説明

ジッタバッファ制御

本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法は、アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータのコンテキスト記述を検出する(S1)。その後、検出されたコンテキスト記述が所定のコンテキスト記述と等しいかどうかが判定される(S2)。等しくない場合、ジッタバッファアダプテーションは、正常として進む(S3)。そうでない場合、現在の目標深度が、検出されたコンテキスト記述に対して浅すぎないかどうかが判定される。浅すぎない場合、目標バッファ深度は、現在の値にフリーズされる(S5)。そうでない場合、目標バッファ深度は上げられ、そして、検出されたコンテキスト記述と互換性のあるより高い値にフリーズされる(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、アダプティブ(適合)ジッタバッファ(adaptive jitter buffer)の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
任意のIP(インターネットプロトコル)ベースの通信システムにおいては、いわゆる遅延ジッタを処理する必要がある。遅延ジッタは、IPエンドポイントへのパケットの不均一な搬送レートによって発生し、パケット搬送タイミングの変動は、様々な理由によって発生する。例としては、共有チャネルを使用するアクセスタイプにおける、負荷変動、高負荷による、ルータ内での処理時間の変動がある。この共有チャネルには、例えば、HSPA(高速パケットアクセス)及びWLAN(ワイヤレスローカルエリアネットワーク)等がある。すべてのIPベースのシステムは、このような類の振る舞いを示し、いくつかの場合では、他のシステムでも同様である。
【0003】
音声デコーダは、音声信号を処理し再現するために、定期的な間隔で搬送される、均等なパケットのフローを必要とする。この均等なレートを維持することができない場合、直前のフレームの後に早すぎて搬送される符号化音声フレームが損失する可能性があり、また、音声フレームがかなり遅延して搬送される場合には、誤り隠蔽(error concealment)が音声を再現するために使用されることになる。どちらの場合も、音声品質を低下させる結果となる。
【0004】
VoIP(ボイスオーバIP)サービスは、いわゆるジッタバッファは、音声フレームレートイコライザーとして動作するために、パケット受信エンティティと音声デコーダとの間で使用される。このバッファが十分な深度がある場合、変動あるいは遅延ジッタは、そのバッファによって処理されることになり、また、符号化音声フレームを、均等なレートで音声デコーダに搬送することができる。
【0005】
ジッタバッファに伴う欠点は、バッファ深度が遅延ジッタよりも大きい場合に、不必要な遅延がもたらされることである。会話における低遅延は、リアルタイム通信サービスのキーとなる特徴であり、これは、会話の品質を低下させる。ここで、ジッタバッファアダプテーション(adaptation:適合)は、制御メカニズムを介するランタイム中に、バッファの深度を変更するために使用される。この制御メカニズムへの入力は、典型的には、セッション中に構築される統計値であり、これは、トランスポートリンクのジッタによってトリガーされる誤り隠蔽オペレーション(操作)間のトレードオフを最適にし、かつ会話での遅延を最小にするために、バッファ深度を調整することを可能にする。
【0006】
ジッタバッファ深度に適合するために利用可能な、様々なメカニズムが存在する。これらは、2つの異なるカテゴリに分類することができ、1つは、フレームベースのアダプテーションメカニズムであり、もう1つは、サンプルベースのアダプテーションメカニズムである。
【0007】
フレームベースのメカニズムは、すべての音声フレームをバッファに挿入するあるいはから除去することによって動作する。無音(サイレンス)期間(即ち、会話の発声(トークスパート(talk spurt))の始まりあるいは終わり)中に使用される場合、アダプテーション動作の影響は、メディア品質においては重要ではない。主要な問題は、いくつかの無音期間、及び短い無音期間の少なくともいずれかの無音期間で、音声アクティビティが高い場合に発生する。この場合、アダプテーションは、結果として、アクティブな音声期間中に深刻な品質低下を発生させることになる。
【0008】
サンプルベースのメカニズムは、時間領域での復号(デコード)音声信号を伸張する及び圧縮するの少なくとも一方を実行することによって動作する。様々な同様の方法が、時系列の音声信号を変更するために伸張あるいは圧縮することができる、音声信号のパターンを識別するために使用することができる。これを実行することによって、各時間の音声フレーム表現が変更できることで、音声デコーダは、ジッタバッファからの符号化音声フレームの搬送を必要とするレートを変更することができる。その結果、バッファが増加するあるいは減少する、つまり、ジッタバッファレベルアダプテーションとなる。
【0009】
サンプルベースのメカニズムも、アダプテーションを実行する場合に、メディア品質のアーチファクト(artifacts:人工物)をもたらす。サンプルベースのメカニズムは、定常信号にはうまく動作するが、過渡信号にはより挑戦的なものとなる。また、音声信号が、いくつかの定期的なコンテンツ、これは、多くのポピュラーミュージックに対する事例となるコンテンツを有している場合、タイムスケーリング操作は容易に判明し、また、きわめて面倒となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
サンプルベースのアダプテーションメカニズムとフレームベースのメカニズムはともにアーチファクトをもたらすので、これらは、できる限り少なく使用されるべきである。好ましくは、これらは、会話の遅延を短く維持することを必要とする場合にのみ使用されるべきである。多くの他の用途の場合に対して、例えば、周期性(例えば、音楽)が符号化音声データに存在する場合はいつでも、従来からのアダプテーションは避けられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、従来のジッタバッファアダプテーションを改善することを可能にする制御メカニズムを提供することである。
【0012】
この目的は、請求項に従って達成される。
【0013】
簡単に説明すると、本発明は、適合性ジッタバッファによって処理されるデータのコンテキスト記述を検出することと、所定の検出されたコンテキスト記述に対して、ジッタバッファ深度の最小化をオーバライドすることを含んでいる。このコンテキスト記述は、バッファによって処理されるデータに対して内因的あるいは外因的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のアダプタブルジッタバッファの実装のブロック図である。
【図2】本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの実施形態のブロック図である。
【図4】本発明に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの別の実施形態のブロック図である。
【図5】本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図6】本発明に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの別の実施形態のブロック図である。
【図7】本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図8】本発明に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの別の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、同一の参照番号は、同一あるいは同様の機能を実行する要素として使用する。
【0016】
図1は、例えば、文献[1]に記載される、従来のアダプタブル(adaptable:適合性)ジッタバッファの実装のブロック図である。受信パケットは、下位レイヤからデパケッタイザ(de-packetizer:デパケット化(逆パケット化)器)10に転送され、そこで、受信パケットは、デパケット化される。デパケット化されたパケットのペイロードは、ジッタバッファ12へ転送され、そこで、それらは、バッファされ、その後、音声デコーダ14へ転送される(典型的には、ECU(誤り隠蔽ユニット)を含む)。デコードされた信号は、時間スケーリングアルゴリズム16へ転送され、そこで、最終オーディオ出力を生成する。要素12、14及び16は、ジッタバッファ制御ユニット18によって制御される。制御ユニット18は、デパケッタイザ10、下位レイヤ、統計ユニット22及び操作パラメータユニット24から制御情報を受信する。ジッタバッファ制御ユニット18は、この制御情報を使用して、優勢なネットワーク状態にバッファ深度をアダプテーション(適合)する(最小化する)。
【0017】
図2は、本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の実施形態を示すフローチャートである。ステップS1は、アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータのコンテキスト記述を検出する。ステップS2は、検出されたコンテキスト記述が所定のコンテキスト記述と等しいかどうかを判定する(これは、いくつかの取り得るコンテキスト記述の1つであり得る)。等しくない場合、ジッタバッファアダプテーションは、通常は、ステップS3に進む。そうでない場合、ステップS4は、現在の目標バッファ深度が、検出されたコンテキスト記述に対して浅すぎないかどうかを判定する。浅すぎない場合、ステップS5は、目標バッファ深度を現在の値にフリーズする(freeze)。そうでない場合、ステップS6で、検出されたコンテキスト記述に互換性のある、より高い値に目標バッファ深度を上げて、フリーズする。つまり、ステップS5とS6は、通常のジッタバッファアダプテーションをオーバライドする(override)。ステップS4とS6は、検出されたコンテキスト記述のタイプに依存して、必要とされない場合がある。
【0018】
コンテキスト記述は、バッファによって処理されるデータに対して内因性(intrinsic)あるいは外因性(extrinsic)であり得る。内因性のコンテキスト記述の例は、ジッタバッファによって処理されるデータの内容である。信号の内容は、アダプテーションメカニズムの結果として、どれくらい品質低下が見られるかを判定する。周期性信号、例えば、音楽が信号内に存在する場合、アダプテーション処理の影響は、信号の深刻な品質低下をもたらすことになる。それゆえ、このようなアダプテーションは、回避されるあるいはオーバライドされるべきである。
【0019】
例として、特殊用途事例の1つを挙げる。これは、明確に適用可能であり、また、使用している音楽が保留にされている場合である。このような処理では、会話の一方のエンドポイントが、他方のエンドポイントを保留にして、それを継続している場合には、音楽は、保留が継続されているエンドポイント側で再生され続ける。この場合、メディアは一方向にしか流れないので、遅延が少ない会話に対する要件は存在しない。
【0020】
本発明の一実施形態に従えば、到来信号を分類することができ、かつ周期性コンテンツを検出することができる信号分類アルゴリズムは、追加のデータを、ジッタバッファ制御アルゴリズムに送信するために使用することができる。この制御アルゴリズムからの応答は、現在のレベルでの目標バッファ深度をフリーズすることによってアダプテーションを一時的に止める、あるいはより上位のレベルでも目標バッファ深度をフリーズすることによって上方アダプテーション(upward adaptation)を直ちにトリガーすることになるであろう。どちらの場合でも、アダプテーションアーチファクトは、周期性コンテンツが検出されて、かつ平均的なメディア品質が向上している時間の間に低減されることになるであろう。再度、分類が音声を示している場合、アダプテーションは、その通常の状態に戻り、この時点で、バッファ深度が最小にされる。尚、本実施形態は、特に、著しいジッタを示し得るリンクに対して特に有用である。このジッタには、例えば、HSPA(高速パケットアクセス)、WLAN(ワイヤレスローカルエリアネットワーク)、WiMAX(マイクロ波アクセス用ワールドワイド相互運用性)及び、共有チャネルに基づく他のアクセス技術がある。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの実施形態のブロック図である。本実施形態では、要素10、12、14、16、22、24は、図1の同一の参照番号の要素と同様であるので、詳細は説明しない。信号分類器26は、デパケッタイザ10とジッタバッファ12との間のエンコードドメインの間に挿入されている。分類データは、信号分類データ記憶ユニット28に転送される。ユニット28の出力は、ジッタバッファ制御ユニット30の制御信号として提供される。制御信号の応答は、通常のアダプテーション(バッファ深度最小化)をオーバライドすることによってアダプテーションアーチファクトを削減することを目的とする。これは、現在の値で目標バッファ深度をフリーズすることによって、あるいはより上位の値で目標バッファ深度をフリーズすることによって、即時の上方アダプテーションをトリガーすることによって実行される。現在の値が低すぎると思われる場合には、後者の方法が有効である。
【0022】
信号分類器は、ジッタバッファアダプテーションアーチファクトがより深刻になる信号コンテンツを検出するために調整される。1つの実装例では、音声コンテンツを検出でき、かつそれに応じてジッタバッファアダプテーションを制限することができる信号分類器を備える。別の実装例では、アダプテーションアーチファクトの品質低下を増やすこととなる深刻なバックグランドノイズを検出することができる信号分類器を備える。エンコードドメインにおける信号分類の原理は、例えば、文献[2]で議論されている。
【0023】
図3に示される実施形態の変形が、図4に示される。この実施形態では、信号分類器26は、時間スケーリングアルゴリズム16の後段に配置され、時間(サンプル)ドメインでの信号分類を実行する。他の可能性としては、デコーダの後段に直接分類器を配置することである。どちらの場合も、分類は、デコードされた信号に対して実行される。デコードドメインでの信号分類についての原理は、例えば、文献[3]で議論されている。音楽は、例えば、MPEG−7(ムービングピクチャエキスパートグループ)に記載されているゼロクロス比率を使用することによって検出することができる。
【0024】
要素26及び28は、別ユニットとして示されているが、これらを1つのユニットに組み込むことも可能である。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の実施形態のフローチャートである。本実施形態は、アダプタブルジッタバッファ12(エンコード(符号化)ドメインあるいはデコード(復号化)ドメインのどちらか)によって処理されるデータから、内因性コンテキスト記述を抽出する。ステップS1Aは、受信データのコンテンツを分類する(例えば、音楽/音声、バックグラウンドノイズ/音声、等)。ステップS2Aは、検出されたコンテンツクラスが所定コンテンツクラスと等しいかどうかを判定する(例えば、音楽あるいはバックグラウンドノイズ)。残りのステップS3−S6は、図2のステップS3−S6と同じである。
【0026】
アダプテーションアーチファクトを削減する別の方法は、現在の信号を、適切な外因性コンテキストにすることである。通常の会話では、メディアフローは、全二重となるであろう。セッションネゴシエーションは、両方のエンドポイントが送受信モードとなるであろうことを指示することであろう。この場合、ジッタバッファ操作に対する通常のガイドラインは、ジッタ誘発損失レートを増大させることを許容することなく、どんなときでもバッファ深度を最小にすることを暗示する。しかしながら、呼が保留にされている場合、両方のクライアントは、このセッションがもはや全二重セッションでないことを知ることになる。これは、現在のところ、メディアは、一方向でフローすることだけが許容されているので、遅延基準が緩和される可能性があるからである。
【0027】
この状況では、周期性信号は検出されている可能性はないが、依然として自身のジッタバッファと音声デコーダを割り当てていて、また、メディアを受信して処理する準備をしている、クライアントは、全二重呼の間、バッファリングによる遅延を最小にする必用はない。バッファは、アダプテーションをフリーズすることができる、あるいは、セッションフローパラメータが更新されるとすぐ上方に適合でき、また、メディアフローが一方向だけである限り、バッファ深度の最小化を回避することができ、そして、セッションが全二重に戻される場合に通常の動作を再開することができる。また、この場合、アダプテーションアーチファクトは低減され、かつメディア品質は高められる。
【0028】
図6は、本発明に従うアダプタブルジッタバッファコントローラの別の実施形態のブロック図である。この実施形態は、特定のコンテンツ(内因性コンテキスト記述)の信号の検出に基づいているのではなく、むしろ、外因性コンテキスト信号が使用される。
【0029】
通信セッションがセットアップされると、セッション制御プロトコルが使用される。例えば、セッション制御プロトコルがSIP(セッション開始プロトコル)とSDP(セッション記述プロトコル)に基づいている場合、SDPにメディアフロー情報が存在する。このSDPは、通信セッション制御ユニット32によって検出することができ、また、外因性コンテキスト記述として、外因性コンテキストデータ記憶ユニット34によって使用される。SDPパラメータは、セッション中に、どちらの方向にメディアがフローするかを示す属性を含んでいる。この属性は、「sendrecv(送受信)」、「sendonly(送信のみ)」、「recvonly(受信のみ)」及び「インアクティブ」を示す値を保持することができる。全二重セッションに対しては、メディアフロー属性には「sendrecv」が設定されるが、メディアを受信することだけが許容されているエンドパーティに対しては、自身のセッションメディアフロー属性は、「recvonly」に設定され、ジッタバッファアダプテーション制御アルゴリズムは、自身の現在の値で目標バッファ深度をフリーズすることによって、あるいはより高い値で目標バッファ深度をフリーズすることによる即時の上方アダプテーションをトリガーすることによって、自身の遅延を最小にする労力を緩和することができる。現在の値が低すぎると思われる場合には、後者の方法が有効である。
【0030】
IMS(IPマルチメディアサブシステム)マルチメディアテレフォニーでは、HOLDと呼ばれる補助サービスがサポートされている。このサービスでは、セッションメディアフローの属性は、典型的には、「sendrecv」から「sendonly」へと、「sendrecv」から「recvonly」へと、それぞれ変更される。この場合のアダプテーション制御における外因性コンテキスト記述として、セッションコンテキストパラメータを使用することは、任意のメディア、例えば、アナウンス(お知らせ)と保留音(music-on-hold)が使用される場合に、「recvonly」におけるクライアントでのメディア品質が向上するであろう。
【0031】
また、様々なオペレータは、特定のサービスに対して様々なサービスコンフィギレーションを行うことができる。例えば、様々なユーザ加入が、異なる特性でプロファイルすることができる。「ゴールド」加入者は、本発明を介して実現される、パフォーマンスが向上された保留音のメディア品質を利用することができる。一方、「エコノミー」加入者は、利用することができない。この特徴は、図6のクライアントコンフィギレーションユニット36によって実現される。
【0032】
図7は、本発明に従うアダプタブルジッタバッファを制御する方法の別の実施形態のフローチャートである。この実施形態は、アダプタブルジッタバッファ12によって処理されるデータの外因性コンテキスト記述を抽出する。ステップS1Bは、ジッタバッファによって処理されるデータのSDPメディアフロー属性を検出する。ステップS2Bは、検出されたSDPメディアフロー属性が「recvonly」に等しいかどうかを判定する。残りのステップS3−S6は、図2のステップS3−S6と同じである。
【0033】
上述の実施形態では、内因性及び外因性コンテキスト記述制御メカニズムは、別々の実施形態で説明されている。しかしながら、2つのメカニズムは、図8に示されるように、組み合わせることができる。
【0034】
目標ジッタバッファ深度の増加に関しては、これは、チャネルによって導入されるジッタ変動に依存する。経験則によれば、100%のオーダの増加は、実現可能である場合がある。しかしながら、これは、ジッタ変動が小さい場合には高すぎる場合がある。一般的には、この増加は強調されるべきではない。これは、通常のアダプテーションが再開されると、再度、最小ジッタバッファ深度を取得する時間が増加することになるからである。
【0035】
上述の実施形態は、ジッタバッファ制御に基づくサンプルを示しているが、同一の原理を、ジッタバッファ制御に基づくフレームにも適用されることは明らかであろう。上述のブロック図との本質的な違いは、時間スケーリングアルゴリズム16がないことであろう。
【0036】
上述の実施形態では、目標バッファ深度は、ジッタバッファ制御アルゴリズムを変更するためのパラメータとして使用されていた。別の実施形態では、これに代えて、制御パラメータとして目標フレーム損失レートを使用することである。つまり、目標フレーム損失レートは、自身の現在の値でフリーズされても良い。アダプテーションアルゴリズムは、この損失レートが取得されるまで、バッファ深度を上げることになる。現在の目標フレーム損失レートが高すぎると思われる場合、所定のより低い値でフリーズすることができる。そして、再度、アダプテーションアルゴリズムは、この損失レートが取得されるまで、バッファ深度を上げることになる。本実施形態の効果は、フレーム損失レートが、取得される信号品質とより高く相関することである。
【0037】
上述の実施形態における様々なブロックの機能は、典型的には、1つ以上のマイクロプロセッサ、あるいは、マイクロ/シグナルプロセッサの組み合わせ、及びそれに対応するソフトウェアによって得られる。
【0038】
本発明の効果は、操作のデフォルト状態に比べて、セッションのエンドツーエンドの遅延基準が緩和される場合のメディア品質を向上させることを可能にすることである。ジッタバッファアダプテーション制御アルゴリズムを制御するために、内因性信号コンテキストと外因性信号コンテキストの少なくとも一方を使用することは、特に、共有チャネルが使用される場合のメディア品質を更に最適化するための方法である。
【0039】
請求項によって定義される、範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変形及び変更を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。
【0040】
略語
ECU 誤り隠蔽ユニット
HSPA 高速パケットアクセス
IMS IPマルチメディアサブシステム
IP インターネットプロトコル
MPEG ムービングピクチャエキスパートグループ
SDP セッション記述プロトコル
SIP セッション開始プロトコル
VoIP ボイスオーバIP
WiMAX マイクロ波アクセス用ワールドワイド相互運用性
WLAN ワイヤレスローカルエリアネットワーク
文献
[1] ジッタバッファ(セルラーシステムを介するIMSマルチメディアテレフォニー、ISBN、978−0−470−05855−8、ワイレー2007、セクション5.3.3、pp154−163)
[2] 「MP3/AACオーディオの知覚分類及び区分に対するファジーアプローチ」、クランヤツ,エス、クレシ,エイ.エフ. ガッボウジ,エム.,制御、通信及び信号処理における第1回国際シンポジウム、2004年3月21−24日、pp727−730
[3] 信号分類:MPEG−7標準(ISO/IEC 15938−4:2002、情報技術−−マルチメディアコンテンツ記述インタフェース−−パート4:オーディオ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダプタブルジッタバッファを制御する方法であって、
前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータのコンテキスト記述を検出するステップと、
所定の検出されたコンテキスト記述に対して、ジッタバッファ深度の最小化をオーバライドするステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記オーバライドするステップは、現在の値で目標ジッタバッファ深度をフリーズすることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オーバライドするステップは、現在の値よりも高い所定の値で、目標ジッタバッファ深度をフリーズすることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オーバライドするステップは、現在の値で、目標フレーム品質レートをフリーズすることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オーバライドするステップは、現在の値よりも低い所定の値で目標フレーム損失レートをフリーズすることを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検出されたコンテキスト記述によって記述されるコンテキストは、前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータに対して内因的である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンテキスト記述は、前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータから検出される
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コンテキスト記述は、前記アダプタブルジッタバッファから転送される符号化データから検出される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンテキスト記述は、前記アダプタブルジッタバッファを経由して通過した後にデコードされているデータから検出される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記検出されたコンテキスト記述によって記述されるコンテキストは、前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータに対して外因的である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるデータのサービスコンテキストは、通信セッションデータから検出される
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アダプタブルジッタバッファによって処理されるサービスコンテキストは、クライアントコンフィギレーションデータから検出される
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アダプタブルジッタバッファのコントローラであって、
前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるデータのコンテキスト記述を検出する手段(26、32、36)と、
所定の検出されたコンテキスト記述に対して、ジッタバッファ深度の最小化をオーバライドする手段(28、34)と
を備えることを特徴とするコントローラ。
【請求項14】
現在の値で目標ジッタバッファ深度をフリーズする手段(30)を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のコントローラ。
【請求項15】
現在の値よりも高い所定の値で、目標ジッタバッファ深度をフリーズする手段(30)を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のコントローラ。
【請求項16】
現在の値で、目標フレーム品質レートをフリーズする手段を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のコントローラ。
【請求項17】
現在の値よりも低い所定の値で目標フレーム損失レートをフリーズする手段を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記検出する手段(26)は、前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるデータに対して内因的である、コンテキスト記述を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項19】
前記検出する手段(26)は、前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるデータからコンテキスト記述を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項18に記載のコントローラ。
【請求項20】
前記検出する手段(26)は、前記アダプタブルジッタバッファから転送される符号化データからコンテキスト記述を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項19に記載のコントローラ。
【請求項21】
前記検出する手段(26)は、前記アダプタブルジッタバッファを経由して通過した後にデコードされているデータからコンテキスト記述を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項19に記載のコントローラ。
【請求項22】
前記検出する手段(32、36)は、前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるデータに対して外因的であるコンテキスト記述を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項23】
前記検出する手段(32)は、通信セッションデータから、前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるデータのサービスコンテキストを検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項22に記載のコントローラ。
【請求項24】
前記検出する手段(36)は、クライアントコンフィギレーションデータから、前記アダプタブルジッタバッファ(12)によって処理されるサービスコンテキストを検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項22に記載のコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−512104(P2010−512104A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540199(P2009−540199)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000981
【国際公開番号】WO2008/069719
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】