説明

ジッタを検出する方法および装置

【課題】 ジッタ検出を行うことのできる改良したジッタ検出装置を提供する。
【解決手段】 ジッタ検出装置は、信号を受信する受信回路1と、受信した信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定する判定回路3と、この判定した信号部分に基づいて信号に関するジッタを検出するジッタ検出回路5と、を備える。判定回路3は、第1のしきい値を発生する第1しきい値設定回路と、第2のしきい値を発生する第2しきい値設定回路と、これら第1と第2のしきい値を使用して、期間信号を発生する期間信号発生回路と、を含み、ジッタ検出回路5は、受信信号に対し上記期間信号にしたがって応答することにより、信号部分を検出する信号部分検出回路を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号におけるジッタを検出する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVDのような光ディスクに記録されたデータの読出しは、光ディスクからの再生信号を二値化し、この二値化して得たデジタル信号における各マークまたはスペースの長さを検出することにより行っている(特許文献1)。このデータ読出しのための二値化は、例えば図1(b)に示す従来のDVDからの再生信号については、スライスレベルとして通常は再生信号のピークピークの中間値を使用している。また、このようにして検出される光ディスクからのデジタル信号におけるジッタの検出も、データ検出と同じスライスレベルを使用して行っている。すなわち、再生信号のピークピークの中間値であるスライスレベルを使って例えばDVDからの再生信号を二値化し、二値化した後のデジタル信号における各マーク/スペースの長さを検出し、この長さにおける変動を調べることによってジッタを測定している。例えば、DVDの場合、3Tから11Tと14Tの周期をもつマーク/スペースが存在する。ここで、Tは、DVDに使用されるクロックの1周期に等しい。このようにして、光ディスクからの信号におけるジッタを測定することにより、光ディスク自体の品質をチェックしたり、光ピックアップにおける光ビームの光軸を調整していた。
【特許文献1】特開2004−295965号公報
【発明の開示】
【0003】
最近、光ディスクとして、HD(High-Definition)DVDのような新たな光ディスク規格が出現してきている。このような光ディスクでは、従来のDVDと比べ記録密度がより一層高くなっている。例えば、HD DVDでは、ETM符号(Eight to Twelve Modulation Code)を使用し、そしてこれからの再生信号は、図1(a)に示すような波形である。図1(b)の従来のEFM符号を用いたDVDからの再生信号と比較すると分かるように、信号振幅のより小さい成分がいくつか存在し、最も振幅が小さい成分は、スライスレベルの近傍にピークを有している。これは、記録密度が高くなると符号間干渉により信号振幅が低下し、更に線密度が高くなると、信号振幅が低下するからである。例えば、最短の2Tのマークまたはスペースの長さでは、信号振幅のピークpは、スライスレベル近傍となってしまう。このような再生信号を生ずる光ディスクからデータを読み出す場合、従来と同じスライスレベルを使用した二値化手法では、スライスレベル近傍では少しの雑音でも多くの識別誤りが発生するため、安定したデータ検出が困難である。したがって、HD DVD規格では、データ読出し法として、PRML(パーシャルレスポンス・最尤(Partial Response and Maximum Likelihood))信号処理手法を使用することが定められている。これに伴い、再生信号評価方法も、ジッタではなく、規格で定められているSbER(Simulated bit Error Rate)とPRSNR(Partial Response Signal to Noise)で評価することとなっている。
しかし、このようなSbERとPRSNRで評価する手法では、ジッタ測定と比べ多くのサンプル数が必要となるため、従来のスライスレベルを使用する方法とくらべ、リアルタイム性が低い。このため、光ディスク関連製品の生産現場では、光ピックアップの光軸調整ステップなどの調整作業が必要であるが、このような調整作業において、細かな各調整毎にSbER又はPRSNRでの評価にある一定のサンプル数が必要なため、調整に時間がかかってしまうという問題がある。また、これにより、製品全体としての生産効率が低くなるという問題も発生する。
【0004】
したがって、本発明の目的は、改良したジッタ検出の方法および装置を提供することである。
また、本発明の別の目的は、上記のジッタ検出の方法を用いたジッタ測定方法、またはジッタ検出装置を用いた電子装置を提供することである。
【0005】
本発明のその他の目的は、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から明らかとなる。
【0006】
本発明の1実施形態によれば、ジッタ検出方法は、信号を受信するステップと、受信した前記信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定する判定ステップと、該判定した前記信号部分に基づいて前記信号におけるジッタを検出するジッタ検出ステップと、を備える。
【0007】
また、本発明の1実施形態によれば、ジッタ検出装置は、信号を受信する受信回路と、受信した前記信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定する判定回路と、該判定した前記信号部分に基づいて前記信号に関するジッタを検出するジッタ検出回路と、を備える。
【0008】
本発明の1実施形態によれば、HD DVDのような高密度な光ディスクからの再生信号からでも、実用上十分な速度および正確さでジッタ検出を行うことができる。また、本発明の1実施形態によれば、簡単な構成でジッタ検出を行うことができる。さらに、本発明の1実施形態によれば、HD DVDのような光ディスク関連製品の生産現場において必要な、ジッタに関連する調整作業をより迅速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の1実施形態によるジッタ検出装置の構成を示すブロック図である。図示のように、このジッタ検出装置は、受信回路1と、信号部分判定回路3と、ジッタ検出回路5とを備えている。詳細には、受信回路1は、光ディスクのような情報記録媒体あるいは通信回線やネットワークのような通信媒体からの信号を入力端子に受け、そして受信信号に対し必要な処理(例えば、自動利得制御(AGC)や等化処理など)を行った後に出力端子に出力する。信号部分判定回路3は、受信回路1の出力から供給される受信信号を受ける入力を有しており、そしてこの受信信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定し、その判定結果を出力に発生する。ジッタ検出回路5は、受信回路1の出力から供給される受信信号を受ける入力と、信号部分判定回路3の出力から供給される判定結果とを受ける入力とを備えている。この結果、ジッタ検出回路5は、判定された信号部分に基づいて受信信号に関するジッタを検出する。
【0010】
より詳細には、信号部分判定回路3は、第1のしきい値である上側しきい値THUを発生する上側しきい値設定回路と、第2のしきい値である下側しきい値THLを発生する下側しきい値設定回路と、これら上側と下側のしきい値を使用して期間信号を発生する期間信号発生回路とで構成することができる。このとき、ジッタ検出回路5は、受信信号に対し上記期間信号にしたがって応答することにより信号部分を検出する信号部分検出回路を含むように構成することができる。
【0011】
ここで、図3を参照して、それら上側しきい値THUと下側しきい値THLとについて説明する。例えば、受信信号がHD DVDからの再生信号であると仮定すると、再生信号は、例えば図3に示すような波形となる。このとき、再生信号のピークピークの中間値をゼロレベルとすると、再生信号は、正または負のピークを有する信号成分c1〜c13を含んでいる。ここで、図示した波形例では、最大の正または負のピークを有する成分は、c1,c2,c5,c13であり、そして次に低いピークを有する成分はc8であり、さらに低いピークを有する成分はc4,c11であり、そして最小のピークを有する成分はc3,c6,c7,c9,c10,c12である。
【0012】
このような場合、図示のゼロレベルをスライスレベルとして二値化すると仮定すると、最小のピークを有する成分はc3,c6,c7,c9,c10,c12で識別誤りが発生する確率が極めて高くなる。さらには、これら最小ピーク成分に隣接する成分の識別誤りの確率も高くなってしまう。例えば、成分c3について考えると、成分c3で発生するマーク/スペース長の識別誤りは、隣接する成分C2およびC4におけるデータ長にも影響を直接与えるため、その識別誤りの確率も高くなってしまう。したがって、本発明の1実施形態のジッタ検出装置では、マーク/スペース長の識別誤りの発生確率が高くない信号部分のみに基づいて信号のジッタ検出を行うようにする。このため、識別誤りの発生確率の高い部分とそうでない部分の識別を信号振幅に基づいて行う。一例として、ゼロレベルに対して上記の上側しきい値THUと下側しきい値THLとを定めて識別誤りの発生確率の高くない信号部分を判定し、そして従来のジッタ検出法と同様にゼロレベルをスライスレベルとして二値化してジッタ検出する手法を採用する。これにより、従来のジッタ検出手法と同様の高速性が実現できる。
【0013】
ここで、上側しきい値THUと下側しきい値THLの設定の仕方についてより詳細に説明する。例えば、これらしきい値を図示の点線の位置に設定したとすると、この場合、最小ピークの成分c3,c6,c7,c9,c10,c12と、これ以外の成分とを識別することができる。また、仮に上側しきい値THUを一点鎖線に示す位置THU’およびTHL’に設定したとすると、最小ピーク成分と次に低いピークをもつ成分c4,c11とを含む信号部分とそれ以外の部分とを識別することができる。HD DVDからの再生信号の例で説明すると、2Tの最短マーク/スペース長の成分のみを判定対象から除外する場合には、それらしきい値は2T成分のピークより大きいが次に長い3T成分のピークより小さいレベル、例えばTHUおよびTHLのようなレベルに設定する。また、2Tだけでなく3Tあるいはそれより長い周期例えば5Tの成分を除外したいときには、しきい値は、5Tのピークよりも大きいが6T成分のピークより小さいレベル、例えばTHU’およびTHL’のようなレベルに設定すればよい。このように、上側しきい値および下側しきい値の大きさは、判定対象から除外したい周期成分に応じて、予めある値に設定したり、あるいは連続的に可変としたりすることができる。
【0014】
次に、図4および図5を参照して、ジッタ検出に使用する信号部分の判定手法の原理について、HD DVD再生信号を例にして説明する。尚、この例では、2Tの最短信号成分の除外を目的としてしきい値を設定している。これら図においては、一番上に符号化信号(光ディスクに記録されているデータ)、その下のその光ディスクからの再生信号の波形、さらには判定に使用するしきい値に関連する信号の波形を示している。先ず、図4の(a)は、再生信号が、スライスレベルを正側からクリアに交差する“クリア交差”の例を示し、(b−1)と(c−1)とは、スライスレベルを正側から非クリアに交差する“非クリア交差”の例を示している。また、負側からスライスレベルを交差する例については、非クリア交差の場合について図4の(b−2)と(c−2)に示している。尚、「クリアに交差する」あるいは「クリア交差」とは、上述の識別誤りの発生確率が高くない状態での交差、そして「非クリアに交差する」あるいは「非クリア交差」とは、識別誤りの発生確率が高い状態での交差を示すものとして使用する。
【0015】
最初に図4(a)を参照すると、2Tより長い周期の成分が連続する場合、例えば正側から負側へとスライスレベルをt2時点でクリアに交差し、クリア交差点cr1が発生する。この場合、スライスレベルを交差する位置の識別誤りの発生確率は低い。ここで、“上側しきい値交差”信号は、再生信号がゼロレベルからより正側へと変化するときに上側しきい値THUを交差するとき立ち上がり、そして正側からゼロレベル側へと変化してそのしきい値を交差するとき立ち下がるとする。一方、“下側しきい値交差”信号は、再生信号がゼロレベルからより負側へと変化するときに下側しきい値THLを交差するとき立ち上がり、そして負側からゼロレベル側へと変化してそのしきい値を交差するとき立ち下がるとする。また、“上側マスク”信号は、識別誤り発生確率が高い信号部分を除外するための信号であって、主として上側しきい値を基準に発生させる信号であり、一方、“下側マスク”信号は、同じく識別誤り発生確率が高い信号部分を除外するための信号であって、主として下側しきい値を基準に発生させる信号である。この図4(a)のクリア交差の場合、再生信号が上側しきい値を交差したt1時点からある一定の時間例えば2Tの時間内のt3時点で、反対側の下側しきい値を交差する。この場合、識別誤り発生確率は高くないため、上側および下側のマスクのいずれも発生させる必要がないためローに留まる。
【0016】
一方、図4(b−1)に示すように、2Tより長い周期成分の後に1つの2T成分が続く場合、再生信号は、正側から上側しきい値を通過するが、スライスレベルを交差した後その近傍で折り返して下側しきい値に達することなく正側に戻る、という非クリア交差が発生する。すなわち、非クリア交差点cr2、cr3が連続する。この場合、スライスレベルに正側から入りそして正側へと出ていくため、“復帰型”の非クリア交差と呼ぶ。このとき、上側しきい値交差信号がローになった時点から2Tの時間内に下側しきい値交差信号がハイにならない。この場合、識別誤り発生確率が高い部分が発生しており、しかもスライスレベルに対し上側から進入する場合なので、上側マスク信号がハイに立ち上がってマスク信号を開始させる。このように、上記2Tの時間内に下側しきい値交差信号がハイになるかならないかで、(a)のクリア交差と(b−1)の非クリア交差の区別ができる。尚、図4(b−1)は、1つの2T成分の場合について示したが、2T成分が奇数個連続するその他の場合にも当てはまる。
【0017】
これに対し、図4の(c−1)に示すように、2Tより長い周期成分の後に2つの2T成分が続く場合、再生信号は、正側から上側しきい値を通過し、そしてスライスレベル近傍で変化してスライスレベル交差を繰り返した後に下側しきい値を通過する、という非クリア交差が発生する。すなわち、非クリア交差点cr4,cr5,cr6,cr7が連続する。この場合、スライスレベルに正側から入りそして負側へと出ていくため、“非復帰型”の非クリア交差と呼ぶ。このとき、上側しきい値交差信号がローになった時点からから2Tの時間内に下側しきい値交差信号がハイにならず、その2T時間の経過後にハイになる。この場合も識別誤り発生確率が高い部分が発生しており、しかもスライスレベルに対し上側から進入する場合なので、上側マスク信号がハイに立ち上がってマスク信号を開始させる。このように、上記2Tの時間内に下側しきい値交差信号がハイになるかならないかで、(a)のクリア交差と(c−1)の非クリア交差の区別ができる。
【0018】
図4(b−1)と(c−1)の場合、一旦開始させたマスク信号は、次に図4(a)に示すようなクリア交差が発生するまで存続させ、そしてスライスレベルを交差する直前、例えば上側しきい値を交差する時点(図4(a)のt1)で終了させる。これにより、最短周期成分に発生する識別誤りにより影響を受ける周期成分を全て、ジッタ判定対象から除外することができる。具体的に説明すると、図4(c−1)の場合、2個の2T周期成分に後に2Tより長い周期成分cxが続くため、この周期成分cxでt5時にクリア交差点cr8が発生している。しかし、ここでのクリア交差は、負側から正側へのものであり、マスク発生開始直前の再生信号の極性とは逆極性になるため、t5の直前のt4時に上側マスクを終了させると、マスクした結果の再生信号がt4時点の直後に状態変化を起こしてしまうので、マスクに起因したスライスレベル交差が発生する。このようなマスクに起因したスライスレベル交差は、ジッタ検出にとって発生させるべきではない。したがって、マスクは、図4(c−1)においては、同一極性側すなわち正側のしきい値交差時点、例えばt6時あるいはt7時に終了させる。ただし、t7の直後に図4(a)に示すようなクリア交差が発生することが条件である。尚、図4(c−1)では、2T成分が2個続く場合について示したが、2個以外の偶数個連続する場合も同様に当てはまる。
【0019】
次に、図5の(d)は、非復帰型の非クリア交差が連続する場合、すなわち2T成分が2個連続した後に2Tより長い成分が1つ続き、その後に再び2T成分が2個連続する場合を示している。この場合、図4(c−1)の場合と異なって、連続する4つの非クリア交差点cr10〜cr13と、次に連続する4つの非クリア交差点cr14〜cr17との間にはクリア交差は発生せず、後者のクリア交差点の後のt10時にクリア交差点cr18が発生する。この場合も、t8時に上側マスク信号がハイになった後、t10時に図4(a)と同様のクリア交差が発生するため、その直前のt9時までハイに保つ。
【0020】
尚、図には示さないが、復帰型の非クリア交差が連続する場合は、図4(b−1)と同様に処理することで対処できる。
次に、図6を参照して、図4および図5に説明した判定原理を具体化した1実施形態のジッタ検出装置について説明する。図示のように、このジッタ検出装置は、図2の受信回路1に対応するものとして自動利得制御回路(AGC)10と等化器(EQ)12とを備え、ジッタ検出回路5に対応するものとして二値化回路50,ラッチ52およびジッタ判定回路54とを備え、そして信号部分判定回路3に対応するものとしてマスク信号発生器30を備えている。従来のジッタ検出装置との違いについて簡単に説明すると、本実施形態のジッタ検出装置において、AGC10、二値化回路50およびジッタ判定回路54を含む回路部分は、従来のDVDと同様にスライスレベルを使用してジッタ検出を行う回路である。一方、等化器12はHD DVDからの再生信号に特有の等化処理を行うための回路であり、ラッチ52は、信号部分を抽出するための回路であり、そしてマスク信号発生器30は、その信号部分を判定するための信号を発生する回路であり、これら回路12,52,30を備えている点が従来のジッタ検出装置と相違している。
【0021】
詳細には、AGC10は、HD DVDからの再生信号を自動利得制御することによって、再生信号のピークピーク値を一定に制御する。AGC10からの信号を受ける等化器12は、HD DVDからのこの再生信号を、PRML信号処理技術における用いるPR(パーシャルレスポンス)特性、すなわち規格で決められた特性に合わせるための処理を行う回路であり、当該分野ではよく知られた回路である。次に、等化器12から出力された等化後の再生信号は、二値化回路50によってゼロレベルをスライスレベルとして使用して二値化する。ラッチ52は、この結果の二値化信号SBを受け、そしてマスク信号発生器30からのマスク信号MSTに応答してその二値化信号をラッチする。すなわち、ラッチ52は、マスク信号が存在する間の二値化信号部分を無視することによって、マスク信号が存在しない間の信号部分を抽出する。次のジッタ判定回路54は、この抽出された信号部分であるラッチ出力SLから従来周知の方法でジッタ判定を行う。ジッタ判定の方法としては、二値化信号における各マーク/スペースの長さを計測してその変化を判定するパルス幅計測法、マーク/スペースのエッジと同期クロックのエッジとの位相差を計測して判定するデータ・ツー・クロック法などが知られている。
【0022】
次に、図7も参照してマスク信号発生器30の詳細について説明すると、この発生器30は、上側しきい値交差検出部300と、下側しきい値交差検出部302と、上側マスク発生部304と、下側マスク発生部306と、およびマスク発生部308とを備えている。詳細には、上側しきい値交差検出部300は、AGC10の出力であるHD DVD再生信号(図7(b)参照)を受ける二値化回路3000と上側しきい値設定回路3002とを備え、一方、下側しきい値交差検出部302は、同じくAGC10からの出力を受ける二値化回路3020と下側しきい値設定回路3022とを備えている。図4および図5で原理を説明したように、二値化回路3000は、上側しきい値設定回路3002から受ける上側しきい値THUを使用してAGC出力に対し二値化処理を行い、そしてその結果を、図4で説明したように、上側しきい値交差信号CTHU(図7(c))として出力する。この交差信号CTHUは、上側しきい値をゼロレベル側から正に交差したときにハイとなり、そしてその反対方向に交差したときローとなる。一方、二値化回路3020は、下側しきい値設定回路3022から受ける下側しきい値THLを使用してAGC出力に対し二値化処理を行い、そしてその結果を下側しきい値交差信号CTHL(図7(d))として出力する。この交差信号CTHLは、下側しきい値をゼロレベル側から負に交差したときにハイとなり、そしてその反対方向に交差したときローとなる。尚、本実施形態では、上側しきい値と下側しきい値は、最短の2T成分を少なくとも除外するように設定している。ただし、それより長い周期成分まで少なくとも除外するように設定したり、あるいはしきい値を動作中に可変させたりするようにできることは、上述した通りである。
【0023】
次に、上側マスク発生部304は、遅延回路3040と、フリップフロップ(F/F)3042とおよびORゲート3044とを備えており、同様に、下側マスク発生部306も、遅延回路3060と、フリップフロップ(F/F)3062とおよびORゲート3064とを備えている。詳細には、遅延回路3040と3060とは、それぞれ受ける上側または下側のしきい値交差信号CTHU、CTHLを受けて一定の時間遅延させ、そしてそれを遅延上側しきい値交差信号CTHUD(図7(e))あるいは遅延下側しきい値交差信号CTHLD(図7(f))として出力する。本実施形態では、少なくとも除去する周期成分は最短の2T成分であるため、これら遅延回路における遅延量は2Tである。この遅延量は、図4および図5で説明したように、クリア交差と非クリア交差とを識別するのに使用する。尚、2Tより長い成分まで除去する場合には、除去した最大の成分の周期に等しい長さの遅延を設定すれば良い。
【0024】
次に、ORゲート3044は、下側しきい値交差信号CTHLを一方の入力に受け、他方の入力にはF/F3062からの下側マスク信号MSLを受け、そして出力に上側マスク禁止信号INHU(図7(g))を発生する。上側マスク禁止信号INHUは、図4からも分かるように、下側しきい値交差信号CTHLがハイの状態にあること(これは、再生信号が下側しきい値THLより負側にあることを示す)、または下側マスク信号MSLがハイのとき(これは、反対側である下側のマスクが発生中であることを示す)、上側マスク信号の発生を禁止する。したがって、上側マスク信号の発生が許可されるのは、下側しきい値交差信号CTHLがローの状態にあり、かつ下側マスク信号MSLが発生されていないことである。同様に、ORゲート3064は、上側しきい値交差信号CTHUを一方の入力に受け、他方の入力にはF/F3062からの上側マスク信号MSUを受け、そして出力に下側マスク禁止信号INHL(図7(h))を発生する。上側マスク禁止信号INHUで説明したのと同様に、下側マスク禁止信号INHLは、上側しきい値交差信号CTHUがハイの状態にあること(これは、再生信号が上側しきい値THUより正側にあることを示す)、または上側マスク信号MSUがハイのとき(これは、反対側である上側のマスクが発生中であることを示す)、下側マスク信号の発生を禁止する。したがって、下側マスク信号の発生が許可されるのは、上側しきい値交差信号CTHUがローの状態にあり、かつ上側マスク信号MSUが発生されていないことである。
【0025】
次に、F/F3042は、データ(data)入力端子に上側マスク禁止信号INHUを受け、反転クロック端子に遅延上側しきい値交差信号CTHUDを受け、そして反転クロック端子の信号がハイに立ち上がったときのデータ入力に存在する信号の反転したものを、Q*(“*”は反転を示す)端子に発生し、これが上側マスク信号MSU(図7(i))となる。すなわち、この上側マスク信号は、遅延上側しきい値交差信号CTHUDがローに立ち下がったときに、上側マスク禁止信号INHUがローのとき、上側マスク信号MSUを発生する。同様に、F/F3062は、データ(data)入力端子に下側マスク禁止信号INHLを受け、反転クロック端子に遅延下側しきい値交差信号CTHLDを受け、そしてQ*(“*”は反転を示す)端子に下側マスク信号MSL(図7(j))を発生する。この下側マスク信号は、遅延下側しきい値交差信号CTHLDがローに立ち下がったときに、下側マスク禁止信号INHUがローのとき、下側マスク信号MSLを発生する。
【0026】
次のマスク発生部308は、ORゲート3080とタイミング調整回路3082とを備えている。ORゲート3080は、上側マスク信号MSUと下側マスク信号MSLの2つの入力を受け、そして出力にそれらの論理和としてマスク信号MS(図7(k))を発生する。このマスク信号は、これがマスクすべき再生信号に対しては2Tの時間だけ遅延している(遅延回路3040、3060による遅延)が、再生信号も等化回路で遅延しているので、二値化信号SBとマスク信号MSのタイミングを合わせるため、タイミング調整回路3082では、マスク信号MSが二値化信号SBより進んでいる場合は遅延させることによって時間調整後のマスク信号MSTを発生する。これが、ラッチ52に供給される。尚、マスク信号MSが二値化信号SBより遅れる場合は、二値化回路50とラッチ回路52との間に遅延回路を挿入するように変更すれば良い。
【0027】
次に、図7を詳細に参照して、図6のマスク信号発生器30部分の動作について詳しく説明する。図7のタイミング図に示したHD DVD再生信号には、クリア交差1およびクリア交差2を含むクリア交差、復帰型非クリア交差1、非復帰型の非クリア交差、復帰型非クリア交差2が含まれており、これらについて説明する。先ず、負側から正側へのクリア交差1の場合、この場合は下側マスクを発生させる必要がない場合であるが、このとき、遅延下側しきい値交差信号CTHLDがt11時点で立ち下がったとき、下側マスク禁止信号INHLがハイ(t11時での立ち下がり時に上側しきい値交差信号CTHUがハイ(ただし、上側マスク信号MSUはロー))でマスク発生を禁止しているため、下側マスクはローのままである。クリア交差2の場合は、上側マスクを発生させるか否かであるが、同様に発生させない。次に、復帰型非クリア交差1の場合、このときは負側から開始するため、下側マスクMSLを発生させる必要がある。このときは、遅延下側しきい値交差信号CTHLDがt12時点で立ち下がったとき、下側マスク禁止信号INHLがロー(t12時でのその立ち下がり時に上側しきい値交差信号CTHUがロー)でマスク発生を禁止していないため、下側マスクMSLをハイにしてマスク信号を開始させる。次に、t13時点で遅延下側しきい値交差信号CTHLDが立ち下がったとき、下側マスク禁止信号INHLがハイ(t13時に上側しきい値交差信号CTHUがハイ)でマスク発生を禁止しているため、下側マスクMSLをローにしてマスク信号を終了させる。
【0028】
次に、非復帰型の非クリア交差の場合、この場合は正側から開始するため、上側のマスクを発生させる必要がある。すなわち、t14時に遅延上側しきい値交差信号CTHUDが立ち下がったとき、上側マスク禁止信号INHUがロー(t14時でのその立ち下がり時に下側しきい値交差信号CTHLがロー)でマスク発生を禁止していないため、上側マスクMSUをハイにして開始させる。その後、遅延上側しきい値交差信号CTHUDの次の立ち下がりはt16時点で発生するが、このとき、上側マスク禁止信号INHUがハイ(t16時に下側しきい値交差信号CTHLがハイ)でマスク発生を禁止しているため、上側マスクMSUをローにして上側マスクを終了させる。最後の復帰型の非クリア交差2は、最初に説明した復帰型非クリア交差1とは極性は逆であるが、同様の動作で上側マスクを発生させる。尚、t15時点では、遅延下側しきい値交差信号CTHLDが立ち下がる。このとき、下側マスク禁止信号INHLはハイとなる。理由は、t15時点において、上側しきい値交差信号CTHUがハイであるからである。
【0029】
次に、図8を参照して、非復帰型の非クリア交差が連続して発生する場合の動作について説明する。この場合、図7の非復帰型の非クリア交差の時点t14と同じ動作が、時点20において発生し、上側マスクMSUがハイになる。また、図8の例の場合も、図7の時点t15に相当する時点t21において、遅延下側しきい値交差信号CTHLDが立ち下がる。このとき、下側マスク禁止信号INHLがハイとなる。理由は、t21時において、上側しきい値交差信号CTHUはローであるが、図7の例と異なって上側マスク信号MSUがハイとなっている。このため、下側マスクの発生が禁止され、下側マスクMSLはローのままである。その後の動作は、図7の場合と同じである。このように、上側マスクと下側マスクのうちの一方が発生している間は、他方のマスクは不要であるため、その発生を阻止する。
【0030】
以上のようにして発生させたマスク信号は、タイミング調整回路3082により二値化信号SBとタイミングを合わせたマスク信号MSTを発生する。このマスク信号MSTを受けるラッチ52は、マスク信号がハイに立ち上がったときの二値化信号SBの状態をラッチしてマスク信号がハイに留まる限りそのラッチした状態を出力するが、マスク信号がその後にローに立ち下がったとき、ラッチ動作を中止して入力に受けた信号をそのまま出力に発生する。これが、ラッチ出力SLである。これにより、マスクが存在する間の再生信号を無視して、再生信号の一部分である信号部分を抽出することができる。
【0031】
次に、図9のフローチャートを参照して、図6のマスク信号発生器30をソフトウェアで実現する方法について説明する。尚、このフローチャートでは、図6の回路中に現れる信号に対応する変数は、説明の都合上、それら信号の名称と同じ記号を使用することにする。先ず、ステップ900において、HD DVD再生信号の1つのサンプルを取得してAとする。尚、このフローは、HD DVD再生信号の1つのサンプルを取得する度に実行する。
【0032】
次に、ステップ902〜908で、上側しきい値変数THUから上側しきい値交差変数CTHUを発生するが、これは、図6の上側しきい値交差検出部300の機能に対応している。すなわち、ステップ902で、上側しきい値としてある値を変数THUにセットする。ステップ904で、再生信号サンプルAがこの上側しきい値変数THU以上かどうか判定し、YESのときステップ906で、上側しきい値交差変数CTHUをハイすなわち“1”にセットする。NOのときは、ステップ908でローすなわち“0”にセットする。
【0033】
次に、ステップ910〜916で、下側しきい値変数THLから下側しきい値交差変数CTHLを発生するが、これは、図6の下側しきい値交差検出部302の機能に対応している。詳しくは、ステップ910で、下側しきい値としてある値を変数THLにセットし、そしてステップ912で、サンプルAがTHL以下かどうか判定し、YESの場合、ステップ914で下側しきい値交差変数CTHLを“1”にセットし、一方NOのときステップ916で変数CTHLを“0”にセットする。
【0034】
次に、ステップ918〜926で、上側しきい値交差変数CTHUから遅延上側しきい値交差変数CTHUDを設定するが、これは、図6の遅延回路3040の機能に対応している。すなわち、上側しきい値THUが3T周期成分の振幅未満かどうか判定し、そしてYESの場合ステップ920で上側しきい値交差変数を2Tの期間遅延させる(例えば、再生信号に同期したクロックを使用し、2Tの期間遅延させる。そしてNOのとき、ステップ922でTHUが(n−1)Tの周期成分の振幅未満かどうか判定する。但し、nは、5より大きい整数である。このステップ922で、YESのときステップ924で、上側しきい値交差変数を(n−1)Tの大きさだけ遅延させ、そしてNOのとき、ステップ926でその変数をnTの大きさだけ遅延させて、その結果を遅延上側しきい値交差変数CTHUDとする。次に、ステップ928〜936では、ステップ918〜926と同様にして、下側しきい値交差変数CTHLから遅延上側しきい値交差変数CTHLDを設定する(図6の遅延回路3060の機能に対応する)が、ステップ918〜926と同様にして行えるため、説明は省略する。ここで、HD DVD再生信号の場合、信号成分は、2T〜11T,13Tの周期を有し、そして最小振幅は2Tで、3T,4Tと振幅が大きくなり、そして5Tで最大振幅に達し、6T以降は13Tでもその最大振幅のままで変わらない。しかし、5T,6T,7Tは最大振幅が同じ信号成分であるが、遅延量を変化させることによりそれらを区別できるため、2Tから5Tまで、2Tから6Tまで、2Tから7Tまでを区別して検出することができる。この点は、図6の遅延回路3040および3060において設定する遅延量についても同様である。また、図9のフローにおいて、上側と下側で類似のステップを重複して設けているのは、上側しきい値と下側しきい値が同じ絶対値を有する場合だけでなく、異なった絶対値を有する場合も考慮しているからである。例えば、シンメトリがずれた、すなわち正のピークと負のピークの中間値がゼロレベルとならない再生信号のジッタを検出したい場合である。
【0035】
次に、ステップ938〜942で、上側マスクの設定を行うが、これは、図6のORゲート3044とF/F3042の機能に対応している。すなわち、ステップ938で、遅延上側しきい値交差変数CTHUDがハイからローへの遷移時に、下側しきい値交差変数CTHLが“0”でかつ下側マスク変数MSLが“0”かどうか判定し、そしてYESのとき、ステップ940で上側マスク変数MSUをハイにして、この時点でまだ上側マスクが発生していないときには上側マスクを開始させ、そしてすでに上側マスクを開始させた後であるときはその上側マスクを維持する。一方、ステップ938でNOのとき、ステップ942で上側マスク変数MSUをローにして、既に上側マスクが発生しているときには上側マスクを終了させる。
【0036】
同様にして、ステップ944〜948で、下側マスクの設定を行うが、これは、図6のORゲート3064とF/F3062の機能に対応している。尚、処理は、ステップ938〜942の場合と基本的に同じであり、異なっている点は、ステップ944において、遅延上側しきい値交差変数CTHUDのハイからローへの遷移時ではなく、遅延下側しきい値交差変数CTHLDのハイからローへの遷移時であり、そして、上側しきい値交差変数CTHUが“0”でかつ上側マスク変数MSUが“0”の条件が満たされるかどうか判定する点である。このようにして、下側マスクMSLの開始または終了が実現される。最後に、ステップ950で、上側マスク変数MSUと下側マスク変数MSLの論理和をとることによってマスク変数MSを生成する。この処理は、図6のORゲート3080に対応している。
【0037】
以上に説明した動作を、HD DVD再生信号の各サンプル毎に繰り返すことにより、図6、図7および図8で説明した動作を実現することができる。
次に、図10を参照して、図2に示したジッタ検出回路の別の実施形態について説明する。図6では、ラッチ回路52を二値化回路50の後に配置しているが、図10の実施形態では、ホールド回路56を二値化回路50aの前に置き、ジッタ判定回路54aが二値化回路50aからの出力を受けるように構成している。このとき、図6のラッチ回路52の代わりに、図10では、ホールド回路56が図6の等化器12の出力とマスク信号発生器30からのマスク信号MSTを受けるように構成する。このとき、ホールド回路56は、マスク信号MSTがハイになったときの等化器出力をホールドして出力に発生し、そしてマスク信号MSTがローになったとき、等化器出力をそのまま出力に発生する。この構成によっても、HD DVD再生信号の1部分を抽出することができる。二値化回路50aとジッタ判定回路54aは、図6のものと同じ構成のもので良い。
【0038】
次に、図11を参照して、図2に示したジッタ検出回路のさらに別の実施形態について説明する。この実施形態が、図6の実施形態のジッタ検出回路と異なっているのは、マスク信号を受けるのが、ラッチではなくジッタ判定回路54bである点である。ジッタ判定回路54bは、このマスク信号を受けることにより、HD DVD再生信号の一部分を抽出するのではなく、ジッタ判定動作を制御して、実質上、再生信号の一部分のみに基づいてジッタ検出を行う。さらに、この図11の実施形態は、図10に示したジッタ検出回路にも同様に適用して、ホールド回路56ではなくジッタ判定回路54aがマスク信号を受けるように構成することも可能である。
【0039】
次に、図12を参照して、上述した本発明の実施形態のジッタ検出装置を備えたジッタ測定装置について説明する。このジッタ測定装置は、ジッタ検出装置からのジッタ判定出力を受ける表示/出力部を備えている。ジッタ検出装置からの出力は、表示/出力部における表示形態あるいは出力形態に応じた形態をとるようにすることができる。例えば、ジッタ判定出力は、各マーク/スペース長の幅を統計処理する形態としたり、あるいは前述のようにマーク/スペースのエッジとクロックのエッジとの差を統計処理する形態とすることができる。表示/出力部は、受けたジッタ判定出力をディスプレイあるいはプリンタなどの出力装置に対し、ユーザの選択に応じて出力する。
【0040】
最後に、図13を参照して、上述の本発明の実施形態のジッタ検出装置を備えた電子装置について説明する。この電子装置として、光ピックアップ、光ディスク・ドライバ、光ディスク・プレーヤ等の光ディスク関連の装置などが含まれる。また、PRML信号処理技術を利用する装置であれば、通信装置などのその他の装置も含まれる。このような電子装置に、上述の本発明の実施形態のジッタ検出装置を設けることにより、電子装置内で、ジッタの影響を除去する等のためのジッタ処理を、より高速であるいは簡単な回路構成で実現することができる。
【0041】
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明した。しかし、上記実施形態のジッタ検出装置は、HD DVDのような記録媒体だけでなく、HD DVDと同様の信号形態を利用する他の情報記録媒体、例えば磁気ディスクからの信号のジッタ検出にも同様に適用することができる。また、上述したように、上記実施形態のジッタ検出装置は、PRML手法が使われる他の分野、例えば通信回線やネットワーク等の通信媒体からの信号にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)はHD DVDからの再生信号の波形例を示し、(b)はDVDからの再生信号の波形例を示す図。
【図2】図2は、本発明の1実施形態によるジッタ検出装置の構成を示すブロック図。
【図3】図3は、HD DVD再生信号に含まれる種々の信号成分と、これに対するスライスレベル、上側しきい値および下側しきい値との関係について示す図。
【図4】図4は、HD DVD再生信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を判定する手法を原理的に説明するための図であって、(a)はクリア交差の場合、(b−1)および(b−2)は復帰型の非クリア交差の場合、(c−1)および(c−2)は非復帰型の非クリア交差の場合を示す。
【図5】図5は、図4と同様の図であって、(d)は非復帰型の非クリア交差が連続する場合を示す。
【図6】図は、図4および図5に説明した判定原理を具体化した1実施形態のジッタ検出装置を示すブロック図。
【図7】図7は、図6の装置内の各部の信号波形を示すタイミング図。
【図8】図8は、図5に示した非復帰型の非クリア交差が連続して発生する場合における、図6の装置内の各部の信号波形を示すタイミング図。
【図9】図9は、図6のマスク信号発生器30が実現する機能と同じ機能を実現するプログラムのフローチャート。
【図10】図10は、図2に示したジッタ検出装置内のジッタ検出回路の別の実施形態を示すブロック図。
【図11】図11は、図2に示したジッタ検出装置内のジッタ検出回路のさらに別の実施形態を示すブロック図。
【図12】図12は、本発明の実施形態のジッタ検出装置を備えたジッタ測定装置を示す図。
【図13】図13は、本発明の実施形態のジッタ検出装置を備えた電子装置を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1 受信回路
3 信号部分判定回路
5 ジッタ検出回路
30 マスク信号発生器
300 上側しきい値交差検出部
302 下側しきい値交差検出部
304 上側マスク発生部
306 下側マスク発生部
308 マスク発生部
c1〜c13 信号成分
cr1,cr8 クリア交差点
cr2〜cr7 非クリア交差点
cr10〜cr17 非クリア交差点
cr18 クリア交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受信するステップと、
受信した前記信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定する判定ステップと、
該判定した前記信号部分に基づいて前記信号におけるジッタを検出するジッタ検出ステップと、
を含むジッタ検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記判定ステップは、
第1と第2のしきい値を定めるステップと、
前記第1と第2のしきい値を使用して、期間信号を発生するステップと、
を含み、
前記ジッタ検出ステップは、
前記受信信号に対し前記期間信号にしたがって応答することにより、前記信号部分を検出するステップ、
を含む、ジッタ検出方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記期間信号を発生するステップは、
前記受信信号を前記第1しきい値で二値化して第1二値化信号を発生するステップと、
前記受信信号を前記第2しきい値で二値化して第2二値化信号を発生するステップと、
前記第1二値化信号と前記第2二値化信号からマスク信号を発生する処理ステップであって、該マスク信号は、前記受信信号のうちの前記信号部分である第1信号部分以外の第2信号部分が存在する期間を表す、前記の処理ステップと、
を含み、
前記信号部分を検出するステップは、
前記マスク信号を使用して、前記受信信号から前記第1信号部分を抽出する抽出ステップ、
を含む、ジッタ検出方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記受信信号は、正と負の最大振幅値を有し、また該最大振幅値より小さい第1振幅値以下の振幅を有する信号成分を含み、
前記第1しきい値は、前記正の最大振幅値と正の前記第1振幅値との間の値を有し、
前記第2しきい値は、前記負の最大振幅値と負の前記第1振幅値との間の値を有する、
ジッタ検出方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記処理ステップは、
前記受信信号が前記第1および第2のしきい値のうちの一方のしきい値を、第1極性方向に交差するという第1の状態が発生したか否かを、前記第1および第2の二値化信号のうちの関連する一方の二値化信号に基づいて判定するステップと、
前記第1状態が発生したとき、該第1状態が発生した第1時点から所定の時間内に、前記受信信号が他方のしきい値を前記第1極性方向に交差するという第2の状態が発生したか否かを、他方の二値化信号に基づいて判定するステップと、
前記所定時間内に前記第2状態が発生しなかったとき、前記マスク信号を開始させるステップと、
別の前記第1状態が発生し、かつ該第1状態が発生した第3時点から前記所定時間内に別の前記第2状態が発生する、という第3状態が発生したか否かを判定するステップと、
前記第3状態が発生したとき、前記マスク信号を前記第3時点で終了させるステップと、
を含む、ジッタ検出方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記処理ステップは、
一旦前記マスク信号を開始させた後は、該マスク信号を終了させるまでは、別のマスク信号の発生を阻止するステップ、
を含む、ジッタ検出方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のジッタ検出方法を使用してジッタを測定するジッタ測定方法。
【請求項8】
信号を受信する受信回路と、
受信した前記信号のうちのジッタ検出に使用する信号部分を、信号振幅に基づいて判定する判定回路と、
該判定した前記信号部分に基づいて前記信号に関するジッタを検出するジッタ検出回路と、
を備えたジッタ検出装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記判定回路は、
第1のしきい値を発生する第1しきい値設定回路と、
第2のしきい値を発生する第2しきい値設定回路と、
前記第1と第2のしきい値を使用して、期間信号を発生する期間信号発生回路と、
を含み、
前記ジッタ検出回路は、
前記受信信号に対し前記期間信号にしたがって応答することにより、前記信号部分を検出する信号部分検出回路、
を含む、ジッタ検出装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記期間信号発生回路は、
前記受信信号を、前記第1しきい値で二値化して第1二値化信号を発生する第1二値化回路と、
前記受信信号を、前記第2しきい値で二値化して第2二値化信号を発生する第2二値化回路と、
前記第1二値化信号と前記第2二値化信号からマスク信号を発生する処理回路であって、該マスク信号は、前記受信信号のうちの前記信号部分である第1信号部分以外の第2信号部分が存在する期間を表す、前記の処理回路と、
を含み、
前記信号部分検出回路は、
前記マスク信号を使用して、前記受信信号から前記第1信号部分を抽出する抽出回路、
を含む、
ジッタ検出装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記受信信号は、正と負の最大振幅値を有し、また該最大振幅値より小さい第1振幅値以下の振幅を有する信号成分を含み、
前記第1しきい値は、前記正の最大振幅値と正の前記第1振幅値との間の値を有し、
前記第2しきい値は、前記負の最大振幅値と負の前記第1振幅値との間の値を有する、
ジッタ検出装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記処理回路は、
前記第1二値化信号を所定時間だけ遅延させた第1遅延二値化信号を発生する第1遅延回路と、
前記第2二値化信号を前記所定時間だけ遅延させた第2遅延二値化信号を発生する第2遅延回路と、
前記第1および第2の二値化信号と、前記第1および第2の遅延二値化信号とを受けるように接続されており、第1と第2のマスク信号を発生する第1論理回路であって、
a.前記受信信号が前記第1および第2のしきい値のうちの一方のしきい値を、第1極性方向に交差するという第1の状態が発生したか否かを、前記第1および第2の二値化信号のうちの関連する一方の二値化信号に基づいて判定し、
b.前記第1状態が発生したとき、該第1状態が発生した第1時点から前記所定時間内に、前記受信信号が他方のしきい値を前記第1極性方向に交差するという第2の状態が発生したか否かを、他方の二値化信号と前記第1および第2の遅延二値化信号のうちの関連する一方の遅延二値化信号とに基づいて判定し、
c.前記所定時間内に前記第2状態が発生しなかったとき、前記第1および第2のマスク信号のうちの関連する一方のマスク信号を開始させ、
d.別の前記第1状態が発生し、かつ該第1状態が発生した第3時点から前記所定時間内に別の前記第2状態が発生する、という第3状態が発生したか否かを判定し、
e.前記第3状態が発生したとき、前記一方のマスク信号を前記第3時点で終了させる
よう動作する前記の第1論理回路と、
前記第1および第2のマスク信号から前記マスク信号を発生する第2論理回路と、
を含む、ジッタ検出装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記第1論理回路は、
前記第1遅延二値化信号と、前記第2二値化信号と、前記第2マスク信号とを受け、前記第1マスク信号を発生する第1マスク信号発生論理回路と、
前記第2遅延二値化信号と、前記第1二値化信号と、前記第1マスク信号とを受け、前記第2マスク信号を発生する第2マスク信号発生論理回路と、
を含み、
前記第1論理回路は、一旦前記一方のマスク信号を開始させた後は、該一方のマスク信号を終了させるまでは、他方のマスク信号の発生を阻止する、
ジッタ検出装置。
【請求項14】
請求項10記載の装置において、
前記ジッタ検出回路は、さらに、
前記受信信号を第3のしきい値と比較して二値化することにより第3の二値化信号を発生する第3二値化回路であって、前記抽出回路が、前記第3二値化信号から前記第1信号部分を抽出する、前記の第3二値化回路と、
前記抽出回路が前記第3二値化信号から抽出した前記第1信号部分を使用して、前記受信信号のジッタを判定するジッタ判定回路と、
を含む、ジッタ検出回路
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記抽出回路は、
前記マスク信号が存在する期間中、前記第3二値化信号の大きさを変化させることにより前記第1信号部分を発生する回路を含む、
ジッタ検出装置。
【請求項16】
請求項10記載の装置において、
前記第2信号部分は、前記受信信号における最短の周期成分を少なくとも含む、ジッタ検出装置。
【請求項17】
請求項8記載の装置において、
前記信号は、情報記録媒体からの信号である、ジッタ検出装置。
【請求項18】
請求項8から17のいずれかに記載のジッタ検出装置を備えた電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−8811(P2008−8811A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180702(P2006−180702)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000115603)リーダー電子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】