説明

ジカルボン酸オニウムを用いた先進セラミック粉末の調製方法

セラミック粉末の製造方法であって、この方法は、複数の溶液状前駆体材料を提供する工程であって、ここで複数の溶液状前駆体材料のそれぞれが、セラミック粉末の少なくとも1種の構成要素イオン種をさらに含む、工程;複数の溶液状前駆体材料とジカルボン酸オニウム沈殿剤溶液とを合わせて、合わせた溶液中にセラミック粉末前駆体の共沈を生じさせる工程;および合わせた溶液からセラミック粉末前駆体を分離する工程を含む。当該方法は、セラミック粉末前駆体をか焼する工程をさらに含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、同じ名称を有する2008年4月3日に出願の米国特許仮出願番号第61/042,173号に関連し、またその権益を主張するものであり、当該文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、先進セラミック粉末の調製に関し、沈殿剤としてジカルボン酸オニウム化合物を用いて金属の溶液からセラミック粉末前駆体を沈殿させ、そして引き続きセラミック粉末前駆体を所望の金属酸化物材料へ変換する。ジカルボン酸オニウム沈殿剤は、所望のセラミック粉末を調製する共沈法において使用され得、先進セラミック材料が得られる。
【背景技術】
【0003】
セラミック粉末は、半導体装置(例えば、高誘電率(High−K)誘電体構造物として)、超伝導装置、運動センサー、燃料電池、デバイスパッケージング、受動電子部品(例えば、コンデンサー)、およびより精密な蓄エネルギー装置における特殊機械部品、機械部品用のコーティングを含む様々な用途のため、ならびに自動車から生物医学装置に及ぶ産業用の先端エンジニアリング材料として製造されている。セラミック粉末の合成および製造には、固相合成(例えば、固相−固相拡散)、液相合成(例えば、沈殿および共沈)、ならびに気相反応物を用いる合成を含む多くの技術が存在する。さらに、噴霧乾燥、噴霧焙焼、金属有機分解、凍結乾燥、ゾル−ゲル合成、溶融固化などを含む多くの関連する製造技術も使用することができる。
【0004】
液相合成法では、金属酸化物は、シュウ酸および特定のその単塩の使用により沈殿されてきた。しかしながら、多数のシュウ酸塩の使用には、セラミック粉末中の望ましくない汚染物質などの様々な問題点がある。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のシュウ酸塩を使用すると、得られる金属酸化物粉末は、許容範囲を超えるアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む場合がある。別の例としては、加えたシュウ酸塩が、溶液中で緩衝剤または錯化剤として働くアンモニウム(NH)などのイオンを含む場合、溶液のpHの制御が困難になる可能性があり、結果として生成物の性質の制御ができなくなる。
【0005】
半導体装置における限界寸法が小さくなり続けており、非常に低レベルの微量不純物や、さらには材料の原子構造および分子構造におけるわずかな変化の影響がますます顕著になっている。例えば、高誘電率(high permittivity)または高比誘電率(high dielectric constant)(「Hi-K」)材料において、破壊電圧が許容し難いほど低くなる可能性があり、微量金属不純物または微細構造欠陥のレベルのどちらかまたはその両方が大きくなりすぎると、Hi-K誘電体材料(Hi-K dielectric material)の機能の不全をもたらす。微細構造欠陥は、例えば、粒度分布の制御不足、過度に大きい粒子、および/または不純物の存在に起因し得る。金属不純物は、微細構造欠陥の有無にかかわらず、誘電特性および破壊電圧に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
超伝導体材料においては、超伝導体材料の超伝導特性は、超伝導体材料がつくられるセラミック粉末中の金属の厳密な組み合わせに決定的に依存することが周知である。したがって、すべての成分金属およびいかなる微量の不純物金属の両方の含有量の制御が、超伝導体がうまく機能するか否かを決定付けることとなる。
【0007】
少なくともこれらの理由のため、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上のような向上した性質を有するセラミック粉末を得るために、所望のセラミック粉末の調製に使用する新規な方法および材料に対する必要性が強くそして増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セラミック粉末の調製に用いる新規な方法および材料に対する強くそして増加する必要性に応えるものである。本発明は、沈殿剤としてジカルボン酸オニウムを含まない方法により製造されたセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上のような向上した性質を有する所望のセラミック粉末を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セラミック粉末製造用セラミック粉末前駆体を製造するための、金属イオンの沈殿剤としての有機二塩基酸のオニウム塩、つまりジカルボン酸のオニウム塩の使用に関する。本発明者は、本明細書で規定するジカルボン酸オニウムを使用することにより、優れたかつ予想外に向上した性質を有するセラミック粉末が得られ得ることを見出した。
【0010】
1つの実施形態では、ジカルボン酸塩はシュウ酸塩である。したがって、1つの実施形態では、本発明は、所望のセラミック粉末を製造する際に用いるセラミック粉末前駆体を調製するための共沈法における金属沈殿剤としての、シュウ酸第4級、第3級、またはイミダゾリウム塩(例えば、シュウ酸テトラアルキルアンモニウムまたはホスホニウム(第4級)、シュウ酸トリアルキルスルホニウム(第3級)、シュウ酸トリアルキルスルホキソニウム(第3級)、およびシュウ酸イミダゾリウム(例えば、シュウ酸テトラメチルアンモニウム、シュウ酸テトラブチルアンモニウム、およびシュウ酸高級アルキル置換第4級オニウムの1種または混合物を含む))の使用を含む。
【0011】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、セラミック粉末の製造方法に関し、この方法は:
複数の溶液状前駆体材料を提供する工程であって、複数の溶液状前駆体材料のそれぞれが、セラミック粉末の少なくとも1種の構成要素イオン種をさらに含む、工程、
複数の溶液状前駆体材料とジカルボン酸オニウム沈殿剤溶液とを合わせて、合わせた溶液中にセラミック粉末前駆体の共沈を生じさせる工程;および
合わせた溶液からセラミック粉末前駆体を分離する工程、
を含む。
【0012】
1つの実施形態では、沈殿剤溶液は、アンモニウムイオンを実質的に含まない。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、セラミック粉末の製造方法に関し、この方法は:
複数の溶液状前駆体材料を提供する工程であって、ここで複数の溶液状前駆体材料のそれぞれが、セラミック粉末の少なくとも1種の構成要素イオン種をさらに含む、工程、
複数の溶液状前駆体材料とアンモニウムイオンを実質的に含まないシュウ酸オニウム沈殿剤溶液とを合わせて、合わせた溶液中にセラミック粉末前駆体を共沈させる工程;
合わせた溶液からセラミック粉末前駆体を分離する工程;
分離したセラミック粉末前駆体をか焼して、セラミック粉末を形成する工程;
セラミック粉末をグリーン体(green body)に形成する工程;および
グリーン体を焼結させる工程、
を含む。
【0014】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、一般式(II)を有する第4級オニウムを含む:
【0015】
【化1】

【0016】
式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=A基を含む場合、Rは2番目の結合である。
【0017】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、一般式(III)を有する第3級スルホニウムを含む:
【0018】
【化2】

【0019】
式(III)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である。
【0020】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、一般式(IV)を有する第3級スルホキソニウムを含む:
【0021】
【化3】

【0022】
式(IV)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である。
【0023】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、一般式(V)を有するイミダゾリウムを含む:
【0024】
【化4】

【0025】
式(V)中、RおよびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含む。
【0026】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、およびテレフタル酸塩の1種またはそれ以上を含む。
【0027】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、シュウ酸テトラメチルアンモニウムを含む。1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、シュウ酸テトラメチルアンモニウムおよび第2のシュウ酸オニウムを含み、ここで第2のオニウムは、一般式(II)を有する:
【0028】
【化5】

【0029】
式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、4〜約20個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0030】
1つの実施形態では、前駆体材料は、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Th、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Si、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ho、Er、Tm、Tb、Th、Pa、U、Np、およびPuの1種のイオン、または2種もしくはそれ以上の組み合わせのイオンを含む。
【0031】
1つの実施形態では、上記方法は、セラミック粉末前駆体をか焼して、セラミック粉末を製造する工程をさらに含む。1つの実施形態では、か焼は、約200℃〜約1500℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる。
【0032】
1つの実施形態では、上記方法は、セラミック粉末を焼結させて、セラミック物品、製品、または構造体を製造する工程をさらに含む。1つの実施形態では、焼結は、約1000℃〜から約3000℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる。
【発明の効果】
【0033】
上述の特徴に基づいて、また下記に詳細に記載するように、本発明は、先行技術の方法により製造された同様のセラミック粉末と比較して、すなわち沈殿剤として上記ジカルボン酸オニウムを含まない方法により製造されたこと以外は同一のセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上のような向上した性質を示すセラミック粉末を提供するという課題に対処する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による方法の概略フロー図である。
【図2】本発明および先行技術に従って製造した沈殿物の30〜33°2シータにおける回折強度を示すX線回折走査図である。
【図3】本発明および先行技術に従って製造した沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。
【図4】本発明および先行技術に従って製造した沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。
【図5】本発明および先行技術に従って製造した再分散後の沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。
【図6】本発明および先行技術に従って製造した再分散後の沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
下に記載の方法の工程および構成は、金属前駆体から最終的に使用可能なセラミック材料を製造する方法の完全なフローをなさなくてもよいと理解されるべきである。本発明は、当技術分野で現在用いられている組成物および処理技術と組み合わせて実施できるが、本発明について理解するのに必要な分に対してのみ、一般に実施されている方法の工程を記載する。
【0036】
(発明の詳細な説明)
明細書および請求項の全体にわたり、範囲および比の限定は組み合わせられ得る。なお、特に明記しない限り、「a」、「an」、および/または「the」に対する言及は、1つまたは1つより多くを含み得、単数形のもの(item)に対する言及はまた、その複数形も包含し得る。明細書および請求項で特定する組み合わせはすべて、いかなるようにも組み合わされ得、そして要素群の任意の1つまたはそれ以上の個々の要素が、当該群からから除外されるかまたは制限されることもあり得る。
【0037】
上述の概要に略記した本発明の特定の実施形態を、当業者が本発明を製造しかつ使用できるように、下記の説明および添付の図面においてより詳細に記載する。
【0038】
(ジカルボン酸オニウム)
本明細書で用いられるように、ジカルボン酸オニウムとしては、ジカルボン酸第4級アンモニウム、ジカルボン酸第4級ホスホニウム、ジカルボン酸第3級スルホニウム、ジカルボン酸第3級スルホキソニウム、およびジカルボン酸イミダゾリウムが挙げられる。ジカルボン酸塩は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、およびテレフタル酸塩、上述のもののいずれかの混合物および/または組み合わせであってもよい。1つの実施形態では、ジカルボン酸塩は、炭酸塩以外である。当業者には理解されるように、特定の金属イオンのジカルボン酸塩が、不溶性の沈殿物を形成するのではなく可溶性のキレートを形成することが知られている場合、沈殿剤の目的は不溶性ジカルボン酸としてそれぞれの金属イオンを沈殿させることであるので、これらのジカルボン酸と金属との組み合わせは、本発明の範囲内ではない。
【0039】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウム溶液はシュウ酸有機オニウムを含む。1つの実施形態では、シュウ酸オニウムは、シュウ酸テトラアルキルアンモニウムを含む。1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、シュウ酸テトラメチルアンモニウムである。シュウ酸ビス−(テトラメチルアンモニウム)は、25%水溶液でSACHEM, Inc.(オースティン、テキサス州)から市販されている。他のジカルボン酸オニウムは、適切なオニウム水酸化物とジカルボン酸との反応により調製され得る。
【0040】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウム溶液は、2種の異なるジカルボン酸オニウムの混合物を含む。1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウム溶液は、小さいアルキル基(例えば、すべてメチルまたはエチル基)を有する第1のシュウ酸テトラアルキルオニウムと、より大きいアルキル基(例えば、4個より多い炭素原子であり、1つの実施形態では、8個より多い炭素原子)を有する第2のシュウ酸テトラアルキルオニウムとを含む。より長鎖のアルキル基では、基は分岐していてもよいし分岐していなくてもよい。アルキル鎖の大きさの変化は、得られるセラミック粉末の特性を調整するために利用され得る。例えば、1つの実施形態では、シュウ酸テトラメチルアンモニウムとシュウ酸テトラブチルアンモニウムとの組み合わせを用いて、双峰性の粒度分布が得られ得る。このような1つの実施形態では、双峰性の粒度における2つの粒度範囲のそれぞれの分布は狭い。1つの実施形態では、2つの粒度範囲を組み合わせると粒子のパッキング性が向上し、したがって、セラミック粉末を引き続き最終のセラミック物品に形成すると、さらに密度の高いセラミック物品が得られる。
【0041】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウム沈殿剤の溶液は、pHが約5〜約14、1つの実施形態ではpHが7〜約pH13、他の実施形態では約8〜約12であり、1つの実施形態では、pHは約9である。pHは、オニウム水酸化物を加えて調整され得る。1つの実施形態では、pHは、沈殿剤として使用するジカルボン酸オニウムに対応するオニウム水酸化物の使用によって調整される。1つの実施形態では、pHを調整するため、異なるオニウム水酸化物が使用され得る。例えば、より高価なジカルボン酸オニウムを使用する場合、pHは、水酸化テトラメチルアンモニウムなどのより一般に利用可能なオニウム水酸化物で調整することができる。1つの実施形態では、合わせた金属前駆体溶液および沈殿剤溶液のpHをpHが約11〜約14の範囲になるまで上昇させるために、沈殿剤溶液には十分な濃度のオニウム水酸化物が含まれる。この高いpHを達成すると、セラミック粉末前駆体中で金属イオンをすべて沈殿させるのを確実にするのに役立つ。
【0042】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムは、一般に式Iを特徴とし得る:
【0043】
【化6】

【0044】
式(I)中、Aはオニウム基であり、ジカルボン酸アニオンは上に規定した通りであり、xはAの原子価により決まる整数である。Aが一価の場合、x=2;Aが二価の場合、x=1;Aが三価またはそれより高い価数である場合、xおよびシュウ酸塩または他のジカルボン酸アニオンの数は、適宜変更される。例えば、Aが正電荷を4つ有するポリオニウムイオンである場合、2個のジカルボン酸アニオンが存在することになる。本明細書で用いられるように、オニウム基は、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基、第3級スルホニウム基、第3級スルホキソニウム基、およびイミダゾリウム基の1種またはこれらの組み合わせもしくは混合物である。組み合わせは、互いに同じまたは異なる2個のオニウム基を含む分子であってもよく、混合物は、単一の媒体中に一緒に分散させた2種以上の異なるオニウム化合物であってもよい。
【0045】
1つの実施形態では、オニウムイオンは、アンモニウムイオンを含まない。他の実施形態では、オニウムイオンは、アンモニウムイオン、第1級、第2級、または第3級アンモニウムイオンのいずれも含まない。本明細書で用いられるように、材料の溶液または混合物が、特定の成分、イオン、または材料を含まない、または含有しない、または実質的に含有しないと開示される場合、この特定の成分、イオン、または材料が溶液または混合物に対して意図的に加えられていない。溶液または混合物が、この特定の成分を含まない、含有しない、または実質的に含有しないとして明記された場合であっても、ある程度の量の特定の成分、イオン、または材料が不可避であるか不慮の不純物として存在する可能性がある。
【0046】
1つの実施形態では、非常に低レベルの微量金属汚染物を有するジカルボン酸オニウムが提供される。1つの実施形態では、任意の単一金属不純物の金属含有量は、10億分率で約10(10ppb)未満であり、1つの実施形態では、任意の単一金属不純物の金属含有量は約5ppb未満であり、1つの実施形態では、任意の単一金属不純物の金属含有量は約1ppb未満である。ジカルボン酸オニウムにおけるこのような低レベルの金属不純物は、オニウム水酸化物またはジカルボン酸オニウムの他の供給源の広範な前処理を必要とする場合がある。
【0047】
1つの実施形態では、本発明に従って使用することができるオニウムイオンは、式IIを特徴とする第4級アンモニウムイオンおよび第4級ホスホニウムイオンである:
【0048】
【化7】

【0049】
式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個もしくは1〜約10個の炭素原子を含むアルキル基、2〜約20個もしくは2〜約10個の炭素原子を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であるか、あるいはRとRまたはRとがAと共にヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=A基を含む場合、Rは2番目の結合である。アルコキシアルキル基において、アルキル部分およびアルコキシ部分のそれぞれは、1〜約20個の炭素原子を含み得る。
【0050】
アルキル基R〜Rは、直鎖または分岐鎖であり得、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシル基が挙げられる。R、R、R、およびRはまた、2〜5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル、および、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルなどの様々な異体性)であり得る。1つの実施形態では、R、R、R、およびRは、独立して、1〜約5個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはヒドロキシアルキル基である。アルコキシアルキル基の具体例としては、エトキシエチル、ブトキシメチル、ブトキシブチルなどが挙げられる。様々なアリールおよびヒドロキシアリール基の例としては、フェニル、ベンジル、およびベンゼン環が1つまたはそれ以上の水酸基で置換されている同等な基が挙げられる。アリールまたはヒドロキシアリール基は、例えば、C〜C20アルキル基で置換され得る。ほとんどの場合は、R〜Rは、メチルなどの低級アルキルである。
【0051】
1つの実施形態では、R〜R基のいずれか1つは、1〜約5個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはヒドロキシアルキル基である。したがって、A=Nであり、ジカルボン酸塩がシュウ酸塩である一般式(II)の1つの実施形態では、シュウ酸第4級アンモニウムは、シュウ酸テトラアルキルアンモニウムを含む。シュウ酸アンモニウムの具体例としては、シュウ酸テトラメチルアンモニウム(TMAO)、シュウ酸テトラエチルアンモニウム(TEAO)、シュウ酸テトラプロピルアンモニウム、シュウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAO)、シュウ酸テトラ−n−オクチルアンモニウム、シュウ酸メチルトリエチルアンモニウム、シュウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、シュウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、シュウ酸メチルトリブチルアンモニウム、シュウ酸セチルトリメチルアンモニウム、シュウ酸トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、シュウ酸トリメチルメトキシエチルアンモニウム、シュウ酸ジメチルジヒドロキシエチルアンモニウム、シュウ酸メチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、シュウ酸フェニルトリメチルアンモニウム、シュウ酸フェニルトリエチルアンモニウム、シュウ酸ベンジルトリメチルアンモニウム、シュウ酸ベンジルトリエチルアンモニウム、シュウ酸ジメチルピロリジニウム、シュウ酸ジメチルピペリジニウム、シュウ酸ジイソプロピルイミダゾリニウム、シュウ酸N−アルキルピリジニウムなどが挙げられる。1つの実施形態では、本発明に従って使用するシュウ酸第4級アンモニウムは、TMAOおよびTBAOである。上で述べたように、適切なジカルボン酸アニオンがシュウ酸塩の代用とされ得、対応するオニウム塩が形成される。
【0052】
本発明に従って使用され得る、A=Pである式(II)で表されるシュウ酸第4級ホスホニウムの例としては、シュウ酸テトラメチルホスホニウム、シュウ酸テトラエチルホスホニウム、シュウ酸テトラプロピルホスホニウム、シュウ酸テトラブチルホスホニウム、シュウ酸トリメチルヒドロキシエチルホスホニウム、シュウ酸ジメチルジヒドロキシエチルホスホニウム、シュウ酸メチルトリヒドロキシエチルホスホニウム、シュウ酸フェニルトリメチルホスホニウム、シュウ酸フェニルトリエチルホスホニウム、およびシュウ酸ベンジルトリメチルホスホニウムなどが挙げられる。
【0053】
他の実施形態では、本発明に従って使用され得るオニウムイオンは、一般式IIIで表される第3級スルホニウムイオンである:
【0054】
【化8】

【0055】
式(III)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとが、Aと共にヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である。アルコキシアルキル基において、アルキル部分およびアルコキシ部分のそれぞれは、1〜約20個の炭素原子を含み得る。
【0056】
1つの実施形態では、R、R、およびRは、第4級オニウムの実施形態のR〜R基に関して上に開示した任意選択基のいずれかであり得る。
【0057】
式IIIで表されるシュウ酸第3級スルホニウムの例としては、シュウ酸トリメチルスルホニウム、シュウ酸トリエチルスルホニウム、シュウ酸トリプロピルスルホニウムなどが挙げられる。
【0058】
他の実施形態では、本発明に従って使用され得るオニウムイオンは、一般式IVで表される第3級スルホキソニウムイオンである:
【0059】
【化9】

【0060】
式IV中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但しヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である。アルコキシアルキル基において、アルキル部分およびアルコキシ部分のそれぞれは、1〜約20個の炭素原子を含み得る。
【0061】
1つの実施形態では、R、R、およびRは、第4級オニウムの実施形態のR〜R基に関して上に開示した任意選択基のいずれかであり得る。
【0062】
式IVで表される第3級スルホキソニウムイオンの例としては、シュウ酸トリメチルスルホキソニウム、シュウ酸トリエチルスルホキソニウム、シュウ酸トリプロピルスルホキソニウムなどが挙げられる。上で述べたように、適切なジカルボン酸アニオンがシュウ酸塩の代用とされ得、対応するスルホキソニウム塩が形成される。
【0063】
他の実施形態では、本発明に従って使用され得るオニウムイオンは、一般式Vで表されるイミダゾリウムイオンである:
【0064】
【化10】

【0065】
式(V)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、当該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含む。
【0066】
1つの実施形態では、RおよびRは、第4級オニウムの実施形態のR〜R基に関して上に開示した任意選択基のいずれかであり得る。
【0067】
式(V)のイミダゾリウムの例としては、例えば、ジメチルイミダゾリウム、ジエチルイミダゾリウム、ジブチルイミダゾリウム、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、および1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0068】
(前駆体材料)
本発明によれば、前駆体材料は、目的とするセラミック粉末の構成成分として、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Th、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Si、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ho、Er、Tm、Tb、Th、Pa、U、Np、およびPuの1種のイオンまたは2種もしくはそれ以上の組み合わせのイオンを含む。これらのイオンは、任意の適切な対イオンとともに前駆体溶液に提供され得、但しイオン対は、前駆体溶液に可溶である。
【0069】
本発明の1つの実施形態では、上記金属の可溶性キレートが、目的とするセラミック粉末の構成成分の1種またはそれ以上に対する前駆体として使用される。一般に、キレート化は、同一のリガンド内の2つ以上の別々の結合部位と単一の中心原子との間での結合(または他の誘引性の相互作用)の形成または存在である。キレート化(および対応する化学種)が存在する分子的実体は、キレートと呼ばれる。
【0070】
1つの実施形態では、ジカルボン酸オニウムとの反応に先立って、金属イオンの溶解性を向上させるために1種またはそれ以上の前駆体が可溶性キレートとして提供される。キレート剤は、その構造が金属イオンに2つ以上の供与部位と相互作用させる多座配位子であり、配位子は、1つまたはそれ以上の配位結合において供与相手として機能することができる任意の原子、イオン、または分子である。適切なキレート剤としては、例えば、アルファ−ヒドロキシカルボン酸(乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、およびクエン酸など)、またはアルファアミノ−カルボン酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびグリシンなど)が挙げられる。例えば、チタン酸バリウム−カルシウム−イットリウム−マンガン−ジルコニウムを調製するために、前駆体の溶液であるBa(NO、Ca(NO・4HO、Nd(NO・6HO、Y(NO・4HO、Mn(CHCOO)・4HO、ZrO(NO、および[CHCH(O)COONHTi(OH)を脱イオン水中で形成する。この例では、可溶性チタンキレート[CHCH(O)COONHTi(OH)が使用され、これはそうでなければチタンは難溶性であるためである。
【0071】
本発明が適用可能な多種多様な金属イオンは、広範囲の可溶性を示すが、当業者であれば本発明での使用に適切した対イオンおよび/またはキレートを容易に決定することができる。このような選択のための1つの重要な基準としては、対イオンおよび/またはキレート剤が、このように形成したセラミック粉末中に残渣が残らないように、か焼工程の際に空気中での熱分解を受けやすいということである。
【0072】
(方法)
1つの実施形態では、水溶液に沈殿させたシュウ酸塩の粉末の形成に適した温度範囲は、35℃〜110℃であり、他の実施形態では約65℃〜約95℃である。1つの実施形態では、水溶液に沈殿させたシュウ酸塩の粉末の形成に適した温度範囲は、85℃〜90℃である。
【0073】
本願に記載の方法および技術は、当業者に理解されるように、様々なタイプの混合金属酸化物(セラミック粉末前駆体)およびセラミック粉末を調製するために利用することができる。したがって、本願は、蓄電装置において使用するセラミック粉末(例えば、ドープされたかまたは組成変更されたチタン酸バリウム)、および半導体用途で使用するHi-K誘電体材料として使用するものの製造におけるこれらの工程および技術の使用を強調しているが、他の金属酸化物およびセラミック粉末を提供するために同一または類似の技術および方法が使用でき、これらの金属酸化物およびセラミック粉末は、セラミック粉末系部品を含む様々な構成要素、装置、材料などの製造における適用を見出し得る。
【0074】
金属シュウ酸塩は一般に不溶性であり、そして金属シュウ酸塩粒子は一般に、当該粒子が形成される液体から容易に濾過され、取り扱いやすい。例えば、次の化合物のシュウ酸塩は、低い水溶性を示すことが知られている:Al、Ba、Bi、Cd、Ca、Ce(III)、Cr(II)、Co、Cu、希土類、Ga、Fe(II)、Pb、Mg、Mn、Hg、Ni、Ag、Sr、Tl(I)、Th、U、Y、およびZn。すべての組み合わせを試験したわけではないが、シュウ酸塩(高いpHでの水酸化物とは異なり)を形成する本明細書に開示する金属は、溶解性が非常に低く、したがって、所望のセラミック粉末前駆体を形成することになると考えられる。
【0075】
溶液からの前駆体の混合物の共沈によるセラミック粉末前駆体を提供する湿式化学法においては、少量の沈殿剤および水が、典型的には、生成した沈殿物のミクロ細孔およびナノ細孔内に含まれることになる。同様に、少量の沈殿剤および水はまた、沈殿生成物の表面に吸着されることになる。生成した沈殿物を空気中でか焼する間に、その熱分解におけるシュウ酸アニオンの酸素の約半分が混合酸化物化合物の一部になり、残りの半分は、すべての炭素と共に酸化されて炭酸ガスに変換される。様々な残渣が、熱分解され酸化されて、HO、NH、CO、CO、N、NO、NO、およびNO、SO、またはリン酸化物などの気体生成物に完全に変換される。以下に記載するように、同様の分解が、可溶化キレート剤として選択され得る任意の2−ヒドロキシカルボン酸または他の有機化合物に一般に当てはまる。
【0076】
1つの実施形態では、シュウ酸オニウムの残渣および他の残渣が、か焼工程において完全に揮発してなくなるので、残存する沈殿剤を除去するための、沈殿した粉末の洗浄は必要ではない。しかしながら、いくつかの実施形態では、脱イオン(DI)水もしくは蒸留水での洗浄工程、または他の洗浄工程が行われる。したがって、非金属イオン含有ジカルボン酸オニウムの使用により、相対量の水溶性の水和しキレート化した金属イオン種の水溶液がジカルボン酸塩(例えば、シュウ酸塩)として沈殿し、そして空気中でか焼されることにより、対応する金属酸化物に変換される。したがって、合わせたセラミック粉末前駆体は、所望のセラミック粉末を形成する。
【0077】
このようにして、高誘電率のか焼されたセラミック粉末前駆体をセラミック粉末へ提供すると、沈殿剤としてジカルボン酸オニウムを含まない方法により製造された以外は同一のセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、組成の均一性、制御可能な化学量論、再分散性、ならびに化学安定性の1つまたはそれ以上のような向上した性質を有する高純度のセラミック粉末が得られる。か焼され湿式化学法で提供されたこれらのセラミック粉末前駆体から形成されたセラミックの微細構造は、粒度が均一であり、また、より小さな粒度からの利点を有し得る。セラミック粉末のこれらの向上した特性の結果として、電気的特性が向上し得、したがって、本発明のセラミック粉末を使用して製造した物品において、より高い比誘電率および増加した絶縁破壊強度が得られ得る。必要であれば、それに続く熱間静水圧加圧で焼結セラミック体内の気孔を除去することにより、さらなる改良が得られ得る。1つの実施形態では、本発明によりナノメートルサイズの粒度を有するセラミック粉末が製造されるので、最終的なセラミック製品における所望の電気的特性を得るためにはそのような静水圧加圧は必要ではない。
【0078】
1つの代表的な実施形態では、前駆体金属の溶液が、混合および/または加熱(例えば、80℃に加熱)され得る。前駆体金属は、所望のセラミック粉末前駆体のそれぞれに対して重量パーセントで相応量提供される。
【0079】
適切なジカルボン酸オニウムの別の溶液(前駆体金属溶液中の金属イオンの量に相当するのに必要な量を少し上回る)が、1つの代表的な実施形態では、脱イオン水中で製造され、85〜90℃に加熱される。
【0080】
1つの実施形態では、上記2つの溶液が、同軸流体ジェットミキサーを通じて、加熱した原料の流れを同時に送り込むことにより混合される。共沈したセラミック粉末前駆体のスラリーが生成され、濾過され、必要に応じて脱イオン水で洗浄され、そして乾燥される。あるいは、セラミック粉末前駆体は、遠心沈降または他の技術により回収され得る。セラミック粉末前駆体は、適切な条件下、例えば、約1分〜約24時間に及ぶ期間、適切なシリカガラス(溶融石英)トレーまたはチューブ内で、空気中で、約200℃〜約1500℃の範囲の温度にてか焼されて、セラミック粉末が形成される。空気中でか焼すると、非金属(例えば、C、H、N、O、S、Pなど)の分解速度が向上する。
【0081】
1つの実施形態では、セラミック粉末前駆体は、約400℃〜約1350℃の範囲の温度にて、約30分〜約24時間に及ぶ期間、か焼される。1つの実施形態では、セラミック粉末前駆体は、約600℃〜約1200℃の範囲の温度にてか焼される。1つの実施形態では、セラミック粉末前駆体は、800℃を超える温度にてか焼される。なお、か焼は、セラミック粉末前駆体中の金属シュウ酸塩およびどのような金属水酸化物も分解するのに十分な温度で行われるのがよいが、セラミック粉体粒子が互いに融着するほど高温でないのがよい。したがって、か焼温度は、セラミック粉末前駆体をセラミック粉末へ分解するのに必要な最低限の温度よりわずかに高い温度から、その後の焼結工程で起きるような得られたセラミック粉体粒子が互いに融着する温度未満までの範囲であるのがよい。か焼の時間および/または温度は、非金属の完全な除去、金属シュウ酸塩およびいかなる金属水酸化物の金属酸化物への完全な変換、およびセラミック粉末が構成される金属酸化物間の完全な反応を得るために必要とされるように、適宜調整され得る。当業者は、か焼のために適切な時間を容易に決定し得る。
【0082】
1つの実施形態では、か焼工程から得られたセラミック粉末は、引き続き焼結されて、基板上にセラミック物品または構造体を形成する。当技術分野で公知のように、焼結の前に、適切に成形または形成されたグリーン体が形成され得、このグリーン体は所望のセラミック物品または構造体に適した大きさ、形、および/または構造を有する。1つの実施形態では、焼結は、約1000℃〜約3000℃の範囲の温度にて行われる。1つの実施形態では、焼結は、約1500℃〜約2500℃の範囲の温度にて行われる。焼結は、適切な時間、例えば、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われ得る。焼結時間は、焼結される材料および焼結の意図する生成物に基づいて、当業者により容易に決定され得る。
【0083】
1つの実施形態では、生成物は、米国特許第7,033,406号B2に開示のような蓄電ユニットの製造に使用される。当該文献は、本発明によって得られるようなセラミック粉末がどのように蓄電ユニット中で使用され得るかの記載を含む。米国特許第7,033,406号B2の開示は、さらなる詳細のために参照され得、そして特に蓄電ユニットの製造に関する教示のために参照によりその全体において本明細書に援用される。
【0084】
図1は、本発明によるセラミック粉末加工技術のフローチャートである。方法は、工程100から開始する。工程110では、適切な前駆体材料、例えば、可溶性キレートや他の前駆体を溶液状で提供する。次に、工程120で、ジカルボン酸オニウム沈殿剤を提供する。次いで工程130で、これらの2つの材料を合わせて、共沈反応を介して所望のセラミック粉末前駆体を形成する。一旦セラミック粉末前駆体が形成されると、工程140で、セラミック粉末前駆体が形成されている溶液中から、適切な分離装置および分離技術を用いて、セラミック粉末前駆体を分離し得る。セラミック粉末を形成するために、他の沈澱後工程が用いられ得、この沈澱後工程は、工程150におけるように、必要に応じてセラミック粉末前駆体を洗浄する工程、工程160におけるように、必要に応じてセラミック粉末前駆体を乾燥させる工程(任意の洗浄工程150が行われたかどうかにかかわらず行われ得る)、および工程170に示すように、セラミック粉末前駆体をか焼する工程を含む。工程170が完了すると、セラミック粉末の形成方法が完了する。1つの実施形態では、セラミック粉末は引き続きグリーン体に形成され(図示せず)、次いで工程180におけるように焼結されて、セラミック物品が形成される。方法は、工程190で終了する。
【0085】
1つの実施形態では、2つの原料の流れ(一方はすべての金属イオン化合物前駆体の水溶液を含み、他方はジカルボン酸オニウムの水溶液を含む)を、高い乱流エネルギー環境を提供する流体ジェットカラム中で、同時にかつ連続的に一緒に反応させる。原料の流れは、例えば、約65℃〜約110℃の範囲の温度に、1つの実施形態では85℃に、加熱され得る。飽和されているかまたはほぼ飽和されている市販のおよび特製の前駆体水溶液の全容積は、典型的には、水溶液状のジカルボン酸オニウムの全容積よりも大きい。この場合、ジェット流体カラムには一般に2つの選択肢がある:(1)前者の流量が後者の流量よりも相応して大きくなるように調節し、2つの流れに印加する駆動圧を同一にして流速を均等にするが、前者のノズルの断面積を後者のノズルの断面積よりも相応して大きくする;および(2)ある容量の後者を、相応量の脱イオン水で希釈し、これにより沈殿剤の濃度を低下させる。両方の流れについて容量を同等にすることで、ノズルは同様のものであり、流量は同じであり、かつ印加する駆動圧は同一である。しかしながら、処理される液体の量は、一般に、第一の選択肢のものよりも多い。第一の選択肢は、取り扱う液体の量および脱イオン水の使用が最小限になるという大きな利点がある。そのような流体ジェットカラム混合技術の例は、米国特許第5,087,437号に記載されている。米国特許第5,087,437号は、さらなる詳細のために参照され得、そして特に流体ジェットカラム混合技術に関する教示のために参照によりその全体において本明細書に援用される。
【0086】
他の実施形態では、原料の流れを合わせるために他の技術および装置が使用され得る。このようなものとしては、例えば、(1)一方の容器中の一方の溶液を他方の容器中の他方の溶液に注ぎ、そして機械的混合または超音波混合を使用すること、ならびに(2)一方の容器中の溶液が他方の容器中の他方の溶液に所定の流量で調節して、そして機械的混合または超音波混合を使用することが挙げられる。多数の他の混合技術が当業者に公知である。
【0087】
本発明は、従来の共沈法に対して大きな利点がある。例えば、強塩基水酸化物のみが沈殿剤として使用される場合、ゼラチン状であり非結晶性の水和した水酸化物が生じる。これらの沈殿物は、濾過することが困難(例えば、フィルターカートリッジが詰まる)であり得、密度を高めて結晶状態まで変換させるためには、母液中で長時間の還流(典型的には、93℃にて大気圧下で8〜12時間)を必要とする。
【0088】
沈殿剤としての強塩基水酸化物またはシュウ酸アンモニウムの使用に関係するこのような問題は、本発明に従って沈殿剤としてジカルボン酸オニウムを選択することにより回避することができる。沈殿剤として、ジカルボン酸オニウムは、セラミック粉末前駆体を空気中でか焼する工程の間に熱分解し酸化して、気体生成物に変換されることによりなくなるという利点を有する。
【0089】
水和した水酸化物沈殿物とは異なって、本発明のシュウ酸塩沈殿物、つまりセラミック粉末前駆体は、例えば大気圧下、水溶液中で85℃にて形成されると実質的に結晶性であり、容易に濾過可能であり、オーブン内で、例えば85℃で、容易にかつ速やかに乾燥し、そして周囲温度〜約1500℃での炉用シリカガラス(溶融石英)チューブ内の空気中のか焼(1つの実施形態では約800℃にてか焼される)により所望の酸化物(または混合酸化物)セラミック粉末に変換される。これらの温度は例示であり、同様の結果が多少低い温度でも達成され得る。1つの実施形態では、引き続くそのオーブン乾燥の間にジカルボン酸塩共沈殿物の望まない分解を避けるために、約100℃〜約160℃の温度で充分であり、はるかに高い温度は避けるのがよい。1つの実施形態では、乾燥温度は約85〜90℃で維持され、他の実施形態では、乾燥温度は約120℃である。
【0090】
アルカリ金属水酸化物とは異なり、本発明のジカルボン酸オニウムは、除去が困難な金属イオン(例えば、ナトリウムイオンまたはカリウムイオン)による粉末生成物の汚染を起こさない。
【0091】
シュウ酸アンモニウム法とは異なり、本発明によるジカルボン酸オニウムを使用すると、所望の高い範囲へのpHの調節、および一定で一貫したpHの保持が容易になり、得られる結果がはるかに優れている。アンモニウムイオンを使用すると、アンモニアが蒸発により溶液から失われる可能性があり、溶液のpHが変動する原因となり、所望のpHを維持するために頻繁にモニタリングしなければならず、また定期的に補充しなければならない。さらに、蒸発したアンモニアは悪臭を放ち、さらなる環境問題を呈する。このような問題は、pHを調整するために例えばオニウム水酸化物を用いたオニウム系溶液では起こらない(ここでオニウムイオンは、ジカルボン酸オニウム中で用いられるものに対応する)。
【0092】
本発明の重要な特徴は、開示の方法が、単一のペロブスカイト相を有するセラミック粉末の形成を提供することであり、このセラミック粉末中では、組成物は、個々の成分を含む化合物の混合物または単一の化合物においてすべての成分には満たないものの混合物(例えば、BaTiOおよびSrTiOの混合物)(これは、か焼するとセラミック粉末が得られる可能性があるが、所望であり本発明により入手できるものではない)とは対照的に、ペロブスカイト相の単一の化合物(例えば、BaSr(1−x)TiO)を含む。
【0093】
本発明のジカルボン酸オニウムは、一般に、水にそれほど可溶ではないシュウ酸アンモニウムなどの先行技術の化合物よりも可溶性である。例えば、20℃でのシュウ酸アンモニウムの溶解度は、水中で約0.3586M、すなわち約4.25%である。対照的に、20℃でのシュウ酸テトラメチルアンモニウムの溶解度は、水中で約2.65M、すなわち約62.6%である。ジカルボン酸オニウムのこのより高い溶解度は、より濃度の高い溶液で作用する能力をもたらし、したがってそれほど廃棄物を生成しない。
【0094】
沈殿剤として上記のジカルボン酸オニウム溶液を用いて共沈反応が行われると、1つの実施形態では、従来の成果と比べて、粉体の粒度分布範囲が約40%以上減少し、また粉末は自由流動性である。自由流動性であるという粉体の特性は、透明なプラスチックまたはガラス容器中の粉末の動きにより観察される。1つの実施形態では、粉体の粒度が大幅に減少し、粒子は形状がより均一である。1つの実施形態では、粉体の粒度は、従来の成果と比べて、約40%以上減少する。高度に精製された低金属のジカルボン酸オニウムの使用の結果として、得られる粉末における金属イオンの汚染度が大いに減少される。
【0095】
したがって、得られたスラリーは、混合槽から濾過または分離装置に移される。液相からの沈殿物の分離および沈殿物の単離は、従来の濾過、真空濾過、遠心分離、沈降、噴霧乾燥、凍結乾燥などを含む様々な装置および技術を用いて行われ得る。次いで、所望であれば、濾過した粉末を、様々な洗浄、乾燥、およびか焼工程に供し得る。
【0096】
1つの実施形態では、本発明による方法は、誘電体として使用するセラミック粉末の提供に適用され得る。1つの典型的な実施形態では、セラミック粉末は、ドープされたチタン酸バリウム−カルシウム−ジルコニウムを含む。1つの実施形態では、ドープされたチタン酸バリウム−カルシウム−ジルコニウムは、一般式VIを有する組成物を含む:
【0097】
【化11】

【0098】
式(VI)中、A=Ag、A’=Dy、Er、Ho、Y、Yb、またはGa;D=Nd、Pr、Sm、またはGd;D’=NbまたはMo;0.10≦χ≦0.25;0≦μ≦0.01;0≦μ’≦0.01;0≦ν≦0.01;0≦ν’≦0.01;0≦δ≦0.01;0.995≦z≦1;および0≦α≦0.005である。これは、米国特許第6,078,494号に開示される通りであり、この文献は、さらなる詳細のために参照され得、その全体が参照により本明細書に援用される。この特許は、積層コンデンサーを形成するための誘電体材料としてのこのようなセラミック粉末の使用に関する教示を含んでいる。
【0099】
1つの実施形態では、本発明による方法は、セラミック粉末からの高K誘電体材料の調製に適用され得る。例えば、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸ハフニウム、酸化ランタン、La、酸化ハフニウム、HfO、酸化ジルコニウム、ZrO、酸化セリウム、CeO、ビスマスケイ素酸化物(bismuth silicon oxide)、BiSi12、二酸化チタン、TiO、酸化タンタル、Ta、酸化タングステン、WO、酸化イットリウム、Y、LaAlO、BST(Ba1−xSrTiO)、PbTiO、BaTiO、SiTiO、PbZrO、PST(PbScTa1−x)、PZN(PbZnNb1−x)、PZT(PbZrTi1−x)、PMN(PbMgNb1−x)、およびこれらの混合物および組み合わせを含む、様々なhigh-K誘電体材料が本発明に従って提供され得る。混合物および組み合わせによって、前述のhigh-K誘電体材料の任意の2種以上において使用されるセラミック粉末を製造するために使用されるセラミック粉末前駆体を提供するために、前駆体が組み合わされ共沈され得ることが意図される。前述のhigh-K誘電体材料に加えて、他の誘電体材料が前述のもののいずれかと任意の組み合わせで組み合わせられ得る。このような他の誘電体材料としては、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および酸化アルミニウムの1種またはそれ以上が挙げられ得る。前述のhigh-K誘電体材料およびその組み合わせは、例えば、半導体装置において絶縁層(例えば、ゲート酸化物など)として使用され得る。なお、前述の材料は、high-K誘電体材料と呼ばれるが、これらの材料には様々な用途があり、本明細書の開示は、high-K誘電体材料としての当該材料の使用に限定されず、他の用途にも関し得る。
【0100】
1つの実施形態では、本発明による方法は、SrBiTaなどのセラミック粉末を提供するために使用され得る。
【0101】
1つの実施形態では、本発明による方法は、下記一般式を有するセラミック粉末を提供するために使用され得る:
【0102】
【化12】

【0103】
式中Lnは、Y、La、およびランタニド系列の元素から選択されるかまたはこれらの組み合わせであり、Xはまた、ペロブスカイト酸化物のAサイトを占める元素を表し、Sr、Ca、およびBaから選択され、そしてZおよびZは、ペロブスカイト酸化物のBサイトを占める異なった元素を表し、Cr、Mn、Mg、およびFeから選択され、そして式中、aの値は、0〜1、好ましくは0.7〜1.0であり、bの値は、1〜0、好ましくは0.3〜0であり、そしてcおよびdの値はそれぞれ、0.25〜0.75であるが、但しa+bの値は1でありそしてc+dの値は1であり、そして式中、eの値は、0.8〜1であり、式中、fの値は、0.8〜1であり、そしてgの値は、2.5〜3.2であり、これは、米国特許第7,504,172号B2に開示される通りである。
【0104】
1つの実施形態では、本発明による方法は、ペロブスカイト結晶構造を有しかつ一般式ABOを有する強誘電性材料であるセラミック粉末を提供するために使用され得、この強誘電性材料は、米国特許第5,908,802号に開示のような、ジルコン酸チタン酸鉛[Pb(Zr1−xTi)O(PZT)族により例示され、当該文献はさらなる詳細のために参照され得、その全体が参照により本明細書に援用される。この特許は、強誘電セラミック材料を含む装置を形成するためのそのような強誘電性材料の使用に関する教示を含んでいる。公知のように、PT(チタン酸鉛)もまた強誘電性材料である。他の強誘電性材料を形成するために、様々なカチオンがPZT前駆体材料中の元素の代用とされ得る。ランタンおよびバリウム(Aサイトカチオン)が、鉛(他のAサイトカチオン)の代用とされ得る。ニオブ、ビスマス、マグネシウム、銅、およびスズが、Bサイトカチオンであるジルコニウムまたはチタンのいずれかの代用となり得る。したがって、例えば、ランタンまたはバリウムは、PLZTまたはPBZTを製造するためにそれぞれ加えられ得る。ニオブは、PNZT前駆体材料を形成するために、一般的なPZT前駆体材料に加えることができる。あるいは、スズ、ビスマス、マグネシウム、および銅をPZT前駆体材料に加えることができる。本発明の方法によれば、記載した金属カチオンの任意の組み合わせが、セラミック粉末の形態の強誘電体材料を製造するために、鉛、ジルコニウム、およびチタンの代用とされ得る。
【0105】
1つの実施形態では、本発明による方法は、一般式RTOを有する、1種またはそれ以上の希土類元素種と1種またはそれ以上の遷移金属元素とを含むペロブスカイト複合酸化物を提供するために使用され得る。このペロブスカイト複合酸化物は、米国特許出願公開第2006/0018815号に開示される通りであり、当該文献はさらなる詳細のために参照され得、その全体が参照により本明細書に援用される。この特許は、このようなペロブスカイト複合酸化物の使用に関する教示を含んでいる。例えば、1つの実施形態では、ペロブスカイト複合酸化物の一般式RTOにおいて、Rは、1種またはそれ以上の希土類元素種からなり得、そしてTは、1種またはそれ以上の遷移金属元素からなり得る。他の実施形態では、Rは、1種またはそれ以上の希土類元素種と、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含む群から選択される1種またはそれ以上とからなり得、そしてTは、1種またはそれ以上の遷移金属元素からなり得る。Rをなす希土類元素種は、Y、La、Ce、Nd、Sm、Prなどおよびこれらの組み合わせであり得るが、これらに特に限定されるものではない。Tをなす遷移金属元素種は、Co、Fe、Ni、Mn、Cu、Cr、V、Nb、Ti、Zr、Pt、Pd、Ru、Rh、Au、Agなどおよびこれらの組み合わせであり得るが、これらに特に限定されるものではない。Rを構成し得る希土類元素種以外の元素として、当該希土類元素種を部分的に置換する様式で含有されるアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が例示され得る。このような元素としては、Li、K、Na、Mg、Sr、Ca、Ba、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
1つの実施形態では、有用な原子は、ABOペロブスカイト材料におけるものであり、Bサイトが、Ti、Zr、Hf、Ta、Nb、Mo、W、V、またはPの1種またはそれ以上であり得、そして対応するBOが、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ハフニウム酸塩、タンタル酸塩、ニオブ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩、スズ酸塩、およびリン酸塩と呼ばれ得る。Pは金属ではないことが認識されるが、BOイオンと同様に、リン酸塩は本発明に従って使用され得る。
【0107】
1つの実施形態では、本発明による方法は、アクチニド(特に、原子炉で使用するウランおよびプルトニウム)の酸化物を提供するために使用され得、この酸化物は、米国特許第7,169,370号に開示される通りであり、当該文献は、特に酸化状態(IV)である、共沈したアクチニドを得ることに関する教示を含んでいる。米国特許第7,169,370号は、さらなる詳細のために参照され得、そしてアクチニドを共沈させることに関する教示のために参照により本明細書に援用される。
【0108】
1つの実施形態では、本発明による方法は、下記の組成式を有するタンタル酸ストロンチウムビスマスニオブを提供するために使用され得る:
【0109】
【化13】

【0110】
式中、Eは、0〜2の範囲の化学量論的に過剰な量のビスマスを表す数字であり;xは、0.01〜0.9の範囲の量のニオブを表す数字である。1つの実施形態では、Xは0.4〜0.8の範囲であり、そして他の実施形態では、Xは0.5〜0.6の範囲であり、そして1つの実施形態では、0.56である。Eは、0〜2の範囲であり得、そして1つの実施形態では0.1〜0.3の範囲であり、1つの実施形態では、0.18である。これらの化合物は、米国特許第5,784,310号においてより詳細に開示されており、当該文献はさらなる詳細のために参照され得、そしてこのような化合物およびその調製に関する教示のために参照により本明細書に援用される。
【0111】
1つの実施形態では、本発明による方法は、オリビン型のLiFePOを提供するために使用され得、このオリビン型のLiFePOは、導電率を向上させるために少量のMg2+、Cu2+、およびZn2+などのイオンでドープされ得る。このような化合物は、リチウムイオン電池用の電極材料としての使用に適している可能性がある材料として最近になって確認された。
【0112】
1つの実施形態では、本発明による方法は、リチウムイオン二次電池に使用する、LiMnおよびLiCoOなどの層間化合物を提供するために使用してもよい。
【0113】
他の実施形態では、本発明による方法は、下記の式を有する酸化物を提供するために使用してもよく:
【0114】
【化14】

【0115】
式中、xは、約0.05〜約0.5の範囲であり、そしてδは、Coドーピング量から生じる化学量論の差を反映する。このような化合物は、Chengら、「Catalytic combustion of methane over cobalt doped lanthanum stannate pyrochlore oxide」、Catalysis Communications、第9巻、第5号、2008年3月20日、690〜695ページに開示されている。
【0116】
本明細書に開示のように、本発明による方法は、先行技術の方法により製造されたセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上のような向上した性質を有する様々なセラミック粉末を提供するために使用され得る。
【0117】
混合物中の各粉末がより微細であるほど、各粉末の体積に対する粒子表面の比がより大きい。これは、固相−固相拡散が起こるための、各粉末の単位重量当りの表面積がより大きいことを意味する。さらに、高温(例えば、か焼温度)にて費やされる時間がより長いほど、より満足のいく最終生成物が製造される。
【0118】
本明細書に記載のセラミック粉末の提供によると、狭い粒度分布およびより小さな粒度を有する高純度の粉末が得られる。これらのか焼され湿式化学法で提供された粉末から形成されるセラミックの微細構造は、粒度が均一である。当該セラミック粉末を使用して製造されるセラミック物品の電気的特性は向上されているので、より高い比誘電率および増大した絶縁破壊強度を得ることができる。
【0119】
セラミック粉末生成物の粒度および粒度分布は適切な手法によって、例えば、レーザー粒度計によって測定され得る。適切なレーザー粒度計は、CoulterTMLS230レーザー粒度計である。この機器は、約0.04μm(40nm)まで粒度を測定することができる。より小さな粒度は、走査電子顕微鏡法(SEM)を使用して測定され得る。
【0120】
1つの実施形態では、本発明に従って製造されるセラミック粉末を誘電体材料として使用すると、当該誘電体材料は大幅に向上した絶縁破壊電圧を示す。絶縁破壊電圧の適切な試験方法は、ASTM D149−97a(2004)、「Standard Test Method for Dielectric Breakdown Voltage and Dielectric Strength of Solid Electrical Insulating Materials at Commercial Power Frequencies」である。向上した絶縁破壊電圧は、高度に精製されたシュウ酸オニウム(例えば、SACHEM, Inc.から入手可能であるシュウ酸テトラメチルアンモニウム)の使用により達成できる、アルカリ金属イオンによる汚染の減少、得られる粒度の低下、向上し著しく低下した粒度分布、および/または向上した純度の1つまたはそれ以上に起因すると考えられる。
【0121】
1つの実施形態では、本発明に従って製造されるセラミック粉末前駆体は、か焼する前に粉砕されずにセラミック粉末が形成される。1つの実施形態では、本発明に従って製造されるセラミック粉末は、セラミック粉末を焼結させる前に粉砕されずにセラミック物品が形成される。公知のように、ボールミル粉砕などの製粉作業は、ミルが製造されている材料によりセラミック粉末前駆体および/またはセラミック粉末の汚染を生じさせ得、これにより最終セラミック物品中の汚染が増大する。
【実施例】
【0122】
(実施例および比較例)
沈殿剤としてシュウ酸アンモニウム(比較例1)に対してシュウ酸テトラメチルアンモニウム(実施例1)を使用するシュウ酸バリウム−ストロンチウムチタニル(barium-strontium titanyl oxalate)の沈殿により提供したチタン酸バリウム−ストロンチウム(barium-strontium titanate)(BST)粉末:
硝酸バリウムを0.060M、硝酸ストロンチウムを0.040M、およびジヒドロキシビス(乳酸アンモニウム)チタン(IV)を0.10M含む水溶液を調製する。この可溶性のバリウム、ストロンチウム、およびチタンの塩の原液を、実施例1および比較例1の両方で使用する「溶液A」とする。
【0123】
(実施例1:沈殿剤としてシュウ酸テトラメチルアンモニウムを使用するBST粉末(Ba0.6Sr0.4TiO)の調製)
シュウ酸テトラメチルアンモニウムの0.25M水溶液を調製する。この溶液のpHを、水酸化テトラメチルアンモニウムの10%水溶液を用いて9.2に調整する。これを「溶液B1」とする。
【0124】
溶液B1を1,000グラム(0.25モル濃度のシュウ酸テトラメチルアンモニウム)、パイレックス(登録商標)ビーカー(4リットル)へ量り取る。このビーカーを、温度制御のため温度プローブを取り付けたホットプレート上に置き、温度プローブおよびpHプローブをいずれも溶液中に入れる。テフロン(登録商標)ポリマーでコーティングした機械式撹拌翼を、ビーカーの底から約1センチメートル上の溶液中央部に入れる。
【0125】
溶液A(上に記載のもの)を1,000グラム、テフロン(登録商標)分液漏斗(2リットル)へ量り取る。この漏斗をリングスタンドに入れ、漏斗の先端をパイレックス(登録商標)ビーカー中の溶液B1の表面の上方に配置する。
【0126】
機械式撹拌機を500RPMにセットし、この溶液を80℃に加熱する。溶液Aを、毎秒ほぼ一滴の速度で、分液漏斗から加える。溶液Aを添加する間中、水酸化テトラメチルアンモニウムの10%水溶液を加えることにより溶液のpHを定期的に調整して、pHを9.0に維持する。溶液Aの添加を始めたほぼ直後から、白色沈殿物が形成し始める。溶液B1への溶液Aの添加は1時間20分後に完了する。撹拌しながら、この混合物を80℃にてさらに半時間温浸させる。半時間の温浸の終わりに、ホットプレートのスイッチを切り、混合物を室温まで冷却し、そして撹拌機のスイッチを切る。ビーカーをパラフィルム(登録商標)で覆い、2日間静置する。2日後、白色沈殿物を再懸濁し、そしてこのスラリーをポリエチレン瓶(1ガロン)中で保存する。このスラリーの最終的なpHは9.13である。
【0127】
いくつかの部分に分けたこのスラリーを遠心管へ量り取り、そして1時間遠心分離する。次いで、得られた上清を0.2ミクロンのポリプロピレンシリンジフィルターを通して濾過する。この上清を分析のために取っておいた。遠心管からの固体ケーキを、強制通風オーブン内で120℃にて一晩乾燥させる。この無水シュウ酸バリウム−ストロンチウムチタニル(BSTO)前駆体の一部を、さらなる特性評価のために取っておく。
【0128】
残りのBSTO粉末を、Thermolyne model 47900電気炉に入れ、800℃にて4時間加熱する。得られたチタン酸バリウム−ストロンチウム(BST)粉末を一晩冷却し、次いで特性評価のため瓶に詰める。
【0129】
(比較例1)
シュウ酸アンモニウムの0.25M水溶液を調製する。この溶液のpHを、28〜30%水酸化アンモニウム溶液を使用して、9.2に調整する。これを「溶液B2」とする。
【0130】
溶液B2(0.25Mシュウ酸アンモニウム)を1,000グラム、パイレックス(登録商標)ビーカー(4リットル)へ量り取る。このビーカーを、温度制御のため温度プローブを取り付けたホットプレート上に置く。温度プローブおよびpHプローブをこの溶液に入れる。テフロン(登録商標)ポリマーでコーティングした機械式撹拌翼を、溶液の底から約1センチメートル上の溶液中央部に入れる。溶液Aを添加する前に、溶液のpHは直ちに下落し始め、アンモニア臭がはっきりと分かる。これらの効果は、溶液からのアンモニアの蒸発によるものである。
【0131】
溶液Aを1,000グラム、テフロン(登録商標)分液漏斗(2リットル)へ量り取る。この漏斗をリングスタンドに入れ、漏斗の先端をパイレックス(登録商標)ビーカー中の溶液B2の表面の上方に配置する。
【0132】
機械式撹拌機を500RPMにセットし、この溶液を80℃まで加熱する。この溶液のpHを、水酸化アンモニウムの28〜30%水溶液を用いて9.0に調整する。溶液Aを、毎秒ほぼ一滴の速度で、分液漏斗から加える。溶液Aを添加する間中、溶液のpHを定期的に調整して、pHを9.0に維持する(アンモニアが失われるために、この添加は、実施例1で用いたTMAHでよりも頻繁に必要である)。溶液Aの添加が始まるほぼ直後から、白色沈殿物が形成し始める。溶液B2への溶液Aの添加は約1時間後に完了する。撹拌しながら、この混合物を80℃にてさらに半時間温浸させる。半時間の温浸の終わりに、ホットプレートのスイッチを切り、混合物を室温まで冷却し、そして撹拌機のスイッチを切る。ビーカーをパラフィルム(登録商標)で覆い、2日間静置する。2日後、白色沈殿物を再懸濁し、そしてこのスラリーをポリエチレン瓶(1ガロン)中で保存する。このスラリーの最終的なpHは9.07である。
【0133】
いくつかの部分に分けたこのスラリーを遠心管へ量り取り、1時間遠心分離する。得られた上清を0.2ミクロンのポリプロピレンシリンジフィルターに通して濾過し、分析のために取っておく。遠心管からの固体ケーキを、強制通風オーブン内で120℃にて一晩乾燥させる。この無水シュウ酸バリウム−ストロンチウムチタニル(BSTO)前駆体の一部を、さらなる特性評価のために取っておく。残りのBSTO粉末を、Thermolyne(登録商標)model 47900電気炉に入れ、800℃にて4時間加熱する。得られたチタン酸バリウム−ストロンチウム(BST)粉末を一晩冷却し、次いで特性評価のため瓶に詰める。
【0134】
実施例1および比較例1から得られた生成物を分析する。結果を以下に示す。
【0135】
(実施例1および比較例1からのチタン酸バリウムストロンチウム(BST)粉末のX線回折)
図2は、本発明および先行技術に従って製造した沈殿物の30〜33度の2シータにおける回折強度を示すX線回折走査図である。図2は、本発明に従って実施例1で調製したBaSr(1−x)TiOの試料、および従来技術に従って比較例1で調製したBaSr(1−x)TiOの試料の30〜33度の2シータの領域における110反射のX線回折図形を示す。図2に示すように、実施例1(本発明の実施形態に従ってシュウ酸TMAを調製に用いた場合)では、X線回折は、BaSr(1−x)TiOの回折図形において、当該チタン酸塩からの110反射に関して単一の回折ピークを示す。これは、Roederら、J. Am Ceram Soc 82[7]1665〜75(1999)による、ほぼBa0.85Sr0.15TiOの組成を有する単相(Ba、Sr)チタン酸塩と一致している。Roederらに記載のように、純粋なBaTiO相は31.49度(2シータ)にピーク最大値を有し、純粋なSrTiO相は32.3度にピーク最大値を有する。実施例1で調製した(Ba、Sr)チタン酸塩中では、このようなピークの形跡は観察されない。これは、シュウ酸TMAの沈殿により、単一ペロブスカイト相においてBa、SrおよびTiを組み合わせることに成功したことを示唆する。図2に示すように、従来技術による比較例1におけるシュウ酸アンモニウムから調製した場合、X線回折は、ほんのわずかなペロブスカイト相を示す。これは、先行技術の方法においては、「真の」チタン酸バリウムストロンチウムを含むペロブスカイト相は、あるとしても非常にわずかしか得られないことを示す。これは、BaSr(1−x)TiOの単一ペロブスカイト相と一致するX線回折図形が観察される、本発明による実施例1の方法とは著しく対照的である。
【0136】
(実施例1および比較例1からのシュウ酸バリウム−ストロンチウムチタニル(BSTO)前駆体の粒度分布)
下記では、粒度分布は、Malvern Zetasizer(登録商標)Nano ZS-90粒度測定器上で測定する。図3〜図6は、平均粒度および粒度分布(PDI(多分散性指数)として報告)のグラフである。図3および図4は、本発明および先行技術に従って製造した沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。図5および図6は、本発明および先行技術に従って製造した再分散後の沈殿物の平均粒度および粒度範囲分布を示すグラフである。
【0137】
シュウ酸アンモニウムおよびシュウ酸TMAからのシュウ酸BST粉末を沈殿させた生成物は、表1および図3〜図6に示すように、粒度分布に大きな違いを示す。比較例1の沈殿物の平均粒度は、実施例1の沈殿物の平均粒度より小さく、937nm対2165nmである。しかしながら、粒度分布(PDI)は、比較例1の沈殿物では実施例1の沈殿物よりもずっと広く、0.243対0.036である。図3および図4を参照されたい。当技術分野で公知のように、より狭い粒度分布を有する粒子を含むスラリーは、濾過および処理において明らかな利点を有し、沈降速度などはより均一性がある。
【0138】
乾燥後、TMAから調製したシュウ酸BST粉末は再分散でき、平均粒度のわずかな上昇を示す。アンモニウムシュウ酸BST粉末は、再分散させると平均粒度においてほぼ4倍の上昇を示す。この効果を図5および図6に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
注:
1.試験したスラリー試料は、遠心分離前に回収した沈殿物のスラリー試料を希釈することにより調製する。
2.乾燥粉末試料は、沈殿物を120℃にて一晩乾燥させ、上清液に再分散させることにより得られる。
3.当技術分野において公知のように、多分散性指数(PDI)とは、試料中の粒度範囲内で特定粒度を有する粒子の相対数の尺度である。
【0141】
(実施例1および比較例1からの上清の分析)
実施例1および比較例1からの上清液を、Beckman SpectraSpanIV(登録商標)を用いて直流プラズマ(DCP)によりバリウム、ストロンチウム、およびチタンに関して分析する。上清中に残存するこれら金属の量により、それぞれの沈殿剤を用いた沈殿方法の効率の相対的な尺度が得られる。上清液の金属含有量が低いほど、反応および沈殿方法の効率が高いと考えられる。
【0142】
【表2】

【0143】
上清液の金属含有量から明らかなように、ジカルボン酸オニウム(この実施例ではシュウ酸テトラメチルアンモニウム)の使用により、上清中の金属含有量が大幅に低下する。これは、本発明の実施形態による実施例1では、比較例1の従来技術の方法で得られる反応および沈殿よりも、より完全な反応およびより効率的な沈殿であることを示す。
【0144】
本発明を特定の実施形態に関して示しかつ記載したが、当業者は、本明細書および添付の図面を読みそして理解すれば、等価な変更および改変を着想し得る。特に上記の完全体(構成要素、アセンブリ、装置、組成物、工程など)が果たす様々な機能に関して、このような完全体を記載するために用いた用語(「手段」に対する言及も含む)は、特に明記しない限り、本明細書で例示した本発明の1つまたは複数の実施形態における機能を果たす開示された構造とたとえ構造的に等価でなくても、記載の完全体の特定の機能を果たす(即ち、機能的に等価な)いかなる完全体にも対応することが意図される。さらに、本発明の特定の特徴は、例示したいくつかの実施形態の1つに関してのみ上に記載したが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途に所望されるかまたは有利となるように、他の実施形態の1つまたはそれ以上の他の特徴と組み合わされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粉末の製造方法であって:
複数の溶液状前駆体材料を提供する工程であって、ここで該複数の溶液状前駆体材料のそれぞれが、セラミック粉末の少なくとも1種の構成要素イオン種をさらに含む、工程;
該複数の溶液状前駆体材料とジカルボン酸オニウム沈殿剤溶液とを合わせて、合わせた溶液中にセラミック粉末前駆体の共沈を生じさせる工程;および
該合わせた溶液から該セラミック粉末前駆体を分離する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記沈殿剤溶液が、アンモニウムイオンを実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(II)を有する第4級オニウムを含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法であって:
【化1】

式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=A基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項4】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(III)を有する第3級スルホニウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法であって:
【化2】

式(III)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項5】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(IV)を有する第3級スルホキソニウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法であって:
【化3】

式(IV)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項6】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(V)を有するイミダゾリウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法であって:
【化4】

式(V)中、RおよびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含む、方法。
【請求項7】
前記ジカルボン酸オニウムが、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、およびテレフタル酸塩の1種またはそれ以上を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ジカルボン酸オニウムが、シュウ酸テトラメチルアンモニウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ジカルボン酸オニウムが、シュウ酸テトラメチルアンモニウムおよび第2のシュウ酸オニウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法であって、該第2のオニウムは、一般式(II)を有し:
【化5】

式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、4〜約20個の炭素原子を含むアルキル基である、方法。
【請求項10】
前記前駆体材料が、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Th、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Si、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ho、Er、Tm、Tb、Th、Pa、U、Np、およびPuの1種のイオンまたは2種もしくはそれ以上の組み合わせのイオンを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック粉末前駆体をか焼してセラミック粉末を形成する工程をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記か焼が、約200℃〜約1500℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記か焼の後に前記セラミック粉末を焼結させる工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記焼結が、約1000℃〜約3000℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック粉末が、沈殿剤として前記ジカルボン酸オニウムを含まない方法により製造されたセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上を含む少なくとも1つの向上した性質を示す、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
セラミック粉末の製造方法であって:
複数の溶液状前駆体材料を提供する工程であって、ここで該複数の溶液状前駆体材料のそれぞれが、セラミック粉末の少なくとも1種の構成要素イオン種をさらに含む、工程、
該複数の溶液状前駆体材料とアンモニウムイオンを実質的に含まないシュウ酸オニウム沈殿剤溶液とを合わせて、合わせた溶液中にセラミック粉末前駆体の共沈を生じさせる工程;
該合わせた溶液から該セラミック粉末前駆体を分離する工程;
分離した該セラミック粉末前駆体をか焼してセラミック粉末を形成する工程;
該セラミック粉末をグリーン体に形成する工程;および
該グリーン体を焼結させる工程、
を含む、方法。
【請求項17】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(II)を有する第4級オニウムを含む、請求項16に記載の方法であって:
【化6】

式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=A基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項18】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(III)を有する第3級スルホニウムを含む、請求項16に記載の方法であって:
【化7】

式(III)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項19】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(IV)を有する第3級スルホキソニウムを含む、請求項16に記載の方法であって:
【化8】

式(IV)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含み、あるいはRとRまたはRとがAと共に、ヘテロ環基を形成し得、但し該ヘテロ環基がC=S基を含む場合、Rは2番目の結合である、方法。
【請求項20】
前記ジカルボン酸オニウムが、一般式(V)を有するイミダゾリウムを含む、請求項16に記載の方法であって:
【化9】

式(V)中、RおよびRは、それぞれ独立して、1〜約20個の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20個を含むヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル基、6〜18個の環炭素原子を含む置換もしくは非置換アリール基またはヒドロキシアリール基であり、置換されている場合、該置換は、前述のアルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキル基のいずれかから選択される1種またはそれ以上の置換基を含む、方法。
【請求項21】
前記ジカルボン酸オニウムが、シュウ酸テトラメチルアンモニウムを含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ジカルボン酸オニウムが、シュウ酸テトラメチルアンモニウムおよび第2のシュウ酸オニウムを含む、請求項16に記載の方法であって、前記第2のオニウムは一般式(II)を有し:
【化10】

式(II)中、Aは窒素またはリン原子であり、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、4〜約20個の炭素原子を含むアルキル基である、方法。
【請求項23】
前記前駆体材料が、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Th、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Si、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Ho、Er、Tm、Tb、Th、Pa、U、Np、およびPuの1種のイオンまたは2種もしくはそれ以上の組み合わせのイオンを含む、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記か焼が、約200℃〜約1500℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記焼結が、約1000℃〜約3000℃の範囲の温度にて、約1分〜約24時間の範囲の時間、行われる、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記セラミック粉末が、沈殿剤として前記ジカルボン酸オニウムを含まない方法により製造されたセラミック粉末と比較して、向上した粒度分布、低下した粒度、減少した金属不純物および向上した粒子形態、向上した組成の均一性、向上した化学量論制御、向上した再分散性、ならびに増大した化学安定性の1つまたはそれ以上を含む少なくとも1つの向上した性質を示す、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−517652(P2011−517652A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503194(P2011−503194)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039389
【国際公開番号】WO2010/011373
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(507374789)サッチェム,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】