説明

ジェスチャ認識装置及びそのプログラム

【課題】ユーザがジェスチャ以外の特別な操作を行わなくても、ジェスチャ認識機能を的確にOFF/ONすることを可能にする。
【解決手段】ジェスチャ認識装置は、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aにより以下の制御を実行する。すなわち、一筆書きジェスチャ認識機能がOFFの状態で、ジェスチャの認識領域内にジェスチャ開始領域を設定して発光マーカの描画点が当該ジェスチャ開始領域内に入った場合に、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能をONに設定すると共に、ジェスチャの終点を検出するための検出ゾーンをジェスチャ認識領域内に設定する。また、ジェスチャ認識処理部320の機能がONのときには、発光マーカの描画点がジェスチャ認識領域の外に出たことが検出された場合に、上記一筆書きジェスチャ認識機能をOFFに遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばテレビジョン受信機や録画再生装置に対し離れた場所からチャネル情報や制御情報等を入力するために用いる、指又は腕の動きによるジェスチャを認識するジェスチャ認識装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受信機に取り付け可能なカメラや赤外線距離センサを備える電子機器が安価に簡単に手に入るようになり、リモートコントローラを使わずに、手もしくは指のジェスチャによってテレビジョン受信機のメニュー項目を選択する方式が提案されている。このジェスチャ入力方式は、例えばユーザの指の動きをカメラを用いて撮像し、この撮像された画像データからユーザの指の動作軌跡を表す図形をパターン認識処理により認識して、この認識結果をもとにメニュー等のポインティングを行うものとなっている(例えば非特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、ジェスチャを用いた入力を確実に行うには、ジェスチャ入力の開始と終了をどのように認識するかが重要な課題となっている。例えば、上記のようにテレビジョン受信機に取り付けられたカメラを用いてユーザのジェスチャ操作を撮像し、その撮像画像をもとにジェスチャ操作を認識処理する場合に、ジェスチャの操作中にその前を突然人が通るとこれが外乱となってジェスチャ操作を正しく認識できなくなる。このような場合ユーザは、誤認識されないようにジェスチャ操作を一時中断することになるが、この中断操作を認識してジェスチャの認識処理を一旦リセットし、操作のやり直しを待機する状態にする必要がある。
【0004】
そこで、手や腕を伸ばしているときにジェスチャ認識機能をONとし、手や腕を縮めているときにはジェスチャ認識機能をOFFとする方式が提案されている。
また別の方式として、入力対象のメニュー項目に対し予め対応付けられたジェスチャを一筆書き操作により入力する方式が提案されている(例えば非特許文献2又は3を参照)。この一筆書きジェスチャ入力方式は、直感的で自然な動きによってジェスチャ入力の終了及び開始を滑らかに入力できる利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Caifeng Shan : “Gesture Control for Consumer Electronics”, Multimedia Interaction and Intelligent User Interfaces, p.107-128.
【非特許文献2】青木 良輔、唐津 豊、井原 雅行、前田 篤彦、渡部 智樹、小林 稔、鏡 慎吾:“大型ディスプレイ上のメニュー選択に適したカメラによる一筆書きジェスチャインタフェース”、ヒューマンインタフェース学会研究報告集2010,VOL.12,NO.9,35-42.
【非特許文献3】Ryosuke Aoki, Yutaka Karatsu, Masayuki Ihara, Atsuhiko Maeda, Minoru Kobayashi and Shingo Kagami : “Gesture Identification Based on Zone Entry and Axis Crossing”, Lecture Notes in Computer Science, 2011, Volume 6762/2011, 194-203.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、手や腕の伸び縮みによりジェスチャ認識機能をON/OFFする方式では、ジェスチャ操作を行う場合に手から肩までの腕全体に負担がかかり、また手や腕を伸ばした状態でジェスチャ操作を繰り返すことになるので、ユーザの負担が大きい。
【0007】
一方、一筆書きジェスチャ入力方式は、指をテレビジョン受信機の画面に向けた状態で小さな動きで楽にジェスチャ操作を行うことが可能である。しかし、ジェスチャ認識機能を一旦ONにすればそれ以降のジェスチャ操作を容易に続けることは可能であるが、ジェスチャ機能それ自体をON/OFFする手段については検討されておらず、ジェスチャ機能それ自体をON/OFFするにはユーザがジェスチャ以外の特別な操作を行う必要があった。また、例えばジェスチャの操作中にその前を人が横切った場合のように、予期しない外乱の影響によりジェスチャ操作を中断せざるを得なくなった場合に、ジェスチャ認識機能をどのようにリセットするかについてもいまだ検討されていない。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ユーザがジェスチャ以外の特別な操作を行わなくても、ジェスチャ認識機能を的確にOFF/ONすることを可能にしたジェスチャ認識装置とそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、ジェスチャにより空間に図形を描く動きを撮像してその画像データを出力する撮像装置と、上記撮像装置から出力された画像データをもとに上記ジェスチャにより描かれた図形を認識する機能を有するジェスチャ認識装置とを具備するシステムで使用される上記ジェスチャ認識装置にあって、先ずジェスチャ認識機能がOFF状態に設定されているときには、予め設定されたジェスチャ認識領域内に始点判定領域を設定し、この状態で上記画像データから検出された描画点の位置が上記始点判定領域内に存在すると判定された場合に、上記ジェスチャ認識機能をON状態に設定すると共に上記ジェスチャ認識領域内に終点判定領域を設定する。そして、このジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、上記画像データから検出された描画点の位置が前記ジェスチャ認識領域外に出たことが検出された場合に、上記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる。
【0010】
したがって、ユーザがジェスチャによる操作を終了又は途中で止めるために、ジェスチャによる指示位置をジェスチャ認識領域外へ移動させると、ジェスチャ認識機能が自動的にOFF状態に遷移する。また、ジェスチャ認識機能がOFF状態に復帰すると、認識領域内に始点判定領域が設定され、この状態でユーザがジェスチャによる指示位置をこの始点判定領域に設定すれば、ジェスチャ認識機能は自動的にON状態となって、再びジェスチャによる入力操作が可能となる。すなわち、ユーザはジェスチャ以外の特別な操作を行うことなく、ジェスチャの延長上の操作によりジェスチャ認識機能を円滑にOFF/ONすることができる。
【0011】
また、この発明の第2の観点は、上記ジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、画像データから検出された描画点の位置が予め定められた時間以上連続して検出できなくなった場合に、上記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる手段を、さらに具備することを特徴とする。
【0012】
さらに、この発明の第3の観点は、上記ジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、画像データから検出された描画点の軌跡が予め定められた長さ以上連続して欠落した場合に、上記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる手段を、さらに具備することを特徴とする。
【0013】
第2及び第3の観点によれば、例えばユーザがジェスチャ操作を行っている最中にその前を人が通ってユーザとカメラとの間が遮られ、これにより上記ジェスチャによる指示位置を表す描画点が所定時間以上連続して検出できなくなるか、または描画点の軌跡が予め定められた長さ以上連続して欠落すると、ジェスチャ認識機能は自動的にOFF状態に遷移する。したがって、ジェスチャ操作中に外乱が発生した場合にも、ユーザが特別な操作を行うことなくジェスチャ認識機能を自動的にOFF状態にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
すなわちこの発明によれば、ユーザがジェスチャ以外の特別な操作を行わなくても、ジェスチャ認識機能を的確にOFF/ONすることを可能にしたジェスチャ認識装置とそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わるジェスチャ認識装置を含むシステムの概略構成図。
【図2】図1にジェスチャ認識装置として示した情報処理装置の機能構成を示すブロック図。
【図3】図2に示した情報処理装置による全体の処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図4】図3に示したフローチャートにおける一筆書きジェスチャ認識機能のON/OFF切替処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図5】図3に示したフローチャートにおける一筆書きジェスチャ認識処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図6】ジェスチャ機能ONのためのユーザの操作例を示す図。
【図7】ジェスチャ機能OFFのためのユーザの操作例を示す図。
【図8】この発明の第2の実施形態に係わるジェスチャ認識装置を含むシステムの概略構成図。
【図9】図8に示した情報処理装置による一筆書きジェスチャ認識機能のON/OFF切替処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
[構成]
図1は、この発明の第1の実施形態に係わるジェスチャ認識装置を用いた情報入力システムの概略構成図である。このシステムは、テレビジョン受信機2にカメラ4を装着すると共に、テレビジョン受信機2に情報処理装置3を接続したものとなっている。カメラ4は、ユーザ1の指の動きを用いたジェスチャを撮像し、その撮像画像データをUSBケーブルを介してテレビジョン受信機2へ出力する。なお、ユーザ1の指先には、指先の動きをより認識し易くするために例えばLED(Light Emitting Diode)を用いた発光マーカ6が装着される。
【0017】
情報処理装置3は、ジェスチャ認識装置としての機能を備えたもので、以下のように構成される。図2は、情報処理装置3の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置3は、ジェスチャ認識処理を行うために必要な機能として、指の位置検出ユニット10と、データベース20と、一筆書きジェスチャ認識処理ユニット30Aと、リアルタイム処理発生ユニット40と、表示画面処理ユニット50を備えている。
【0018】
データベース20は、記憶媒体として例えばハードディスク又はNAND型フラッシュメモリを使用したもので、この発明を実施するために必要な記憶領域として、カメラ画像蓄積部21と、一筆書き図形蓄積部22と、操作内容データベース23と、表示画像・映像蓄積部24と、指位置蓄積部25を有している。
【0019】
カメラ画像蓄積部21は、指の位置検出ユニット10によりカメラ4から取得された画像データを記憶するために用いられる。指位置蓄積部25は、カメラ画像蓄積部21に蓄積された画像データから検出された指の指示位置と、当該画像データを撮像した時刻とを関連付けて格納するために用いられる。一筆書き図形蓄積部22には、一筆書き図形の認識に用いる一筆書き図形のモデルが予め格納されている。操作内容データベース23には、認識されたジェスチャの種類と方向に対応する操作内容を表す情報が予め格納されている。表示画像・映像蓄積部24には、上記操作内容データベース23に格納された操作内容を表す情報に対応付けて、表示画面に表示する画像や映像のデータが予め格納されている。
【0020】
リアルタイム処理発生ユニット40は、タイマを使用して、例えば33msごとにイベント信号を発行する機能を有する。
指の位置検出ユニット10はカメラ画像取得部11を備え、上記リアルタイム発生ユニットによりイベント信号が発行されるごとに、カメラ4から画像データを取得して、この画像データを上記カメラ画像蓄積部21に記憶させる機能を有する。
【0021】
一筆書きジェスチャ認識処理ユニット30Aは、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aと、一筆書きジェスチャ認識処理部320を備えている。
このうち、先ず一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aは、指位置検出部311と、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断部312を有する。指位置検出部311は、上記カメラ画像蓄積部21に格納された画像データからマーカ5の描画点の位置座標、つまりユーザの指の指示位置を検出し、この検出された描画点の位置座標を上記指位置蓄積部25に格納する。
【0022】
一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断部312は、以下の処理機能を有している。
(1) 一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がOFFに設定されている状態で、カメラ4による撮像範囲、つまりジェスチャの認識領域内に、ジェスチャの始点判定領域(ジェスチャ開始領域)を設定する。そして、上記指位置検出部311により検出された発光マーカ5の描画点が上記ジェスチャ開始領域内に存在するか否かを判定し、存在すると判定された場合に上記一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能をONに設定すると共に、ジェスチャの終点を検出するための検出ゾーン(Detection zone)を上記ジェスチャの認識領域内に設定する機能。
【0023】
(2) ジェスチャ認識処理部320の機能がONに設定されている状態で、上記指位置検出部311により検出された発光マーカ5の描画点が上記ジェスチャ認識領域の外に出たか否かを判定し、ジェスチャ認識領域の外に出たことが検出された場合に、上記一筆書きジェスチャ認識処理部の機能をONからOFFに遷移させる機能。
【0024】
次に一筆書きジェスチャ認識処理部320は、一筆書きジェスチャ入力判断部321と、一筆書き図形の方向識別部322と、一筆書き図形識別部323を有している。
一筆書きジェスチャ入力判断部321は、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がONの状態で、上記画像データから検出される描画点が上記ジェスチャ開始領域内に入ったことが検出されたときの位置座標をジェスチャの開始点として検出する。また、上記描画点がジェスチャ開始領域外に出たのち上記検出ゾーン内に戻ったとき、このときの描画点の位置座標をジェスチャの終了点として検出する。
【0025】
一筆書き図形の方向識別部322は、上記ジェスチャの終了点が検出された場合に、当該ジェスチャによる描画点がジェスチャ開始領域外に出たのち上記検出ゾーン内に戻るまでの軌跡を表す位置座標の集合をもとに当該描画軌跡の重心位置座標を求め、この描画軌跡の重心位置座標とジェスチャの描画開始点との関係をもとに、当該描画開始点に対する描画方向を識別する。
【0026】
一筆書き図形識別部323は、上記描画点がジェスチャ開始領域外に出たのち上記検出ゾーン内に戻るまでの軌跡、つまりジェスチャにより描かれた図形の形状を表す情報を、上記一筆書き図形蓄積部22に記憶された一筆書き図形モデルと照合することで、上記ジェスチャにより描かれた図形の種類を識別する。
【0027】
表示画面処理ユニット50は表示画面処理部51を有する。表示画面処理部51は、上記一筆書き図形の方向識別部322及び一筆書き図形識別部323によりそれぞれ識別されたジェスチャ図形の描画方向と図形の種類をもとに、操作内容データベース23から対応する操作内容を表す情報を読出す。そして、この読み出された操作内容を表す情報をもとに、表示画像・映像蓄積部24から対応する画像や映像の表示データを読出し、この表示データをもとにテレビジョン受信機2の表示画面を更新する。
【0028】
なお、上記指の位置検出ユニット10、一筆書きジェスチャ認識処理ユニット30A、リアルタイム処理発生ユニット40及び表示画面処理ユニット50の各処理機能は、図示しないプログラムメモリに格納されたアプリケーション・プログラムを中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)に実行させることにより実現される。
【0029】
[動作]
次に、以上のように構成された情報処理装置3による、ジェスチャを用いた入力情報の認識動作を説明する。
図3は、その全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。なお、ここではテレビジョン受信機2のディスプレイに電子番組案内(Electronic Program Guide:EPG)情報を表示させ、このEPG情報に対しユーザ1がジェスチャにより番組の選択操作を行う場合を例にとって説明する。
【0030】
(1)リアルタイムイベント発生処理
ジェスチャ入力モードが設定されると、ステップS10によりリアルタイム処理発生ユニット40が起動し、タイマの計時時間Tが予め設定された時間、例えば33msecになるごとにステップS11においてイベント信号が発生される。すなわち、ジェスチァ入力モードでは33msec周期でイベント信号が発生される。なお、タイマの計時時間Tはイベント信号が発生されるごとにステップS12でリセットされる。
【0031】
(2)指位置の検出処理
上記リアルタイム処理発生ユニット40からイベント信号が発生されると、先ずステップS20において指の位置検出ユニット10が起動し、そのカメラ画像取得部11の制御の下で、カメラ4により撮像されたユーザ1の画像データが取り込まれてカメラ画像蓄積部21に記憶される。
そして、上記カメラ画像蓄積部21に新たな画像データが記憶されると、図4に示すステップS311において、上記画像データ中から発光マーカ5の輝点画像を検出する処理が行われる。そして、この検出された輝点画像の画像データ中の重心位置を示す座標が、ユーザ1の指の位置を表す描画点として指位置蓄積部25に記憶される。以上の処理は上記33msec周期で繰り返し行われ、この結果上記指位置蓄積部25にはユーザ1の指の位置を表す描画点の位置座標の集合が、ユーザ1がジェスチャにより描いた図形を示すデータとして記憶される。なお、このときカメラ4の絞り値(F値)を大きく設定して受光光量を制限することで、発光マーカ5の光のみを検出しやすくするとよい。
【0032】
(3)一筆書きジェスチャ認識機能のON/OFF切替処理
上記指位置蓄積部25に新たな指位置座標が記憶されるごとに、ステップS30のステップS31において一筆書きジェスチャ認識処理ユニット30Aの一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aが起動され、この一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aの制御の下で以下のような処理が実行される。図4中のステップS312はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0033】
(3−1)一筆書きジェスチャ認識機能をONする場合
先ずステップS3121により一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がONであるか否かが判定される。そして、ここではまだONになっていないのでステップS3125に移行し、カメラ4による撮像範囲、つまりジェスチャの認識領域内に、ジェスチャの始点判定領域(ジェスチャ開始領域)を設定する。例えば図6(a)に示すように、ジェスチャの認識領域Cの中央にジェスチャ開始領域E0を設定する。そして、上記指位置検出処理(ステップS311)により検出された発光マーカ5の描画点の位置座標が上記ジェスチャ開始領域E0内に存在するか否かを判定する。
【0034】
この状態で、ユーザ1が指の位置を動かし、これにより図6(a)に示すように描画点の位置座標P0が上記ジェスチャ開始領域E0内に入ると、ステップS3126により上記一筆書きジェスチャ認識部320の機能をONに設定する。またそれと共に、ステップS3127により図6(b)に示すようにジェスチャの終点を検出するための検出ゾーン(Detection zone)E1を上記ジェスチャの認識領域C内に設定する。
【0035】
このとき、検出ゾーンE1のサイズはジェスチャ開始領域E0より大きなサイズに設定される。このようにすると、ユーザ1によるユーザの指の位置が検出ゾーンE1内に戻った後に、震えなどにより当該検出ゾーンE1の境界付近で位置ずれを起こしたとしても、このときの指の位置座標、つまり終点の位置を、終点判定領域としての検出ゾーンE2内に安定的に留めることが可能となる。このため、検出ゾーンE1の境界上でいわゆるチャタリングのような現象が発生しても、これにより後述する描画の終了判定(入力判定)において誤認識が発生しないようにすることができる。
【0036】
(3−2)一筆書きジェスチャ認識機能をOFFする場合
上記一筆書きジェスチャ認識機能がONとなった状態で、ユーザ1がジェスチャによるテレビジョン受信機2の操作を一旦中止するべく、指の位置を例えば図7(a)のF1に示すようにカメラ4の撮像範囲外、つまりジェスチャの認識領域Cの外へ移動させたとする。そうすると、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aは、ステップS3121により一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がONであるか否かを判定し、ここではONになっているのでステップS3122に移行する。そして、指位置検出処理(ステップS311)により検出された発光マーカ5の描画点の位置座標が、上記ジェスチャの認識領域Cの外に出たか否かを判定する。
【0037】
この判定の結果、図7(a)のF1に示すように、発光マーカ5の描画点の位置座標が上記ジェスチャの認識領域Cの外に出ると、ステップS3123により一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能をOFFに遷移させる。かくして、ユーザ1は指の位置をカメラ4の撮像範囲外へ移動させるだけで、一筆書きジェスチャ認識機能をOFFに戻すことができる。
【0038】
なお、一筆書きジェスチャ認識機能がOFFに復帰すると、次のイベント信号発生(33msec)時に、ステップS3125において図7(b)に示すようにジェスチャの認識領域C内にジェスチャ開始領域E2が設定される。すなわち、一筆書きジェスチャ認識機能がOFFになると、消去された検出ゾーンE1の代わりにそれよりも小さいジェスチャ開始領域E2が再設定される。
【0039】
(4)一筆書きジェスチャ認識処理
上記一筆書きジェスチャ認識機能がONとなった状態で、一筆書きジェスチャ認識処理部320は以下のようにジェスチャの認識処理を実行する。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0040】
すなわち、先ずステップS321において一筆書きジェスチャ入力判断部321が起動し、この一筆書きジェスチャ入力判断部321の制御の下で、ユーザ1の指に装着された発光マーカ5による描画点が上記検出ゾーンE1内に入ったか否かをステップS3211により判定する。そして、描画点が上記検出ゾーンE1内に入っていなければ、ステップS3214によりジェスチャ入力受付中か否かを示すジェスチャフラグ(Gesture Flag)を“TRUE”に設定し、以後イベントが発生するごとに描画点が検出ゾーンE1内に入るか否かを監視する処理を繰り返す。
【0041】
さて、この状態でユーザ1の指に装着された発光マーカ5による描画点が上記検出ゾーンE1内に入ったことが検出されたとする。そうすると、ステップS3212によりジェスチャフラグが“TRUE”になっていることを確認した後、先ずステップS322により一筆書き図形の方向識別処理を実行する。
この一筆書き図形の方向識別処理は以下のように行われる。すなわち、先ず指位置蓄積部25に記憶された指位置座標の集合を読み出し、この指位置座標の集合により表される指の描画軌跡を表す画像をもとに当該描画軌跡を表す画像の重心位置座標を算出する。そして、この算出された描画軌跡画像の重心位置座標と描画開始点における座標との関係から、当該描画開始点に対する上記描画軌跡の描画方向が上下左右の何れであるかを識別することにより行われる。
【0042】
次にステップS323により一筆書き図形識別処理を実行する。この一筆書き図形識別処理は、指位置蓄積部25に記憶された指位置座標の集合を読み出し、この指位置座標の集合により表される指の軌跡、つまりジェスチャにより描かれた図形の形状を、一筆書き図形蓄積部22に記憶された一筆書き図形モデルと照合することで識別する。
そして、上記ジェスチャにより描かれた図形の描画方向及び図形形状の識別処理が終了すると、ステップS3213によりジェスチャフラグ(Gesture Flag)を“False”にリセットする。
【0043】
(5)表示画面の更新処理
上記一筆書きジェスチャの認識処理が終了すると、ステップS40において表示画像処理ユニット50が起動され、この表示画像処理ユニット50の制御の下で、表示画像の更新処理が以下のように行われる。
すなわち、上記一筆書き図形の方向識別部322及び一筆書き図形識別部323によりそれぞれ識別されたジェスチャ図形の描画方向及び図形の種類をもとに、操作内容データベース23から対応する操作内容を表す情報が読出される。そして、この読み出された操作内容を表す情報をもとに、表示画像・映像蓄積部24から対応する画像や映像の表示データが読出され、この表示データをもとにテレビジョン受信機2の表示画面が更新される。
【0044】
以上詳述したように第1の実施形態では、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aを新たに備え、この一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Aの制御の下で、以下のような処理を行っている。
【0045】
(1) 一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がOFFに設定されている状態で、ジェスチャの認識領域C内にジェスチャ開始領域E0を設定し、発光マーカ5の描画点が当該ジェスチャ開始領域E0内に入った場合に一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能をONに設定すると共に、ジェスチャの終点を検出するための検出ゾーンE1をジェスチャ認識領域C内に設定する。
【0046】
(2) ジェスチャ認識処理部320の機能がONに設定されている状態で、発光マーカ5の描画点がジェスチャ認識領域Cの外に出たか否かを監視し、ジェスチャ認識領域Cの外に出たことが検出された場合に、上記一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能をONからOFFに遷移させる。
【0047】
したがって第1の実施形態によれば、ユーザ1はジェスチャ以外の特別な操作を行うことなく、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能を直感的なジェスチャ操作により簡単かつスムーズにON/OFFすることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
[構成]
図8は、この発明の第2の実施形態に係るジェスチャ認識装置の機能構成を示すブロック図である。なお、同図において図2と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0049】
一筆書きジェスチャ認識処理ユニット30Bの一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部310Bは、指位置検出部311及び一筆書きジェスチャON/OFF判断部312に加え、ジェスチャ機能強制終了部313をさらに備えている。
このジェスチャ機能強制終了部313は、ジェスチャ入力受付中に描画点が予め定められた時間以上連続して検出できなくなった場合に、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能を強制的にOFF状態に遷移させる機能を有する。
【0050】
なお、上記ジェスチャ機能強制終了部313も、指位置検出部311及び一筆書きジェスチャON/OFF判断部312と共に、図示しないプログラムメモリに格納されたアプリケーション・プログラムを中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)に実行させることにより実現される。
【0051】
[動作]
上記ジェスチャ機能強制終了部313をさらに備えることで、ジェスチャ認識機能ON/OFF切替処理部310Bでは以下のような処理が実行される。図9はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。なお、同図においても前記図4と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0052】
すなわち、ステップS310においてジェスチャ機能強制終了部313が起動され、このジェスチャ機能強制終了部313の制御の下で、カメラ4により撮像された画像データから指位置を表す描画点が検出されるか否かをステップS3101により判定する。そして、描画点が検出されていれば、ステップS311による指位置の座標検出処理を経てステップS312による一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断処理に移行する。
【0053】
これに対し、上記指の描画点が予め設定された時間以上連続して非検出となると、ステップS3102に移行して、ここで一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能を強制的にOFF状態に遷移させる。そして、このOFF状態に遷移させた後、ステップS312による一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断処理に移行する。
【0054】
したがって第2の実施形態によれば、例えばユーザ1の前を人が横切り、これにより指の描画点が所定時間以上画像データから検出できなくなると、この状態がジェスチャ機能強制終了部313により検出され、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能が強制的にOFFされる。このため、描画軌跡の一部が欠損した不完全な描画図形をもとにジェスチャの認識処理が行われる不具合を未然に防ぎ、これにより誤操作を防止することができる。
【0055】
また、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能がOFFされると、第1の実施形態で述べたように、一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断部312の制御の下、ジェスチャの認識領域Cには図7(b)に示したようにジェスチャ開始領域E2が自動的に設定される。このため、ユーザ1は指の位置をこのジェスチャ開始領域E2に戻した後、再度ジェスチャ操作を開始すれば、他に特別な操作を行わなくてもそのままジェスチャ操作をやり直すことが可能となる。したがって、ジェスチャ入力操作中に予期しない外乱等が発生した場合でも、ユーザ1は特別な操作を行うことなくスムーズにジェスチャ操作をやり直すことができる。
【0056】
(その他の実施形態)
第1の実施形態では、ジェスチャ認識領域Cをカメラ4の視野範囲に設定したが、カメラ4の視野範囲が大きい場合にはこのカメラ4の視野範囲内に当該視野範囲より小さいジェスチャ認識領域Cを設定するようにしてもよい。この場合のジェスチャ認識領域Cの大きさや形状は任意に設定可能である。
【0057】
第2の実施形態では、指の描画点が予め設定された時間以上連続して非検出となった場合に、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能を強制的にOFF状態に遷移させるようにした。しかしそれに限らず、指位置蓄積部25に記憶された指位置の軌跡を表す集合のうち、その一部が予め決められた長さ以上欠損していた場合に、一筆書きジェスチャ認識処理部320の機能を強制的にOFF状態に遷移させるようにしてもよい。
【0058】
また、前記各実施形態では本発明に係るジェスチャ認識装置の機能を情報処理装置に設けた場合を例に説明したが、同機能をテレビジョン受信機に設けてもよいし、セットトップボックスやビデオレーダなどに設けてもよい。その他、ジェスチャ認識装置の種類や構成、処理手順と処理内容などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0059】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ユーザ、2…テレビジョン受信機、3…情報処理装置、4…カメラ、5…発光マーカ、10…指の位置検出ユニット、11…カメラ画像取得部、20…データベース、21…カメラ画像蓄積部、22…一筆書き図形蓄積部、23…操作内容データベース、24…表示画像・映像蓄積部、25…指位置蓄積部、30A,30B…一筆書きジェスチャ認識処理ユニット、310A,310B…一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF切替部、311…指位置検出部、312…一筆書きジェスチャ認識機能ON/OFF判断部、313…ジェスチャ機能強制終了部、320…一筆書きジェスチャ認識処理部、321…一筆書きジェスチャ入力判断部、322…一筆書き図形の方向識別部、323…一筆書き図形識別部、40…リアルタイム処理発生ユニット、50…表示画面処理ユニット、51…表示画面処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェスチャにより空間に図形を描く動きを撮像してその画像データを出力する撮像装置と、前記撮像装置から出力された画像データをもとに前記ジェスチャにより描かれた図形を認識する機能を有するジェスチャ認識装置とを具備するシステムで使用される前記ジェスチャ認識装置であって、
前記撮像装置から出力された画像データを取り込む手段と、
ジェスチャ認識機能がOFF状態に設定されている状態で、予め設定されたジェスチャ認識領域内に始点判定領域を設定する手段と、
前記取り込まれた画像データから描画点の位置を検出し、この検出された描画点の位置が前記始点判定領域内に存在すると判定された場合に、前記ジェスチャ認識機能をON状態に設定すると共に、前記ジェスチャ認識領域内に終点判定領域を設定する手段と、
前記ジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、前記画像データから検出された描画点の位置が前記ジェスチャ認識領域外に出たことが検出された場合に、前記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる第1のOFF制御手段と
を具備することを特徴とするジェスチャ認識装置。
【請求項2】
前記ジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、前記画像データから検出された描画点の位置が予め定められた時間以上連続して検出できなくなった場合に、前記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる第2のOFF制御手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載のジェスチャ認識装置。
【請求項3】
前記ジェスチャ認識機能がON状態に設定されている状態で、前記画像データから検出された描画点の軌跡が予め定められた長さ以上連続して欠落した場合に、前記ジェスチャ認識機能をON状態からOFF状態に遷移させる第3のOFF制御手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載のジェスチャ認識装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のジェスチャ認識装置が具備する各手段の処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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