説明

ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillusstearothermophilus)由来のRNA依存型DNAポリメラーゼ

本発明は、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus))のゲノムから単離されたポリヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配列が、逆転写酵素活性を有し、約75℃までの温度での該活性を維持する、新規酵素、すなわちTirt(熱安定性イントロン逆転写酵素)を構成する、該(he)ポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2004年3月10日に先に出願された米国特許出願第10/797,262号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、熱安定性ポリメラーゼ酵素をコードするDNA配列およびタンパク質配列、かかる酵素の組換え体生成のための発現ベクターコンストラクト、ならびに熱安定性ポリメラーゼの使用方法に関する。さらに具体的には、本発明は実質的に純粋な、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)から単離された熱安定性RNA指向性DNAポリメラーゼ(すなわち逆転写酵素)に関する。本発明はまた、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)のRNA指向性DNAポリメラーゼの大腸菌(Escherichia coli)におけるクローニングおよび発現、クローニングされた遺伝子を含有するDNA分子、ならびに前記遺伝子を発現させる宿主にも関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
熱安定性酵素は、DNAのクローニング、シークエンシング、およびランダムな変異体の作製において計り知れない価値を有すると証明されている、分子生物学の不可欠なツールである。最も頻繁に用いられる熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応に利用されるDNAポリメラーゼである。相補的DNA(cDNA)分子を形成するためにRNA分子を鋳型として用いる場合、これらはしばしば、RT-PCRにおける逆転写酵素と対を成し、cDNA配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅される。cDNA合成はウイルス起源の逆転写酵素を用いて、最も頻繁に行われ、これらの酵素に最適な約50℃未満の温度で反応を行う。しかしながら、より高い温度では、鋳型RNAで形成され得、転写酵素によるさらなる過程を阻害し得るような二次構造を融解するために、50℃より高いの温度でcDNAを合成することには、明確な利点がある。より高い温度で、安定で活性であり続ける逆転写酵素は、逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)反応の組み合わせ、および他の応用におけるcDNAの合成に特に有用である。より高い温度で、RNA鋳型中に形成され得る二次構造が消滅し得るので、cDNA産物の長さを伸ばすことができる。また、より高い温度により、cDNA合成中にPCRプライマーの非特異的なアニーリングの量が減少し、cDNAの特異性および増幅量が増加する。より高い温度により、ミスマッチプライマーの3’末端も融解し得、プライマーからのさらなる合成を阻害し、cDNA産物中のミスマッチ塩基の取り込みを制限する。
【0004】
レトロウイルスの逆転写酵素は一般的に:RNA指向性DNAポリメラーゼ、DNA指向性DNAポリメラージオよびRNアーゼH活性に関する、潜在的な三つの酵素活性を有する。従って、レトロウイルスRTを用いてRNAまたはDNAを複製する場合、RNアーゼの作用を最小限にするために、しばしばRNアーゼインヒビターを反応物中に含ませなければならない。不運なことに、これは他の酵素の作用も阻害し得る。また、レトロウイルスの酵素は、典型的に50℃以下の温度で最も効果的である。
【0005】
より高い温度でcDNAを合成するために、好熱性細菌(サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus))由来のDNA依存的DNAポリメラーゼTth polが用いられている。これは技術的には逆転写酵素とは分類されていないが、RT-PCR反応において高温でRNAを逆転写するであろう。効率を上げるために、反応に塩化マンガン(MnCl2)を添加する必要があるが、これもcDNA合成の忠実性を減少させるので、PCR増幅の前にそれを除去するのにさらなる工程が必要となる。
【0006】
RNアーゼH欠損型トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)がRT-PCR反応に用いられており、RNアーゼH欠損型酵素は天然の酵素よりもより熱安定性である。このRTは鋳型RNAを分解せず、産生され得る全長cDNA産物の量が増加する。この酵素によるcDNA合成は一般に50℃で行われるが、より高い温度でのcDNA合成にはより多くの酵素および基質dNTPが必要であり、より高い温度であっても、長いRNA鋳型からの合成はしばしば切断されてしまう。AMV-RTもまた、二つのポリペプチド鎖(αおよびβ)を含み、組換え産物として作製することをより困難で、高価にしている。大腸菌で発現させた場合、例えば最終産物は完全に活性な酵素を提供するように、適切には修飾されない。逆転写反応に用いるモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)由来のRTも市販されている。Invitrogen(Carlsbad, CA)SuperscriptII(登録商標)RTは、M-MLV-RTの点変異体である。製品報告書によるとSuperscriptII(登録商標)RTは50℃までの温度で使用可能であり、天然のM-MLV-RTは42℃までの温度で使用可能である。
【0007】
現在、RT-PCRおよび他の同様の反応に使用可能な酵素が存在するが、高温下で活性があり、正確で、安定であり続ける、RT-PCRの一工程の反応系で使用可能であるように改良されたRTの必要性は依然として高い。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus))の配列番号1のゲノム由来の新規の単離されたポリヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配列が逆転写酵素活性を有する熱安定性タンパク質を構成する、ポリヌクレオチド配列にコードされる新規のアミノ酸配列(配列番号2)に関する。本発明は、逆転写酵素活性を有し、約75℃までの温度で活性を維持する新規酵素、Tirt(熱安定性イントロン逆転写酵素)を提供する。
【0009】
本発明はさらに、DNAのクローニングを促進するようなかかる逆転写酵素の使用方法、およびRT-PCRに必要な反応を行うための調製された試薬を有する少なくとも一種類のキットに関する。本発明はまた、cDNA配列を形成するためにRNA配列の逆転写を行う方法を提供し、さらに約75℃まで上昇させた温度で逆転写反応を行うRT-PCRを実行する方法を提供する。
【0010】
(詳細な説明)
本発明は、好熱性細菌ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)(バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)としても公知)に見られる、熱安定性を有するRNA指向性DNAポリメラージオ提供することによって、従来技術の欠点を克服することを追及している。ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)は、ロシアの油田の累層水(formation water)より単離された生物である。この生物より得られたDNA依存型DNAポリメラーゼは以前に記載されていた。本発明者らはここで、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)のゲノム中にコードされる機能的なRNA依存型DNAポリメラーゼ酵素の発見について記載する。配列データ内の推定コーディング領域を研究する一方で、発明者らは、逆転写酵素活性を有するII型イントロンの配列と類似の特徴を有する配列を発見した。本明細書中で記載される方法において、発明者らは、(「熱安定性イントロン逆転写酵素」について)Tirtとして表記されているタンパク質をコードするDNAを単離し、その過剰発現のための発現ベクターを構築し、約75℃で過熱処理後でさえも逆転写酵素活性を有することを証明した。
【0011】
図2に示されるDNA配列は、ゲノムシークエンシングプロジェクト、Advanced Center for Genome Technology、University of Oklahoma (Experimental Program to Stimulate Competitive Research Grant #EPS-9550478)により得られたバチルス(Bacillus)(ジオバチルス) (Geobacillus)ステアロサーモフィラス(stearothermophilus)株10の不完全なゲノムDNA配列由来である。発明者らは、該配列がTirtタンパク質を含む420アミノ酸ORFをコードすることを発見した。
【0012】
レトロエレメントとは、逆転写酵素をコードし、その複製または可動性(mobility)のいくつかの段階における逆転写のプロセスを用いるような遺伝因子である。真核生物のほぼ全種類で、多様なこれらのレトロエレメントが見つかっている。それらには、いくつかのRNAウイルス、DNAウイルス、トランスポゾン、イントロンおよびミトコンドリアプラスミドが挙げられる。細菌もまた、二つの基本的な種類に分類される、RTをコードする遺伝因子(レトロエレメント)を含有する。多くの細菌で発見されるグループIIイントロンは、イントロンにコードされるORFの一部として、逆転写酵素領域を含有している。一方、レトロン(retron)は、通常見られないmsDNAと呼ばれるサテライトDNAを生じる。発明者らは、複数配列のアラインメント(Clustal Wアラインメント)により、10個の異なるレトロンRT由来のアミノ酸配列と5個の異なる細菌性グループIIイントロンORF由来のアミノ酸配列とを比較した。次いで複数配列アラインメントにより、細菌に見られるRTについてのコンセンサスアミノ酸配列を作製した。細菌のコンセンサス配列を、GenBankデータベース、ならびに完全なものおよび解読未完了の細菌種を含む、細菌ゲノムデータベースの両方のBLASTサーチにおける検索(query)配列として用いた。これらのサーチにより、これまでに記載されてこなかったコンセンサス配列に類似した、いくつかのORFが明かになった。解読未完了のジオバチルス・ステアロサーモフィラスゲノム(G. stearothermophilus)配列由来の420アミノ酸ORFがこれに含まれた。
【0013】
他のRTとの比較により、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)ORFのアミノ酸配列をさらに解析し、細菌およびミトコンドリア由来のグループIIイントロンと強く類似していることが見出された(図1)。RTのアミノ酸配列は、一般的に非常に異なっている。しかしながら、複数アミノ酸配列のアラインメントにより、全RT間で共有される、わずかな高度に保存されたアミノ酸の存在が明らかとなる。これらの保存されたアミノ酸は、折りたたまれたRTタンパク質中の、保存された二次構造に対応する7個のドメイン(I〜VIIで示される、図1)に分類される。ドメインVIIをわずかに超えたところが、ドメイン「X」と表される、さらなる保存された領域であり、グループIIイントロンがコードするタンパク質のみにおいて見られる。ドメインXはグループIIイントロンORF中に見られるマチュラーゼの機能に関連がある。ドメインXは細菌のグループIIイントロンタンパク質間で良くは保存されていないが、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)ORFは、細菌のグループIIイントロン間で共有されるドメインXの、ほとんどの保存されたアミノ酸を含有するようである(図1)。従って、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)ORFは、グループIIイントロンタンパク質のRT領域およびマチュラーゼ領域(またはドメインX)の両方に存在する、ほとんどの高度に保存されたアミノ酸を有するようである(図1)。このためジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)ORFは明らかにレトロン型のRTではなく、従って熱安定性イントロン逆転写酵素(thermostable intron reverse transcriptase)、tirtと表記された。グループIIイントロンにコードされるいくつかのタンパク質もまた、この多機能性タンパク質にエンドヌクレアーゼ活性を与える第三のジンクフィンガードメインを含む。しかしながら、配列比較に基づいて、このエンドヌクレアーゼドメインはtirt ORFには存在しないと思われる。
【0014】
「単離された」もしくは「精製された」核酸、または「単離された」もしくは「精製された」ポリペプチドは、一般的にヒトの介入を通じて、天然の環境から分離されて存在するので、天然の産物ではない核酸またはポリペプチドである。単離された核酸もしくはポリペプチドは、精製された形状で存在し得るか、または例えばトランスジェニック宿主細胞のような非天然環境中に存在し得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」には模倣物が含まれるよう意図される、用語「アミノ酸」にはL型、D型および修飾アミノ酸が含まれるよう意図される。分子間の公知の構造的な類似性を用いて、当業者によりこれらの置換がなされ得る。アミノ酸配列はまた、記載配列のN末端もしくはC末端のいずれか、または両方に付加的なアミノ酸を含み得る任意のペプチド配列またはタンパク質配列を含むよう意図される。用語「Tirtタンパク質」には、該ポリペプチドのバリアントまたは生物活性を有する断片が含まれるよう意図される。
【0016】
一つより多いヌクレオチドコドンにより単一のアミノ酸がコードされ得ること、およびヌクレオチド配列を改変して同一のペプチドをコードする代替のヌクレオチド配列を産生し得ることは、当該分野で周知である。従って、本発明の代替の態様には、前述のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする代替のDNA配列が含まれる。請求項にかかるアミノ酸配列を含むペプチドをコードするDNA配列には、請求項にかかる配列の任意の組み合わせ、および請求項にかかるアミノ酸配列のN末端またはC末端に位置するほかの任意のアミノ酸をコードするDNA配列が含まれる。
【0017】
本明細書中前述の配列が、発現したタンパク質のポリペプチドもしくはタンパク質部分に熱安定性RNA依存型DNAポリメラーゼ活性を付与する限りは、アミノ酸配列および核酸配列が、特にNもしくはC末端アミノ酸、または5’もしくは3’ヌクレオチド配列のような付加的な残基を含み得、本明細書中に記載された配列に示されるように、依然不可欠であり得るということが理解されよう。
【0018】
用語「核酸」は、糖、リン酸、およびプリンもしくはピリミジンのいずれかである塩基を含むモノマー(すなわちヌクレオチド)よりなる、一本鎖もしくは二本鎖のいずれかの形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーについて言う。具体的に限定されなければ、該用語には、参照の核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される、天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸が含まれる。他に指示されていなければ、特定の核酸配列もまた、保存的に修飾されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換)および相補的な配列、ならびに示される参照の配列を暗に包含する。
【0019】
付加的な核酸塩基は、Tirt ORFの5’もしくは3’のいずれかに付加され得、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素サイト、マルチクローニングサイト、他のコーディング領域等の、他のDNA配列と結合し得る。従って、かかるポリヌクレオチドの全体的な長さは相当に異なり得る。本発明に記載される方法において、図2に示されるヌクレオチド配列をタンパク質発現ベクターに挿入し、RNA分子のDNAコピーを合成するために用いられ得るタンパク質を産生する。次いで約68〜約75℃に上げられた温度でDNAを増幅して、複数のコピーを形成し得る。
【0020】
「制御配列」は、何らかの配列を含むポリヌクレオチド配列由来のタンパク質の発現に必要なDNA配列であり、これはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能なように(operably)結合している。これらの配列としては、例えば、プロモーター、オペレーター、およびリボソーム結合サイト等の原核生物の配列、ならびに、例えば、プロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナル等の真核生物の配列が挙げられる。「発現系」は特定の宿主細胞中で標的タンパク質の発現に適したDNA配列(例えばプラスミドのような)であり、これらの配列は宿主細胞中でのタンパク質の発現に適切な、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能なように結合した制御配列を含む。
【0021】
ポリペプチドの「バリアント」が天然のタンパク質に完全には同一でないことが、理解されよう。バリアントTirtタンパク質は、例えば、一つ以上のアミノ酸の挿入、欠失もしくは置換により、アミノ酸配列を変化させることで得ることができる。タンパク質のアミノ酸配列は、例えば天然のポリペプチドと比較して実質的に同じまたは向上した質を有するポリペプチドを作製するための置換によって改変され得る。該置換は保存された置換であり得る。「保存された置換」は、極性/非極性、電荷または大きさが同様である側鎖を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換である。20個の必須アミノ酸は、非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンおよびトリプトファン)、非荷電極性側鎖(メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン)、酸性側鎖(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、ならびに塩基性側鎖(リシン、アルギニンおよびヒスチジン)を有するものに分類され得る。保存された置換としては、例えば、AspからGlu、AsnまたはGln;HisからLys、ArgまたはPhe;AsnからGln、AspまたはGlu;ならびにSerからCys、ThrまたはGlyが挙げられ得る。例えば、アラニンにより、しばしば保存された置換が作製される。
【0022】
当業者にとって、バリアントポリペプチドは生物活性に影響を与えるようなポリペプチド構造中の一つ以上の位置で第二のアミノ酸に対して第一のアミノ酸を置換することにより、バリアントポリペプチドを得ることができる。アミノ酸の置換は、例えば、生物活性の上昇をもたらすようなポリペプチドのコンホメーション変化を誘導し得る。
【0023】
当業者はまた、アミノ酸の親水性または疎水性の指標に基づいた、アミノ酸配列の置換をなし得る。本発明のバリアントアミノ酸分子は、それによって、配列番号2を含むポリペプチド、または配列番号1にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して、100%未満であるが、少なくとも約50%、および好ましくは少なくとも約80〜約90%のアミノ酸の相同性または同一性を有する。従って、バリアントTirtタンパク質のアミノ酸配列は、天然のTirtタンパク質のアミノ酸配列に本質的に対応する。本明細書で用いられる場合、「本質的に対応する」は、配列番号2を含むTirtタンパク質により生じるものと同様な生物活性および酵素活性を顕在化させるようなポリペプチド配列について言い、かかる活性は天然のTirtタンパク質の少なくとも約70%であり、より好ましくは天然のTirtタンパク質の活性の100%より大きい。
【0024】
Tirtタンパク質のバリアントは、配列番号2を含む対応するTirtタンパク質には存在しないアミノ酸残基を含み得るか、または配列番号2を含むTirtタンパク質に関する欠失を含み得る。バリアントはまた、配列番号2を含む対応するタンパク質と比較した際に、切断された「断片」であり得、該断片は全長タンパク質の一部分のみである。
【0025】
本発明の好ましい態様において、タンパク質発現ベクターは、Tirt ORFをコードするDNA配列、ならびに例えばプロモーターおよびポリアデニル化配列等の転写および翻訳配列を含む適切な制御配列を遺伝子工学的に組み込まれ、機能的なTirtタンパク質を生じる。
【0026】
単離された本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、組織試料中のウイルス感染の存在を確認するためのアッセイ、単離された、または細胞性のRNAのcDNAコピーの調製、および遺伝子解析のためのリアルタイムまたは標準的RT-PCRを含むがこれらに限定されない種々の適用に用いられ得る。当業者に公知または当業者によって開発される、これらおよび他の使用は、本発明の熱安定性イントロン逆転写酵素の発見によって可能になる。
【0027】
発現ベクターは、原核または真核発現系のために容易に入手可能なものから選択され得る。発現系ベクターは、タンパク質発現に必要な調節因子、ならびに所望の配列のクローニングを容易にする制限エンドヌクレアーゼ部位をベクターへ組み込むものであり、当業者に公知である。これらの多くの発現ベクターは、市販されている。本発明のある好ましい態様において、発現ベクターはpET28(Novagen, Madison, WI)である。
【0028】
発現ベクター宿主細胞系は、当業者に公知の多くの系から選択され得る。本発明のある態様において、タンパク質は大腸菌(E. coli)中で発現され得る。本発明の代替の態様において、酵素は他の細菌性発現系、ウイルス性発現系、真核性発現系または細胞不含発現系を用いて発現および精製され得る。当業者によって種々のタンパク質の発現に用いられる細胞性宿主としては、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルジェネシス(Saccharomyces carlsbergenesis)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、ならびに3T3、HeLaおよびVero等の哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に選択される発現ベクターは、酵素をコードする組換えDNA配列が発現される宿主細胞または細胞不含系に適切な、プロモーター因子および他の調節因子を含む。哺乳動物の発現系において、例えば、適切な発現ベクターはDNAプラスミド、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含み得る。細菌性発現系において、適切なベクターは、プラスミドDNAおよびバクテリオファージベクターを含み得る。
【0029】
タンパク質の発現のために、および精製を容易にするために用いられ得るある群のベクターとしては、ポリヒスチジン(6xHis)配列およびエピトープタグをコードしてニッケルキレート樹脂を用いた融合タンパク質の迅速な精製、ならびに特異的な抗体を用いて分泌タンパク質の存在を検出するタンパク質検出を可能にするベクターが挙げられる。哺乳動物細胞における発現のためのかかるベクターの例は、pcDNA3.1/V5-His-TOPO真核性発現ベクター(Invitrogen)である。このベクターでは、融合タンパク質が、強力なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター制御下で、高レベルで発現され得る。C末端ポリヒスチジン(6xHis)タグによって、ニッケルキレート樹脂を用いた融合タンパク質精製が可能になる。このベクターによって生成された分泌タンパク質は、抗His(C末端)抗体を用いて検出し得る。
【0030】
Tirtは細菌性タンパク質であるため、細菌性発現系は、本発明に記載されるように、Tirtタンパク質の発現に特に適している。かかる系としては、例えば、マルトース結合タンパク質融合を利用して精製を容易にするpMAL系(New England Biolabs, Beverly, MA)およびImpact-CN Protein Fusion and Purification System(New England Biolabs)が挙げられる。
【0031】
バキュロウイルス発現系を、本発明の酵素等の標的タンパク質の生成に用い得る。一般的に用いられるバキュロウイルスは、AcMNPVである。標的タンパク質DNAのクローニングは、相同組換えを用いることによって達成され得る。標的タンパク質DNA配列は、バキュロウイルスDNA、特にポリヘドリン遺伝子由来のDNAに挟まれたバキュロウイルスプロモーターを含む、転移ベクターにクローニングされる。このDNAは昆虫細胞にトランスフェクションされ、ここで相同組換えが起こって標的タンパク質が親ウイルスのゲノムに挿入される。組換え体は、プラークの形態の変化によって同定される。
【0032】
上述のタンパク質はまた、哺乳動物ウイルス性発現系によって、本発明の方法でも生成され得る。例えば、シンドビスウイルス発現系を用いて、高レベルでタンパク質を発現させ得る。シンドビスベクターは、例えば、本明細書中に参照によって援用される米国特許第5,091,309号(Schlesingerら)に記載されている。pSinHis(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)等のシンドビス発現ベクターを用いて、サブゲノムプロモーターPSGの指令下でTirtタンパク質を発現させ得る。融合タンパク質およびインビボでのRNA増幅に必要なシンドビスタンパク質をコードする、インビトロで転写されたRNA分子が、当業者に公知の方法を用いてベビーハムスター腎臓(BHK)細胞にエレクトロポレーションされ得る。あるいは、Tirtタンパク質およびインビボでのRNA増幅に必要なシンドビスタンパク質をコードするRNAが、組換えウイルス粒子の生成を可能にするヘルパーRNAと共にコトランスフェクションされ得る。次いで、融合タンパク質をコードする遺伝物質を含むウイルス粒子を用いて、哺乳類、鳥類、爬虫類およびキイロショウジョウバエを含む多様な細胞型の細胞に感染させ得る。pSinHis(Invitrogen)ベクターから発現される融合タンパク質は、ベクター配列にコードされるAnti-XpressTMエピトープに対する抗体を用いて検出され得る。pSinHisベクターはまた、金属キレート樹脂に対する結合部位を提供して発現した融合タンパク質の精製を容易にする、ポリヒスチジンタグを含む。さらに、ヒスチジンタグと融合タンパク質との間に位置するエンテロキナーゼ切断部位によって、ヒスチジンタグが精製後に酵素によって除去されるようになる。
【0033】
エクジソン誘導性哺乳動物発現系(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)を用いて標的タンパク質を発現させることもできる。発現カセットから標的タンパク質を発現させることによって、エクジソン誘導性哺乳動物発現系に用いられるベクターを統合して、標的タンパク質を生成し得る。エクジソン誘導系を用いて、エクジソン受容体を介して遺伝子発現を活性化する昆虫ホルモン20-OHエクジソンの使用によって、より高いレベルのタンパク質生成を達成し得る。誘導性発現プラスミドによって、Tirtタンパク質のヌクレオチド配列が連結され得るマルチクローニングサイトが提供される。発現ベクターは、プロモーター(最小熱ショックプロモーター)上流のエクジソン応答因子、およびマルチクローニングサイトを含む。第二のプラスミドであるpVgRXR(Invitrogen)のコトランスフェクションによって、細胞をステロイドホルモンエクジソンアナログであるポナステロンAに反応性となる受容体サブユニットが提供される。lacZ遺伝子を含む対照発現プラスミドをpVgRXRとコトランスフェクションして、トランスフェクションされた細胞に対するマーカーを提供し得る。ポナステロンAを用いて誘導すると、対照プラスミドはβガラクトシダーゼを発現する。選り抜かれた哺乳動物細胞への誘導性発現構築物およびpVgRXRのコトランスフェクションは、当業者に公知の標準的手段のいずれかによって達成され得る。これらのものとしては、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、脂質媒介トランスフェクションおよびエレクトロポレーションが挙げられる。この系における融合タンパク質の発現のレベルは、ポナステロンの濃度およびポナステロンへの曝露の長さによって異なり得る。Tirtタンパク質を構成的に発現する安定した細胞株は、Zeocin.TM.(Invitrogen)、ストレプトミセスから単離されたブレオマイシン/フレオマイシン型抗生物質、およびネオマイシンまたはハイグロマイシンを用いて樹立し得る。
【0034】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母宿主細胞もまた、Tirtタンパク質の生成に使用され得る。ピキアに形質転換されたプラスミドからの異種タンパク質の発現は、以前にSreekrishnaら(米国特許第5,002,876号、本明細書中に参照によって援用される)によって記載されている。ピキア中でのTirtタンパク質の発現のためのベクターは、Pichia発現キット(Invitogen, Carlsbad, Calif.)の一部として市販されている。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)はメチロトローフの酵母であり、メタノール代謝の結果生じる過酸化水素の毒性を避けるのに大量のアルコールオキシダーゼを産生する。アルコールオキシダーゼ遺伝子発現は、AOX1およびAOX2プロモーターによって、厳しく制御されている。ピキア発現ベクターにおいて、これらのプロモーターの制御下、高レベルの発現が生じる。Ohiら(米国特許第5,683,893号、本明細書中に参照によって援用される)は、以前に、発現レベルの増大をもたらすことのできる変異AOX2プロモーターを記載している。
【0035】
PCRプライマーは、National Center for Biotech Information(www.ncbi.nlm.nih-gov/blast)の「BLAST with bacterial genomes」ウェブページのジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)の未完のゲノム配列のBLASTサーチから回収されたDNA配列に基づいて設計した(図1参照)。Primer3プログラム(ウェブサイト:www-genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3で利用可能)を用いて、プライマーの設計を助けた。プラスミドpTirt#16および他の構築物のDNA配列を、East Tennessee State UniversityのQuillen College of Medicineから提供される配列決定サービス(Molecular Biology Core facility)においてABI 327自動化DNAシーケンサーを用いたBigDyeターミネーターサイクル配列決定によって決定した。他の公知のイントロンORFを用いたtirt ORFの複合的アミノ酸配列アラインメントを、
1157626132000_0
)のBaylor College of Medicineから利用可能なClustal Wを用いて行った。
【0036】
細胞性遺伝子の逆転写、RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、リアルタイム相対的RT-PCR、cDNAライブラリーの構築、および競合的逆転写酵素PCR解析を行うためのプロトコールは、当業者に公知である。競合的逆転写酵素PCR解析のためのあるプロトコールは、WahaらによってBrain Pathology, Vol.8 (1998), 13〜18ページに記載されている。ウイルス感染の存在を検出するためのプロトコールとしては、例えば、Henricksonらによって、米国特許第5,744,299号(パラインフルエンザウイルス1型)および第6,014,664号(パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルスおよびインフルエンザウイルス)に記載されているものが挙げられる。より最近では、RT-PCRに続くリアルタイムネスティドPCRによる重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスの検出(Jiangら、Clin. Infectious Disease 2004: 38 (1月15日) p.293-296)。本発明の酵素は、より高い温度でこれらのプロトコールを行うためのツールを提供する。例えば、cDNAライブラリーの構築において、またはcDNA標識において、オリゴ(dT)プライマーを用いて確実にポリ(A)mRNAが逆転写されるようにし得ること、および短いランダムなオリゴヌクレオチドプライマーも逆転写に用い得ることは、公知である。しかしながら、当業者は、RT反応は、触媒される反応に必要な逆転写酵素の不活性化を避けるために、しばしばおよそ42℃で行われることも承知している。本発明は、上記のもののような、従来の反応系で現在用いられているものよりも有意に高い温度で用いられ得る、逆転写反応のための代替の酵素を提供する。
【0037】
本発明はまた、例えば、摂氏約68〜75度までの温度で行われる、逆転写酵素、RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、競合的RT-PCRまたは逆転写酵素の存在に依存する他のプロトコールを行うための、少なくとも1つのキットを提供する。かかるキットは、例えば、少なくとも1つの反応バッファー(例えば、50 mM Tris-pH 8.3、100 mM KCl、および10 mM ジチオトレイトール)、RNアーゼインヒビター(終濃度10単位まで)、NP-40(終濃度0.17%まで)、dNTP混合物(dGTP、dCTP、dUTPおよびdATPをそれぞれ終濃度0.8 mMまで)、Tirtタンパク質、Taqポリメラーゼ、BMV-RNA(陽性対照として、終濃度50 ngまで)、RTプライマー(RTの陽性対照プライマーとして、終濃度0.02μMまで)、およびBMV-PCR2プライマーを有するBMV-PCR1プライマー(PCRの陽性対照として、終濃度1μMまで)を含み得る。
【0038】
本発明は、配列番号:2のアミノ酸配列をコードし、本発明の逆転写酵素およびそのバリアントの生成に用いられ得る、単離されたポリヌクレオチドを提供する。さらに、ストリンジェントな条件下で配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸とハイブリダイズし、配列番号:2を含むポリペプチドと同様の逆転写酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸もまた、本発明の態様として含まれる。
【0039】
用語「ストリンジェントな条件」は、本明細書中で用いられる場合、非特異的ハイブリダイゼーションが一般に起こらない条件を意味する。かかる条件下でのハイブリダイゼーションは、T. Maniatisら編、1989年cold Spring Harbor Laboratory発行のMolecular Cloning: A Laboratory Manual第二版に提供される記載に基づいて行われ得る。例えば、ストリンジェントな条件としては、0.5% SDS、5xデンハルト溶液および100μg/mlサケ精子DNAを含む6xSSC中、60℃でのプローブとのインキュベーションが挙げられる。
【0040】
本発明はまた、プライマーをmRNA分子にハイブリダイズさせ、mRNA分子およびハイブリダイズしたプライマーを1つ以上のデオキシ−またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の存在下で本発明の逆転写酵素とともにインキュベートすることによってmRNA鋳型のcDNAコピーを合成する方法も提供する。さらなるバッファーおよび他の試薬、ならびに時間および温度条件は、当業者によって決定され得、本明細書中に含まれる実施例において提供される。
【0041】
本発明はまた、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明される。
【0042】
実施例1:tirt遺伝子のクローニングおよび発現
ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)株10は、University of OklahomaのBruce Roe博士の厚意により寄贈され、tirt遺伝子のクローニングに用いた。培養物を、トリプチカーゼダイズアガープレート上、55℃で増殖させた。DNA断片の通常のサブクローニングに、プラスミドpUC18を用いた。プラスミドpET28aおよび大腸菌(E. coli)株BL21(DE3)はNovagen(Madison, WI)より得、大腸菌(E. coli)におけるTirtタンパク質の異種発現に用いた。
【0043】
複数のセットのオリゴヌクレオチドプライマーを合成してtirt ORFを増幅したが、本発明者らは、2対のプライマーを用いてジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)の染色体からtirt遺伝子をうまく増幅し得ることを見出した。Bst755およびBst2015と呼ばれる第一のプライマー対を、単純なPCRプロトコールを介して、殆どだが全てではないtirt ORFの特異的な増幅に用いた(図2)。Bst1396およびBst2198と呼ばれる第二のプライマー対を用いて、tirt ORFのC末端の最後の16アミノ酸を含む領域を増幅した(図2)。
【0044】
ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)株10のゲノム由来のtirt遺伝子の増幅に用いたプライマーは、配列番号4:

(下線の配列はpET28a発現ベクターへのクローニングのためのNdeI制限部位を示す);配列番号5:5’-

(下線の配列は、BamHI制限部位を示す):配列番号6:5’-

(下線の配列は、PstI制限部位を示す);および配列番号7:5’-

(下線の配列は、pET28a発現ベクターへのクローニングのためのHindIII制限部位を示す)を含む。
【0045】
tirt遺伝子の増幅は、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)のシングルコロニーを鋳型の供給源として用いて、二段階で行った(図2)。一晩培養したプレートから得たシングルコロニーを、10μlの水に懸濁した。この細胞懸濁液1μlを、1.5 mM MgCl2、Taqポリメラーゼバッファー(Promega, Madison, WI)、各0.2μMのdNTP、各0.5μMのプライマー、および2単位のTaqポリメラーゼを含む、50μlのPCR反応混合物に加えた。反応物(reaction)を、以下の条件を用いて増幅した:95℃で2分を1サイクル、95℃で1分、50℃で2分および72℃で2分を30サイクル。増幅したDNAをゲル電気泳動で精製し、適切な制限エンドヌクレアーゼで消化し、pUC18にライゲートするか、直接pET28a発現ベクターにライゲートした。まず、第一のプライマー対(配列番号:4および配列番号:6)によって生成された、1.26キロ塩基対(Kb)の増幅したDNA生成物を、発現プラスミドpET28aにライゲートした。これによって、発現プラスミドに見られるポリヒスチジンタグ因子とtirt ORFとの間のインフレーム融合が生じた。TirtのC末端に残った16アミノ酸を捕捉するために、天然のEcoRI部位(tirt ORF内、図2)を用いて、第二のプライマー対(配列番号:5および配列番号:7)によって生じたPCR産物の3末端を第一の増幅したDNAにスプライスし、Tirtタンパク質の予想されるORF全体を含む発現プラスミドpTirt#16を得た。
【0046】
実施例2:Tirtタンパク質の発現
プラスミドpTirt#16を用いて、IPTGによるT-7プロモーター系の誘導によって、大腸菌(E. coli)中でTirtタンパク質を発現させた。簡潔に述べると、大腸菌(E. coli)におけるタンパク質発現は、T7 RNAポリメラーゼ系およびpET28a発現ベクター(Novagen, Madison, WI)を用いて達成した。tirt遺伝子の増幅に用いた上流のプライマー(配列番号:4)がNdeI制限部位を含んでいたので、tirt ORFを含む増幅したDNAを、発現ベクターのNdeI制限部位にライゲートできた。これにより、pET28aベクター中のポリヒスチジンタグ因子とtirt ORFとの間のインフレーム融合が生じた。
【0047】
Tirt融合タンパク質を、μDE3に対して溶原性の大腸菌(E. coli)株BL21中で発現させた。簡潔に述べると、プラスミドpTirt#16(tirt融合構築物を含む)を用いて形質転換した大腸菌(E. coli)株BL21(DE3)の細胞を、IPTG(1 mM)の添加によって誘導した。3時間の誘導の後、100 mlの培養物から得た細胞を回収し、ニッケルイオンカラム精製(Novagen)のために、結合バッファー(1X)に再懸濁した。細胞懸濁液を新鮮なリゾチーム(1 mg/ml)中でインキュベートし、次いで3サイクル迅速に凍結−解凍し(-80℃で10分、次いで37℃で10分)、次いで超音波破砕することによって、Tirt融合タンパク質を含む細胞抽出物を調製した。遠心分離(15,000 Xg)および濾過(0.45μフィルター)によって、透明な粗タンパク質調製物を生じた。次いで透明な抽出物を、調製したニッケルイオンカラム(His結合カラム、Novagen)に負荷し、製造業者の使用説明書(Novagen)に従って、精製した画分を回収した。
【0048】
可溶性および不溶性のタンパク質画分を、リゾチーム(100μg/ml)に加えて1% triton X-100を含む1/10体積のバッファー(50 mM Tris-HCl pH 8.0、2 mM EDTA)中に細胞(50 mlの誘導された培養物由来)を再懸濁することによって比較した。30℃で15分のインキュベーションおよび超音波破砕の後、細胞抽出物を12,000 Xgで15分遠心分離した。上清を等体積のSDS試料バッファーと混合し、これをタンパク質ゲルのための可溶性タンパク質画分とした。細胞残屑のペレットをSDS試料バッファーと混合し、これをタンパク質ゲルのための不溶性タンパク質画分とした。
【0049】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって解析した際に、pTirt#16を含む、IPTGで誘導した培養物からの細胞抽出物のみが、顕著なタンパク質バンドを示した。ポリアクリルアミドタンパク質ゲル中の電気泳動の間の移動から、発現したタンパク質の大きさは約48キロダルトン(kD)のようであった(図3、レーン4)。これは、ほぼプラスミドpTirt#16中のTirtの予想される融合構築物について予想される大きさ(52 kD)であった。また、特異的抗体プローブを用いたウエスタンブロット解析によって、48 kDタンパク質バンド中にポリヒスチジンタグの存在が確認された。発現した融合タンパク質の殆どは、細胞抽出物の高速遠心分離の後、不溶性細胞残屑に分かれた(図3、レーン9)。しかしながら、48 kD融合タンパク質の一部もまた可溶性細胞画分に現れ(図3、レーン8)、本発明者らは、この(his)画分が検出可能なRT活性を有し得ると推測した。48 kD融合タンパク質を、可溶性細胞画分からニッケルイオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。ポリヒスチジンタグのある融合タンパク質の一段階溶出によって、主に48 kDタンパク質バンドを含む、部分的に精製された画分を得た(図4、レーン6〜9、矢印で示す)。各溶出カラム画分を、新しいバッファー(バッファーA)に透析および濃縮し、精製したタンパク質を安定化させた(図4、レーン11〜14)。精製したTirtタンパク質のN末端のポリヒスチジンタグは、同様の技術を発現に用いた場合に大腸菌(E. coli)で哺乳動物のウイルス性RTおよび他の組換え真核性RTの発現に影響しないことから、タンパク質のこの短い延長は融合タンパク質のRT活性に影響しないと予想されるため、除去しなかった。
【0050】
実施例3:Tirtの逆転写酵素活性の実証
精製したTirt融合タンパク質を含むカラム画分をプールし、マイクロコン30膜濃縮器(Amicon, Beverly, MA)を用いてバッファーA(50 mM Tris-pH 7.5、 1 mM EDTA、1 mM DTT、および10%グリセリン)に透析し、次いでRT活性のアッセイに用いた。感受性の高い、生成物増強逆転写酵素(PERT)アッセイを用いて、RT活性を検出した。アッセイは、次いでPCRによってさらに増幅される小型cDNAの生成にブロムモザイクウイルス(BMV)RNA鋳型の逆転写を要した(図5)。簡潔に述べると、まず、MgCl2不含PCRバッファー、1X(Promega, Madison, WI)、各1μMのBMV-PCR1プライマー(5'-CGTGGTTGACACGCAGACCTCTTAC-3')およびBMV-PCR2プライマー(5'-TCAACACTGTACGGCACCCGCATTC-3')、各0.8 mMのdNTPならびにTaqポリメラーゼ(Promega)を含む、0.2 mlチューブの底のPCR増幅反応混合物を集めることによって、アッセイを行った。次いで、下方のPCR反応混合物をAmpliwaxペレット(PCR-Gem 50, Applied Biosystems, Roche)を用いたワックスの層で密閉した後、RT反応混合物を上方で集めた。RT反応混合物は、RTバッファー(50 mM Tris-pH 8.3、75 mM KCl、および 10 mM DTT)、2.5 mM MgCl2、0.17% NP-40、10単位のRNasin(Promega, Madison, WI)、各0.8 mMのdNTP、0.02μM RTプライマー(5'-GGTCTCTTTTAGAGATTTACAGTG-3')、100 ngのブロムモザイクウイルス(BMV)RNA(Promega)およびRTの供給源を含んでいた。反応物(reaction)に加えるRTの供給源は、上述の精製したTirt融合タンパク質または市販のモロニーマウス白血病ウイルスRT(MMLV-RT)(2単位)のいずれかであった。次いで反応チューブを、以下の条件でサーモサイクラーに置いた:37℃で1時間を1サイクル(逆転写);94℃で1分を1サイクル;94℃で15秒、56℃で15秒および72℃で15秒を30サイクル(増幅);ならびに最後に72℃で5分。増幅したDNAを、5%ポリアクリルアミドゲル上での反応混合物の電気泳動およびそれに続くエチジウムブロマイドでの染色によって検出した。
【0051】
DNAゲル中の168塩基対(bp)のPCR産物の存在は、電気泳動に従って、RT活性の存在を示した。アッセイは、粗細胞抽出物、ならびに精製カラム画分の両方について行った。試験した粗細胞抽出物では、RT活性は検出されなかった。さらに、融合タンパク質の精製に用いたニッケルイオンアフィニティーカラムから溶出した精製画分では、RT活性は検出されなかった(図6A、レーン1)。しかしながら、溶出カラム画分をバッファーAに透析および濃縮した場合は、一部のカラム画分でRT活性が検出され(図6B、レーン1〜3)、透析前の画分中にRT活性のインヒビターが存在することを示唆する。透析前のカラム画分中にRT活性のインヒビターが存在することをさらに示唆するものとして、商業的に調製されたMMLV-RTをPERTアッセイに加えた場合、予想されるように、168 bpのDNAが生成され、RT活性を示した(図6A、レーン4)。しかしながら、MMLV-RTをカラム画分#7と混合した場合は、RT活性は検出されなかった。
【0052】
PERTアッセイから一方のPCRプライマーを省いた場合、DNA生成物は生じなかった(図6A:レーン4、2つのプライマー;レーン5、1つのプライマー)。このことから、168 bpのDNA生成物が、何らかの他の過程ではなく、逆転写されたcDNAの特異的増幅の結果として生じたことが示唆された。別の対照反応において、RT活性を試験する画分にRNアーゼを加えた。透析したカラム画分2番とRNアーゼを混合した場合、DNA生成物は見られず(図6B レーン1、RNアーゼなし;レーン7、RNアーゼ添加)、168 bpのDNAが、以前のアッセイ反応から持ち越された混入DNAからではなく、アッセイに存在するBMV RNA鋳型から逆転写されたcDNAから増幅されたことが示唆された。第三の対照反応は、RT活性を試験する試料抽出物として、水のみを含んでいた(図6B、レーン6)。予想通り、DNA生成物は生じなかった。このことから、アッセイ中に存在するTaqポリメラーゼではなく、アッセイ反応に加えられるRTの外因性供給源がcDNA形成(したがって、168 bpのDNAの増幅)に関与していることが確認された。
【0053】
実施例4:Tirtの熱安定性の証明
(上述の)カラム精製したTirt融合タンパク質を、microfugeチューブに加え(15μl)、水浴中、65℃または75℃のいずれかで、15分加熱した。熱処理後、チューブを遠心分離し、7.5μlの上清をPERTアッセイ反応に直接加えた。1X RTバッファー中に希釈したMMLV-RT(5単位)を、同様の様式で処理した。
【0054】
PERTアッセイを種々の温度で行うために、逆転写反応物(reverse transcription reaction)を、37℃、50℃または68℃で、別々にインキュベートした。1時間のインキュベーション後、反応混合物を直ちにPCR反応混合物の上部に加え、ワックスの層で密閉し、実施例3に記載したように処理した。
【0055】
カラム精製したTirt融合タンパク質を、加熱しないか(図7A、レーン2)、65℃で15分加熱するか(図7A、レーン3)、または75℃で15分加熱した(図7A、レーン4)。熱処理後、PERTアッセイを用いて、精製した画分をRT活性について試験した。対照として、次いで商業的に調製されたモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)を用いて同じ手順を行った。精製したTirtタンパク質は、75℃の温度に曝露した後でもRT活性が低下していなかった(図7A、レーン4)。対照的に、中温性のMMLV-RTの熱処理後(65℃および75℃両方で)、RT活性は検出されなかった(図7A、レーン6および7)。
【0056】
精製したTirtタンパク質のRT活性を、3つの異なる温度;37℃、50℃および68℃でPERTアッセイを行うことによっても試験した(図7B)。ここでも、精製したTirtタンパク質は、試験した最も高い温度である68℃でも、逆転写によって、cDNAを合成する能力に影響を受けていなかった(図7B、レーン2および4)。対照的に、cDNA生成は、中温性の哺乳動物RTについては、少なくとも最も高い温度である68℃で、大きく減少しているようであった(図7B、レーン5とレーン7を比較)。
【0057】
プラスミドpTirt#16(ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)由来のTirtコード配列を挿入した大腸菌(Escherichia coli)由来のベクターpET28aを含む)は、ブダペスト条約の条件に従って、2004年3月4日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Manassas, Virginia, USAに寄託されており、特許寄託指定番号PTA-5847を与えられている。Tirt DNAおよびアミノ酸配列は、GenBank受託番号AY672067に指定されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、Tirt配列とグループIIイントロンにコードされたORFとを比較した複数アミノ酸配列アラインメントである。Bst 803-2065と示されるオープンリーディングフレーム(ORF)は、Tirtタンパク質をコードしており、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)株10のゲノムよりクローニングされた。Tirtのアミノ酸配列を、細菌由来のグループIIイントロンにコードされた、関連のある三つのORF由来のアミノ酸配列と比較する。これらの配列には、バチルス・ハロデュラン(Bacillus halodurans)由来のORF(ATCC受託番号NC002570.1)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のRTマチュラーゼタンパク質(ATCC受託番号NC003030)、およびシュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)由来のグループIIイントロンタンパク質(ATCC寄託番号U77945)が含まれる。RTに共通して、Tirt配列は、7個の異なるドメインに分かれる高度に保存されたアミノ酸のほとんどを含有する(I〜VIIと表された下線配列)。これら7個の保存されたドメインは、全てのRTにより共有されるとされる重要な構造領域に対応する。さらに、Tirt配列はまた、「X」で表されるタンパク質の領域に含まれる、高度に保存されたアミノ酸のほとんどを含有する。このドメインは、グループIIイントロンにコードされるタンパク質のマチュラーゼの機能に関係する。細菌のグループIIイントロンタンパク質の「X」領域に見られる最も保存されたアミノ酸は(Zimmerlyら, Nucleic Acids Res. (2000)29: 1238-1250による)、前記アラインメント中に斜体で示される。
【図2】図2は、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)由来のtirt ORFのポリヌクレオチド配列である。プライマーBst755、Bst1396、Bst2015、およびBst2198を設計するために用いたDNA配列の位置を矢印で示す。クローニングのために、これらのプライマーをtirt-ORFの増幅に用いた。
【図3】図3は、大腸菌中(E. coli)のTirt融合タンパク質の過剰発現を図示するポリアクリルアミドタンパク質ゲル(クーマシーブルーにより染色)の写真である。プラスミドpTirt#16を含有する大腸菌(E. coli)細胞(BL21)をIPTGにより誘導して、T7プロモーター系を介してTirt融合タンパク質を過剰発現させた。誘導された細胞および誘導されていない細胞から調製した全タンパク質抽出物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析した。約48kDに移動する顕著なタンパク質のバンドが誘導された細胞から明確に見られるが(レーン4、矢印で示す)、誘導されていない細胞からは見られず(レーン3)、ただプラスミドベクターのみを含む対照細胞からも見られない(レーン1、誘導されていないおよびレーン2、誘導されている)。過剰発現したタンパク質のバンドのほとんどは、不溶性細胞画分中に見られる(レーン8、可溶性細胞画分に対してレーン9、不溶性細胞画分)。ただ発現ベクターのみを含むだけの対照細胞には48kDタンパク質のバンドは見られない(レーン6、可溶性細胞画分およびレーン7、不溶性細胞画分)。
【図4】図4は、Tirt融合タンパク質のアフィニティーカラム精製のSDS-PAGE解析の写真である。Tirt融合タンパク質を発現する細胞抽出物から得られた可溶性画分を、ニッケルイオンアフィニティーカラムに流した。ポリヒスチジンタグ付加融合タンパク質の単一工程の溶出により、48kDタンパク質バンドを含む部分的に精製された画分が産生された(矢印)。カラム画分3〜6を、クーマシーブルーで染色したポリアクリルアミドタンパク質ゲルにおける電気泳動により解析した(それぞれレーン6〜9)。各カラム画分のRT活性は、バッファーAへの透析により安定化した(レーン11〜14)。レーン3には不溶性細胞画分が含まれ、レーン4にはカラムに流された可溶性細胞画分が含まれる。レーン5にはカラムフロースルーが含まれる。レーン1および2には、それぞれ誘導されていない細胞および誘導された細胞から得られた全細胞抽出物が含まれる。レーンSには、左に表示される公知の各タンパク質のサイズ(kDで)を有するタンパク質標準が含まれる。
【図5】図5は、細胞画分のRT活性の検出に用いられるPERTアッセイに関連のある工程を示した模式図である。Tirtタンパク質のカラム精製画分をRT活性の供給源として用い、鋳型としてBMV-RNAを含有する反応混合物に添加する。特異的なプライマー(BMV-RTプライマー)を用いて、Tirtタンパク質の活性によりBMV-RNA鋳型のcDNAコピーが合成される。次いで、168bpの最終増幅産物を合成するためのPCRにより、cDNAコピーの小さな領域を増幅する(特異的プライマーを用いて)。
【図6】図6は、Tirt融合タンパク質の精製調製物中に、RT活性が存在することを示すポリアクリルアミドゲルの写真である。Tirtタンパク質の精製調製物を、RTの原料としてPERTアッセイに加えた。また、PERTアッセイにより、種々の対照反応も行った。168bp増幅DNAの生成がRT活性を示す。(A):レーンS、100bp分子量マーカー;レーン1、アフィニティー精製カラム画分#2;レーン2、バッファーAで透析後のカラム画分#2;レーン3、レーン2と同じだがMMLV-RTを補充;レーン4、RTバッファー中にMMLV-RT有り(陽性対照として用いる);レーン5、反応物中にMMLV-RTは有るがPCRプライマーの一つがない(陰性対照)。(B):レーンS、100bp分子量マーカー;レーン1〜3にはそれぞれバッファーAで透析後のカラム画分#2〜4が含まれる;レーン4、RTバッファー中にMMLV-RT有り(陽性対照);レーン5、反応物中にMMLV-RTおよびRNアーゼAを添加;レーン6、反応物中に外因性(H2O)のRTの原料を添加しない;レーン7、カラム画分#2(バッファーA中で透析した)にRNアーゼAを加える。
【図7】図7は、精製Tirtタンパク質に関連のある熱安定性RT活性の存在を図示する、ポリアクリルアミドゲルの写真である。PERTアッセイにより、種々の温度条件下で精製Tirtタンパク質のRT活性を検出した。(A)Tirtのカラム精製画分(バッファーAで透析した)を貯蔵し、示した温度で15分間インキュベートして、その後、PERTアッセイに加えた。レーンS、100bp分子量マーカー;レーン1、一つのPCRプライマー無しでMMLV-RT有り(陰性対照);レーン2、熱処理なしの精製Tirtタンパク質;レーン3、精製Tirtタンパク質に65℃で加熱;レーン4、精製Tirtタンパク質を75℃に加熱;レーン5、熱処理なしの市販のMMLV-RT調整物;レーン6、MMLV-RTを65℃に加熱;レーン7、MMLV-RTを75℃に加熱。(B)精製Tirtタンパク質またはMMLV-RTのいずれかをRTの原料として添加して、三つの異なる温度でPERTアッセイ自体を行った。レーンS、100bp分子量マーカー;レーン1、精製Tirtを含むが、RNA鋳型を添加しない対照反応(陰性対照);レーン2〜4はそれぞれ、37℃、50℃および68℃でインキュベートした精製Tirtタンパク質を含むPERTアッセイである;レーン5〜7はそれぞれ、37℃、50℃および68℃でインキュベートしたMMLV-RTを含むPERTアッセイである。
【図8】図8は、Tirtタンパク質の過剰発現および精製のためのpTirt#16プラスミドのマップである。(A)プラスミドpTirt#16の制限酵素地図により、Tirt ORFを含むジオバチルス・ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)からクローニングされたゲノムDNA(斜線の長方形)の位置が示される。Tirt ORFをT7プロモーターに隣接して、ポリヒスチジン([His]6)タグと共にインフレームになるようにクローニングすることにより、Tirtタンパク質の過剰発現を可能にし、精製を簡単にした。(B)pTirt#16プラスミドの部分DNA配列により、Tirt ORFがT7プロモーターの下流にあるポリヒスチジンタグエレメント(下線の配列)と共にインフレームになるように融合される連結領域が示され、6個の連続したヒスチジンアミノ酸を含む、35アミノ酸の伸長がTirt ORFのN末端に生じることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループIIイントロン型逆転写酵素である、単離されたジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)逆転写酵素。
【請求項2】
a)配列番号:2、および
b)配列番号:2を含むポリペプチドと同様の逆転写酵素活性を含み、配列番号:2に対して少なくとも80%の同一性を有する、配列番号:2のバリアント
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、実質的に精製されたポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:2を含むポリペプチドの、触媒性の活性のある欠失変異体であって、ここで該欠失変異体は前記ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸を欠く、欠失変異体。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のポリペプチド、およびキャリアを含む組成物。
【請求項5】
a)配列番号:1;
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸;および
c)ストリンジェントな条件下でb)の核酸とハイブリダイズし、配列番号:2を含むポリペプチドと同様の逆転写酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸
からなる群より選択される核酸を含む、精製または単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項7】
請求項6記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
a)請求項6記載のベクターを発現系に導入する工程、および
b)ベクターのポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド生成物を発現させる工程
を含む、逆転写酵素を生成する方法。
【請求項9】
発現系が宿主細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
発現系が細胞不含発現系である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
a)請求項6記載のベクターを含む宿主細胞を培養する工程;
b)ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現させる工程;および
c)タンパク質を宿主細胞から単離する工程
を含む、逆転写酵素を生成する方法。
【請求項12】
宿主細胞が大腸菌(E. coli)である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
a)配列番号:2によって記載されるポリペプチド、および
b)配列番号:2を含むポリペプチドと同様の逆転写酵素活性を含み、配列番号:2に対して少なくとも80%の同一性を有する、配列番号:2によって記載されるポリペプチドのバリアント
からなる群より選択される実質的に精製されたタンパク質の少なくとも1つの部分を含む、RT-PCRを行うためのキット。
【請求項14】
少なくとも1つの反応バッファーをさらに含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
RNアーゼインヒビターの少なくとも1つの部分をさらに含む、請求項13記載のキット。
【請求項16】
DNAポリメラーゼの少なくとも1つの部分をさらに含む、請求項13記載のキット。
【請求項17】
DNAポリメラーゼがTaqポリメラーゼである、請求項16記載のキット。
【請求項18】
a)プライマーをmRNA分子にハイブリダイズさせる工程;および
b)工程(a)の前記mRNA分子を、1つ以上のデオキシ−またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸、および請求項1、2または3記載の逆転写酵素からなる群より選択される逆転写酵素の存在下、mRNA分子の全てまたは一部に相補的なcDNA分子を合成するのに十分な条件下でインキュベートする工程
を含む、mRNA鋳型のcDNAコピーを合成する方法。
【請求項19】
プライマーがオリゴd(T)プライマーである、請求項18記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−537724(P2007−537724A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502907(P2007−502907)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007439
【国際公開番号】WO2005/084409
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506305056)イースト テネシー ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】