説明

ジビニルアレーンジオキシドに基づく付加物

付加ポリアミン組成物を提供する、(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)過剰のポリアミンとの反応生成物を含むポリアミン付加物;当該付加物の製造方法;ジビニルベンゼン、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などから誘導される付加物と、(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂、及び(iii)必要に応じて、共硬化剤及び/又は触媒を含む硬化性エポキシ樹脂組成物;並びに前記硬化性エポキシ樹脂組成物から製造される硬化製品。硬化性エポキシ樹脂組成物から製造される硬化製品は熱的に安定であり、改善された特性、例えば、低い粘度及び高い耐熱性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジビニルアレーンジオキシドに基づく付加物に関する。より詳しくは、本発明は、ジビニルアレーンジオキシドとポリアミンとの反応生成物を含むアミン及び/又はヒドロキシル官能性付加物に関し、付加ポリアミン(adducted polyamines)を提供する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂配合物が使用される様々な用途において、エポキシ樹脂配合物中でのポリアミンの相溶性を高めるため及び当該ポリアミンの反応性を改善するに、少量のエポキシ樹脂とのポリアミンの付加物が使用される。例えば、米国特許第2,901,461号(第461号特許)には、ポリアミンとポリグリシジルエーテルとの付加物を含む組成物と、エポキシ樹脂配合物及び組成物におけるかかる付加物の使用が記載されている。しかしながら、上記先行技術の前記付加物の形成は、未変性ポリアミンと比べて、粘度の著しい望ましくない増加をもたらす。
【0003】
例えば、米国特許第2,901,461号明細書に記載されている付加物は、当該付加物は、(i)配合物での粘度が低いという利点があるが、それより誘導される熱硬化物は耐熱性が低いという不利益があるか、又は(ii)それより誘導される熱硬化物は耐熱性が高いという利点があるが、配合物での粘度が高いため、硬化性組成物の調製に使用される場合に欠点がある。
【0004】
例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)製のD.E.H.(登録商標)52エポキシ硬化剤(ビスフェノールAジグリシジルエーテルとジエチレントリアミン(DETA)の付加物)は、約6.25Pa・sの粘度を有し、化学量論的量のビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)とのその熱硬化物は約145℃のガラス転移温度(Tg)を有する。比較として、国際公開第2002/022709号に記載されている1当量のブタンジオールジグリシジルエーテルと3当量のDETAとの付加物は約0.82Pa・sの粘度を有するが、化学量論的量のBADGEとのその熱硬化物のTgは約91℃に過ぎない。
【0005】
米国特許第2,912,389号(第389号特許)には、ジビニルベンゼンジオキシドとポリアミンとを反応させることにより調製されたポリマーが記載されている。第389号特許の得られる生成物は、架橋ポリマー生成物である。第389号特許には、他のエポキシ樹脂によるさらなる架橋に使用できるポリアミンの付加物は開示されておらず、付加物組成物が架橋ポリマーを形成できないようなエポキシ/NH基の当量比を有する付加物組成物は開示されていない。
【0006】
産業界で必要とされているものは、低い粘度を有する改良されたエポキシ付加ポリアミン組成物(epoxy-adducted polyamine composition)、及び誘導される熱硬化物の耐熱性を損なわない硬化性エポキシ樹脂組成物において使用できるエポキシ付加ポリアミン組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,901,461号明細書
【特許文献2】国際公開第2002/022709号
【特許文献3】米国特許第2,912,389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、低い粘度と、それから誘導される熱硬化物における高い耐熱性の両方を有し、エポキシド基の完全な転化によっては架橋することができない新規な付加物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、付加ポリアミン組成物を提供する、(a)ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)と、(b)ポリアミン、例えばエチレンアミン又はアルカノールアミンとの反応生成物を含むポリアミン付加物に関する。ここで、当該組成物のアミン−水素当量/エポキシド当量の比は5を超える。
【0010】
本発明の別の態様は、(a)上記のポリアミン付加物と、(b)成分(a)以外の少なくとも1種のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含む硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0011】
上記のポリアミン付加物を含む硬化性エポキシ樹脂組成物は低い粘度を有し、硬化によって、硬化後に得られた硬化コンパウンドは高い耐熱性を有する。ジビニルアレーンジオキシドに基づくかかる組成物から誘導された熱硬化物、及び当該組成物の調製方法も本明細書に開示する態様である。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、上記のポリアミン付加物及び硬化性エポキシ樹脂組成物の調製方法に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、先行技術の類似体と比べて、硬化前に著しく低い粘度を有し、しかも、硬化後により高い耐熱性を有する上記の硬化性エポキシ樹脂組成物から誘導された熱硬化物に関する。
【0014】
一態様において、上記付加物に基づく硬化性エポキシ樹脂熱硬化物配合物を硬化させて熱硬化物を形成することができる。得られた硬化性の熱硬化配合物は、様々な用途、例えば、コーティング、接着剤、複合材料、電子装置などで使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
そのもっとも広い範囲において、本発明は、付加ポリアミン組成物を提供する、(a)ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)と、(b)ポリアミン、例えばエチレンアミン又はアルカノールアミンとの反応生成物を含むポリアミン付加物を含む。当該付加物を、次に、硬化性エポキシ樹脂組成物又は配合物を形成するために使用できる。得られた硬化性エポキシ樹脂組成物は、当該技術分野で知られている1又は2種以上の任意添加剤を含んでもよい。
【0016】
本発明の利点のうちの1つとしては、例えば、DVBDOが他の芳香族エポキシ樹脂よりもかなり低い粘度を有することが挙げられる。そのため、低い粘度を保ちつつ、最大限の量のポリアミンを骨格中に含めてより高いアミン水素当量(AEW)を達成することができる。
【0017】
本発明において、ジビニルアレーンジオキシド、例えばDVBDOは、ジビニルアレーンと過酸化水素とを反応させて本発明のエポキシ樹脂組成物において有用なジビニルアレーンジオキシドをもたらすことにより調製される。得られたジビニルアレーンジオキシド生成物を、次に、本発明の付加物を調製するために使用できる。
【0018】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼン、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などから誘導されたものは、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い剛性を有する部類のジエポキシドである。本発明の成分(a)は、従って、DVBDO及びその種々の異性体を含み得る。
【0019】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば、任意の環位置に2つのビニル基を有する任意の置換又は非置換アレーン核を含んでよい。ジビニルアレーンジオキシドのアレーン部分は、ベンゼン、置換ベンゼン、(置換)環付加(ring-annulated)ベンゼン又は同族的に結合した(置換)ベンゼン、又はそれらの混合物から成ることができる。ジビニルアレーンジオキシドのジビニルベンゼン部分は、オルト(ortho)、メタ(meta)若しくはパラ(para)異性体又はそれらの任意の混合物であることができる。さらなる置換基は、H耐性基、例えば飽和アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート、又はRO−(Rは飽和アルキル又はアリールであることができる)などから成ることができる。環付加ベンゼンは、ナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどから成ることができる。同族的に結合した(置換)ベンゼンは、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどから成ることができる。
【0020】
一態様において、本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドは、例えば、Marks他により2008年12月30日に出願された米国特許出願番号第61/141,457号(引用により本明細書に援用する)に記載されている方法によって製造することができる。
【0021】
本発明の組成物を調製するために使用されるジビニルアレーンジオキシドは、下記一般化学構造I〜IVにより一般的に例示することができる:
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
本発明のジビニルアレーンジオキシドコモノマーについての上記構造I〜IVにおいて、各R、R、R及びRは、独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル基、又はH耐性基、例えばハロゲン、ニトロ、イソシアネート若しくはRO基(式中、Rはアルキル、アリール又はアラルキルであることができる)などであることができ、xは0〜4の整数であることができ、yは2以上の整数であることができ、x+yは6以下の整数であることができ、zは0〜6の整数であることができ、z+yは8以下の整数であることができ、Arはアレーンフラグメント、例えば1,3−フェニレン基などである。
【0025】
別の態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド成分は、例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、及びこれらの混合物を含んで成ることができる。
【0026】
本発明の好ましい一態様において、エポキシ樹脂配合物中に使用されるジビニルアレーンジオキシドは例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)であることができる。最も好ましくは、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド成分としては、例えば、下記の構造Vの化学式により例示されるジビニルベンゼンジオキシドが挙げられる:
【0027】
【化3】

【0028】
上記DVBDO化合物の化学式はC1010であり、DVBDOの分子量は約162.2であり、DVBDOの元素分析は、およそ、C,74.06;H,6.21;及びO,19.73であり、エポキシド当量は約81g/molである。
【0029】
ジビニルアレーンジオキシド、特に、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などのジビニルベンゼンから誘導されたものは、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い剛性及び架橋密度を有する部類のジエポキシドである。
【0030】
下記構造VIは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の態様を例示する:
【0031】
【化4】

【0032】
下記構造VIIは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の別の態様を例示する:
【0033】
【化5】

【0034】
DVBDOが当該技術分野で知られている方法により調製される場合、オルト、メタ及びパラの3つの可能な異性体のうちの1つを得ることが可能である。そのため、本発明は、上記構造のうちのいずれか1つにより例示されるDVBDOを個別に含むか又は上記構造のDVBDOを混合物として含む。上記構造VI及びVIIは、それぞれ、DVBDOのメタ(1,3−DVBDO)異性体及びパラ(1,4−DVBDO)異性体を示す。オルト異性体は少なく、通常、DVBDOは、たいてい、メタ(構造VI)異性体とパラ(構造VII)異性体を一般的に約9:1〜約1:9の範囲内の比で生じる。本発明は、好ましくは、一態様として、約6:1〜約1:6の範囲内の比で構造VIと構造VIIを含み、別の態様において、構造VIと構造VIIの比は約4:1〜約1:4又は約2:1〜約1:2であることができる。
【0035】
本発明の別の態様において、ジビニルアレーンジオキシドは、置換アレーンを含んでよい(例えば約20質量%未満)。置換アレーンの量及び構造は、ジビニルアレーンジオキシドへのジビニルアレーン前駆体の調製に使用される方法に依存する。例えば、ジエチルベンゼン(DEB)の脱水素化により調製されたジビニルベンゼン(DVB)は、エチルビニルベンゼン(EVB)及びDEBを含むことがある。過酸化水素との反応によって、EVBは、エチルビニルベンゼンモノオキシドを生成し、一方、DEBは変化せずに残る。これらの化合物の存在は、ジビニルアレーンジオキシドのエポキシド当量を、純粋な化合物のエポキシド当量を超える値に増加させることができる。
【0036】
一態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)は、低粘度液体エポキシ樹脂(LER)組成物を構成する。本発明のエポキシ樹脂組成物の調製方法において使用されるジビニルアレーンジオキシドの粘度は、一般的に、25℃で、約10mPa・s〜約100mPa・s、好ましくは約10mPa・s〜約50mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約25mPa・sである。
【0037】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの別の有利な特性は、例えばその剛性であろう。ジビニルアレーンジオキシドの剛性は、Prediction of Polymer Properties, Dekker, New York, 1993に記載されているBiceranoの方法を使用して、側鎖を除くジオキシドの回転自由度の計算値に求められる。本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドの剛性は、一般的に、約6〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約6〜約8の回転自由度に及ぶことができる。
【0038】
本発明の付加物の調製に使用されるジビニルアレーンジオキシドの濃度は、アミンの水素当量/エポキシ当量の比が5を超えるように、一般的に、約1質量%(wt%)〜約99wt%、好ましくは約5wt%〜約95wt%、より好ましくは約10wt%〜約90wt%である。
【0039】
本発明において有用なポリアミン(成分(b))は、当該技術分野で知られているいずれの従来のポリアミンであってもよい。本発明の目的に対し、本明細書における「ポリアミン」は、当該技術分野で従来知られている一般的な部類のポリアミン類及びアルカノールアミン類を包含する。一態様において、本発明において使用されるポリアミンは、当該技術分野で従来知られているいずれのアミン化合物、例えば米国特許第2,912,389号(引用により本明細書に援用)にアミン化合物として記載されているものなどであってもよい。例えば、脂肪族アミン類、例えばジエチレントリアミンなど、脂環式アミン類、例えばイソホロンジアミンなど、アルカノールアミン類、例えばジエタノールアミンなど、アラルキルアミン類、例えばキシレンジアミンなど、アリールアミン類、例えばトルエンジアミンなど、及びそれらの混合物を本発明において使用できる。
【0040】
例えば、本発明の組成物の実施において有用なポリアミン類は、例えば、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルペンタメチレンジアミン、N−ヒドロキシプロピルテトラメチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、N,N−ジヒドロキシエチルジエチレントリアミン、N,N’’−ジヒドロキシエチルジエチレントリアミン、N−ヒドロキシプロピルジエチレントリアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルジエチレントリアミン、N,N’’−ジヒドロキシプロピルジエチレントリアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルジプロピレントリアミン、N−ジヒドロキシエチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ジヒドロキシエチルジプロピレントリアミン、トリス−ヒドロキシエチルトリエチレンテトラミン、及びそれらの混合物などを含む米国特許第2,901,461号(引用により本明細書に援用する)に記載されているヒドロキシアルキルアルキレンポリアミンであることができる。
【0041】
一態様において、アミン及びヒドロキシル官能性付加物を提供するために本発明のジビニルアレーンジオキシドとの反応に使用されるポリアミン(本発明の成分(b))としては、例えば、アルカノールアミン類、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど;4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン;2−アミノ−ブタノール;2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール;及びそれらの組合せが挙げられる。本発明において有用な他のアルカノールアミン類は、引用により本明細書に援用する米国特許出願公開第2004/0147690A1号に記載されている。
【0042】
別の態様において、次の化学構造で示されるアルカノールアミン類も使用できる。
【0043】
【化6】

【0044】
本発明の組成物において使用できる幾つかの任意成分の例としては、反応触媒、例えば他のアミン類、他のエポキシ樹脂、フェノール類、例えばビスフェノールAなど、及び溶媒、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
本発明のポリアミン付加物の調製は、反応器に、ジビニルアレーンジオキシド、ポリアミン、及び必要に応じて溶媒を加え、これらの成分を反応条件下で反応させてポリアミン付加物を生成させることにより達成される。所望の反応度が達成されるまで上記成分を加熱する。得られた生成物は、単離前又は単離中に放冷され、熱硬化性配合物において即座に使用可能である。
【0046】
付加物を形成するための反応条件としては、一般的には約0℃〜約200℃、好ましくは約20℃〜約180℃、より好ましくは約40℃〜約160℃の範囲内の温度で反応を実施することが挙げられる。反応圧力は、約0.1bar〜約10bar、好ましくは約0.2bar〜約5bar、より好ましくは約0.5bar〜約2barであることができる。
【0047】
本発明の反応方法は、回分式又は連続式であることができる。当該方法で使用される反応器は当業者に知られている任意の反応器及び付帯設備であることができる。
【0048】
ジビニルアレーンジオキシドとポリアミンの新規な付加物は、先行技術の付加物と比べて、誘導される熱硬化物の粘度がより低く、耐熱性が高いアミン官能性組成物である。
【0049】
本発明の方法により調製される付加物の粘度は、一般的に、25℃で、約0.1Pa・s〜約900Pa・s、好ましくは約1Pa・s〜約500Pa・s、より好ましくは約2Pa・s〜約100Pa・sである。
【0050】
本発明の方法により調製される付加物のアミン当量(AEW)は、一般的に約16〜約46、好ましくは約18〜約45、より好ましくは約20〜約45である。
【0051】
本発明の付加物は、例えば、硬化性又は熱硬化性配合物又は組成物における硬化剤(curing agent)(硬化剤(hardener)又は架橋剤)成分として有用である。例えば、本発明の付加物は、エポキシ熱硬化性配合物における硬化剤(hardener)成分として有用である。本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物は、例えば、エポキシ樹脂用の硬化剤(curing agent)として使用できる。本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物は、エポキシ及び酸無水物の硬化性配合物を触媒するために使用できる。本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物は、ポリオール及びイソシアネート配合物のための触媒としても使用できる。本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物は、エポキシ硬化触媒としても使用できる。
【0052】
そのため、本発明の態様を説明するために、本発明に従って2つのタイプのアミン官能性付加物を製造できる:
1.室温で液体のままでいる低粘度樹脂。例えば、低粘度樹脂を接着促進剤としてフェノール系硬化剤に加えることができる。
2.室温で固体のままでいるように他のアミン類をより高AEWにするためにより多くのエポキシDVBDOが使用される固体アミン官能性樹脂。
【0053】
例えば、固体アミン官能性樹脂は、紛体コーティング用途用の非焼結硬化剤として使用できる。
【0054】
本発明の別の広い態様において、(i)上記付加物、(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂、(iii)必要に応じて、硬化剤、及び(iv)必要に応じて、硬化触媒、の混合物を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を調製することができる。
【0055】
硬化性エポキシ樹脂組成物の第1の成分(i)は、上記のとおりのポリアミン付加物を含む。
【0056】
第1の成分(i)は、必要に応じて、他のアミン、ポリアミン、付加アミン(adducted amines)を含んでもよい。これらの任意の化合物の例は先に列挙した。任意のアミンは、約1質量%〜約99質量%、好ましくは約5質量%〜約95質量%、最も好ましくは約10質量%〜約90質量%の範囲の濃度で存在することができる。
【0057】
本発明の硬化性混合物において使用される成分(i)のポリアミン付加物の濃度は、一般的に、アミン当量とエポキシド当量の比rの値で約0.01〜約1、好ましくは約0.05〜約1、より好ましくは約0.10〜約1の値に及ぶことができる。0.01未満のr値では、ポリアミン付加物の濃度は配合物中で有意でなく、一方、1を超える値は、使用できるものの硬化後に未反応の付加物が硬化組成物中に残る。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製において、上記の付加物に加えて、混合物は少なくとも1種のエポキシ樹脂(成分(ii))を含んでもよい。エポキシ樹脂は、少なくとも1つのビシナルエポキシ基を含む化合物である。エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であることができ、置換されていてもよい。エポキシ樹脂は、モノマーであってもポリマーであってもよい。本発明において有用なエポキシ樹脂は、当該技術分野で知られている任意のエポキシ樹脂から選択できる。本発明において有用なエポキシ樹脂の広範な列挙が、引用により本明細書に援用するLee, H.及びNeville, K., "Handbook of Epoxy Resins," McGraw-Hill Book Company, New York, 1967, Chapter 2, 第257-307頁に見られる。
【0059】
本発明の成分(ii)としてここに開示する態様において使用されるエポキシ樹脂は様々なものであることができ、かかる樹脂としては、従来のエポキシ樹脂及び市販のエポキシ樹脂が挙げられ、単独で使用するか、又は2種以上を併用できる。本明細書に開示する組成物に対してエポキシ樹脂を選択する際に、最終生成物の特性だけ考慮されるべきでなく、樹脂組成物の加工に影響を及ぼしうる粘度や他の特性も考慮されるべきである。
【0060】
当業者に知られている特に適するエポキシ樹脂は、多官能性アルコール類、フェノール類、脂環式カルボン酸、芳香族アミン又はアミノフェノール類と、エピクロロヒドリンとの反応生成物に基づく。幾つかの非限定的な態様として、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、及びパラ−アミノフェノール類のトリグリシジルエーテルが挙げられる。当業者に知られている他の好適なエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとo−クレゾールの反応生成物、及びフェノールノボラック樹脂が挙げられる。2種又は3種以上のエポキシ樹脂の混合物を使用することもできる。
【0061】
上記エポキシ樹脂組成物の調製のために本発明において有用なエポキシ樹脂(成分(ii))は、市販の製品から選択できる。例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なD.E.R.(登録商標)331、D.E.R.332、D.E.R.334、D.E.R.580、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736又はD.E.R.732エポキシ樹脂を使用できる。本発明の1つの例示として、エポキシ樹脂成分(a)は、175〜185のエポキシド当量(EEW)、9.5Pa・sの粘度及び1.16g/ccの密度を有する液体エポキシ樹脂であるD.E.R.383エポキシ樹脂(DGEBPA)であることができる。エポキシ樹脂成分として使用できる他の市販のエポキシ樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.354又はD.E.R.332であることができる。
【0062】
本発明において有用な他の好適なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第3,018,262号、米国特許第7,163,973号、第6,887,574号、第6,632,893号、第6,242,083号、第7,037,958号、第6,572,971号、第6,153,719号及び第5,405,688号明細書;PCT国際公開第2006/052727号;並びに米国特許出願公開第2006/0293172号、第2005/0171237号及び第2007/0221890号明細書に開示されており、それらの開示はそれぞれ引用により本明細書に援用する。
【0063】
好ましい一態様において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂は、任意の芳香族又は脂肪族のグリシジルエーテル又はグリシジルアミン、あるいは脂環式エポキシ樹脂を含む。別の好ましい態様において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂は、ジビニルアレーンジオキシド、好ましくはジビニルベンゼンジオキシドを含む。
【0064】
一般的に、本発明において使用されるエポキシ樹脂の選択は用途に依存する。しかし、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)及びその誘導体が特に好ましい。他のエポキシ樹脂は、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択できるが、これらに限定されない。
【0065】
成分(ii)のエポキシ樹脂は、一般的に、エポキシド当量とアミン当量の比reの値で約10〜約1、好ましくは約5〜約1、より好ましくは約2〜約1に及ぶ濃度で硬化性混合物組成物中に存在することができる。10を超えるrの値では、ポリアミン付加物の濃度は配合物中で有意でなく、一方、1未満の値は、使用できるものの硬化後に未反応の付加物が硬化組成物中に残る。
【0066】
各種の添加剤、例えば硬化剤、触媒、溶媒、他の樹脂、安定剤、充填剤、可塑剤、触媒失活剤及びそれらの混合物などを必要に応じて本発明の組成物に加えてよい。
【0067】
一態様において、例えば、反応性の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む硬化性組成物は、(i)上記のようなジビニルアレーンジオキシドとポリアミンとの付加物、(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂、(iii)必要に応じて、少なくとも1種の共硬化剤、及び(iv)必要に応じて、少なくとも1種の触媒との反応生成物を含む。
【0068】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において有用な必要に応じて使用される共硬化剤(成分(iii))は、エポキシ樹脂を硬化させるための当該技術分野で知られているいずれの従来の硬化剤を含んでよい。熱硬化性組成物において有用な共硬化剤(co-curing agent)(共硬化剤(co-hardener)又は共架橋剤(co-cross-linking agent))は、例えば、酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、フェノール系化合物、ポリオール、又はそれらの混合物(これらに限定されない)などの当該技術分野でよく知られている硬化剤から選択できる。
【0069】
本発明において有用な任意の共硬化剤の例には、エポキシ樹脂をベースとする組成物を硬化させるのに有用であることが知られている硬化性材料のいずれも含まれる。かかる材料としては、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミノアミド、ジシアンジアミド、ポリフェノール、ポリマーチオール、ポリカルボン酸及び酸無水物、ポリオール、第3級アミン、第4級アンモニウムハロゲン化物、並びにそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。硬化剤の他の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノール−Aノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンのフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック、ジフェニルスルホン、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。当該組成物中の水/エタノールの存在に対して感応性の共硬化剤は通常推奨されない。従来のエポキシ硬化剤の中で、アミン及びアミノ又はアミド含有樹脂が好ましい。
【0070】
ジシアンジアミド(「dicy」)は、本発明において有用な共硬化剤の1つの好ましい態様である。dicyは、その硬化特性を活性化するのに比較的高い温度を必要とするため、dicyは硬化遅延をもたらすという利点を有し、dicyをエポキシ樹脂に加え、室温(約25℃)で貯蔵することができる。
【0071】
エポキシ樹脂組成物において使用される共硬化剤の量は、一般的に、その配合物で使用される硬化剤の合計の0当量%〜約99当量%、好ましくは約1当量%〜約90当量%、より好ましくは約5当量%〜約95当量%に及ぶ。より高い当量%の共硬化剤の使用は、その配合物中にほんのわずかな量のポリアミン付加物を与える。
【0072】
本発明の硬化性組成物を調製する際に、少なくとも1種の触媒を必要に応じて使用してもよい。本発明において使用される触媒は、少なくとも1種のエポキシ樹脂の重合、例えばホモ重合に合わせて作られたものであってもよい。あるいは、本発明において使用される触媒は、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤(使用される場合)との間の反応に合わせて作られたものであってもよい。
【0073】
本発明において有用な必要に任意の触媒(成分(iv))としては、当該技術分野でよく知られている触媒、例えばアミン部分、ホスフィン部分、複素環式窒素部分、アンモニウム部分、ホスホニウム部分、アルソニウム部分、スルホニウム部分及びそれらの任意の組み合わせを含む触媒化合物が挙げられる。本発明の触媒の幾つかの非限定的な例としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウム;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド;引用により本明細書に援用する米国特許第4,925,901号明細書に記載されている複素環式窒素含有触媒;イミダゾール類;トリエチルアミン;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
本発明において有用な触媒の選択は限定されず、エポキシ系に対して一般的に使用されている触媒を使用できる。また、触媒の添加は任意選択的であり、調製される系に依存する。触媒が使用される場合、触媒の好ましい例としては、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン、及び酸塩が挙げられる。
【0075】
最も好ましい触媒としては、第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0076】
本発明において使用される任意の触媒の濃度は、一般的に0wt%〜約25wt%、好ましくは約0.01wt%〜約20wt%、より好ましくは約0.01wt%〜約15wt%、最も好ましくは約0.01wt%〜約10wt%に及ぶことができる。より高濃度の任意の触媒の使用は、硬化した組成物の特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0077】
本発明のさらに別の態様において、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の任意の有機溶媒を硬化性エポキシ樹脂組成物中に使用できる。例えば、芳香族化合物、例えばキシレンなど、ケトン、例えばメチルエチルケトンなど、及びアルコール、例えば1−メトキシ−2−プロパノール、並びにそれらの混合物を本発明において使用できる。
【0078】
本発明において使用される任意の溶媒の濃度は、一般的には、0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1〜約70wt%、最も好ましくは約5wt%〜約50wt%である。
【0079】
本発明の硬化性又は熱硬化性組成物は、必要に応じて、1又は2種以上の添加剤(それらの意図する用途に有用なもの)を含んでよい。例えば、本発明の組成物において有用な任意選択的な添加剤としては、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、顔料又は染料、艶消し剤、脱ガス剤、難燃剤(例えば、無機難燃剤、ハロゲン系難燃剤、及び非ハロゲン系難燃剤、例えばリン含有材料)、強化剤、硬化開始剤、硬化抑制剤、湿潤剤、着色剤又は顔料、熱可塑性材料、加工助剤、紫外線(UV)遮断化合物、蛍光化合物、紫外線(UV)安定剤、不活性充填剤、繊維強化材、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、例えば熱可塑性粒子など、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記のリストは例示を目的とし、限定を目的とするものでない。当業者は、本発明の配合物に対して好ましい添加剤を最適化することができる。
【0080】
追加の添加剤の濃度は、全組成物の質量を基準にして、一般的に約0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約70wt%、最も好ましくは約1wt%〜約50wt%である。これらの範囲を超える濃度では、硬化性組成物の特性に悪影響が及ぶ。
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製は、次の成分:上記付加物、エポキシ樹脂、必要に応じて共硬化剤、必要に応じて触媒、及び必要に応じて不活性有機溶媒を容器内で混合し、次にこれらの成分を配合してエポキシ樹脂組成物にすることにより達成される。混合順序に重要度はない。すなわち、本発明の配合物又は組成物を構成する成分は、本発明の熱硬化性組成物をもたらすために、任意の順序で混合されてよい。上記の任意選択的な様々な配合剤、例えば充填剤を、混合中又は混合前に組成物に加えて組成物を形成してもよい。
【0082】
エポキシ樹脂組成物の成分は全て、典型的には、所望の用途に応じた低い粘度を有する有効なエポキシ樹脂組成物の調製が可能な温度で混合及び分散される。全成分の混合中の温度は、一般的には、約0℃〜約100℃、好ましくは約0℃〜約50℃である。上記範囲未満の温度では、配合物の粘度は過剰になり、一方、上記範囲を超える温度では、配合物は時期尚早に反応することがある。
【0083】
上記のジビニルアレーンジオキシドから調製される本発明のエポキシ樹脂組成物は、当該技術分野で知られている組成物と比べて、同じ分子量で改善された耐熱性を有し、同じ耐熱性でより低い粘度を有する。
【0084】
本発明の硬化性配合物又は組成物は、従来の加工条件下で硬化でき、熱硬化物を形成する。得られた熱硬化物は、高い熱安定性を維持しつつ、優れた熱−機械的特性、例えば良好な靱性及び機械的強度を示す。
【0085】
本発明の熱硬化製品を製造する方法は、重力キャスティング、真空キャスティング、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、インフュージョン(infusion)、フィラメント巻き(filament winding)、レイアップインジェクション(lay up injection)、トランスファーモールディング、プリプレグ成形、浸漬、コーティング、吹付け、刷毛塗りなどにより実施できる。
【0086】
硬化反応条件としては、例えば、約0℃〜約300℃、好ましくは約0℃〜約250℃、より好ましくは約0℃〜約200℃の範囲内の温度のもとで反応を実施することが挙げられる。上記範囲未満の温度では、組成物の硬化速度は一般的に遅すぎ、一方、上記範囲を超える温度では、配合物は時期尚早に反応し得る。
【0087】
本発明の硬化方法は、回分式又は連続式であることができる。当該方法において使用される反応器は、当業者に知られている任意の反応器及び付帯設備であることができる。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより製造される硬化又は熱硬化製品は、都合良いことに、熱−機械的特性(例えば、転移温度、モジュラス及び靱性)の改善されたバランスを示す。硬化製品は、視覚的に透明又は乳白色であることができる。
【0089】
本発明は、コーティング、フィルム、接着剤、封入剤、キャスティング品、複合材料、積層体、電子装置、電気積層品、絶縁、土木工学及び建設などの分野でエポキシ硬化用途のためのアミン及びヒドロキシル官能性付加物を調製することに関する。本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物は、低温でエポキシにより硬化させることができ、表面に対する反応性が高く密着性が良好である。本発明の組成物は、本発明のアミン及びヒドロキシル官能性付加物のアミン基を、他のアミン類と併用して又は併用せずに、エポキシ樹脂により硬化させることによって、上記分野で使用できる。
【0090】
本発明の1つの例として、一般的に、エポキシ樹脂組成物は、キャスティング、ポッティング、封入、モールディング及びツーリングに有用であることができる。本発明は、全てのタイプの電気キャスティング、ポッティング及び封入用途に対して特に適し、エポキシに基づく複合材料部品、特に、キャスティング、ポッティング及び封入により製造されるエポキシに基づく大きな部品を製造するのに適する。得られた複合材料は、幾つかの用途、例えば電気キャスティング用途又は電子部品の封入、キャスティング、モールディング、ポッティング、封入、射出、樹脂トランスファーモールディング、複合材料、コーティングなどで有用であることができる。
【実施例】
【0091】
以下の例により本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
以下の例では、種々の用語及び記号を使用するが、ここで、「EEW」はエポキシド当量を表し、「AEW」はアミン当量を表し、「DVBDO」はジビニルベンゼンジオキシドを表し、D.E.H.20エポキシ硬化剤はザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから市販されている一工業グレードのジエチレントリアミンであり、D.E.H.52エポキシ硬化剤はザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから市販されている付加アミンであり、「BADGE」はビスフェノールAジグリシジルエーテルを表す。
様々な標準的な分析装置及び方法を例で使用し、例えば粘度はARES Rheomechanical Analyzerにより測定した。
【0092】
実施例1〜4及び比較例A〜E
DVBDO及びD.E.H.20グレードジエチレントリアミンを表Iに示されている割合で90℃で1時間反応させてエポキシド基の転化を完了させた。表Iは、アミン/エポキシドモル比及び当量比と付加AEW値及び粘度を示す。
【0093】
【表1】

【0094】
比較例C
6.25Pa・sの粘度を有するDEH 52を、化学量論的量のBADGEにより硬化させて約145℃のTgを有する熱硬化物を得た。
【0095】
比較例D
約0.82Pa・sの粘度を有する国際公開第2002/022709号に記載されている1当量のブタンジオールジグリシジルエーテルと3当量のDETAとの付加物を化学量論的量のBADGEにより硬化させて約91℃のTgを有する熱硬化物を得た。
【0096】
実施例5〜8及び比較例E
表Iに示されている例を化学量論的量のBADGEにより硬化させて、示されているTgを有する熱硬化物を得た。
【0097】
【表2】

【0098】
本発明の付加物は、誘導される熱硬化物のTgが著しく減少することなく、先行技術のジビニルアレーンジオキシドよりも低い粘度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン−水素当量/エポキシド当量の比が5を超える付加ポリアミン組成物を提供する、(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)過剰のポリアミンとの反応生成物を含むポリアミン付加物。
【請求項2】
(i)請求項1に記載のポリアミン付加物と、(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂組成物とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
アミン−水素当量/エポキシド当量の比が6以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
共硬化剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
触媒を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
ジビニルアレーンジオキシドがジビニルベンゼンジオキシドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
共硬化剤がポリアミンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記共硬化剤の濃度が、配合物中に使用される硬化剤の総量の約1〜約99当量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
触媒が、アミン部分、ホスフィン部分、複素環式窒素部分、アンモニウム部分、ホスホニウム部分、アルソニウム部分、スルホニウム部分及びそれらの任意の組み合わせを含む触媒化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記触媒の濃度が約0.01質量%〜約25質量%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)ポリアミンとを反応させて付加ポリアミン組成物を提供することを含み、当該組成物が、アミン−水素当量/エポキシド当量の比が5を超える、ポリアミン付加物の調製方法。
【請求項12】
(a)請求項1に記載のポリアミン付加物と、(b)少なくとも1種のエポキシ樹脂とを混合することを含む、硬化性エポキシ樹脂組成物の調製方法。
【請求項13】
エポキシ樹脂がジビニルベンゼンジオキシドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が約0℃〜約200℃の範囲内の温度で実施される、請求項11又は12に記載の方法。

【公表番号】特表2013−512997(P2013−512997A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542155(P2012−542155)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058543
【国際公開番号】WO2011/068858
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】