説明

ジェットポンプ及び原子炉

【課題】ジェットポンプ効率を更に向上できるジェットポンプを提供する。
【解決手段】ジェットポンプは、ノズル装置、ベルマウス16、スロート及びディフューザを備えている。ノズル装置は、ノズル15a〜15eを有し、連結板20a〜20eによってベルマウス16に取り付けられる。ノズル装置はベルマウス16の上方に配置される。整流板31a〜31eがベルマウス16の外面に設けられる。ノズル15a〜15eからベルマウス16に向かって駆動水が噴出されるとき、ノズル装置の周囲に存在する冷却水(被駆動水)がベルマウス16内に吸い込まれる。ベルマウス16の内面に沿って上昇する被駆動水流が、整流板31a〜31eによって整流化され、ベルマウス16の上端部を回り込んでベルマウス16内に流入する。被駆動水流の整流化により流動エネルギー損失が低減され、ジェットポンプ効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットポンプ及び原子炉に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適なジェットポンプ及び原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、内部に炉心を配置した原子炉圧力容器(以下、RPVという)、炉心シュラウド、ジェットポンプ及び再循環系等を有している。炉心を取り囲む炉心シュラウドが、RPV内に設置される。複数のジェットポンプが、炉心シュラウドとRPVの間に形成された環状のダウンカマ内に配置される。ジェットポンプは、ノズル、ベルマウス、スロート及びディフューザを備える。ノズルはベルマウスの上方に配置され、ベルマウスはスロートの上端に繋がっている。スロートはディフューザの上端部に取り外し可能に装着されている。再循環系は、再循環ポンプ、及び再循環ポンプを設けた再循環系配管を有する。再循環系配管の一端はRPVのノズルに接続されてダウンカマに連絡され、最循環系配管の他端はRPVの外に配置されたヘッダーに接続される。このヘッダーに接続された複数のライザー管が、RPV内に達し、曲り管を介して、各ジェットポンプのそれぞれのノズルに接続される。
【0003】
再循環ポンプの駆動によって吸引されて昇圧されたダウンカマ内の冷却水は、再循環系配管を通り、駆動水としてノズルからベルマウスを通してスロート内に噴出される。ノズルは駆動水の速度を増加させる。ダウンカマ内でノズル周囲に存在する冷却水が、噴出された駆動水の作用によって、被駆動水としてベルマウスを通してスロート内に吸込まれる。スロート内に吸込まれた被駆動水は、スロート内で、駆動水と運動量を交換しながら、駆動水と共にディフューザ内に流入する。ディフューザから排出された冷却水(駆動水及び被駆動水)は、RPV内の下部プレナムを通って炉心に供給される。
【0004】
RPV内に設置されているジェットポンプは、検査及び修理等のため、インレットミキサ(曲り管、ノズル、ベルマウス及びスロートが一体化)が取り外し可能な構造となっている。ノズルとベルマウスは複数の連結板によって連結されている。ベルマウスは、ノズルの周囲の被駆動水を吸込む入口部である。ジェットポンプ効率を高めるために、ベルマウスは、流線形に形成され、流動抵抗を小さくしている。また、ノズルとベルマウスを連結する連結板は、吸込まれる被駆動水の流れの時間平均的な向き(中心軸方向)に並行に設置されており、整流板の機能を有している。吸込む被駆動水の流れを整流化することにより、渦の発生を低減して被駆動水のエネルギー損失を抑制してジェットポンプ効率を向上させている。
【0005】
特開2005−233152号公報に記載されたジェットポンプは、ベルマウスの上端部に、ベルマウスの横断面において、花びら状に外側に突出した拡張部を形成し、ベルマウスの内部の流路面積を増大させ、ベルマウスの流路抵抗を低減している。
【0006】
特開昭60−47900号公報に記載されたジェットポンプは、ベルマウスの内面に複数枚の羽根を設置し、ベルマウスに吸引される被駆動水をそれらの羽根によって旋回させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−233152号公報
【特許文献2】特開昭60−47900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ジェットポンプ効率の向上は、より少ない再循環ポンプの回転数で所定の炉心流量を発生させることができる。再循環ポンプの回転数の低下は、原子力発電所における所内電力の消費を低減させ、原子力プラントの効率を高めることができる。
【0009】
発明者らは、ジェットポンプ効率の向上を目指し、ベルマウス内外における駆動水及び被駆動水の流動状態について検討を行った。この結果、M比(吸込み流量と駆動水流量の比)の大きいジェットポンプでは、周囲から多量の冷却水がベルマウスに吸込まれるため、ベルマウスの開口部に直接向かう被駆動水の流れに加えて、ベルマウスの外面に沿って下方から上方に向かいベルマウスの開口部に回り込む被駆動水流が発生していることが分かった。そこで、発明者らは、ベルマウスの外側におけるこの被駆動水流を整流化することによって、渦を低減して被駆動水の流動エネルギー損失が抑制され、ジェットポンプ効率がさらに向上し、プラント効率をさらに高めることができるという認識を持つに至った。さらに、上記の被駆動水の流れを整流化することによって、ベルマウスの開口部に下方から回り込む被駆動水流の乱れが低減されるため、ジェットポンプの振動を低減できることも分かった。
【0010】
本発明の目的は、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができるジェットポンプ及び原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ディフューザと、下流側端部がディフューザの上流側端部に取り外し可能に装着されるスロートと、スロートの上流側端部に接続されるベルマウスと、ベルマウスから離れた位置に配置されて駆動水を噴射する複数のノズルを有し、複数の連結板でベルマウスに取り付けられたノズル装置と、ベルマウスの外面に設けられた第1整流板とを備え、ベルマウスとノズル装置の間に被駆動水流路が形成されることにある。
【0012】
ベルマウスの外面に設けられた第1整流板によって、ベルマウスの外面に沿って上昇してベルマウスの開口部に回り込む被駆動水流が整流化され、この被駆動水流の乱れが低減される。このため、ベルマウスの開口部に流入する被駆動水の流動エネルギー損失を低減でき、ベルマウスに流入する被駆動水の流量を増大させることができ、結果的に、ジェットポンプ効率が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のジェットポンプのノズル付近での横断面図である。
【図2】図1に示すジェットポンプを適用した沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図3】実施例1のジェットポンプの全体構成図である。
【図4】ベルマウス周辺の冷却水の流動状態を示した説明図である。
【図5】図3に示すノズル及びベルマウス付近の拡大斜視図である。
【図6】図1に示されたベルマウスの整流板付近での縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプのノズル付近での横断面図である。
【図8】図7に示されたベルマウスの整流板付近での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例である沸騰水型原子炉に適用された実施例1のジェットポンプを、図1、図2及び図3を用いて以下に説明する。本実施例のジェットポンプの構造を説明する前に、このジェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造を、図2及び図3を用いて以下に説明する。
【0017】
沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器(原子炉容器)3を有し、原子炉圧力容器3内に炉心シュラウド2を設置している。原子炉圧力容器は、以下、RPVと称する。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心5が、炉心シュラウド2内に配置される。気水分離器6及び蒸気乾燥器7がRPV3内で炉心5の上方に配置される。主蒸気配管8及び給水配管9がRPV3に接続される。
【0018】
複数のジェットポンプ1が、RPV3と炉心シュラウド2の間に形成された環状のダウンカマ4内に配置され、RPV3に設けられるシュラウドサポート(図示せず)に設置される。RPV3に設けられる再循環系は、再循環系配管11及び再循環系配管11に設置された再循環ポンプ12を有する。再循環系配管11の一端はRPVのノズル(図示せず)に接続されてダウンカマ4に連絡される。再循環系配管11の他端は、RPV3の外部に配置されたヘッダー(図示せず)に接続される。このヘッダーに接続された複数のライザー管13が、RPV3内に達し、別々の分岐管19に接続される。分岐管19は、曲り管(エルボ)14を介して、ジェットポンプ1のノズル装置35に接続される。
【0019】
ジェットポンプ1は、ノズル装置35、ベルマウス16、スロート17及びディフューザ18を備える(図3参照)。ノズル装置35はベルマウス16の上方に配置され、ベルマウス16はスロート17の上端に繋がっている。スロート17はディフューザ18の上端部に取り外し可能に装着されている。ディフューザ18の下端は、シュラウドサポートに設置される。ベルマウス16、スロート17及びディフューザ18は、この順に、上流より下流に向って配置され、ベルマウス16、スロート17及びディフューザ18は、ジェットポンプ本体を構成する。
【0020】
ノズル装置35は、5本のノズル15、具体的には、ノズル15a,15b,15c,15d,15e、及びノズル台座21を有している(図1及び図5参照)。ノズル15a,15b,15c,15d,15eは、ノズル台座21に設けられ、ベルマウス16に向かって伸びている。ノズル台座21は曲り管14に接続され、駆動水の通路が、繋がっている曲り管14、ノズル台座21及びノズル15のそれぞれの内部に形成される。
【0021】
ノズル装置35は、複数の連結板20によってベルマウス16に取り付けられている(図5参照)。各連結板20は、下端部がベルマウス16の上端部に取り付けられ、上端部がノズル台座21に取り付けられている。各ノズル15の側面がそれぞれの連結板20に取り付けられる。図1に示すように、連結板20aがノズル15aに取り付けられ、連結板20bがノズル15bに取り付けられ、連結板20cがノズル15cに取り付けられ、連結板20dがノズル15dに取り付けられ、連結板20eがノズル15eに取り付けられている。連結板20a,20b、20c、20d、20eは、ベルマウス16(ノズル台座21)の中心軸から放射状に配置され(図1及び図5参照)、幅方向(図5参照)がベルマウス16の中心軸を向いている。また、連結板20a,20b、20c、20d、20eは、ベルマウス16の周方向に等間隔に、すなわち、72°置きに配置される。各連結板20によって支持されたノズル装置35がベルマウス16の上方に配置されている関係上、各ノズル15とベルマウス16の間に、ダウンカマ4内でノズル装置35の周囲に存在する冷却水(被駆動水)をベルマウス16内に導く被駆動水流路が形成される。
【0022】
ベルマウス16の外面には、図3のI−I断面図である図1に示すように、整流板31a,31b、31c、31d、31eが取り付けられ、これらの整流板31はベルマウス16の中心軸から放射状に配置されている。すなわち、各整流板31の幅方向が、連結板20の幅方向と同様に、ベルマウス16の中心軸を向いている。各整流板31は、ベルマウス16の軸方向においてベルマウス16の上端から下方に向かって直線状に伸びており(図6参照)、各整流板31の横断面形状は矩形である。さらに、各整流板31は、ベルマウス16の外面に対して垂直に配置されており、ベルマウス16の接線方向において垂直な平面を有している。整流板31aはベルマウス16の周方向において連結板20eと連結板20aの間に配置され、整流板31bはベルマウス16の周方向において連結板20aと連結板20bの間に配置され、整流板31cはベルマウス16の周方向において連結板20bと連結板20cの間に配置され、整流板31dはベルマウス16の周方向において連結板20cと連結板20dの間に配置され、整流板31eはベルマウス16の周方向において連結板20dと連結板20eの間に配置される。本実施例では、各整流板31は、ベルマウス16の周方向において、隣り合う連結板20間の、その周方向の距離の1/2の位置(隣り合う連結板20間に存在する、ベルマウスの円弧の中点)に配置される。この結果、各整流板31は、ベルマウス16の周方向において等間隔、72°置きに配置される。図5では、各整流板31が省略されている。
【0023】
RPV1内の上部に存在する被駆動水である冷却水(被駆動流体、冷却材)は、給水配管9からRPV3に供給された給水と混合されてダウンカマ4内を下降する。この冷却水は、再循環ポンプ12の駆動によって再循環系配管11内に吸引され、再循環ポンプ12によって昇圧される。この昇圧された冷却水を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水は、再循環系配管11、ライザー管13、分岐管19及び曲り管14内を流れてジェットポンプ12のノズル装置35内に達する。ノズル装置35では、ノズル台座21内に流入した駆動水は、ノズル台座21に設けられたノズル15Aa,15b,15c,15d,15eに分配され、各ノズル15からベルマウス16に向かってそれぞれ噴出される。
【0024】
ダウンカマ4内でノズル装置35の周囲に存在する冷却水である被駆動水は、各ノズル15から噴出された駆動水の作用によって、各ノズル15とベルマウス16の間に形成された被駆動水流路を通り、ベルマウス16からスロート17内に吸い込まれる。この被駆動水は、スロート17内で駆動水と混合され、駆動水と共にスロート17内を下降し、ディフューザ18の下端からRPV3内の下部プレナム22に吐出される。ディフューザ18から吐出された冷却水が、下部プレナム22から炉心5に供給される。
【0025】
この冷却水は炉心5を通過する際に加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気を含む気液二相流は、気水分離器6で蒸気と水に分離される。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器7で湿分を除去されて主蒸気配管8に排出される。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、発電が行われる。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として給水配管9によりRPV3内に供給される。気水分離器6及び蒸気乾燥器7で分離された水は、落下して冷却水としてダウンカマ4内に達する。
【0026】
ノズル装置35、ベルマウス16、スロート17及びディフューザ18を主要な構成要素とする本実施例のジェットポンプ1は、ノズル装置35の周囲に存在するダウンカマ4内の冷却水を吸込むことにより、少ない量の駆動水で多くの冷却水を炉心5に供給することができる。ジェットポンプ1は、各ノズル15から駆動水をスロート17内に高速で噴出させることによりスロート17内の静圧を低下させる。これにより、ノズル装置35周囲の冷却水を、被駆動水流路を通してスロート17に吸い込むことができる。ディフューザ18は流れが剥離を起こさない程度に流路断面積が下流に向かうほど徐々に拡大しており、このディフューザ18で冷却水の運動エネルギーが圧力に変換される。ディフューザ18において、被駆動水は、ベルマウス16に吸い込まれた位置における圧力よりもその圧力が高められる。なお、ベルマウス16の流路断面積は、上流に向かって増大している。
【0027】
発明者らは、解析コードを用いて、ノズル15から駆動水が噴出されたときの、整流板31を取り付けていない構造でのベルマウス16の内外での冷却水の流動状態を解析した。この解析結果を図4に示す。図4では、冷却水の流れを矢印で示している。図4に示す解析結果から明らかであるように、ノズル装置35の周囲からベルマウス16の開口部に直接向かう冷却水の流れの他に、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む冷却水の流れが発生している。電気出力が110万kW級の沸騰水型原子炉では、M比(吸込み流量と駆動水流量の比)が大きくなる(M比>2.0)ようにジェットポンプを製造している。このため、駆動水による、ノズル装置35の周囲に存在する被駆動水の吸引力が強くなるため、図4に示すように、ダウンカマ4内で、ベルマウス16の開口部よりも下方に達した被駆動水もその開口部に吸込まれている。ノズル装置35の周囲からベルマウス16の開口部に直接向かう冷却水(被駆動水)の流れ、及びベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む冷却水(被駆動水)の流れは、時間平均では、ベルマウス16の開口部に向かってスムーズな流線を形成する。しかしながら、各瞬間では、それぞれの流れは乱れを発生しながら流れており、この乱れは被駆動水の流動エネルギーの損失をもたらす。この結果、ベルマウス16内に吸い込まれる被駆動水の量がその損失分だけ減少し、ジェットポンプの効率を低下させていることが分かった。
【0028】
本実施例では、このような問題点を解消するために、上記したように、ベルマウス16の外面に複数の整流板31を設けている。これらの整流板31の設置によって、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む被駆動水流が整流化される。このため、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む被駆動水流の乱れが低減され、この乱れに伴う、ベルマウス16の開口部に流入する被駆動水の流動エネルギーの損失を低減することができる。ベルマウス16に流入する被駆動水の流量が増大し、ジェットポンプ1のジェットポンプ効率が向上する。
【0029】
ベルマウスの上端部での横断面形状を、花びら状に外側に突出した複数の突出部を形成した特開2005−233152号公報に記載されたジェットポンプでは、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む冷却水流の乱れを低減することはできない。本実施例では、ベルマウス16の外面に設置された各整流板31が、この外面に対して垂直に配置されており、さらに、ベルマウス16の接線方向に垂直な平面を有している。このため、そのような平面を有する各整流板31は、ベルマウス16の外側を流れる被駆動水流の、ベルマウス16の周方向における速度成分を抑制することができ、ベルマウス16の軸方向に上昇する被駆動水流を整流することができる。
【0030】
本実施例では、ベルマウス16の中心軸から放射状に5枚の連結板20が設けられている。これらの連結板20も、ノズル装置35の周囲からベルマウス16に流入する被駆動水を整流化する機能を有している。本実施例では、これらの連結板20による被駆動水の整流化作用に、整流板31による整流化作用が加味され、ベルマウス16の開口部に流入する被駆動水の流動エネルギーの損失がさらに低減される。従って、ジェットポンプ1のジェットポンプ効率がさらに向上する。特に、連結板20及び整流板31の幅方向がベルマウス16の中心軸を向いているので、連結板20及び整流板31の一方が他方の整流効果を阻害することがなく、連結板20及び整流板31のそれぞれの整流効果を最大限に生かすことができる。
【0031】
発明者らの検討によれば、1枚の整流板31をベルマウス16の外面に設置した場合であっても、この整流板31が存在しない場合に比べて、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む冷却水流の乱れを低減できることが分かった。1枚の整流板31をベルマウス16の外面に設置した場合でも、ジェットポンプ効率を向上させることができる。整流板31の枚数を増加すれば、ジェットポンプ効率の向上の度合いは大きくなる。
【0032】
ベルマウス16の外面に取り付けた整流板31を、ベルマウス16の中心軸と連結板20を結ぶ直線の延長線上に配置してもよい。ベルマウス16の外面でその直線状に配置した整流板31で整流化された被駆動水が、さらに、連結板20で整流化される。このため、被駆動水の整流化効果が増加して、ジェットポンプ効率の向上幅が大きくなる。
【0033】
本実施例では、ベルマウス16の周方向において、隣接して配置される連結板20の相互間に整流板31を配置しているので、ベルマウス16の中心軸と連結板20を結ぶ直線の延長線上に整流板31を配置した場合よりも、整流化効果がさらに増加し、ベルマウス16内に吸引される被駆動水の流量が増加する。このため、ジェットポンプ1のジェットポンプ効率がさらに向上する。ベルマウス16に流入する被駆動水流量のベルマウス16の周方向における均一化を考慮した場合、ベルマウス16の周方向において、隣り合うノズル15のそれぞれの間に、少なくとも1枚の整流板31で同じ枚数の整流板31を配置する必要がある。本実施例では、ベルマウス16の周方向において、隣り合うノズル15のそれぞれの間に、1枚の整流板31を配置している。
【0034】
各整流板31が、ベルマウス16の周方向において、隣り合う連結板20間に存在する、ベルマウス16の外面の円弧の中点に配置されているので、各整流板31はベルマウス16の周方向において等間隔に配置される。具体的には、各整流板31は、ベルマウス16の周方向に72°置きに配置されている。各連結板20も、ベルマウス16の周方向に72°置きに配置されている。連結板20と整流板31は、ベルマウス16の周方向に、36°置きに交互に配置される。このため、ベルマウス16の周方向において、渦の発生がより均一に抑制される。また、ベルマウス16の周方向に整流化装置(連結板20及び整流板31)が、ベルマウス16の周方向に等間隔(例えば、36°置き)に配置されているので、ベルマウス16に流入する被駆動水の整流化が促進されて、ベルマウス16の外面に沿って上昇してベルマウス16の開口部に回り込む被駆動水流の乱れが低減され、ジェットポンプ効率がさらに向上する。
【0035】
ベルマウス16の外面に、ベルマウス16の周方向において整流板31を等間隔に配置することによって、流体の乱れを低減でき、流体の乱れを加震源とするジェットポンプ1の振動成分を抑制することができる。
【0036】
大量の被駆動水がベルマウス16の内面に沿って上昇してベルマウス16の上端部で流れの向きを変えながらベルマウス16に流れ込んでいる。このため、ベルマウス16が大きな流体力を受けるので、従来は、ベルマウス16の肉厚を厚くしている。これに対し、本実施例では、ベルマウス16の外面に整流板31を設けることにより、整流板31がベルマウス16の補強材として機能する。整流板31の設置によりベルマウス16の強度が増大するので、ベルマウス16の肉厚を従来のジェットポンプにおけるベルマウスの肉厚よりも薄くすることができる。ベルマウス16の内径を従来と同じにした場合、整流板31の設置によりベルマウス16の外径を小さくしてベルマウス16の肉厚を薄くすると、ベルマウス16の、削減できる体積が大きくなるので、ベルマウス16の製作に要する材料を節約することができる。
【実施例2】
【0037】
本発明の実施例である沸騰水型原子炉に適用された実施例1のジェットポンプを、図7及び図8を用いて以下に説明する。
【0038】
本実施例のジェットポンプ1Aは、実施例1のジェットポンプ1においてベルマウス16の内面にも整流板33a〜33jを設けている。さらに、ベルマウス16の外面に設けた整流板の枚数は、ジェットポンプ1よりも多くなっている。すなわち、本実施例では、ベルマウス16の外面に、整流板31a〜31j及び32a〜32eを設けている。ジェットポンプ1Aの他の構成はジェットポンプ1と同じである。整流板33a〜33jは、図8に整流板33として示すように、ベルマウス16の内面においてベルマウス16の上端から下方に向かって伸びている。
【0039】
整流板32a〜32eは、整流板31a〜31jと同様に、ベルマウス16の軸方向においてベルマウス16の上端から下方に向かって直線状に伸びており、整流板32a〜32eの横断面形状は矩形である。さらに、整流板32a〜32eは、ベルマウス16の外面に対して垂直に配置されており、ベルマウス16の接線方向において垂直な平面を有している。また、整流板33a〜33jは、整流板31a〜31j及び32a〜32eと同様に、ベルマウス16の軸方向においてベルマウス16の上端から下方に向かって直線状に伸びており(図8参照)、整流板33a〜33jの横断面形状は矩形である。さらに、整流板33a〜33jは、ベルマウス16の内面に対して垂直に配置されており、ベルマウス16の接線方向において垂直な平面を有している。
【0040】
整流板32aはベルマウス16の中心軸と連結板20aを結ぶ直線の延長線上に配置され、整流板32bはベルマウス16の中心軸と連結板20bを結ぶ直線の延長線上に配置され、整流板32cはベルマウス16の中心軸と連結板20cを結ぶ直線の延長線上に配置され、整流板32dはベルマウス16の中心軸と連結板20dを結ぶ直線の延長線上に配置され、整流板32eはベルマウス16の中心軸と連結板20eを結ぶ直線の延長線上に配置される。各整流板31は、ベルマウス16の周方向において隣り合う連結板20の相互間に等間隔に配置される。ベルマウス16の周方向において、整流板31a及び31bは連結板20eと連結板20aの間に配置され、整流板31c及び31dは連結板20aと連結板20bの間に配置され、整流板31e及び31fは連結板20bと連結板20cの間に配置され、整流板31g及び31hは連結板20cと連結板20dの間に配置され、整流板31i及び31jは連結板20dと連結板20eの間に配置されている。整流板31a〜31j及び32a〜32eは、ベルマウス16の中心軸から放射状に配置され、ベルマウス16の周方向において、24°置きに、上記したように配置される。
【0041】
ベルマウス16の内面に取り付けられる整流板33は、ベルマウス16の周方向において隣り合う連結板20の相互間で、整流板31と同様に、ベルマウス16の周方向に24°置きに配置される。整流板33a〜33jはベルマウス16の中心軸から放射状に配置されている。ベルマウス16の周方向において、整流板33a及び33bは連結板20eと連結板20aの間に配置され、整流板33c及び33dは連結板20aと連結板20bの間に配置され、整流板33e及び33fは連結板20bと連結板20cの間に配置され、整流板33g及び33hは連結板20cと連結板20dの間に配置され、整流板33i及び33jは連結板20dと連結板20eの間に配置されている。
【0042】
整流板33aはベルマウス16の中心軸と整流板31aを結ぶ直線上に配置される。他の整流板33b〜33jも、同様に、ベルマウス16の中心軸と該当する整流板31を結ぶ直線上に配置される。換言すれば、整流板33a〜33jは、ベルマウス16を間に挟んで整流板31a〜31jと対向している。本実施例では、図8に示すように、整流板31と整流板33は別体となっているが、整流板31と整流板33の頂部を連結し、頂部が連結されて一体になった整流板31及び整流板33をベルマウス16の頂部を跨いでベルマウス16の内外に配置してもよい。
【0043】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、ベルマウス16の内面にも整流板33を取り付けているので、ベルマウス16に流入した被駆動水の整流化をさらに向上させ、被駆動水の流動エネルギー損失を低減できる。このため、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができる。整流板31,32で整流化された被駆動水流が、ベルマウス16の上端部を大きく曲がりながらベルマウス16内に曲り込むとき、再び、渦が発生する可能性がある。ベルマウス16の内側に整流板33を設けることによって、ベルマウス16の上端部を回り込んでベルマウス16内に流入した被駆動水流に発生した渦を消失させ、流れの乱れによる被駆動水流の流動エネルギー損失を低減させることができ、結果的に、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができる。
【0044】
本実施例は、ベルマウス16の中心軸と連結板20を結ぶ直線上に整流板32を配置しているので、ベルマウス16の外面に設けた整流板の対称性が、実施例1のジェットポンプ1よりも高められる。この構成により、ベルマウス16の外面から回り込む被駆動水がベルマウス16の内側に到達する前に周方向に均一に整流化されるため、流れの乱れによる被駆動水流の流動エネルギー損失を効果的に低減させることができ、ジェットポンプ効率をさらに向上させることができる。
【0045】
ベルマウス16の内面に設けられる整流板33は、ベルマウス16の中心軸と整流板31を結ぶ直線からずれた位置に配置してもよい。
【0046】
実施例1のジェットポンプ1において、ベルマウス16の内面に整流板33を設けてもよい。
【0047】
ベルマウスの内面に冷却水を旋回させる複数の羽根を設けることが、特開昭60−47900号公報の第5図に示されている。これらの羽根は、ベルマウス内に流入する被駆動水を旋回させる、すなわち、この被駆動水に対して斜め方向に速度を与えるため、新たに加速損失が発生する。本実施例では、整流板33a〜33jがベルマウス16の軸方向において直線状に伸びているので、特開昭60−47900号公報に記載された羽根のように、新たな加速損失を発生させたりはしない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、沸騰水型原子炉に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1A…ジェットポンプ、2…炉心シュラウド、3…原子炉圧力容器、4…ダウンカマ、5…炉心、11…再循環系配管、12…再循環ポンプ、13…ライザー管、15…ノズル、16…ベルマウス、17…スロート、18…ディフューザ、20,20a〜20e…連結板、21…ノズル台座、31,31a〜31j,32a〜32e,33,33a〜33j…整流板、35…ノズル装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディフューザと、下流側端部が前記ディフューザの上流側端部に取り外し可能に装着されるスロートと、前記スロートの上流側端部に接続されるベルマウスと、前記ベルマウスから離れた位置に配置されて駆動水を噴射する複数のノズルを有し、複数の連結板で前記ベルマウスに取り付けられたノズル装置と、前記ベルマウスの外面に設けられた第1整流板とを備え、
前記ベルマウスと前記ノズル装置の間に被駆動水流路が形成されることを特徴とするジェットポンプ。
【請求項2】
それぞれの前記整流板が、前記ベルマウスの軸方向において直線状に伸びており、前記ベルマウスの外面に対して垂直に配置されて前記ベルマウスの接線方向において垂直な平面を有している請求項1に記載のジェットポンプ。
【請求項3】
前記第1整流板は、前記第1整流板の板幅方向が前記ベルマウスの中心軸を向いて配置されている請求項1または2に記載のジェットポンプ。
【請求項4】
前記第1整流板が、前記ベルマウスの周方向において、この周方向で隣り合う前記連結板の間に配置される請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項5】
前記ベルマウスの内面に第2整流板が設けられた請求項1ないし4のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項6】
ディフューザと、下流側端部が前記ディフューザの上流側端部に取り外し可能に装着されるスロートと、前記スロートの上流側端部に接続されるベルマウスと、前記ベルマウスから離れた位置に配置されて駆動水を噴射する前記複数のノズルを有し、複数の連結板で前記ベルマウスに取り付けられたノズル装置と、前記ベルマウスの外面に設けられた複数の第1整流板とを備え、
前記ベルマウスと前記ノズル装置の間に被駆動水流路が形成され、それぞれの前記ノズルにそれぞれの前記連結板が別々に取り付けられ、それぞれの前記第1整流板が、前記ベルマウスの周方向において、前記ベルマウスの周方向で隣り合う前記連結板の相互間にそれぞれ配置されていることを特徴とするジェットポンプ。
【請求項7】
それぞれの前記第1整流板が、前記ベルマウスの軸方向において直線状に伸びており、前記ベルマウスの外面に対して垂直に配置されて前記ベルマウスの接線方向において垂直な平面を有している請求項7に記載のジェットポンプ。
【請求項8】
前記第1整流板が、前記隣り合う連結板の間に存在する、前記ベルマウスの外面の円弧の中点に配置される請求項6または7に記載のジェットポンプ。
【請求項9】
前記複数の第1整流板が、前記ベルマウスの周方向において、等間隔に配置された請求項6または7に記載のジェットポンプ。
【請求項10】
前記複数の連結板が、前記ベルマウスの周方向において、等間隔に配置された請求項6ないし9のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項11】
前記複数の第1整流板が、前記ベルマウスの中心軸から放射状に配置されている請求項6ないし10のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項12】
前記第1整流板の一部が、前記ベルマウスの中心軸と前記連結板を結ぶ直線の延長線上に配置されている請求項6ないし11のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項13】
前記ベルマウスの内面に第2整流板が設けられた請求項6ないし12のいずれか1項に記載のジェットポンプ。
【請求項14】
それぞれの前記第2整流板が、前記ベルマウスの軸方向において直線状に伸びており、前記ベルマウスの内面に対して垂直に配置されて前記ベルマウスの接線方向において垂直な平面を有している請求項13に記載のジェットポンプ。
【請求項15】
複数の前記第2整流板が前記ベルマウスの内面に設けられ、それぞれの前記第2整流板が、前記ベルマウスの周方向において、前記ベルマウスの周方向で隣り合う前記連結板の相互間にそれぞれ配置されている請求項13に記載のジェットポンプ。
【請求項16】
前記第2整流板が、前記ベルマウスの中心軸と前記第1整流板を結ぶ直線上に配置されている請求項14に記載のジェットポンプ。
【請求項17】
原子炉容器と、前記原子炉容器内に設置された複数のジェットポンプを備え、
前記ジェットポンプが請求項1ないし16のいずれか1項に記載されたジェットポンプであることを特徴とする原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31751(P2012−31751A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170060(P2010−170060)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】