説明

ジヒドロペリミジンスクアリリウム化合物を含む印刷インク、トナー、及びそれらを用いた情報検出方法

【課題】赤外線により読み取り可能なジヒドロペリミジンスクアリリウム化合物を用いた赤外線インクおよびトナーおよびそれを用いた印刷物、並びに該化合物を含む情報読み取り方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する印刷用インク又はトナー及びそれを用いた印刷物、並びに該化合物を含む情報読み取り方法。


(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジヒドロペリミジンスクアリリウム化合物の用途に関し、更に詳しくは750nm〜1500nm、特に800nm〜1200nmの電磁スペクトルの近赤外線領域を吸収する特定のスクアリリウム化合物を用いる、赤外線により読み取り可能な秘密情報印刷物に用いられる赤外線インクおよびトナーおよびそれを用いた印刷物、並びに該化合物を含む情報読み取り方法に関する。また、該スクアリリウム化合物の赤外線吸収の検出又は測定による製品の真偽照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリペイドカード、クレジットカード、銀行カード、身分証明書、免許証、切符、入場チケット、会員カード、証券等のカード、有価証券、紙幣、チケット、及び証明書は、一般に紙またはプラスティク基材表面に印刷、彫刻、エンボス、レーザー、放電、ラミネートあるいは蒸着等の加工手段と、磁性材料、導電材料、感光材料、感熱材料、発泡材料、発光材料等の機能性材料と機能に応じた検出手段の単独又は組み合わせによって、改ざん、偽造防止、識別等の照合手段とすること、あるいは内蔵された情報の耐環境性を向上させる等々のさまざまな試みがなされてきた。
【0003】
これらの機能性材料の内、赤外線を吸収する物質を用いて情報を読み取る方法は既に公知であり、例えば赤外線の反射率に差のある材料を用いて文字、バーコードなどのパターンを形成し、可視光を遮断し、近赤外光を透過するフィルターを通して識別する方法などが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
近赤外線吸収剤としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン等の黒色顔料、紺青等の青色顔料、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯塩系、アントラキノン系、シアニン色素系、ポリメチン色素系等の近赤外線吸収剤が知られている。しかしながら、暗色系顔料を用いた場合は、これらで用いられる赤外線吸収物質は可視光にも吸収を持つため、得られる色相が黒系、茶系、青系の暗色系統の色に限られ、適用範囲が狭くなってしまうばかりか、カラー複写機等により、複写を全く不可能にすることが難しい。
【0004】
また、金属ナフトフタロシアニン化合物を含む近赤外線吸収インクが開示されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、可視光吸収が十分小さいとは言えず、目視による視認、複写写りを完全に防ぐことはできない。
また、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粉末を赤外線吸収剤として用いたインク組成物及び印刷物が開示されている(例えば、特許文献5)。しかしながら、ITO粉末は、波長1300nmよりも長波長側には大きな吸収を有するが、レーザー読み取りに適した1200nmよりも短波長の近赤外域の吸収強度が小さいため、読み取り精度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭46−25288号公報
【特許文献2】特開昭58−45999号公報
【特許文献3】特表2005−537319号公報
【特許文献4】特開平3−79683号公報
【特許文献5】特開2000−309736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可視光では視認及び検出することのできない印刷用インク又はトナーを提供することを課題とする。また、またこれらの印刷用インク又はトナーを用いて情報が印刷された印刷物を、赤外線検出器により情報を検知する情報検出方法、あるいはこれらの化合物でマーキングした製品を赤外線検出器により検出又は測定し、真偽の判定や照明する方法を提供することを課題とする。
【0007】
従来の金属錯体塩、アントラキノン、シアニン色素系、及びポリメチン系の赤外線吸収剤は、可視域に副吸収を有し視認性があり、秘密性に欠ける他、耐光性が劣るため、長期保存を前提とする証券・証書類、あるいは店頭陳列、運搬等で日光に当たる等の条件下で使用される用途には適していない。
【0008】
改ざん、偽造防止、識別等の照合手段として持いられる近赤外線吸収剤としては、以下の3つの性能を高いレベルで満たすことが求められている。
(1)可視域で吸収が無く透明なこと。
(2)近赤外域での吸収が大きく、光学的な読み取り精度が高いこと。
(3)従来の印刷インキ(インク)と同等以上の耐光性を有すること。
【0009】
本発明は、特定の化学構造のジヒドロペリミジンスクアリリウム化合物を近赤外線吸収剤として用いることにより、上記課題を解決することを目的とする。
【0010】
従来、特許第3590694号公報で、熱現像感光材料等のハロゲン化銀写真感光材料用のハレーション防止及びイラジエーション防止染料として、ジヒドロペリミジンスクアリリウム化合物が記載されている。ハレーション防止及びイラジエーション防止染料は、画像露光に用いられる近赤外線レーザーの反射による画像の滲みを防止するための染料であり、反射光や散乱光を吸収する特性が求められるものである。本発明に於ける文書、カード等の改ざん、偽造防止、識別等の照合手段用途で用いられる近赤外線吸収色素とは全く異なる機能及び作用効果である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記手段により本発明の上記目的が達成されることを見出した。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物を含有する印刷用インク又はトナー:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。)。
<2> 更に、着色剤及びバインダーを含有する<1>に記載の印刷用インク又はトナー。
<3> <1>又は<2>に記載の印刷用インク又はトナーを用いて情報が印刷された印刷物。
<4> <3>に記載の印刷物を赤外線検出器によりスキャンすることにより前記印刷物に印刷された情報を検出する情報検出方法。
<5> 製品または支持体に下記一般式(1)で表される化合物を含むマークを付与し、次いで該マークを赤外線照射し、該一般式(1)で表される化合物による光吸収を検出または測定する工程を含む製品または支持体の真偽を証明する方法:
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。)。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、透明性が高く、可視域に副吸収が無く、近赤外吸収を有する印刷用インク又はトナーが提供される。また、本発明の印刷用インク又はトナーを用いた印刷物は、視認性がなく、赤外線検出器によってスキャンすることにより検出されるので、高い秘密性を有する。従って、文書、カード等の改ざん防止、偽造防止、識別等の照合手段用途に特に好ましく利用される。
また、一般の製品等に本発明の一般式(1)の化合物を含むマークを付与しておけば、該マークは視認できず、赤外線によってのみ検出することが出来るので、該製品の真偽判定及び照明に利用することができる。
更に、本発明の印刷用インク又はトナーは、耐光性に優れる他、熱及び湿熱堅牢性にも優れるため、作成される印刷物やマークは、種々の使用環境や保存環境に於いても安定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】インクの近赤外〜可視域の分光吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値の下限値および上限値を含む意味に使用される。
【0019】
(一般式(1)で表される化合物)
本発明の一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0020】
【化3】

【0021】
式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。
【0022】
アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。
【0023】
アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基は、それぞれ、置換基を有してもよい。
置換アルキル基及び置換シクロアルキル基の置換基の例として下記をあげることができる。
・ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0024】
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
【0025】
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0026】
・シアノ基、・ヒドロキシル基、・ニトロ基、・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
【0027】
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
【0028】
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
【0029】
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
【0030】
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
【0031】
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
【0032】
・アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0033】
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
【0034】
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
【0035】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0036】
本発明に於けるアリール基は、無置換および置換アリール基を意味する。本発明に於けるアリール基は、脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。本発明に於けるアリール基の炭素原子数は6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。またその中でもアリール基としてはフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0037】
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例としては、先に置換アルキル基のアルキル部分の置換基の例としてあげたものと同様である。
【0038】
次に一般式(1)で表される化合物およびイオンについて説明する。一般式(1)で表される化合物は構造とその置かれた環境によって互変異性体を取りうる。本明細書においては代表的な形のひとつで記述しているが、本明細書の記述と異なる互変異性体も本発明に用いられる化合物に含まれる。
【0039】
一般式(1)において、RからRで表されるアルキル基は、好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1から20、より好ましくは1から12のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ウンデシル)である。また、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、イソブトキシ)またはアシルオキシ(例えば、アセチルオキシ、ブチリルオキシ、ヘキシリルオキシ、ベンゾイルオキシ)等で置換されていてもよい。
【0040】
一般式(1)において、RからRで表されるシクロアルキル基は、好ましくは、それぞれ独立に、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである。
一般式(1)において、RからRで表されるアリール基は、好ましくは、それぞれ独立に、6から12の炭素数のものが好ましく、より好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。
【0041】
からRで表されるアリール基は、それぞれ独立に、置換を有してもよい。置換基としては、炭素数1から8のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル)、炭素原子数1から6のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基およびカルボキシル基が含まれる。
好ましくは、一般式(1)において、R、R、R及びRは水素原子である。
【0042】
以下に本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化4】

【0044】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、例えば特許第3590694号公報、特開2002−167521号公報、及びJ.CHEM.SOC.,CHEM.COMMUN.,p.452−454(1993)に記載の方法を参考にして合成することが可能である。
【0045】
(印刷用インク及びトナー)
本発明の印刷用インク又はトナーは、一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明の印刷用インクは、印刷用およびプリンター用の何れにも適用できる。例えば、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ、凸版用インキ等の印刷用インキ、あるいは感熱転写用プリンター、インクジェットプリンター、インパクトプリンター、レーザープリンター等の各種プリンター等のインキが含まれる。好ましいインクとしては、グラビアインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ、凸版用インキ等の印刷用インキ、あるいはインクジェットプリンター、インパクトプリンター、レーザープリンターオフセットインキが挙げられる。
【0046】
本発明においては、一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種をふくむトナーであれば、いかなるトナーにも適用できる。レーザープリンター及び複写機で使用される、帯電性を持ったプラスティック粒子に色素もしくは顔料粒子を付着させたミクロサイズの粒子である。トナーが有する静電気を利用して紙にトナーを転写させ、熱によって定着させることにより印刷物が形成される。本発明のトナーは、上記プラスティック粒子に一般式(1)で示される赤外線吸収剤の少なくとも1種が溶融又は付着している。
【0047】
本発明のインク又はトナーは、一般式(1)で表される赤外線吸収材料とともに可視域に吸収を有する顔料また染料を含有していてもよい。これらの顔料としては、クローム・イエロー、カドミウム・イエロー、イエロー酸化鉄(yellow iron oxide)、チタン・イエロー、ナフトール・イエロー、ハンザ・イエロー(Hanza yellow)、顔料イエロー、ベンジジン・イエロー、パーマネント・イエロー、キノリン・イエロー、アントラピリミジン・イエロー、パーマネント・オレンジ、モリブデン・オレンジ、バルカン・ファスト・オレンジ(vulcan fast orange)、ベンジジン・オレンジ、インダンスリーン・ブリリアント・オレンジ、酸化鉄、琥珀、パーマネントブラウン、ローズ・アイアン・オキシド・レッド(rose iron oxide red)、アンチモン粉末、パーマネント・レッド、ファイアー・レッド(fire red)、ブリリアント・カーマイン、ライト・ファスト・レッド・トナー(light fast red toner)、パーマネント・カーマイン、ピラゾロン・レッド、ボルドー(Bordeaux)、ヘリオ−ボルドー(helio−Bordeaux)、ローダミン・レーキ、DuPontオイル・レッド、チオインディゴ・レッド、チオインディゴ・マロン、ウォッチング・レッド・ストロンチウム(watching red strontium)、コバルト・パープル、ファスト・バイオレット、ジオキサン・バイオレット、メチル・バイオレット・レーキ、メチレン・ブルー、アニリン・ブルー、コバルト・ブルー、セルレアン・ブルー、カルコ・オイル・ブルー(chalco oil blue)、非金属フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・ブルー、ウルトラマリン・ブルー、インダントレン・ブルー、インディゴ、クローム・グリーン、コバルト・グリーン、顔料グリーンB、グリーン・ゴールド、フタロシアニン・グリーン、マラカイト・グリーン・オキサレート及びポリクロモ−ブロモ銅フタロシアニンなどが挙げられる。
【0048】
(印刷用インク及びトナーを用いた印刷物)
本発明の印刷用インク及びトナーを用いて印刷された印刷物は、本発明の印刷用インク及びトナーを用いて、紙などの支持体に印刷した印刷物をさす。支持体としては、紙、プラスティック、木、金属などが挙げられる。
【0049】
(情報検出方法)
本発明の情報検出方法の光源としては、650nmから1500nmの赤外域に輻射エネルギーを持つものであればいかなる光源でもよいが、レーザー、発光ダイオードなどが好適に用いることが出来る。バンドパスフィルターなどを用いて光源もしくは検出部でのノイズを減らすことも出来る。
情報検出は、印刷物を赤外線検出器でスキャンすることによって行う。
【0050】
本発明における製品や支持体の真偽を証明する方法に使用できるシステムとしては、一般式(1)で表される赤外線吸収材料を含有する印刷物に上記光源より赤外線を照射し、反射される赤外線を検知すること、あるいは赤外光の反射率を測定し、そのパターン解析によりより高度情報を読み取ることができる。更に、より偽造を困難にするために他の方法と組み合わせて真偽性の判断の精度を高めることが出来る。他の方法としては、モアレ、ホログラムなどのOptical Variable Device、エンボスなどと組み合わせて用いても良い。
【0051】
以下にさらに詳細に説明する。
【0052】
(1)グラビア/凹版模様印刷用インク
凹版模様印刷用の適切なグラビアインクは、一般式(1)で表される赤外線吸収材料、バインダー及び揮発性溶媒を含有する。好ましくは、更に、着色剤を含有する。更に好ましくは、酸化防止剤、界面活性剤、無機充填剤等を含有しても良い。
【0053】
輪転グラビアインク用の樹脂の選択は、溶媒及び印刷すべき支持体並びに印刷物の最終用途に依存する。グラビアタイプのものを含む、インク製造に適切な樹脂の詳細な例は、“Synthetic Resins”、Werner Husen著、The American Ink Maker、1952年6月、63頁及び“Synthetic Resins for Inks”、John P.Petrone著、The American Ink Maker、第49巻、1971年3月〜10月に述べられている。有用な樹脂としては、ロジン及び変性ロジン類、例えばカルシウム及び亜鉛樹脂酸塩(resinate)及びこれらの変異形が挙げられる。他の適切な樹脂としては、
(a)石油樹脂またはシクロペンタジエン樹脂の種々の変性品、これらの例は、本明細書中、その開示が参照として含まれる米国特許第3,084,147号及び英国特許第1,369,370号に知見される;並びに
(b)日本特許第47994/72号に記載のごとき、安定な粘度と優れた印刷性を誘導し得る能力を持つ、軟化点145℃の変性樹脂(この変性樹脂は、石油の熱分解から得られる分解油から140℃〜220℃の沸点の留分を集め、フリーデル−クラフツ触媒を使用して留分を重合して、軟化点160℃の樹脂を得、この樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物と、樹脂100グラム当たり0.01モル〜0.4モルの量で反応させ、次いで上記不飽和カルボン酸または無水物1モル当たり0.2モル〜2.0モルの量で一価アルコールを使用して得られた樹脂をエステル化することによって得られる)が挙げられる。
【0054】
揮発性溶媒成分は、脂肪族若しくは脂環式炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンまたは芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン(例えば、トルソール:tolusol 25)、高フラッシュナフサ、ベンゼン及びクロロベンゼンであってもよい。他の溶媒としては、C1−4−アルカノール類、C1−5−アルカノール類のアセテート、115℃〜180℃のBPをもつグリコールエーテル類、C1−5−脂肪族ケトン類及びシクロヘキサノンが挙げられる。樹脂は溶媒に可溶性で且つ、これらから分離が容易でなければならない。グラビアインクの乾燥は溶媒の蒸発に起因するので、インクビヒクルは本質的に樹脂と溶媒である。樹脂及び溶媒の特定の組み合わせに依存して、種々のタイプのビヒクルを使用することができる。
【0055】
好ましい酸化防止剤はフェノール性若しくはアミン酸化防止剤であり、好ましい酸化防止剤組成物は、フェノール性酸化防止剤とアミン酸化防止剤との混合物である。好ましい酸化防止剤組成物は、フェノール性酸化防止剤を約10質量%〜約90質量%、より好ましくは約25質量%〜約75質量%含み、アミン酸化防止剤を約90質量%〜10質量%、より好ましくは約75質量%〜25質量%含む。
【0056】
適切なアミン酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、イソプロポキシジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとのアルドール−α−ナフチルアミン縮合生成物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、重合化1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、N,N’−ジ(2−オクチル)−p−フェニレンジアミン、他の芳香族アミン類、ジフェニルアミン類及びこれらの混合物が挙げられる。適切なフェノール性酸化防止剤としては、4,4’−イソプロピリデン−ジフェノール、スチレン化フェノール、ヒンダードフェノール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、p−ブチルフェノール、p−(i−プロピル)フェノール、2,4−ジメチル−6−オクチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチル−フェノール)、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−ベータ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、これらの混合物などが挙げられる。好ましいフェノール性酸化防止剤は、立体的に混み合ったフェノール類である。
【0057】
酸化防止剤または酸化防止剤の組成物を含む凹版模様印刷用インクは、慣用法にて製造することができる。例えば、樹脂100質量部と、酸化防止剤または酸化防止剤の組成物1質量部とを高沸点石油溶媒200質量部以下に溶解させて、インクビヒクルを製造する。好ましい溶媒、例えばトルエン70質量%、キシレン4質量%とラクトール蒸留分(lactol spirit)26質量%との混合物は、(35〜45のカウリブタノール値:Kauributanol valueをもつ脂肪族溶媒と対照的に)約105のカウリブタノール値をもつ。
【0058】
インクの総質量をベースとして約0.01質量%〜5.0質量%、好ましくは約0.1質量%〜3.0質量%の量で、このインク組成物に配合される赤外線吸収剤は、支持体に適用した後に、この支持体を赤外線感受性検出器によって適切に照射したときにのみ支持体が見られる、検出可能な透明な赤外線吸収性インクを提供する。
【0059】
インクが色素性着色剤も含有する場合、印刷されたパターンは視覚的に検出可能であるが、印刷された支持体(被印刷物)は、同様の方法で赤外線吸収剤を含まないインクで印刷された支持体と区別することもできる。
【0060】
赤外線吸収剤または色素性着色剤(例えば、フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー、チャンネルブラック、カーマイン6Bまたはチタンホワイト)をインクビヒクルに、好ましくは分散液として添加し、この混合物をボールミルに設置し、インクビヒクル中に顔料の均一な分散液が得られるまで粉砕する。得られたインク濃縮物は、追加の溶媒で続いて希釈して、印刷操作で使用するために適当な濃度にすることができる。
【0061】
凹版模様印刷用の典型的なグラビアインク組成物は、インクの総質量をベースとして酸化防止剤組成物約0.005質量%〜0.5質量%、樹脂約10質量%〜50質量%及び赤外線吸収剤約0.01質量%〜約5.0質量%、好ましくは0.1質量%〜3.0質量%及び/または、樹脂100部当たり色素性着色剤約50部〜100部を含み、残余は、トルエン、キシレン及びラクトール蒸留分などの炭化水素溶媒の混合物から本質的になる。使用時点でのインクの粘度は、好ましくは5ポイズ以下が好ましく、0.5ポイズ〜1.0ポイズがより好ましい。使用する酸化防止剤組成物の量は、インクの総質量をベースとして0.005質量%〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.025質量%〜0.5質量%を変動する。
【0062】
印刷適性、流動挙動及び顔料湿潤性(pigment wetting)を改善するために、他の添加剤も樹脂に関して1質量%〜15質量%(より好ましくは1質量%〜10質量%)の量で配合することができる。ワックス、例えばエステルワックス、アミドワックス、炭化水素ワックスは、0.1質量%〜5質量%の量で添加することができる。他の適合可能な添加剤、例えばエチルセルロースまたはエチルヒドロキシセルロースを使用して、インクフィルム付着性、耐擦り傷性(scuff resistance)、光沢などを改善することができる。印刷用インクは、可塑剤を用いずに使用するのが好ましいが、可塑剤は特別の効果を達成するために添加することができる。
【0063】
適切な支持体は、凹版模様印刷で慣用的に使用されるもの、例えば紙、セロファン及び金属フィルム、例えばアルミニウムフィルムがある。
【0064】
(2)トナー
本発明に於けるトナーは、一般式(1)で表される赤外線吸収剤及びバインダーを含有する。好ましくは着色剤を含有する。更に、酸化防止剤、界面活性剤、無機充填剤等を含有しても良い。
トナーとしては、一般式(1)で表される赤外線吸収剤がトナー粒子のマトリックスを形成するバインダーに溶融又は分散された従来のトナーでも、化学的に製造されたトナーに一般式(1)で表される赤外線吸収剤が配合されたトナーでも良い。
<従来のトナー>
フラッシュ固定トナー(flash fixing toner)は、バインダー、着色剤及び一般式(1)で表される赤外線吸収剤を含有する。
一般式(1)で表される赤外線吸収剤は、前記トナーの総質量をベースとして約0.01質量%〜5.0質量%(より好ましくは0.1質量%〜3.0質量%)の量で存在するのが好ましい。一般式(1)で表される赤外線吸収剤は、好ましくは、トナー粒子のマトリックスを形成するバインダー中に溶融又は分散されて含有される。
【0065】
フラッシュ固定トナーに用いられる好ましいバインダーは、例えば、ポリスチレン類;スチレンと(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル若しくはマレイン酸エステルとのコポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエステル類;ポリアミド類;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;炭化水素樹脂;及び石油樹脂であり、これらは単独で又は他のバインダーまたは添加剤と組み合わせて使用することができる。
好ましいバインダーは、ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンのポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂である。
【0066】
フラッシュ固定トナーに用いられる好ましい着色剤は、例えば、一種以上の顔料若しくは着色剤、例えばクローム・イエロー、カドミウム・イエロー、イエロー酸化鉄、チタン・イエロー、ナフトール・イエロー、ハンザ・イエロー、顔料イエロー、ベンジジン・イエロー、パーマネント・イエロー、キノリン・イエロー、アントラピリミジン・イエロー、パーマネント・オレンジ、モリブデン・オレンジ、バルカン・ファスト・オレンジ、ベンジジン・オレンジ、インダンスリーン・ブリリアント・オレンジ、酸化鉄、琥珀、パーマネントブラウン、ローズ・アイアン・オキシド・レッド(rose iron oxide red)、アンチモン粉末、パーマネント・レッド、ファイアー・レッド、ブリリアント・カーマイン、ライト・ファスト・レッド・トナー、パーマネント・カーマイン、ピラゾロン・レッド、ボルドー、ヘリオ−ボルドー(helio−Bordeaux)、ローダミン・レーキ、DuPontオイル・レッド、チオインディゴ・レッド、チオインディゴ・マロン、ウォッチング・レッド・ストロンチウム、コバルト・パープル、ファスト・バイオレット、ジオキサン・バイオレット、メチル・バイオレット・レーキ、メチレン・ブルー、アニリン・ブルー、コバルト・ブルー、セルレアン・ブルー、カルコ・オイル・ブルー、非金属フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・ブルー、ウルトラマリン・ブルー、インダントレン・ブルー、インディゴ、クローム・グリーン、コバルト・グリーン、顔料グリーンB、グリーン・ゴールド、フタロシアニン・グリーン、マラカイト・グリーン・オキサレート及びポリクロモ−ブロモ銅フタロシアニンである。着色剤の量は広範囲を変動し得るが、前記バインダー100質量部をベースとして3質量部〜5質量部で配合するのが好ましい。
【0067】
フラッシュ固定トナーは、さらなる成分、例えばワックス(蝋)、電荷制御剤(charge control agent)及び/または易流動剤(flow−enhancer)を含むことができる。
好ましいワックスは、ポリオレフィンタイプまたは天然ワックス、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス及び天然パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー、エチレン−ペンテンコポリマー、エチレン−3−メチル−1−ブテンコポリマー並びに、オレフィン類と他のモノマー、例えばビニルエステル類、ハロ−オレフィン類、(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸または誘導体とのコポリマーである。このワックス状成分の質量平均分子量は、1,000〜45,000ダルトンであるのが好ましい。
【0068】
好ましい電荷制御剤の例としては、ニグロシン(nigrosine)、モノアゾ染料、亜鉛、ヘキサデシルスクシネート、ナフトエ酸のアルキルエステル若しくはアルキルアミド、ニトロフミン酸、N,N−テトラメチルジアミンベンゾフェノン、N,N−テトラメチルベンジジン、トリアジン類及びサリチル酸の金属錯体がある。黒以外の着色剤の場合には、電荷制御剤が実質的に無色であるのが好ましい。
【0069】
好ましい易流動性剤の例としては、無機物質、例えばコロイダルシリカ、疎水性シリカ、疎水性チタニア、疎水性ジルコニア及びタルクの微粒子、並びに有機物質、例えばポリスチレンビーズ及び(メタ)アクリル酸ビーズの微粒子がある。
【0070】
赤外線吸収剤をバインダーに溶融または分散する場合、カップリング剤及び赤外線吸収剤(並びに上記の任意の他の成分)を粉体混合し、一緒に混練りするのが好ましい。得られた混合物を冷却し、粉砕化した後、粒子を分類する。
【0071】
<化学的に製造したトナー>
一般式(1)で表される赤外線吸収剤を化学的に製造したトナーと配合することができる。種々の分子量のポリマーを一種以上混合して、分子量分布とトナー溶融レオロジー特性とを制御することができる。適切なポリマーの例としては、スチレン−アクリレートコポリマー類、スチレン−ブタジエンコポリマー類、ポリエステル類及び炭化水素樹脂がある。
【0072】
トナーに着色剤を配合して、印刷した支持体上に着色した画像を形成する場合、融合ローラーから剥離し易いように、電荷制御剤及びワックスを添加しても良い。適切な着色剤としては、顔料(赤外線吸収剤による赤外線照射の吸収を干渉しないという条件のもと、磁性顔料を含む)及び染料がある。電荷制御剤として、好ましくは、金属錯体、例えば、Zn、Al、FeまたはCr及びポリマー材料、例えばフェノール性ポリマーの錯体などを含む。ワックスとして、好ましくは、炭化水素ワックス、例えばパラフィン、ポリエチレン若しくはポリプロピレンワックス、一酸化炭素及び水素から誘導したワックス、例えばフィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)ワックス、天然製品ワックス、例えばカルナウバワックス、並びに合成ワックス、例えばエステルまたはアミドワックスが挙げられる。
【0073】
トナーは、界面活性剤、及び無機又は有機充填剤、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ若しくはポリマー粒子を含んで、流動性、帯電性能または転送特性を制御することもできる。
【0074】
(3)UV硬化インク
製品又は支持体に一般式(1)で表される化合物(赤外線吸収剤)を含むマークを付与するには、一般式(1)で表される赤外線吸収剤を含むUV硬化可能なインクを用いることができる。
【0075】
好ましいUV硬化可能なインク組成物は、米国特許第6,114,406号公報に記載されているような、アルコキシル化またはポリアルコキシル化アクリレートモノマー、光開始剤、赤外線吸収剤及び着色剤を含む。
好ましいUV硬化可能なインクジェット組成物は、全組成物に対して多官能性アルコキシル化及び/またはポリアルコキシル化アクリレートモノマー80質量%〜95質量%、赤外線吸収剤及び所望により着色剤を含む。
【0076】
アクリレートモノマー、光開始剤、赤外線吸収剤及び着色剤の量は、特定の装置及び用途に従って変動し得る。しかしながら、光開始剤の量は、全組成物の1質量%〜15質量%が好ましい。
【0077】
多官能性アルコキシル化またはポリアルコキシル化アクリレートモノマー材料は、一種以上のジ−若しくはトリ−アクリレートを含むことができ、あるいはより高い官能性のアルコキシル化またはポリアルコキシル化アクリルモノマーを、単独または一種以上の二及び/または三官能性材料と一緒に使用することができる。アルキレンオキシ基の数は、モノマー1分子当たり1〜20個であるのが好ましく、そのような基はそれぞれ、C2−4−アルキレンオキシ、特にエチレンオキシ(EO)またはプロピレンオキシ(PO)が好ましい。
【0078】
適切な多官能性アルコキシル化またはポリアルコキシル化アクリレートは、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリメチルプロパントリ−アクリレート及びグリセリルトリアクリレートのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化またはプロポキシル化付加物である。
【0079】
インクは、単官能性アルコキシル化またはポリアルコキシル化アクリレートモノマー、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アルキルアクリレート、ノニル−フェノールアクリレート及びポリエチレン−若しくはポリプロピレン−グリコールアクリレートの一種以上のアルコキシル化、特にエトキシル化またはプロポキシル化付加物を10質量%以下含むことができる。
【0080】
インクは、非−アルコキシル化単官能性または多官能性の放射線硬化可能なモノマー、例えばオクチルアクリレート、デシルアクリレート、N−ビニルピロリドン、エチルジグリコールアクリレート、イソボロニルアクリレート、エチル−ヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレートを5質量%以下含むこともできる。
【0081】
市販で利用可能な光開始剤の例としては、好ましくは、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、キノン類及びホスフィンオキシド類がある。一次光開始剤(primary photoinitiator)と一緒に配合し得る共同開始剤(co−initiator)の例としては、アミン類及びアミノベンゾエート類がある。インクが一次開始剤及び共同開始剤を含む場合、総量は、上記好ましい範囲内であるのが好ましい。アミノベンゾエート及びアクリル化アミン共同開始剤は、キサントン及び/またはチオキサントン一次光開始剤と一緒に使用するのが好ましい。
【0082】
「放射線硬化可能:radiation curable」なる用語は、本組成物がUV照射の適用によって硬化可能であることを意味する。そのような組成物は、実質的に無色で硬化可能なワニス若しくは基剤であるか、組成物が着色剤(すなわち、可視または関連する光学的特性、例えば蛍光を提供する材料)を含んでいる場合、インクであってよい。着色剤を配合する場合、インクは着色剤1質量%〜10質量%をインクに対して含むのが好ましい。
【0083】
好ましい着色剤は、二つの種類、即ち(a)インク組成物に実質的に可溶性である染料と、(b)適切な分散剤を用いて、微細粒子の形状でインク組成物中に分散させた顔料とに分けられる。典型的な顔料としては、Pigment Red 57:1、Pigment Red 52:2、Pigment Red 48:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Green 7、Pigment Yellow 83、Pigment Yellow 13及びPigment White 6が挙げられる。着色剤がカーボンブラックである場合、またはカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックはスペクトルのIR領域に強い吸収があるので、通常、赤外線吸収剤は添加する必要はない。
【0084】
インクは、他の少量成分、例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、光開始剤安定剤、湿潤剤及び顔料安定化剤も含むことができる。後者のものとしては、特に高分子量ブロックコポリマーの形態の例えばポリエステル、ポリウレタンまたはポリアクリレートタイプであってもよく、通常、顔料の2.5質量%〜100質量%のレベルで配合する。具体的な例としては、Disperbyk 161または162(BYK Chemie製)及びSolsperse hyperdispersant(Avecia製)がある。好ましい光開始剤安定化剤としては、欧州特許出願第EP0465039A号公報に開示のものが挙げられる。好ましい界面活性剤は、非−イオン性、例えばFluorad FC430(3M Corp.製)がある。配合する場合、そのような界面活性剤は、全組成物の0.1質量%〜10質量%の量で配合するのが好ましい。
【0085】
インク又はワニスは、好ましくは、実質的又は全く有機溶媒を含まない。有機溶媒は、全組成物の質量の10%未満が好ましく、5%未満がより好ましく、1%未満が更に好ましく、0.1%未満が最も好ましい。
【0086】
一般式(1)で表される化合物は、上記UV硬化可能なインクでの使用に限定されず、可溶性または分散可能である任意の他のUV硬化可能なインクで使用することができる。
【0087】
(4)リソグラフィック印刷用インク
本発明のリソグラフィック印刷用インク組成物は、一般式(1)で表される赤外線吸収材料、バインダー及び揮発性溶媒を含有する。好ましくは、更に、着色剤を含有する。更に好ましくは、酸化防止剤、界面活性剤、無機充填剤等を含有しても良い。
【0088】
バインダーは、好ましくは、例えば、フェノール性またはマレイン酸−変性ロジンエステル樹脂上の利用可能なカルボキシル基にポリエポキシドをグラフト化することによって製造した架橋樹脂から誘導し、次いで少なくとも12個の炭素原子をもつ脂肪族アルコールで可溶化させる。
【0089】
フェノール性またはマレイン酸−誘導ロジンエステル樹脂は、約1,500〜3,000の数平均分子量をもつのが好ましい。ポリエポキシドはジエポキシドであるのが好ましく、より好ましくは芳香族または脂環式ジエポキシドであり、特にビスフェノールAジエポキシドが好ましい。ポリエポキシドの分子量は560ダルトン以下が好ましく、100〜500ダルトンがより好ましく、特に300〜500ダルトンである。
【0090】
フェノール性またはマレイン酸−誘導ロジンエステル樹脂は、好ましくは、四つの成分、(a)ポリオール、(b)一塩基性脂肪族カルボン酸、(c)ロジン若しくは変性ロジン、及び(d)ポリカルボン酸及び/またはその無水物の反応生成物であるのが好ましい。ポリオールは好ましくはチオールであり、例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール及びヘキサントリオールがある。好ましい一塩基性脂肪族カルボン酸は、約8個〜20個の炭素原子をもち、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸及び精製トールオイル脂肪酸がある。好ましいロジン及び変性ロジンは、トールオイルロジン、ウッドロジン、水素化ロジン及び脱水素化ロジンから選択される。ポリカルボン酸または無水物は、脂肪族または芳香族であってもよく、例としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、イソフタル酸、フマル酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0091】
フェノール性またはマレイン酸−変性ロジン樹脂は、二段階プロセスによって製造することができ、第一の段階では、ポリオール、一塩基性脂肪族カルボン酸、及びロジンまたは変性ロジンを約250℃〜290℃の温度、好ましくは約260℃〜280℃の温度で反応させて、約1〜10の酸性度指数(acid number)とする。第二段階では、ポリカルボン酸または無水物を添加し、反応を約150℃〜220℃、好ましくは約170℃〜200℃の温度で継続して、約20〜90、好ましくは約20〜50の酸性度指数とする。その結果、一塩基性脂肪族カルボン酸基の全てとロジンカルボン酸基の殆どが約250℃〜290℃で反応し、ペンダント基として芳香族カルボン酸を約150℃〜220℃で添加する。
【0092】
インク樹脂上にポリエポキシドをグラフトさせることによって得られたポリマーは油不溶性となり、これによってスクワレン(皮膚オイル)耐性が強化され、溶媒を放出しやすくなりヒートセット乾燥が改良される。架橋樹脂は殆ど溶解性を有しないので、少なくとも12個の炭素原子、好ましくは12個〜24個の炭素原子、より好ましくは12個〜13個の炭素原子をもつ脂肪族アルコール、例えばNeodol 23(Shell Oil Co.製)を配合することによって溶液中に保持される。
【0093】
高速のリソグラフィック・ウェブ印刷に必要なインクローラー安定性を達成するために、Magie 470及びMagie 500 (Magie Brothers Oil Company,9101 Fullerton Ave.,Franklin Park,Ill製の炭化水素溶媒)などの高沸点石油蒸留液ワニス溶媒も含有する。この脂肪族アルコールは、溶媒に樹脂を溶解させるために使用する。紙への吸着及び熱乾燥プロセスでアルコールが幾らか蒸発することによって、溶解性のバランスが影響を受け、樹脂が溶液から沈殿し、インクフィルムが触れても乾燥している状態になる。より多くのアルコールが蒸発すると、インクはより早く乾燥する。アルコールの適正量は、印刷プロセスの間に乾燥せずにプレスの印刷ローラーにインクを送り、紙に印刷できるような量である。
【0094】
一般式(1)で表される赤外線吸収剤は、インク組成物の総質量をベースとして約0.01%〜5.0質量%、好ましくは約0.1%〜3.0質量%配合される。この量で配合された赤外線吸収剤は、支持体に印刷され、該支持体を赤外線検出器によって照明を当てたときのみに検知される。
【0095】
インクが着色剤も含む場合、印刷されたパターンは視覚的に検出可能であるが、印刷された支持体は同様の方法で、赤外線吸収剤を含有しないインクで印刷した支持体と区別可能である。この着色剤は、種々の従来知られている有機または無機の顔料のいずれであってもよく、例えばモリブデートオレンジ(Molybdate Orange)、チタンホワイト、フタロシアニンブルー、及びカーボンブラックがある。着色剤の含有量は、インクの総質量をベースとして好都合には約5質量%〜30質量%である。
【0096】
変性剤、例えば可塑剤;着色剤用の湿潤剤;レベリング剤、例えばラノリン、パラフィンワックス、及び天然ワックス;滑り剤、例えば低分子量ポリエチレン類及び微結晶質石油ワックスもインクに配合することができる。そのような変性剤は、インクの総質量をベースとして約3質量%以下、好ましくは約1質量%を変動する量で使用する。他の成分も慣用的にインク及びコーティングに使用して、接着性、強靱性を変性し、他の基本性質も使用することができる。
【0097】
リソグラフィック印刷用インクは、公知の分散方法に従って、混合及び濾過工程など、例えばスリーロール・ミルなどの任意の方法で製造することができる。インクは、任意の公知且つ慣用方法にて、支持体、好ましくは紙に塗工することができる。
【0098】
(5)インクジェット印刷用(IJP)インク
有機溶媒ベースのインクジェット印刷用インク組成物は、好ましくは、有機溶媒に溶解させた少なくとも一種の芳香族スルホンアミドまたはヒドロキシ安息香酸エステルを含有する。
【0099】
芳香族スルホンアミドは、好ましくは所望により置換されたトルエンスルホンアミド、例えばp−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、N−ブチル−p−トルエン−スルホンアミド及びN−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドである。この芳香族スルホンアミドは、好ましくは0.1質量%〜40質量%の量で有機溶媒ベースのIJPインクに配合するのが好ましい。
【0100】
ヒドロキシ安息香酸エステルは、好ましくはアルキルエステル、特に6〜12個の炭素原子を含有するもの、例えば2−エチルヘキシルp−ヒドロキシベンゾエート及びn−ノニルp−ヒドロキシ−ベンゾエートである。ヒドロキシ安息香酸エステルは、0.1質量%〜40質量%の量で有機溶媒ベースのIJPインクに配合するのが好ましい。
【0101】
芳香族スルホンアミド及びヒドロキシ安息香酸エステルは、高い極性をもっているので、効果的に染料の結晶化を阻害する。
本発明の一般式(1)で表される赤外線吸収剤は、インクの総質量をベースとして約0.01質量%〜5.0質量%、好ましくは約0.1質量%〜3.0質量%の量でインクに配合され、支持体に塗工されると、赤外線検出器によってのみ検知されるので、不可視の赤外線吸収インクが提供される。
【0102】
インクが着色剤も含む場合、印刷したパターンは視覚的に検出可能であるが、印刷した支持体は、同様の方法で赤外線吸収剤を含まないインクで印刷した支持体とは区別することもできる。着色剤は、このインク組成物に配合される有機溶媒に可溶であるか、又は上記芳香族スルホンアミド若しくはヒドロキシ安息香酸エステルに可溶な任意の染料であってよい。通常、有用な染料としては、アゾ染料、金属錯体塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インディゴ染料、カルボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、及びフタロシアニン染料が挙げられる。これらの染料は、独立に、または組み合わせて使用することができる。染料は、インクの総質量をベースとして0.1質量%〜10質量%の量で、好ましくは0.5質量%〜5質量%の量でインク組成物に配合するのが好ましい。
【0103】
本発明のIJPインクで使用する有機溶媒は、染料又は染料混合物にもよるが、殆どの染料は極性であるので、高極性溶媒は良溶媒として機能し、極性の高くない溶媒は貧溶媒として機能する。従って、染料を溶解する高い能力をもつ高極性溶媒が、IJPインクの製造には好ましい。しかしながら、極性の低い溶媒も芳香族スルホンアミド若しくはヒドロキシ安息香酸エステルと混合、又はより高い極性の溶媒と組み合わせれば、使用することもできる。IJPインクで使用し得る有機溶媒の具体例としては、脂肪族炭化水素類;ナフテン性炭化水素類;芳香族炭化水素類、例えば一若しくは二置換アルキルナフタレン類、ビフェニル類、キシリルエタン及びフェネチルクメンのアルキル誘導体;グリコール類;グリコール類のモノ−若しくはジ−アルキルエーテル類及びグリコール類のエステル類;脂肪酸及びそのエステル類;含窒素化合物、例えばアミド及びピロリドン化合物が挙げられる。しかしながら、IJPインクの製造に使用し得る有機溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0104】
溶媒は、沸点が高ければ高いほど、蒸発が少なく乾燥が遅くなり有利である。しかしながら、高い沸点をもつ溶媒は、高粘度のインクを生成する傾向があり、インクを円滑に射出するのが困難となる。他方、低い沸点をもつ溶媒で得られるインクは、乾燥が速すぎてノズルオリフィスで乾燥してしまう。従って、所望の粘度及び沸点をもつ適切な溶媒は、プリントヘッドに採用されるインク乾燥防止手段を考慮して選択される。
【実施例】
【0105】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例の記載は、全ての部及び割合については、他に記載しない限り「質量」による。
【0106】
実施例1
1.インクの調製
表1に示す配合比でリソグラッフィック印刷用インク組成物を作製した。赤外吸収剤として、本発明の一般式(1)で表される化合物及び比較の化合物を用いて、インク組成物(1a)〜(1f)を得た。インク組成物Noと用いた赤外吸収剤を表2に示した。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【化5】

【0110】
2.性能評価
得られたインク配合物(1a)〜(1f)について、以下の評価を行った。
(1)分光吸収スペクトルの測定
インク配合物(1b)及び(1f)に用いた化合物9及び比較化合物3の分光吸収スペクトルを日立分光光度計U−4100により測定した。
測定条件:3.2mgの本発明の化合物9を1.0LのTHFに溶解させたサンプルを1cmセルに入れ日立分光光度計U−4100により測定した。一方、比較例として、4.9mgの比較化合物3を1.0LのTHFに溶解させたサンプルについて同様に測定した。
【0111】
得られた分光吸収スペクトルを図1に示した。
図1より明らかに、比較化合物3では、可視域に副吸収が認められるのに対して、本発明の一般式(1)で表される化合物9を用いた場合、800nm付近に高い近赤外吸収を有するのに対して、可視域の副吸収が極めて少ない。
従って、本発明の一般式(1)で表される化合物9を用いたインク配合物(1b)は、機密印刷インキ(security printing ink)で使用した場合、視認されず、赤外線検出器により高い精度で検出することができる。
【0112】
(2)印刷物の耐光性及び熱堅牢性の評価
得られたインク組成物(1a)〜(1f)を各々用いて、普通紙を支持体として印刷物を作製した。
【0113】
<耐光性の評価>
得られた各々印刷物を、キセノンランプにて9.5万ルクスで表2に記載の時間照射した。キセノンランプ照射前後における各々の近赤外域分光吸収極大波長における濃度を測定し、その残存率を求めた。
<熱堅牢性、湿熱堅牢性の評価>
得られた各々印刷物を80℃で各表に記載の時間保存し、その前後の各々の近赤外域分光吸収極大波長における濃度を測定し、その残存率を求め、それぞれの熱堅牢性を評価した。また、60℃、相対湿度(RH)90%の条件下にて各表に記載の時間保存し、その前後の各々の近赤外域分光吸収極大波長における濃度を測定し、その残存率を求め、それぞれの湿熱堅牢性を評価した。
【0114】
得られた結果を表2に示した。本発明のインク組成物(1a)〜(1c)により形成した印刷物は、比較のインク組成物(1d)〜(1f)に比べて、予想外に高い光堅牢性、熱堅牢性、且つ湿熱堅牢性を示した。
【0115】
実施例2
1.インクの調製
表3に示す配合比で凹版印刷用インク組成物を作製した。赤外吸収剤として、本発明の一般式(1)で表される化合物及び比較の化合物を用いて、インク組成物(2a)〜(2f)を得た。インク組成物Noと用いた赤外吸収剤を表4に示した。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
2.性能評価
1)印刷物の作製
得られたインク組成物(2a)〜(2f)を各々用いて、普通紙を支持体として印刷した印刷物を作製した。
【0119】
2)印刷物の耐光性及び熱堅牢性の評価
得られた印刷物について、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表4に示した。
実施例1と同様に、本発明のインク組成物(2a)〜(2c)により形成した印刷物は、比較のインク組成物(2d)〜(2f)に比べて、予想外に高い光堅牢性、熱堅牢性、且つ湿熱堅牢性を示した。
【0120】
実施例3
1.インクの調製
表5に示す配合比でUV硬化インク組成物を作製した。赤外吸収剤として、本発明の一般式(1)で表される化合物及び比較の化合物を用いて、インク組成物(3a)〜(3f)を得た。インク組成物Noと用いた赤外吸収剤を表6に示した。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
2.性能評価
1)印刷物の作製
得られたUV硬化インク組成物(3a)〜(3g)を用いて、各々普通紙を支持体として一般式(1)で表される化合物(赤外線吸収剤)を含むマークを付与した。
【0124】
2)印刷物の耐光性及び熱堅牢性の評価
得られた印刷物について、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表6に示した。
実施例1と同様に、本発明のUV硬化インク組成物(3a)〜(3d)により形成した印刷物は、比較のUV硬化インク組成物(3e)〜(3g)に比べて、予想外に高い光堅牢性、熱堅牢性、且つ湿熱堅牢性を示した。
【0125】
実施例4
1.インクジェット用インクの調製
表7に示す配合比で溶媒ベースのインクジェット用インク組成物を作製した。赤外吸収剤として、本発明の一般式(1)で表される化合物及び比較の化合物を用いて、インク組成物(4a)〜(4f)を得た。インク組成物Noと用いた赤外吸収剤を表8に示した。
【0126】
【表7】

【0127】
【表8】

【0128】
2.性能評価
1)印刷物の作製
得られたインクジェット用インク組成物(4a)〜(4f)を用いて、各々普通紙を支持体として印刷した印刷物を作製した。
【0129】
2)印刷物の耐光性及び熱堅牢性の評価
得られた印刷物について、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表8に示した。
実施例1と同様に、本発明のインク組成物(4a)〜(4c)により形成した印刷物は、比較のインク組成物(4d)〜(4f)に比べて、予想外に高い光堅牢性、熱堅牢性、且つ湿熱堅牢性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明により提供されるインク、トナー及びそれらを用いた情報検出方法は、プリペイドカード、クレジットカード、銀行カード、身分証明書、免許証、切符、入場チケット、会員カード、証券等のカード、有価証券、紙幣、チケット、及び証明書等の、改ざん、偽造防止、識別等の照合手段として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する印刷用インク又はトナー:
【化1】


(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。)。
【請求項2】
更に、着色剤及びバインダーを含有する請求項1に記載の印刷用インク又はトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷用インク又はトナーを用いて情報が印刷された印刷物。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷物を赤外線検出器によりスキャンすることにより前記印刷物に印刷された情報を検出する情報検出方法。
【請求項5】
製品または支持体に下記一般式(1)で表される化合物を含むマークを付与し、次いで該マークを赤外線照射し、該一般式(1)で表される化合物による光吸収を検出または測定する工程を含む製品または支持体の真偽を証明する方法:
【化2】


(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、又はRとRが互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。)。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180308(P2010−180308A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24196(P2009−24196)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】