:100希釈で最小104コロニー形成単位(CFU)/mLを得た。殺菌したコットンスワブを用いて希釈された接種材料を寒天プレート表面に拡げた。全寒天面を一様に覆うように注意した。プレートは、30分間空気乾燥した。
【0054】
20μLのテストサンプルを植菌したプレートの中心部に置いた。二滴のコントロールサンプルを別のTSAプレート上に絞り出した。テストサンプルの滴は手動で拡げず、プレート上で重合し薄膜を形成させた。プレートは、35〜37℃で24時間培養した。プレートは、製品から寒天培地中への活性剤の拡散に起因する抑制域について検査した。抑制域は、フィルムの端から透明帯が終わる端までのミリメートル(mm)長で計測した。組成物の抗菌効能は表II(B)の抑制域で示されている。
【0055】
純粋なDIMPTSの抗菌性の有効性は、表II(A)中、最低抑制濃度(MIC)および最低殺菌濃度(MBC)で示されている。
【表2−1】

【0056】
表II(B)は、表Iにリストされたサンプルに関し、NMRで決定されたシアノアクリレートモノマー調合物の安定性データ(モル%モノマー)と抑制域データで決めた抗菌の有効性について示している。
【表2−2】

【0057】
ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物は、コントロールと比較した場合、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス-フェシウムおよびカンジダアルビカンスに対してかなりより高い活性を示した。カンジダアルビカンスに対する活性は、ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの濃度の増加によりかなり増大する。ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物の放射線殺菌されたサンプルは、コントロールと比較した場合、大腸菌に対してより高い活性を示した。加熱殺菌されたより高濃度のジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物は、大腸菌に対して活性を示さなかった。ジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物は、緑膿菌に感染させた場合、テストフィルムサンプル周辺に抑制域を示さなかった。しかしながら、テストフィルムサンプル領域下では緑膿菌の生長は見られなかった。
【0058】
〔実施例3〕
表IIIは、実施例1と表Iと同様に作製し、いくつかの条件に曝露した追加のサンプル(10〜15)のリストである。リストされた粘度はブルックフィールド粘度計(モデル#DV2プラス;スピンドル#40,100RPM速度,25℃)で求めた。モノマー%は、CDCl3溶液中、NMR(400mHz)によって決定した。
【表3】

【0059】
表IIIは、ジイオドメチル−p−トルイルスルホン(DIMPTS)を取り入れたモノマー調合物のモノマー%および粘度がコントロール材料と一致していたことを示している。
【0060】
〔実施例4〕
2793ppmのDIMPTSを市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive中に取り入れることによって作製されたシアノアシレートモノマー調合物サンプルを評価した。NMRで測定したモノマー%を種々の条件下で評価した。評価は、サンプルを80℃で作製した後;サンプルを作製し、160℃で65分間の加熱殺菌サイクル(老化なし)に供した後;サンプルを作製し、(加熱殺菌サイクルなしで)80℃で6日間の老化に供した後;および、サンプルを作製し、(加熱殺菌サイクルなしで)80℃で12日間の老化に供した後に行った。コントロールは市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveであった。表IVは、サンプル16〜19の結果を示す。
【表4】

【0061】
表IVは、2793ppmのジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなるモノマー調合物が、殺菌後および種々の条件下でコントロールサンプルに匹敵する安定性を示したことを表している。
【0062】
〔実施例5〕
2834ppmのDIMPTSを市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveに取り入れることによって作製した、シアノアシレートモノマー調合物サンプルを、いくつかの条件に曝露しその後ヒドロキノンおよび二酸化硫黄で安定化処理してから評価した。安定化処理は、下記の加熱殺菌サイクルの後、2834ppmのDIMPTSを含んでなるDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveの粘度を維持するために行われたものである。
【0063】
具体的には、2834ppmのDIMPTSと438ppmのヒドロキノンを含んだDERMABOND(R) Topical Skin Adhesiveを、1Nの硫酸で3時間掛けて洗浄し、DI水で三回リンスし、110℃で一晩乾燥したフラスコに入れた。次いで、アンプルをDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive/DIMPTS/ヒドロキノンで満たし、窒素中に二酸化硫黄を250ppm含む混合物で10秒間ブランケットし、直ちに封止した。次いで、全てのアンプルを160℃で65分間加熱殺菌した。
【0064】
次いで、ミューレン破裂(Mullen burst)のために使用した方法に類似した方法を使用して、破裂テストを行った。それぞれの正方形の中心部に1.3cmの切開長を有するラテックスフィルムをカットして10.9cm2の小片にした。正方形の切り抜き部を有するテフロン(登録商標)被覆低炭素鋼成形型を、切り抜き部の中心に切開部のある正方形のラテックス上に置いた。50μLのシアノアシレートモノマー調合物を、マイクロピペットを使用して、正方形のラテックスに塗布した。このシアノアシレートモノマー調合物を湿気により一日掛けて硬化させた。サンプルを試験装置に置き、破裂圧力を記録した。結果を表Vに示す。
【0065】
(1)コントロール−A:市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive(DIMPTSなし、ヒドロキノンなし、二酸化硫黄なし、追加の加熱殺菌なし)を、5枚のラテックスフィルム上に、約0.2mmの厚さでコーティングした。これらのフィルムを開始剤なしで湿気により硬化させた。
【0066】
(2)コントロール−B:市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive(DIMPTSなし、ヒドロキノンなし、二酸化硫黄なし、追加の加熱殺菌なし)を、5枚のラテックスフィルム上に、約0.2mmの厚さでコーティングした。基材は、最初、開始剤(アセチルクエン酸トリブチル中トリエチルアミンが5%の溶液)をペーパータオルで塗布した。
【0067】
(3)組成物C:市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive(2834ppmのDIMPTS、438ppmのヒドロキノン、250ppmの二酸化硫黄および追加の加熱殺菌あり)を、5枚のラテックスフィルム上に、約0.2mmの厚さでコーティングした。これらのフィルムを開始剤なしで湿気により硬化させた。
【0068】
(4)組成物−D:市販のDERMABOND(R) Topical Skin Adhesive(2834ppmのDIMPTS、438ppmのヒドロキノン、250ppmの二酸化硫黄および追加の加熱殺菌あり)を、5枚のラテックスフィルム上に、約0.2mmの厚さでコーティングした。基材は、最初、開始剤(アセチルクエン酸トリブチル中トリエチルアミンが5%の溶液)をペーパータオルで塗布した。
【0069】
全てのサンプル(コントロールおよび組成物)についての破裂テストの結果と硬化速度の観察を、それぞれ、表V(A)および表V(B)に纏めて示す。
【表5】

【0070】
表V(A)−(B)は、2834ppmのジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなるモノマー調合物を重合して形成したポリマーフィルムが、湿気による硬化条件でも開始剤による硬化条件でも、コントロールサンプルから形成したポリマーフィルムに比肩できる機械的強度を示したことを表している。
【0071】
〔実施の態様〕
本発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)創傷閉鎖用接着剤を形成するための重合性抗菌調合物であって、
シアノアクリレートモノマー(cyanoacrylate monomer)およびジイオドメチル−p−トルイルスルホン(diiodomethyl-p-tolylsulfone.)を含んでなる調合物。
(2)実施態様1に記載の調合物において、
前記ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの濃度が500〜15,000ppmの間にある(wt./wt.)、調合物。
(3)実施態様2に記載の調合物において、
前記ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの前記濃度が2,500〜3,000ppmの間にある、調合物。
(4)実施態様1に記載の調合物において、
前記調合物を160℃の加熱殺菌温度に65分間供し、または、15−20kGyの照射線量のガンマ線殺菌に供した後、少なくとも80%のシアノアクリレートモノマーを含んでなる、調合物。
(5)実施態様1に記載の調合物において、
前記シアノアクリレートモノマーが、2−オクチルシアノアクリレート(2-octyl cyanoacrylate)、n−オクチルシアノアクリレート(n-octyl cyanoacrylate)、2−エチルヘキシルシアノアクリレート(2-ethyl hexyl cyanoacrylate)、ブチルシアノアクリレート(butyl cyanoacrylate)、およびこれらの異性体からなる群から選ばれたものである、調合物。
(6)微生物の生長を実質的に抑制するポリマーフィルムで、接近させられた創傷端部を閉鎖する方法であって、
シアノアクリレートモノマーおよびジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物を当該接近させられた創傷端部に塗布し、
当該調合物を重合させてポリマーフィルムを形成する
ことを含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷閉鎖用接着剤を形成するための重合性抗菌調合物であって、
シアノアクリレートモノマー(cyanoacrylate monomer)およびジイオドメチル−p−トルイルスルホン(diiodomethyl-p-tolylsulfone.)を含んでなる調合物。
【請求項2】
請求項1に記載の調合物において、
前記ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの濃度が500〜15,000ppmの間にある(wt./wt.)、調合物。
【請求項3】
請求項2に記載の調合物において、
前記ジイオドメチル−p−トルイルスルホンの前記濃度が2,500〜3,000ppmの間にある、調合物。
【請求項4】
請求項1に記載の調合物において、
前記調合物を160℃の加熱殺菌温度に65分間供し、または、15−20kGyの照射線量のガンマ線殺菌に供した後、少なくとも80%のシアノアクリレートモノマーを含んでなる、調合物。
【請求項5】
請求項1に記載の調合物において、
前記シアノアクリレートモノマーが、2−オクチルシアノアクリレート(2-octyl cyanoacrylate)、n−オクチルシアノアクリレート(n-octyl cyanoacrylate)、2−エチルヘキシルシアノアクリレート(2-ethyl hexyl cyanoacrylate)、ブチルシアノアクリレート(butyl cyanoacrylate)、およびこれらの異性体からなる群から選ばれたものである、調合物。
【請求項6】
微生物の生長を実質的に抑制するポリマーフィルムで、接近させられた創傷端部を閉鎖する方法であって、
シアノアクリレートモノマーおよびジイオドメチル−p−トルイルスルホンを含んでなる調合物を当該接近させられた創傷端部に塗布し、
当該調合物を重合させてポリマーフィルムを形成する
ことを含む方法。

【公表番号】特表2007−504853(P2007−504853A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525344(P2006−525344)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026544
【国際公開番号】WO2005/025629
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】